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第5章 内空変位量による収束変位量の予測

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(1)

第5章 内空変位量による収束変位量の予測

5-1 はじめに

飯山トンネルに発生する膨圧の特徴は,発生変位量が予想以上に大きく1,その区間の 特定が難しいことであり,膨圧対策が結果として後手に回るという施工管理上の問題点の 早急な対応策が必要であった.

通常,実施する変位計測の結果を利用して収束(最終)変位量を予測,検討する研究の うち主なものは以下のとおりである.吉川らは,最大変位速度(掘削初期の段階での内空 変位量)から最終変位量をある程度の精度で予測できることを示した2),3).吉田らは,内 空変位測定結果から不連続性岩盤に対する解析プログラムに用いるの解析パラメータの同 定方法について提案している 4).竹林らは,岩種により異なるが内空変位量は地山強度比 と内部摩擦角に依存すると述べている 5).谷本らは初期変位速度から推定した最終変形量 と,地山強度比および支保工荷重との関係を明らかにした 6).大里らは,掘削初期の変位 速度により許容内空変位量の管理値を求め,支保工の断面剛性と内空変位量の関係をノモ グラフに整理することにより支保工の仕様を判定する方法を提案している7)

これらの研究の目的は現場での計測結果,情報等を基にして適当な設計や施工管理のた めの指標を見つけ出すことにあるが,①近年の施工環境は施工管理により高い精度が要求 される,②実際の適用には地山の物性値等の諸数値が必要になる,③簡単に必要な答が得 られないものが多い,④掘削工法の影響を考慮していない,などの問題点が未解決なもの として指摘される.

日本鉄道建設公団において「NATM 設計施工指針」8)が制定され,日本道路公団において は「設計要領第三集第9編トンネル」9)が制定されて,地山分類による支保工選定や施工 の合理化に役立てられているがこれらの「指針」や「要領」が制定された以降に,それら によって定められた計測方法により得られたデータの客観的な分析は少ないようである.

本章では「NATM 設計施工指針」8)における地山等級 Is として分類されている飯山トン ネルの膨圧性泥岩を対象として掘削工法,支保工の仕様,計測方法について留意し,日常 施工管理のために必ず実施する内空変位計測データをていねいに分析することにより,三 次元弾塑性解析による検証とあわせて,計測データを実施工に活用することを目的とした 新たな提案を行うものである10)

なお,本章では膨圧の程度として,新幹線断面における内空変位が約300mm未満で収束

(2)

する新第三紀膨圧性泥岩地山を対象としている.このため,飯山トンネル全6工区のうち,

礫主体の第4紀洪積世小国層をかなりの割合で有する起点方の上倉工区と終点方の板倉工 区を除外し,残りの4工区を検討の対象とした.

5-2 各工区の概要 5-2-1 地質状況

図-5-1に各工区の地層の概要を示す.本論文では掘削工法についても検討しているため 各工区を工区名で呼ぶのではなくベンチ長の長い順序にA,B,C,D工区と呼ぶこととした.

A工区のベンチ長(以下ベンチ長を「BL」と記す)は約50m,B工区はBL=約35m,C工区は BL=約8m,D工区はBL=約4mであり,各工区の地質状況等の特徴11)は以下のとおりである.

図-5-1 地質概要1)

キロ程は 高崎 起点

A工区(新井工区):BL=約50m

および寺泊層からなる.主体となる寺泊層は亀裂質な (1)

地層は新第三系の西山層,椎谷層

比較的強度の大きい砂岩と泥岩との互層と凝灰角礫岩よりなる.ボーリングコアおよび切

(3)

羽付近の岩片による一軸圧縮強度は寺泊層では 13~23N/mm2である.また,土被りは 20~

250m の範囲にあり,平均的な地山強度比は 7 前後となっている.

(2)B工区(東菅沼工区):BL=約35m

地層は新第三系の灰爪層,西山層および椎谷層からなる.主体となる灰爪層は礫岩,砂 岩

区):BL=約8m

,凝灰岩が挟在する.泥岩は主として片理の発達し た

からなる.主体となる灰爪層は礫岩,砂岩,泥岩お よ

る掘削工法と支保の仕様を表-5-1に示す.「NATM 設計施工指針」12)の分

で適用される標準支保パターン Isp13)を基準 と

,泥岩よりなり,薄い亜炭層や凝灰岩層を挟む.砂岩,礫岩は全般に固結度が低い.ボ ーリングコアおよび切羽付近の岩片による一軸圧縮強度は泥質岩で2~9 N/mm2,砂質岩で 0.5~2 N/mm2と岩種による違いが見られる.土被りは40~220mであり,地山強度比は平均 して約2.5である.

(3)C工区(木成工

地層は椎谷層で泥岩を主体とし砂岩

泥岩で片状に割れやすく,割れ目は鏡肌化していることが多い.ボーリングコアおよび 切羽付近の岩片による一軸圧縮強度は,2~12 N/mm2程度であり,湧水はほとんど見られな い.また,土被りは最大で270m,平均すると約200m程度で,地山強度比は0.2~2.5の範囲 にあり膨圧の目安とされている2.0を下回るケースが多い.

(4)D工区(富倉工区):BL=約4m 地層は灰爪層,西山層および椎谷層

び凝灰岩等よりなる.全般に固結度は低く,礫岩,砂岩部には地下水を多く胚胎してい る.椎谷層は泥岩を主体とし高圧の可燃性ガスの胚胎も認められる.ボーリングコア及び 切羽付近の岩片による一軸圧縮強度は 8~15 N/mm2程度である.また,土被りは 200m程度 で地山強度比は最大で 4 程度であり,かなりの区間で 1~2 となる.

5-2-2 施工 各工区におけ

類では A 工区はロングベンチ工法(ベンチ長は約 50m,以下ベンチ長を「BL」と記す),B 工区はショートベンチ工法(BL=約 35m),C工区はミニベンチ工法(BL=約 8m),D工区 は補助ベンチ付き全断面工法(BL=約 4m,以下,補べ全工法と略す)である.

これらのベンチ長は施工状況により若干変化する.

掘削方式は全工区とも機械掘削である.

各工区の支保工の仕様は軟質な第三系泥岩

して設計し,それぞれの工区で使用した鋼製支保工と吹付けコンクリートの組合せは

(4)

表-5-1 工法と支保工の仕様

表-5-2 解析に使用した施工手順

*「1 間」とは,一回の掘削長(鋼製支保工の建て込み間隔)を示す

工法略称 支保工 吹付け

ベンチ長 分類番号 H cm

A-1 125 12.5

A ロング A-2 150 20.0

50 「m」 A-3 200 25.0

ショート B-1 150 20.0

35 「m」 B-2 200 25.0

ミニ C-1 150 20.0

10 「m」 C-2 200 25.0 補べ

5 「m」

工区 支保の仕様

200 25.0 C

B

D 全 D-1

表-5-1に示すとおりである.各工区ともインバートコンクリートを施工する.

