香川大学農学部学術報告 第45巻 第1号 59∼67,1993 (総説) 団粒に関する研究の動向*
山田 宣良
緒土壌の団粒は粒団または集合体ともいわれ,基本となる一次粒子とそれによって組み立てられて
いる二次粒子とから形成されている.−・般に農耕地の土壌が団粒,とくに耐水性団粒を多く召している場合には,土壌物理的に見て土
地の生産性が高いものと考えられており,また団粒の形成とその維持は土地保全上の手段であり,
目的でもある.したがって農耕地を対象とした応用土壌物理学の分野において,団粒は古くから重要な研究課題
として取り上げられており,多くの研究者達によってその実態が明らかにされつつある.
筆者は1970年代後半から,土壌の団粒に関する−・連の研究を通じて,多数の文献に接する機会を
得たので,それらの文献をもとにして過去から現在,そして未来につながる団粒の研究の動向を明
らかにしたいものと考える.本総説においては,以下の視点からとりまとめを行った.
(1)表題,章の見出し,キーワ1−ドなどにおいて団粒,aggregate,またはそれと同義の用語が用い
られている論文を対象とした.(2)主として最近20年間に発表された論文(1991年まセ)を対象としたが,それ以前であってもと
くに著名なものは追加した.
(3)香川大学図書館農学部分館において購読されている専門雑誌であることを原則とした.した
がって著名な雑誌ではJournalofSoilScience(UK)などが,また各大学の学術報告,単行本な
ども除外されている.ただし分野別に発行されている農業技術研究所報告などは対象の中に加え
た.(4)単なる文献の羅列となることを避け,①団粒の測定法と表示法,②団粒の基本的性質,③団粒
と土壌の物理性との関係,④団粒と作物の生育との関連性,⑤浸食と関連した土壌の構造の5っ
の分野に分け,それぞれ歴史的展望と今後の方向についての私見を加えてCriticalreviewとし
た.なお,著者名の表示に際しては,1名の場合には姓名を,2名の場合には姓のみを,3名以上の
場合には筆頭者名+他(efαりとした.
団粒の測定法と表示法 (1)歴史的展望 団粒の測定法と表示法に関連した過去の諸研究成果のうち主なものは表−1に示すとおりであ ■Cr・iticalreviewconcemingstudiesontheaggregateofsoilNoriyoshiYAMADA表−1 団粒の測定法と表示法
No 著 者 名
年度 主 な 内 容 と 結 論 YoDERの湿式フルイ分け法として知られる分析法,浸食の判定 団粒の表示法として平均質量眉径を指標とすることを提案 YoDERの分析法を改展,水分による団粒の耐水性の変化を研究 水田土壌の団粒分析,沸化作用,土塊の大きさ,浸潰時間等検討 粒径4∼025mmの団粒の仮比重をケロシンによって測定 フォトメータを使用して,粒子の配列度から団粒の安定性を判定 湿式節別法では団粒が膨張し,硬化により過大に評価される 湿式団粒分析法の意義,水田土壌における結合物賀,土壌改良剤 4種類の方法によって団粒の安定性を測定した 団粒の強度表示法,粘土,C,団粒径,容積重,受食性に関連 平板の圧壌試験により団粒の硬さを測定,水分により変化する 分散前後の粒径加横曲線の差で団粒率を表示,Caと有機物の作用 崩落率と分散率による団粒の類別化と安定性評価の可能性 平行板で圧縮試験を行い,乾燥した団粒の強度を.I/m2で表示 EMERSONの方法は,風乾土には適用可儲,生土には困難 団凝の破壊エネルギーの測定装置を捏示,平板十ロードセル 団粒の破壊に要するエネルギーを,18因子の多項式で表示 団粒を密度一定の球と仮定し,フラクタル理論で崩壊の確立表示 団粒の評価法として,団粒率と平均質畳直径との併用が有意義 1 YoDER,R E 1936 2VAN BAVEL,C HM 1949 3美園他 1953 4 川口,喜田 1956 5川口,虎谷 1958 6CAGAVAN,UEHARA 1965 7GupTA,G C 1965 8 富田大三 1965 9 WIL.11AMS gfαJ 1966 10RoGOWSKIeta1 1968 11新垣,長田 1977 12横瀬,山田 1977 13小川和夫 1981 14SKIDMORE,PowERS 1982 15渡辺他 1982 16BoYD efαJ 1983 17WusTAMIDIN etal 1985 18PERFECT,KAY 1991 19山田,横瀬 1991 る.表中のNoは文末の引用文献の番号と合致しているので,ここでは表−1を対象として考究す
る. 歴史的にみて,まず特筆されるのはNo.1である.現在でもYoDERの湿式ふるい分け法として知 られるこの分析法は,No3美園の改良を経てわが国における現行団粒分析法の主流となっている.No.2VANBAVELは,平均質量直径による団粒の「大きさ」に主眼点をおいた表示法を提唱し,
