学 位 論 文 題 名
博 士 ( 農 学 ) 鈴 木 悌 司
森林の景観施業に関する基礎的研究
ーコンピュータグラフイックスによる樹形生成モデノレ―
学位論文内容の要旨
近 1t 、森林の施 業計画を立案 する上で、木+ . 生産と環境保全、さ らに は 景観 に配 慮した 施業技術の確 立が求められて し、る。その 中で 特 に 森 林 の 景 観 施 業 に関 し ては 、 視覚 的評 価 ある い は数 値 情報 の 可 視 化 に 基 づ く 計 画 立 案 手 法 の 開 発 の 重 要 性 が 指 摘 さ れ て い る 。 一 方、 近 年、 建築設計や 都市・計画等 の分野におい てコンピュー タ グラフィックスによる景観シミュレーションカく広く実用イヒされてし、
る 。 コ ン ピ ュ 一 夕 グ ラフ ィ ック ス は一 度デ ー タを 作 成・ 入 カす る こ と に よ り 白 由 な 視 点 から の 画像 表 示が 可能 で ある 。 そこ で 、こ う し た コ ン ピ ュ ー タ グ ラ フィ ッ クス 技 術を 用い て 樹木 の 成長 や 森林 景 観 を 画 像 上 で 、 リ ア ル にし か も経 時 的、 立体 的 にか っ 的確 に 表現 す る こと が でき れば 、 視点 位 置や 視 点距 離等 3 次 元 的視 覚言乎価や経 時的 表 現 が 必 要 と さ れ る 森林 の 景観 施 業を 立案 す る上 で 有効 な 手法 と な ろ う 。 し か し 、 こ れ まで 一 定の 広 がり をも つ 地域 の 森林 構 造を コ ン ピ ュ ー タ グ ラ フ ィ ッ ク ス を 用 い て 3 次 元 的 に 表 示 し た例 は 少な く 、 樹 冠 の 枝 葉 部 ま で り アル に 表現 し たも のは ほ とん ど みら れ ない 。 特 に 近 景 に お け る 景 観 シミ ュ レー シ ョン にお い ては 樹 種が 特 定で き る レ ペ ル の 樹 形 画 像 が 必要 と され る が、 その 成 果は 末 だ得 ら れて い な い。
本 論 文 は 、 景 観 シミ ュ レー シ ョン 技 術に お ける 基本 的 な研 究 課題 で あ る 自 然 的 で か つ 写実 的 な樹 形 生成 手法 と 森林 景 観の シ ミュ レ ー シ ョ ン 技 術 を 開 発 し 、コ ン ピュ ー タグ ラフ ィ ック ス を活 用 した 視 覚 的 評 価 に 基 づ く 森 林 の景 観 施業 お よび 緑化 計 画の 新 しい 立 案手 法 を 構築することを課題とした。
樹 形 生 成 の た め の成 長 モデ ル を開 発 する に あた って は 、幾 何 学的
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な樹冠形状を示 す針葉樹と楕H 形状的な樹冠を持つ広葉樹では成長 特性や形状が入きく異なることから、針葉樹型と広葉樹型に対応し た樹形生成モデルをそれぞれ考案
すると考えられる形状因子を推定 ユレーションで得られた樹形に対
した。成長モデルは、樹形に関与 してモデルの原型を作成し、シミ し視覚的な評価を基にモデルの改 良を 行うとともに、様 々な形状因子の組み合わせにより樹形生成の ため の適正なパラメ一 夕を抽出し、モデル化を行った。なお、成長 シミ ュレーションおよ び結果のコンピュ一夕グラフィックス表示の プ 口グラムは C 言語で作成 し, ワークステーシ ョンで実行した。
針葉樹 型の樹形生成手法 として、本道の代表的な針葉樹であるト ドマ ツを事例に、これ までの報告例や実測による樹幹および枝形状 の解 析資料を補完デー タとしてモデルを作成した。その際、針葉樹 特有の枝の枯上がりや残枝等の樹冠形状 と樹齢にともなう樹形の変 化を 、樹高および直径 成長、枝の数と角度、枝寿命等の形状要素を 時間 (樹齢)の関数と してとらえる手法を導入し、成長過程のシミ ユレーション表示を行った。 その結果、本モデルは樹冠形状に関与 する 樹冠角度と枝垂れ 角度のパラメ一夕を組合わせることによルモ ミ属 夕イプからトウヒ 属夕イプの針葉樹までさまざまな樹冠形状が 表現 できること、また 、枝の成長停止年数のパラメータの組み合わ せにより技の枯れ上が、りの程度や樹冠部の疎密感等の樹勢表現が可 能で あることを示した きさらに、各種のパラメータを時間(樹齢)