下の章で 述

ロックボルトは地山の状況によりその施工本数,打設長を増減した.なお,以

べる収束変位量の予測分析等については議論を単純化するために,ロックボルトの補強 効果はトンネル周囲地山の物性に含まれていると考え,個別の施工パターンの差について は考慮しない14)

(5)

ヤング ポアソ 粘着力 内部摩擦角 単体 降伏応力

仕様 ン比 〔Mpa 〔度〕 重量 Mpa 記事

〔Gpa〕 〔kN/m3

地山-1 完全弾塑性体 0.3 0.3 0.4 20 20.5 165km223m対応 地山物性値 地山-2 完全弾塑性体 0.2 0.3 0.26 16.5 20.5

地山-3 完全弾塑性体 0.5 0.3 0.5 40 20.5

吹付けコンクリート 厚さ250mm 0.68 0.2 9.0 0.0 - (18.0)

鋼製支保工 H200 40 - - - - 235

図-5-2 解析断面 表-5-3 解析に使用する物性値

5-3 分析の方法

用した掘削工法(ベンチ長)とその施工手順である.同表は,いずれ

:200H, 吹付けコンクリート:25cmとし 表

5-3-1 数値解析 表-5-2は解析に使

もA~D工区の実施工を標準化したものである.

支保工の仕様は,各工法とも共通で鋼製支保工

-5-1に示す支保仕様の分類番号のA-3,B-2,C-2,D-1について解析を行った.次に,解析 に使用した地山と支保工の物性値を表-5-3に示す.地山-1の物性値は,第4章において計

(6)

測結果をよく説明できた物性値である.同表に示す地山-2の物性値は地山-1に対しより劣 悪な地山を想定し,地山-3の物性値は地山-1より良好な地山を想定して,定めたものであ る.解析断面として使用したC工区の設計図を図-5-2に示す.

また,支保工の剛性(ヤング率)については,第4章と同様に,計測された岩盤の変位

,飯山トンネルでは上半切羽掘削,鋼製支保工建込,

量である16)

る.変位量は地山状況によって広範にばらつくことから,本研究では必要によりデータの

下量と関係を示した図(二つの変量の関係やばら つ

ベンチ工法(BL=約8m)(C 工

と支保工の軸応力との応答を表現するために,支保工の剛性を「NATM設計施工指針」15 に示された値の1/5としている.

5-3-2 分析に使用したデータ 地山の挙動を正確に把握するために

付けコンクリート施工の後,ただちに計測原点を設置して初期値を計測することとした.

「初期値」はこの結果,全工区において上半切羽離れが1.0m以内で計測されている.

「初期変位速度」は初期値の計測から24時間後の内空変位増加量である.

「収束変位量」は変位量の増加が1月あたり1mm以下になった時の内空変位

各計測値の計測時の上半切羽からの離れはトンネル外径:D(D≒10m)を用いて表現す

取扱いに順序統計量の概念を導入し,中央値,25%調整平均値17)(以下,調整平均値と呼 ぶ)を適用し,また,データの分布範囲として探索的データ解析法18)に用いられる箱型図 を使用した.データは特に記載しない限り収束変位量を用いた.なお,第7章で述べる支 保工の性格が異なる多重支保工19)を施工した区間のデータについては除外している.

5-3-3 内空変位量と天端沈下量の関係 C工区で得られた内空変位量と天端沈

きを調べるための図を以下,「散布図」と呼ぶ)を図-5-3に示す.岩盤状況が劣悪であ るほど天端変位量に対して内空変位量の割合が大きくなるとした鈴木ら20)の研究と同様に,

飯山トンネルでも内空変位量が天端沈下量よりもはるかに大きく計測されている11)ことか ら日常の施工管理には現象が把握しやすい内空変位量を使用している.また,吉川ら2)の 研究においても変位量を内空変位量で表現していることが多く,本論文でもトンネル掘削 時の変位量として内空変位量を用いて議論することとした.

なお,後述する変位量の数値解析結果である図-5-5中のミニ

区)の収束時における天端沈下量の88mm,水平変位量の152mmを図-5-3にプロットする が,解析と計測の結果は概ね一致していると考えてよい.

(7)

図-5-3 天端沈下量と内空変位量(C 工区)

5-4 初期変位量

の予測精度

研究2),3による初期変位速度[mm/日]が,しばしば 利

とする.

量の散 布

5-4-1 収束変位量

収束変位量の予測には吉川らの

用される.しかし,一般にトンネルは地質,施工手順等により掘進速度が変化すること から,初期変位速度を利用して収束変位量を予測した場合には計測時の各計測点と上半切 羽離れが一定とはならない.このため,切羽との離れを0.5D(D≒10m)と固定して,そ の時の内空変位量を初期変位量とし,収束変位量の予測に使用した.

「初期変位量」は,切羽との離れを0.5D(D≒10m)の時の内空変位量

図-5-4 は C 工区における収束変位量と上半切羽との離れにより変化する内空変位 図であり,a)は 24 時間後の内空変位量(初期変位速度),b)は切羽位置と計測位置の 離れが 0.5D の内空変位量(初期変位量),c)は切羽位置との離れが 1D の内空変位量とそ れぞれの収束変位量の関係である.また,表-5-4 は C 工区,D 工区の収束変位量と掘削途 中で発生する内空変位量の相関係数と回帰式の残差の標準偏差,残差の絶対値の変動係数

(同表では変動係数と呼ぶ)である.回帰式による推定値の精度を検討する場合は,散布

(8)

図,相関係数,残差の標準偏差が使用されることが多いが,本研究では実測値の変動の幅 が大きいことから,これらに加えて残差の絶対値の変動係数により回帰式の精度を検討す ることとした.

表-5-4 回帰式の精度

工区名 C工区 D工区

データ数 104 84

初期変位速度 ~ 相関係数 0.785 0.767 残差の標準偏差 39.8 52.6

収束変位量 変動係数 0.969 0.953

初期変位量(0.5D)

~ 相関係数 0.879 0.869

残差の標準偏差 30.8 41.0

収束変位量 変動係数 0.722 0.780

変位量(1.0D) ~ 相関係数 0.902 0.907 残差の標準偏差 27.7 34.6

収束変位量 変動係数 0.702 0.661

表-5-4の諸数値と,図-5-4に示したa)初期変位速度とb)初期変位量とを比較すると,収 束

位量は,中田ら21の指摘と同様に飯山 トンネルにおいても初期変位速度や初期変位量を用いるよりも収束変位量に対する予測精

ンチ長)と変位量の関係

工法(ベンチ長)の関係について数値解 析

変位量の予測にはb)初期変位量を用いるほうが精度が良好であることがわかる.なお,

ここで使用した初期変位速度は計測の取扱いを統一したという点で,従来から使用されて きたものよりも統計上の精度が向上している.

