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矢部川橋梁における主塔の合理化施工

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Academic year: 2022

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矢部川橋梁における主塔の合理化施工

荒巻武文 1 ・瓜生正樹 1 ・岡部成行 2 ・山上利昭 2 ・村上直義 1 ・大野寛太 1

1正会員 三井住友・ピーエス三菱特定建設工事共同企業体(〒

839-0211

福岡県みやま市高田町徳島

640-5

2三井住友・ピーエス三菱特定建設工事共同企業体(〒839-0211 福岡県みやま市高田町徳島640-5)

矢部川橋梁は,地域高規格道路として整備されている有明海沿岸道路のうち,1級河川矢部川を渡河す る橋長517m,最大支間長261mのPC3径間連続斜張橋である.本橋は,長大斜張橋としては稀な曲線橋,

逆台形3室箱桁断面の主桁構造,傾斜を有する逆

Y

型の主塔構造,大規模地震対応のダンパー・ストッパー 構造などの特徴がある.

本稿は,矢部川橋梁の概要を紹介するとともに,複雑な形状の主塔構造を合理的に建設するためにP1 主塔で実施した架設工法や施工時の工夫点について報告するものである.

キーワード :PC斜張橋,逆Y型主塔,SSUP工法,鋼殻構造,合理化施工

1.橋梁概要

矢部川橋梁の全体一般図を図-1 ,工事概要を表-1 に示す.全体構造は,橋長517m,支間長126m+261 m+126mのPC3径間連続斜張橋である.構造的な

特徴としてはR=1,150mの曲線桁を有する1面吊り 斜張橋で,ファン型の斜材形式(図-1 (a)),頂部で 偏心傾斜する逆Y型の主塔(図-1 (b)),斜めウェブ の3室1主箱桁の主桁断面形状(図-1 (C))などで ある.

126000 2000

7300014500

7300014500

13300 13200

261000 261000 128000

PC3径間連続斜張橋 橋長=517000 126000

2000

128000

45 87500 1450073000

5964 17500

6252

80006000500

5218

39000

4100

315002500

5352 5425

40493

20200

3400 600 8500

20200

200 2%~3%

200 3400 4000 5000 4000 600 8500 2000

3200

図-1

全体一般図 (a)側面図

(b)主塔正面図

(c)主桁断面図

(2)

上部工工事は,主桁の中央径間閉合部を工区境と し,2つの工区で実施されている1)

施工順序は,4ステップから構成され,STEP-1では 橋脚・主塔分岐部・柱頭部の施工,STEP-2では,主塔 頂部・移動作業車組立,STEP-3ではブロック長8mの主 桁・斜材の張出し施工,STEP-4では中央閉合部・全斜 材張力調整という内容である.図-2 に施工順序図を 示す.

架設工法としては,橋脚で総足場工法,主塔分岐 部で自己上昇式吊りステージ工法,主塔頂部で総足 場工法,主桁部で張出架設工法を採用している.

2.主塔構造の概要

主塔構造は,分岐部と頂部で構成されている逆Y 型構造である.図-3 に主塔構造図を示す.特に主塔 頂部は,R=1,150mの平面曲線を有した曲線桁に起因 する水平力を低減させるため,頂部をe=1.2m偏心さ せる構造的な特徴を有している.また,主塔頂部の 斜材定着構造は,分離固定式の鋼殻構造2)を採用して おり,鋼殻をコンクリートで巻き立てる合成構造と なっている.

