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瀬戸内海・播磨灘堆積物中のコプロスタノールの鉛直分布-香川大学学術情報リポジトリ

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瀬戸内海・播磨灘堆積物中の

コプロスクノールの鉛直分布

門谷 茂,和泉知加子,東 和也,同市友利

Ⅴ耳RTICALDISTRIBUTIONOFCOPROSTANOLINCORE

SEDIMENTS,HARIMA−NADA,THESETOINLANDSEA

ShigeruMoNTANI,ChikakoIzuM王,KazuyaAzuMAandTomotoshiOKAICHI

FecalpollutionofHarima−Nada,theSetoInlandSea,WaSinvestigatedbyusingcoprostanol(5β・Cholestan・ 3β・01)asanindicator Coprostanol,Whichisproduced、byreductionofcholesterolbymicroorganismsinthe

intestinesofmammals,hasbeenthusfarusedasanindicator offecalpollutionofaquaticenvironments

Coprostanolinthecoresediment,WaSeXtraCtedbybenzen:methanol(7:3 v/v)SilylatedcoprostanoI

WaSdeterminedbyusingagaschromatograph

ConcentrationofcoprostanoiincoresedimentsatSt64andSt.9(northernpartofHarima−Nada)wereO{53 FEgg ̄1,andl00FLgg ̄1atO−2cmdepth,anddecresedrapidlywithdepth,reSpeCtivelyOntheother hand, relativelyhighconcentr・ations(05−Oh6JLgg−1)were foundinthelO−30cmlevelat St15(centralpart of

Harima−Nada)whichwer・eaCCumulatedbefore1967accordingtothe2ユOPbdatingtechnique。Thisresultshows higherloadoffecalwater・Sbefor1973(enforecementoftheprohibitionlaw)atcentr.alpartofHarima−Nada コプロスクノール(5β−Cholestan・3β−01)を指標として用いて,瀬戸内海・播磨灘の尿尿汚染の実態を調査した。コプ ロスクノールは,哺乳動物の腸内細菌によってコレステロ・−ルが還元されて生成する物質であることから,水圏環境 の尿尿汚染の指標として用いられる。 播磨灘の3測定点から柱状堆積物を採取し,適当間隔に切断し,凍結乾燥した試料をベンゼソメタノ、−ル(7 3v/v)を用いてステロール頼を抽出し,シリル化してからガスクロマトグラフを用いて定量した。 その結果,渾北部沿岸域の定点(St9,64)でほ,表層(0∼2cm)で高濃度(100,0”53/Jgg−1)で深度と共に急 減していたが,灘中央部の定点(St15)では,10−30cm深でも05−06/Jgg ̄1と,表層部の60−70%の億であった。 このコプロスタノールの鉛直分布と210Pb法による年代測定の結果から,瀬戸内海環境保全特別措置法が施行され,尿 尿の海上投棄が禁止された1973年以前には,現在の2倍近くのコプロスクノールが灘中央部に負荷されていたことが わかった。 緒 R 瀬戸内海では,瀬戸内海環境保全特別措置法が施行された1973年3月まで,尿尿の海上投棄が行われており,1972 年にほ瀬戸内海沿岸の各府県の全廃尿収集量の21%に相当する約4,000K牒d ̄lの尿尿が,大阪湾,播磨灘,燵灘,安 芸灘,周防灘等の中央部に投棄されていた。このため多量の肴放物が海水中に負荷され,瀬戸内海の富栄養化の−・困 となり,赤潮発生の背景ともなっていることが予想される。 この尿尿汚染の状況を知る一つの手懸りとして,近年コプロスクノール(5β−Cholestan・3β−01)が指標として用いら れている。コプロス5,ノールは,哺乳類,特に人間やブタ,ウシなどの腸内細菌によって,コレステロ1−ル(5・ChoIsten− 3β−01)が還元されて生成する物質であり,これらの動物の糞便中にのみ見出される特異的なステロールである。また,

(2)

