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大腸菌発現タンパク質を用いたトマト黄化葉巻ウイルスに対する抗血清による検出

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Academic year: 2021

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九州病害虫研究会

第 89 回研究発表会

2015 年 2 月 5 日(木)

会場 KKR ホテル熊本

〒860-0001 熊本市千葉城町 3-31

TEL:096-355-0121

講演要旨(虫害)

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Foraging behavior of the hoverfly, Sphaerophoria macrogaster (Thomson) in coriander and blue salvia patches

○Chandrima Emtia・Kazuro Ohno

Aphidophagous hoverfly requires foraging effectively to feed on pollen and nectar, and search for aphid colonies to lay eggs in their life time. In the present study, we investigated the foraging behavior of females Spaherophoria macrogaster in coriander and blue salvia patches. Two-fold number of females approached and probed flowers in morning than in afternoon in coriander, while no such pattern was observed in blue salvia. Significantly longer interplant movement and probing were observed in morning compared to afternoon for both flowering plants. Both in the morning and afternoon hoverflies showed positive significant relationship between flower resource and patch residence time in blue salvia, while only in morning such relationship was found in coriander. These results suggest that hoverflies may shift their foraging behavior from flower-visiting in morning to prey-searching in afternoon, assessing flower resources. Based on the present result, we will discuss how the hoverfly maximizes the energy intake and reproductive output. (宮崎大農) 虫 02 鹿児島県指宿市におけるミカンキジラミの発生終息と今後の対応 ○下津文宏・中村浩昭・西岡一也1) 鹿児島県指宿市では,2007 年からカンキツグリーニング病の媒介昆虫ミカンキジラミ

Diaphoria citri Kuwayama の緊急防除を実施してきた。好適寄主植物のゲッキツは,民家の庭木

や生垣として植栽されており,薬剤散布の際はドリフトに留意する必要があった。このため,防 除は,年2回,5月と8月にネオニコチノイド系クロチアニジン水溶剤の高濃度(40 倍)希釈液 200ml を園芸用ジョウロを用いて株元に散布する等の方法で行った。防除開始後は,発生範囲, 密度ともに減少し,2007 年3月時点で 114 地点(ゲッキツ 80 地点,カンキツ 34 地点)あった発 生地点は,2012 年 11 月以降ゼロとなった。2013 年8月に最終薬剤散布を実施し,残効が切れる 10 月から起算して有効積算温度で3世代相当を経過した 2014 年6月まで発生は認められなかっ たことから,農林水産省との合意に基づき,同市におけるミカンキジラミの発生は終息したと判 断された。今後も再侵入防止に向けた定期調査や市民への啓発活動を市や植物防疫所と連携しな がら継続していく。 (鹿児島農総セ・1)鹿児島熊毛支庁) 虫 03 脂肪酸グリセリド乳剤の混用が各種薬剤のミカンキイロアザミウマの殺虫効果へ及ぼす影響 ○林川修二,西岡一也1),牧 昭仁2) ミカンキイロアザミウマはTSWV等を媒介することから,キク栽培では重要な害虫である。 過去の薬剤効果試験では,エマメクチン安息香酸塩乳剤,クロルフェナピルフロアブル,スピノ サド水和剤,プロチオホス乳剤,フィプロニルフロアブルなどの殺虫効果が高かった。ところが, 2013 年には殆どの剤の効果が著しく低下していた。一方,ワタアブラムシに対して効果の低下し た薬剤に脂肪酸グリセリド乳剤を混用すると殺虫効果が高まったとの報告がある。そこで,ミカ ンキイロアザミウマ雌成虫に対して脂肪酸グリセリド乳剤(600 倍)を混用した 20 薬剤を食餌浸 漬法で供試した結果,スピノサド水和剤,エマメクチン安息香酸塩乳剤を含む 13 薬剤で殺虫効 果が高まった。脂肪酸グリセリド乳剤単用でも死亡が認められたが,反復間差が大きかった。殺 虫効果が高まる要因は不明であるが,各種薬剤による防除効果が低下している現状では,実用性 について検討する意義はあると思われる。また,他の剤も含め,同様の効果が得られるか今後, 検討が必要である。 (鹿児島農総セ,1)熊毛支庁,2)南薩地域振興局)

