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ヌード マウス 膀胱内移 植ヒト膀胱癌に対する遺伝子治療

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 佐 澤    陽

学 位 論 文 題 名

ゲ ルソリン アデノウイルスベクターを用いた

ヌード マウス 膀胱内移 植ヒト膀胱癌に対する遺伝子治療

学位論文内容の要旨

    膀胱癌|ま、尿路系腫瘍の中で最も頻度が高く、米国において全悪f生腫瘍の中で4番目の 発 生頻 度 であ る。 抗癌 剤やBCGの膀 胱 内投 与は 、初 回の 経尿 道的 手術 から 再発までの 期間 を 延長 で きる が、70% の患 者は 再発 する 。膀 胱癌 患者のうち、15%から30%では浸潤 癌と して 見っけられ、ひとたび浸潤癌へと進行すると、膀胱全摘 除術、全身化学療法、放射線治 療な どが施行されるものの、これらの治療でtま、全生存率の劇的な改善には至っていない。

この ため、膀胱温存可能で治療効果の高い新たな治療法が望 まれている。アクチン調節夕ン バク 質ゲルソリンは、細胞の形態、運動、接着にかかわるア クチン細胞骨格の中心的な制御 因子 である。さらに最近ゲルソリンは、腫瘍抑制的な働きを有する事がわかってきた。胃癌、

膀胱 癌、肺癌、大腸癌、乳癌など種々の癌においては、ゲル ソリンの発現カ汪常細胞に比ベ 低 下 ま た は 消 失 し てい た。 さら に膀 胱癌 細胞 株UNfUC―2にヒ トま たは マウ スゲ ルソ リン cDNAを ト ラン スフ ウク ショ ンす ると 、軟 寒天 培地 でのコ口二ー形成能やヌードマウス 皮下 での 造腫瘍性が失われた。以上の結果に基づき、ゲルソリン 遺伝子を用いた遺伝子治療の可 能I生を検討するために、ヌード マウス皮下移植ヒト膀胱癌細胞株に対してゲルソリン・レト 口ウ イルス産生細胞を移植したところ、著明に腫瘍の増殖が 抑制され、生存期間が有意に延 長し た。しかし、クシレソリンレ卜口ウイルスベクターの投与では、その感染効率が低いため に、 腫瘍増殖を充分抑制することはできなかった。レ卜口ウ イルスペクターは、染色体に組 み込 まれ、安定した発現が維持されるものの、発癌性や増殖 型への変異の危険I生のため、臨 床応 用は限定される。さらに、レト口ウイルス産生細胞によ る膀胱癌遺伝子治療は、臨床的 に使 用困難である。一方、アデノウイルスペクターは一過性 ながら目的の遺伝子への導入効 率が 高く、高力価のウイルスを作製できるなどの特徴を有し ており、癌に対する遺伝子治療 にお ける有効なぺクターとなっている。そこで実際の遺伝子 治療への応用を目指して、ゲル ソ リ ン ・ ア デ ノ ウ イル スペ クタ ー(Acl‑GSN)を 作製 し、 加vitroで の腫 瘍増 殖に 対す る抑 制効 果について検討した。さらに膀胱温存を念頭に経尿道的 手術後の残存病変に対する治療 モテ シレとして、ヌードマウス膀胱内移植ヒト膀胱癌モデルを作製し、このモデルでの遺伝子 治療 の効果について検討した。

  ま ず 、CMVプ □ モ ー タ ー を 持 っ たshuttle plasmicl pCA14のBamHlーHincl皿 領域 にゲ ル ソ リ ンcDNAを ラ イ ゲ ー シ ョ ン し 、pCA14一GSNを 得 た 。 ア デ ノ ウ イ ル ス 相同 組み 換え 時 に 骨 格 と な るplasmid p瓜n7とpCA14ーGSNを ヒ 卜 胎 児 腎 由 来293細 胞 に りン 酸カ ルシ ウ ム法 に てト ラン スフ ェク ショ ンし 、プ ラー ク法 にてAd℃SNを得た。ロ―ガラクトシ ダー

