「おらんだ正月」の海外展出品と大槻玄漂資料の重文指定の事など
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昨年(平成5年)の9月から12月に、ドイツの ベルリンKおいて「日本とヨーロッパー1543... 1929J展が開催され、早稲田大学図書館の資料が 初めて海外の展覧会に出品された。べ、ルリン・フ ェスティパル公社と日本の文化庁、国際交流基金 の三者の主催で開催されたものである。
出陳資料は、日本からの神戸市立博物館の四都 図・世界図界風(重要文化財)など約200点にヨ ーロッパ各地よりのものを合わせ約700点に上っ た。大学の『芝蘭堂新元会図
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(市川岳山筆)(所 謂おらんだ正月)、『杉田玄白肖像J
(石川大浪筆)、『重訂解体新書』稿本(大槻玄津校訂本)、『同図 編
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(南小柿寧ー模図)が乙れに加わった。乙の 内、 『芝蘭堂新元会図』は、アメ リカのポートラ ンド美術館での企画展 iFloatingWorld Revisi‑ tedJからも出品依頼があり、彼の地と早稲田大 学とは特別の関係があり乙れを受入れた。そのた め、ベルリンでの会期の途中、 II月5日Kポート ランドに貸出す事となり、その立会いと展示の状 況視察を兼ねて私が赴く乙ととなったのである。(二)
ベルリンでの展覧会は、日本とヨーロッパの芸 術、学術上の歴史を絵画、工芸品、陶磁器、漆器、 地図、図書、文書等の展示で、総合的に辿るとい
うスケールの大きな企画であった。現地での評判 は上々で、会場のマルティン・グロピウス館は、
連日参観者で賑わった。乙の建物は、商品陳列館 として建てられたものだったが、先の大戦で荒廃、
近年ようやく修復されたという。位置は、元のベ ルリンの壁K接しており、正面入口Kは、未だ戦
金 子 宏 二 ( 特別資料担当課長)
ボートランド美術館での取付風景。中央が ジヱンキンス氏
られたという記事が地元紙に載った。
出品された四点の資料は、 HollandischeWiss‑
enschaften (新元会図他2点)と DasPortr.at der Edo‑Zeit (玄白像)のコーナーに展示された。後 者は、ヨーロッパの画風の影響を受けた石川大浪 の作品であり、渡辺峯山や椿椿山の作品と共に陳 列されていた。蘭学のコーナーは、 『芝蘭堂新元 会図』や『重訂解体新書』の稿本が光っていたが、
文献資料での構成に苦労した様子が伺えた。乙の 展覧会は、絵画や美術工芸に力点が置かれた印象 があり、文献資料では、蘭学事始や、キリシタン 版を欠いていた乙とが個人的に気になった点であ 禍の跡が生々しく残っていた。 った。
乙の建物に接して、ベルリンの壁博物館があり、
壁のあった時代の遺物や当時を物語る写真ノTネル などが展示され、乙ちらも大勢の人が訪れていた。
なお、私の滞在した11月5日児、 41歳の女性が10 万人目の入館者として、東京迄の往復航空券を贈
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(三)
その後、『芝蘭堂新元会図』は、ポートランド に運ばれ10日から年内一杯同美術館に展示され、
年明け1月に無事返還された。乙の企画は、同美 術館アツア部の主任学芸員D.ジェンキンス氏の
長年の構想を実現したもので、浮世再訪のネーミ ングのとおり浮世絵巻とおして江戸の絢欄たる文 化・芸術を表現したものである。
乙の中で「芝蘭堂新元会図』は、江戸の知識人 の生活風俗を写す資料として展示された。ベルリ
ンでの出陳の都合で、ポートランドには会期の途 中に加えられた。乙の展覧会も地元では評判にな ったもので、私の滞在中もハイスクールの生徒な と、の見学者の途切れる事がなかった程であった。
地元紙に、新たに届いた『芝蘭堂新元会図』の写 真を掲載し、乙の作品は早稲田大学より借用して おり、近く日本の重要文化財に指定される事にな っているから、外国に出品される乙とは今後ない ので、日本の国の外で見るととのできない云々の 説明を加えた報道もされた。
ポートランドは、比較的日本とは近い関係にあ り、日本の企業の進出が盛んな土地のためか、乙 の展示も評判になったのであろう。
(四)
と乙ろで、乙の重文指定については、 93年夏よ り、文化庁文化財保護部美術工芸課の担当官によ る調査が進められていた。文化庁の意向では、大 槻玄海関係資料として、大槻家旧蔵資料の中から、
『芝蘭堂新元会図」等玄漫に直接関係するものを、
重要文化財(歴史資料)1(.指定しうるものである という見解であった。調査および部内の審査は、
3月までに終了し、 4月に文部大臣に答申された。
4月末から5月上旬にかけて、東京国立博物館で 今年の新指定の国宝2件と共に、披露の特別展が 開催された。
歴史資料としての重要文化財の指定は、昭和50 年に文化財保護法の一部改正に伴い定められたも ので、「我が国の歴史上重要な事象又は人物にか んする遺品で歴史的又は系統的lとまとまって伝存 し、学術的価値の高いもの」という指定基準に基 づくものである。
乙れまで近藤重蔵関係資料、大原幽学関係資料、
シーボルト関係資料等70件を越えるものが指定を 受けている。
早稲田大学図書館の洋学文庫のうち、大槻家旧 蔵資料は357部を数える。乙れは、玄海を含む歴 代の資料であり、昭和20年代から30年代にかけて 当時の図書館の第四代館長・岡村千曳先生のご尽
力により館蔵lζ帰したものである。今回の指定は 玄津に関する資料のうち、没年である文政10年ま でに作成されたもの102部169冊・点を対象として いる。
内訳は、次のとおりである。
一、著述稿本類/厚生新編、碗港漫録、重訂解 体新書ほか...一一一一一45部88冊・点 一、文書、記録類/官途要録、載書、 北援集録 ほか・一一‑一一一・・・ ー一一.21部30冊・点 一、書状類/流風余韻、敬'惜帖ほか
..4部14通 一、考証資料類/陸奥田磐水天工橋記、鮫類l乙
関する蘭文ほかー一・一一・ .27部29冊・点 一、詠草類/大槻玄濠詠草ほか...3部3冊・点 一、肖像画類/芝蘭堂新元会図、磐水府君真影、
杉田玄白肖像ほか・・・・・…・・・・・・・・・・・・・5部5幅 おりから、大学の事業として進めている「早稲 田大学蔵資料影印叢書」の刊行は、 10年を経過し 国書篇一、二期l乙次いで今年より洋学篇が開始さ れた。奇しくも大槻玄津等があの「おらんだ正月」
を祝った時から数え、 200年目を迎える年である。
重要文化財に指定された乙ともあり、大学では記 念事業を行なう計画も浮かんでいる。
我々は、偶然乙うした期にめぐり合わせた形で あるが、本館の特徴的コレクション「洋学文庫」
が広く知られる事は嬉しい限りである。
<参考>展覧会カタログ
OJ AP AN UND EUROP A 1543ー 1929 請 求 番 号 未 OTHE FLOA TING WORLD REVISITED, by
Donald J enkins
請求番号 F702.1‑6 なお、ベルリン展のビ、デオテーフ。が作製されてお
り、映像資料担当に収められている。
重文指定目録
。大槻玄産関係資料目録、文化庁文化財保護部美術 工芸課、平成6.3
請 求 番 号 未
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