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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

     博士( 理学)秋 葉雅温      学位論 文題名

兀 共役系 3 座 配位子をもつ平面 4 配位型白金( n ) 錯体の合成,構造および発光挙動の研究

学位論文内容の要旨

  

遷 移 金 属 錯 体 は一 般 に発 光を 示さ ない 。 これ は金 属イ オ ンに 由来 する

d

軌 道が 無輻 射 失活 の経 路を 容 易に 提供 して しま う ため であ る。し かしながらいくっかの錯体で は発光が観測されており、

その 中 でも 特に 、兀共役系配位子である2,

2

―bipyridineなどのゼ−

diimine

が配位した6配位8面 体構造のRu(lI)やOs(II)錯体では発光挙動が詳 細に研究されている。

  

一 方 、 平 面

4

配 位 型 錯 体 に お い て も 兀 共 役系 配位 子の 配 位し た平 面4配位 型Pt(II)錯 体な どで は 発 光 が 報 告 さ れて お り、 配位 平面 の上 下 に存 在す る空 き 配位 座の 部分 で2つの

PtII

イ オン が直 接 相 互 作 用 す る

Pt‑‑‑Pt

問相 互 作用 のた めに 複雑 な 発光 挙動 を示 す。 こ のよ うな 金属 イ オン が直 接 関 わ る 分 子 間 相 互 作 用 は 、

6

配 位

8

面 体構 造の 錯 体で はみ られ ない も ので あり 、発 光 挙動 に大 きな 影 響を 与え ると いう 点 で非 常に 重要 であ る が、 その 詳細 は 良く わか って いな い 。分子が発光 を示 す 場合 、発 光挙 動は そ の分 子の 電子 構造 を 非常 に敏 感に 反 映す るた め、 これ ら を知る上での 良いプ口ーブとなり 得る。

  

兀共役系配位子が 配位したPt(II)錯体の中でも、2,2 :6 ,2 ‑terpyridine (tpy)が3座キレート 配 位 し た

Pt(tpy)X

型 錯 体 の 発 光 は 多 成 分で 特に 複 雑で ある 。Pt(tpy)X型錯 体の 発光 挙 動に 関す る研 究 は、 取り あげ られ た 錯体 の種 類( すな わ ちXの 異 なる 錯体)も少 なく、また、相互に比較で き得 る デー タの 蓄積 も十 分 には 成さ れて いな い ので 、複 雑な 発 光挙 動の 解明 には 程 遠い状況にあ る。そこで本研究で は、

1

 Pt(tpy)X

型 錯 体 の第

4

配 位座 に配 位し てい る

X

配位 子 を種 々に 変化 させ て 新規 錯体 を合 成

  

し 、 発 光 挙 動 を 比 較 す る 。

2

. 兀共 役系 配 位子を2,6‑bis(benzimidazolyl)pyridine (H2bzimpy)およびその誘 導体に変えて

  

新規

Pt(II)

錯 体を 合 成し 発光 挙動 を調 べ る。

と い う

2

つ の アプ ロー チ で兀 共役 系配 位子 が 配位 した

Pt(II)

錯 体 の分 子問 相互 作 用の 関わ る複 雑 な 発 光 挙 動 の 解 明を 行な った 。前 者 では

d

軌 道の ェネ ルギ ーを 様 々に 変化 させ る こと 、ま た後 者 で は 兀 共 役 系 の

7

お よ び 兀 * 軌 道 の エ ネ ル ギ ー を 変 化 さ せ る こ と を 意 図 し た 。

  

合 成 し た 錯 体 は

7

共 役 系

3

座 配 位 子 と し て

tpy

を 含 む も の が

6

種 類 、

bzimpy

を 含 む も の が

2

種 類 で あ る ( 図

1

) 。こ の うち 、5種 類 の錯 体に つい て は、

X

線単 結 晶構 造解 析を 行 ない 、構 造を 明 ら か に し た 。

180一

(2)

      x

X = CH2N02 ; Il = 1

n

     = CH3COO‑ ;n=l

     〓 CH3CN;n =2  L =Et2NCSS‑  R =H ,Me      = tpa;n =2

(tpa ; tris(2pyridylmethyl)amine)