香川大学農学部学術報告 第39巻 第1号(1987) 56 ステロイト化合物は他の生脂質よりもかなり長期間微生物による分解に耐えることが知られている。このため,コフ ロスタノールを河川,軌 海洋沿岸域および港湾の水中や堆積物中の尿尿汚染の指標としたいくつかの報賃があ る(ト6) 赤潮多発海域である播磨灘では,高松市,岡山市,高砂市などからの尿尿が海上に投棄されていた。1969年には年 間約10×108kgの尿尿が,主に小豆島東部海威に.投棄されており,人間の糞便中にほ約35%のコプロスクノールが 含まれている(7)ことから計算すると,1969年当時では年間約28×105kgのコプロスタノー・ルが播磨灘に負荷されて いたことになる。 そこで著名らは,播磨灘全域から合計72地点で柱状堆積物試料を採取し,コプロスタノ・−ルおよび他のステロー・ル の抽出,定量を行った。ここでほ,そのうちの3地点について鉛直的に分析,定量した結果について報告し,水平分 布や沈降堆横過程の推定などについては,別に(MontaniandOkaichi,inprep)(8)報告する。 試料および方法 1堆積物試料の採取 堆積物試料は,Fig1に示した各定点で柱状採泥器を用いて各定点各々4′、5本を採取した。これらのうち,今回報 告するのほSt9,15,64の各定点の柱状試料についてである。採取した柱状堆積物試料ほ,船上にて直ちに2−3cm 毎に切断し,凍結保存して実験室まで持ち帰った。この試料を凍結乾燥した後,メノウ乳鉢を用いて粉末状とし,貝 殻や小石を除いたものを分析用の堆積物試料とした。 2.コプロスタノールの分析法 凍結乾燥した堆積物試料を用い,Fig2に示した方法によってステロール預の抽出,定量を行った。 先ず乾燥試料を,予め抽出溶媒で洗浄後乾燥した円筒濾紙龍一・定量(10∼20g)を取り,ソックスレ一拍出器を用 134030’ Fig1LocationmapofsamplingstationsinHarima−Nada,theSetoInlandSea

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いて,ベンゼソエ・クノール(7 3v/v)130mゼを加え,800Cで48時間軸出を行った。抽出液は,乾固後n・ヘキサン 10mゼに溶解し,一・晩1200Cで活性化したブロリジルカラム(10mmxlOOmm)に吸着させ,1%エタノールーn・ヘキサン 100meで溶出した。溶出液は,乾国後ビリジンに溶解し,N,0・ビストリメチルシリルアセトアミドを用いてTMS化 してガスクロマヤグラフ分析を行った。 ガスクロマトグラフ分析には,内径3mm,長さ2mのガラスカラムを用い,カラム充填剤には,2%0V−17 0n Chromosor・bWを,カ、ラム温度は250∼2900Cで毎分20Cの男温条件とした。 ステロール類の同定は,コプロスタノ・−ル,コレステロ1−・ル,カソペステロール,ステイグマステロ・−ル,β−シト ステロールの標準物質と保持時間を比較して行った。定量は,コレスタン(5α−Cholestane)を内部標準物質としてd定 畳加え,これとのど−・ク面審比から各々のステロ、−ル標準物質について検量線を求めた。この時のガスクロマトグラ ムの一例をFig3に示した。 3.有機態炭素の定量 乾燥堆積物試料約2gを200mゼ容ナス型フラスコに取り,05N・HC120mゼを加えて,−L昼夜放置した後,ロータリー

Soxhlet extraction(48hr)

Res土due Ext工aC七 重 Concentration D工■y up

下 l←

n−”exane10ml Flo工・土sllc01um clean up (l% EtOH−n−Hexane100ml) Concentration

Pyご・土d土ne O.2ml BSA★ 0.2ml GC Analys土s ★N.0−bis−trimethylsilyl−aCetamide Fig2 AnalyticalmethodofsteroIs

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58 香川大学農学部学術報告 第39巻 第1号(1987)

GC Condition

Standard

CoJumn‥2%ov−170n Chromosorb W

l・D・3mmX2m gIass column

Temperature

COJumn250−2900c,20c/mjn.

injection 3000c

Carrer gas:N2

¢のuOdの¢∝ A:I.S.Chofestane

B:Coprostano(

C:ChoIesteroJ

D:CampesteroI

E:StigmasteroJ

F:P−Sitosterol.

