報告 エココンクリートによる小中学生への環境教育に関する研究 友田
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(2) そこで本研究では,環境教育における「持続可能性」. することによる Win-Win の関係を示す。. の視点の強化と,セメント・コンクリート業界の社会・ 環境貢献性のアピールを目的として,図-3のような流 れで研究を行った。エココンクリート(地球環境への負 荷の低減に寄与するとともに、生態系と調和あるいは共 生を図ることができ、快適な環境を創造するのに有用な コンクリート1))を題材とした環境教育プログラムを, 小中学生を対象として行い,プログラムの参加者や実施 者に対してアンケート調査をした。その結果から,参加 者の意識の変化や実施者への影響などを考察した。また, 環境教育シンポジウムの聴講,エコプロダクツ展への訪 問など,自ら得た実体験をもとに,今後のセメント・コ ンクリート業界における,環境教育の在り方を提案した。. 図-5. 環境教育とセメント・コンクリートの Win-Win の関係. 2. 「ひらめき☆ときめきサイエンス」の実施過程 2.1 エココンクリートを題材とした学習の意義. 環境教育の立場からは,セメント・コンクリートを題. エココンクリートを題材とした学習の意義を,以下の. 材とすることで, 「自然環境の保全」にとどまらない「持. 3 点に示す。. 続可能な開発」の視点を持った教育の機会を創出するこ. (1) 環境教育におけるインパクトの増大. とができる。セメント・コンクリート業界においては,. 環境教育に対する考えを図-4 に示す。. 環境教育プログラムの実施によって,次世代にこの業界 の社会・環境貢献性をアピールできる。このように,環 境教育とセメント・コンクリートの融合を試みることは, 両者の弱点を補い合うことにつながる。 (3) 環境教育による次世代育成と持続可能な社会構築 図-6 に,セメント・コンクリートによる環境教育を 受けた参加者への効果を示す。. 図-4 環境教育に対する考え方 環境教育は単なるきっかけにすぎず,プログラム体験 後に参加者の考え方や行動がどう変化するかが重要で ある。きっかけが参加者にとって印象的であればあるほ どその余韻は長くつづき,その後の行動に大きな影響を およぼすことができる。セメント・コンクリート産業は, 人々が抱くイメージと実際の社会・環境貢献度に大きな 溝がある。そのため,これを利用して環境教育プログラ ムを実施することは,参加者に強いインパクトを与える ことができる。 (2) 環境教育,セメント・コンクリートの Win-Win の. 図-6 セメント・コンクリートによる環境教育の効果. 関係 図-5 に,環境教育とセメント・コンクリートを融合. -1818-. プログラム参加をきっかけに,参加者はセメント・コ.
(3) ンクリートや環境問題に関心をもつ。その後,日常的に. た。. エコ活動に取り組むとともに,大学等でコンクリート工. 2 日目は,1 日目に打設したコンクリートの脱型(写. 学を学び,近い将来,セメント・コンクリート技術者と. 真-3) ,圧縮強度試験のデモンストレーション(写真-. なることが期待できる。環境問題への関心とセメント・. 4)を行った。プログラムの最後には,植栽コンクリー. コンクリートの技術を持ち合わせた人材が,将来的に業. トやコンクリートカヌーなど様々なコンクリートに触. 界をリードすれば,セメント・コンクリート業界が地球. れる時間を設け,建築材料に留まらないコンクリートの. 環境問題の解決に不可欠な存在となる。そして,より高. 多様性を体験してもらった。 (写真-5). 度化したセメント・コンクリート業界の社会・環境貢献. その他,学食体験やクッキータイムなど,さまざまな. 性を後世に伝えていく。これにより,さらに次世代の人. 形態のプログラムを組み合わせることで,参加者が退屈. 材を育成し,業界や社会の持続可能な発展につなげる,. することのないよう,工夫した。. と言った正のスパイラルに持ち込むことがでる。つまり, エココンクリートを題材とした学習は,教育の手法とし て効果的であるとともに,今後,持続可能な社会構築を 続けるうえで,重要な手がかりとなる。 2.2 実施過程 2009 年 8 月 4 日,5 日の 2 日間,立命館大学のびわこ くさつキャンパスにて,“環境にやさしいコンクリート ~エココンクリート~”と題するプログラムを行った。 本プログラムは,独立行政法人日本学術振興会の採択を 受け,「ひらめき☆ときめきサイエンス」事業の一環と. 写真-1 講義. して,本研究室主催で実施した。実施概要を以下に示す。 (1) 参加者 小学生 3 名,中学生 10 名,保護者・同伴者 5 名 (2) プログラム 一連のプログラムの流れを図-7 に示す。. 写真-2 打設. 写真-3 脱型. 図-7 プログラムの流れ 1 日目は,コンクリートに関する基礎知識の導入(写 真-1)に始まり,クイズを交えたエココンクリートの 説明をした後,コンクリートの打設(写真-2)を行っ. -1819-. 写真-4 圧縮強度試験.