現在でも国際的に採用されている. 川口,喜田らはNo4,5,8などにおいて水田の団粒分析を行い,わが国の水田に適合した分析法 を提唱した. その後の研究は,団粒の強度の測定と表示とが中心となり,わが国では新垣,長田(No11)によっ て平板圧壊試験による団粒の強度測定法が提唱された.国際的にみても,平板を用いた圧縮試験に よって団粒の強度を測定するのが1−・般的になっている. 筆者ら(No12)は.JISの粒度分析法との整合性を配慮して,分散前後の粒径加横曲線の差から団 粒の「畳」に主眼点をおいた測定法と表示法を提唱し,これと平均質量直径との併用によって団粒 を評価するのが有意義であることを立証した(No.19). (2)今後の方向 土壌の団粒の測定法や表示法は,これまでは各研究者が,それぞれの目的に応じた測定法や表示 法を選択的に採用してきたきらいがある.したがって相互の研究成果が直接比較できない場合が多 く,みかけ上全く逆の結論が得られている場合すら見られる. これに対して土壌の粒度分析法は,土質工学の分野では一JISの基準が採用され,土壌学の分野で は国際土壌学会の方法が多用されているような相違点はあるが,基本的には相互のデータの比較に 際してそれほどの困難は感じられない.すなわち,今後の方向としては,測定法,表示法の統一・あ るいは規格化が必要であり,その意味において暫定的に粒度分析と同程度の実用性を目ぎすのが適 当であろう.当面の研究は,測定法や表示法の是非や新旧にこだわることなく,データの互換性に山田宣良:団粒に関する研究の動向(総説) 61 心がけるべきものと考える. 団粒の基本的性質 (り 歴史的展望 団粒の基本的性質に関連した主な研究成果は表−2に示すとおりである. 表−2 団粒の基本的性質
No 著 者 名
年度 主 な 内 容 と 結 論 20 山崎他 1955 シロカキや開墾によって団恕は減少し,暗渠排水や堆肥で増加 21 PANABoKKE etal 1957 団粒はpF2∼3で最も安定し,農耕地では団粒の強度が小さい 22美園,木下 1957 団粒の生成に対して有機物,Ca,微生物,作物根が有効である 23美園,木下 1957 団粒の生成に及ぼす土粒子の粒径,有機物の影響を検討 24美園,須藤 1958 耐水性団粒の研究により,ニ次粒子の存在と意義を論述 25HARRISβfαJ 1964 細菌やキノコ類由来の団粒の安定性,形成時間と温度との関係 26 ARCA,WEED 1966 団粒率が粘土分や遊離酸化鉄と相関性をもつ:予測式で表示 27東他 1968 粘土は小団粒の生成,有機物は小→大に寄与,腐植酸は寄与せず 28AspIRASetal 1971 細菌等微生物に由来する団粒の物理・化学的強度を比較 29 斎藤,川口 1971 稲作期間中,水田の団粒盈や分散率が減少する 30斎藤,川口 1971 畑は水田に比べて団粒畳が多く,堆肥を加えると粒径大となる 31BENOIT,GR 1973 凍結が団粒の安定性と透水性に及ぼす性質を粒径別に検討 32GENRICH,BREMNER 1974 超音波分散がC,N,S,Pに富んだ粘土に対して有効である 33 HoFMAN,AppELMANS 1975 団粒の不安定性は季節変動する:サインカープで表示できる 34三輪晃一 35横瀬他 36小林浩志 37山田,古家 38 FRANCIS,CRUSE 39 堤 他 40足立他 41足立他 42新垣,長田 43BENJAMIN,CRUSE 44DEXTER eia1 45 GuIDlβgαJ 46 MISRAβ′αJ 47 中村他 48 BARLTOL.l,PHILIPPY 49STEPNIEWSKIetal 1977 圧縮による団粒の変形は水分の影響を受け,突固曲線に影響 1977 団粒の破壊作用は繰返しが最大,粒径には物性的変移点がある 1980 団粒の形成要因,牧草根の発達と団粒の形成,多糖頼の作用 1982 団粒形成に関与する因子として,シルトと分解性有機物が重要 1983 団粒の安定性は−500Paまでは乾燥に伴い増加し,その後−・定 1983 練返しによりタロボク土の団粒が細粒化,pF特性が変化する 1983 練返しにより,非火山性タロボク土の粗団粒が細粒化する 1983 火山灰土壌の突固め曲線に団粒の変形,収縮,破壊が関与 1983 タロボク土の圧縮変形は,団粒の崩壊によって生じる 1985 団粒の努断強度(フォールコーン)と容積垂(ガンマ線)測定 1985 団粒径が既知の場合の破壊力から,引張強度を算定した 1985 トウモロコシ栽培下での団粒の間隙盈と分布測定:r00t<bulk 1986 団粒の最大応力は太針径/団粒径に比例,根径や植物により相違 1986 