で変 化させることによ り時間の変化に対応した樹形、すなわち単木 につ いての成長過程の シミュレ―ションが可能なことがわかった。
一方、 自然な枝振りをも つ広葉樹型の樹形を表現するためには、
分枝 システムや成長パ ターン等の遺伝的な形状形態に加え、光を求 めて 成長の軌跡を示す 枝振り、受光量に対応した仲長成長と肥大成 長、 さらには受光量の 不足にともなう枝の枯死等、個体成長の過程 で形 成される獲得形状 的な成長モデルが必要とされる。特に、枝の 疎密 度や光を求めて成 長した様子等の自然な枝振りを表現するため には 関数モデルによる 樹形生成には限界があり、広葉樹の樹形表示 モデルの作成には新たな手法が必要とされる。
そこで、樹形生成に最も影響を与えると考えられる光環境の影響、
すな わち上方の枝葉の 存在や隣接木等受光量に対応した成長、消失 等の 成長モデルをホオ ノキを事例に検討した。その際、受光量のシ
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ミュ レーシ ョンモ デルと して茎頂部を投影の巾心とした全天空画像 を想 定して の光環 境のシ ミュレーションモデルを考究し、受光量に 対応 した技 の成長 と消失 モデル、さらには明かるい方向に向かう枝 の探索性、直径成長のシミュレーションモデルをそれぞれ開発した。
その 結県、 本モデ ルは、 より明るい方向を求めて枝を旋回すること がで きる角 度、す なわち 探索性の自由度のパラメ一夕と成長開始時 の明 るさの パラメ 一夕の 組合せによって樹冠部の枝葉密度の表示と 枝の 乱雑性 の表現 が実現 され、自然的な枝振りの樹形表示が可能な こと 、また 、直径 成長の シミュレーションのモデル化によって、枝 密度 に対応 した枝 および 幹の太さか画像表現できることを示した。
さらに成長過程における個体相互影響の結果による枝の・枯れ上がり や樹 幹の被 圧等光 条件に 対応した樹形表現も可能であることを示し た。 得られ た画像 は、い ずれも実際の樹形をよく表現していると考 えら れ、本 モデル を用い ることにより自然な枝振りをもつ広葉樹形 を画像生成することが可能なことがわかった。
コンピュ一夕グラフアクスを活用しての施業計襾をすすめるうえ で、一定の広がりをもつ森林景観の立体的、時間的 jfE 移の画像化が 不可 欠であ る。そ こで、 これまで述べた樹形生成モデルをもとに現 実林 分の測 定値か ら個体 に対応した成長モデルのパラメ―夕を推定 し、 それら を集合 した人 工林および天然林の景観表示を試み、その 景観 の妥当 性を検 討した 。まず人工林の景観シミュレ―ションとし て、 個体ご との形 状パラ メ一夕から単木形状を生成し、得られた樹 形を 位置デ ータを もとに 集合して画像表示したところ、過去の林相 およ び現実 林分の 画像生 成を自然的に表現できることを示した。さ らに 、画像 上の任 意個休 の消去や再表示っまり間伐景観シミュレ―
ションについても画像表示することが可能であることを示した。また、
画像 上で任 意の個 体を広 葉樹に変換することが可能なことから、針 葉樹 と広葉 樹の比 率を段 階的に変化させて表示することにより混交 比率 を変え た森林 景観表 示、さらには葉色や着葉状態を単木ごとに 表示 を変え て画像 生成す ることにより森林の季節的な景観表示が可 能であることを示した。また施業計画の可視化の試みとして、 トド マツ人工林の地位お 0 仕立方法別施業休系のシミュレーション表示、