(4) 重い 暗い 冷たい 人工的な感じがする 強い 身の回りにたくさんある 軽い 明るい 環境にやさしい 大きなものをつくれる. 写真-5 植栽コンクリート. 未来の素材. (3) 実施体制 プログラムの運営は,本研究室の教員,学生など 15 名. 図-9 コンクリートのイメージ(事後). で行った。参加者と運営スタッフの人数がほぼ同数であ ったため,スタッフには事前に参加者とのコミュニケー. プログラム実施前の参加者が抱くコンクリートに対. ションを密にするよう呼びかけを行った。また,コンク. するイメージは,重い,冷たい,人工的な感じがする,. リートの打設や脱型,強度試験等では,参加者の安全確. といったマイナスイメージの表現が約半数を占めてい. 保を第一に考えて作業を行った。. る。一方,プログラム実施後については,強い,環境に. (4) アンケート調査. やさしい,未来の素材といったプラスイメージの表現が. プログラムの実施による,参加者の意識の変化を知る. 大幅に増えていることがわかる。プログラムの中で,エ. ために,プログラムの最初と最後にそれぞれ,事前アン. ココンクリートを紹介したり,コンクリートの強度試験. ケートと事後アンケートを行った。また,保護者・同伴. を行ったり,コンクリートのユニークな用途を体験した. 者,運営スタッフにも事後アンケートを実施し,プログ. りすることで,参加者がコンクリートのおもしろさや社. ラム実施に伴う参加者以外の意識の変化やプログラム. 会・環境貢献性を実感できたことがうかがえる。. に対する意見も調査した。. (2) 環境問題への関心の変化に対する評価 事後アンケートの中で,「これから,環境のために自. 3. 取り組みの評価. 分でも何かしてみようと思いましたか?」 , 「環境問題に. 3.1 参加者アンケートによる評価. ついて,もっと知りたいと思いましたか?」という問い. 参加者アンケートの一部の結果を取り上げ,考察する。 (1) コンクリートのイメージの変化に対する評価. かけをした。前者は,プログラムに参加したことによっ て,参加者の中に「環境のための行動意識」が芽生えた. プログラム実施前および実施後において,「コンクリ. かどうかを探る設問である。また後者は,プログラムを. ートのイメージにあてはまるものすべてに○をつけて. 通して,参加者の「環境問題への関心」が高まったかど. ください。」という同一の設問をアンケートに取り入れ. うかを問う設問である。それぞれのアンケート結果を,. た。その結果をそれぞれ,図-8 および図-9 に示す。. 表-1 および表-2 に示す。. 重い 暗い 冷たい 人工的な感じがする 強い 身の回りにたくさんある 軽い 明るい 環境にやさしい 大きなものをつくれる 未来の素材. 図-8 コンクリートのイメージ(事前). 表-1 環境のための行動意識 小学生. 中学生. 計. すごく思った. 選択肢. 3. 3. 6. すこし思った. 0. 6. 6. あまり思わなかった. 0. 0. 0. まったく思わなかった. 0. 0. 0. 小学生. 中学生. 計. すごく思った. 2. 3. 5. すこし思った. 1. 6. 7. あまり思わなかった. 0. 0. 0. まったく思わなかった. 0. 0. 0. 表-2 環境問題への関心 選択肢. -1820-.