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TuMV 感染および非感染カブ上における2種のアブラムシの増殖特性の比較 ○本間智己・安達修平・八坂亮祐・大島一里・徳田 誠 昆虫により非永続的に伝搬されるウイルスは虫体内に短時間しか留まらないため,両者には密 接な相互作用はないと考えられてきた。しかし近年,いくつかの系で両者の興味深い相互作用が 報告されている。カブモザイクウイルス(TuMV)はアブラムシにより非永続的に伝搬され,国 内では world-B,basal-BR,Asian-BR の 3 つのゲノム型グループが知られている。九州では 2000 年頃まで world-B が優占していたが,その後急激な置き換わりが生じ,現在では basal-BR が優占 している。両ゲノム型と媒介虫との相互作用を明らかにするため,本研究では,world-B 感染, basal-BR 感染,非感染カブ上でアブラムシを飼育し,増殖率を比較した。その結果,モモアカア ブラムシの増殖率には差は見られなかったが,ニセダイコンアブラムシではウイルス感染株上で 増殖率が高まったことから,ウイルス感染は後者に有利に働くことが示唆された。感染ゲノム型 間での顕著な差は見られなかったことから,優占型の置き換わりにはアブラムシの増殖率向上以 外の要因が関与していると考えられた。 (佐賀大農) 虫 05 安納いものサツマイモネコブセンチュウ加害レース ○岩堀英晶・福田 健1)・西岡稔彦2)・上杉謙太 種子島において栽培され,近年その人気とブランド化により作付面積が増えているサツマイモ 「安納いも」は,栽培の拡大に伴い線虫被害もまた拡大している。「安納いも」には「安納紅」「安 納こがね」の 2 品種,および種子島で栽培される品種として「種子島ゴールド」があるが,これ らを加害するサツマイモネコブセンチュウのレースについてはこれまで調査されていない。そこ で,これら 3 品種にサツマイモネコブセンチュウの SP レース 1,2,3,4,6 をそれぞれ接種し,どの 線虫レースに対して感受性かを調査した。その結果,「安納紅」および「安納こがね」は,レー ス SP1 を始め供試したすべての SP レースに対して感受性であり,抵抗性カテゴリーにおいて農 林 1 号や高系 14 号と同等の感受性品種であった。一方,「種子島ゴールド」は SP1 および SP2 に 対して抵抗性であり,SP3,4,6 に対しては感受性であった。本講演では,加害レースの検定結果 とともに,線虫抑制性エンバクを用いた被害軽減対策の取り組みについても紹介する。 (九州沖縄農研・1)鹿児島県農総セ大隅・2)鹿児島県農総セ熊毛) 虫 06 2014 年におけるネコブセンチュウ被害圃場の線虫種について ○鈴木智範・福本律子・姫野和洋 ネコブセンチュウの対策に対抗植物や抵抗性台木を用いる場合、対象となる線虫種を特定する 必要がある。そのため、被害圃場におけるネコブセンチュウの種類を調査した。調査土壌は被害 が確認された県内 11 地点の野菜圃場から採取した。作目は野菜6品目で、分離にはベルマン法 を用いた。種の同定には Iwahori et al.(2000)の PCR-RFLP 法を用いた。その結果、8圃場でサツマ イモネコブセンチュウが、2圃場でアレナリアネコブセンチュウ(またはナンヨウネコブセンチ ュウ)が、1圃場でサツマイモネコブセンチュウ・アレナリアネコブセンチュウの混発が確認さ れた。サツマイモネコブセンチュウ抵抗性台木を使用したトマト根部に寄生していた雌成虫の種 を調査したところ、2圃場中2圃場でサツマイモネコブセンチュウが確認された。以上のことか らネコブセンチュウ被害圃場ではサツマイモネコブセンチュウが優占種であり、夏秋トマトでは 抵抗性台木の使用のみではなく土壌消毒等も含めた総合的な線虫対策が必要であると考えられ た。 (大分農林水研農業)

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交信撹乱剤・黄色高圧ナトリウムランプの同時利用によるチョウ目害虫の防除効果 ○陣野泰明・植松綾子・高田裕司1)・寺本健 諫早湾干拓地の大規模露地野菜圃場では,270W 黄色高圧ナトリウムランプの3灯/10a 設置で ヤガ類の密度抑制に必要な照度を維持でき,キャベツで防除効果が認められることを明らかにし た(寺本ら,2011)。今回は交信撹乱剤を通常の 1/2 量処理とした場合の効果,さらに黄色高圧ナ トリウムの3灯/10a 設置を組み合わせた技術のレタス,キャベツでの防除効果を検討した。その 結果,交信撹乱剤の 1/2 量処理ではハスモンヨトウ,オオタバコガ,コナガ,ウワバ類で慣行処 理量とほぼ同等の交信攪乱効果があり,慣行防除と組み合わせると慣行防除単独よりも被害低減 効果が高かった。交信撹乱剤と黄色高圧ナトリウムランプの組み合わせではそれぞれ単独よりも 高い密度抑制効果が認められた。レタスでは高い被害低減効果が認められ,セル苗灌注剤との併 用によって化学農薬の使用回数を大幅に削減できる可能性が示唆されたが,キャベツでは本技術 での防除効果が期待できないモンシロチョウの被害が多く,課題が残された。 (長崎農技セ,1)五島振興局) 虫 08 イラクサギンウワバから分離された 2 種ウイルスの混合接種による病原性の変化 ○原田陽帆・クアシ N’G ルシエン・津田勝男・坂巻祥孝 鹿児島大学においてイラクサギンウワバから分離された核多角体病ウイルス(以下,NPV)およ び細胞質多角体病ウイルス(以下,CPV)は両ウイルスが混合された場合と単体の場合で病原性に変 化があることが確認されている。両ウイルスを混合して接種した場合,CPV の濃度が NPV の濃 度より相対的に高ければ,NPV の感染が抑制されることが確認された。次に,NPV の濃度が CPV の濃度より相対的に高い場合の病原性の変化について検証を行った。 (鹿児島大農) 虫 09 熊本県に発生するコナガのジアミド系殺虫剤に対する感受性低下 ○樋口聡志・古家 忠 コナガはアブラナ科野菜の重要害虫であり,これまで各種薬剤に対する抵抗性が問題となって いる。チョウ目害虫の防除薬剤として広く普及しているジアミド系殺虫剤に対して,近年,感受 性が低下したコナガが九州地域でも確認された。そこで,2013~14 年に熊本県のキャベツ産地な どで採集した個体群について葉片浸漬法を用い,本系統の薬剤に対する感受性とともに,他系統 薬剤の殺虫効果を検討した。その結果,6 個体群の 3 齢幼虫における LC50 値は,クロラントラ ニリプロール水和剤では全個体群ともに 181ppm 以上,フルベンジアミド水和剤では 105ppm の 1 個体群を除くと全て 2000ppm 以上であり,ジアミド系殺虫剤の感受性低下が確認された。また, 感受性が低下した 3 個体群におけるマクロライド系 4 薬剤の殺虫効果は,常用濃度での補正死虫 率が 86%以上と高く,鹿児島個体群(福田・林川,2014)と同様の傾向を示した。 (熊本農研セ)