街路におけろ植栽景観のシミュレーションを行ったところ、し、ずれ も自然的な画像が得られることを示した。
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以上の研究成果により、これまで立木位置、樹高、技下高、胸高 直径、樹冠直径等の数値情報によって示されていた林分構造や樹木 の情報に加えて、コンピュ一夕グラフィックス技術を門]いることに より、樹穐や成長にともなう景観変化等が画像上で時間的・空間的 に予測することが可能となり、視覚情報を必要とする森林の景観計 画の立案や開発手段を見いだすための大きな手がかりを得ることが できた。また本技術と施業体系図や密度管理図との併用による指導 普及事業への活用も期待される。
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学位論文審査の要旨 主 査 教 授 和 孝 雄 副査 教授 五十嵐恒夫 副査 教授 浅川昭一郎
学 位 論 文 題 名
森林の景観施業に関する基礎的研究
―コンピュータグラフイックスによる樹形生成モデル―
本 論 文 は5章 で 構 成 さ れ ご 図58、 表9、 ゛ 引 用 ・ 参 考 文 献112を 含 む 総 頁 数143の 和 文 論 文 で あ る 。 別 に 参 考 論 文33編 が 添 え ら れ て い る 。
近 年 、 森 林 の 施 業 計 画 を 立 案 す る 上 で 、 木 材 生 産 と 環 境 保 全 、 さ ら に は 景 観 に 配 慮 し た 施 業 技 術 の 確 立 が 求 め ら れ て い る 。 そ の 中 で 、 特 に 森 林 の 景 観 施 業 に 関 し て は 、 視 覚 的 評 価 あ る し 、 は 数 値 情 報 の 可 視 化 に も と づ く 計 画 立 案 手 法 開 発 の 重 要 性 が 指 摘 さ れ て い る 。 一 方 、 近 年 、 建 築 設 計 や 都 市 計 画 な ど の 分 野 に お い て コ ン ピ ュ 一 夕 グ ラ フ ィ ッ ク ス に よ る 景 観 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン が 広 く 実 用 化 さ れ て い る 。 し か し 、 森 林 、 樹 木 に 関 し て は 樹 種 特 性 や 樹 木 の 成 長 経 過 、 あ る い は 樹 種 混 交 、 樹 木 問 競 ・ 争 の 複 雑 性 な ど に 起 因 し て 、 画 像 上 で 、 リ ア ル に し か も 経 時 的 、 立 体 的 に 、 か つ 的 確 に 表 現 す る 手 法 は こ れ ま で 開 発 さ れ て い な い 。 本 論 文 は 、 景 観 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 技 術 に お け る 基 本 的 な 研 究 課 題 で あ る 自 然 的 で か っ 写 実 的 な 樹 形 生 成 手 法 と 森 林 景 観 の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 技 術 を 開 発 し 、 コ ン ピ ュ 一 夕 グ ラ フ ィ ッ ク ス を 活 用 し た 視 覚 的 評 価 に も と づ く 森 林 の 景 観 施 業 及 び 緑 化 計 画 の 新 し い 立 案 手 法 を 構 築 す る こ と を 課 題 と し た も の で あ る 。 樹 形 生 成 の た め の 成 長 モ デ ル の 開 発 に あ た っ て は 、 幾 何 学 的 な 樹 冠 形 状 を 示 す 針 葉 樹 と 楕 円 形 状 的 な 樹 冠 を 持 つ 広 葉 樹 で は 成 長 特 性 や 形 状 が 大 き く 異 な る こ と か ら 、 針 葉 樹 型 と 広 葉 樹 型 に 対 応 し た モ デ ル を そ れ ぞ れ 作 成 す る こ と を 試 み た 。