SEM用試料作成に際して,凍結乾燥法が優れている 1990 アルミニウムと有機物の結合体が団粒の強度を決定する 1991 匡Ⅰ艇内部の酸素分圧を測定,表層20kPa∼内部4kPaまで変化 50DINEle′αよ 1991 腐植は団粒の安定性に有効,繊維は団粒の崩壊抵抗に有効 51ANDERSON,TH 1991 微小有機物が団粒の形成に及ぼす作用に関する文献を要約 この表からわかるように,わが国における研究は戦後の食糧難時代にひとつのピークを示し,現 在定説となっている団粒を形成する因子は,そのほとんどがこの時期に美園ら(No.22∼24)によっ て指摘されている. その後斎藤,川口による水田を対象にした研究(No.29,30)を経て,1983年には火山灰土壌の力学 的挙動に関連した団粒の性質に関する・−・連の研究が報告されている(No39∼42). このようにわが国における研究の動向は,時代の要請を反映した傾向が強く,かつ発展的であるといえるが,USAを中心とする諸外国の研究にはそのような傾向はほとんど認められない. その意味においてこの分野におけるわが国の研究成果は高く評価でき,とくに美園らの研究が30 年以上も前にすでに行われていたことは特筆に値する. 筆者らもこの分野において若干の検討を行っているが(No.35,37),後追いにすぎないという印 象が強い. (2)今後の方向 この分野の今後の発展は,主として2つの方向となるのではないかと考える.その1つは,新し く開発された機器を使用して団粒の基本的性質を研究する,相対的にミクロなものであり,SEM, NMR,Ⅹ線,あるいは未知の測定手段の適用によって進展が期待できる. 他の1つは,時間的,空間的変動性を追跡するマクロな視点からの検討であり,表−2のNoい25, 33,45などにその端緒を見出すことができる. これらが有機的に結合して,新しい団粒「像」が明らかになることであろう. 団粒と土壌の物理性との関係 (1)歴史的展望 団粒と土壌の諸物理性との関連についての研究成果は表−3に示した・ 表w3 団粒と土壌の物理性との関連 No 著 者 名 年度 主 な 内 容 と 結 論 1958 水田の層位別に水分,孔隙,粘士分と団粒の安定性との関連検討 1965 団粒径がpF特性に影響する場合,毛管伝導度は水分の関数となる 1965 PVAを加えて合成団粒を造り,トリチウム水により透水性測定 1970 仮比重>09のときには,団粒の発達に伴い仮比重が減少する 1971 土壌の拡散係数を団粒径の関数として表示した 1974 団粒径は透水性に影響し,表面団粒層が厚いと浸入大,蒸発小 1974 01mm以下の団粒は,pF27、39間隙畳との相関が高い 1974 水田の団顆径が大きいほど植物遺体,Fe,Mn,粘土が増加する 1975 団粒中の浸透,水分伝導度,団粒の安定性,ヒステリシスを検討 1976 容積重は団粒径が小さくなるに伴って大きくなる 1977 草地,耕地の団粒では,径が小さいほど砂分が多い 1977 火山灰土の団粒は,水分が多いほど凍結,融解により崩壊する 1977 粗大団粒は水分保持力大,蒸発速度小,間隙率大,LL,PL大 1983 火山灰土壌の浸食性の指標として,団粒の安定度が相関最大 1984 表層の団粒イヒにより浸入増加,蒸発減少し12∼19%水分節減 1984 土壌構造の発達に伴い,pF3以下の保水性が増加,構造発達係数 1986 団粒の測定法や,浸食と土壌の物理性に関する文献を抄録した 1987 水分が多いと粗大団粒ほど締囲められ,乾燥すると逆の傾向 1987 土壌構造の径が大きいほど買入抵抗が大,水平抵抗>鉛直抵抗 1987 塑性指数を上げると団粒率が増加し,乾燥密度減少,pF特性変化 1987 生土の団粒畳は物理性と相関をもち,小団粒が多いほど構造発達 1991 団粒の安定性に対して有機炭素,初期水分が影響する 52川口,喜田 53AMEMIYA,M 54小島他 55寺沢,上田 56PASSIOURA,JB 57HILlEL,BERLINER 58∴古畑他 59和田他 60GuMBS,WARKENTIN 61GuMBS,WARKENTIN 62 伊藤,森 63土谷,松田 64新垣,長田 65EGASIRA etal 66HARTMANN,BooD−T 67一 矢沢,前田 68− ToL.LNER e∼α/ 69 WII.LATりT,S T 70小 HoRN(ヲgαJ 71山田宣長 72 矢沢,前田 73GoLL,ANY et al 初期のものは団粒と透水性との関連についての研究が多く,主として間隙を中心とした土壌の構 造性の指標として団粒をとらえていたように理解できる.とくにわが国における研究には水田を対 象にしたものが多く(No・52,55,59),当時排水性の改良が重要な課題であったこととの関連が見出 される.