St.9 Sediment

¢のuOdのむ∝ 0 5

10 15 20

Retention time(min,)

Fig3 GaschromatogramsandGCconditionofsterolanalysis エバボレークーを用い,450C以下の温度で減圧乾園し無機態炭素を除去した。この試料を再度精押し,柳本社戯MT・ 500型CNコーダーを用いて有機態炭素の定量を行った。 4い フェオ色素の定量 乾燥堆横物試料約1gを精秤し,10mゼ容遠沈管に取り,それに90%アセトン5mgを加えてから約15分間超音波抽出 を行った。これをさらに4時間冷蔵庫中(3−50C)で抽出した後,遠心分離(3,000T・pm,15分間)を行った。この 上澄液を1cmセルを用いて665nmで比色し,次にこれに1N・HClを数滴加えてから,再び665nmで比色し,Strick・

(5)

0Coprostanol(yg/g)

▲Copro./Org・−C(XlO.5)

Fig”4Verticaldistributionofcoprostanolandcoprostanol/organic・CarbonratioinSt9sediment

COreSample 1andandPersons(1968)(9)によってフェオ色素盈を求めた。 結束および考察 St。9,St64およびSt15における堆積物中のコプロスタノ∼ル畳とコプロスタノ、−ルの全有機態炭素に対する重 量比の鉛直分布をFig4∼Fig“6に示した。 St9においては,0∼5cm深では.09∼10/‘gg ̄1でほぼ一億の値であったが,5cmから15cm深にかけて急激に減少 しており,15cm以深でほ,02−03JLggTlのほぼ一億の借であった。また,St64でも表層(053FEgg−1)から5cm

(6)

60 香川大学農学部学術報告 第39巻 第1号(1987)

O CoprostanoJ(yg/g)

0

0.5

1.0

1.5

▲ \一∈一1972 ○ / _/こ I C l /二 ‥ / ○

/‥ ‥

r

一弓・・・・・1952

l\﹂′′▲

一モ・・・−1926 ▲

10

by 210Pb Mefhod

/111/▲11

0 2 ︵∈0︶王dO凸

0 1 2 3 4

▲Copro./Org.−C(XlO,5)

Fig.5 Verticaldistribution of coprostanoland coprostanol/organic−Carbon ratioin St.64sediment core

Sample

深にかけて急減しており,5−12cm深でほほは一・定の値(03J‘gg ̄1)を示していた。15cm以深では増減を繰り返して いるが,013∼024JLgg−1の範囲であった。一方,St15では,表層の093JLgg ̄1から2cmにかけて一度急減して (−068FLgg ̄1),その後漸減の憤向を示し,10cm∼30cmでは05−06JLgg.1の範囲で一・定しており,St9,St64に みられたような指数関数的な減少は,極く表層(0∼2c爪)を除いては見られなかった。 このように,堆積物中のコブT=スタノvル畳の鉛直分布(Fig4−6)は,灘北部沿岸域のSt9およびSt64と,灘 中央部のSt15では,そのプロファイルが明らかにな異なっていた。 St9とSth64においてほ,各々、15cm,−5cm深までの層で指数関数的減少がみられた。このことは,St9とSt64 がともに沿岸域に位置していることにより,この期間中は両地点とも同程度の負荷畳であったと考えられることと, ステロールの物理化学的分解による半減期がきわめて長い(10)ことから,微生物による分解によるものと推定される。 210Pb法によって求めた堆帯速度(1112〉から,各々の測定点での堆積年代を計算すると,St9の5cm深は1962年に当 り,St64の5cm深ほ1952年に相当する。このことから,St9の0∼5cm深でコプロスクノール濃度の変化が小さい

(7)

︵∈0︶≡d¢凸

3 4 5 6 7

▲Copro./Org.−C)(XlO.5)

Fig6 Verticaldistribution of coprostanoland coprostanol/organic・Carbon ratioin St15

sediment core sample

のは,10年はど前からこの地域の庚尿処理施設の増設等により,庚尿の負荷畳が減少したことによると考えられる◇

St64では,1952年以後1970年ごろまで負荷畳が急増し,1970年以降は負荷畳が除々に減少しているのが見てとれる。

また,St9の堆積物中の有機態炭素の鉛直分布とコプロスクノール盈のプロファイルは大きく異なっており,有機 態炭素量に対するコプロスクノール盈の比は,表層から15cm深で大きく減少していた(Fig4)。一方,フェオ色素畳 の鉛直分布(Fig7)は,3測定点とも良く似たプロファイルを示しており,約15cm深までにどちらも分解し易いもの が消失し,それ以深では一億畳のものが安定な形で保持されていると推定される。このことは,3測定点問での堆積 物中の微生物の有機物分解能が,それ程大きく異なっていないことを示している。

(8)

62 香川大学農学部学術報告 第39巻 第1号(1987)

Pheo−Pigments(TJg/g)