針 葉 樹 型 に つ し 、 て は 、 本 道 の 代 表 的 な 針 葉 樹 で あ る ト ド マ ッ を 事 例 に 、 こ れ ま で の 報 告 例 や 実 測 に よ る 樹 幹 お よ び 枝 形 状 の 解 析 資 料 を も と に 、 樹 齢 ( 時 間 の 経 過 ) に と も な う 樹 形 変 化 な ど を 表 示 で き る モ デ ル を 作 成 し た 。 そ の 結 果 、 樹 冠 形 状 に 関 与 す る パ ラ メ ー タ の 組 み 合 わ せ に よ ル モ ミ 属 タ イ プ か ら ト ウ ヒ 属 タ イ プ の 針 葉 樹 ま で さ ま ざ ま な 樹 冠 形 状 を 表 現 で き る こ と 、 ま た 、 枝 の 枯 れ 上 が り の 程 度 や 樹 冠 部 の 疎 密 感 な ど の 樹 勢 表 現 が 可 能 な こ と 、 さ ら に は 時 間 の 変
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化に対 応した樹形、すなわち単木の成長過程のシミュレーションが可能なこと がわかった。
一方、広葉樹型の樹形を表現するためには、針葉樹と異なる分枝システムや 成長パ ターン等の遺伝的な形状形態に加え、光を求めて成長する枝振り、受光 量に対 応した仲長成長と肥大成長、さらには枝の枯死等、個体成長の過程で形 成され る獲得形状的な成長モデルが必要とされる。そこで、樹形生成に最も影 響を与 えると考えられる光環境に注目して、ホオノキを事例に、茎頂部を投影 の中心 とした全天空画像を想定してのシミュレーションモデルを考究し、受光 量に対 応したシミュレーションモデルを開発した。その結果、本モデルは技の 探索性 のパラメータと成長開始時の明るさのパラメータの組み合わせによって 樹冠部 の枝葉密度の表示と枝の乱雑性の表現や自然的な枝振りの樹形表示が可 能なこ と、また、枝密度に対応した枝および幹の太さ、さらには個体相互影響 による 枝の枯れ上がりなど、自然な枝振りをもつ広葉樹形の画像生成が可能な ことがわかった。
以上により得られた樹形生成モデルをもとに現実林分の測定値から個体に対 応した 成長モデルのパラメータを推定し、それらを集合した人工林および天然 林の景 観表示を試み、その景観の妥当性を検討した。その結果、本モデルは個 体ごと の形状パラメータと、位置データを集合して画像表示することにより、
過去の 林相および現実林分の画像生成を自然的に表現できること、さらには、
画像上 の任意個体の消去や再表示、っまり間伐景観シミュレーションの画像表 示も可 能なこと、また、針葉樹と広葉樹の比率を段階的に変化させることによ り混交 比率を変えた森林景観表示、さらには葉色や着葉状態を単木ごとに画像 生成することにより森林の季節的な景観表示が可能であることを示した。また、
人工林 の地位別仕立方法別施業体系のシミュレーション表示、街路における植 栽景観 のシミュレーションについても自然的な画像が得られることを示した。
以上、本研究で新たに開発した樹形生成モデルは、これまでの林分構造や樹 木に関 する数値情報に加えて、樹種や成長にともなう景観変化等を時間的・空 間的に 画像上で予測することを可能とし、視覚情報を必要とする森林の景観計 画の立 案や開発手段を見いだすための大きな手がかりを与えている。また、施 業体系図や密度管理図との併用による指導普及事業への活゛用も期待される。こ れらの研究成果f ま、学術上高く言平価されるだけでなく、実用的にも寄与すると ころ大なるものがある。
よって、審査員一同は、別に行った学力確認試験の結果と合わせて、本論文 の提出 者鈴木悌司は博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格があるものと 認定した。
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