山田宣良:団粒に関する研究の動向(総説) 63 近年になると,火山灰土壌を対象としたものが多くみられ(No.62∼64,67,72),とくに矢沢,前 田によって提唱された「構造発達係数」の概念は,土壌の構造性を評価するうえで重要な意義を有 している. USAを中心とする諸外国の研究においても,1970年代までは透水性と関連したものが多いが,そ の後は広く物理性全般が対象となる傾向がある. これらの諸研究には個々の物理因子と団粒との相関を論じたものが多いので,筆者は多数の物理 的因子と団粒との関係を総合的に検討−し,相互の作用をシステム的にとらえることを試みたが(No 71),実際に得られた知見は従来の成果の再確認にとどまる部分が多い. (2)今後の方向 この分野に関する今後の発展の方向は,一つには前章「団粒の基本的性質」において論述したミ クロな検討とマクロな検討とがあげられる.これらの手法や概念は,団粒と土壌の物理性との関係 に対しても応用できるものと考えられる. もう・一つの方向として,突沢らの捏喝した構造発達係数のように,団粒を土壌物理学的な指標の 一つとして位置づけた上で,相互の関連性を検討することが考えられる. 具体的には,砂質土壌と粘性土壌とが全く異なる土壌物理学的体系をもつように,団粒を何らか の基準(たとえば強度)によってより本質的に評価することにより,土壌の諸物理性との関連もよ り明白になるであろう。 すなわち,これまで団粒と土壌の物理性との関係が必ずしも的確にとらえられなかったのは,本 質的に性格が異なる種々の団粒が混在した状態の下での対比であった点に問題があるのではないか と考える. 団粒と作物の生育との関連性 (1)歴史的展望 本分野に関連した文献は表−4に示すとおりである. 一\見してわかるのは,この方面でのわが国の研究が,圧倒的に立ち遅れていることであり,主な 成果のほとんどはUSAを中心とした諸外国においてなされたものである. その原因としては,まずわが国では広い研究圃場が得られにくいこと,つぎに研究に長時間を要 し,明確な結論が得られにくいこと,さらにこの種の研究に対する評価が低いことなどがあげられ る. また表−4の成果を生かそうにも,肝心の団粒をコントロールすることがかなり困難であり,実 用性に問題がある場合が少なくない. 筆者(No‖96)は6年間の輪作の結果,団粒と作物の生育との関係を相互作用としてとらえること により,若干の知見を得たが,その成果の一・般性については多少の疑問が残されている. (2)今後の方向 この分野に限っていえば,今後の見通しは極めて暗い.具体的にいえば某農学部のように「学会 誌相当論文が15以上なければ教授になれない」という規準がある場合,6年間の試験結果を1編の 論文にまとめていたのでは単純計算でも教授になるのに90年かかることになる. したがって,賢明なる研究者は栽培試験などという愚行は避け,手軽に器械のスイッチを入れれ ば結果が得られるようなテーマを選ぶこととなる.また,高齢になれば助手や学生でもコキ使わな いかぎり,この種の研究を遂行することはほとんど不可能になる. しかも大学においては,(自分ができない)栽培試験などは試験場がやることだとする偏見に満ち た風潮があり,今後の発展はほとんど絶望的ではないかと考える.