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鹿児島県で 2013~2014 年に採集したコナガの薬剤感受性 ○福田 健・林川修二1) 近年,鹿児島県のアブラナ科栽培ではチョウ目害虫に対して卓効を示すジアミド系殺虫剤の利 用場面が多いが,2013 年 11 月に現地ハクサイほ場でジアミド系殺虫剤であるフェニックス顆粒 水和剤散布後のコナガに対して効果が劣る事例がみられた。そこで,2013~2014 年に県内 6 市 7 地点のキャベツほ場からコナガを採集し,ジアミド系殺虫剤の他,キャベツに登録のある殺虫剤 について感受性検定を行った。検定は食餌浸漬法で行い,所定濃度に調整した薬液に 30 秒間浸 漬したキャベツ葉片を風乾した。その後,直径 9cm のシャーレ内に入れ幼虫を接種し,25℃の条 件下で処理後 24 時間毎に 72 時間後(BT 剤は 120 時間後)までの供試虫の死亡状況を調査した。 その結果,いずれの地点でもジアミド系殺虫剤であるフェニックス顆粒水和剤,プレバソンフロ アブル 5 の LC50 値は感受性系統に比べて低下しているものの,地域間差がみられた。今後,コ ナガの防除対策としては感受性検定で高い効果を示したマクロライド系殺虫剤などを中心に防 除体系を構築する必要があると考えられた。 (鹿児島農総セ大隅・1)鹿児島農総セ) 虫 11 奄美・熊毛地域で発生したアフリカシロナヨトウ個体群の起源に係る一考察 ○中村浩昭・山口卓宏・西岡一也1) 2010 年に鹿児島県喜界島において突如多発生し,イネ科牧草を中心に食害被害が観察されたア フリカシロナヨトウ Spodoptera exempta (Walker) が,2013 年8月に種子島や奄美群島で局所的に 再発生・食害被害も確認された。奄美大島5地点における合成性フェロモンを利用したモニタリ ングトラップによる雄成虫の誘殺消長では,9月上旬をピークに漸減し,12 月中旬以降,翌 2014 年6月下旬まで誘殺されなかった。2014 年は幼虫や食害被害は確認されず,誘殺数も少なく推移 した。一方,種子島でも7月上旬に再誘殺が確認され,8月上旬には幼虫によるイネ科牧草(ソ ルゴー)への加害も突発的に確認された。本種は休眠性を示さないため,奄美群島でも成虫態で の越冬は不可能であると思われるが,幼虫や蛹が越冬している可能性も否めない。そこで本稿で は,2年間のモニタリングトラップ結果をもとに,本県で発生した個体群の起源について,土着 個体群由来か,長距離移動による海外からの飛来侵入個体群由来なのかについて推察を試みる。 (鹿児島農総セ・1)鹿児島熊毛支庁) 虫 12 波長別に光遮断したコーントラップによるコブノメイガの捕獲能力 ○本田善之 水稲の重要害虫であるコブノメイガの予察にはコーントラップの利用が検討されている。昨年 の本研究会で光透過率の低い円錐型コーントラップでは捕獲能力が劣り、コブノメイガは夜間で も光の遮断により行動が抑制されることを報告した。本年は行動を制御する光波長を明らかにす るため、紫外線域を含む数種の波長を遮断した資材による円錐型コーントラップを作成し、コブ ノメイガの捕獲数を比較した。センター内水田における 8/8~10/3(3 ほ場平均)の捕獲数は、SE トラップを 100 とした場合、光を遮断しない透明な資材(PET 透明)が 227 と最も多く、360nm 以下を遮断した資材(UV1)は 160、400nm 以下を遮断した資材(UV2)は 41、460nm 以下を遮 断した資材(UV オレンジ)は 17 とほとんど捕獲されなかった。この結果よりコブノメイガは、 夜間において 360~460nm の光を遮断するとフェロモンに移動する行動がほぼ完全に制御される と推定された。今後は、別のノメイガ類やヤガ類の光遮断による行動制御の有無を確認し、新た な防除対策を検討する。 (山口農林総セ)

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沖縄本島北部におけるドラセナ類の病害虫相 ○河村 太 沖縄県北部では,ドラセナ類(切葉)はキク類に次ぐ重要な花き品目である。しかし,病害虫相 についてはほとんど調べられていない。今後,防除技術の確立に資するため,病害虫の種類につ いて,ほ場調査および持ち込み相談の記録整理を行った。ほ場調査では,2010 年 1 月 15 日から 2011 年 3 月 26 日まで,沖縄県名護市の Cordyline terminalis「アオドラセナ」網掛け(慣行)栽培 およびビニール雨よけ栽培圃場,各3圃場で,圃場当たり 8-10 株,上位8葉に発生した病害虫の 数と被害面積の割合を,約2週間ごとに記録した。その結果,病気は 4 種,害虫は 22 種が確認 された。このうち,主要な病害虫は,炭そ病,疫病,ウスカワマイマイ,カンザワハダニ,アザ ミウマ類,およびクロテンオオメンコガであった。 (沖縄南普セ) 虫 14 パプア・ニューギニアの陸稲栽培における主要害虫とその防除対策 ○松村正哉・金本正和1) JICA 小規模稲作振興プロジェクトにおいて 2013~14 年に 3 回,パプア・ニューギニア(以下 PNG)で害虫防除対策の技術支援を行った。PNG では近年コメ消費拡大に伴い陸稲栽培が拡大し, 害虫が多発している。広範囲で多発している害虫はイネヨトウ・メイガ類とクモヘリカメムシの 1 種であり,感受性品種「TCS10」の栽培拡大でトビイロウンカが多発している。また,2014 年 にはオカボノクロアブラムシの多発が新たに確認された。コバネナガカメムシの 1 種による被害 も一部で確認された。PNG では傾斜地焼畑での陸稲栽培が主体であるが,収穫後に刈り株を放置 して非同期栽培を続けることが主な多発要因と考えられた。農薬以外の耕種的防除として,集落 単位での作期の同期化と休閑期の設定,収穫後の残渣処分や周辺雑草の管理,非イネ科作物との 輪作,カメムシ対策には乳熟期の捕虫網による捕殺が有効と考えられた。オカボノクロアブラム シについても連作回避が有効と考えられたが,乾期に多発傾向にあるため,雨期と乾期で寄主交 代するか否かについて今後解明する必要がある。 (九州沖縄農研・1)海外貨物検査(OMIC)) 虫 15 佐賀県における 2014 年のトビイロウンカの発生と防除状況 ○善正二郎・山口純一郎 佐賀県における 2014 年のトビイロウンカの主飛来は 7 月 14 日頃で,発生量は平年と比較して やや少ない~並であったが,晩生品種を中心に一部で坪枯れが発生した。昨年の大発生を受け, 本年は現地圃場で箱粒剤にピメトロジン剤の使用が増え,感受性の低下がみられるブプロフェジ ン剤にジノテフラン剤を混合して第1世代幼虫を対象に7月下旬~8月上旬に散布する基幹防 除が実施された。昨年被害が目立った「さがびより」を栽培する農家 27 名を対象にアンケート 調査を行ったところ,上記の防除体系に第2,3世代幼虫を対象に臨機防除が実施された圃場で は本種による坪枯れはみられなかった。一方,本種に効果の低い箱粒剤が使用されたり,降雨等 の影響により第1世代幼虫の基幹防除が遅れるなど初期密度が十分に抑制できなかった圃場や 臨機防除が適期に行われなかった圃場で坪枯れがみられた。 (佐賀農技防)