また,図-5-4の c)に示す切羽からの離れ1Dの変

度はよい.これは切羽からの離れが0.5Dよりも1Dのほうが収束変位量に近づくという理由 によるものであるが,施工管理にあたっては計測による情報は可能な限り早期に得られる ことが重要である.

5-4-2 掘削工法(ベ

上半切羽との離れにより変化する変位量と掘削

により検討する.各工法ともに解析で使用する物性値は地山-1を使用した.図-5-5は上 半切羽離れと,水平変位量および天端沈下量の関係である.水平変位量(内空変位量に換 算する時は2倍する)と天端沈下量はともにベンチ長が長くなると収束変位量が増大する が,上半切羽離れが0.5D(約5m)付近での変位量はベンチ長による差がほとんどないとい う結果が得られている.これは上半切羽離れ0.5D付近では各掘削工法はともに上半掘削中 で施工条件がほぼ同一であることによるものと考えられる.同様に,2D(約20m)付近ま

(9)

a)初期変位速度と収束変位量 a)初期変位速度と収束変位量

b) 0.5D時変位量(初期変位量)と収束変位量

c) 1D時変位量と収束変位量

図-5-4 収束変位量 350

y = 2.46 x + 50.48 R2 = 0.62

0 50 100 150 200 250 300

0 20 40 60 80 100

変位速度「mm/日」

 mm」収束変位量「mm

C工区

y = 2.06 x + 30.23 R2 = 0.77

0 50 100 150 200 250 300 350

0 25 50 75 100 125 150

初期変位量(0.5D)「mm」

収束変位量「mm」

C工区

c)変位量(1D)

y = 1.32 x + 31.35 R2 = 0.81

0 50 100 150 200 250 300 350

0 50 100 150 200 250

変位量(1D) 「mm」

収束変位 「m

収束変位量「mm C工区

(10)

図-5-5 変位解析結果

-250 -200 -150 -100 -50 0

水平変位 (mm)

-1 -1 -1 -7 -5 -2

天端沈下量 (mm)

50 25 00 5 0 5 0

0 5 10 15 20

上半切羽からの離れ (m) 補ベ全 ミニ ショート ロング

補べ全 ミニ ショート

水平変位量「mm」

ロング

天端沈下量「mm」

0 20 40 60 80 100

上半切羽からの離れ (m)

拡 大

-200 -150 -100 -50 0

0 5 10 15 20

上半切羽からの離れ (m)

水平変位 (mm)

-150 -125 -100 -7 -50 -25 0

0 20 40 60 80 100

上半切羽からの離れ (m) 天端沈下量 (mm)

補ベ全 補べ全 ミニ ミニ

ショート ショート

ロング ロング

水平変位量「mm」

天端沈下量「mm」 5

(11)

でのショートベンチ工法(BL=約35m)とロングベンチ工法(BL=約50m)の挙動にも差はな いという結果となっている.

5-4-3 初期変位量の性質

図-5-6に示す水平方向応力P,鉛直方向応力Pの一様な2次元応力場に設けられた円孔 を考えると,円孔周辺の変位Uは初期応力を考慮して次式で与えられる2

U=((1+ν)a P/2E){(K+1)+ (3-2ν K-1)cos2θ} 5-(1)

θ=0 の時の変位 Uを内空変位量と仮定し,等価初期地圧の概念を導入して切羽通過後 の変位量だけに限定すれば,切羽進行に伴う変位は次式22)となる.

U= C(1-e-βL /D) 5-(2)

C=0.65(1+ν)a Po{(K+1)+(3-2ν)(K-1)}/E 5-(3)

ここに,Eは地山の変形係数,Kは側圧係数(P/ P),νはポアソン比,aはトンネル半径,

Poは初期地圧,Lは計測点と切羽との離れ,βは切羽の進行に伴う見かけの係数,Dはト ンネル直径である.

ここで 5-(2)式の内空変位量 Uは,トンネル直径 D を 10m,計測点と切羽の離れL=5m

(0.5 D)とすると,初期変位量となり,地山の変形係数,側圧係数,ポアソン比,初期 地圧の関数となる.初期変位量に支保工が与える内圧の効果については,新幹線トンネル の進捗を1ヶ月あたり 80mと仮定し,1ヶ月あたりの稼動日を 22 日間とすれば,掘削開 始から約 0.5D(約 5m)を掘削するのに要する時間は 1.4 日と算出されるが,この時の吹 付けコンクリートおよびロックボルト定着材の強度の発現はまだ十分ではなく,支保工が 変位量に与える影響はさほど大きくないものと考えられる.

また,図-5-5に示すように地山条件が同一であれば,掘削工法(ベンチ長)の初期変位 量に与える影響も小さい.以上により,初期変位量は地山の変形挙動を概ね表す指標と考 えてよいものと思われる.

5-5 収束変位量

5-5-1 変位量の計測結果

A,B,C, D工区の初期変位量と 表-5-5,図-5-7に示す.初期変 位量はA,B,C, D工区の順に大きくなっている.前述のとおり初期変位量は小さいほど地 山は良好であるが,実施工においても各工区の定性的な切羽の観察結果と初期変位量の大

)(

収束変位量の計測結果を

(12)

きさの傾向はよく一致していることを確認した.また,収束変位量も同様にA,B,C, D工 区の順で増加している.図-5-7中の黒丸は調整平均値である.

図-5-6 二次元円孔モデル

5-5-2 掘削工法(ベンチ長)と支保仕様との関係

図-5-8に各工区の初期変位量と収束変位量の散布図を示す.同図および表-5-5をみると 各

等の諸数値をみると,支保工の仕様別に区分したものはA- A-2,B-1について回帰式の予測精度はやや低いが,全体として概ね良好であると考え

る.

は掘削工法(ベンチ長),支保工の仕様,および初期変位量 に

工区(ベンチ長)ごとに初期変位量と収束変位量の回帰式の傾向が異なり,支保工の仕 様によっても異なる回帰式が得られる.表-5-5に示した初期変位量と収束変位量の回帰式 の予測精度に関係する相関係数

1,

てよいものと思われ

ここで,トンネルの変位量

より影響を受けるという仮説をたて,数量化理論第Ⅰ類により収束変位量を検定した.

初期変位量は本来定量的変数であるが,ここでは範囲を定め16段階のカテゴリーに分割し ている.

