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看取りの時期にある小児がんの子どもをもつ家族向けパンフレット「これからの過ごしかたについて‐子ども版‐」の小児がんに携わる医療者の意見による使用可能性の検討

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Palliative Care Research 2015; 10(3): 00–00

緒 言

 医療の進歩により,小児がんの 7, 8 割は治癒する時 代になったが,未だ 5∼19 歳の病気による死因の第一 位であり,日本では年間約 450 人の子どもががんに よって亡くなっている1,2)  親にとって子どもとの死別体験は「自我を構成する もっとも重要な部分を根こそぎ奪い去られる」出来 事3)であり,そのような体験をする中で親は「正確な情 報を知り,できる限りのことはすべてしたと思える」 ことを望み4),子どもが置かれている現状を知り,子 どもに対するケアを行うことで,死別後の悲嘆反応が 緩和されたり,良い親としての役割を果たしたと感じ られたりすることが明らかになっている5,6)

 成人領域では,OPTIM プロジェクト(Outreach Pallia-tive care Trial of Integrated regional Model,第 3 次対がん 総合戦略研究事業「緩和ケアプログラムによる地域介 入研究」:http://gankanwa.umin.jp/)により,看取りのパ ンフレット「これからの過ごし方について」が作成さ れ,遺族調査によって看取りのパンフレットの有用性 が示されている7).小児領域では遺族調査によって, 家族が疾患の状態と将来の展望への繰り返しの説明を 希望していることが報告され8),看取りの時期に今後 起こり得ることへの十分な患者や家族との議論の必要 性が示されている.このように正確な情報提供が望ま れる一方,医療者は,家族への情報提供や意思決定支 援に困難を感じているといわれている9).さらに,小 児がんによる年間死亡数は成人がん患者の年間死亡数

原 著

Palliat Care Res 2018; 13(4): 383–91

看取りの時期にある小児がんの子どもをもつ

家族向けパンフレット「これからの過ごしかた

について─子ども版─」の小児がんに携わる

医療者の意見による使用可能性の検討

入江  亘

1)

,名古屋祐子

1,2)

,羽鳥 裕子

3)

,吉田 沙蘭

4)

,尾形 明子

5)

松岡 真里

6)

,多田羅竜平

7)

,永山  淳

8)

,宮下 光令

9)

,塩飽  仁

1) 1)東北大学大学院医学系研究科 保健学専攻 小児看護学分野,2)宮城県立こども病院, 3)淀川キリスト教病院 こどもホスピス病棟,4)東北大学大学院教育学研究科 臨床心理学分野, 5)広島大学大学院教育学研究科 心理学講座, 6)京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻 成育看護学分野, 7)大阪市立総合医療センター 緩和ケアセンター,8)国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 緩和医療内科, 9)東北大学大学院医学系研究科 保健学専攻 緩和ケア看護学分野 本研究の目的は,著者らが作成した,看取りの時期にある小児がんの子どもをもつ家族向けのパンフレットの使用可 能性を,量的・質的双方の視点から検討することである.小児がんに携わる医療者 267 名に質問紙を配布し,76 名 (28%) が回答した.回答者の 93%がパンフレットを「使いたい」と回答し,86%が家族に実際に「使える」と答えた. 自由記述では,使用の利点として【言葉にすることが難しい部分のコミュニケーションが図れる】【家族が理解しやす い】【家族のタイミングで読める】【看取りの方向性がわかりやすくなる】,留意点として【渡すタイミング】【家族の受け 入れ状況】【子どもの状況】【医療チームとしての方針】【家族・医療者の信頼関係】【医療者の使用に対する考え】【資料の 分量】が示された.パンフレットは使用可能と考えられたが,個々に使用の利点や留意点を検討のうえ,専門家の支 援がある状況での使用が必要である.