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近年のトビイロウンカの各種薬剤に対する薬剤感受性 ○中川浩二・溝部信二・殿河内寿子 山口県では 2014 年に6月移植の水稲でトビイロウンカが多発生し,坪枯れ被害が多く発生し た。近年の多発生の1つの要因として,薬剤感受性の低下が関与している可能性ある。そこで, 県内で使用頻度が高い本田防除剤についてベルジャーダスター法により検定を行った。その結果, 補正死虫率はジノテフラン剤は 94%と高かったが,エチプロール剤は 26%,クロチアニジン剤 は 19%と低く,ブプロフェジン剤も 41%とやや低かった。また,エトフェンプロックス剤およ びシラフルオフェン剤では 2kg/10aの薬剤投入量で補正死虫率は顕著に低下した。微量局所施用 法による結果では,フィプロニル剤の LD50 値は 0.9μg/g であったが,イミダクロプリド剤は 117 μg/g と薬剤感受性は低下していた。ブプロフェジン剤以外の本田防除剤における微量局所施用 法の結果はベルジャーダスター法とほぼ同様の傾向を示した。薬剤感受性が低下している剤につ いては,今後も引き続き検定を行う必要がある。 (山口農林総セ) 虫 17 ヒメトビウンカの 2014 年海外飛来の有無と九州地域の薬剤感受性動向 ○真田幸代・大塚彰・砥綿知美・松村正哉 ヒメトビウンカの海外飛来予測システムによって、2014 年の中国江蘇省(沿岸部)から移出す る期間は 5 月 27 日~6 月 3 日と予測された。この期間に海外飛来が起こったか検証するために、 この期間以前に九州西岸地域(長崎県佐世保市、熊本県天草市、鹿児島県南さつま市)で土着個 体群の採集を行い、薬剤感受性とイネ縞葉枯ウイルスの保毒虫率を検定した。飛来が予測された 6 月 2 日(飛来地:長崎・鹿児島県)以降に採集した南さつま市の個体群で検定を行ったところ、 江蘇省個体群に比べ、薬剤感受性・ウイルス保毒虫率ともに低い値となり、海外飛来による影響 はみられなかった。6 月 2 日の飛来予測では、飛来源から飛来地までの到達時間は 44~46 時間で、 2008 年 6 月に江蘇省から多飛来が起こった際の到達時間約 24 時間と比較すると、比較的弱い風 による予測であった。このような弱い風では、個体群の形質に大きな影響を及ぼすような多飛来 は起こらないと考えられた。2013 年以降の九州各地(福岡、佐賀、大分、鹿児島)の薬剤感受性 動向も併せて報告する。 (九州沖縄農研) 虫 18 白熱灯および水銀灯のカメムシ類に対する誘引性の比較 ○遠藤信幸・弘中満太郎1) 各県の病害虫防除所などに設置してある予察灯は,光源として白熱灯(60W)もしくは水銀灯 (100W)が用いられている。水銀灯は白熱灯よりもカメムシ類に対し誘引力が強いとされてい るが,これまで定量的な試験が行われていない。そこで,白熱灯と水銀灯のカメムシ類に対する 誘引力を簡易な予察灯型トラップを用いて比較した。結果はカメムシの種類やトラップの設置場 所により若干変動するものの,白熱灯に比べ水銀灯の誘殺数が圧倒的に多く,ミナミアオカメム シで 5.6~14.4 倍,アオクサカメムシで 32.7~64.8 倍,ツヤアオカメムシで 176.3~182.9 倍,チ ャバネアオカメムシで 127.5~304.6 倍の値を示した。また,水銀灯に多く含まれる短波長域の波 長を紫外線カットフィルムで除去したところ,水銀灯に対するカメムシ類の誘殺数は大幅に減少 した。以上のことから,水銀灯のカメムシ類に対する強い誘引性は,主に短波長域の強い光強度 に起因するものと考えられた。 (九州沖縄農研・1) 浜松医大)