(13)

図-5-7 初期変位量と収束変位量の計測結果 表-5-5 計測実績

相関係数

工区支保工吹付け 平均 中央値 平均 中央値 R

分類 H cm mm mm mm mm Y~X

409 ー ー ー ー ー ー 0.853 Y=1.52X +50.2

A 工区全体 114 6.4 4.3 3.9 34.9 30.0 28.8 0.872 Y=2.63X +17.5 A-1 125 12.5 39 2.1 2.1 2.0 23.6 22.0 21.6 0.671 Y=8.39X +5.72 A-2 150 20.0 54 6.6 6.2 5.1 33.8 33.0 34.8 0.802 Y=2.99X +14.1 A-3 200 25.0 21 13.9 13.3 12.5 58.8 54.8 55.4 0.851 Y=2.80X +19.8 B 工区全体 107 18.4 16.5 16.2 107.8 95.6 95.1 0.889 Y=4.43X +23.5 B-1 150 20.0 72 15.5 15.2 15.0 92.0 92.2 91.6 0.630 Y=2.00X +61.0 B-2 200 25.0 35 24.2 22.4 22.0 130.8 123.2 115.5 0.929 Y=5.24X +4.14 C 工区全体 104 54.0 53.0 54.0 141.3 143.0 147.2 0.874 Y=2.06X +30.2 C-1 150 200.0 16 40.6 32.0 28.0 128.2 109.2 98.7 0.956 Y=2.54X +25.1 C-2 200 25.0 88 56.7 56.0 56.0 143.7 149.4 152.4 0.868 Y=2.02X +29.8 D-1 工区全体 84 88.5 72.9 68.5 168.0 146.9 140.2 0.869 Y=1.32X +51.0

残差の

工区支保工吹付け 標準 平均 標準偏差 変動係数

分類 H cm 偏差 A B B/A

409 39.12 29.73 28.35 0.954 A 工区全体 114 9.39 7.07 6.12 0.866 A-1 125 12.5 39 7.38 5.49 4.79 0.872 A-2 150 20.0 54 8.99 6.78 5.78 0.853 A-3 200 25.0 21 14.76 11.40 8.99 0.789 B 工区全体 107 24.9 16.52 13.08 0.792 B-1 150 20.0 72 13.34 10.39 7.73 0.744 B-2 200 25.0 35 35.43 20.55 14.44 0.703 C 工区全体 104 30.82 23.73 17.15 0.723 C-1 150 200.0 16 22.58 9.26 6.69 0.722 C-2 200 25.0 88 30.94 23.57 16.90 0.717 D-1 84 40.96 29.04 22.42 0.772

支 保 デー

タ 件数 全 工 区

残差の絶対値 全 工 区

回帰式

初期変位量:X 収束変位量:Y

デー タ

件数 調整平均値mm 支 保

調整平 均値

mm

工区全体

(14)

カテゴリー数量(偏回帰係数)を表-5-6に示す.

外的基準である収束変位量の実測値と予測値の散布図を図-5-9 に示すが,相関係数はr

=0.648 であり分析結果の精度は低い.このような回帰分析の場合,実測値 X と,予測値 Y の回帰式は Y=X となる23)ことが望ましいことから,Y=X からの離れの大きい主なグルー プを同図上に示すと初期変位量が 15mm 程度までの A,B 工区が中心となっている.とくに,

収束変位量の実測値が,20mm から 60mm で予測値が 110mm 付近に分布する〈A-1 0~5mm,

A-2 0~10mm,A-3 0~5mm〉のグループは,データ数は 62 件であり全 409 件のうち,約 15%を占めている.この A-1 0~5mm の,A-1 とは表 5-1 に示す工区と支保の仕様であり,

0~5mm は初期変位量の範囲を示す.これらは計測時の初期変位量が小さく,初期変位量が 大きくなっても収束変位量があまり増加しないものであり,それ以外のデータとは取扱い を別にする必要があるものと考えられる.

図-5-10 は掘削工法(ベンチ長)と支保仕様と初期変位量をアイテムとしたときのアイ テムレンジである.同図では,掘削工法(ベンチ長)と支保工の仕様が収束変位量に与え る影響はほぼ同程度という結果が得られた.

図-5-11 は,基準化されたカテゴリー数量を示しているが,ベンチ長を短くし支保工を 重量化することにより収束変位量は減少し,また初期変位量が大きくなると収束変位量も 増加する結果となっている.

5-5-3 支保工の影響

特殊な場合を除いて地山の挙動は緩み土圧と真の土圧により支配される24).これらの土 圧に対してトンネル壁面の変形を抑制し,あるいは断面内への押し出しを拘束するのが支 保工の役割である.

支保工の仕様と変位量との関係についてその特徴を二つに分類し以下に説明する.

a)収束変位量が比較的小さい場合

支保仕様 A-1(鋼製支保工:125H,吹付けコンクリート:12.5cm )と A-2(鋼製支保 工:150H,吹付けコンクリート:20cm)の初期変位量と収束変位量の散布図を図-5-12と 図-5-13に示す.両図ともに初期変位量と収束変位量の関係はバラツキが大きく,回帰式 の精度は低い.A-1 の初期変位量は最大で約 4mm であり収束変位量は約 50mm である.A-2 の初期変位量は最大で約 15mm であり収束変位量は約 70mm 程度である.

(15)

図-5-8 初期変位量と収束変位量 y = 2.06 x + 30.23

m」 300

R2 = 0.77

0 50 200

初期変位量「mm」

100 150 250

収束変位量「m

350

0 50 100 150

C工区

y = 1.32 x + 51.01 400

500

m」 R2 = 0.75

0 50 100 150 200 250 300 350

0 100

初期変位量「mm」

200

束変位量

「 300

D-1 y = 2.94 x + 16.05

R2 = 0.76

mm」 150

0 50 200

mm

収束「

100

0 10 20 30 40 50 60

初期変位量「 」

変位量

A工区

y = 4.43 x + 23.53 R = 0.79

0 100 150 250 350

収束変位量m 2

50 200 300

初期変位量「mm」

「m」

B工区

0 10 20 30 40 50 60

(16)

<凡例>

B-2 0~10mm B-2:支保仕様の分類番号

(表-5-1 参照)

0~10mm:初期変位量の範囲

図-5-9 実測値と推定値

0 50 100 150 200 250 300 350 400

掘削工法 支保の仕様 初期変位量

アイ

図-5-10 アイテムレンジ

(17)

図-5-11 基準化されたカテゴリー数量

362.5

「mm」 9.   61~70 261.0 82.7

10.  71~80 264.3 86.0

11.  81~90 272.7 94.4

12.  90~100 277.0 98.7

13. 101~125 276.3 98.0

14. 126~150 294.5 116.2

15. 151~200 344.1 165.8

16. 200~ 362.5 184.2

アイテム カテゴリー カテゴリー数量

-100.7

150.4 加重平均 カテゴリー数量基準化された レンジ

-76.6

 1. ロング 6.0 82.6

1. 掘削工法  2. ショート -71.5 5.1

 3.  ミニ -117.4 -40.8

 4.  補助 -144.5 -67.9

1. 125H 0.0 100.7

2. 支保の種別 2. 150H -88.5 12.2 125.6

3. 200H -125.6 -24.9

1.     ~ 5 0.0 -178.3

2.    6~10 110.5 -67.8

3.   11~15 163.1 -15.2

4.   16~20 166.0 -12.3

5.   21~30 193.0 14.7

6.   31~40 228.8 50.5

7.   41~50 259.4 81.1

3. 初期変位量 8.   51~60 251.5 178.3 73.2 表-5-6 偏回帰係数

(18)

y = 8.39 x + 5.73 R

2

= 0.45

0 10 20 30 40 50 60

0 1 2 3 4

初期変位量「mm」

収束変位量「 mm」

A-1

図-5-12 初期変位量と収束変位量(A-1)

y = 2.99 x + 14.09 R2 = 0.64

0 10 20 30 40 50 60 70 80

0 5 10 15 20

初期変位量「mm」

収束変位量「mm」

A-2

図-5-13 初期変位量と収束変位量(A-2)

y = 5.62 x - 45.16 R

2

= 0.76 y = 1.34 x + 31.69

R

2

= 0.17

0 20 40 60 80 100 120 140 160

0 10 20 30

初期変位量「mm」

収束変位量「 mm」

40 15mm 未満 15mm 以上

図-5-14 初期変位量と収束変位量(A-3)

