Title Apparent Diffusion Coefficient as a Potential Surrogate Markerfor Ki-67 Index in Mucinous Breast Carcinoma( Abstract_要旨 )
Author(s) Onishi, Natsuko
Citation Kyoto University (京都大学)
Issue Date 2017-03-23
URL https://doi.org/10.14989/doctor.k20224
Right
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Type Thesis or Dissertation
Textversion ETD
京都大学 博士(医学) 氏 名 大西 奈都子 論文題目
Apparent Diffusion Coefficient as a Potential Surrogate Marker for Ki-67 Index in Mucinous Breast Carcinoma
(乳腺粘液癌における Ki-67 index の代替バイオマーカーとしての見かけの拡散係数) (論文内容の要旨) 乳癌の臨床現場において、リスク評価は病変の良悪性診断と同等に重要である。 Ki-67 index は細胞増殖能の指標であり、乳癌病変のリスク評価を目的とした Ki-67 免疫組織染色が普及している。また、術前化学療法や術前ホルモン療法にお いても、治療前・治療中・治療後の腫瘍組織を採取し Ki-67 index の変化をモニ ターすることで、治療効果をより詳細に評価しようと試みられている。 特殊型浸潤性乳癌である乳腺粘液癌(以下、粘液癌)は一般的に予後が良いタ イプの乳癌であるが、細胞密度の高い純型粘液癌(cellular type)は細胞密度の低い 純型粘液癌(hypocellular type)と比較して予後が悪く、また非特殊型浸潤性乳癌の コンポーネントを有する混合型粘液癌は純型粘液癌よりも予後が悪いことが知ら れている。MRI の拡散強調画像から得られる見かけの拡散係数(ADC)は、腫瘍の 細胞密度との逆相関関係が知られている。乳癌の大部分を占める非特殊型浸潤性 乳癌においては、ADC 値と Ki-67 index に相関関係が示されなかったという過去 の報告が存在するが、特殊型乳癌である粘液癌においては細胞密度と予後との関 係性が存在することから、ADC 値と Ki-67 index に相関関係があるのではないか と仮説を立てた。1) 粘液癌における ADC 値・Ki-67 index・細胞密度の相関関係 を評価すること、2) 増殖能の高い粘液癌、低い粘液癌の区別が ADC 値によって 非侵襲的に行えるか評価すること、という2点を本研究の目的とした。 同一施設で診断された粘液癌群18 病変、対照群(Luminal type の非特殊型浸潤 性乳癌)18 病変に対して後方視的な検討を行った。対照群は、粘液癌群の個々の症 例に対して診断時期、病理組織学グレード、MRI 撮影時期、MRI 撮影機器をマッ チングさせて設定した。粘液癌群の年齢は39-76 歳(平均 58.6 歳)、対照群の年齢 は43-80 歳(平均 60.5 歳)であった。
結果、粘液癌群のADCmin 値(複数の region of interest 中の最小値:ADCmin) は、細胞密度と逆相関(r=-0.802, p<0.0001)、Ki-67 index と逆相関(r=-0.825, p<0.0001)を示した。対照群の ADCmin 値は、細胞密度と逆相関(r=-0.537, p=0.022) を 示 し た も の の 、 Ki-67 index と の 間 に 相 関 は な か っ た (r=0.035, p=0.892)。高い Ki-67 index (Ki-67 index; 14%以上)を示す粘液癌は、低い Ki-67 index(Ki-67 index; 14%未満)を示す粘液癌と比較して有意に低い ADCmin 値を示 した(p=0.005)。粘液癌群内のサブ解析では、混合型粘液癌および細胞密度の高い 純型粘液癌(cellular type)は、細胞密度の低い純型粘液癌(hypocellular type)と比 較して低いADCmin 値を示した。
今回の検討により、粘液癌においてADC 値と Ki-67 index の間に逆相関関係が あることが明らかとなった。またADC によって細胞増殖能の高い粘液癌と低い粘 液癌の区別、すなわちリスク評価を行うことができる可能性が示された。乳腺の 粘液癌において、MRI 拡散強調画像から得られる ADC 値は Ki-67 index の非侵 襲的代替バイオマーカーとなりうることが示された。
(論文審査の結果の要旨)
ADC 値は MRI の拡散強調画像から得られる計算値である。本研究は、乳腺粘液癌 (以下、粘液癌)において 1) ADC 値・Ki-67 index・細胞密度の相関関係を評価すること、 2) ADC 値によって増殖能の高い粘液癌、低い粘液癌の区別が可能か評価することを目的 とした。
粘液癌群 18 病変、対照群(Luminal type の非特殊型浸潤性乳癌)18 病変に対し後方視 的な検討を行った。
結果、粘液癌群の ADCmin 値(ADC 最小値)は、細胞密度と逆相関(r=-0.802, p<0.0001)、 Ki-67 index と逆相関(r=-0.825, p<0.0001)を示した。対照群の ADCmin 値は、細胞密度と逆 相関(r=-0.537, p=0.022)を示したが、Ki-67 index とは相関を示さなかった。高い Ki-67 index (≧14%)を示す粘液癌は、低い Ki-67 index(<14%)を示す粘液癌と比較して有意に低い ADCmin 値を示した(p=0.005)。混合型粘液癌および cellular type の純型粘液癌は、 hypocellular type の純型粘液癌と比較して低い ADCmin 値を示した。
本研究により、粘液癌において ADC 値と Ki-67 index の間に逆相関関係があること が明らかとなった。また ADC 値によって増殖能の高い粘液癌と低い粘液癌を区別でき る可能性が示された。
以上の研究は、乳腺粘液癌におけるADC 値・Ki-67 index 間の逆相関関係の解明に 貢献し、乳癌の非侵襲的なリスク評価に寄与するところが多い。
したがって、本論文は博士(医学)の学位論文として価値あるものと認める。
なお、本学位授与申請者は、平成 28 年 12 月 9 日実施の論文内容とそれに関連した 試問を受け、合格と認められたものである。