3.主塔分岐部の合理化施工

主塔分岐部は,逆Y型構造の2本柱部の高さ39m の部位で,中空断面構造を有している.逆Y型構造 や高さ39mの施工規模から以下に記す施工的課題が

A1 P1 P2 A2

④中央閉合部施工・全斜材張力調整

A1 P1 P2 A2

③主桁張出し施工(ブロック長8m)・側径間部は地上支保工により先行施工

A1 P1 P2 A2

②主塔頂部施工・移動式作業車組立

A1 P1 P2 A2

①橋脚・主塔分岐部・柱頭部の施工

橋長=517000 126000

2000 261000 126000 2000

第1工区 第2工区

図-2 施工順序図 STEP-1 橋脚・主塔分岐部・柱頭部の施工

第1工区 第2工区

A1 P1 P2 A2

STEP-2 主塔頂部施工・移動式作業車組立

STEP-3 主桁張出し施工・側径間支保工部施工

STEP-4 中央閉合部施工・全斜材張力調整

A1 P1 P2 A2

A1 P1 P2 A2

A1 P1 P2 A2

道路規格 第1種 第3級 設計荷重 B活荷重

構造形式 PC3径間連続斜張橋 橋 長 517.000m

支間長 126.000+261.000+126.000m 幅 員 有効幅員19.000m,総幅員20.200m 縦断勾配 +3.5%~-3.5%

横断勾配 3.0%~2.0%

平面線形 R=1150~A=500

【橋脚】総足場工法

【主塔】自己上昇式吊りステージ工法(P1)

【主桁】張出架設工法 架設工法

表-1 工事概要

曲線桁に起因する水平力 ケーソン基礎

ニューマチック

主塔(頂部)主塔(分岐部)橋脚

主桁(柱頭部)

34.0m 39.0m 14.5m

図-3 主塔構造図

主塔結合部 偏心量 1.2m

CL

(曲線内側) (曲線外側)

3600

中空部

5500

1900 4100

橋軸

1400 2461 2059

4520

5500 3600

鋼殻

100022502250

A A

B B

(c)分岐部断面図(B-B) (b)頂部断面図(A-A)

(a)主塔正面図

(3)

あった.

①施工位置が上方に行くに従い変化すること.

②主桁施工が主塔施工完了後となるため,工程短 縮の必要性があったこと.

③主塔結合部の躯体形状は曲率の小さい円弧状で あり,狭い空間での型枠組立・解体作業となるこ と.

などである.したがって,それそれの課題に対して 次に示す施工の合理化を図った.

(1)自己上昇式吊りステージ工法(SSUP工法)

自己上昇式吊りステージ工法3)(以下,SSUP工 法という)は,①ガーダー,②ブラケット・油圧ジャ ッキ(100t)・PC鋼棒(φ36)による吊り装置,③大型 型枠パネル,④ステージ,から構成され,既設コン クリート部から吊り装置,ガーダーを介して大型型 枠パネル,ステージを搭載した構造のものとなって いる.写真-1 に施工状況,図-4 にSSUP工法構 造図を示す.

鉛直及び水平方向の移動は,ブラケット上の油圧

ジャッキ(100t)(写真-2 ),ステージの横梁に取り 付けられているチルタンク(写真-3 )により行う.

ステージ上の大型型枠パネルと作業足場が,上昇・

スライドを同時に行うことにより,躯体に追随して 移動することができる.

また,作業足場は,上階,中階,下階の3層の施 写真-1

施工状況

チルタンク ガーダー

ステージ

写真-3

チルタンク

ブラケット 油圧ジャッキ(100t)

PC 鋼棒φ36

写真-2 吊り装置

SSUP工法:施工サイクル

1. 60 0

中階:型枠組立・CON 上階:鉄筋組立作業

下階:脱枠・ケレン作業

図-4 SSUP工法構造図

①ガーダー

②吊り装置 チルタンク

④ステージ

③大型型枠パネル

PC 鋼棒φ36 上昇

スライド スライド

作業足場 ③大型型枠パネル

(4)

図-5

主塔型枠構造

骨 組 み フ レ ー ム ( □ 100× 100 ) ス リ ッ ト 部   メ タ ル 加 工 型 枠

セ パ レ ー タ ー 4 分 ctc60 0

調 整 枠

5,500mm

側面(R加工形状) FRP合成樹脂仕上げ

内面型枠(FRP仕上げ) 4,500mm

正面型枠(FRP仕上げ) 3,100mm

3,100

工ステージから構成され,鉄筋組立作業,型枠組立・

コンクリート打設作業,脱枠・ケレン作業を同時に行 うことにより省力化を図っている.