Palliat Care Res 2018; 13(4): 383-91

Key words: 小児緩和ケア,小児がん,家族ケア,看取り,パンフレット 受付日 2018 年 2 月 28 日/改訂日 2018 年 10 月 1 日/受理日 2018年 10 月 3 日 Corresponding Author:名古屋祐子 東北大学大学院 医学系研究科 保健学専攻 小児看護学分野 〒 980-8575 宮城県仙台市青葉区星陵町 2-1 TEL 022-717-7927 FAX 022-717-7927 E-mail: [email protected]

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の 0.1%程にとどまり,医療者側の看取りの経験不足 といった障壁があることが明らかになっている9).そ こで,家族へ正確な情報を伝える際の補助資料とし て,臨死期に起こり得る可能性の高い症状とそのケア 方法に関する家族向けパンフレットを作成すること で,看取りの経験が少ない医療者であっても統一した 情報提供が可能になると考えた.  本研究は OPTIM プロジェクトにより作成された看 取りのパンフレット7)をベースに著者らが作成した, 看取りの時期にある小児がんの子どもをもつ家族向け のパンフレット「これからの過ごしかたについて─子 ども版─」(以下,パンフレット)の使用可能性につい て,量的・質的双方の視点から検討することを目的と した.

方 法

 研究デザインは混合研究法を用いた横断調査で ある. 対象  対象は小児がんに携わる医師・看護師・その他関連 職種である. 調査方法  データ収集は 2014 年 11 月∼2015 年 4 月に 2 通りの 方法で行った.一つ目は 2014 年 11 月に開催された第 13回日本小児がん看護学会学術集会にて,学術集会長 から調査実施の承諾を得た後,パンフレット作成の口 演発表を行った際に本調査の実施についてアナウンス し,発表後に希望者 150 名に対しパンフレット,調査 説明書および質問紙を配布し郵送法で回収した.二つ 目は 2014 年 12 月∼2015 年 4 月に全国の小児がん診療 病院 6 施設にて実施した.各施設の看護部長宛に調査 説明書を送付し,調査の承諾を得た後,各施設から回 答のあった質問紙の送付希望部数の調査説明書,パン フレット,質問紙を郵送した.6 施設計 117 名に配布 し,施設ごとに留置法により回収した. パンフレットの作成プロセスと内容の概要  パンフレットは OPTIM プロジェクトにより作成さ れた看取りのパンフレットをベースに,小児緩和ケア に携わる医師 3 名・看護師 5 名・臨床心理士 2 名の計 10名による 2 回の会議における合 議および文献検 討10∼16)によって吟味,精選し開発された.パンフレッ ト作成において看護師は臨床症状とそのケアの視点か ら,臨床心理士は心理社会面の視点から,医師は医療 的側面およびパンフレット全体の構成の妥当性を確認 するオブザーバーの視点から参画した.また,会議に おいては使用対象と想定場面についても検討し,現在 の小児の病気による死因として最も多い疾患は小児が んであること,成人のパンフレットもがん患者を想定 して作成されていることから,パンフレット使用の対 象疾患を①小児がんと想定した.また,現在の小児医 療では病院で看取る場合がほとんどであることから, ②病院で看取る予定である子どもの家族に対してと設 定し,具体的な使用場面として,③予後が一週間以内 に限られると想定され,④家族と医療者が今後のこと について話し合う場面で用いられることを想定した.  パンフレットの構成は,家族や子どものニーズをく み取ることを目指した「お子さんのことを教えてくだ さい」,「これから大切にしたいこと」,臨死期を過ごす なかで生じ得る変化と生じた際にできる関わりについ て情報提供することを目指した「これからの時期のか らだの変化」,「からだに苦痛があるとき」,「飲んだり 食べたりできないとき」,「のどがゴロゴロするとき」, 「息が苦しそうなとき」,「つじつまが合わなかったり, いつもと違う行動をするとき」,臨死期を過ごす中で 医療者側が重要だと考えていることを伝えることを意 図した「これからのためにご家族で話し合ってほしい こと」,「ご家族のみなさまへのメッセージ」の 10 項目 で構成した.内容は予後が一週間に限られた状態で あっても子どもに対して家族と医療者ができる関わり を具体的に提示し,また子どもの疾患や家族の受け入 れ状態に応じて医療者がパンフレット内容を柔軟に構 成し直して活用できるよう工夫した. 調査項目  本研究の主要評価項目はパンフレットの使用可能性 であり,「パンフレットを使いたいと思いますか」と 「パンフレットは患者さんのご家族に実際に使えると 思いますか」の二つの問いを用いて確認した.「パンフ レットを使いたいと思いますか」の問いは,(1)ぜひ使 いたい,(2)できれば使いたい,(3)できれば使いたく ない,(4)使いたくない,の 4 件法で尋ねた.「パンフ レットは患者さんのご家族に実際に使えると思います か」の問いでは,(1)使える,(2)どちらともいえない, (3)使えない,の 3 件法で尋ね,自由記述としてパンフ レットの家族への使用に関する意見を尋ねた.  副次的評価項目はパンフレットの 10 の各説明項目 の必要性,内容の難易度,内容の分量であり,必要性 は(1)要,(2)不要,の 2 件法で,内容の難易度は(1)簡 単,(2)ちょうどよい,(3)難しい,の 3 件法で,内容 の分量は(1)少ない,(2)ちょうどよい,(3)多い,の 3 件法でそれぞれ尋ねた.また,各説明項目の下に自由 記述欄を設け,改善点を尋ねた.  背景要因として,回答者の職種,臨床経験年数,小 児がんの臨床経験年数,小児がんの子どもの余命一週 間以内のケアで困った経験の有無を尋ねた.

