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日本語における視覚行為名称の語彙体系

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Academic year: 2022

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日本語における視覚行為名称の語彙体系

―― ヴァイスゲルバーの語彙分節構造理論による試み ――

キーワード

視覚行為、語彙体系、語彙分節構造理論(W ortfeld- theorie)、意味特性

1.

はじめに

語彙分節構造(

W ortfeld

)理論は19世紀の言語哲学者フンボルト(

W ilhelm von Humboldt, 1767- 1835)に始まる。その言語観を表す用語としては、言語の

有機体性、エネルゲイア、内的言語形式、世界観、言語の分節性などがある。

石綿・高田(1993:156)は「フンボルトの動的言語観とは、言語というものを できあがった作品としての〈エルゴン〉ではなく、内的な思考の世界を音声と して表出するための絶え間ない精神の活動すなわち、〈エネルゲイア〉であ る」と述べている。フンボルトは言語と精神との緊密な関係を重視して言語は 精神によって形成され、その精神活動の産物が言語に表出される繰り返しの連 続だと動的言語観を主張する。

ヴァイスゲルバー(

Leo Weisgerber, 1899- 1985

)は、フンボルトの動的言語 観を受け継ぎ、中間世界理論を中心に動的言語理論を体系化するようになる。

中間世界理論とは、伝統的に音声形式と事物が直接に結び付いていると思われ ているのに対して、音声形式と外界(事物)との間に介在する精神的な中間世 界の存在を認識することである。即ち、人間の意識の中に存在する精神的中間 世界は母語を中心とする言語的中間世界であり、その中で事物と音声形式がと られるようになる。従って、同一言語を母語にする民族の精神は母語の特性と して発現され、その言語は再び、民族の精神に影響を与え、両者は不可分の密 接な関係にある。

(2)

このような中間世界理論に基づいて、ヴァイスゲルバーは言語を研究するた めの4段階の方法論を設定した。それは、エルゴンとしての言語考察を対象と する文法的方法とエネルゲイアとしての言語考察を対象とする言語学的方法に 分けられている。さらに、文法的方法は形態(Gestalt)中心の考察と内容

(Inhalt)中心の考察、言語学的方法は職能(Leistung)中心の考察と作用

(W irkung)中心の考察とに分けられている。動的言語理論に基づいて行われ る研究分野には語彙論、造語論、品詞論、構文論等があるが、語彙を内容中心 に考察できる方法論が言語研究の4段階の中の、2段階に当たる語彙分節構造 理論である。

福本・寺川訳編(1975:318)は、分節とは「あらゆる言語の本質を示す最も 一般的な、また最も深い特徴である」と述べ、語彙分節構造(W ortfeld)理論 とは「語彙の内容的連続体を、言語に語として存在するいろいろな単位に分類 して発生する語彙の範例であって、これらの単位は内容を区別する単なる特性 によって互いに直接に対立している(同書:324)」としている。W ortfeld は英

語では

W ordfield

、日本語では「語場」と訳されるが、ドイツ語の

Feld

には

学問の「領域」や「分野」の意味があるので、本稿では「語彙分節構造理論」

という用語を使うことにする。

本研究は、ヴァイスゲルバーの語彙分節理論(W ortfeld- theorie)に基づ き、日本語における視覚行為名称に関わる語の各々の意味特性を発見して語彙 体系の解明を試みる。視覚行為名称とは、〈目(感覚器官)+見る動作〉という 基本特性とともに、目を通して感じられる人間の具体的行為を表す名詞であ る。従って、過去を振り返ってみたり未来を予測してみたりするなどの語は目 を通して感じる行為とは認められないので、研究対象には含めない。帰納的結 論ではあるが、視覚行為名称はだれが見るかを中心とする〈主体〉、何を見る かを中心とする〈対象〉、どう見るかを中心とする〈方法〉とに大別される。

語彙体系の解明のためには語彙全体を考察するべきであるが、本研究では視覚 行為名称の全体系を解明するための予備的作業として範囲を限定して〈主体〉、

〈対象〉のみを取り扱うことにする。これを図に表すと図1になる。

(3)

図1 視覚行為名称の体系

〈視覚行為〉

〈主体〉 〈対象〉

〈自分〉 〈他人〉 〈物事〉

〈鑑賞〉 〈非鑑賞〉

2.