(5) 表-1 および表-2 より,参加者の全員がプログラム を通して, 「環境のために自分でも何かしてみよう」 , 「環. 7 6 人5 数4 ( 人3 )2 1 0. 境問題についてもっと知りたい」という意識を持ったこ とがわかる。参加者は,社会基盤を支えるコンクリート への興味を深めながら,環境への関心も強化されたと考 えられる。エココンクリートを題材にした本プログラム に参加することで,参加者は「持続可能な開発のための 教育」を受けたといえる。. 小学生. 1. (3) プログラムの実施形態に対する評価. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 中学生. 8. 9 10 11. プログラムNo.. 本プログラムでは,講義から実験に至るまで様々なプ ログラムを組み合わせて行った。ここでは,プログラム の実施形態の違いによって,参加者が受けた印象にどの. 図-11 難しかった・つまらなかったプログラム. ような違いがあるかについて,評価を行う。 事後アンケートにおいて,「プログラムの中で印象に. 図-10 より,参加者の印象に残ったプログラムは,コ. 残ったこと、楽しかったことは何ですか?」 , 「プログラ. ンクリートの打設や強度試験など,自ら体を動かして行. ムの中で難しかったこと、つまらなかったことは何です. うものであることがわかる。また図-11 より,参加者に. か?」という設問を取り入れた。その結果を図-10 およ. とって退屈であったプログラムは,講義形式で行ったも. び図-11 に示す。図中の横軸は,表-3 に示すプログラ. のが中心となっている。小中学生にコンクリートの打設. ム No.と対応している。. や強度試験をさせても喜ばないのではないかと予測し ていたが,実際には参加者のほぼ全員がそれらのプログ. 表-3 プログラム No.一覧 No.. ラムに対し,楽しかったと回答していた。技術士会が, 小学生にトンネル工事現場を見せるプログラムを行っ. プログラム名. た際の参加者アンケートにも,同様の結果がある。2). 1. コンクリートについて知ろう!. 2. エココンクリートってなに?. 3. コンクリートをつくってみよう!. 脱型させると,自分でつくったコンクリートを誇らしげ. 4. 大学のお話. に持ち上げる姿が多く見られた。他ではできない,コン. 5. コンクリートを型からはずそう!. クリートづくりを楽しんでいる様子がうかがえた。この. 6. キャンパスツアー. 7. 学食体験. 8. コンクリートの強さをはかってみよう!. 9. いろいろなコンクリートであそぼう!. 10. クッキータイム. 11. その他. 参加者一人ひとりに圧縮強度試験用の供試体を打設,. ことからも,コンクリートを切り口に小中学生に教育の 機会を与えることは,新鮮でインパクトの強い経験を提 供できることがわかる。 3.2 実施者アンケートによる評価 実施者である,本研究室の教員・学生に対しても事後 アンケートを行った。そのなかで,「小中学生と触れ合 うことで,発見したことや刺激を受けたことはありまし. 9 8 7 人6 数 (5 4 人 )3 2 1 0. 小学生. たか?」という問いに対して,回答者の全員が「あった」. 中学生. と答えている。本研究室では,コンクリート工学を中心 として,各自で様々な研究活動を行っているが,今回の ように小中学生を相手に自分たちの研究内容を紹介す る機会はない。そのため,プログラムを運営するスタッ フ自身にとっても貴重な経験になったと考えられる。 今回はスタッフと参加者の人数がほぼ同数であった ため,スタッフにはなるべく参加者とコミュニケーショ. 1. 2. 3. 4 5 6 7 8 プログラムNo.. 9 10 11. 図-10 印象に残った・楽しかったプログラム. ンをとってもらうように伝えていた。スタッフは各々, 参加者と会話をしながら食事をとったり,移動の際に一 緒に行動したりしていた。このようなスタッフの協力に より,2 日目の最後には参加者とスタッフが親密になり, 多くの笑顔を見ることができた。プログラムを運営する. -1821-.