    Pt(tpy)X 型錯体   Pt2(tPY)2 虹、L )型錯体  Pt(bzimpy)X 型錯体      図1 .本研究で合成した新規Pt(ll) 錯体

  新 た に 合 成 し た 錯 体 に つ い て 発 光 挙 動 を 調 べ た 結 果 、Pt(tpy)錯 体 の 発 光 は 多 成 分 で 複 雑 で あ っ た が 、Pt(bzimpy)錯 体 の 発 光 挙 動 は 比 較 的 単 純 で あ っ た 。 中 で も2,6‑bis(l‑methylbenzimidazol 2‑yl) pyridine  (Me2 bzimpy)が 配 位 し た [Pt(Me2bzimpy)Cil+の 発 光 挙 動 は 最 も 単 純 で 、 希 薄 溶 液 中 、 室 温 で は 分 子 単 独 と し て のMetalto‑Ligand Charge Transfer(MLCT) stateに 由 来 す る 振 動 構 造 を 伴 っ た 発 光 が 単 成 分 で 観 測 さ れ た 。 錯 体 の 濃 度 が 増 加 す る と 分 子 間 相 互 作 用 に よ り 新 た に 生 成 し たMetal‑Metal‑to‑Ligand Charge TransferMMLCTstateか ら の ブ ロ ー ド な 発 光 が 長 波 長 側 に 加 わ り 、2成 分 の 発 光 が 観 測 さ れ た 。 ま た 、 希 薄 溶 液 に お い て も グ ラ ス 溶 液 中 、77Kで は 発 光 は2成 分 で 、 短 波 長 側 に は 分 子 単 独 と し て の3MLCT) 励 起 状 態 に 由 来 す る 発 光 が 、 ま た 長 波 長 側 に は3MMLCT) 励 起 状 態 に 由 来 す る 発 光 が 観 測 さ れ た ( 図2) °

  一 方 、Pttpy) 錯 体 は 室 温 の 溶 液 中 で 発 光

を 示 さ ず 、 希 薄 グ ラ ス 溶 液 中 で 発 光 は 多 成 分  . . ― ―7c わ 複 雑 で あ っ たoPtmX型 単 核 錯 体 の 発MLCI: | | | ; 蓑 mゆ な く と も2成 分 で ‥ ず れ の 錯 体 で も  

最 も 短 波 長 側 に は7匸 共 役 系 配 位 子tpyに 由 来 す るIntraligandILstateの 発 光 が 観 測 さ

れ る 。 さ ら に 長 波 長 側 に は 分 子 単 独 と し て の  ョ 舮 : ! ふ : 二 二二 二二 : :碯 北二 二 二二 二ニ ニ ニニ ユ MLCTstateや 分 子 間 相 互 作 用 に よ り 生 成 し    /. ,

    丶 丶 .

MMLCTstateに 由 来 す る 発 光 が 同 時 に 観  ‐ 、 、 ーp. , 轟

測 さ れ た 。 第 4配 位 座 の X配 位 子 に ニ ト 口 メ 単 独 の 鰭 体  分 子 間 相 互 作 単 独 の 錯 体 チ ル 基 の よ う な 配 位 子 場 の 強 い 配 位 子 が 配 位 す と し て の 状 態 用 の あ る 状 態 と し て の 状 態 る とd軌 道 の 分 裂 が 大 き く な る た め 、MLCT

stateMMLCTstateに 由 来 す る 発 光 極 大 は   2. [PtbzimpyC| 】 ゛ の 分 子 軌 道 短 波 長 側 に シ フ 卜 し て 観 測 さ れ た ( 図3) ゜

[Pt(tpy)OAc]+ [Pt(tpy)(CH2N02)]+

3. Pt(tpy)X型 錯 体の 分子 軌 道     181

dn dz2

』寺 卅

       

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〜〜

(3)

  

兀共役系

3

座配位子が配位した平面4配位型Pt(II)錯体では分子単独の状態としてのIL state や

MLCT state

お よび分子問相互作用により形成 されるMMLCT stateはすべて 発光する励起状 態(emitting state)であり、特にtpyが配位した場合にはこれら励起状態のエネルギー差が小さ いために、多成分からなる複雑な発光を示したものである。一方、pli'aの大きなbzimpyが配位 した場合には、d軌道の分裂が大きく、それぞれのemitting stateのェネルギー差が大きくなる ため、比較 的単純な発光挙動を示したものと解釈される。

182―

(4)

学位論文審査の要旨 主査   教授   佐々木陽一 副 査    教授    中村義男 副査   教授   喜多村   昇 副 査    教授    市川    勝

     学位論文題名

兀共役系3 座配位子をもつ平面4 配位型白金(II )    錯 体 の 合 成 , 構 造 お よ び 発 光 挙 動 の 研 究

   金 属錯体の 発光の研 究は、基 礎的には錯 体の電子 状態、特 に励起状態のそれを詳細に研究 す る手段と して、ま た応用面 では光エネ ルギーの 利用、光 触媒反応の開発などに関連して、