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コムギ-水稲-ダイズにおけるミナミアオカメムシの発生量 ○水谷信夫・石川博司1)・田中千晴2) ・光永貴之3) 熊本市近郊の 4 つの主要なダイズ栽培地域において,地域標準メッシュ(3 次メッシュ)の調 査区域を 15〜20 カ所設け,任意に選定した 3 圃場でミナミアオカメムシの個体数を調査した。 調査は,コムギで 5 月中下旬,水稲で 9 月下旬〜10 月上旬,ダイズで 10 月下旬〜11 月上旬に実 施した。耕作地の大半を上記 3 作物が占める「城南町〜富合町」と「嘉島町〜益城町」では,コ ムギおよび水稲におけるミナミアオカメムシの密度とダイズにおけるそれに有意な正の相関が 認められた。一方,「合志市〜泗水町」と「大津町〜菊陽町」では,有意な相関関係は認められ なかった。また,コムギ,水稲,ダイズの地域毎の密度にも相関関係が認められ,コムギや水稲 での密度が低い「城南町〜富合町」と「嘉島町〜益城町」ではダイズにおける密度も低く,逆に コムギや水稲での密度が高い「合志市〜泗水町」や「大津町〜菊陽町」ではダイズにおける密度 も高かった。詳細については今後検討する必要があるが,上記 3 つの寄主作物間での密度の相関 には,それら寄主植物の生息地における占有率が影響していると推測された。 (九州沖縄農研・1)愛知農総試・2)三重防除所・3)中央農研) 虫 20 カンショ圃場へのサトウキビトラッシュ散布がイモゾウムシや畑環境に及ぼす効果 ○山下伸夫 サトウキビトラッシュの散布が地温、含水率等の物理的環境やイモゾウムシの次世代羽化数や 線虫相、雑草動態に及ぼす効果を 2013,2014 年に調査した。(方法)春に移植した、トラッシュ 散布量(40kg または 20kg/1 区)または散布方法(全面、額縁)により処理水準を変えたカンシ ョ試験区にイモゾウムシを各区 320 個体放虫し、塊根からの次世代羽化数を調査すると共に、線 虫相動態や雑草発生量、物理的環境を調べた。(結果)2013 年は顕著なイモゾウ虫羽化数抑圧効 果が認められたが 2014 年度試験では判然としなかった。地表面、地温、土壌含水率はトラッシ ュ散布区では無散布区より変動が小さくなった。線虫相は、トラッシュ散布により細菌食、糸状 菌食、小動物動物食性等の自活性線虫が増加した。雑草は、単子葉と広葉雑草に対するトラッシ ュ散布の顕著な発生抑制効果を確認した。 (九州沖縄農研) 虫 21 サツマイモ圃場における選択的殺虫剤の天敵への影響 ○川元玲奈・津田勝男・坂巻祥孝 IPM 体系における生物的防除を成功させるために,しばしば選択的殺虫剤を利用して,あらか じめ目的害虫の密度を下げる方法がとられる。しかし,選択的殺虫剤の天敵生物への影響は一部 の作物でしか確認されていない。本研究ではサツマイモ圃場において BT 剤(ゼンターリ),フル ベンジアミド顆粒水和剤,メタフルミゾン水和剤,エトフェンプロックス乳剤,シペルメトリン 水和剤の 5 種類の薬剤を圃場に散布し,害虫への殺虫効果と土着天敵相に与える影響を確認した。 薬剤の散布前と散布後に 50cm×50cm 枠内の主要害虫と天敵類を計数した。その結果,イモキバ ガ,ナカジロシタバなど主要鱗翅目害虫は全ての区で減少し,防除効果が認められた。一方,エ トフェンプロックス区とシペルメトリン区では僅かではあるがクモ,アリ,カブリダニの減少が 認められた。またフルベンジアミド区とメタフルミゾン区ではクモの減少が認められた。これに 対して BT 剤を散布した圃場では天敵への影響は認められなかったが,ハスモンヨトウに対する 殺虫効果が低かった。 (鹿児島大農)

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諫早湾干拓地における野菜類主要害虫の減農薬防除技術の開発 10)春作ジャガイモ寄生アブラムシ類に対するインセクタリープラントの土着天敵類の効果 ○植松綾子・陣野泰明・寺本 健 諫早湾干拓地では大規模環境保全型農業を推進しており、そのための技術の一つとしてインセ クタリープラントによる土着天敵を利用した害虫管理技術の確立を目指している。今回、春作ジ ャガイモ (栽培期間:2~5月)において作物寄生アブラムシ類に対するインセクタリープラント の有効性を評価するため,インセクタリープラント片側設置区、両側設置区、天敵に影響の少な い化学薬剤防除区および天敵除去区を設置し、アブラムシ類と土着天敵類を見取り法で調査した。 その結果、アブラムシ類の発生は、天敵に影響の少ない化学薬剤防除区が調査期間を通して最も 低く推移した。他の3区は5月上旬までは同様の発生推移を示していたが、片側設置区、両側設 置区は5月1日の発生ピーク後に減少したのに対し、天敵除去区はその後も減少せず推移した。 一方、土着天敵類の虫数は片側設置区と両側設置区が多く、次いで化学薬剤防除区、天敵除去区 の順であった。これらのことから、土着天敵類の有効性が示唆された。 (長崎農技セ) 虫 23 秋作バレイショの有機栽培で発生する害虫および土着天敵の発生動向 ○福吉賢三・菅 康弘1) 環境保全型農業の推進ならびに生産者,消費者の有機栽培へのニーズ増加に対応するため,有機 JAS に適合した二期作バレイショ栽培体系について検討している。そこで,場内圃場でバレイショ 有機栽培を実践し,病害虫の発生動向を把握し、問題点の抽出をおこなっている。本研究では, 2012 ~2014 年に秋作バレイショの有機栽培で発生する害虫と天敵の発生動向を調査した。その結果, いずれの年もアブラムシ類の発生は少なかったが,2012 年はジャガイモガが発生し,2013 年はオオ タバコガやジャガイモガ等のチョウ目害虫が発生した。そこで,有機栽培(農薬)区では 2013 年 以降,BT水和剤の散布によりチョウ目害虫の発生を抑制した。慣行区では化学農薬の散布により チョウ目害虫の発生を抑えたが,天敵類の発生は少なかった。これらに対し,有機栽培(無農薬) 区では地上徘徊性の捕食性天敵であるオサムシ類やハサミムシ類およびクモ類が多数認められ, チョウ目害虫はやや増加したがその後減少した。このことから,土着天敵類のチョウ目害虫に対す る有効性が考えられた。 (長崎農技セ・1)長崎防除所) 虫 24 ニジュウヤホシテントウの天敵の探索と捕食・寄生量評価 ○山名一遂・坂巻祥孝・津田勝男 ニジュウヤホシテントウはナスやジャガイモなどのナス科植物を加害することで知られてい るが,農薬に対する感受性が高い。そのため慣行栽培では問題となることはないが,露地無農薬 栽培では主要害虫となることがある。本研究では無農薬の露地ナス圃場で本種に対して有効に働 いている天敵を探索し,捕食・寄生量を評価することを目的とした。圃場観察の結果,主要天敵 としてヒメコバチ科寄生蜂,シロヘリクチブトカメムシ,ナナホシテントウが確認された。寄生 蜂については,ニジュウヤホシテントウの終齢幼虫の 72 時間あたり死亡数(ホストフィーディ ングおよび寄生による)は 4±2.1 頭であった。シロヘリクチブトカメムシについては,シロヘリ クチブトカメムシの終齢幼虫によるニジュウヤホシテントウ終齢幼虫の 24 時間あたりの捕食数 は 5.9±2.4 頭であった。ナナホシテントウについては,ナナホシテントウの成虫によるニジュウ ヤホシテントウ卵の 24 時間あたりの捕食数は 8±15.6 で高い捕食能力が確認された。 (鹿児島大農)