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ゼ遺伝 子を含むplasmid pCA17に ついて も同様の 操作を 行い、ロ ーガラク トシダ ーゼ発現 ア デノウ イルスベ クター(Ad‑ロgal)を作 製した。 各アデノ ウイル スベクタ ーを293細胞に 感染 させ 増 幅 の のち 、 超 遠心 を行 い高濃度 のウイ ルス液を 作製し た。次に 、ヒト 膀胱癌細 胞株 KUー7へ のア デ ノ ウイ ル ス感 染効率を 検討す るために 、KU−7に対し てAclーロgalをM○110 から400まで 感 染 させ 、 青染 細胞の害1恰 を算出し た。ア デノウイ ルス感染 効率はM○110で 29% 、M○150で44% 、M○I 100で80% 、M○1400で95% で あ っ た 。KU―7に 感 染 し た Ad―GSNが 、 ゲ ルソ リ ン タン バ ク 質の 発 現 を亢 進 さ せる かどうか を確認す るため に、Ad― GSN感 染 後 のKUー7よ り タ ン バ ク 質 を 抽 出 し 、Westem Blottingを 行 っ た 。M○1400の Acl‑ロgalを感染させたKU―7においては、クシレソリンの発現はほとんど認められなかった。

一方 、Ad‑GSN感染 細 胞 では ゲ ル ソリ ン の 発現 は 著 明に 亢 進 し てお り 、 正常 移 行上 皮細胞 株SVHUCと 比 較 し て 、M○1100で 感 染 さ せ る と1.8倍 、MOI 400で 感 染 さ せ る と5倍 と な っ た 。 こ れ ら の 結 果よ りAd‑GSNは 、KU−7に お いて 、 ゲ ルソ リ ン タン バ ク 質を 産 生 さ せることがわかった。

  っ づ い て 、 加vitroで のAd‑GSN投 与 に よ るKU―7の 細 胞 増殖 抑 制 効果 を 検 討す る た め に 、6穴 プ レ ー ト にKU−7(lXl04/x,velDを ま き 、MOI400のAd―GSNま たtまAd‑ロgal を感 染 さ せ 、経 時 的 に細 胞数 を数えた 。複数 の実験を 行い、 その平均 を比較 したとこ ろ、

Acl―GSN感染細胞では、Ad‑ロgal感染細胞に比ぺ、細H包増殖カ℃百意に抑制された(pく0.05)。 5日 目 に 、 細 胞 数 はAc一3ST感 染 に てAd‑ロgal感 染 に 比 ベ 、 約60% 減 少 し て い た 。   こ の 細 胞増 殖 抑 制効 果 が なぜ 起 き るか に つ いて 検 討す るために 、Ad―GSN感染前 後での DNA分 布 を フ 口 ー サ イ 卜 メ ト リ ー に よ っ て 調 べ 、Ad‑GSN感 染 に よ るKU−7で の 細 胞 周 期の 変 化 を 検討 し た 。Ad―Bgal感染 細胞で は、細胞 周期の 変化はわ ずかで あった。 一方、

Alて }SN感 染 細 胞で は 、G2/M期が18.8% か ら28.4%へ と 増 加し た の に比 べ 、Gl/Sは 70.4%から56.8% へと、減 少してい た。こ れらの結 果は、Adて;SNによる細胞増殖抑制効 果 がG2/M期 で の 細 胞 周 期 の 延 長 ま た は 停 止 に よ る も の で あ る こ と を 示 し て い る 。   次に、 膀胱腫瘍 の経尿 道的手術 後の残 存病変を 念頭にヌ ードマウス移植ヒト膀蹴症細胞モ デル を 作 製 し、AdてニSN膀胱内注 入によ る感染効 果を検 討した。 まず、ヌ ードマ ウス膀胱 内移植 ヒト膀胱 癌細胞 にアデノ ウイルス が感染 するかど うかを 検討するため、ヌードマウス の膀 胱 上 皮 をト リ プ シン に て 障害 、 経 尿道 的 にKU―7を 移植し たのち、Ad一ロgmを 注入し た。Xgむ 染色にて 腫瘍部 に青染細 胞を認 め、腫瘍 へのアデ ノウイルス感染を証明した。正常 上皮で は青染細 胞をご く一部に 認めるの みで、Ad−ロg甜はほ とんど感 染しな いと考え られ た。