先行研究

『分類語彙表』(1964)では、〈1.3.人間活動――精神および行為――〉

の下に〈感覚〉に関わる語彙を取り扱っているが、同書について前田(1975:

67)は「単語が表わし得る意味の世界を分類して、その分類の各項にそれぞれ の単語を配当したもので、類義語などについての配慮はあるにしても単語どう しての意味関係を十分検討して配列したり、分類したものではありません」と 述べている。『日本語大シソーラス――類語検索大辞典』(2003)では、〈5.

人間行動――0459.見る――〉の中で〈視覚〉に関わる語彙の類語同士を取り 扱っているが、これも各々の語の意味を分類したものではない。また、『感覚 表現辞典』(1995)は、感覚の性質や状態に関わる語彙表現の分類なので、人 間の行為とは異なる分野である。以上のように、日本語においては視覚行為名 称の体系に関わる研究はまだ行われていないようである。

そこで、本稿では、ヴァイスゲルバーの語彙分節構造理論に基づいて視覚行 為を表す語の意味の特性を発見することによって、この分野の語彙体系を解明 してみたい。

3.

研究方法

語彙分節構造理論に基づいて語彙を考察するためにはまず主題を決めて語彙 を収集しなければならない。国語辞典によると、視覚とは、「網膜に対する光 の刺激を中枢が受け止めて起る感覚。これによって外界の物の明暗、色、形状 などの知覚が起る」、行為とは、「目的、結果を伴う人間の意識的動作」と説明

(4)

されている。従って、視覚行為とは、〈目(感覚器官)+見る動作〉という特性 とともに、目を通して行われる人間の具体的行為である。視覚行為に関する語 彙資料を網羅的に、効率よく収集するために辞書が用いられる。現在、日本で 一般に広く使われている数多くの優れた国語辞典のうちで外国人研究者として たやすく調べられる最近の小型辞書の中から下記の辞書を用いた。

金田一京助・佐伯梅友・大石初太郎・野村雅昭編(2002年)『新選国語辞典 第8』小学館

上記の辞書を通して関連語彙を調べた結果、約86,000語の収載語の中で〈主 体〉に関わる語が15語、〈対象〉に関わる語は18語あった。この中には現在あ まり使われていない語も含まれているが、本稿ではこれらの33語を全て取り扱 うことにした。

叡覧(えいらん) 梅見(うめみ) 観桜(かんおう)

観菊(かんぎく) 観劇(かんげき) 観月(かんげつ)

観光(かんこう) 観戦(かんせん) 観梅(かんばい)

観覧(かんらん) 貴覧(きらん) 国見(くにみ)

賢察(けんさつ) 見物(けんぶつ) 高覧(こうらん)

御覧(ごらん) 笑覧(しょうらん) 上覧(じょうらん)

清覧(せいらん) 総見(そうけん) 総見物(そうけんぶつ)

尊覧(そんらん) 台覧(たいらん) 他見(たけん)

立ち見(たちみ) 月見(つきみ) 天覧(てんらん)

拝観(はいかん) 拝見(はいけん) 花見(はなみ)

目撃(もくげき) 物見(ものみ) 雪見(ゆきみ)

以上の収集された資料は、辞書の意味記述を中心に個々の語の意味の特性を 分析して記述する。関連語の意味をより明確にするために、下記の4資料を参 照した。

(5)

風間力三(1979)『綴字逆順排列語構成による大言海分類語彙表』富山房 国立国語研究所編(2004)『分類語彙表増補改訂版』大日本図書

鈴木修次・武部良明・水上静夫(1975)『漢和辞典』角川書店

山田俊雄・築島裕・白藤礼幸・奥田勳(1985)『新潮現代国語辞典』新潮 社

以上の辞書の意味を通して発見された意味の特性を分析して記述するに際 し、単語は[ ]、単語のふりがなは( )、意味は「 」、特性は〈 〉、特性 の羅列は+で表し、全体の仕組みは樹型図として図式化する。

4.

