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1. ガスプロムにおける勢力分布 ガスプロムの経営陣メンバーは ミレル社長を筆頭とする ミレル派 と 反社長派のリーダーとされるアナネンコフ率いる 旧経営陣 に分けることができる しかし実際の状況は 非常に複雑かつ均衡したものである 事実上同社の経営は 政治的 指導者と 専門的 行政的 指導者に分け

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◆資料紹介◆

ロシア・エネルギー企業の内情(上)

―ガスプロムとロスネフチ―

政治情報センター 所長 A.ムーヒン はじめに/38 1.ガスプロムにおける勢力分布/39 2.ガスプロムの国外市場への進出/40

はじめに

以下は、ロシアの高名な政治評論家で、「政治情報センター」の所長であるA.ムーヒン氏の新著 『クレムリンの垂直:石油ガスの管理』(政治情報センター、2006年)*を、著者の了承の下に抄 訳して紹介するものである。 ロシアでは、2007年に下院選挙が、2008年に大統領選挙が控えており、その過程で政治とビジ ネスの関係が再び焦点になろうとしている。政治情報センターでは、こうした情勢をにらんで、 とくに政権と密接なかかわりのある企業・産業をシリーズで取り上げていくことを予定している ようで、その第一弾である本書では、天然ガス部門のガスプロムと、石油部門のロスネフチがテ ーマとして選ばれている。ガスプロムに至っては、その設立の経緯から論じるという念の入れよ うだが、歴史的な叙述は本誌の読者にとっては関心外だと思われるので、現状に関する部分だけ を訳出することにする。それでも大部であることに変わりはないので、今号と次号の2回に分け てお届けする。 なお、今回の企画は、法政大学法学部の下斗米伸夫教授および同ゼミの全面的な協力により実 現したものである。記して感謝する。 *Мухин, А. А. Кремлевские вертикали: Нефтегазовый контроль. М.: Центр политической информации, 2006.

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1.ガスプロムにおける勢力分布

ガスプロムの経営陣メンバーは、ミレル社長を筆頭とする「ミレル派」と、反社長派のリーダ ーとされるアナネンコフ率いる「旧経営陣」に分けることができる。 しかし実際の状況は、非常に複雑かつ均衡したものである。事実上同社の経営は、「政治的」指 導者と、「専門的」「行政的」指導者に分けられる。 前者は政治エリートとクレムリンに対する忠誠心を保証しており、後者はガスプロムの活動の 日常的な側面を担っている。アナネンコフは自分がミレルの地位を占める日は決して訪れないこ とを理解しており、後者も自分が経験ある管理職たちの代わりになることはできないということ を理解している。結局、両者は相互の利益を考慮しているのである。 とはいえ、アナネンコフはガスプロム内の「行政部門」で「最重量級」の人物である。ガスの 採掘と輸送に対し彼が直接的責任を負っている。ヴャヒレフ前社長の体制下ではアナネンコフは 実権を握っていなかったものの、ミレルによる「粛清」後の有能な専門職員不足が彼の昇進に一 役買った。しかも、西側のパートナーはアナネンコフこそが経営陣のうちで最重要人物だとみな しており、このことは当然のことながら、西側資本がガスプロムへの出資を拡大することが見込 まれているだけに、彼にとっての基盤を創り出している。この点でのアナネンコフの主なライバ ルは、ガスの国内市場を管理するリャザノフとされている。全「行政部門」メンバーの間でも非 常に「政治化」されている点がリャザノフ最大の特徴だと言われる。2005年、彼が新たな戦略的 役職、すなわちガスプロムによる石油会社シブネフチの獲得という役割に「配置転換」されたこ とは記憶に新しい。 ガスプロムの幹部の中でアナネンコフについているのは、ブズリャクとポジュークだとの情報 がある。政治的な意味でアナネンコフが「クレムリン人脈」に入っているわけではない。 一般的に考えられているのは、メドヴェージェフ第一副首相がクレムリンを代表してガスプロ ムを監督しており、彼の仕事ぶりはさておき、本件に他者が介入するのは「ご法度」であるとい うことだ。 もう一人、多少なりとも重要とされるのが輸出責任者のコマロフである。しかし彼の「政治的」 影響力はそれほどでもないとされている。 全体としてガスプロムの現経営陣の内部関係は相対的にバランスが取れていることが特徴であ るが、企業経営の全体的レベルはヴャヒレフ体制期より低下していると専門家は見ている。 ガスプロム取締役会での外国人株主代表であり、同社の株主であるフョードロフも重要な役割

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を演じている。彼はジョージ・ソロスの配下にあるのではないかと疑う向きもある。というのも、 フョードロフの取締役選出には、サロモン社(ソロスのガスプロム株受託先)の活発な働きかけ があったからだ。ちなみに、フョードロフはロシア統一電力システムとズベルバンクの取締役会 メンバーでもある。 政府側からガスプロムのプロジェクトに直接関与しているのは、副首相でありガスプロム取締 役会メンバーのフリステンコである。なお、ロシア政府は燃料・エネルギー省、経済発展貿易省、 連邦エネルギー委員会とガスプロムに対して、すべてのガス生産者がガス輸送網に平等にアクセ スできるようになるよう、政策の立案を指示している。

2.ガスプロムの国外市場への進出

ガスプロムの事業の戦略的方向性は、西ヨーロッパ、トルコ、イスラエル、ブルガリア、ギリ シャ、チェコおよびスロバキア(両国市場ではガスプロムがガス市場の96%を「握っている」と も言われる)、さらにアジア諸国と極東地域の市場であるが、これは端的に言って、同社が世界の ガス会社との関係を構築するということである。 ガスプロムと最も緊密な関係を持っているのは、言うまでもなくドイツである。 同国は早くも1973年からソ連のガスを輸入している。1973年のエネルギー危機という文脈では、 これは正しく時宜に適ったものだった。米国が不満を示していたものの、1980年代に旧西ドイツ 政府は、中東産原油への過度な依存を避けるためにガスパイプライン協定を締結した。当時ルー ルガスに加え、ドイツ銀行とマンネスマン社が市場に進出した。 1992年2月、ガス工業省が基盤となって設立されたガスプロムは、初めてドイツ向けガス価格 (いわゆる「ペテルゴフ価格」)の見直しを行い、ロシアとドイツの合弁企業を立ち上げた。 同年ガスプロムは、メチルアルコール製造工場を建設した露独合弁企業「メタプロム」(アルハ ンゲリスク市)の創業者となった(出資比率はガスプロム-60%、ドイツのフェロスタール-37%、 アルハンゲリスク貿易港‐3%となっている)。 1996年8月に当時のヴャヒレフ社長とトルクメニスタンのニヤゾフ大統領は、公開型株式会社 トルクメンロスガスを設立し、その株式をトルクメニスタンが51%、ガスプロムが45%、国際法 人イテラが4%の割合で保有するとの協定に署名した。トルクメンロスガスはトルクメニスタン ~パキスタン~インドを結ぶパイプライン建設を行っている。その結果、同社は実質的にすべて のトルクメニスタン産ガス(15兆~20兆m3と見積もられている)の支配者となった。