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分析方法

 分析は JMP pro11(SAS Institute Inc., Cary, NC, USA)を 用いた単純集計により行った.パンフレットの実際の 使用に関する自由記述は Berelson の内容分析法17)に基 づき行った.まず,1 名の研究者が得られた回答をコー ド化した.次に,文脈内容の類似性を比較しながらカ テゴリの抽出・再編を繰り返して統合し,カテゴリ名 を命名した.コード化,カテゴリ抽出の確証性および カテゴリ名の妥当性確保のため,小児緩和ケアに携わ り,質的研究経験のある計 6 名の看護師,臨床心理士 による合議を経てコードの分類,カテゴリ名を決定 した.  本調査は東北大学大学院医学系研究科倫理委員会 (承認番号:2014-1-761)の承認を得て実施した.質問紙 に調査目的,調査への参加を拒否しても不利益を受け ないこと,調査に関する個人情報保護について明記 し,質問紙への回答と返送(提出)をもって調査への参 加に同意をしたことを確認した.

結 果

回答者の背景  質問紙は合計 267 名に配布し,76 名から回答を得た (回答率 28%).回答者の背景は表 1 に示す.職種は回 答の 80%以上が看護師だった.小児がんの子どもの余 命一週間以内のケアで困った経験の有無では,「いつ も困る」39 名(51%),「時々困る」31 名(40%)と,回答 者の 9 割以上が何らかの困りごとを経験していた. パンフレットの使用可能性 1.小児がんに携わる医療者からみた使用可能性  「パンフレットを使いたいと思いますか」の設問に関 する回答は,「ぜひ使いたい」27 名(36%),「できれば 使いたい」42 名(57%),「できれば使いたくない」5 名 (7%)であり,93%の回答者はパンフレットを「使いた い」と評価した.「パンフレットは患者さんのご家族に 実際に使えると思いますか」の設問に対する回答は, 「 使 え る 」63 名(86%),「 ど ち ら と も い え な い 」3 名 (4%),「使えない」7 名(10%)であった.  家族への使用に関する意見を自由記述で求めたとこ ろ,22 名から 25 記録単位が抽出された(表 2).以下, カテゴリを【 】,コードを[ ]で示す.内容は「使用す ることの利点」と「使用するうえでの留意点」の二つに 大別された.「使用することの利点」は,[あえて言葉に 伝えにくいことを,パンフレットを渡すことで伝える ことができそう]といった【言葉にすることが難しい部 分のコミュニケーションが図れる】,[死期の身体的特 徴についてわかりやすく,やさしく書かれている]と いった【家族が理解しやすい】,[家族のタイミングで パンフレットを読むことができる]といった【家族のタ イミングで読める】,[看取りの方向性がわかりやすく なる]といった【看取りの方向性がわかりやすくなる】 の 4 カテゴリで構成された.「使用するうえでの留意 点」は,[渡すタイミングが難しい]といった【渡すタイ ミング】,[見たくない家族もいる]といった【家族の受 け入れ状況】,[子どもの状況に合わせて]からなる【子 どもの状況】,[チーム医療を前提とすれば,使用に際 して医師も含めたチーム内の合意形成は必須]からな る【医療チームとしての方針】,[終末期に至るまでの スタッフと患者・家族の信頼関係が築けていれば使え る]からなる【家族・医療者の信頼関係】,[最後まで積 極的な治療を望む家族が多いため使用しにくい]と いった【医療者の使用に対する考え】,[使ってみなが ら内容・分量の調整が必要]からなる【資料の分量】の 7 カテゴリで構成された. 2.パンフレットの各項目の必要性  パンフレットの各項目の必要性は,難易度,分量か ら評価した.  各項目の必要性では,すべての項目で 90%以上の回 答者から必要であるとの回答があった.(図 1).自由 記述では,「予後一週間でこれら(子どものことおよび これからの過ごし方で大切にしたいこと)のページが 記載できるのか」,「子どものことの項目は書く作業は 家族にはつらくないか」といった意見もある一方,「書 きたいことがたくさんあると思うので 1 ページ全部 使ってもいいと思う」といった意見があった.  各項目の難易度では,「これから大切にしたいこと」 については「難しい」と回答が 7 名(11%)と他の項目よ りも高い割合であったが,それ以外の項目では回答者 の 90%以上が「ちょうどよい」または「簡単」と回答し た(図 2).「これから大切にしたいこと」では,「一週間 表 1 回答者の背景(n=76) n % 職種  医師 9 12  看護師 64 83  その他 2 3  無回答 1 1 臨床経験(平均値±標準偏差) 10.1±7.7年 小児がん臨床経験(平均値±標準偏差) 5.5±4.5年 小児がんの子どもの余命一週間以内のケア で困った経験の有無  いつも困る 39 51  時々困る 31 40  あまり困らない 2 3  全く困らない 0 0  看取りの経験がない 4 5

