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遺伝情報から見る魚類移動環境の評価に関する研究

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Academic year: 2022

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遺伝情報から見る魚類移動環境の評価に関する研究

中電技術コンサルタント(株) 正会員 山原 康嗣 中電技術コンサルタント(株) 非会員 ○増本 育子

(株)建設技術研究所 非会員 安形

仁宏

(株)建設環境研究所 非会員 太田

宗宏

(独)土木研究所 正会員 村岡

敬子

1.背景

河川事業において,遺伝情報を活用した保全計画策定等の事例1), 2)が増えているものの,遺伝情報から導 き出した結果の活用は模索中の状況である.また,流域スケールで実際に調査・分析を実施する際の手法等 も統一されておらず,遺伝情報を事業へ反映しにくい現状にある.

2.目的

本研究では,魚類の移動環境の把握に着目し,遺伝的多様性の評価や保全計画へ遺伝情報を活用する際の 有効性を検討し,その結果を報告書としてとりまとめる計画としている.本発表は,平成

25

年度研究発表会 の続報として,平成

24

年度に研究計画を報告3)した2つのテーマ(①堰堤の魚道改善効果のモニタリングへ の遺伝情報の活用,②複数の堰堤を対象とした魚類移動環境調査への遺伝情報の活用)のうち,後者の複数 の堰堤を対象とした魚類移動環境に対する遺伝情報分析の結果及び考察について報告するものである.

3.調査地点及び分析試料の採取

広島県西部に位置する一級河川太田川は,国土交通省が平 成4年より実施した「魚がのぼりやすい川づくり」の一次指 定モデル河川に選定され,太田川本川の国管理区間にある14 基の河道横断工作物のうち10基に魚道が整備済であり,比較 的良好な魚類移動環境が形成されていると考えられる.本研 究は,従来の手法では検出することのできない課題の抽出手 法の確立を目的としているため,良好な移動環境を有してい る当該河川を対象とした.

調査範囲は,複数の河川横断工作物を含んだ太田川中流域 及び,明らかに魚類の移動環境を阻害されている地点(コン トロール地点)として太田川の支川である滝山川とした.

対象魚種は,この範囲内に広く生息する遊泳魚(カワムツ)及び底生魚(カワヨシノボリ,カマツカ等)と し,採捕し,体長を測定した後,鰭の一部を採取し,分析試料とした.

4.遺伝情報の分析計画

本研究は,調査対象種として選定したカワムツ,カワヨシノボリ,カマツカの種類毎に個体間の遺伝情報 の違いを分析することで,集団内における各個体の遺伝的多様性及び個体間・集団間の遺伝的な違いの解析 を試みた.分析方法は,あらかじめ

DNA

情報を必要とせず,任意の種で即座に利用可能であるとともに,微 量の

DNA

量で一度に多数の安定したデータを得ることができ,データ取得効率の高い

AFLP

4)を用いた.

遺伝情報の分析は,採取した対象魚の鰭の一部から

DNA

を抽出し,一般的な

AFLP

法の分析手順に準じて行 った.また,得られた遺伝情報から、遺伝子統計解析ソフト(AFLP SURV)・帰属性解析ソフト(Structure 2.3.4)

太田川 調査範囲

「魚がのぼりやすい 川づくり」整備区間

広島県 滝山川

(2)

等を用いて,個体間・集団間の違いや集団構造の推定を行った.

5.結果及び考察

現地調査の結果,対象種としたカワム ツ,カワヨシノボリ,カマツカは,対象 範囲全域で確認された.このことから,対 象魚3種は太田川を縦断的に広い範囲で 生息分布していると考えられる.

この結果は,太田川の遡上・降下環境 が整備されている事実を裏付けるもので あるが,対象魚の実際の移動・分散範囲 は,魚種毎の遊泳能力の違い等もあり,

明確に答えることができない.

そこで,河川横断工作物で区切られた 区間毎に遺伝的集団構造の違いを比較す ることで,魚類の移動環境に対する河川

横断工作物の影響の程度が把握でき,実際の魚類の移動・分散範囲の推定に寄与できると考えた.

太田川中流域に生息するカワムツの遺伝情報分析結果によれば,調査地点全ての遺伝的集団構造が同様の 構造を有しており,遺伝情報に差異が見られないことから,上下流間で遺伝的な交流(遡上,出水による流 下等)があることが示唆された(図-3).この結果から,太田川中流部におけるカワムツの移動環境は,河川 横断工作物による影響は小さく,ほぼ均一に移動できる環境であることが考えられる.

また,太田川中流域に生息するカワヨシノボリの遺伝情報分析結果によれば,特定区間を境に異なる構造 の遺伝情報が存在することが明らかとなった(図-4).これは遺伝的分断を示唆し,何らかの要因による移動 環境分断の可能性が考えられる.

これらの結果から,遺伝情報を活用することで,太田川中流域に生息するカワムツの遺伝的分断が無いこ とを証明するとともに,底生魚であるカワヨシノボリについては,魚類相調査では得られない新たな課題を 得ることができたと考えている.

6.今後の課題

今回の調査・分析結果より,太田川の一部の区間において,異なる構造の遺伝情報を有している集団が存 在することが明らかとなり,本手法により,客観的に河川横断構造物の魚類移動環境を判断することができ る可能性が示唆された.現在,複数年の調査や分析手法の再現性の検証や無堤区間とのデータ比較等を実施 しているところであり,引き続き検討を進める予定である.

また,研究成果を随時公表するとともに,今年度内を目途に,河川技術者が遺伝情報を活用する手引書を 作成する予定としている.

参考文献

1)河川におけるDNA多型分析技術の活用事例集, DNA多型分析応用技術研究会・(財)リバーフロント整備センター, 2010

2)遺伝情報を用いた魚道機能の検証,村岡敬子・須藤勇二・ 川辺明子・ 中村和正・ 三輪準二,応用生態工学会第14回研究

発表会,2010

3)遺伝情報を活用した河川事業に関する評価法の研究,山原康嗣・増本育子・中辻崇浩・太田宗宏・村岡敬子,第65回土木

学会中国支部研究発表会,2013

4)Department of Human Genetics University of Chicago and Department of Statistics University of Oxford,USA 図-3 遺伝的集団構造解析(カワムツ)

図-4 遺伝的集団構造解析(カワヨシノボリ)

参照

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