(2)大型型枠パネル

主塔分岐部の躯体形状は,曲線形状であり,かつ 中央部に切り欠きを有している.施工高さ4.0mの型 枠は工程短縮と省力化を目的としてFRP型枠合板 と骨組フレームによる大型パネル構造とした(写真 -4 ).大型型枠パネルは,ステージから油圧ジャッ キを取り付けたサポート鋼管により支持され,油圧 ジャッキを調整することによりパネルの開閉を行い,

型枠をセットする.図-5 に主塔型枠構造を示す.

(3)アーチ型枠

主塔結合部においては,R=1.9mのアーチ型形状で あり,円弧状の型枠と支保工が必要である.また,

作業空間が狭いため,支保工材の撤去はほぼ手作業 となる.したがって,アーチ型枠の必要な支保工鋼 材が軽量化を図れるようにH型鋼をR加工したアー チセントル構造とし,更に中段にストラットを配置 することにより,非常に軽量な支保工材とすること ができた.また,型枠についてもR加工を施し,支 保工上に乗せ掛ける構造とした(写真-5 ).

4.主塔頂部の合理化施工

主塔頂部は,高さ34mの部位であり,P1主塔では,

1リフト当たりの高さを6mとして分割施工した.本 項目では,主塔頂部のうち,斜材定着部構造に関す る検討内容と施工について報告する.

(1)斜材定着部構造

本橋の斜材定着部構造には,鋼殻構造を採用して いる(図-6 ).鋼殻構造は鋼とコンクリートの合成 構造であり,斜材架設時の水平力は鋼殻で負担し,

鉛直力はスタッドジベルを介して鋼・コンクリート 合成断面で受け持つ構造である.

斜材定着部は,斜材架設時の水平力を全て鋼殻で 受け持つ構造であることから,当初の計画(以下,

従来構造)では,巻立てコンクリートの側面の一部 を斜材張力調整完了後に後施工する手順であった

(図-7 (a)).しかし,この施工手順では,後打ち部 の施工完了まで足場が必要となり,足場解体時期が 大幅に遅れる.また,後打ちコンクリートの収縮ひ びわれ対策が必要となること,鉄筋の機械継手が必 要となること,狭い空間での作業となり作業性が悪 いこと,などといった構造性,施工性でのデメリッ トも想定された.そこで,以上の懸念事項を解決す る方法として,巻立てコンクリートを一括施工する

写真-4 大型型枠パネル 写真-5 主塔結合部アーチ型枠

(5)

ことが可能な構造(以下,採用構造)を考案した(図 -7 (b)).

採用構造では,断面中央に中空部を設けることに より,斜材張力による水平力が鋼殻から直接コンク リートに伝達しない構造とし,コンクリートに発生 する引張応力の低減を図った.発生応力に対しては,

PC鋼材と鉄筋による十分な補強を行うこととした.

(3)FEM解析による照査

斜材定着部コンクリートを一括施工することによ って斜材張力による水平力がコンクリートに伝達す ることが考えられるため,3次元FEM解析による コンクリートの応力照査を行い,補強鋼材量を算定 した.また,斜材張力による発生応力に加えて,水

和熱と乾燥収縮による発生応力についても考慮した.

斜材張力による応力算出用の解析モデルを図-8 に示す.水和熱と乾燥収縮による応力算出用の解析

(温度応力解析)は,施工リフト割りと材令差を考 慮したモデルとした.

FEM解析を行った結果,コンクリート応力が引 張強度を越える範囲に対しては,PC鋼材(1S28.6)

を450~900mm間隔で配置し,残留する引張力に対し ては引張鉄筋を配置した.