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前ではなくもう少し前から医療者と話し合えたら良い と思う」といった当該項目をより早期に確認すべきと いった意見が複数あった.  各項目の分量では,すべての項目で 90%以上の回答 者が「ちょうどよい」と回答した(図 3).各項目少数で はあるが,分量が「少ない」との回答が「多い」と回答す る者よりも多く,自由回答では「きょうだいや祖父母 へどう伝えるか,少しヒントがあるといい」,「もう少 し詳しく」といった意見があった. 図 1 パンフレット項目の必要性 欠損値を除いて%を算出した 欠損値を除いて%を算出した 96 96 96 96 96 97 96 92 91 90 4 4 4 4 4 3 4 8 9 10 0% 20% 40% 60% 80% 100% 要 不要 1.お子さんのことを教えてください(n=72) 2.これから大切にしたいこと(n=74) 3.これからの時期のからだの変化(n=76) 4.からだに苦痛があるとき(n=76) 5.飲んだり食べたりできないとき(n=75) 6.のどがゴロゴロするとき(n=76) 7.息が苦しそうなとき(n=76) 8.つじつまが合わなかったり, いつもと違う行動をするとき(n=76) 9.これからのためにご家族で 話し合ってほしいこと(n=76) 10.ご家族のみなさまへのメッセージ(n=76) 表 2 家族への使用に関する自由記述の内容分析結果 カテゴリ コード 使用する ことの利点 【言葉にすることが難しい部分のコミュニケーションが図れる】 [あえて言葉に伝えにくいことを,パンフレットを渡すことで伝えることができそう],[直接聞きにくいことを記入する形になっ ている] 【家族が理解しやすい】 [死期の身体的特徴についてわかりやすく,やさしく書かれてい る],[子どもの身体的変化が具体的でわかりやすい] 【家族のタイミングで読める】 [家族のタイミングでパンフレットを読むことができる],[家族 のタイミングで残りの時間の過ごし方を考えられる] 【看取りの方向性がわかりやすくなる】[看取りの方向性がわかりやすくなる],[度のような経過をたど るのかわかりやすく書いてあるのでイメージしやすい] 使用する うえでの 留意点 【渡すタイミング】 [渡すタイミングが難しい],[終末期に,接し方に戸惑う患者さん が多く,私自身も声かけや説明が難しいこともあるので,タイミ ングがあれば使用できる],[子どもの予後予測は難しく,伝える タイミングは難しい] 【家族の受け入れ状況】 [見たくない家族もいる],[ご家族の受け入れ状況による],[受け 入れている家族があれば需要はありそう],[すべての家族には難 しい],[現状を受け入れていれば使える] 【子どもの状況】 [子どもの状況に合わせて] 【医療チームとしての方針】 [チーム医療を前提とすれば,使用に際して医師も含めたチーム 内の合意形成は必須] 【家族・医療者の信頼関係】 [終末期に至るまでのスタッフと患者・家族の信頼関係が築けて いれば使える] 【医療者の使用に対する考え】 [最後まで積極的な治療を望む家族が多いため使用しにくい], [渡しづらい],[使用に抵抗がある],[宣言しているような気にな る] 【資料の分量】 [使ってみながら内容・分量の調整が必要]