(19)

図-5-14に支保仕様 A-3(鋼製支保工:200H,吹付けコンクリート:25cm)の初期変位 量と収束変位量の散布図を示す.前節のデータの取扱いに従い,初期変位量を 15mm 未満 と 15mm 以上の計測データに分類すると,異なる 2 本の回帰式が得られる.初期変位量が 15mm 未満では初期変位量と収束変位量との間の関連は小さいが,初期変位量が 15mm 以上 のデータでは回帰式の精度は向上すると考えてよい.

支保工の仕様が A-2 と同じ仕様の B-1 について初期変位量と収束変位量の散布図を図- 5-15に示す.15mm 以上のデータの相関係数は r=0.640 と小さいが 2 本の回帰式で表され るという傾向は図-5-14と同じと考えられる.

y = -0.50 x + 90.59 R2 = 0.01

y = 2.43 x + 53.81 R2 = 0.41

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180

0 10 20 30 40

初期変位量「mm」

収束変位量「mm」

15mm未満 15mm以上

図-5-15 初期変位量と収束変位量(B-1)

0 20 40 60 80 100 120

0 5 10 15 20

初期変位量「mm」

収束変位量「mm」

A-1 A-2 A-3 B-1

図-5-16 初期変位量と収束変位量(初期変位量 15mm 未満)

(20)

図-5-16に初期変位量 15mm までの A-1,A-2,A-3,B-1 の初期変位量と収束変位量の散 布図を示す.同図ではバラツキが大きく,支保工の仕様を重量化しても収束変位量が低減

すことは難しいと指摘した25)が,

飯山トンネルの計測結果の分析でも,初期変位量が小さく,初期変位量と収束変位量の関

このようなトンネル特有の現象の解明については,変位量が小さい範囲でも精度良く計 測できる計測システムの開発,今後の計測データの蓄積,それらによる検討が何よりも重 要であると考えている.

b)収束変位量が大きい場合

図-5-17 に支保仕様 C-1(鋼製支保工:150H,吹付けコンクリート:20cm)と C-2(鋼製 支保工:200H,吹付けコンクリート:25cm)の初期変位量と収束変位量の散布図を示す.

最下段には両者の比較のために回帰曲線のみを示す.C 工区のように収束変位量が大きい 場合では初期変位量による収束変位量の回帰式の予測精度は高く,支保工を重量化すると 初期変位量と収束変位量の回帰式の傾きが小さくなる.このことは変位抑制における支保 工の重量化の効果の再確認と,トンネルを変位量で管理しようとする場合には支保工の仕 様の決定に初期変位量が利用できることを示すものと考えられる.

なお,初期変位量は前述のとおり切羽との離れが 0.5D の時の内空変位量であり,掘削 途中の早い段階で得ることの出来る情報であることが特長である.

5-5-4 掘削工法(ベンチ長)

B~D工区の中から支保工の仕様が同一(鋼製支保工:200H,吹き付けコンクリート:

25cm)のB-2,C-2,D-1を選定し,これらの初期変位量と収束変位量の散布図を図-5-18に 示す.同図および表-5-5に示すように初期変位量と収束変位量の回帰式の傾きはB-2(BL=

約35m)が5.24,C-2(BL=約8m)が2.00,D-1(BL=約4m)が1.32である.ベンチ長が短く なると回帰式の傾きは小さくなり,ベンチ長を短くすることが変位の制御に有効であるこ とわかる.ただし,表-5-5中のA工区のA-3(BL=約50m)は傾きが2.80であり,上述の関係 は成立たない.これは,前節で述べたとおりA工区では地層年代が古く,強度が比較的大 する傾向は明らかではない.また,初期変位量と収束変位量の関連が小さいのは前述のと おりである.

中田らは,比較的良好な地山において,支保工が主に地山の緩み防止の役割をする場合 には,支保工の削減が変位量に与える影響を定量的に示

係が弱い地山では,支保工の仕様を変更しても発生する変位量に与える影響は明らかでは ないことを確認した.

(21)

a)支保仕様 C-1

y = 2.54 x + 25.11

2

250 300 350

R = 0.91

0 150 200

0 50 100 150

収束変位量「 mm」

50 100

初期変位量「mm」

C-1

b) 支保仕様 C-2

y = 2.02 x + 29.83 R

2

= 0.75 200

300 350

0 50

m 」 250

100

0 50 100 150

初期変位量「mm」

150

収束変位量「 C-2

c)C-1 とC-2 の回帰曲線

図-5-17 支保工の仕様と収束変位 y = 2.02 x + 29.83 y = 2.54 x + 25.11

200

m 250

0 150 300

初期変位量「mm」

収束変位量「m」

350 C-1

C-2

100 50

0 50 100 150

(22)

きいが亀裂質である寺泊層を主に掘削していることによるものと考えられる.

図-5-19は掘削工法(ベンチ長)を変化させたときの数値解析による初期変位量と収束 変位量の関係であるが,解析に使用する地山物性値は表-5-3に示すように地山-1,地山-2,

地山-3と変化させた.実際の施工では,地山が変化すると支保工の仕様が検討されるが,

この解析では地山物性値の違いが発生する変位量にどのような影響を与えるかを検討の目 的とし,支保工の仕様は地山の物性値に関わらず鋼製支保工:200H,吹付けコンクリー ト:25cmの同一とした.

図-5-18 計測による初期変位量と収束変位量(掘削工法の違い)

y = 5.24x + 4.14 R2 = 0.86 100

200 300 400 500

0 50 100 150 200 250 初期変位量「mm」

収束m

0

300 350

変位量「m」

y = 2.02 x + 29.8 R2 = 0.75

0 100 200 300 400 500

50 100 150 200 250 300 350 初期変位量「mm」

収束変位量「mm」

B-2 C-2

0

y = 1.32x + 51.0 R2 = 0.76

0 100 200 300 400 500

0 50 100 150 200 初期変位量「mm」

収束変位量「mm」

D 1-

250 300 350

(23)

同図では,図-5-18で得られた計測結果の傾向と同様に,ベンチ長が短くなると回帰式 の傾きが小さくなる結果が得られた.なお,図中の太線は図-5-18に示すB-2,C-2,D-1の 計測結果による回帰式を再掲したものである.