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同じ時期、すでに株式の半数をガスプロムが取得していたハンガリーのAltalonos Ertekforgalmi Bankの株式50%を、ガスプロムの子会社が購入することで合意が成立した。ガスプロムはさらに ハンガリーで、石油・ガス施設を製造する機械製造会社の株式68%を手に入れた。また、ハンガ リーの公開型株式会社MOLとの間で、対等の条件で合弁企業パンルスガスを設立している。 ガスプロムの関係ネットワークは、以下のように拡大した。すなわち、まずガスプロムに対す る債務が発生し、それと引き換えに当該国企業の株式をガスプロムに譲渡するというものである。 たとえば、1994年6月にモルドバ政府は国営企業モルドガスの株式の一部をガスプロムに譲渡 する決定を行った。モルドバにはガスプロムによるガス供給に対する負債があり、こうすること でそれ以降の決済時に何らかの恩恵を受けられると期待したのである。同年ガスプロムは西ヨー ロッパ進出をさらに深め、英国と大陸をつなぐガスパイプライン「インターコネチカット」の株 式10%を買収した。その頃ノルウェーはハンガリーとチェコにガスを供給する機会を得ていた。 ガスプロムのネットワークはまた、互恵的な協定を締結することでも強化された。 1995年3月2日にはカザフスタン政府、国営持ち株会社カザフガス、ガスプロム、英伊のブリ ティッシュガス・アジップ間でカラチャガナク鉱床における採掘の開始段階に関する合意が結ば れた。ガスプロムは1995年8月ウィンターシャル、ドイツおよび国際銀行27行と同様の協定を結 んだ。1996年5月に同社はヴェルバーグ率いるオランダのガス会社ガスニーと長期的協力に関す る協定に調印した。1996年9月にはポーランド石油ガス協会とも協定に調印している。協定は25 年間で約2,500億m3のガスを同国に供給するとしている。アルメニアは債務問題の苦境脱出をねら ってガスプロムとの合弁企業アルムロスガスを1997年に設立した。 一連の協定は、共同プロジェクトを生み出した。ペテルガス(株式の60%をオランダのフェー ルマオイル&ガスディベロップメントが、40%をガスプロムが所有)はブルーストリーム・プロ ジェクト(黒海を経由するロシア~トルコ間パイプライン)の予備調査を完了した。プロジェク トは、1997年11月のロシアとトルコ両政府間レベルでの合意後に進められている。翌年イゾビリ ノエ(スタヴロポリ)~ジュブガ(クラスノダル地方)~サムソン港~アンカラ(トルコ)間の パイプライン敷設が開始された。パイプラインの総延長は1,213kmに達し、うち373kmはロシア領 内、444kmがトルコ領内、396kmが黒海を通る。プロジェクト完了の暁には、トルコはロシア産 ガス最大の購入者となる。本件のロシアでの資源基地として、チュメニ州のナディム/プル/タ ゾフスキー地区の鉱床が計画されている。そして西側が「追加」案と呼ぶロシア~ウクライナ~ モルドバ~ルーマニア~ブルガリア~トルコ間パイプライン・プロジェクトも存在し、これによ りトルコには年30億m3のガスが供給されることになる。

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ガスプロムとルカシェンコ・ベラルーシ大統領は、1996年10月23日にヤマル~ヨーロッパ・ガ スパイプライン(発注および投資者はガスプロムであり、プロジェクトの総額は約400億ドル)の ベラルーシ領内における初接続セレモニーに参加した。ロシアとドイツの合弁企業ヴィンガス(株 式の35%をガスプロムが所有)の尽力により、1999年2月に建設が開始された。 1998年9月8日ガスプロムは、スウェーデンとスイスの電機大手ABBと共同プロジェクトを実 施する旨の協定に署名した。 同年10月には、ガスプロムはEDALパイプライン(ドイツ)の建設を完了し、英国を含むヨー ロッパ全体のガス供給システムに接合した。 しかし、ガスプロムの国際的な活動がすべて円滑に進んだわけではない。たとえば1997年に行 われたイランの南パルス鉱床開発への参加は、米国の不満を呼び起こした。その他にも同社は、 トルクメニスタン~アフガニスタン~パキスタン・パイプラインの建設ならびに操業のため設立 した株式会社の株を10%失った。このパイプライン(総工費約19億ドル)の建設・操業のために 設立されたセントラルアジア・ガスパイプライン社は、ガスプロムがプロジェクトへの参加を拒 否したため、コンソーシアムに参加した6企業によって分割された。当時のチェルノムィルジン 首相が1998年1月にトルクメニスタンを訪問し、パイプライン建設にガスプロムが参加すると念 を押したにもかかわらず、このような結果となってしまった。 当時ニヤゾフ・トルクメニスタン大統領が強調していたところによると、ガスプロムは自社の 取得割合があまりに少ないと不満を述べ、積立金を削ってでも出資比率を増やす用意があったと いう。結局、ガスプロム所有分の10%のうち、7%を米国のユニカル社が取得し、残りは日本企 業、韓国のヒュンダイ、パキスタンのクレセントグループの間で分割された。トルクメニスタン 政府の7%、サウジアラビア系企業デルタの15%に関しては変更がなかった。 ネフチェガス・ウクライヌィとの関係でガスプロムに大きな問題が持ち上がった。1999年初頭 に問題が再燃し、ガスプロムは制裁をちらつかせつつ、債務返済を強く迫った。同時にガスプロ ムはモルドバとベラルーシに対して制裁(ガス供給の削減)を課した。 ガスプロムの国際的活動で最大規模のもののひとつは、同社が世界最大規模を誇る英蘭の石油 会社ロイヤル・ダッチ・シェルと1997年11月17日に締結した戦略的合意である。 この同意により、シェル社はガスプロムの転換社債に10億ドルを出資することになった。両社 は年間2,500tの液化天然ガスを生産する合弁企業(最初のプロジェクトとして、西シベリアの北 極圏開発がある)を設立する件についても合意している。ガスプロムとシェル社の連合は、ガス プロムが西ヨーロッパだけでなくアジア市場(ガスプロムのねらう市場のひとつでもある)にも

