博 士 ( 環 境 科 学 ) 王 迅
学位論文題名
Establishment of efficient in vit7‑o culture and particle bombardment ―mediated transfrmationSyStemS intWOWarmSeaSOngraSSSpeCleS ,
朋ゐ C 伽励郷SZ 刀¢刀S ぬand2 ら屮をゾ緲〇刀ZC 口
( スス キ およ び シバ の 2 つの 暖 地型 イ ネ科 草 種に お ける 効 率的 な 組織培養系とパーテイクルボンバードメントによる形質転換系技術の確立)
学位論文内容の要旨
ススキ(Miscanthus sinensis Anderss.)およびシパ(Zoysia japonica Steud.)は日本を始めとして東 ア ジア に 自生 する 暖地 型イ ネ 科植 物(C4植物 )で、特に冷涼な環境下でバ イオマス生産´I生が 高いと ともに低養分要求Jl生、永 続性、土壌への炭素隔離など サステイナプルな生物生産に適し た 優れ た 特性 を持 って いる 。 シパ は広 く放牧 地や芝生に利用され、スス キは近年、エネルギー 資 源作 物 とし て注 目されている。シバでは秋 以降の生育期間拡大や耐寒I生改良などが、ススキ で は高 糖 含量 や低 リグ ニン 含 量に よる バイ オ ェタ ノー ル生 産に 適 する 糖化 効率 の改 良 などが 求 めら れ てい る。 分子 育種 技 術に より これら の遺伝改良が期待されてい る。そこで、本研究で は 、ス ス キお よび シバ にお け る分 子育 種技術 開発の基盤研究として、効 率的な組織培養系とパ ーティクルポンバードメントによる形質転換系技術の確立を図った。
最初 に 、ス スキ の効 率的 な 組織 培養 系技術 を確立するために完熟種子 を外植片に用いて検討 を行っ た。カルス誘導用として、MS基本培地に5mg l‑12,4‐ジク口口フェノキシ酢酸(2,4‑D)、 0.01 mg l‑16‐ベンジルアミノプ リン(BA)の植物ホルモンを 含む培地が、植物体再分化用には、
0.5 mg L‑l BAと0.5 mgし1ナフタレン酢酸(NAA)を含む培地カゞそ捫ぞ捫適していることを明らか に した 。 日本 各地 から 収集 し たス スキ18系 統 を供 試し てエ ンブ リ ジ工 二ッ クカ ルス 形 成率を 調 査し た 。そ の結 果、 カル ス 形成 率は 収集地 点の平均気温との間に有意 な正の相関関係がみら れ 、「 種 子島 」系 統が カル ス 形成 率に 最も優 れていた。一方、植物体再 分化率については、北 海 道か ら 収集 した 「今 金」 系 統が 優れ ていた 。そこで、以下の形質転換 系技術に関する研究で は、この両系統を供試した。
スス キ の形 質転 換系 技術 を 確立 する ため に 、レ ポー ター 遺伝 子 とし て緑 色螢 光夕 ン パク質 ―l180ー
(GFP)遺伝子を用いて最適な実験諸条件を明らかにした。/ヾーティクルポンバードヌント法に よルェンブリオジェニックカルスに遺伝子を撃ち込んだ。撃ち込んだカルスを4〜5日間抗生 物質ハイグ口マイシン(Hm)を含まない培地で培養した後、Hmを含む培地で2回選抜を行った。
一回目の選抜には50 mg L‑1、2回目の選抜には150 mg L‑IのHm濃度が適していた。選抜の結 果、全体にGFPが発色するカルスが得られた。その後、カルスを50 mg L‑l Hmを含む再分化 培地に置床し、GFPが発色するシュートを得ることができた。その後シュートは20 mg L‑1 Hm 含む1/2MS培地で発根し、GFPの形質転換植物体を作出することができた。PCRおよびRT‑I℃R 法で導入遺伝子の存在と発現を確認し、ススキの形質転換系技術を確立することができた。