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考 察

 本研究では,看取りの時期にある小児がんの子ども をもつ家族向けのパンフレットを作成し,小児がんに 携わる医療者に対してパンフレットの使用可能性に関 する質問紙調査を実施した.その結果パンフレットは 8割以上の回答者から肯定的な回答が得られ,使用可 能性を備えていることが確かめられた.自由記述から は,家族の理解や医療者とのコミュニケーションを促 進するツールとなり得ることが示された.  医療者が患者や家族への情報提供や意思決定支援に 障壁を持っていることは先行研究からも示されてい る9,18)が,本研究において小児がんに携わる医療者の ほとんどが看取りを迎えようとしている子どもとその 家族へのケアに困っており,パンフレットのニードを もっていることが明らかとなった.  調査の結果,パンフレットは 8 割以上の回答者から 肯定的な回答が得られ,使用可能性を備えていること が確かめられた.この理由として以下の 2 点が考えら れた.第一に,パンフレットは,臨床症状だけでなく, 子どもと家族を中心に,大切にしたいことを考えると いうプロセスを含めて作成された.こうした医療者と 子ども・家族の相互方向のやりとりを意図した構成 は,話し合いの場面でのコミュニケーションを促進で きると医療者が評価し,高い使用可能の評価につな がった可能性がある.第二に,DNAR に関する議論の 提案はご家族の中で話し合ってほしいことの項目の中 に包含した.DNAR を行うか,行わないかという議論 図 2 パンフレット項目の難易度 欠損値を除いて%を算出した 欠損値を除いて%を算出した 3 3 2 1 7 5 2 5 11 3 97 97 94 97 92 92 92 94 82 85 4 1 1 3 6 1 7 12 0% 20% 40% 60% 80% 100% 難しい ちょうどよい 簡単 1.お子さんのことを教えてください(n=65) 2.これから大切にしたいこと(n=62) 3.これからの時期のからだの変化(n=62) 4.からだに苦痛があるとき(n=65) 5.飲んだり食べたりできないとき(n=64) 6.のどがゴロゴロするとき(n=65) 7.息が苦しそうなとき(n=64) 8.つじつまが合わなかったり, いつもと違う行動をするとき(n=65) 9.これからのためにご家族で 話し合ってほしいこと(n=65) 10.ご家族のみなさまへのメッセージ(n=65) 図 3 パンフレット項目の分量 欠損値を除いて%を算出した 欠損値を除いて%を算出した 2 5 2 2 2 2 91 93 95 95 90 95 93 92 97 97 7 2 3 5 6 3 5 8 3 3 0% 20% 40% 60% 80% 100% 多い ちょうどよい 少ない 1.お子さんのことを教えてください(n=60) 2.これから大切にしたいこと(n=60) 3.これからの時期のからだの変化(n=60) 4.からだに苦痛があるとき(n=59) 5.飲んだり食べたりできないとき(n=60) 6.のどがゴロゴロするとき(n=59) 7.息が苦しそうなとき(n=60) 8.つじつまが合わなかったり, いつもと違う行動をするとき(n=59) 9.これからのためにご家族で 話し合ってほしいこと(n=59) 10.ご家族のみなさまへのメッセージ(n=59)