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今後進出していくことを裏付けている。協定にはルクオイル社も参加しており、三者間の合意と なっている。 1998年初頭にガスプロムはイタリアのENI社と協定を結んだと噂されている。その際にガスプ ロムの側の当事者となったのは「ブルーストリーム・パイプライン社(BSPC)」であった。 このENI社とのプロジェクトの枠内で、アジアとアフリカで天然ガスの探査・開発が積極的に 行われることになる。当時のヴャヒレフ社長によれば、プロジェクトは30億ドルと見積もられて いる。ENI側の出資の一部はENIがガスプロムの株式を買うことによって行われるが、具体的な購 入量は明らかにされていない。非公式の情報では、ガスプロム株の2~4%とされていた。 1998年11月にガスプロムはルクオイルとパートナーシップ関係に関する合意を結んだ。ヴャヒ レフによれば、この合意は一連の資金計画を実施するために不可欠な「連帯」だという。この時 点でガスプロムはシダンコをはじめとする石油会社による一連のプロジェクトに関心を示してい たところであり、ルクオイルとの提携には戦略的な意味があったのだ。のちに同様の合意がポタ ーニン氏率いるインターロスとも結ばれた。 ガスプロムの子会社は、非常に広範な組織構造を形成している。フラガス社はフランスガス公 社と提携し、ブルーストリーム・プロジェクトではBSPS BVがサイネム、カトラン、ブングオフ ショア、日本の商社の参加するコンソーシアムと協定を結んだ。さらにロシア・米・英によって 設立されたノルト・ガスの株式51%は、ガスプロム傘下のウレンゴイ・ガスプロムの手中にあり、 ノース・トランス・ガスオイルはガスプロムとフォートゥムの合弁企業である。また、ブルガリ アのトプエネルジーの株式50%、モルドヴァガスの51%をガスプロムが所有するなどしている。 オーストリアは1968年からロシアのガスを輸入している。同国にはガスプロムによって合弁企 業GVKhが設立された。オーストリアでのガスプロムの主なパートナーはコンツェルンOMFであ る。ロシアのガスはオーストリアを経由してドイツ、フランス、イタリア、ハンガリー、スロバ キア、クロアチアへ輸送されている。 ベラルーシを代表してガスプロムのプロジェクトに参加しているのは、ガスプロムに対する債 務者でもある国営企業ベルトランスガスである。2000年9月にはヤマル~ヨーロッパ・パイプラ インのベラルーシ部分が開通した。 ハンガリーでは、コンツェルンMOLがガスプロムとの合弁企業パンルスガスを設立した。その 他、1996年夏にはガスプロム銀行がハンガリーのAEB銀行の株式を取得した。同国内にはヤマル ~ヨーロッパ・パイプラインをスロバキア、ハンガリー、スロベニア、イタリアと結合するトラ ンジット・パイプラインが通っている。

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ドイツは1970年代のエネルギー危機後にロシアのガスを輸入している。主要なガス輸送網が同 国を通っているので、戦略的にも大変有利な位置にある。ドイツにおけるガスプロムの主なパー トナーは、ガスプロムの株式を4%所有するルールガスである(ガスプロムの取締役会には、ル ールガスのガス購入部長であるベルグマン氏が参加しており、同氏が2001年6月にシュペタ社長 に取って代わったとされている)。1990年代初頭にロシアとドイツにより合弁企業ウィンガス(ロ シア側の出資比率は35%)が設立された。次第にガスプロムはウィンガスを通じて、ドイツのガ ス市場で12%もの販売シェア占めるようになった。 イタリアも1970年代のエネルギー危機後にロシア産ガスの輸入を開始した。ガスプロムの主な パートナーはENI社である。合弁企業ヴォリタ(株式の49%をガスプロムが所有)は、スロベニ アを経由してイタリアと南フランスに向かうガスパイプラインを建設している。これはブルガリ ア、ギリシャ、アルバニアを通る環状パイプラインを完成させるものと想定されている。ガスプ ロムとENIによるもうひとつの合弁企業がブルーストリーム・パイプライン社であり、同社はト ルコを経由するガスパイプライン(ブルーストリーム・プロジェクト)の建設プロジェクトに参 加している。 1996年春にガスプロムは、2001年から2021年までに40億m3のガス供給を行うとする協定を、オ ランダのガス会社ガスニーと結んだ。ガスニーはヤマル~ヨーロッパ・プロジェクトにも参加し ている。 ポーランドは1966年からロシアのガスを輸入している。1996年10月、ヴャヒレフはポーランド で、同国領内のヤマル~ヨーロッパ・パイプラインの利用に関する25年間の契約に署名した。こ の契約の核心部分は、25年間で2,500億m3のガスをポーランドに供給することである。さらに同国 内ではパイプラインの建設と利用のため特別に、ポーランド・ロシア合弁企業ユーロポルガスS.A. も設立された。同社の株式のうちガスプロムとポーランド石油ガス株式会社が48%ずつ、残りの 4%を株式会社ガス・トレーディングが所有している。ポーランドは経済的にドイツに非常に大 きく依存しており、戦略的に強力な隣人を刺激したくなかったのである。 パイプラインのポーランド部分は、スウェーデンとスイスの企業アセア・ブラウン・ボヴェリ (ABB)によって厳密に管理されている。ポーランド国内のコンプレッサー設備は、まさに同社 が製造している。一説によれば、ロシア国内でのパイプライン建設にもかかわっているという。 ちなみに、ポーランドはこのほかにもノルウェーから延びる他のパイプラインの分岐ルート敷 設に関して、ウクライナと積極的に協議をしている。 スロバキアもロシア産ガスに関心を示している。ヤマル~ヨーロッパ・パイプラインのポーラ