ススキは光合成同化産物を主としてデンプンに変換して葉緑体に貯蔵するため、フルクタン 合成能カをもたない。そこで、寒地型イネ科牧草のべレニアルライグラスから単離したフルク タン合成酵素遺伝子をススキヘ導入することを検討した。prf11(6‑SFI'遺伝子)、prft3 (6G‑FFr 遺伝子)を組み込んだべクターを構築し、開発した形質転換系技術により、ススキカルスヘの導 入を行った。その結果、それぞ捫の遺伝子について形質転換植物体を得ることができた。これ ら の 植 物 体 で PCRお よ び RTPCR法 で 導 入 遺 伝 子 の 存 在 と 発 現 を 確 認 し た 。 次に、シパにおける効率的な組織培養系技術の確立を検討した。完熟種子から切り出した胚 を外植片として培養するとカルスが短期間で形成され、その形成率が向上した。カルス誘導用 として、MS基本培地に5mgL12,411)、0.2mgL11BAの植物ホルモンを含む培地が、植物体 再分化用としては、O.5mgL11チジアズロン、0.05mgじ1NAA、0.1H1gしlジベレリン酸を含む 培地がそゎぞ捫適していた。8種類のタイプのカルスが形成されたが、フライアブルカルスで 最も植物体再分化率が高かった。今回確立した組織培養系技術はカルス誘導から植物体再分化 までの培養期間を16週間までに短縮することができた。
シバにおける新しい形質転換系技術を確立するために、完熟種子から切り出した胚を数日間 前培養してからパーテイクルポンバードメント法やアグ口パクテリウム法によって形質転換 させる手法を検討した。GFPの発現が細胞で観察され、遺伝子カざ効率よく導入されたことを確 認することができた。カルスの増殖速度の遅いシパにおいては、形質転換植物体作出の期間短 縮に有効であると考えられた。
以上、ススキの効率的な組織培養系とパーティクルポンパードメント法による形質転換系技 術を開発し、フルクタン合成酵素遺伝子を導入したススキ形質転換植物体を作出することがで きた。さらに、シバにおいて培養期間を短縮できる効率的な組織培養技術を確立し、′完熟胚を 前培養して遺伝子導入ずる新しい形質転換技術を開発した。これらの技術開発は、ススキやシ バにおいて分子育種技術により遺伝改良を行う際に、有用な知見になることカ湖待される。
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学位論文審査の要旨
主 査 教 授 山田 敏 彦 副 査 教 授 荒木 肇 副 査 助 教 星野 洋 一郎 副 査 特 任助 教 三輪 京 子
副 査 准 教授 金 澤 章(大 学院農学研 究院)
学位論文題名
Establishment of efficient i71 vitro culture and particle bombardment − mediated transformation systems in two warm season grass specleS ,
A 勿 § C 口 刀 励 勿 SSZ 刀 ¢ 刀 SZSand2 り ゅ 劾 ゾ め 〇 刀 ZC 口 ( ス ス キ お よ びシ バ の2 つ の暖 地 型イ ネ 科草 種 に おけ る 効率 的 な 組織培養系とパーテイクルボンバードメントによる形質転換系技術の確立)
ススキ(Miscanthus sinensis Anderss.)およびり¥(Zoysia japonica Steud.)は日本を始めとして東 アジア に自生 する暖地 型イネ科 植物(C4植物) で、特 に冷涼な 環境下 でバイオマス生産陸が 高いと ともに 低養分要 求I生、永続性、土壌への炭素隔離などサステイナプルな生物生産に適 した優 れた特 性を持っ て1ゝ る。シ バはく放 牧地や 芝生に利 用され、 ススキは近年、エネル ギー資 源作物 として注 目されている。シバでは秋以降の生育期間拡大や耐寒I生改良などが、
ススキ では高 糖含量や 低リグニ ン含量 によるバ イオェタノール生産に適する糖化効率の改良 などが 求めら れている 。分子育 種技術 によりこ れらの遺伝改良が期待されている。そこで、
本研究 では、 ススキお よびシバ におけ る分子育 種技術開発の基盤研究として、効率的な組織 培 養 系 と パ ー テ ィ ク ル ボ ン パ ー ド メ ン ト に よ る 形 質 転 換 系 技 術 の 確 立 を 図 っ た 。 最初に 、スス キの効率 的な組 織培養系 技術を確 立するために完熟種子を外植片に用いて検 討を行った。カルス誘導用として、MS基本培地に5mgl‑12,4‐ジク口口フェノキシ酢酸(2 4‐ D)、0.01mgl‑16‐ ベンジル アミノ プリン(BA)の植物ホルモンを含む培地が、植物体再分化用 には、0.5 mg L‑l BAと0.5mgUlナ フタレン 酢酸(NAA)を含む 培地カ 驚わぞ捫適していること を明ら かにし た。日本 各地から 収集し たススキ18系統を供試してエンブリジェニックカルス 形成率 を調査 した。そ の結果、 カルス 形成率は 収集地点の平均気温との間に有意な正の相関 関係が みられ 、「種子 島」系統 がカル ス形成率 に最も優れていた。一方、植物体再分化率に ついて は、北 海道から 収集した 「今金 」系統が 優れていた。そこで、以下の形質転換系技術