〈主体〉に関わる15語

視覚行為名称における〈主体〉は、だれが見るかを中心とする語彙を対象と するが、その下位では見る人の自他を問題とする〈自他〉が関心の対象とな る。

(1)拝見(はいけん)

拝見の意味は、「見ることをへりくだって言う語」であるが、ここでの[へ りくだる]とは「相手を敬い自分を低くする」という意味を持っているので、

意味特性は〈視覚行為+主体+自分+謙譲語〉となる。

(2)拝観(はいかん)

拝観の意味は、「神社や寺院、またはその宝物を見ることのへりくだったま たはあらたまった言い方」で、意味特性は〈視覚行為+主体+自分+謙譲語+

宝物〉となる。

(3)上覧(じょうらん)

上覧の意味は「身分の高い人が見ること」で、意味特性は〈視覚行為+主体

+他人+貴人〉となる。

(6)

(4)台覧(たいらん)

台覧の意味は、「身分の高い人が見ることを尊敬して言う語(文章語)」で、

意味特性は〈視覚行為+主体+他人+貴人+尊敬語+文章語〉となる。

(5)天覧(てんらん)

天覧の意味は、「天皇が見ること」で、意味特性は〈視覚行為+主体+他人

+貴人+天皇〉となる。

(6)叡覧(えいらん)

叡覧の意味は、「天皇がご覧になること(文章語)」であるが、ここで[ご 覧]は〈尊敬〉の特性を表すので、意味特性は〈視覚行為+主体+他人+貴人

+天皇+尊敬語+文章語〉となる

(7)国見(くにみ)

国見の意味は、「天皇などが高い所から国の地勢や人民の生活状態などを見 ること(古語)」で、意味特性は〈視覚行為+主体+他人+貴人+天皇+国民 生活+古語〉となる。

(8)他見(たけん)

他見の意味は、「他人が見ること」で、意味特性は〈視覚行為+主体+他人

+一般人〉となる。

(9)御覧(ごらん)

御覧の意味は、「他人、相手が見ることの尊敬語」で、意味特性は〈視覚行 為+主体+他人+貴人+一般人+尊敬語〉となる。

(10)高覧(こうらん)

(11)貴覧(きらん)

(12)尊覧(そんらん)

高覧・貴覧・尊覧の意味は、共通して「他人、相手が見ることの尊敬語(文

(7)

章語)」で、意味特性は〈視覚行為+主体+他人+貴人+一般人+尊敬語+文 章語〉となる。

(13)笑覧(しょうらん)

笑覧の意味は、「自分の物を人に見てもらうときに使う語」で、意味特性は

〈視覚行為+主体+他人+貴人+一般人+尊敬語+対象+自分の物〉となる。

図2 〈視覚行為+主体〉に関わる語彙の体系

〈視覚行為+主体〉

〈自分〉 〈他人〉

〈謙譲語〉 〈貴人〉 〈一般人〉

[拝見] [上覧] [他見]

〈尊敬語〉

〈宝物〉 〈天皇〉 〈尊敬語+文章語〉 [御覧]

[拝観] [天覧] [台覧]

〈文章語〉

〈尊敬語+文章語〉 [高覧]

〈国民生活〉 [叡覧] [貴覧]

[国見] [尊覧]

〈対象〉 〈方法〉

〈自分の物〉 〈注意深い〉

[笑覧] [賢察]

〈手紙〉

[清覧]

(8)

(14)清覧(せいらん)

清覧の意味は、「人、相手が見ることの尊敬語。手紙に使う(文章語)」で、

意味特性は〈視覚行為+主体+他人+貴人+一般人+尊敬語+対象+自分の物

+手紙+文章語〉となる。

(15)賢察(けんさつ)

賢察の意味は、「人が察することを尊敬して言う語(文章語)」で、意味特性 は〈視覚行為+主体+他人+貴人+一般人+方法+注意深い+尊敬語+文章 語〉となる。

以上のように、〈主体〉分節は、自分と他人を中心とする〈自他〉に分けら れる。〈自分〉は〈謙譲語〉の表現が簡単な様子であるが、〈他人〉は身分と職 位の高い〈貴人〉と〈一般人〉に分けられ、〈貴人〉の下は〈天皇〉に関わる 語彙が発見されている。特に、〈貴人〉と〈一般人〉を取り合わせた〈尊敬 語〉、〈文章語〉の表現が、〈対象〉、〈方法〉による多様な様相を示している。

これを図で表すと、図2のようになる。

5.