重要である。錯体の発光挙動に関する研究は、これまでルテニウム(II) のトリス(2 ,2 ,。ビピリ ジ ン)錯体 を代表と する六配 位八面体型 錯体を対 象とした ものが多かったが、研究は一段落 し てその 限界も感 じられ、 新たな錯体 系の開拓 がまたれ る状況に あった。 白金 (iD に含 窒素 芳 香 族 配位 子 が配 位 し た錯 体 が発光を 示すこと が見い出 されたの は、 10 年程 前である がそ の 発光挙 動は複雑 で、説得 カのある解 釈は提示 されてい なかった 。これは 、白金 (iD 錯 体が 平 面型の立 体構造を 取り、金 属イオン間 あるいは 配位子間 の相互作用を生じやすいので、そ の 相互作用に伴って電子状態が複雑に変化するため・である。しかし、このことは逆に電子状 態 を相互作 用によっ て制御で き、発光挙 動をもこ れにより 制御出来ることを意味している。

発 光性をい ろいろの 面に応用 するにも、 相互作用 による制 御は望ましい性質と見ることが出 来 る 。 こ の た め 、 白 金 (II) 錯 体 の 複 雑 な 発 光 挙 動 の 解 明 が 待 望 さ れる 状 況に あ っ た。

   本学位論 文は、白 金 (iD 錯体の 配位子の種 類を様々 に変える ことによ って、錯 体の電子 状 態 を制御す るととも に、対イ オンの選択 による固 体状態で の錯体問相互作用の制御、溶媒の 種 類や錯体 濃度変化 による溶 液内での錯 体間相互 作用の制 御、などの手段を駆使して、白金 (iD 錯体の発光挙動に統一的で説得カのある解釈を与えたものである。

   論文の前 半では、 錯体の合 成と、X 線構 造解析に よる固体 構造の解 明が述べ られてい る。

著者はまず、従来発光性白金(II) 錯体の研究の主たる対象であった、三座配位子、2 ,2 ・:6 ,2 ¨,

夕 ーピリジ ン (trpy) を含む 錯体につ いて、その第 4 番目の配位座に異なる配位原子をもつ単座

配 位子を 導入した 新錯体 7 種 を合成した 。この中 には、二 卜口メタ ンが脱プ 口トンし 、炭素

で 配位した 珍しい錯 体も含ま れているが 、この錯 体は単に 発光性錯体としてだけでなく、合

     ー 183 ‑ .

(5)

成化学的にみても価値の高いものである。さらに、本来4 座配位子であるトリス(2 ・ピリジル メチル 1 アミンが、 1 個のピリジル基のみで単座配位した錯体も注目される。この錯体は、

キレート配位可能な非配位部位で他の金属イオンと相互作用できることで、多角的な応用が 期待できるが、この様な錯体合成の発想には独創性があり、白金錯体だけでなく、広く錯体 化 学 全 般 に わ た っ て 適 用 で き る 合 成 化 学 的 示 唆 を 与 え る も の で あ る 。    著者はさらに、三座配位子の叩y の両端のピリジル基をイミダゾリル基に変えた配位子を 合む白金(II) の新錯体を合成しているが、ニの錯体の合成が複雑な発光挙動の解明の決め手 となった。この新錯体の発光は、希薄溶液中では単成分となり、これまであいまいだった孤 立した錯体の発光がはっきりした。これを基準として、高濃度で相互作用をもつ溶液系、な らびに固体状態で相互作用が明らかに存在する系での発光挙動と比較することにより、相互 作用をもつ場合の発光の特徴が明らかとなった。これらの情報をもとにして、従来複雑で問 題点の多かった trpy 白金(II) 錯体の、発光挙動にについても一貫性のある明解な解釈が示され ている。以上の研究によって、白金(iD 錯体の、発光スペクトルの形状、温度依存性、寿命 など、基礎的な情報が、錯体間相互作用の有無、その程度によりどのように変化するかが、

系統的に明かにされた。

   分子間相互作用は、平面型錯体の大きな特徴であるが、これをどのように制御できるかに ついても、合成によるアプ口ーチと、固体、溶液状態での相互作用の考察から指針が示され ている。発光挙動を制御しそれによる発光過程の変化を明かにした意義は大きく、本研究成 果は、平面型錯体の光物理化学的研究、相互作用による発光挙動の制御、触媒反応への応用、

など、平面型錯体の特徴を生かした、基礎的、応用的な研究の展開にも重要な知見を提供す るものである。

   以上のように、本研究では白金(II) 平面型錯体の複雑な発光挙動を明らかにするために、

鍵となる配位子系をもつ錯体を数種類新たに合成し、それらの固体構造をX 線解析により明 かにした上で、発光挙動を詳細に調べたものであり、複雑な発光挙動が錯体間の相互作用の 程度の違いを反映していることが明かにされ、その各発光成分の帰属も明瞭になされている。

本研究は、行きづまっていた感のある白金錯体の発光挙動を系統的に解釈したのみならず、

錯体の光化学の新たな局面を切り開いたものであり、この分野および関連分野へ大きく貢献 するものである。

   よって著者は、北海道大学博士(理学)の学位を授与される資格があるものと認める。

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