表−4 団粒と作物の生育との関連性
No 著 者 名
年度 主 な 内 容 と 結 論 1952 粗大団粒のほうが小麦の収盈が多くなることを示した 1955 団粒士では,小麦の出芽率と初期生育が良好である 1958 商収量水田土壌の団粒は耐水性,耐振動性が高く分散しにくい 1961 微細団粒のほうがテンサイの生育,発芽が良好である 1968 団粒径が小さいほどP,Nの供給畳が多い,Nは水分も影響する 1974 団粒は収量の増大にはそれほど効果をもたない 1978 団粒のマルチ厚さ4cmで水分が20%節減され,1cmで出芽率90% 1980 団粒の形成要因,牧草根の発達と団粒の形成,多糖類の作用 1982 小麦の連作,耕鯨,輪作は共に土壌の物理性に影響を与えない1982 冬季栽培が団粒の維持に重要,小麦の栽培と耕転が奄効である
1982 大豆と水稲の栽培に伴う土壌の団粒と諸物理性の変化を検討 1983 輪作の結果として,団粒の相対的性質は耕転により変化する 1984 粗大団粒は,植物根や易分解性有機物によって増加する 1984 大豆とトウモロコシの残留根が団粒の維持に有効である 1984 団粒の径が1mm以下ならOh5mm以下の直径の根に影響がある 1985 トウモロコシの栽培は,団粒の安定化に際して大豆よりやや有利 1985 トウモロコシの出芽に及ぼす影響は,温度≫水分>団粒径である 1986 根の買入畳は,下層土の強度に対して対数的に減少する 1986 団粒径が小さいほど生育促進,水分流動大,内部水分勾配大 1987 団粒の引張強度は耕作地>未耕地で,内部強度は4倍となる 1987 根の臨界圧は団粒径大,根径小,偏角小となるほど大となる 1987 2mm以下の団粒で,−4kPa以下の水分のとき発芽の妨げとなる 1989 6年間輪作の結果,大豆とジャガイモの栽培が団粒と相互に作用 1991 団粒径が大となると枝と葉が小となる,根長は径が小のとき長い 1991 輪作は土壌構造の安定性に影響し,アルファルファが垂足性向上 74HAGIN,丁 75 児玉,鈴木 76川口,喜田 77小 HAMMERTON,丁L 78CoRNFORTH,ⅠS 79 OBERMUErrER et al 80 RAWITZ,HAGEN 81小林浩志 82UNGER,P.W 83ARMBRUSてefαg 84山田,古家 85DoRMAAR,.IF 86OADES,JM 87BATHKE,BLAKE 88.WHITEl,EY,DEXTER 89ALBERTS,WENDT 90 ScHNEIDER,GupTA 91DEXTER,A R 92 BoHNE,H 93HADAS,A 94”LoGSDON etat 95SHIEL eh扉 96山田富良 97ALEXANDER,Mn,LER 98− RAIMBAUlJT,VYN 浸食と関連した土壌の構造 ‖)歴史的展望 浸食と関連した土壌の構造は,団粒とその崩壊の結果生じるクラスト(Cr’uSt)によって象徴され るので,ここではキーワードとしてクラストを含めて表−5に文献を示した. この表からわかるように,この分野でもわが国の研究成果は少ないが,その原因は,主として浸 食そのものが問題になることが少なかった.わが国の特殊事情によるものと考えられる. DuLEY(Noい99)の研究は,筆者の検索上クラストについて記述している最古の論文であり,その後の研究はMcINTIRE(No101,102)によるクラストの形成機構,HILLEL,GARDNER(No‖106,
107)によるクラストと浸入能との関係などを経て,1980年代後半からは土壌浸食全般との関連でと らえたものが多くなっている. わが国では近年,西村,中野らによってNo.124をはじめとしたクラストに関する研究が精力的に 行われている.筆者の研究(No.125)はやや理学的であり,実用性に乏しい. (2)今後の方向 客観的にみて,土壌の団粒に関する研究分野のうちで,クラストのような浸食に関係したものが 最も将来の発展が期待できるのではないかと考えられる. ただし,問題点があまりにも多岐にわたるのと,筆者のこの方面への認識が不十分であることか ら,明確な方向性を見出すことはやや困難である.山田宣良:団粒に関する研究の動向(総説) 65 表−5 浸食と関連した土壌の構造 No 著 者 名 年度 主 な 内 容 と 結 論 1939 裸他の表面に約03in厚の層が形成され,浸入塁が著しく減少 1957 クラストは容積重が大,<二01mmの径が多く,団粒率が低い 1958 クラストは細頗の流入と雨滴の衝撃によって形成される 1958 クラストの形成によって透水係数が1/10に減少した 1960 耐食性土壌に耐水性団粒が多いとは限らない,時期的変動は不明 1965 降雨によりクラスト形成,厚さ1∼3mm,透水性は1/5になる 1967 粘土畳と流亡量とが比例し,10minで流亡畳極大,クラスト発生 1969 クラストのある土壌断面内への水の流束を計算,数式で表した 1970 クラストのある土壌への非定常浸入に3段階,tの平方根に比例 1971 団粒が不安定なシルトに多回潅漑を行うと,小胞状構造が形成 