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不動産投資の活発化を梃子に不動産価格の回復に弾みがつけば 資産効果による消費拡大や投資の活発化につながり 実体経済への好循環が期待される 一方 行き過ぎた価格上昇など資産市場の変調が先んじて現れやすいのも 不動産投資市場である 不動産ミニバブルといわれた 年代半ばには海外からの投資資金流入などにより

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Academic year: 2021

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最近の不動産市場について

ミニバブル期に比べて投資市場は冷静

○ 2013年の地価は前回の地価回復初期(2005年)と比べて緩やかながらも回復に広がり。土地取引も 大幅に増加しており、実需に沿った地価回復の動き ○ 不動産投資市場に目を転じると、地方都市のキャップレートは漸く低下し始めたもののミニバブル 期に比べれば高止まり。一方、都区部のキャップレートは2006年並みまで低下 ○ もっとも、足元で都区部のキャップレート低下に最も寄与しているのは期待成長率の上昇であり、 リスクプレミアムの大幅低下によってキャップレートが低下した2006年に比べて投資市場は冷静

1.はじめに

アベノミクス始動とともに日本経済の回復が続く中、不動産市場の回復も鮮明となっている。ジョ ーンズラングラサール(JLL)の調査によれば、2013 年の日本の商業用不動産への投資額は 3 兆 9,890 億円、前年比+101%と急拡大した。商業用以外も含む不動産売買額(上場企業等の取得額)データ で取得者の内訳を見ると、2013 年度は REIT による取得が最も大きかった(図表 1)。2013 年には J-REIT が 6 銘柄上場したほか私募 REIT の組成に向けた動きが広がるなか、国内投資法人の物件取得の活発 化が不動産投資市場の回復を牽引した。 図表1 上場企業等の不動産取得額 図表2 地価公示の推移 (資料)都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0 05 06 07 08 09 10 11 12 13 (兆円) (年度) J-REIT等 SPC 建設・ 不動産 その他 私募・海外 REIT 4.9兆円 経済調査部エコノミスト 大和香織 03-3591-1284 kaori.yamato@mizuho-ri.co.jp

日本経済

2014 年 6 月 20 日

みずほインサイト

▲ 10 ▲ 8 ▲ 6 ▲ 4 ▲ 2 0 2 4 6 8 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 全国 三大都市圏 地方 (前年比、%) (年) (注)各年1月1日時点。 (資料)国土交通省「地価公示」よりみずほ総合研究所作成

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2 不動産投資の活発化を梃子に不動産価格の回復に弾みがつけば、資産効果による消費拡大や投資の 活発化につながり、実体経済への好循環が期待される。一方、行き過ぎた価格上昇など資産市場の変 調が先んじて現れやすいのも、不動産投資市場である。不動産ミニバブルといわれた2000年代半ばに は海外からの投資資金流入などにより過熱感が急速に高まったものの、不動産価格の上昇は長く続か なかった。世界的な超金融緩和状態が続く中、今回の回復局面でも同様の懸念がないのか。現時点で、 あるいは近い将来、日本の不動産投資市場に過熱感が生じるか否かは、日本経済の重要な論点である。 以下では不動産市場全体の回復状況を確認した上で、投資市場の回復について検証する。なお本稿で は、特に断りのない場合、「ミニバブル期」を「2000年代半ば(主に2005~2007年)の不動産市場の 活況期」を指して用いる。

2. 地価の回復に広がり

地価は2013年を通して回復傾向が鮮明となっている。2014年1月1日時点の地価公示は、三大都市圏 の地価(全用途)が前年比+0.7%(2013年1月1日時点は同▲0.6%)と6年ぶりに上昇した(前頁図表 2)。地方圏(全用途)は下落が続いているものの同▲1.7%(同▲2.8%)とマイナス幅が縮小し、全 国平均では同▲0.6%とほぼ横ばい圏まで回復した。 今回の地価回復の特徴として、前回の地価回復局面よりも、幅広い地点で緩やかに回復しているこ とが挙げられる。三大都市圏の地価が上昇に転じた2005年(2006年1月1日時点)と2013年(2014年1 月1日時点)の地価公示の調査地点データ(全国、全用途)を用いて、地価水準別に各地点の地価変動 率をプロットしたのが図表3である。2005年には上昇地点の多くが10%を超えており、なかには40%近 く上昇した地点もあるなど、全般に高い上昇率を示していた。しかし今回は、地価水準に関わらず5 ~10%程度の上昇率に集中している。また、グラフでは示していないが、地価が上昇していた地点の 図表3 地価変動率の散布図(全国・全用途) 2005年 ▲ 30 ▲ 20 ▲ 10 0 10 20 30 40 0 10,000 20,000 30,000 40,000 (前年比、%) (地価水準、千円/㎡) 2004年 ▲ 30 ▲ 20 ▲ 10 0 10 20 30 40 0 10,000 20,000 30,000 40,000 (前年比、%) (地価水準、千円/㎡) 2013年 ▲ 30 ▲ 20 ▲ 10 0 10 20 30 40 0 10,000 20,000 30,000 40,000 (前年比、%) (地価水準、千円/㎡) 2012年 ▲ 20 ▲ 10 0 10 20 30 40 0 10,000 20,000 30,000 40,000 (前年比、%) (地価水準、千円/㎡) <ミニバブル期> <今回> (注)各翌年1月1日時点。 (資料)国土交通省「地価公示」