〈対象〉に関わる18語

〈対象〉は世の中の森羅万象が関心の対象となる。下位では、物事を楽しん でみる〈鑑賞〉と楽しみがあるとは限らない〈非鑑賞〉が関心の対象となる。

(16)物見(ものみ)

物見の意味は、「物事を見ること」で、意味特性は〈視覚行為+対象+物 事〉となる。

(17)見物(けんぶつ)

見物の意味は、「物事を見てたのしむこと」で、意味特性は〈視覚行為+対 象+物事+鑑賞〉となる。

(9)

(18)観光(かんこう)

観光の意味は、「風景、風物などを見物すること」で、意味特性は〈視覚行 為+対象+物事+鑑賞+景色〉となる。

(19)花見(はなみ)

(20)観桜(かんおう)

花見の意味は、「花、特に桜の花を見てたのしむこと」で、観桜の意味は

「桜を見てたのしむこと」である。従って、花見と観桜の意味特性は共通して

〈視覚行為+対象+物事+鑑賞+景色+花+桜〉となるが、花見は〈和語〉、 観桜は〈漢語〉というそれぞれの特性がある。

(21)梅見(うめみ)

(22)観梅(かんばい)

梅見と観梅の意味は、共通して「梅の花を鑑賞すること」で、意味特性は

〈視覚行為+対象+物事+鑑賞+景色+花+梅〉となるが、梅見は〈和語〉、 観梅は〈漢語〉というそれぞれの特性がある。

(23)観菊(かんぎく)

観菊の意味は、「菊を見てたのしむこと」で、意味特性は〈視覚行為+対象

+物事+鑑賞+景色+花+菊〉となる。

(24)月見(つきみ)

(25)観月(かんげつ)

月見の意味は、「月をながめて鑑賞すること」という意味で、観月の意味は、

「月をながめてたのしむこと」で、意味特性は共通して〈視覚行為+対象+物 事+鑑賞+景色+月〉となるが、月見は〈和語〉、観月は〈漢語〉というそれ ぞれの特性がある。

(26)雪見(ゆきみ)

雪見の意味は、「雪景色をながめてたのしむこと」で、意味特性は〈視覚行

(10)

為+対象+物事+鑑賞+景色+雪〉となる。

(27)観覧(かんらん)

観覧の意味は、「景色、芝居、展示、興行などを見ること」で、意味特性は

〈視覚行為+対象+物事+鑑賞+行事〉となる。

(28)観劇(かんげき)

観劇の意味は、「演劇を見物すること」で、意味特性は〈視覚行為+対象+

物事+鑑賞+行事+演劇〉となる。

(29)立ち見(たちみ)

立ち見の意味は、「芝居を立ったままで見物すること」で、意味特性は〈視 覚行為+対象+物事+鑑賞+行事+芝居+見方+立ち見〉となる。

(30)観戦(かんせん)

観戦の意味は、「競技、試合などを見物すること」で、意味特性は〈視覚行 為+対象+物事+鑑賞+行事+スポーツ〉となる。その外、この語の意味は、

「戦いの状況をながめること」とも理解され、それによる意味特性は、〈視覚 行為+対象+物事+非鑑賞+事件+戦い〉となる。

(31)総見(そうけん)

(32)総見物(そうけんぶつ)

総見と総見物の意味は、共通して「しばいなどを団体で見物すること」で、

意味特性は〈視覚行為+対象+物事+鑑賞+行事+見方+団体〉となるが、総 見は、総見物の略語であると理解される。

(33)目撃(もくげき)

目撃の意味は、「あるできことを見ること」で、意味特性は〈視覚行為+対 象+物事+非鑑賞+事件〉となる。

(11)

以上のように、〈対象〉は世の中の森羅万象が関心の対象となる〈物事〉を 中心に楽しんでみる〈鑑賞〉と楽しみがあるとは限らない〈非鑑賞〉に分けら れる。〈鑑賞〉の下は自然を中心とする〈景色〉と人間の行為を中心とする

〈行事〉に分けられ、〈景色〉の下は〈花〉と〈月〉と〈雪〉が関心の対象と なっている。特に、〈花〉の下は〈桜〉と〈梅〉と〈菊〉のように多様な様子 を示している。〈行事〉は〈演劇〉と〈スポーツ〉に分けられ、〈演劇〉の下は

図3 〈視覚行為+対象〉に関わる語彙の体系

〈視覚行為+対象〉

〈物事〉

[物見]

〈鑑賞〉 〈非鑑賞〉

[見物]

〈事件〉

〈景色〉 〈行事〉 [目撃]

[観光] [観覧]

〈戦い〉

〈花〉 〈月〉 〈雪〉 〈演劇〉 〈スポーツ〉 〈見方〉 [観戦]

[月見] [雪見] [観劇] [観戦] [総見]

[総見物]

〈漢語〉 〈芝居〉

[観月]

〈見方〉

〈桜〉 〈梅〉 〈菊〉 [立ち見]

[花見] [梅見] [観菊]

〈漢語〉 〈漢語〉

[観桜] [観梅]

(12)

〈芝居〉の〈見方〉が多様な様子であるが、〈非鑑賞〉は単調な様子を示して いる。これを図で表すと、図3のようになる。

6.