1973 スプリンタラ・一濯漑の強度が低いと,弱いクラストとなる 1975 麦わらによるマルチとチゼルの使用により,団粒が保全された 1977 室内,屋外と耕転法の速いにより,クラストの強度に差がでる 1982 水分の異なる団粒に対する雨滴滴下の影響,飛散容積,透水性等 1985 乾燥によってクラストが破壊されるが,降雨によって元にもどる 1985 マサ土における土壌浸食因子として,2∼20/Jmの粒径が関連 1988 塩素イオンがクラストに及ぼす影響について,堆積クラスト 1988 大小3段階の人ユタラストにより,小段丘を発見した 1988 土壌の表面粗度は,土地利用と粘土分によって変化する 1988 散水カンガイを土の飛散中に行うと,クラストが10cm厚になった 1989 クラスト,シールと飛散損失とを土壌別に検討した 1989 ポリマーによって出芽率向上,クラストの硬度減少,団粒安定 1990 SoilTilthに関する文献をもとに,歴史,要約,展望を示す 1990 クラスト形成により浸食減少,飛散と流亡の時間的変化検討 1990 GREEN−AMPTモデルを適用し,水分伝導度を調和平均で表した 1990 クラストの形成により,地表面土の密度増大,透水性低下 1991 クラストを形態的に衝撃,沈澱,化学的なものの3種類に分類 99DuLEY,FL 100.LEMOS,LuTZ lOlいMcINTY紙DS 102.McINTYRE DS 103国分,根本 104 TACKETT,PEARSON lO5,EpsTEIN,GRANT lO6HILLEL,GARDNER lO7HILLEL,GARDNER lO8MILLER,D−E 109 BuscH et al 110 SMIKA,GREB lllHADAS,STIBBE l12内田勝利 113BEN−HER e′αJ 114EGASIRA etal 115 SoUrHARD et al 116LEVY(ZfαJ 117DEXTER,HoRN l18軽部重太郎 119REMI.EY,BRADFORD 120HELALIA,LETEY 121 KARrIN et al 122MooRE,SINGER 123h RAWLS etal 124西村他 125山田富良 西村らは,新しい手法の導入によりこの方面での研究の発展を画しているように推察するが,現 状はそれ以前の,データの集積が必要な時期にあるようにも思える.その際,USAを中心とした諸 外国の成果が,わが国にも適用できることがわかれば,この方面の研究は大幅に前進するのではな いかとも考えられる. ひとつの見解として,文献(No.121)にみられるようなテイ)t/ス(Tilth)に関する総合的研究の中 核として,学際的領域を加えた発展が最も好ましく感じられるが,それには真の意味での共同研究 の成立が前提となるであろう. ま と め 土壌の団粒に関する研究は,当初は農業と密接な関連性を持ち,土地の生産性を向上させる ための,土壌物理学的技術体系の一部として位置づけられるものが多くみられた.しかしなが ら近年においては,そのような目的意識は次第に希薄となり,研究のための研究のような性格 のものが多数を占めるようになってきた. その原因は,一つには現代の農政に象徴されるような,きわめて無茸任な政治的外力によっ て研究者までもが振り回されていることにあるが,研究者自身も究極の目標を見失いつつあ るように思える. 大上段にふりかざしていえば,農業は地球の外部から供給される太陽エネル掛一によって
成立している,永遠の産業であり,拡大再生産が可能な最も合理的な産業でもある.したがっ て,土壌の団粒に関する研究も,その農業に立脚してこそ有意義なものとなるはずである. なお,本総説は自己評価も兼ねて筆者自身の利益のために取りまとめたものである. 引 用 文 献 47,578(1983) 伽)堤他:農土論集,103,49(1983) ㈹ 足立他:農土論集,103,44(1983) ㈹ 足立他:農土論集,103,68(1983) 匂2)新垣,長田:農土論集,103,74(1983) 鵬)BENTAMINand CRUSE:SoilSci”SocAmerルur, 49,1248(1985) ㈲ DEXTER β≠ αJル拙4画c,E乃g斤esリ31,139 (1985) 旬5)GuIDIefα/∴PJα乃fα乃d50査ろ釘,311(1985) 郎)MISRA扉(止」」習わ扉(∽ガ5わん94,43(1986) 仰)中村他:土壌の物理性,52,2(1986) ㈹ BARTOLIand PHILIPPY:SoilScience,150,745 (1990) ㈹ STEPNIEWSKIeial:2bith勒nzhDBoden”,154, 59(1991) (5q)DINELβJαJ∴50よJ5c∠g乃Cち151,146(1991) (5X)ANDERSON,TH:Zeit丹勤nz DBoden,154, 409(1991) (52)川口,喜田:日土肥誌,29,237(1958) (53)AMEMIYA,M:SoilSci”Soc AmerPnc,29,744 (1965) 伽 小島他:日土肥誌,36,211(1965) (55)寺沢,上田:農土論集,33,9(1970) (56)PASSIOURA,JB:SoilScience,111,6(1971) (57)HIuEL and BERL1NER:SoilScience,118,131