さら に 、Acl℃SNに よ る 加研v〇での ヌード マウス膀 胱内移 植ヒト膀 胱癌細 胞の増殖 抑制効 果を検 討するた め、ヌ ードマウ スの膀胱 に経尿 道的にIくU―7を移植後 、48、72、96時間後 にAdて }SNま た は´kl一ロgmを各群5匹ず っ投与し 、10日目 に膀胱を 摘出し た。膀胱 は100 比mご と に20切 片 を 作 製 後 、HE染 色 を 行 い 、MH而ageに て 腫 瘍 面 積 を 測 定 し た 。 両 群 と も に1箇 所 以 上 の 腫瘍 が 形 成さ れ て いた が 、10日 目 の 腫瘍 平 均 面積 を 比 べた と こ ろ、

A.Cl℃SN群では2.5mm2、Ad−ロgal群では23.5111亅n2となり、pLClてニSN投与により腫瘍面 積は9分 の1と 有 意 に抑 制 されて いた(pく0.05)。 また両 群ともに 、肝臓 、肺、側 臓には 明らか な炎症所 見は認 められな かった。 アデノ ウイルス 投与中 にヌードマウスの活動、成長 に明ら かな異常 は認め られなか った。こ れらの 結果によ り、ゲ ルソリン・アデノウイルスペ クター は、ヌー ドマウ ス膀胱内 移植ヒト 膀胱癌 細胞の増 殖を抑 制すると考えられ、今後の膀 胱癌に対する遺伝子治療への可能性が示された。

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学 位 論 文 審 査 の 要旨 主 査    教 授

副 査    教 授 副 査    教 授

小 柳 知 彦 細川眞澄男 田 中 二 馬

学 位 論 文 題 名

ゲ ル ソ リ ン ア デ ノ ウ イ ル ス ベ ク タ ー を用 い た

ヌ ー ド マ ウ ス 膀 胱 内 移 植 ヒ ト 膀 胱 癌 に 対 す る 遺 伝 子 治療

  浸潤性膀胱癌に対しては、さまざまな治療法が行われるものの、全生存率の劇的な改善には 至っておらず、膀胱温存可能で治療効果の高しゝ新たな治療法が望まれている。アクチン調節夕 ンバク質ゲルソリンの発現は、膀胱癌において正常細胞に比ベ低下または消失しており、膀胱 癌細胞株にヒトゲルソリンcDNAを導入すると、軟寒天培地でのコ口二ー形成能やヌードマウ ス皮下での造腫瘍性が失われた。また、ヌードマウス皮下移植ヒト膀胱癌細胞株に対してゲル ソリンレト口ウイルス産生細胞を移植すると、著明に腫瘍の増殖が抑制された。そこで実際の 遺伝子治療への応用を目指して、ゲルソリンアデノウイルスベクター(AdーGSN)を作製し、

加晒ロ〇でのヒト膀胱癌細胞株KU―7での増殖抑制効果およびヌードマウス膀胱内移植ヒト膀 胱癌モデルでの遺伝子治療の効果について検討した。

  まず、Ad―GSNおよびロ―ガラクトシダーゼ発現アデノウイルスベクター(Adーロgal)を作製 した 。Ad‑B galによ るKU―7へ の ア デノ ウイルス 感染効率 はMOI 400で95%で あった。