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スワルスキーカブリダニとリモニカスカブリダニは実用面でどう異なるのか ~ピーマンでのほ場増殖性及び株内分布の比較~

○柿元一樹・松比良邦彦・井上栄明・山中聡1)

リモニカスカブリダニ Amblyseius limonicus (Garman and McGregor)は,アザミウマ類及びコナジ ラミ類等に対する生物的防除資材として開発途中の捕食性天敵である。一方,スワルスキーカブ リダニ Amblyseius swirskii Athias-Henriot は施設ピーマンを中心に普及が進む天敵である。これら 2 種は,アザミウマ類,コナジラミ類及び花粉等を餌として利用する良く似たニッチを有する天敵 であるが,害虫に対する防除効果及びほ場での動態等について比較した例は少ない。そこで演者 らは,施設ピーマンを対象に,管理温度及び 2 種の放飼量を変えて放飼試験を実施した。その結 果,施設ピーマンの一般的な管理温度下では,リモニカスカブリダニはスワルスキーカブリダニ の放飼量の半量(25 頭/㎡)でも同等以上の増殖及び防除効果が認められた。また,低温条件下 において放飼量をさらに低減した場合の結果及びピーマンの株内分布に係る調査結果を含め,こ れら 2 種の実用面での相違点について考察する。 (鹿児島農総セ・1)アリスタライフサイエンス(株) 虫 26 保全的生物的防除を組み入れた IPM 体系~捕食者個体群の持続性 ○松原成隆・大野和朗・平岡由梨佳・小森大介・北原結花 露地ナスでは選択的農薬の利用によりヒメハナカメムシ類などが保護され,農薬散布の大幅な 低減につながることが実証されている。しかし、餌となるアザミウマ類と捕食者の関係は不安定 であり,特にアザミウマ類密度が低く推移すると防除として成功であるが,捕食者の密度は極端 に低下する。本研究では,ヒメハナカメムシ類個体群の持続性を高めるため,オクラの真珠体に 注目し,オクラを天敵温存植物(作物)として植えた植生管理圃場および選択的農薬のみを利用 した従来の天敵保護圃場の露地ナス農家で,ヒメハナカメムシ類や害虫密度を調査した。その結 果,オクラを植栽した植生管理圃場では,ナスで餌となるアザミウマ類がほとんど観察されなく なった栽培後期でもヒメハナカメムシ類個体群は持続したが,天敵保護圃場ではアザミウマ類密 度の低下とともにヒメハナカメムシ類密度は急激に低下し、ナス上でほとんど認められなくなっ た。以上の結果から、天敵温存作物としてオクラを植栽することで、ヒメハナカメムシ類個体群 の持続性が高まることが明らかとなった。 (宮崎大農) 虫 27 露地ナス圃場のインセクタリープラントに現れる寄生蜂の季節消長 ○瀬戸雄一朗・津田勝男 ・坂巻祥孝 インセクタリープラントを利用して天敵を誘引・定着させるには,あらかじめ目的とする天敵 のインセクタリープラントに対する選好性を知っておく必要がある。本研究では,露地ナス圃場 において 9 種類のインセクタリープラント(ソルゴー,ブルーサルビア,スウィートバジル,ス ペアミント,コスモス,ペチュニア,ノコギリソウ,スウィートアリッサム,カモミール)を植 え,誘引される寄生蜂の季節消長をイエローパントラップで調査した。その結果,ソルゴー,ブ ルーサルビア,スウィートバジルの 3 種類において多くの個体数の寄生蜂が確認された。また, インセクタリープラントを混植することにより,単植する場合よりも効果的に寄生蜂を誘引する 可能性が示唆された。さらに,インセクタリープラントに誘引されたアブラバチ類の発生消長は ナス上のアブラムシの消長とよく同調していることが確認された。 (鹿児島大農)