5-5-5 5節のまとめ

前節までの検討の結果,収束変位量が比較的小さい場合を除いて,支保工の重量化とベ ンチ長の短縮は変位量の抑制に有効であることが明らかになった.

通常のトンネル掘削では,変位量が増大するとそれに対応するために支保工を重量化す ることが一般的である.これは実用的でわかりやすい方法であるが,もっと自由にベンチ 長の変更をしてもよいものと考えられる.

汎用性のある大型の坑内作業用機械の開発により大規模な段取り替えは不要になりつつ あることからも,積極的にベンチ長の短縮を検討することが合理的なトンネル施工を可能 とするものと考えている.

図-5-19 数値解析による初期変位量と収束変位量(掘削工法の違い)

(24)

図-5-20 初期変位量の 95%信頼区間

6 施工管理

次に,変 工選定

手順について述べる.トンネル掘削の目的は掘削断面の内側に設計断面(建築限界)を 確

る.

有と思われる問題点に対して,飯山トンネルでは,掘削時に許容

工区(ミニベンチ工 法

は逆に,収束変位量が初期変位量を決めてい る

Sg<Y<Y0+t(n-2,0.05)×Sg 5-(4) 5-

位量が大きい膨圧性泥質岩地山においてトンネルを掘削する場合の支保 の

保することにあるが,この掘削断面の決定に必要な変形余裕量と施工上必要な余掘り量 の設定や施工時における支保工の仕様の変更等,掘削における判断は設計技術者,現場技 術者の経験的知見による部分が多いように思われ

このようなトンネル特

すべき変位量を最初に設定し,それを基準として支保工の仕様を調節するという簡明な掘 削管理方式によりトンネルに発生する変位を制御することとした. C

)の計測結果を使用して支保仕様の選定の方法を述べる.支保仕様 C-1(鋼製支保工:

150H,吹付けコンクリート:20cm)と支保仕様 C-2(鋼製支保工:200H,吹付けコンクリ ート:25cm)の計測結果について,今までと

ものとして回帰式を求め,さらに下式 26)により目的変量 Y(初期変位量)の 95%の信頼 区間を求める.

Y0-t(n-2,0.05)×

(25)

5-(4)式において Y0は点予測で得られた Y の推定値,nはサンプル数,t(n-2,0.05)は t 分 布関数,Sg は予測値の不偏分散である.

図-5-20は支保仕様 C-1 と C-2 の収束変位量と初期変位量の回帰式と(4)式によるそれ ぞれの 95%信頼区間を示したものである.同図を利用して支保工の仕様の選定の方法につ いて説明する.

最初に,収束変位量を変形余裕量とする.変形余裕量を 20cm とした掘削断面を計画し 支保仕様 C-1(鋼製支保工 150H,吹付けコンクリート厚 20cm)を採用すると,図中の収束 変位量が 200mm の時の初期変位量 95%信頼区間では初期変位量が約 85mm となる.

すなわち支保仕様 C-1 を使用して初期変位量が約 85mm 未満であれば収束変位量は変形 余裕量 20 cm の範囲内に制御できることとなる.同様に,支保仕様 C-2(鋼製支保工 200H,

吹付けコンクリート厚 25cm)を採用した場合は,初期変位量として約 105mm 未満で支保仕 様 C-2 を使用することにより,変形余裕量 20cm の範囲内に収束変位量を制御できること となる.ただし,初期変位量の約 85mm 未満での支保仕様 C-2 の採用は支保工の仕様とし て軽量な C-1 で変位制御が可能となるため不経済となる.

りである縫返しを極力避けるために,収束変位量を変形余裕量よりも小 さくなるよ

図-5-21 支保工の選定手順

飯山トンネル C 工区において実施した支保工の選定手順を図-5-21に示す.C 工区では 全体として変位量が大きくトンネルの左右の沈下量が異なるケースも多かったことから,

施工の重大な手戻

うに制御することとした.収束変位量は経済性と施工効率とを考慮して 100mm

(26)

未満,100mm から 200mm まで,200mm から 300mm までの三段階とし,それぞれについて変 形余裕量を定め,初期変位量に応じて支保工の仕様を決定した.ただし,収束変位量 10

ともに大きいことから変形余裕量は 30cm とし,支保工の仕様は鋼製支 保

, て計 測値を集積することが最初のステップとなる.次に,地山状況を判断し変位の抑制に寄与

面(建築限界)支障や支保 工の変状等,施工の結果としてその適否が判断される.これに対し,この支保工の仕様の 選定手順は掘削初期の段階で得られる初期変位量を利用して,収束変位量を変形余裕量よ りも小さくなるように制御するために支保工の仕様を決定することが特長である.

この手順は現場技術者にとって簡便であり,適正な変形余裕量と支保工の仕様の軽量化 等,建設費の低減に有益であったものと思われる.

重要な点は初期変位量を用いることによって収束変位量の予測精度が向上するために,

これらの検討を円滑に実施できることである.この結果,トンネルの施工管理が初期変位 量の計測結果に基づいて合理的に実施できるようになると考えている.

5-7 まとめ

飯山トンネルの膨圧性泥質岩地 測により得られる

内空変位量とベンチ長,支保工の仕様の関係について検討した結果をまとめると以下のと お

, 0mm 未満については変位量そのものが小さいため NATM 施工指針8)にしたがい,変形余 裕量を設定せずに掘削時の余掘りの範囲内で対応するものとした.実施工では,初期変位 量と収束変位量が

工 200H,吹付けコンクリート 25cm を使用することが多かった.

初期変位量による収束変位量の予測精度が十分であればこのような手順が可能であるが 通常は「施工基準集」等により掘削工法を決定し,標準設計により安全第一に施工し

する支保工の役割を明確にする必要がある.変形余裕量と支保工の仕様の設定にあたって は,掘削量と支保工の仕様による工事費のバランスに留意して最も効率のよい組み合せを 選定しなければならない.

一般的な計測結果の支保工へのフィードバックは,変位量がほぼ収束した段階で実施さ れることが多い.すなわち,施工された支保工の仕様は設計断

山のトンネル掘削において内空変位計

りである.

(1)収束変位量は切羽との離れが 0.5D(5m)の時の内空変位量である初期変位量を使用 して予測することが適当である.

(2)初期変位量は地山の変形係数,側圧係数,ポアソン比等の関数と考えられる.また

(27)

新幹線断面を使用した三次元弾塑性解析では,ベンチ長が長くなると変位収束時の水 平変位量と天端沈下量はともに増加するが,切羽からの離れが 0.5D(5m)付近で 平変位量と天端沈下量はベンチ長(掘削工法)の影響をほとんど受けない.これらの ことから,初期変位量は地山の変形挙動を概ね示す数値であり「地山」の良い,悪い の目安となる.