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ではなく,DNAR がこれからの過ごし方という本質的 な議論の一要素として扱われるように構成された点 は,この項目への必要性やわかりやすさに対する肯定 的な意見の多さや,パンフレット全体の高い評価につ ながったと考えられた.  多くの回答者から使用できると声が聞かれた一方 で,回答者の 10%は本パンフレットを「使えない」と回 答した.自由記述では,「使用するうえでの留意点」と して【子どもの状況】,【家族の受け入れ状況】,【医療 チームとしての方針】,【家族・医療者の信頼関係】と いった要素が抽出された.これらの留意点は成人を対 象としたパンフレットに関する先行研究でも同様の要 素が抽出されており7),パンフレットの効果的な活用 に当たって検討すべき事柄であると考えられた.家族 が子どもの状況をどのように捉えているのか,医療者 と家族がオープンに今後のことについて話し合うこと ができているか,医療者は当該家族へのパンフレット の使用をどのように考えているか,渡すとしたらどの ようなタイミングが家族にとって望ましいか,現在の 家族の状態からみて与える情報が過多とならないかな ど,状況に応じて十分に検討して使用していく必要性 がうかがえた.さらに,小児がんは,とくに血液腫瘍 の場合,アクティブな治療を継続しながら終末期を迎 えることも多く,家族が終末期と認識することの難し さが指摘されている19).また,Matsuoka らの遺族調査 では,家族は子どもの死が近いことを頭で理解できて も,事実として捉えることが難しく,認識には段階が あったことを示している20).パンフレットの使用前だ けでなく,使用後も継続的に家族の子どもの死に対す る気づきや認識を医療者が捉え,支持していくことが 望まれる.  こうした疾患のもつ治療的な背景や使用に留意を要 することは,「ぜひ使用したい」よりも「できれば使用 したい」の回答が多かったことや,家族に対して「使用 できない」の回答が一定数みられた一因となったと考 える.使用の際は安易な配布を避け,家族の状況のア セスメントや,医療チームで終末期ケアの議論を重ね ながら,パンフレットの活用を検討することや,配布 後も家族の理解状況を把握し,継続的に看取りの時期 の過ごし方を一緒に考えていく必要があると考える.  パンフレットの各項目に関しては,「お子さんのこ とを教えてください」,「これから大切にしたいこと」 の項目において,「1 週間前に聞くのは遅いのではない か」との意見がみられた.これらの項目は終末期のみ ならず日々の子どもと家族のケアの中で重要とされる 要素を包含していると考えられる.したがって,パン フレットをきっかけに様々な議論をする中での基盤と して活用されるだけでなく,パンフレットの使用前か らも日々のケアの中で継続して検討されていることが 必要と考える.  成人患者向けの看取りのパンフレットの調査報告で は,患者の死亡 1 カ月以上前にパンフレットを配布さ れた家族の方がそれ以降に配布された家族よりも,配 布が「遅すぎた」と回答した割合が少なかったことや, パンフレットを受けとるのが「早すぎた」と回答した家 族が 2%以下だったことも報告されている21)が,使用 に当たっては留意点について継続的に検討し使用する ことが重要と考える.  また,宮下らは,子どもの病状や起こり得る事態に ついて〈家族が子どもの看取りまでを考えられるよう な情報を提供〉する重要性を述べている22).医療者と 家族との関係構築の状況を踏まえながら,対象の家族 が子どもの看取りまでを考えるために適切な情報をア セスメントし,パンフレットのどの項目を活用するこ とが家族にとって有用か検討する必要がある.さら に,医療者が少ない小児の看取り経験の中でパンフ レットを使用することが想定されるため,パンフレッ トを使用するための臨床教育の充実も合わせて進めて いくことが重要と考える.  本調査の限界について述べる.まず,本研究で設定 した対象の一部にはパンフレット作成の口演発表後に パンフレットを希望した者が含まれており,実際の使 用をすでに前向きに検討していた集団がサンプリング された可能性がある.さらに一部の対象は年間症例数 が一定数おり,子どもの看取り経験が豊富な医療者が 多い集団と予測される小児がん診療病院の医療者で あったため,子どもの看取り経験が少ない医療者の声 が十分に反映できていない可能性があり,結果を解釈 するうえで留意すべきと考える.また,回答率は 28% と低く,結果の一般化には限界がある.加えて,全回 答者のうち看護師の占める回答割合が 8 割と高く,実 際に説明を行う可能性のある医師からの意見が拾い上 げられていない可能性がある.さらに,本研究は医療 者を対象とした調査であり,家族への使用可能性が確 保されたわけではない.実際にパンフレットを用いた 場合には,家族の背景や時期,説明の方法,専門家に どのような支援が必要であったかなどの声を集めるこ とでさらに使用可能性を検討し,効果的な活用による 患者・家族への効果の検証につなげていく必要がある.  本パンフレットは,使用上の留意事項を添えてホー ムページ上に公開しており,使用した症例を蓄積し, フィードバックを踏まえながら改編していく予定である (ホームページ:http://www.chn.med.tohoku.ac.jp/mitori/). また,終末期の小児がん患者と家族のケア経験が少な い医療者であっても使用できるように,医療者向け教 育ツールを作成していくことが望ましいと考える.