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に関する研究では、この両系統を供試した。
ススキ の形質転 換系技術 を確立 するために、レポーター遺伝子として緑色螢光夕ンパク質 (GFP)遺 伝子を用 いて最適 な実験 諸条件を 明らか にした。 バーティクルポンパードメント法 によりエ ンブリ オジェニ ックカ ルスに遺 伝子を 撃ち込ん だ。撃ち 込んだ カルスを4〜5日間 抗生物質 ハイグ ロマイシ ン(Hm)を含 まない培 地で培 養した後、Hロ1を含む培地で2回選抜を 行った。 一回目 の選抜に は50 mg L‑l、2回目の選抜には150 mg L‑1のHm濃度が適していた。
遷数の結 果、全 体にGFPカ溌色 するカル スカミ 得られた 。その後、カルスを50 mg一1Hmを含 む再分化 培地に 置床し、GFPが 発色する シュー トを得る ことができた。その後シュートは20 mgビlHm含む1/2MS培 地で発 根し、GIヤ の形質 転換植物 体を作 出するこ とができ た。PCRお よて腺T−PCI法で導 入遺伝 子の存在と発現を確認し、ススキの形質転換系技術を確立するこ とができた。
ススキ は光合成 同化産物 を主と してデンプンに変換して葉緑体に貯蔵するため、フルクタ ン合成能 カをも たない。 そこで 、寒地型イネ科牧草のべレニアルライグラスから単離したフ ルクタン合成酵素遺伝子をススキヘ導入することを検討した。pづむ(6‐SF11遺伝・子)、pり留
(6G‐H遺伝子)を組み込んだべクターを構築し、開発した形質転換系技術により、ススキカ ルスヘの 導入を 行った。 その結 果、それぞれの遺伝子について形質転換植物体を得ることが できた。 これら の植物体 でPのくおよ びRT・.Pa法で導入 遺伝子の存在と発現を確認した。
次に、 シバにお ける効率 的な組 織培養系技術の確立を検討した。完熟種子から切り出した 胚を外植 片とし て培養す るとカ ルスが短期間で形成され、その形成率が向上した。カルス誘 導用とし て、MS基 本培地に5mg一12,4‐D、0.2mgじ1BAの植物 ホルモン を含む 培地が、植 物体再分 化用と しては、015mgしlチジ アズロ ン、0.05nlgじlNAA、0.1mgじlジベレリン酸 を含む培 地がそ捫ぞ捫適していた。8種類のタイプのカルスが形成されたが、フライアプンレ カルスで 最も植 物体再分 化率が 高かった。今回確立した組織培養系技術はカルス誘導から植 物体再分化までの培養期間を16週間までに短縮することができた。
シバに おける新 しい形質 転換系 技術を確立するために、完熟種子から切り出した胚を数日 間前培養 してか らバーテ ィクル ボンバードメント法やアグロバクテリウム法によって形質転 換させる 手法を 検討した 。GFPの発現カ 湘胞で 観察され 、遺伝子が効率よく導入されたこと を確認す ること ができた 。カル スの増殖速度の遅いシバにおいては、形質転換植物体作出の 期間短縮に有効であると考えられた。
以上、 ススキの 効率的な 組織培 養系とパーテイクルポンバードメント法による形質転換系 技術を開 発し、 フルクタ ン合成 酵素遺伝子を導入したススキ形質転換植物体を作出すること ができた 。さら に、シバ におい て培養期間を短縮できる効率的な組織培養技術を確立し、完 熟胚を前培養して遺伝子導入する新しい形質転換技術を開発した。.これらの技術開発は、ス スキやシバにおし)て分子育種技術により遺伝改良を行う際に、有用な知見になることが期待 される。 特に、 ススキの 形質転 換系技術に関しては世界で最加の報告で、今後、応用的に利 用価値が非常に高いものである。
審査委 員一同は ,これら の成果 を高く評価し、また研究者として誠実かつ熱心であり、大 学院博士 課程に おける研 鑽や修 得単位な ども合 わせて、 申請者は 博士( ※科学) の学位を 受けるのに充分な資格を有するものと判定した。
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