おわりに

以上、ヴァイスゲルバー(Weisgerber)の語彙分節理論(W ortfeld- theory)

を日本語に応用して、視覚行為名称の中の〈主体〉と〈対象〉を中心に考察し た。本研究を通して、日本語における視覚行為名称に関わる語彙の意味の特性 を発見し、当該分野の語彙体系の解明を試みた。視覚行為名称とは、「目とい う感覚器官を通して存在や形状を感じ、認識する人間の具体的感覚行為」とい う特性を有する分節である。これに関わる語彙を収集して考察することにおい て、個人の主観的な直感を避け、語彙の意味の客観性を保つために辞書の意味 記述のみに従うことにした。帰納的に得られた各々の特性を中心に上位語、下 位語、同位語などの体系の図示を試みた。

図2のように、〈主体〉分節は、〈自分〉の〈謙譲語〉の表現が簡単な様子で あるが、〈他人〉は〈貴人〉と〈一般人〉を取り合わせた〈尊敬語〉、〈文章 語〉の表現が、〈対象〉、〈方法〉による多様な様相を示している。特に、具体 的な主体として発見されたのは〈天皇〉のみである。

図3のように、世の中の森羅万象が関心の対象となる〈対象〉分節は、〈物 事〉を中心に楽しんでみる〈鑑賞〉と楽しみがあるとは限らない〈非鑑賞〉に 分けられる。〈鑑賞〉の下は自然を中心とする〈景色〉と人間の行為を中心と する〈行事〉に分けられ、〈景色〉の下は〈花〉と〈月〉と〈雪〉が関心の対 象となっている。特に、〈花〉の下は〈桜〉と〈梅〉と〈菊〉のように多様な 様子を示している。〈行事〉の下は〈演劇〉と〈スポーツ〉に分けられ、〈演 劇〉の下は〈芝居〉の〈見方〉が多様な様子であるが、〈非鑑賞〉は単調な様 子を示している。

視覚行為名称の分節構造を解明するためには、〈方法〉分節に関する研究が 今後の課題となっている。

〈参考文献〉

石綿敏雄・高田誠(1993)『対照言語学』桜楓社

(13)

今井邦彦(2001)『語用論への招待』大修館書店

風間力三編(1979)『綴字逆順排列語構成による大言海分類語彙』富山房 金田一京助・佐伯梅友・大石初太郎(2002)『新選国語辞典』小学館 金田一春彦(1988)『日本語(上)、(下)』岩波書店

国立国語研究所編(2004)『分類語彙表増補改訂版』大日本図書 国立国語研究所編(1964)『分類語彙表』秀英出版

芝垣哲夫(1986)『言語と文化の構造』創元社

鈴木修次・武部良明・水上静夫(1975)『漢和辞典』角川書店

立川健二・山田広昭(1990)『現代言語論:ソシュール、フロイト、ウィトゲン シュタイン』新曜社

中村明編(1995)『感覚表現辞典』東京堂出版 福田幸夫訳(1994)『母語の言語学』三元社

福本喜之助・寺川央編訳(1975)『現代ドイツ意味理論の源流』大修館書店 福本喜之助訳(1969)『言語と精神形成:精神の世界を構成する力としての言 語』講談社,原著 Weisgerber, L. (1938)Muttersprache und Geistesbildung

福本喜之助(1982)『フンボルトの言語思想とその後世への影響』関西大学出版 部

W . v. フンボルト著・岡田隆平訳(1998)『世界言語学名著選集第5巻 言語と

人間』ゆまに書房

前田富祺(1975)「語彙に体系はあるか」『新日本語講座1現代日本語の単語と文 字』汐文社

森田良行(1984)「学習に役立つ語彙教育」『講座日本語教育』20、早稲田大学語 学教育研究所

山口翼編(2003)『日本語大シソーラス――類語検索大辞典』大修館書店 山田俊雄・築島裕・白藤礼幸・奥田勳(1985)『新潮現代国語辞典』新潮社 Humboldt, W . v. (1979) W erke Band3. Schriften zur Sprachphilosophie. Cott’asche Buchhandlung. Stuttgart.

Ivic, Milka (1970)Trends in Linguistics, Mouton / Co. N. V . Publishers. The Hague.

参照

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