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天敵温存植物を活用した土着天敵の強化~天敵温存植物の評価 ○大野和朗・西本健・今別府直央・重富紀里佳・松原成隆・Chandrima Emtia 施設栽培、露地栽培を問わず,生物的防除の成否を左右する重要な技術として天敵の働きを強 化する天敵温存植物(インセクタリープランツ)が注目されている。野外で天敵がどの程度まで 餌を十分に摂取できているかは不明であるが,捕食者にとっては餌昆虫が最良の餌のひとつであ ることは間違いない。しかし,植物質餌を摂取することで,生存や繁殖を向上させることが可能 な天敵であれば,花蜜や花粉に富む花をモノカルチャーの圃場に植栽することで天敵のパフォー マンス向上につながる。残念ながら,花資源量などの変動と天敵の発生推移に関する知見は少な く,天敵に対する栄養的効果が検討されている植物種も限られている。本講演では,演者らが検 討を進めている天敵温存植物に関するデータを基に,ヒメハナカメムシ類とヒラタアブ類を例に その評価方法と望ましい特性について考える。特に,タイリクヒメハナカメムシでは栄養補完的 餌と栄養補助的な餌の違いや意義について,ヒラタアブ類では採餌行動のパターンから考えた野 外での評価方法について考察する。 (宮崎大農) 虫 29 大量増殖したヘヤカブリダニの露地ナスにおける害虫密度抑制効果 ○小田あさひ・坂巻祥孝・津田勝男 ヘヤカブリダニは施設栽培圃場においてホコリダニ類,ハダニ類,アザミウマ類の密度を抑制 することが知られているが,露地栽培での害虫密度抑制効果は明らかになっていない。本研究で は室内で大量増殖したヘヤカブリダニについて露地ナス圃場における害虫密度抑制効果を調査 した。7 月中旬から 1 株あたり 800~2000 頭のヘヤカブリダニを毎週放飼した処理区では,葉上 のヘヤカブリダニ頭数は無処理区よりも有意に高く推移した。一方,新出葉では,7 月下旬に処 理区においてヘヤカブリダニの発生が確認され,9 月上旬から密度が上昇し 9 月中旬に 1 葉あた り 0.9 頭のピークが見られた。無処理区におけるホコリダニ類の発生は 9 月下旬に 1 葉当たり 8.2 頭のピークが見られたが,処理区では 0.6 頭以下の低い密度で推移し,両区間で有意差が見られ た。このことから,ヘヤカブリダニはホコリダニ類の発生抑制に働く有効な天敵である可能性が 示唆された。 (鹿児島大農) 虫 30 施設キュウリ栽培における捕食性天敵タバコカスミカメの有効利用:クレオメからの分散 ○平岡由梨佳・大野和朗 地域に生息する土着天敵を利用する保全的生物的防除では広食性の捕食性天敵が注目を集め ている。そのなかでもタバコカスミカメ Nesidiocoris tenuis (Reuter)(カメムシ目:カスミカメム シ科)はタバココナジラミの有力な天敵として欧州で利用され,日本でも夏期に野外で採集でき るため高知県や鹿児島県を中心に普及している。しかし,現在の利用方法では毎年夏にゴマなど を植えてタバコカスミカメを採集するか、天敵温存ハウスで維持する必要がある。本研究では, 栽培施設で周年的に利用する方法を確立するため,8 月の休閑期も施設内に天敵温存植物として クレオメを残し,タバコカスミカメ個体群の消長を調査した。その後,2014 年 9 月 11 日に定植 したキュウリ上にクレオメからタバコカスミカメが急激に分散し,タバコカスミカメによる加害 が確認されたが,キュウリの生育や収量に影響はなかった。このことから,施設内にクレオメを 維持することで周年的にタバコカスミカメ個体群を維持することが可能となり,栽培初期から害 虫の密度抑制が期待できると考えられた。 (宮崎大農)

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佐賀県のイチゴ圃場で採集したナミハダニの各種殺ダニ剤に対する感受性 ○衞藤友紀 2006 年と 2014 年に佐賀県内各地のイチゴ本圃、育苗床で採集したナミハダニ黄緑型8個体群の 卵を供試し、ビフェナゼート(BI)、シフルメトフェン(CY) およびミルベメクチン(MI)に対する 感受性をリーフディッピング法で検定した。その結果、2006 年に調査した8個体群では、イチゴ に登録がある常用濃度の各薬液、その 1/3 希釈薬液による補正死亡率は 93%以上であり、高い感 受性を示した。一方、2014 年の BI の常用濃度では8個体群中2個体群の死亡率はそれぞれ 26%、 75%と低く、また CY の同濃度では1個体群で死亡率 79%、2個体群で 12%以下と著しく低かっ た。さらに、MI では6個体群中1個体群において常用濃度による死亡率は 100%ではあったもの の、1/3 希釈薬液では 34%と低く、感受性の低下が疑われた。このように、2014 年のナミハダニ の BI、CY および MI に対する感受性は、2006 年と比較して圃場間差が認められた。一方、2014 年のみ検定したシエノピラフェンによる各個体群の死亡率は 94%以上と高い感受性を示した。 (佐賀農業セ) 虫 32 茶圃場での新防除機利用による害虫防除効果の確認および天敵類への影響の検討 ○落田恵梨香・津田勝男・坂巻祥孝・鹿子木聡¹⁾ 茶栽培においては従来より 10a当たり 200ℓの農薬使用量が慣行とされてきた。そんな中,“か ごしま式防除装置”の開発により農薬散布を新芽とその付近のみに絞ることで慣行比 1/3 量まで 農薬の使用量を減らすとともに天敵を温存する効果が期待できる。本研究ではフロニカミド顆粒 水和剤,ジノテフラン水溶剤,ペルメトリン乳剤を用い慣行量(200ℓ/10a),1/3 量,1/5 量と農 薬使用量を変えた場合の害虫防除効果および天敵,その他の昆虫相への影響を調べるために二番 茶,三番茶の時期に見取り調査,採葉調査等を行った。その結果,1/3 量でも慣行量と同程度の 害虫防除効果が確認できた。一方,1/3 量および 1/5 量におけるカブリダニやクモ類などの天敵温 存効果は確認できなかった。 (鹿児島大農・¹⁾鹿児島農総セ) 虫 33 ウンシュウミカン園における炭酸カルシウム微粉末剤を利用したミカンハダニに対する土着天 敵の保護 ○副島康義・内川敬介・宮崎俊英1) 長崎県内のウンシュウミカン園において,カブリダニ類は,ミカンハダニの最も重視すべき天 敵である(宮崎ら,2012)が,黒点病防除に使用されるマンゼブ剤の悪影響が大きい(柏尾ら, 1979)。そこで,本剤の使用を減らし,カブリダニ類を保護するため,マンゼブ剤を代替する黒 点病防除技術として銅水和剤と炭酸カルシウム微粉末剤(商品名:ホワイトコート,以下 WC) の混用について,黒点病防除効果,果実品質への影響等を検討してきた(副島ら,2012:内川ら, 2013)。今回,これらの報告を踏まえ構築した銅水和剤と WC の混用を組み入れた防除体系にお けるミカンハダニ,カブリダニ類の発生消長を慣行防除体系と比較した結果,ミカンハダニの発 生は慣行防除体系より多かったが,その後,カブリダニ類が増加し,ミカンハダニの発生は次第 に終息したことから,本防除体系によりカブリダニ類が保護され,ミカンハダニの密度抑制に寄 与したと考えられた。 (長崎農技セ果樹、1) 長崎県央振農林)