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ンド国内でのパイプラインをスロバキアまで伸ばす「南方支線」の建設計画がある。このプロジ ェクトは1999年に持ち上がり、ノルウェーからのガス供給プロジェクトと競合するようになった。 なお、ガスプロムとフランスガス公社による合意では、ベラルーシ、ポーランド、スロバキアを 通るガスパイプラインの敷設を規定しているともいわれている。 フランスはロシア産ガスを1970年代のエネルギー危機後より輸入している。ガスプロムの主な パートナーはフランスガス公社である。 チェコは1967年からロシアのガスを輸入している。1998年に同国はガスプロムの供給が「保証 されたものではない」との理由で、ノルウェーからのガス供給に関する並行的なプロジェクトに 調印した。 周知のとおり、ガスプロムは欧州横断パイプラインのプロジェクトに数多く参加している。た とえば、前述のヨーロッパ大陸と英国を結ぶ「インターコネクター」を完成させたコンソーシア ムなどである(このコンソーシアム内でガスプロムは10%の株式を所有している。一方、ルール ガスは5%にすぎない)。 ガスプロム内でのガス販売プロジェクトは、ヴャヒレフの下の副社長であったプーシキン氏が 長きにわたり管理していた。彼はガスプロム経営陣の中で最も影響力を持つ人物の一人であり、 ヴャヒレフ辞任時には次期社長の座をねらうと目された人物でもあった。1998年にはすでにこう した噂が存在していた。しかし、パイプライン戦略を策定しているのは、ガスエクスポルト元社 長で、長らくガスプロム内部のキーパーソンとなっているコマロフ氏のチームである。コマロフ は現在も経営幹部としての地位を保持し、対外関係部のトップとなっている。彼のほかには、ガ ス輸送・利用部の部長であるブズリャクがパイプライン建設問題にかかわっている。 コマロフによる戦略は「ヨーロッパ統一燃料エネルギーシステム」の構築を想定している。そ れに加え、北西、南西、バルカン方面にそれぞれ延びるパイプラインの「分岐」プロジェクトが 存在し、現在活発化している。 周知のとおり、この戦略は2005年9月にロシアとドイツの間で結ばれた北ヨーロッパ・パイプ ラインに関する合意として実を結んだが、通過料金支払いの対象から外れるウクライナとポーラ ンド、バルト諸国はこの合意を否定的に受け取った。以前、パイプラインが「ベラルーシとポー ランドを経由国とし、スロバキアとチェコに対するリスクを生み出す」ことに関するガスプロム 経営陣の懸念を表明していたのは、他ならぬコマロフであった。 ヤマル~ヨーロッパ・パイプラインは、当時チェルノムィルジン内閣による活発なロビー活動 の対象となっており、首相自身この件について個人的な関心があると述べていた。ロシアとベラ

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ルーシの連合条約締結、そして両国の政治・マスコミの統合は、本プロジェクトの実現に対する 政治的支援を取り付けることも、目標の一つに掲げていたはずである。 燃料・エネルギー省でこの問題を管理していたのは、(ガス輸出の一本化、つまりコマロフのガ スエクスポルト社を支持していた)ウスチュジャニン次官であり、また連邦エネルギー委員会に おいては、経済部長のミロフであった。 ヤマル~ヨーロッパ・プロジェクトの反対派に挙げられるのは、ルクオイルとシブネフチの利 益を代表するカリュジヌィ氏であった。ちなみに同氏は、非公式にではあるが、もう一つのプロ ジェクトであるブルーストリームの実施にも反対の意を示した。 代替となる輸送路が、前述の北ヨーロッパを経由してロシアからドイツへと至るガスパイプラ インである。これはガスプロムとフィンランドのネステ・オイ社との共同プロジェクトであり、 両社は合弁企業ノルス・トランスガス・オイ(株式は50%ずつ所有)を設立している。 このプロジェクトによれば、陸上パイプラインがロシアとフィンランド、スウェーデンを通り、 2つの海底パイプラインがバルト海底を通ってフィンランドからドイツに至る。 情報によると、ガスプロムのガスの4%がフィンランドを経由して輸出されており、合弁企業 ガズムの株式をガスプロムとあわせて75%保有していたネステ社が、フィンランドにおけるガス 輸出独占企業となっている。その後ネステ社の株式保有率は49%となった。 ラトビアのラトヴィジャス・ガゼも、このプロジェクトへの参加を希望している(ラトビアを 経由するパイプラインの計画は早くも1980年代末には議論されていたが、政治状況の変化のため 実行に移されることはなかった)。ポーランド~リトアニア間パイプラインの延伸が計画されてい るものの、交渉はいまだ続いており、建設は5~7年後になると見込まれる。 今日では、石油と同様に天然ガスも、地政学的な攻防の対象となっている。ガス供給(採掘か ら輸送まで)をコントロールしているのは(独立のガス生産者を別とすれば)、ガスプロムただ一 社である。それにゆえに、この場合、地政学的課題の解決を目的としたエネルギーの利用戦略の 策定と実現を論じることができるのである。しかしこうした状況に関連して、ロシア産ガスの需 要家はガスプロムへの依存に気づき、ガス供給源の多角化に努めている。これはロシアの国益と 相反するものである。 昨今ロシアは、事実上すべてのガス輸出プロジェクトで深刻な問題に直面している。ガスプロ ムの輸出パイプライン網は中欧および西欧、トルコとバルカン地方をカバーしている。欧州向け 供給の約80%がウクライナ国内のパイプラインを通って行われており、その通過容量は年間1,300 億~1,400億m3に及ぶ。比較的新しいヤマル~ヨーロッパ・パイプラインはベラルーシとポーラン

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ドを通過し、その通過容量は年間350億m3となっている。黒海を通りロシア南部とトルコを結ぶ ブルーストリームは、年間160億m3とされる計画上の輸送能力にはまだ程遠い段階にある。しか しブルーストリームは最終的にトルコだけでなく、南ヨーロッパとバルカン地方に対する大規模 なガス輸出を可能にすると期待されている。 ブルーストリームはガスプロムの輸出戦略の実現にとって、重要な段階だと見なすことができ る。同プロジェクトはガスプロムの関与する海外市場のうちで、最も発展著しいトルコへの新し い供給ルートを開拓した。かつて同国市場へは、ルーマニアとブルガリアを通るパイプラインを 利用するほかはなかったのだ。それだけでなくブルーストリームは、欧米の支援によって進めら れているカスピ海のエネルギー資源用のパイプライン・プロジェクトが建設段階に入るよりもず っと以前に、ロシアがトルコ市場に参入することを可能とした。 ウクライナ方面でガスプロムのパイプラインが抱えている主たるリスクは、何よりもロシアと ウクライナの関係に起因している。両国間のガス問題、すなわちウクライナ側のガス供給に対す る債務と、無断で行われるガスの抜き取りが事実上ウクライナの政府レベルで容認されていた問 題は、1990年代半ばから先鋭化した。そのうえ、他の旧ソ連諸国と同様に、ウクライナの対外政 策はロシアの影響力を最低限にとどめるため、西側への接近を志向していた。このためにウクラ イナ政府は一度ならず、西側企業に利権を供与して自国内でのガスパイプライン管理に参加させ ようと試みた。そうなれば、ロシアにとって明らかに地政学的損失である。なぜなら、ロシアは、 自らに対してあらゆる面で圧力を行使しうる協力なライバルと交渉をせざるをえない状況に追い 込まれるからだ。 ロシアはウクライナ領を経由するガスプロムのガス輸送のトランジット料金を、2009年まで 2005年の水準に据え置く諸協定に調印した。これらの協定により、ウクライナが取り分の増大を 求めてガスプロムと取引をする余地はなくなり、今後5年間、国際市場がどのように変動しよう とも、ウクライナがガスプロムにとってのトランジット国としてとどまることとなった。 それに劣らず重要な動きとなったのが、2005年10月にガスプロムとナフトガス・ウクライヌィ の間で調印された2つの協定であり、これらは2つの問題に関するものだった。第1の協定は、 ガス輸送コンソーシアム投資段階を正式に開始する旨のものであり、ノヴォプスコフ~ウジゴロ ド幹線パイプラインのうちのボゴロチャヌィ~ウジゴロド小区画を建設することをうたっている (プロジェクト総額は3億ドルと見積もられ、うち5,000万ドルが開始段階の投資として合意され た)。第2の協定は、2005年のガスプロムによるウクライナ領経由の天然ガス輸出を50億m3増量 することを取り決めた。