(1974)
(5め 古畑他:日土肥講,1974,20(1974) (59)和田他:日土肥誌,45,204(1974)
60)GuMBS and WARKENTIN:SoilSciSocAmer
ル〟γリ39,255(1975)
6D GuMBS and WARKENTIN:SoilSciSocAmeY ル〟γ,40,28(1976) ¢2)伊藤,森:農土論集,6S,9(1977) 鵬)土谷,松田:農土論集,69,13(1977) ㈲ 新垣,長田:農土論集,71,21(1977) (65)EGASIRA et al:SoilSciPhlnt ∧勉tr,29,473 (1983)
056)HARTMANN and BooDT:SoilScience,137,135 (1984) 斬)矢沢,前田:農土論集,114,69(1984) ㈱ ToLLNER,βオ αJ∴rね∽SA,5A.且,29,1582 (1986) 69)WILLrAT‘T.ST:.ルuY.Agric物Res,37,107 (1987) 伽)HoRN,gJαJ∴Zβ査′.乃勉乃Zりββode弗リ150,342 (1987) (用 山田吉良:農土論集,130,69(1987) (72)矢沢,前田:農土論集,130,75(1987) (1)YoDER,RE:わ〝γA椚eγ150CAgγ0乃,28,337 (1936) (2)VAN BAVEL,C−HM:SoilSci.SocAmeY P㌢0(リ14,2(1949) (3)美園他:農技研報,B2,125(1953) (4)川口,賓田:日土肥誌,27,13(1956) (5)川口,虎谷:日土肥誌,29,337(1958)
(6)CAGAVAN and UEHARA:Soil SciSoc.Amer 伽cリ29,198(1965) (7)GupTA,GC:SoilScience,100,319(1965) (8)賓田大三:土壌の物理性,11,33(1965) (9)WILLIAMSet alSoilScience,101,156(1966) (10 RoGOWSKIet alSoilSciSocAmerProc,32, 720(1968) (川 新垣,長田:農土論集,71,16(1977) 仕2)横瀬,山田:農土論集,70,1(1977) (13)小川和夫:土壌の物理性,43,14(19鋸)
(14 SKIDMORE and PowERS:SoilSci.SocAmer
ル〟γリ46,1274(1982) (15)渡辺他:土壌の物理性,45,48(1982) 仕6)BoYD g′αJ:So壱J5c套SocA桝eγ1ル〝γリ47,313 (1983) (17)WusTAMIDINetalSoilScience,139,239(1985) (18)PERFECTandKAY:SoilSci.SocAmer.hur,55, 1552(1991) (19)山田,横瀬:農土誌,59,387(1991) (2ゆ 山崎他:農土研,23,30(1955) (2i)PANABOKKEet alSoilScience,83,185(1957) 位2)美園,木下:農技研報,B7,105(1957) (2劫 美園,木下:農技研報,B7,123(1957) (2㊥ 美園,須藤:農技研報,B8,213(195軌 (Z5)HARRISβ≠αJふ沼1最50CA研βγ\P和Cリ28,529 (1964) (26)ARCAandWEED:SoilScience,101,164(1966) 断)東他:日土肥誌,39,327(1968) ㈲ AspIRASet al∴・Soi15とience,112,282(1971) (29)斎藤,川口:日土肥誌,42,1(1971) 鋤 斎藤 川口:日土肥誌,42,58(1971) 01)BENOrT,GR:SoilSciSocAmer\Proc,37,3 (1973)
(32)GENRICH and BREMNER:Soil SciSoc.Amer 伽cリ38,222(1974) 03)HoFMANandAppEl,MANS:ZeitPfhlnZDBoden, 138,209(1975) ㈲ 三輪晃一・:農土論集,71,27(1977) 05)横瀬他:農土論集,72,1(1977) 伽)小林浩志:土壌の物理性,42,26(1980) ㈲ 山田,古家:農土論集,98,1(1982)
山田宣良:団粒に関する研究の動向(総説) 67
㈹ LEMOS and LuTZ:5∂去J5初′′S∂C′A仇βγ:ノアγPCノノ′21,
485(1957)
㈲ McINrYRE,D”S∴SoilScience,85,261(1958) (鵬 McINJTYRE D S:SoilScience,85,185(1958)
(凋 国分,根本:土壌の物理性,3,23(1960)
(l咄 TACKETT and PEARSON:SoilSciencち99,407 (1965)