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大分県のハウスミカン園におけるミカンハダニの薬剤感受性低下事例 ○玉野井昭・楢原 稔・高佐和成1) 2014 年4月~6月に県内の一部のハウスミカン園で,ミカンハダニが多発する事例が確認され たことから,当該園(7ヶ所)から個体群を採集し,リーフディスク法による殺卵・殺幼虫検定 を行い,主要薬剤に対する感受性を調査した。その結果,スピロジクロフェン水和剤は殺卵・殺 幼虫率が概ね 90%程度と高かったが,ミルベメクチン水和剤,アセキノシル水和剤,およびエト キサゾール水和剤については個体群によって感受性の差異が認められた。また,シエノピラフェ ン水和剤については,6,000 倍と 9,000 倍(常用濃度 2,000~3,000 倍)の補正殺卵・殺幼虫率がそ れぞれ 18.4~88.7%,5.7~81.2%となり,今回初めて感受性低下が認められた。そこで,常用濃 度薬液による殺成虫検定も実施したところ,補正殺成虫率は 2,000 倍で 17.7~91.9%,3,000 倍で 0~86.5%となり,殺卵・殺幼虫検定結果と同様の傾向が確認された。ただし,シエノピラフェン 水和剤は当該園以外では高い殺虫効果を維持しており,本剤に対する感受性は個体群による差異 が大きいことが明らかとなった。 (大分農林水研果樹・1)大分西部振興局) 虫 35 核 ITS2 領域とミトコンドリア CO1 領域から見た喜界島産ゴマダラカミキリ ○三宅正隆・津田勝男・坂巻祥孝・實 浩希1) 近年,喜界島ではゴマダラカミキリ類による柑橘樹の被害が急激に拡大している。その原因と して,土着のオオシマゴマダラではなく,鹿児島県本土やその他の地域から侵入したゴマダラが 優占している可能性が考えられた。本研究では,両親由来の遺伝情報を持つ核 ITS2 領域と母親 由来の遺伝情報を持つミトコンドリア CO1 領域を用いて系統解析を行った。ITS2 領域における 系統解析の結果,喜界島産ゴマダラは,本土産の「ゴマダラ」グループに属し,奄美大島産の「オ オシマ」グループとは異なることが分かった。一方,CO1 領域における系統解析の結果,喜界島 産ゴマダラは,「オオシマ」グループに属し,「ゴマダラ」グループとは異なることが分かった。 以上のことから,喜界島産では,オオシマとゴマダラの雑種交配が起こっている可能性が示唆さ れた。 (鹿児島大農・1)喜界町役場) 虫 36 ネオニコチノイド系殺虫剤が土壌生物相に与える影響 ○下池裕太・坂巻祥孝・津田勝男 サツマイモ栽培においてコガネムシ類対策としてネオニコチノイド系殺虫剤であるクロチア ニジン粒剤が土壌混和されている。クロチアニジン粒剤については天敵昆虫に対する影響は確認 されているが,その他の土壌生物に与える影響についてはほとんど確認されていない。本研究で はサツマイモ圃場にクロチアニジン粒剤を作条土壌混和し,土壌生物相に与える影響を確認した。 マルチの下から土を採取し,24 時間ツルグレン装置にかけてサンプリングされた土壌生物を計数 し,サンプル数の多かったトビムシ目(ヒメトビムシ科・シロトビムシ科),ダニ目(中気門亜 目・隠気門亜目)について個体数の推移を確認した。その結果,トビムシ目について,ヒメトビ ムシ科は処理 45 日後,シロトビムシ科は処理 75 日後までは無処理区と比較して有意に個体数が 減少しており影響が認められた。一方,ダニ目(中気門亜目・隠気門亜目)については影響が認 められなかった。 (鹿児島大農)

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SSによるブドウのクビアカスカシバ防除の問題点と散布技術の改善 ○河村俊和・片山正之・本田善之・岩本哲弥 山口県においてもブドウのクビアカスカシバの被害が拡大しておりSSによる薬剤防除も行 われつつあるが,十分な防除効果が得られていない。そこで,本害虫の加害が特に問題となる樹 幹部への薬剤の付着を感水紙を用いて確認したとこ,薬剤の付着度指数は 4.7(10 段階評価)で 極めて悪く防除効果が得られにくい一因と考えられた。このため,SSの両サイドノズル 2 カ所 の噴板を吐出量の多いものに交換するとともに,ノズル及び導風板の角度を下方矯正する改善を 試みた。その結果,ブドウ樹幹株元部への散布薬剤の付着状況は付着度指数 10 で非常に良くな ったため,殺虫効果の向上が期待できると考えられた。さらに,散布薬量の増加によるコスト増 加の問題を改善するため,両サイドノズル噴板の交換を 1 カ所に減らしたとこ,薬剤付着量の指 数値は変わらず散布薬量の増加も約 1 割に抑制できた。 (山口農林総セ) 虫 38 核多角体病ウイルスのゴミムシを介した伝播 ○内間久美子・坂巻祥孝・津田勝男 核多角体病ウイルス(以下,NPV)は,バキュロウイルス科に属する害虫駆除への適用例の多い 天敵微生物である。NPV は鳥類やほ乳類などに捕食されても活性を保ったまま排泄され,広範囲 な伝播が起こっていると考えられている。本研究では鱗翅目害虫の天敵であるゴミムシ 2 種(オオ アトボシアオゴミムシ・エゾカタビロオサムシ)が NPV を伝播する可能性を室内実験で検討した。 その結果,これら 2 種に餌として NPV 感染幼虫を与えても健全虫と同様に捕食し,感染虫に対 する忌避性は認められなかった。また,オオアトボシアオゴミムシの糞として排泄された多角体 は活性を保っていることが確認された。これらのことから,ゴミムシは圃場内外において NPV 伝播の役割を果たしている可能性が高いと考えられた。 (鹿児島大農)

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