(3)初期変位量と収束変位量の回帰曲線は,ベンチ長が変化すると

の水

異なる.ベンチ長が

め変形余裕量を定め収束変位量を変形余裕量よりも小さくな

囲の検討は取り組むべき課題の一つ で

光木香,小幡芳文:北陸新幹線飯山トンネル地質調査最終報告,トンネルと地下,Vol.31,

3-61,2000.

倉俊弘,吉川恵也:NATMのための膨張性泥岩の地山分類,鉄道総研報告,

4) 吉 藤奎吾:トンネル掘削時の内空変位を用いた解析パラ 長くなると回帰曲線の傾きが大きくなり,収束変位量が増大する.

(4)初期変位量が小さく,初期変位量と収束変位量の関係にばらつきが見られ,回帰式 の精度も低い地山では,支保工の仕様と収束変位量の関係は明らかではない.これに 対し,収束変位量が大きくなると支保工の重量化は変位量の抑制に有効であり,支保 工の仕様の決定に初期変位量を利用できる.

(5)以上により,あらかじ

るように制御するための支保工の仕様の選定手順を策定した.

(6)ベンチ長を短くすることはトンネル工法として合理的であることから,対象地山を 特定せずに積極的にベンチ長の短縮を図るべきである.

しかし,本研究で提案した初期変位量は相対的な数値であり上半切羽との離れ,掘削断 面積,および断面形状によっても変化し,その厳密な評価には各機関における今後の計測 果の積み重ねが重要である.また,初期変位量を利用した亀裂の発達した地山における 支保工の作用効果の検討,特に支保工の仕様と適用範

あると考えている.

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(29)

23) 森保文,須賀伸介:モデルの制度と相関係数および標準偏差の関係,農業土木学会論文集,

第 172 号,pp.165-166,1994 年 8 月.

24) 日本鉄道建設公団:NATM 設計施工指針,第 4 編,第 2 条,1996.

)中田雅博,三谷浩二,中川浩二:比較的

25 良好な地山での支保工の役割に関する実験的研究,

26) pp.48-50,岩波書店,1987 年 10 月.

土木学会論文集,No.623/Ⅵ-43,pp.85-95,1999.6 たとえば 久米均,飯塚悦功:回帰分析,I

(30)

第6章 多重支保工法

行す 重支保工法を提案し適用した.

れてい る3).これは,切羽で重量化した支保工を一度に構築できないため,支保工を分割して施 工したものである.しかし,著しい膨圧に遭遇した鍋立山トンネルの切羽では剛性の高い セグメントによる土圧計測を行ったが,その結果から土被り圧に等しい土圧が計測され4) たことから,大きな剛性と耐力を有する支保工は必ずしも経済的ではないと判断された.

また,実際にそれに対応可能な支保部材が用意できない場合も多い.

北川ら2)の提唱した多重支保工法には,以下の特徴がある.

①掘削時に大きな変形余裕量を見込み,一次支保工の設置後の大きな変位と一次支保工 の損傷を容認する.これにより,地圧をある程度解放し二次支保工に作用する荷重の 低減を期待する.

② 一次支保工の内側に二次支保工を施工する.二次支保工の応力を余裕のある状態にす るために,切羽からトンネル直径の3.5倍以上離した位置で二次支保工を施工する.

北川ら2)は多重支保工法の概念を二次元弾塑性解析等を用いて「縫返し」と同じ力学モ デルで説明できるとした.また,より激しい膨圧により一次支保工の段階で内空変位量が 300mmを大幅に越えるような場合は,その対応を別途考慮する必要があるとの課題を挙げ ている.

飯山トンネルでは,富倉工区に引き続き木成工区,板倉工区においても土被りの増加,

地山の強度低下による激しい膨圧を生ずる区間が出現した.地山の総変位量は600mmを超 え,一次支保工は吹付けコンクリートの圧壊,鋼製支保工の座屈や破断など著しい損傷を 受け,二次支保工においてもクラックが発生して,建築限界に支障を生じ,また,坑道を 保持することが困難な状況が予測された.このような厳しい施工状況下にある地山を掘削 するために,多重支保工法の概念をより発展的に明確化し定量的な評価と具体的な適用方 法を確立する必要があった.

本章では,主に木成,板倉工区で発生した膨圧現象と施工結果について分析し,支保を 二重に施工する場合の特有な現象について三次元弾塑性解析を実施して,二次支保工のト 6-1 はじめに

図-5-11に示すように北陸新幹線飯山トンネルは,6工区に分けて施工されているが,先 る富倉工区で発生した膨圧現象に対し北川ら2)は多

支保工を二重に施工する発想は,北陸新幹線朝日トンネル東工区ですでに実践さ

(31)

写真-6-1 鋼製支保工 200H の上半肩部(165km230m 付近)

写真-6-2 上半支保工の根足部(166km960m 付近)

ンネル支保としての役割と効果について明らかにすることにより多重支保工の合理性を述 べ,「多重支保工法の支保の手順」を提案するものである

6-2 施工概要

木成工区は本坑全長L=3,800mで,現在までに掘削工事を完了しているが,新潟寄りの約 800mの区間で顕著な膨圧現象が生じ

5

,また板倉工区は全長3,660mで木成工区と隣接する長 野寄り400mで同様な膨圧に遭遇し,これらの区間のほとんどを多重支保工法により施工し ている.主な地質は,新第三系中新統の椎谷層で,泥岩を主体とし砂岩,凝灰岩が挟在す

(32)

る.泥岩は主として節理の発達した泥岩で層状に割れやすく,割れ目は鏡肌化しているこ とが多い.ボーリングコアおよび切羽付近の岩片による一軸圧縮強度は,2~12Mpa程度で 脆弱部を有しており,湧水はほとんど見られない.また,土被りは最大270mで地山強度比 は0.2~2.5の範囲にあり,膨圧の目安とされている2.06)を下回るケースが多い.

6-2-1 一般区間の変位

一般区間(一次支保工の単独施工)の支保工の変状を写真-6-1,写真-6-2に示す.

鋼製支保工は上半,下半,インバートとも200Hを使用した.吹付けコンクリートは,各 部とも最小厚25cm(繊維補強なし)で施工した.掘削工法はミニベンチカット工法7) ,8), 補助ベンチ付き全断面工法7) ,8)により掘削した.しかし,岩盤の強度が低い脆弱層に遭遇

すると変位量が大 根足部付近

(写真-6-2)さらにインバート部で数多く発生した.このような地山では変位速度が内空 変位で約100mm/日 程度と極めて大きいことが特徴である.