0

10

20

30

︵∈U︶王d¢凸 ○

▲ St.15

0 St.9

● St.64

Fig7 Verticaldistributionofpheo−pigmentsinthe3sedimentcoreSamples

そこで,St9におけるコプロスタノール畳の鉛直分布から,現場でのコプロスクノールの分解速度定数を求めるた めに,以下の計算を行った。 5cm深のコプロスタノ、−ル濃度をC。(pgg ̄1),15cm深での濃度をGとし,210Pb法から求めた5cm深と15cm深で の堆積年代の差から求まる経過年数をg(.γ)とすると,分解速度定数ゑは次式により求めることができる。 烏=・1n (1)

Fig4の数値を使って計算すると,St9におけるコプロスクノールの分解速度定数ゑは,ゐ=3」6×10 ̄2g ̄1となった。

ところで,St15の堆積物中のコプロスクノール畳の鉛直分布(Fig6)は,St9,St64に見られたような深度と共 に濃度が急減する傾向は顕著では.なかった。尿尿負荷畳が定常的であったとすれば,フェオ色素の鉛直分布(Fig7)

(9)

のように,St9,St64と同様のプロファイルを示すと思われるが,St15ではコプロスクノールの主要供給源であっ た尿尿の海上投棄の影響が非常に大きく,近年でほ海上投棄の禁止により尿尿負荷畳がかなり減少したことが原因と 考えられる。 そこで,Sth9で求めたコプロスクノールの分解速度定数kを用いて,St15における過去の尿尿負荷畳を見横もる ことにする。 St15の10cm深の堆積物は,210Pb法による年代決定では1945年に相当するので,それぞれ必要な数値を(1)式に代入 すると, 36×10 ̄2=1/40・1n方/05 であるので,ズ=18となる。つまり,この当時には約18JJgg ̄1のコプロスタノ、−・ルが表層准看物中に存在していた ことがわかる。これから,海上投棄禁止以前には,現在の約2倍量の尿尿起源物質が灘中央部に負荷され,富栄養化 に寄与していたことがわかる。 謝 辞 最後に,試料採取に御協力いただいた,香川大学農学部浜垣孝司技官および,広島大学生物生産学部豊潮丸の乗組 員の皆さんに記して感謝します。また,本研究の一・部は,文部省科学研究費59760151の補助の下に実施された。 引 用 文 献 (1)DuTKA,BJ,AS YCHAU and JCoBURN:

Relationship between bacterialindicators of Water pOlution and fecalsteroIs,Water Res一,

8,1047−1055(1974)

(2)CHURCHLAND,LM,GKAN and AAGES: VariationinfecalpollutionindicatorSthrough

tidalcyclesintheFraserRiverestuary,Can,J Microbiol,28,239−247(1982)

(3)HATCHER,P.G.,LhEKEISTER and P.A−Mc・ GILLIVARY:Steroidsassewagespecificindica・ torsin New York Bightsediment,Bu11Envi− ron.Contam”Toxicolリ17,491・498(1977) (4一)伊藤治郎・立川 涼瀬戸内海西部周防灘におけ

る庚尿汚染指標としてのステロール 地球化学,

11,70・74(1977)

(5)KANAZAWA,Aand STESHIMA:The occurT renceofcoprostanolanindicatoroffecalpolluT tion in sea water and sediments,Oceanol Acta,l,39−44(1978)

(6)小椋和子東京湾におけるし尿汚染の指標として

のコプロスタノ、−−一嶋ルの挙動,地球化学,17,68・75

(1983)

(7)MuRTAUGH,J.J.andR L BuNCH:SteroIsasa measure Of fecalpollution,JWater Poll

ContrFed,39,404・409(1967)

(8)MoNTANl,Sand TOKAICHI:Coprostanolas anindicator of fecalpo11uutionin Harima・ Nada,theSetoInlandSea,Japan(inprep”) (9)STRICKLAND,JhD.H.and T RhPARSONS:A

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(10)RHEAD,MM,GEGLINTON and G。H DRAFFAN:Hydrocarbonsproducedbythether− mal alterration of cholesterol under conditions Simulatingthematurationofsediments,Chem Geol。,8,277−297(1971) (11)屋加章・塩沢孝之・松本英二 播磨灘における堆 療速度と重金属汚染,日本海洋学会誌,39,82・87 (1983) (12)門谷茂・岡市友利 Pb−210法による播磨灘の堆 横速度,香川大学農学部学術報告,36,25・30 (1984) (1987年5月30日受理)

参照

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