AdーGSN感染後のKU−7よりタンノヾク質を抽出し、Westem Blottmgを行ったところ、ゲル ソリンの 発現は著 明に亢進 した。っ づいて、加vitroでMOI400のAd―GSNまたはAdーpgal をKU−7ヘ感 染させ、経時的に細胞数を数えたところ、AdーGSN感染にて、細胞増殖が有意 に抑制された。KU−7での細胞周期の変化を調べたところ、Ad‑B gal感染細胞では、細胞周 期の 変 化 はわず かであった が、Ad−GSN感 染細胞で は、G27M期が18.8%から28.4% へと 増加したのに比べ、Gl/Sは70.4%から56.8%へと、減少していた。

  次に、ヌードマウス膀胱内移植ヒ卜膀胱癌モデルを作製し、Ad‑ロgal膀胱内注入による感     ー580―

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染効率を検討した。ヌードマウスの膀胱上皮をトリプシンにて障害、経尿道的にKU―7を移植 したのち、Ad‑ロgalを注入したところ、Xg甜染色にて腫瘍部に青染細胞を認め、腫瘍へのア デノウイルス感染を証明した。正常上皮では青染細胞をごく一部に認めるのみであった。さら に、A―GSNによる加Vi VOでのヌードマウス膀胱内移植ヒト膀胱癌細胞の増殖抑制効果を検 討するため、ヌードマウスの膀胱に経尿道的にKU−7を移植後、48、72、96時間後にAd−GSN またはAd‑口galを投与し、10日目に膀胱を摘出した。両群ともに1箇所以上の腫瘍が形成さ れてお り、10日目 の腫瘍平 均面積をNIH imageに て比べた ところ、Ad−GSN投与により腫 瘍面積は9分の1と有意に抑制されていた。また両群ともに、肝臓、肺、脾臓には明らかな炎 症所見は認められなかった。これらの結果により、ゲルソリンアデノウイルスベクターは、ヌ ードマウス膀胱内移植ヒト膀胱癌細胞の増殖を抑制すると考えられ、今後の膀胱癌に対する遺 伝子治療への可能性が示された。

  この論文に対して、ゲルソリンによる膀胱癌細胞株の増殖抑制効果の機序、ゲルソリンとア ポトーシスのかかわり、ゲルソリンが転移を抑制するかどうかについて質問があった。また、

膀胱内投与に関して、ヒトヘのゲルソリンアデノウイルスベクター膀胱内投与による炎症など の副作用惹起の可能性、アデノウイルスベクター反復投与による感染効率の低下の可能性、反 復投与時の抗体産生による治療効果減弱の可能性、同所性モデルでロガラクトシダーゼ発現ウ イルスが正常細胞に感染しなしゝ理由についての質問があった。さらに臨床面より、ゲルソリン 発現が低下する時期がいっごろか、ゲルソリンアデノウイルスベクター膀胱内投与を実際に行 う場合の適応についての質問があった。これらの質問に対して、申請者は、まずゲルソリンに よる膀 胱癌細胞 株の増殖抑制効果は、アポ卜ーシスではなく、細胞周期をG2/M期に集積さ せるためであること、悪弛E黒色腫細脆蛛のゲルソリントランスフェクタントでは転移が抑制さ れることを述べた。次にアデノウイルスベクター膀胱内投与に関して、受容体の違いや膀胱粘 膜表面の糖夕ンバク障壁により、正常膀胱上皮での発現がきわめて低く、抗体産生による治療 効果の減弱や炎症が認められにくいと考えられること、したがって反復投与可能なことを述べ た。臨床面では、ゲルソリン発現の低下が癌化の初期でおこること、浸潤´f生膀胱癌患者の経尿 道的手術後の残存病変に対して適応となりうることを述ぺた。

  この論文は、ヒト膀胱癌細胞株の同所性モデルに対するアデノウイルスベクターを用いたは じめての遺伝子治療として高く評価され、今後のヒトヘの遺伝子治療への応用が期待される。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども併せ 申 請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た 。

参照

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