(6) 側が参加者に積極的に歩み寄ることで,より充実した時. らきかけや情報提供などを工夫しなければならない。ま. 間をつくることが可能だとわかった。. た,可能であれば,小中学校などの教育機関と連携して,. 環境教育は,教育を受ける者だけでなく,教育を提供 する者にとっても多くのことを実感し,学ぶことができ. 定期的に関わっていくことが望ましい。 (2) セメント・コンクリート業界のアピール力. る場であるといえる。. セメント・コンクリート業界は,産業廃棄物の利用技 術など,環境貢献の大きな可能性を秘めながらも,それ. 4. まとめ. を外部へ公表する姿勢が消極的である。2009 年度のエコ. 4.1 エココンクリートによる環境教育の可能性. プロダクツ展に足を運んだが,そのなかでセメント・コ. 本研究では,環境教育における「持続可能性」の視点. ンクリートに関する出展は 1 ブースのみであった。ここ. の強化と,セメント・コンクリート業界の社会・環境貢. では,400 以上もの企業や教育機関,NPO 法人などがブ. 献性のアピールを目的として,エココンクリートを題材. ースを出し,自社の環境技術やサービスを来場者に展示. とした環境教育プログラムを実施した。その前後で参加. していた。来場者は,出展企業の社員や課外学習中の小. 者に対してアンケート調査を行い,その結果得たことを. 中高校生が中心で,一般の親子連れもいた。このような,. 以下の 3 点にまとめる。. 子どもたちを中心とした幅広い世代が集う場で,環境技. (1)エココンクリートを切り口とした小中学生への環. 術や温暖化防止への取り組みなどをアピールすること. 境教育は,実現可能かつ効果的である。コンクリートは,. は,セメント・コンクリート業界の社会・環境貢献性を. 周りに多く存在しながらも,小中学生がその実態を深く. 知ってもらう絶好のチャンスである。また,出展者との. 知る機会は尐ない。参加者からの感想では,「コンクリ. 交流などを通して,他社の取り組みを知ったり,関係者. ートについてもっと知りたくなった」 , 「環境にやさしい. とのつながりを広げたりすることもでき,今後の環境へ. コンクリートを学校の友達にも教えてあげたい」といっ. の取り組みに向けてヒントが得られる可能性もある。ポ. た声があった。このことからも,エココンクリートを題. スターや HP 上での掲載だけでなく,人々が多く集まる. 材とした環境教育プログラムの実施は,参加者にとって. イベントに積極的に参加することが必要である。. 斬新なイメージを与えられる。 (2)プログラムの形態は,講義形式よりも体験型の方. 謝辞. が,参加者の好奇心を刺激しやすい。学校教育における. 本研究の軸となった, 「ひらめき☆ときめきサイエンス」. 環境教育は,講義形式や調べ学習が多く,実際に自分の. の実施にあたり,ご協力をいただいた本研究室の教員,. 体を動かして行う形式はあまりみられない。そのため,. 学生,本学事務職員,エコセメントのパネルや資料等を. 参加者は今回のプログラムにおいても,講義形式よりも. ご提供いただいた太平洋セメント(株)様,(社)コンクリー. 体験型のものに新鮮さを感じ,楽しさを見出したと考え. ト工学協会様に対し,厚く御礼申し上げます。. られる。 (3)環境教育を行うことは,参加者のみならず,実施. 参考文献. 者にとってもよい経験となる。セメントやコンクリート. 1). &eco コンクリートマガジン,pp22-23,2008.5. を専門に扱う研究者や技術者が,企画に携わることがで きれば,セメント・コンクリートの本質を押さえた,よ. 2). 山田伸雄:青年技術士による小学生夏休み自由研究 教室の報告,IPEJ Journal,Vol.20,No.12,pp.30-31,. り効果的な教育が可能である。またその経験は,技術者. 2008.12. としての成長につながり,よりよい環境教育プログラム へと発展させることができる。. 柳橋邦生:エココンクリートの定義と分類,アース. 3). 中塚. 佶,谷川恭雄,吉川弘道,森博嗣:コンクリ. ート工学の教育ツール研究委員会報告,コンクリー 4.2 今後の課題. ト工学年次論文集,Vol.23,No.1,pp29-34,2001. 今後の課題として,以下の 2 点について述べる。. 4). (1) 環境教育プログラム実施後のフォロー体制. 丸太頼一,半田真理子,埴生雅章,杉尾邦江:環境 教育と造園のかかわり,造園雑誌 54(2) ,pp157-163,. 今回は,2 日間のプログラムを行うのみで,実施後の 参加者へのアプローチができずじまいになってしまっ. 1990 5). た。本来教育は,ある程度の期間をもって継続的に行わ れるべきであり,一度のプログラムのみで完成というも のではない。したがって,今回のように学校以外の場で 教育を行う際には,プログラム実施後の参加者へのはた. -1822-. 進士五十八:環境教育の意味と方向,学術の動向, pp42-45,2006.4.
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