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3 比率は地方・都区部(東京23区)ともに、2005年より2013年の方が高い。さらに地価変動率のばらつ き(標準偏差)は、地方・都区部とも2005年に比べて小さい。すなわち、今回は2005年に比べて上昇 幅が小さく緩やかではあるものの、回復に広がりがみられることが確認できる。 さらに今回は、前回の回復に比べて土地取引が全国で活発化していることも特徴として挙げられる。 土地取引の指標として「土地の売買に伴う移転登記個数」をみると、2013年は前年比+9.9%と2桁近 い伸びを示した。地域別(各地法務局別)では、東京圏だけでなく、東北を筆頭に地方でも幅広く土 地取引が増加している。住宅や商業地など用途別内訳は不明だが、震災復興や増税前の駆け込みによ り住宅市場が回復していたことを踏まえると、住宅の登記増が全体を押し上げた可能性がある。それ に対し、2005年の土地取引は同+1.7%の伸びにとどまり、かつ取引増の大部分が東京圏と大阪圏に偏 っていた。全国平均の地価が上昇に転じた2006年(2007年1月1日時点)には、土地取引は早くも減少 に転じている。

3. 足元の地価回復は実需に沿った動き

前節でみたような、ミニバブル期とは異なる特徴をもつ今回の回復の背景として何が考えられるの か、土地取引の動向と地価変動率の関係をみることで検証する。井出・倉橋(2011)を参考に地価変 動率を縦軸、土地取引件数の変化率を横軸にとり、各年のデータをプロットしたのが図表 4 及び図表 5 である。地価と土地取引量の関係を示すグラフは、反時計回りの動きを示す傾向がある。つまり、 景気回復によって地価上昇期待が高まると、取引が増加して価格が上昇する局面(第 1 象限)に入る。 その後、土地所有者が将来の値上がり期待から供給を絞るため、地価が上昇し続ける中で土地取引は 減少する局面(第 2 象限)に入る。さらに、需要が価格上昇についていけなくなるにつれて、地価下 落と土地取引の減少がともに起こる局面(第 3 象限)にシフトするのである。 図表 4・5 で現在の位置を確認すると、全国平均では土地取引の拡大に伴い地価下落率が縮小して第 図表4 全国 地価変動率と土地取引件数 図表5 東京圏 地価変動率と土地取引件数 -7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 -15 -10 -5 0 5 10 15 土地取引(前年比、%) 地 価変動率 ( % ) 2006 2007 2008 2001 2003 2011 2012 2013 2005 (注)地価は翌年1月1日時点の前年比変動率。 (資料) 法務省「法務統計月報」、国土交通省「地価公示」よりみずほ総合研究所作成 現在 ミ ニ バ ブ ル 期 (第1象限) (第2象限) (第4象限) (第3象限) -10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 -20 -10 0 10 20 土地取引(前年比、%) 地 価変動率 ( % ) 2006 2007 2008 2001 2003 2011 2012 2013 (注)地価は翌年1月1日時点の前年比変動率。 (資料) 法務省「法務統計月報」、国土交通省「地価公示」よりみずほ総合研究所作成 ミ ニ バ ブ ル 期 現在 (第1象限) (第2象限) (第4象限) (第3象限)

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4 1 象限に近づき、東京圏ではすでに土地取引の増加と地価上昇が同時に起こる第 1 象限入りしている。 一方、ミニバブル期には、全国平均では土地取引の増加を伴うことなく地価が下落から上昇に転じ(第 4 象限→第 2 象限)、東京圏も 2006 年に土地取引がほぼ横ばい状態で地価が上昇、その後 2007 年には 第 2 象限に入っていた。名古屋圏、大阪圏についても、概ね足元・ミニバブル期とも同様の傾向を示 していた。 ミニバブル期に土地取引が減少しながらも地価が上昇したのはなぜか。可能性として考えられるの は、ミニバブル期には不動産市場が回復する中で投機的動きが強まり、需要が優良な特定不動産に偏 ったのではないか、ということだ。地価公示は取引事例に基づく鑑定価格であるため、高値の売買実 績が周辺の地価(鑑定価格)にも影響し、全体として地価は上昇する。しかし特定不動産に需要が集 中すれば、土地取引総数は減少する。それに対して、2013 年は土地取引の増加を伴って地価が上昇し ており、実需に沿った回復を遂げていると評価できる。