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ウクライナ国内のガス輸送システムの発展と運営のため、ガスプロムとナフトガス・ウクライ ヌィによって対等の原則で設立されたガス輸送コンソーシアムが、今のところしかるべく進捗し ていないことを指摘せざるをえない。最初の問題であるコンソーシアムの経営問題が解決されて いないのだ。ウクライナ政権がコンソーシアムをガスプロム側の所有権に譲渡することを拒み、 30年間の利権供与についての議論もはかばかしくないからである。 パイプラインシステムの発展自体は、ようやく緒に就いたところである。当初想定されたのは、 コンソーシアムは既存の幹線ガスパイプライン・システムの運営権を取得し、そのうえでノヴォ プスコフ~ウジゴロド間の新輸出パイプラインの建設を行うということだった(輸送能力年間150 億~280億m3、総額22億~28億ドル)。ガスプロムとナフトガス・ウクライヌィにより締結された 合意によって投資段階、すなわちガス輸送システムの開発が正式に開始された。ボゴロチャヌィ ~ウジゴロド間パイプラインの完成後に行われる、ロシアのノヴォプスコフに至るパイプライン 建設プロジェクトがいまだに検討されていないのは、興味深いことである。 もうひとつの肯定的な動きと見ることができるのは、ガスプロムがガストレーダーのすげ替え に成功したことである。すなわち、ウクライナ向けのトルクメニスタン産ガスをすべて買い付け ていたユーラルトランスガス社から、ガスプロムとライファイゼンバンクの合弁企業であるロス ウクルエネルゴ(今後ナフトガス・ウクライヌィも株主に名を連ねる可能性がある)への交代で ある。かくして、イテラ社とユーラルトランスガス社のあとに、ロシア資本の入った企業がトル クメニスタン産ガスのウクライナ向け供給を手がけることになったわけで、これによりガスプロ ムは本件を一定程度コントロールできる可能性を得ることになった。 締結に至った合意はロシアにとって好ましいものではあるが、リスクはまだ存在する。ユーシ チェンコ・ウクライナ大統領が、これらの合意の基本点を見直す可能性が出てきたのである。 ベラルーシにおけるロシアにとっての主要なリスクは、ガス部門で両国の折り合いがつかず、 ベラルーシの政権側が恒常的に自らの義務を果たしていないことである。 ベラルーシとの間で発生しているガスの供給と輸送に関する問題は、ベラルーシの幹線パイプ ラインを管理下に置こうとするロシア側の思惑と直接的に関連している。ガスの供給・輸送問題 についてウクライナ上層部との関係が不安定な状況の中で、ロシア側がベラルーシとの間で宣言 されている連合国家という路線を利用しつつ、ヨーロッパ向けのガス輸出に関するリスクを除去 することをねらっているのは明白である。 ロシアにとってベラルーシにおける大きなリスクとなっているのが、ベラルーシの政権が両国 間の合意の実施を渋っていることである。たとえば、2003年末~2004年初頭にかけてロシア・ベ

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ラルーシ間で紛争が勃発し、ベラルーシ向けのガス供給が一時停止される事態となったが、その 原因となったのは、両国によるガス輸送合弁企業の設立に関する合意をベラルーシ側が履行しな かったことである。 問題は、ロシアがヨーロッパ向けのガス供給を安定化するためには、ロシアがベラルーシの幹 線パイプラインに対する支配を確立する必要があるということである。この目的で、両国により 連合国家創設の枠内で一連の国家間協定が締結され、ガスプロムとベルトランスガスが合弁企業 を設立し、これがベラルーシにおけるパイプラインとコンプレッサー・ステーションを管理する ことがうたわれたのである。ロシアがこの合弁企業の支配株を取得し、この合弁がベラルーシ向 けおよびベラルーシ経由欧州向けのガス供給を管理するはずであった。だが、ベラルーシ当局は これらの合意の履行を拒否した。両国は、ベルトランスガスの評価額でも(ベラルーシ側が50億 ドルとしたのに対し、ガスプロムは4.8億ドルとした)、株式の配分でも(ベラルーシ側は自らが 支配株を保持するとともに、政府が企業に介入できる「黄金株」ルールを適用しようとした)、立 場が食い違った。 こうした状況では、ガスを使ったベラルーシ側の脅しがロシアにとって大きなリスクとなる。 2004年1月1日からガスプロムがベラルーシ向けガスの価格を引き上げると、ヨーロッパ向けガ スの通過に関する合意が長期間存在していないことを理由に、ベラルーシは自国領内のガス通過 を停止させると何度も脅しをかけた。 この衝突はガスプロムのある種の弱点を露呈させた。もしもベラルーシが何らかの形でガス輸 送量を制限する、あるいはトランジット料金を大幅に吊り上げれば、現実が示したように、ロシ ア政府はルカシェンコ大統領に圧力をかける梃子をそれほど握っていないのである。そしてヨー ロッパ市場でルールが厳しくなり、競争が激化しているという条件下では、ベラルーシとの間で 抱えている問題が、ガスプロムの影響力が現在より低下することにつながりかねないのだ。 すでに10年も続いているヤマル~ヨーロッパ・パイプラインの建設の運命は、ベルトランスガ ス社をめぐる状況の打開にかかっているのである。 ベラルーシ政府はヤマル~ヨーロッパ・パイプラインの業務に何とか参加しようとしており、 その一環として、ロシア側がベルトランスガスとの合弁で支配株を取得する代わりに、ロシアが ヤマル・パイプラインの持分で出資分を支払ってはどうかと提案したりしている。ベラルーシ側 がヤマル・パイプラインの経営に参加したい理由は、将来的にロシア側がヤマル・パイプライン を使ってベラルーシ抜きで欧州にガスを輸送できるようになってしまう点にある。現在のところ、 ヤマル・パイプラインはベラルーシの既存パイプライン「トルジョク~ミンスク・イヴァツェヴ