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結 論

 看取りの時期にある小児がんの子どもをもつ家族向 けパンフレットである「これからの過ごしかたについ て―子ども版―」は一定の使用可能性を備えているこ とが確かめられ,使用の利点として【言葉にすること が難しい部分のコミュニケーションが図れる】,【家族 が理解しやすい】,【家族のタイミングで読める】,【看 取りの方向性がわかりやすくなる】が明らかになっ た.また,使用の留意点として【渡すタイミング】,【家 族の受け入れ状況】,【子どもの状況】,【医療チームと しての方針】,【家族・医療者の信頼関係】,【医療者の 使用に対する考え】,【資料の分量】が示され,抽出され た使用上の利点や留意点について個々の症例ごとに検 討を重ねて用いることで,効果的な活用ができると考 えられた. 付記 このパンフレットの開発は平成 25-26 年度科学研究費 助成事業 挑戦的萌芽研究「終末期ケアに関わる看護師主導型 の各種クリニカル・パスの評価」(研究代表者:宮下光令,分担 研究者:塩飽 仁)によって行われた. 本研究内容は第 13 回および第 14 回日本小児がん看護学会学術 集会で発表した. 宮下光令:原稿料および顧問料(メディカ出版株式会 社) その他:該当なし 入江,名古屋は研究の構想・デザイン,研究データの 収集・分析・解釈,原稿の奇草および重要な知的内容 に関わる批判的な推敲に貢献した.羽鳥,吉田,尾形, 塩飽は研究の構想・デザイン,研究データの収集・分 析・解釈および原稿の重要な知的内容に関わる批判的 な推敲に貢献した.松岡,多田羅,永山,宮下は研究 の構想・デザイン,研究データの解釈および原稿の重 要な知的内容に関わる批判的な推敲に貢献した.ま た,すべての著者は投稿論文ならびに最終原稿の最終 確認,および研究の説明責任に同意した. 文 献

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(8)

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(9)

Original Research

A Booklet for Families of Children Dying

with Incurable Cancer: Development and Feasibility

Study by Opinions of Pediatric Oncology Specialists

Wataru Irie,

1)

Yuko Nagoya,

1,2)

Yuko Hatori,

3)

Saran Yoshida,

4)

Akiko Ogata,

5)

Mari Matsuoka,

6)

Ryohei Tatara,

7)

Jun Nagayama,

8)

Mitsunori Miyashita,

9)

and Hitoshi Shiwaku

1)

1) Department of Child Health Nursing, Health Sciences, Tohoku University Graduate School of Medicine, 2) Nursing Department, Miyagi children’s Hospital,

3) Children’s Hospice, Yodogawa Christian Hospital,

4) Department of Clinical Psychology, Tohoku University Graduate School of Education, 5) Department of Psychology, Hiroshima University Graduate School of Education,

6) Human Health Science, Child Health and Development Nursing, Graduate School of Medicine and Faculty of Medicine Kyoto University,

7) Department of Palliative Medicine, Osaka City General Hospital, 8) Department of Palliative Medicine, Hamanomachi Hospital,

9) Department of Palliative Nursing, Health Sciences, Tohoku University Graduate School of Medicine,

The purpose of this study was to clarify feasibility of a booklet for families of children dying with incurable can-cer. Of 267 pediatric oncology specialists, 76 (28%) participated in this cross-sectional survey. Ninety-three per-cent of participants answered that they were “likely to use” the booklet, and 86% perper-cent answered that they believed the booklet was “helpful” for families. Some participants described various advantages of its use as fol-lows: “able to communicate something that is difficult to put into words,” “easy to understand for families,” “families can read whenever they choose to,” and “able to grasp the direction of dying.” In contrast, other partic-ipants described points of attention of use as follows: “optimal timing to bring out,” “acceptance of families,” “direction as interdisciplinary team,” “confidential relationship between families and interdisciplinary team,” “disinclination among health care providers,” and “information volume of the booklet.” Thus, our results vali-dated feasibility of the booklet. In conclusion, pediatric oncology specialists should provide their support of uti-lizing the booklet for families and assessing each family condition and advantage/attention of using the booklet.

Palliat Care Res 2018; 13(4): 383-91

参照

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