(4)検討結果

表-2 に従来構造と採用構造の比較表を示す.従来 構造は,斜材張力に対する補強を必要としないが,

後打ちコンクリートの収縮ひび割れ対策として,膨 張コンクリートや補強鉄筋が必要となる.一方,採 用構造は,斜材張力や水和熱などによりコンクリー トに引張応力が発生するため,従来構造よりも補強

4. 5m 10. 0m

(下端拘束)

斜材張力

対称面 対称面

着目断面 橋軸方向

図-8 FEM解析モデル

S01 S02 S03 S04 S05 S06 S07 S08 S09 S10 S11 S12 S13 S14 S15

430070014@1500=21000定着間隔

26000 1675182515@1500=22500

1800 1600 30 30

3600 3540

30 3540 30 3600

1500

鋼殻(板厚50mm) 定着桁

スタッドジベル

図-6 鋼殻構造図

5500 225010002250 700

800

1400 4070 3070

500 500

100100 5500 225010002250

4070

500 3070 500

450 1400 450

A A

斜材張力調整後に後打ち コンクリートを施工する

コンクリートを 一括施工する 後打ち部

A-A断面(最小幅部)

中空部

A-A断面(最小幅部)

A A

(a)従来構造 (b)採用構造

図-7 従来構造と採用構造の概要

(6)

鋼材量が多くなるが,施工性や経済性の面において 従来構造よりも優位であると判断された.したがっ て,P1主塔では一括施工法が可能な本構造を採用 した.

(5)施工概要

鋼殻は,製作完了時に工場にて仮組み検査を行い,

製作精度を確認した.また,現場においても平面位 置の確認,据付高さの確認を行い,許容誤差±5mm 以内で管理した.

鋼殻側面の中空部型枠には,施工の簡略化を目的 として発泡スチロール製の埋設型枠を使用した.発 泡型枠は鋼殻を設置した後,現場で積み重ね,ボル トにより固定した(写真-6 ).また,補強PC鋼材に はプレグラウト鋼材を使用した.

平成20年6月現在,P1主塔の施工は完了しており,

斜材は,全15斜材のうち第12斜材まで架設している.

5.まとめ

SSUP工法は,本橋のような逆Y型主塔だけで なく,様々な形状の主塔や高橋脚に適用できる架設 工法であり,断面変化に柔軟に対応できることから,

効率的な施工が可能である.また,P1主塔で採用 した斜材定着部構造は,巻立てコンクリートを一括 施工したことで大幅な工程短縮を実現できた.本稿

が今後施工される同種橋梁の計画・施工の参考にな れば幸いである.

参考文献

1)小口浩,久野隆博,荒巻武文,大場義人,中村收志,小林秀

人 : 矢 部 川 橋 梁 の 施 工

,

橋 梁 と 基 礎

,Vol.42,No.3, pp.2-12,2008.

2)

森成顕

,

中山裕昭

,

鈴木正美

,

山田忍

,

春日昭夫

,

水野克彦:新 名 西 橋 の 設 計と 施 工,橋 梁と 基 礎

,Vol.37,No.4,pp.2-9, 2003.

3)大薄孝一,永木卓美,瀬間優,瓜生正樹:鮎の瀬大橋Y型高

橋脚の施工

,

プレストレスコンクリート技術協会

7

回シンポジウム論 文集,pp.621~626,1997.

表-2 従来構造と採用構造の比較表

従来構造 採用構造

概要 斜材張力によるコンクリートの引張応力を抑制するためにコンク リートの一部を全斜材の張力調整完了後に施工する.

コンクリートは各リフト毎に一括施工する.内空部を設けること で斜材張力による引張応力を低減させる.

引張応力に対しては,PC鋼材と鉄筋により補強する.

断面

×PC鋼材を定着するため,定着部の後処理が必要となる.

×後打ち部の空間が狭く,作業性が悪い.

特徴 ×機械継手が必要となる.

×後打ち部の収縮ひび割れ対策が必要となる.

○コンクリート数量が減少する.

×鋼材数量が増加する.

○全断面を一括施工するため,機械継手が不要となる.

○斜材張力に対する補強が必要ない.

×張力調整後に後打ち部を施工するため足場解体が遅れる.

○斜材架設後に主塔足場を解体できる.

5500 22501000 800 700

2250

4070

後打ち部は張力調整後に施工 PC鋼材(1S28.6)

中空部 機械継手

5500 225010002250

4070

450 1400 450

写真-6 中空型枠設置状況

鋼殻

中空型枠

参照

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