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ィチ」と2箇所で連結されているが、ヤマル・パイプラインが2005年に最終的に稼働すれば、こ の連結部分は切り離される予定である。 ヨーロッパ北部におけるガス輸送でロシアにとって最大の政治的リスクとなっているのが、ウ クライナおよびベラルーシとの関係の不安定さであるのは明白である。両国の対ロ・エネルギー 依存への反発、そして外交の舞台での完全な孤立に至るまで旧ソ連諸国に対するロシアの影響力 を低下させようとする西側諸国の思惑は、債務の不履行と秘密裏に行われているガスを使った恐 喝となって現れている。 これらのトランジット諸国からの恐喝という今後生じうる状況を解決するため、ガスプロムは 北ヨーロッパ・パイプラインからリトアニアとロシア・カリーニングラード州方面に延びる支線 の建設を目指している。本件は2005年秋に当該の協定が締結されたことで明らかになった。この 支線はバルト海底を通って直接カリーニングラード州へ入り、ガスはそこからさらにリトアニア へと運ばれる。これにより、ベラルーシの圧力を排除した上でロシア産のガスをヨーロッパに輸 出できるようになる。 全体の状況を言えば、ガスプロムは欧州の需要家に対する供給義務を果たすために、2010年ま でに供給を1,959億m3にまで拡大しなければならない。この輸送を確保するため、ガスプロムは3 つのパイプライン建設案を検討している。①北ヨーロッパ・パイプライン、②コブリン~ヴェル ケ~カプシャヌィ・ルートのパイプライン、③ヤマル~ヨーロッパ・パイプライン、である。2002 年には①が優先されていた。 このパイプライン建設は他と比べてはるかに大きな費用を想定していることは、指摘しておく 必要がある。金額にして62億~100億ドル、建設期間は約6年と見積もられている。パイプライン はバルト海海底を通り、ドイツとオランダを経由し、その後海を渡って英国に至る。このパイプ ラインの利点としては、ウクライナとベラルーシを経由するリスクを排除し、最大量のガスを供 給する輸送幹線の管理権をロシアに与えることが挙げられる。 新パイプラインへのガス資源供給基地となると考えられているのが、2年前にイテラから取得 したユジノ・ルースコエ鉱床である。2005年末までにガスプロムはプロジェクト参加者の顔ぶれ を決定し、技術的・経済的な検証と資金の手当を行う予定である。 北ヨーロッパ・パイプラインのための供給基地候補として検討されていた別の産地が、バレン ツ海沿岸のシュトクマン鉱床とヤマル半東北部に位置するボヴァネンコフスコエ鉱床である。だ が、操業に向けた準備が比較的進んでいること、ガス輸送インフラへの近接性、そして投資リス クの低さから、結局ユジノ・ルースコエ鉱床が選ばれた。プロジェクトの予算は現存するパイプ

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ラインまでの新規建設分を考慮して10億ドルと見積もられている。 これに関しては、重要な問題があることがすぐにわかる。当初、ヨーロッパ系企業は輸出ルー トを分散させる同パイプラインの建設に関心を持つだろうと想定されていた。しかしEUの新規加 盟国である中・東欧とバルト諸国の市場で、ガスプロムと争って主導権を握ろうとしている西側 の投資家にとって、このパイプラインによる利益は不明確なままなのである。それゆえに、最初 にプロジェクトの資金調達問題が、ガスプロムの前に立ちはだかる可能性がある。 さらに、ガス供給地の多角化に関するEUの政策に起因する新しいリスクも存在し、これにより ヨーロッパ市場においてガスプロムが30~35%以上のシェアを獲得できるということは到底想像 しがたい。 当然ながら新ルートがウクライナとベラルーシのルートに取って代わることは不可能だが、こ のルートは両国に対する効果的な圧力材料をロシアに与えることになる。さらに、北海資源の枯 渇によって2006年からは輸入を始めざるをえなくなるといわれる英国市場への進出は、大きな利 益が見込める。 経由国(この場合はウクライナ)から、ガスを用いた恐喝行為でロシアに圧力が加える余地を 奪うことを目的としているもうひとつのプロジェクトが、前述のヤマル~ヨーロッパである。こ のパイプラインはヤマルからベラルーシ、ポーランド、スロバキアを通って西ヨーロッパに至る。 ヤマル~ヨーロッパ・パイプラインの総延長は、4,000kmを越えることになる。現在のところ スモレンスク~マリノフ(ドイツ)間の600kmで操業が行われており、ロシア、ベラルーシ、ポ ーランド、ドイツを通過している。同パイプラインの輸送能力は計画上年間300億m3だとされ、 2005年末までにはこの設計能力に達するであろう。ベラルーシではこのプロジェクトの枠内でオ ルシャ、クルプキ、ミンスク、スロニムの計4つのコンプレッサー・ステーションが建設される。 しかし今のところ、クルプキでの建設が開始されたにとどまっている。 ここで再び問題はガスプロムの対外的パートナーに移る。東欧諸国におけるエネルギー供給源 を多様化させようとするEUの政策は、ガスプロムに一定の問題を投げかけている。たとえば、こ うした要求により西欧でのガスプロムのシェアは近年若干縮小している。しかし、現在のところ 東欧におけるガスプロムの影響力はやや増大しつつある。とくにガスプロムはエストニア、ラト ビア、リトアニア、スロバキアにとって唯一の天然ガス供給者であり、同社はハンガリーが輸入 するガスの91%、ポーランドの79%、チェコの73%を占める。 ユーラシアにおける米国のガス戦略は、石油と同様にロシアを迂回するガスパイプライン建設 の必要性を説いている。これはロシア政府が影響力の梃子としてガス問題を利用する可能性に本