4. 不動産投資市場の過熱感は都区部で 2006 年並み

前節の分析では、登記統計データの制約から住宅や商業用などの用途別の動向はわからない。全体 としては実需に沿った緩やかな回復を示していても、住宅用途等を除いた投資市場では過熱感が強ま っている可能性もある。 投資家の過熱感を測る指標として、しばしば「キャップレート」が用いられる。キャップレートは 投資家が投資の判断基準として用いる還元利回り(期待利回り又は取引利回り)であり、「不動産から 得られる純収益/不動産価格」で求められる。この式を変形すると「不動産価格=不動産から得られ る純収益/キャップレート」となり、純収益を所与とすれば、投資家がどの程度の利回りを期待する か(キャップレート(期待利回り)をどう想定するか)によって不動産価格が決定されることになる。 日本不動産研究所「不動産投資家調査」によれば、国内の主要ビジネス地区のキャップレート(期 図表6 キャップレートの推移 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 丸の内・大手町 日本橋 港南(品川) 上野 (年) (%) 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0 7.5 8.0 8.5 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 札幌 仙台 名古屋 大阪(御堂筋) 福岡 (年) (%) (注)各地区の標準的なAクラスビルの期待利回り。各年4月、10月調査。 (資料)日本不動産研究所「不動産投資家調査」

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5 待利回り)は、概ね低下傾向にある(前頁図表 6)。丸の内・大手町や日本橋など東京都心部では 2012 年頃より低下が続いていたが、足元では札幌や名古屋、福岡といった地方都市でも低下し始めている。 直近(2013 年 10 月調査)のキャップレートの水準に注目すると、東京の各地区は概ね 2006 年の 4 月 ないし 10 月調査の水準まで低下しているが、地方都市では大阪を除いて 2005 年 4 月並みの水準にと どまっている。キャップレートから判断すると、東京の各地区ではミニバブル期最中の 2006 年並みの 過熱感が生じている可能性がある。

5. ミニバブル期とは異なる足元のキャップレート低下要因

もっとも、最近のキャップレートの低下要因をみると、2006 年当時とは異なる様相を呈しているこ とがわかる。東京都区部のキャップレートの変動について、収益還元法の考え方を用いて①リスクフ リーレート(10 年債利回り)、②リスクプレミアム(インプリシット(キャップレートの変動から① 及び③を除いた残差))、③不動産から得られる純収益の期待成長率(企業の今後 3 年の名目期待成長 率)に要因分解する(詳細は補論)。純収益の期待成長率は、上昇した場合にキャップレートが低下す るという逆符号の関係となる。将来的に賃料の上昇などによって純収益の増加が見込まれれば、純収 益が増加しない場合に比べて高い不動産価格(低いキャップレート)を投資家が受け入れると考えら れるためである。 要因分解の結果(図表 7)、2006 年はリスクプレミアムの低下がキャップレートの低下に最も寄与し ていたのに対して、2013 年は期待成長率の上昇がキャップレートを大きく押し下げ、リスクプレミア ムはむしろ上昇する(キャップレートを押し上げる)形となっている。 2006 年のリスクプレミアム低下については、不動産価格の持続的上昇期待が強まり、元本割れリス クなどが意識されにくくなったことが影響したと推察される。また、ミニバブル期には海外投資家や 図表7 キャップレートの要因分解 (注)キャップレートは、都市未来総合研究所「RENEX」2006年純収益利回り実績6.27%を基準とし、オフィス賃料/地価(都区部商業地)の伸びを用いて算出。 (資料) 国土交通省「地価公示」、三井不動産「不動産関連統計集」、 都市未来総合研究所「不動産トピックス」(2006年10月)、CBER、内閣府「企業行動に関するアンケート調査」等 より、みずほ総合研究所作成 <ミニバブル期> <今回> 収益還元法を用いたキャップレート の要因分解方法 P=D/キャップレート キャップレート=D / P =rfr+δ-g P:       不動産価格(地価) D :      純収益(オフィス賃料) rfr:    リスクフリーレート(10年債利回り) δ: リスクプレミアム(インプリシット) g:        純収益の期待成長率 (企業の名目期待成長率) ▲ 1.6 ▲ 1.4 ▲ 1.2 ▲ 1.0 ▲ 0.8 ▲ 0.6 ▲ 0.4 ▲ 0.20.0 0.2 0.4 0.6 キ ャ ッ プ レ ー ト リ ス ク フ リ ー レ ー ト リ ス ク プ レ ミ ア ム 期 待 成 長 率 ( ▲ ) 2005 2006 (前年差、%Pt) ▲ 0.8 ▲ 0.6 ▲ 0.4 ▲ 0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 キ ャ ッ プ レ ー ト リ ス ク フ リ ー レ ー ト リ ス ク プ レ ミ ア ム 期 待 成 長 率 ( ▲ ) 2012 2013 (前年差、%Pt)