(16)EpsTEIN and GRANT:SoilSciSoc AmerProc”,
31,547(1967)
(16)HILrLEL and GARDNER:SoilScience,108,137
(196凱
(lm)HILLELand GARDNER:SoilScience,109,69 (1970)
(脚 MILLER,DE:SoilSciSoc Amer伽c。,35,635 (1971)
(1㈲ BuscH etalh 77mns.AhSAE,16,808(1973) 010 SMIKAand GREB:SoilSciSoc.AmerこProc,39, 104(1975) (11D HADASandSTIBBE:AgYVnhuY\,69,547(1977) (11カ 内田勝利:農土語,50,129(1982) (11カ BEN−HER eial∴SoilSciSocAmerlJour,49, 191(1985)
(11D EGASIRA et alSoilSciPlant Nutrh,31,105 (1985)
(119 SouTHARDetalSoilScience,145,278(1988)
(1拍 LEVY βg α/∴ふ沼∴洗よ50CA∽βγ・ル〟γ1,52,784 (1988)
(lrD DEXTER and HoRN:Zeit勒nzDBoden,151, 325(1988)
(11め 軽部重太郎:土壌の物理性,58,52(1988)
㈹ REMI.EY and BRADFORD:Soil SciSocAmer
ル〝γリ53,1215(1989)
(l鋤 HELALIA and LETEY:SoilScience,148,199 (1989)
(12D KARL.INβfαJ∴ぶ扇J5c∠So(A∽βγ∴ル〝γリ54,153
(1990)
㈹ MooRE and SINGER:SoilSciSocAmer.ルur,
54,1117(1990) (1劫 RAWLSetaJ∴77msAS,AE,33,1224(1990) (1細 西村他:農土論集,146,101(1990) (1初 山田富艮:農土論集,152,9(1991) (1992年10月30日受理) ㈹ GoLエ.ANY.♂′ α/ふ7よJ5わ5クC.』研♂㌢ル〝γ,55, 811(1991) 鋼HAG肛J∴お〟ぶ通徹拷74,471(1952) の)児玉,鈴木:日作紀,24−1,59(1955) 弼)川口,嘗田:日土月巴託,29,47(1958) (用 HAMMERTON.丁1.:/0鋸γ\Agγ云(5cよ56,213 (1961) ㈹ CoRNFORTHIS∴ル〝γ■Agγよ−c5cま170,83(1968) (瑚 OBERMUE【LER,♂′ α/∴ Ag和搾ル〟㌢,66,627 (1974)
侶0)RAWTrZ and HAGEN:SbilSci5b(Ame7/・hur, 42,787(1978) ㈲ 小林浩志:土壌の物理性,42,26(1980) 倦2)UNGER,PW:SoilSciSocAmer,]ou7二,46,796 (1982) (83)ARMBRUST et al:SoilSci∴SocAmerhuY・,46, 390(1982) 朗 山田,古家:農士論集,97,25(1982) 鮎)DoRMAAR,,JF∴門あ行α勘ブふ頑 75,51(1983) (86)OADES,JM:Plant andSoiL76,319(1983) 侶乃 BA柑KE and 王∋1AKE:5b云J滋よ5bcA∽♂γル〟γリ
48,1398(1984)
㈱ WHITEu;YandDEXrER:劫nt and SoiL77,131 (1984)
09)AIBERTS and WENDT:5初lSbi5bc.Amerhuγ∴, 49,1534(1985) (90 ScHNEIDERarldGupTA:SbilSciSocAmerhur, 49,415(1985) 別)DEXrER,A,R:月払扉(∽d5最ん95,123(1986) ㊥劫 BoHNE,H:Z扇f即α乃Zββodβ乃,149,28 (1986) 03)HADAS,A:SoilSci”SocAmeYlhur,51,191 (1987)
(94)LoGSDON et al∴ Plant and SoiL99,267(1987) 伽)SHfEl.βJαJ∴月払〝gα招♂艮〉∠JlOl,115(198乃 郎)山田宣良:農土論集,140,1(1989)
㈲ AIEXANDER and M比1ER:月払毎J畝♂ 5最ろ138,
189(1991)
㈲ RAIM王∋AULT and VYN∴仇押鋼ル〟7,83,979 (1991)
㈲ DuIEY,FL:5加■J5最助√A雄gγク㌢りC,9,60
山田 宣長 団粒に関する研究の動向(香川大学農学部学術報告 第45巻 第1号) 下記の文章表現は学術雑誌には不適切との御指摘がありました‥お詫びして訂正致します. 63ページ 下から4∼3行目 (訂正前) 高齢になれば助手や学生でもコキ使わないかぎり, (訂正後) 高齢になれば助手や学生に不当な過重労働を強制しないかぎり,