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質的な修正を迫るものであるだけに、ロシアの国益に反する。 現在米国では、バクー~トビリシ~エルゼルムを結ぶ南コーカサス・ガスパイプライン建設に 関するロビー活動が行われている。すでにトルコとオーストリアのシステムに接続する全長 3,000kmに及ぶパイプライン建設について、計画の策定が始まっている。2004年末までに技術的・ 経済的検証が準備され、建設開始の決定もなされた。 南コーカサス・パイプラインの輸送能力は年間200億~300億m3とされ、この数字は戦略的パイ プラインであるヤマル~ヨーロッパ・パイプラインと肩を並べる。建設予算は44億ユーロ前後と 見積もられ、2009年までの完成を目指している。ガスの供給国としてイラン、イラク、アゼルバ イジャンが予定されている。 このガスパイプラインがバクー~トビリシ~ジェイハンを結ぶ石油パイプラインと並走してい ることは、注目に値する。このパイプラインは南コーカサス地域とトルコへの供給でガスプロム の供給に取って代わりうるだけでなく、ヨーロッパ向けについても然りである。同パイプライン のイニシアティブをとったのは米国、トルコ、アゼルバイジャン、そしてグルジアである。 グルジアの立場は多義的なものである。一方で同国はパイプライン建設に利害関係を有する立 場にある。自国内をパイプラインが通過するトランジット料だけでも2015年までに3億m3のガス 供給を受けられ、加えて5億m3までは優遇価格で購入できる。しかし、国のエネルギー安全保障 のためにはこの3倍強、25億m3のガスが必要であり、他のパートナーも不可欠となる。この役割 を確固として担っているのが、同国に約10億m3ものガスを供給しているロシアであり、そのうえ 2003年の実績でイテラも7億5,200m3のガスを供給している。今年ガスプロムはCIS市場からイテ ラを排除し、その後釜に座って供給量を増加させようとしてている。 グルジア市場ではロシアにとってかなり深刻なリスクがある。「バラ革命」まではロシア・グル ジア政府間に25年間の協定があり、これによりグルジアへのガス供給、グルジアの最終需要家向 け販売への参加、そして同国を通じたトランジットが取り決められていた。 この協定によれば、ロシアはグルジアのガスパイプライン網の開発、再生、復興、拡大に参加 し、火力発電用のガスを供給し、その共同販売による自らの取り分を受け取ることになっていた。 トランジット料金の一部は、ガスの供給という形で支払われた。だが、バラ革命後に成立した現 政権のジヴァニヤ氏などは、この協定を「国益に対する裏切り」と決め付けている。 現在では、国内の社会経済的不安定、燃料供給に対するガスプロムの債務返済要求、そして供 給削減の実施により、グルジア側の態度は軟化している。 このように、グルジアに対して何らかの影響を及ぼすためのガスカードを切るチャンスがロシ

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アには生じている。追加供給を切れ目なく実施することと引き換えに、ガスプロムはイランから ヨーロッパ向けのガスが通過するグルジアの主要パイプラインへの管理権、そしてガス配給会社 トビルガスの民営化に対して(すなわち前出の25ヵ年協定を実施を取り付けるために)、3億ドル を提示した。 対グルジア関係におけるロシアの問題は、今のところグルジアに対して圧力をかけるための現 実的な梃子が存在しない点である。なぜなら制裁による供給の停止は、自動的に南コーカサス地 域で唯一ロシアと同盟関係にあるアルメニアにも影響を及ぼすためである。この問題を克服する ため、トルクメニスタン産ガスをグルジアを迂回して供給するイラン~アルメニア・パイプライ ンの建設プロジェクトが作成されている。これが現実のものとなれば、ロシアはグルジアに対し てより大きな影響力を行使する機会を得ることになろう。ベラルーシに対するガス供給が停止さ れたことが発覚すると、西側の需要家は損失を理由として補償を求めたが、ロシアはこのパイプ ラインによりこうした事態を回避できる。また、ベラルーシと事を構えているうちに、バルト諸 国とヨーロッパの需要家、そしてロシアのカリーニングラード州までもが燃料の節約を余儀なく されたが、そのような事態を回避できる。 グルジアのガス輸送幹線をロシアが掌握することは、明らかに国家安全保障にかかわる問題で ある。サアカシヴィリ政権が米国のコントロール下にあるため、ロシアがほぼすべての国際問題 についてグルジア側と有効な協議を実施できると期待を持つことすら不可能となっている。 ガスパイプライン掌握をめざすロシアのねらいは、当然ながら米国の批判にさらされている。 米国がグルジアに強い圧力をかけ、自国の優先事項を押し付けていることに注目すべきである。 米国の政府代表は、主要パイプラインをガスプロムに譲渡しないよう警告を発している。もしも 警告が無視された場合、すでにアゼルバイジャン国内で建設が始まっているバクー~トビリシ~ エルゼルム・ルートのパイプラインがグルジアを通過することは、まずあるまい。 この問題でのトルコとアゼルバイジャンの利益は、多くが政治的なものである。新しいパイプ ラインは、トルコによって検討されているイランから中欧に至るパイプラインの建設プロジェク トと相まって、トルコとヨーロッパへのガス資源供給者たるロシアの立場を明らかに弱体化させ る。アゼルバイジャンもトルコの衛星国であるかのように、利益は同じようなものとなっている。 アゼルバイジャン国営石油会社がかつて、アゼルバイジャンのガスをトルコに供給するのにブ ルーストリームの余剰能力を活用しようというロシアの提案を拒絶したことは、象徴的だ。ブル ーストリームに接続すれば、アゼルバイジャンは自前のパイプラインの建設をする必要がなくな り、約3億ドルを節約できたはずである。それでもアゼルバイジャンはシャフデニス鉱床のガス

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をトルコに輸出する主要輸送路として、ロシア迂回路を選好した。 バクー~トビリシ~エルゼルム・ガスパイプラインの他、トルコは約300億m3ものトルクメニ スタン産ガスを同国から直接買い付けることを可能にする輸送網を建設する案を練り、その半分 を第三国に転売しようとしていた。しかしトルクメニスタンがロシア寄りの姿勢をとったことで、 ブルーストリーム・プロジェクト実現に合意せざるをえなくなった。 ブルーストリームの総延長は1,213kmである。パイプラインは基本的に以下の3つの区域に分 けられる。  スタヴロポリ地方イゾビリノエからクラスノダル地方で黒海沿岸に位置するオシポフカまで のロシア領内陸上ルート。全長373km。  クラスノダル地方アルピホ・オシポフから、トルコ・サムスン市より60kmに位置するターミ ナル「ドゥルス」までの海底ルート。全長396km。  サムスンからアンカラまでのトルコ領内陸上ルート。全長444km。 パイプラインの計画上の輸送能力は年間160億m3である。契約によれば、ブルーストリームに よる天然ガス供給は、2003年:約20億m3、2004年:40億m3、2005年:60億m3、2006年:80億m3 2007年:100億m3、2008年:120億m3、2009年:140億m3、2010年:160億m3、と計画されている。 ブルーストリームの総予算は海底パイプライン建設とコンプレッサー・ステーション「ベレゴヴ ァヤ」の建設にかかわる17億ドルを含め、32億ドルとされる。 パイプラインの建設段階で早くも、トルコの官僚がかかわる汚職事件が明るみに出た。トルコ 側が消費する用意のあるガスの量が、ガスプロムの計算よりもはるかに少ないことが供給開始後 に判明した。というのも、バルカン半島横断パイプラインが必要量をまかなっており、さらに2003 年夏にトルコは需要がないことを理由にガスの輸入を拒もうとしたからである。数カ月にわたる 話し合いの結果、ロシアは供給量削減と1,000m3あたり10ないし15ドルの値下げを含む譲歩を受け 入れた。それまでロシアは1,000m3あたり75ドルで、年間20億m3のガスを供給していた(以前には 40億m3が供給された)。ガスプロムとトルコの企業BOTASの間で締結された契約は、25年間で 3,650億m3のガスの購入を定めている。 ブルーストリームがもたらす政治的含意は、非常に明確である。ロシア産ガスに過度に依存す れば、トルコにとっては外交的な立場が弱まることになりかねず、そうなれば必然的にボスポラ ス・ダーダネルス海峡をロシアの石油を輸送するのに利用するのに際して譲歩をせざるをえない。 こうした中で米国は、バクー~エルゼルム・パイプラインの完成後にトルコに供給されると考 えられているアゼルバイジャン産ガスの利用を優先するよう、トルコに圧力をかけている。ブッ