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6 拡大志向が強い新興不動産企業の存在感が高まったといわれており、リスク選好度が高い投資家が増 加した可能性もある。海外投資家や新興不動産企業の投資動向を直接示すデータはないが、前者につ いては国際収支統計(旧基準)の「その他資本の対内直接投資(流入)」に外国人の不動産取得が含ま れている。「その他資本の対内直接投資(流入)」は、2005 年に 1 兆円を超えた後 2007 年には 3.4 兆 円まで増加したが、外国人の不動産取得の増加が大きく寄与していたと推測される(図表 8)。 一方、足元では、強力な金融緩和によるデフレ脱却期待などアベノミクスへの期待を背景に純収益 の期待成長率が高まったことが、キャップレートの低下につながっている。実際に、純収益の主要な 源泉である東京のオフィス賃料は 2014 年1月以降、上昇基調に転じている。当面は 2003 年や 2012 年のようなオフィスビルの大量供給は見込まれておらず(図表 9)、需給が急激に悪化する懸念も小さ い。なお、リスクプレミアムの上昇は、ミニバブル期の教訓もあり、不動産市場の回復局面でむしろ リスクが意識され易くなったことを映じていると考えられる。また、当時と異なり、今のところミニ バブル期のような新興不動産企業の急拡大は見られず、2013 年の「その他資本の対内直接投資」を見 る限り、海外からの投資が急拡大した様子もない。 以上から、ミニバブル期には海外投資家や新興不動産会社などの投機的資金流入が不動産市場の回 復を牽引していた(過熱感をもたらしていた)のに対して、今回は不動産から得られる純収益の上昇 期待に応じた回復を遂げていることが示唆される。こうした不動産投資市場の動向の差異は、先に地 価と土地取引の関係によって検証した、不動産市場全体についてのミニバブル期と今回の差異をもた らした要因とも符合する。

6. おわりに

本稿では、ミニバブル期との比較を通して今回の不動産市場の回復を検証した。ミニバブル期のよ 図表8 その他資本の対内直接投資(流入) 図表9 大規模オフィスビルの供給計画 0.6 0.8 1.2 2.1 3.4 2.9 1.7 1.7 1.5 1.0 1.2 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 (年) (兆円) (資料)日本銀行「対外・対内直接投資」 0 50 100 150 200 250 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 その他20区 都心3区 (万㎡) 見通し (年) (注) 事務所延床面積1万m2以上のオフィスビル供給量。 (資料) 森ビル「東京23区の大規模オフィスビル市場動向調査」

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7 うな投機的動きではなく、本稿で確認された期待成長率の高まりあるいは実需に沿った回復が続く限 りは、不動産市場の回復は持続的なものとなろう。 もちろん、今の状況が持続するかは不確実である。JLLの調査によれば、2014年第1四半期の日本の 商業用不動産投資額のうち、25%が欧州やアジアなど海外からの資金であったという。CBREの投資家 意識調査では、日本が含まれる「Developed Asia」を投資ターゲットとする欧州投資家は、リスクの 高い新興国の代わりに日本への投資を検討していることが報告されており、最近の海外からの投資資 金は長期の安定的投資を志向している可能性もある。だが世界的に超緩和状態が続く中で、日本へ投 機資金が流入する(し始めている)可能性は排除できない。 不動産市場の過熱の兆候を見極めるには海外投資家動向を捉えることが不可欠であるが、現状のと ころそうしたデータを公表しているのは海外の不動産調査会社数社のみである。外国人による営利目 的の日本の不動産取得については外為法により届出が義務付けられていることからデータは国が把握 しているはずだが、公表はされていない。前節でみた「その他資本の対内直接投資」は2014年1月より 更新停止され、外国人の不動産取得は企業の出資等を含む「株式資本の対内直接投資」に含まれてし まった。海外投資資金に関するデータを通して不動産市場の過熱感を民間でも把握し易くなれば、過 熱感の増幅を少しでも抑えることができると考えられる。今後のデータ整備が望まれる。 <参考文献> 井出多加子・倉橋透(2011) 『不動産バブルと景気』(日本評論社) CBRE(2014)Global Investor Intentions Survey 2014 JLL(2014)Global Capital Markets Research,Q1 2014

<補論>キャップレートの要因分解について 不動産価格

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(1) :割引率 の期待成長率、 :純収益 純収益、 :不動産から得られる g D i D (1)式は初項

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(2) 不動産はリスク資産であるから、割引率は

 rfr

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:リスクフリーレート、

:リスクプレミアム となり、 (2)式は

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と書き換えられる ここで、

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=キャップレートである ●当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに 基づき作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。

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