補助工法として長尺ロックボルト,鏡止めボルト,フットパイル等を施工したが,上半 部掘削の段階で支保工の脚部が内空側に押し出され,坑道の安全と内空確保のために縫い 返しを実施する区間が続くこととなった.縫い返し直前での内空変位量最大は約500mm,

縫い返し後も約200mm発生し,上半脚部の沈下量は1000mmを超えた.一次インバートによ る全断面閉合後,変位は少しだけ収束に向かう傾向を見せるが,変位が拘束されることか ら支保工の応力は増加し,それまでなかった,あるいは小さかった変状が顕在化したり大 きくなったりするケースがしばしば見られた.

このように膨圧性地山の掘削工法として従来から有効とされてきた掘削工法,各種の補

助工法による対策では の掘削は困難で

あった.

.最初に変形余裕量を設 し,さらに,施工上必要な上げ越し,広げ越しを含む掘削断面を決定する.ベンチ長は 14mとし,まず上半を2~4m掘削し,続いて下半,一次インバートをそれ ぞ

きくなり,変状が上半の天端,肩部(写真-6-1)および上半

,この椎谷層の泥岩を主体とする膨圧性泥質岩地山

6-2-2 多重支保工法

図-6-1は標準的な多重支保工法の施工手順を示したものである 定

状況に応じて6~

れ2~4mずつ掘削する.その後,全断面にわたり二次支保工を施工する.

図-6-2は代表的な支保パターンと仕様を示したものである.同図の場合,多重支保工を 適用するための掘削のスペースは,半径方向で変形余裕量が40cm(一次30cm+二次10cm:

図面上のみの区分)であり,その内側に二次支保工(鋼製支保工:125H,吹付けコンクリ

(33)

図-6-1 多重支保工法の施工手順

(34)

図-6-2 代表的な支保パターン

ート:12.5cm)相当部分として12.5cmが必要となることから半径方向の合計で52.5cmと なる.

一次支保工の仕様は「NATM設計施工指針8)」における特殊地山を参考として設定した.

吹付けコンクリートは最小厚で管理し,吹付け厚さは25cmとした.吹付けコンクリートに は,クラック発生後の耐力の急激な減少の抑制と落下防止対策を目的として,補強繊維

(ポリプロピレン繊維)を混入している.鋼製支保工は200Hとした.吹付けコンクリート の配合は表-4-1に示すとおりである.また,ロックボルトはトンネルの変形モードが鉛直 方向よりも水平方向が卓越していることから,同図に示すように,L=4.5mを上半脚部付 近と下半に重点的に配置している.一次インバートは当初,早強コンクリートを使用し場 所打ち施工としたが,盤ぶくれにより,その多くが破損したためインバートストラット

(200H)と吹付けコンクリート25cm(補強繊維入り)のパターンに変更した.

二次支保工は一次支保工と比較して支保工を軽量化している.なお,本文における一次,

二次支保工の仕様は特に記載しない限り図-6-2と同一となっている.

6-3 膨圧による支保工の変位

当初,二次支保工は北川ら2)の研究に基づき,その健全性を確保するために切羽から3.

5D(Dはトンネル直径,D =10m)以上離して施工するように計画したが,膨圧の増大によ り一次支保工の変状が著しいものとなった.多重支保工の変位発生状況について,その特

(35)

徴を次の3つの計測事例で説明する.

①図-6-3に示す事例-1は二次支保工を切羽からの離れを4.2D(42m)で施工したもので ある.地山は劣悪で膨圧が発生しているものの,一次支保工の変位は比較的滑らかに 増加しており二次支保工の施工を待たずに上半切羽からの離れが3D(30m)付近で変 位はほぼ収束している.この結果,二次支保工では,ほとんど変位が発生しない.掘 削計画はベンチ長を1Dとし一次インバートの閉合時期は下半切羽との離れが4mとなる 時期とした.

図-6-3 事例-1 (165km170m)

図-6-4 事例-2 (165km251m)

(36)

②事例-1に対し一次支保工の変状が急激に増大し,トンネルの安全を確保する必要から,

による変位の抑制効果が表われている.ただし,この事例では下半の 内空変位量は比較的大きな値(100mm以上)を示し,二次吹付けコンクリートにもクラ ックが発生したため,引き続き三次支保工(125H+吹付けコンクリート厚12.5cm)を 施工して支保の安定を図った.三次支保工の施工時の切羽からの離れは3.3D(33m)

である.事例-2は二次支保工の施工により変位の抑制がうまくいった例である.

③図-6-5に示す事例-3は,より不良化した擾乱帯と呼ばれる地山における計測結果であ る.ベンチ長は0.5Dとし一次インバートは下半の掘削後ただちに閉合する計画とした.

この事例では,事例-2と同様にトンネルの安全確保のために二次支保工の施工を早め,

切羽からの離れを2.0D(20m)に変更したものであるが,吹付けコンクリートの圧壊,

鋼製支保工の座屈や破断など,一次支保工の受けた損傷は著しいものであった.二次 支保工の施工後に変位が収束する傾向がみられたが,切羽の進行に伴い再度,変位が 増加した.留意すべき点は地山を支保すべき二次支保工が機能しなかったことである.

表-6-1 計測実績(内空変位量)

切羽近傍で二次支保工を設置しなければならない状況が度々生ずることとなった.図- 6-4に示す事例-2は,一次支保工の吹付けコンクリートの剥離や鋼製支保工のフランジ の変形等により,二次支保工を上半切羽からの離れが3.5D以上になるまで待たずに1.

1D(11m)で緊急に施工した事例である.一次インバートの施工までの掘削計画は事 例-1と同様である.二次支保工の施工後の内空変位は,変位勾配が明らかに変化して おり二次支保工

事例-1 事例-2 事例-3

165km170m 165km251m 166km936m 初期変位速度 「mm/日」 105 120 120 一次変位量 「mm」 565 494 350

二次変位量 「mm」 24 50 161

収束変位量 「mm」 589 544 511

二次設置時の切羽からの離れ 4.1D 1.1D 2.0D

三次支保工 変位量   4mm

備   考

表-6-1に各事例の計測実績を示す.初期変位速度はいずれも10cm/日を超えている.また,

事例-3の二次変位量はかなり大きい.事例-1~3の一次支保工および二次支保工の支保パ ターンとその仕様は図-6-1に示したとおりであり,ロックボルトの本数に若干の差がある もののほぼ同一と考えて良い.以上のとおり,地山条件が格段に厳しくなる飯山トンネル

(37)

図-6-6 事例-3 (166km936m)

-6

-5

-4

-3

-2

-1

0

0 8/2

0 000000000000

10 8/128/229/19/119/211111/

変 位

( m m )

0

0

0

102030405070120

日) →二次支保設置 補強工 設置)

→一次閉合( →補強ロ

     

1 2 3 4 5 1-2 1-3 2-3 4-5 上半 下半 1次ンハ 2次支保

×

23 45 10/110/1110/20/31 月日

060809

べ日数( →支保 切梁 11/1011/2030-6-4-2020406080100101

切 羽 位 置

( m

゙ル

1 図-6-5 66k36事例-3(1m9m)

参照

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