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シュ政権は、中央アジアとアゼルバイジャンの石油とガスをトルコ経由で全世界に輸出するカス ピ海横断エネルギー回廊の建設を計画している。こうした動きは、輸送サービスの独占的な供給 者たるロシアからその優位性を奪うものであり、クレムリンが納得できないのは当然である。 ブルーストリームの完成はロシアにとってそれほど有益でないと、当初からロシアの輸出業者 が予想していたのは注目すべきである。同プロジェクトは実質的に、独占的な最終需要家を想定 しており、その場合、需要家はロシアに自らの条件を付き付けるようになる恐れがある。ロシア 政権は、ユコスの提案したアンガルスク~大慶パイプラインの検討でも同様の問題に突き当たっ た。ここでは中国が独占的需要家となり、結局のところロシア側に値下げの圧力をかけてくる可 能性がある。 ガスプロムは現在、トルコのガス・ディストリビューターであるボスポラスガスの株式を40% 買収しようとしている。その場合に同社の株の残り60%は、トルコのエネルギー会社トゥルエナ ジーのもとに残る。専門家の意見によると、ロシア側への株式の売却は、ブルーストリーム経由 で供給されるロシア産ガスの値下げに関する同意を取り付けるための代償だという。 ガスプロムにとって、ボスポラスガスの獲得はあまり金銭的な利益にならない。だがブルース トリームを利用した供給を保証するために、同社がトルコ市場への進出の展望を開くという点が 重要な意義を持つ。なぜなら、イランからのパイプラインとバクー~トビリシ~エルゼルム・パ イプラインの開通後、状況が一変しかねないからである。また近い将来、トルコ政府が総額190 億ドルに上る、さらに有望なエネルギー資産を売却することも挙げられよう。その場合トルコ側 のパートナーを確保しておくことが、ガスプロムにとって有力な足場となりうる。 トルコがらみで言えば、トルコとイランによって策定され、2008年に建設が開始されることと なっている、イランからヨーロッパに向かうパイプライン・プロジェクト(供給量は年間100億 m3)が、ロシアにとっての重大なリスクとなりうる。 このプロジェクトの予算は50億ドルとされる。パイプラインは中東とヨーロッパを結び、総延 長は3,400km、輸送能力は250億~300億m3である。2005年半ばには建設に向けてトルコのBOTAS、 ブルガリアのブルガルガス、ルーマニア国営ガス公社、ハンガリーのMOL、オーストリアのOMV の計5社からなるコンソーシアムが設立され、2015年の稼動開始を目指している。 トルコ向けのイラン産ガスの供給量が増加しないことと、ガス供給開始をめぐる複雑な状況が、 引き続きこのプロジェクトを困難にさせる要因となっている。 以上のように、現在のトルコのエネルギー政策はブルーストリーム、イラン~ヨーロッパ・パ イプラインなど、それぞれ競合する当事者が背後にいるガス・プロジェクトを並行的に実施する

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ことにより、そこから最大限の利益を得ようとするものである。結果としてトルコは地域・国際 政治の舞台で自国の地位を向上させることに成功した。他方、ロシア・トルコ関係は両国の相反 する利益によって複雑化した。ロシアはトルコのガス市場における最重要アクターとしての地位 を確立し、それを自らの利益のために最大限に利用したい。一方のトルコは一刻も早く新規供給 者を市場に参入させ、ロシアから圧力の手段を奪いたい、ということである。 ロシアにとって難局からの突破口となりうるのは、ガスプロムがトルコ国内のガス精製・配給 資産に対する支配の確立に向けた活動を本格化することである。獲得が実現すれば、ロシア産ガ スの割合を40%にまで低下させうる他のガス輸送プロジェクトが実現したあとでも、ロシアはト ルコに対する影響力を確保することができるのである。 トルコがヨーロッパ向けエネルギーの輸送(前述のガスパイプラインの他に、バクー~トビリ シ~ジェイハン石油パイプラインもある)において一大拠点たらんとするねらいを考慮すると、 ロシアはトルコとの関係において将来的にいくつもの問題を抱えることになるだろう、と結論付 けることができる。 イランとカザフスタンの石油がトルコの港から大量に輸送されるようになれば、ロシア産石油 がヨーロッパ南部から駆逐される可能性がある。一連のガスパイプライン・プロジェクトが実現 すれば、最大のガス供給・輸送者としてのロシアの優位性もまた失われるだろう。 ガスプロムにとってもうひとつ重要なのは、中国のガス市場である。だが、ユコスが対中石油 輸出に関する供給義務の履行を拒否したのに加え、最終案でアンガルスク~大慶ルートが太平洋 沿岸ルートに変更されたことで、昨今ロシアと中国の間にはエネルギー部門で深刻な緊張が存在 している。 中国の需要が増加し続けているため、同国の市場は潜在的にガスプロムに利益をもたらしうる。 当初中国向けにはコヴィクタなどのローカルなプロジェクトからエネルギーが輸出される予定だ ったが、プロジェクトのオペレーターであるルシア・ペトロリウムとガスプロムの間にごく最近 まで意見の相違が存在していたため、この10月にガスプロムは中国国営石油公司(CNPC)と戦 略的協力関係に関する協定を結んだ。この協定は両社による調整委員会設立をうたい、両社の協 力方針を「ガスプロムがCNPCにロシア産天然ガスを供給する諸プロジェクトの調査および実現」 としている。期限、供給量、ガス生産地、価格決定方式の課題は、調査委員会に委ねられた。そ の他にも調査委員会は地質調査から第三国での共同プロジェクトに至るまで、ガスプロムと CNPCのあらゆる協力の可能性を検討していくことになる。

参照

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