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研究論文 * 高速度赤外線カメラを用いたエンジン筒内熱損失低減に関する研究 宮下和也 1) 鈴木浩高 1) 松本淳志 1) 香川景章 1) 山下健一 1) A Study on Reduction of In-Cylinder Heat Loss Using High-Speed

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高速度赤外線カメラを用いたエンジン筒内熱損失低減に関する研究

宮下 和也1) 鈴木 浩高1) 松本 淳志1) 香川 景章1) 山下 健一1)

A Study on Reduction of In-Cylinder Heat Loss Using High-Speed IR Camera

Kazuya Miyashita Hirotaka Suzuki Atsushi Matsumoto Kageaki Kagawa Kenichi Yamashita

In order to clarify the in-cylinder wall heat loss phenomena, visualization of flame behavior and wall surface temperature distribution was attempted in a top-view optical engine. Infrared radiation from chromium coated quartz window surface was visualized by high-speed infrared camera. Heat flux sensor measurement and CFD simulation were also conducted to compared with infrared radiation and to consider the effect of wall material difference between quartz and metal. Furthermore, appropriate sensor layout was investigated from distributions of infrared radiation taken by high-speed infrared camera. The obtained high-speed infrared images successfully demonstrated the potential of the visualization technique for qualitative measurement of wall surface temperature distribution, which will be beneficial for fundamental understanding, model development and its validation of the wall heat transfer process. As for the sensor layout consideration based on high-speed infrared images, it was found that wall heat loss within φ30mm can be obtained by radially dividing the measurement area into three and using nine sensors.

KEY WORDS: Heat engine, Compression ignition engine, Measurement/Diagnosis/Evaluation, Infrared high-speed imaging (A1)

1.ま え が き ディーゼルエンジンの正味熱効率を向上するためには,図 示熱効率の改善及び機械損失の低減が必要であり,熱効率に 対しては理論熱効率の向上,燃焼効率の向上,熱損失の低減, 等容度の向上が重要である.これらを実現するための手段と しては,圧縮比の増加や,噴射時期の進角などが考えられるが, 同時に熱損失も増加する傾向にあるため,更なる燃費改善に は熱損失の低減が必須である. 熱損失低減手法としては,壁面温度をガス温度に追従させ る壁温スイング遮熱(1)や,低スワール・低スキッシュ流による 筒内低流動化(2),噴射率可変インジェクタを用いた燃焼室と噴 霧火炎の接触低減(3)などが行われてきている.一方で,噴射初 期に噴霧の一部を燃焼室中心部に衝突させ,噴霧主要部を壁 面に沿わせて発達させると熱損失が低減する場合(4)があるな ど,壁面熱流束挙動は未解明な点が多く(5),熱損失予測精度改 善に必要な実験データも不足しているのが現状である. エンジン筒内における熱損失低減のための壁面温度及び熱 流束計測手法としては,熱流束センサによる時系列点計測(6) 用いられている.センサによる計測は時間分解能,定量性に優 れるが,点計測であるために壁面熱流束分布を把握すること には適していない.2 次元壁面温度及び熱流束分布の計測手法 としては感熱燐光体を用いたレーザー誘起燐光法による瞬時 面計測(7)が挙げられるが,計測には複雑な光学系を必要とし, かつレーザー出力及び繰り返し周波数の制約により壁面熱流 束分布の時系列計測は容易ではない.壁面温度及び熱流束分 布の時系列計測への応用としては,高速度赤外線カメラを用 いて赤外線放射強度から時系列の温度分布を計測する手法(8,9) が近年提案されてきているが,これらの計測対象は定容容器 または下方可視化エンジンであり,実機エンジン相当での計 測例は著者らの知る限り存在しない. 本研究では熱損失低減のために,実エンジン筒内の熱伝達 現象を詳細に把握することを目的とする.本稿では石英ガラ ス表面に蒸着したクロム膜からの赤外放射分布を実機エンジ ンで可視化することを試み,赤外線放射強度計測結果を熱流 束センサの点計測,CFD と連成させた 1 次元熱伝導計算結果 と比較して,高速度赤外線放射計測の優位性と問題点につい て確認した.また赤外放射分布計測結果から,適切な点計測セ ンサの配置を検討したので,それらの結果について報告する. 2.実験方法・実験条件 エンジン筒内の可視化には,先行研究(10)に倣い新規に作成 した,シリンダヘッド上方より光学アクセス可能な上方可視 化装置を用いた.表1 及び図 1 にエンジン諸元と可視化装置 の概略図を示す.本エンジンは油圧駆動可変バルブ機構を搭 載した単気筒ディーゼルエンジン(11)であり,各バルブの開弁, 閉弁時期,リフト量は独立かつ任意に制御可能となっている. 本研究では筒内を可視化するために排気弁 1 ヶ所を可視化用 窓に置き換えている.図2 に上方可視化装置の可視化領域を 示す.ボア径115mm に対して,シリンダヘッドに設置された 可視化用窓の有効最大視野径は 30mm であり,インジェクタ *2020 年 10 月 31 日受理.2020 年 10 月 21 日 自動車技術会 秋季学術講演会において発表 1) (株)いすゞ中央研究所 (252-0881 神奈川県藤沢市土棚 8 番地)

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研究論文 20214129

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より噴射された噴霧の1 噴霧を可視化することができる.ま た点線で示すセクター計算領域を概ねカバーしており,シミ ュレーションとの比較も可能である. 可視化用窓はヘッド下面の温度分布を可視化するために, クロム膜 (1.2m) 及び SiO2保護膜 (20nm) を蒸着した厚さ 40mm の石英ガラスを使用し,ディーゼル噴霧火炎が可視化用 窓に衝突することで生じる壁面温度上昇によるクロム膜の赤 外線放射を高速度赤外線カメラ (FAST-IR M3k, TELOPS) で 撮影する.高速度赤外線カメラの分光感度特性は 3.0m~ 5.4m であり,同領域における石英ガラスの最大透過率は約 80%である.燃焼実験は 10 サイクルを連続で撮影しているが, 実験後にクロム膜表面を確認するとすす粒子が付着しており, デポジットの清掃が必要となる.また10 サイクルの連続燃焼2 回繰り返した段階でクロム膜にピンホールが生じた.ク ロム膜の機械強度向上に関してはさらなる検討が必要である. 赤 外 線 放 射 計 測 結 果 と 比 較 す る た め に 熱 流 束 セ ン サ (Medtherm TCS-E(EN)) による壁面温度及び熱流束計測も実施 した.熱流束センサの母材はクロメルで,E タイプの熱電対で ある.計測は可視化用窓の代わりに熱流束センサを取り付け たSS400 ブロックに取り換えて,可視化試験と同条件で行っ た.計測位置は図2 に示す 1 点のみである.高速度赤外線カ メラによる撮影に加えて,可視光の高速度カメラ (HX-5, nac) による筒内噴霧火炎の可視化もクロム膜を蒸着していないサ ファイアガラスを用いて同条件で撮影した.実験条件と各カ メラの撮影条件を表2 及び表 3 に示す. 3.実 験 結 果 3.1. 赤外放射計測の妥当性 図3 に噴射圧力 60MPa で高速度撮影した画像を示す.上段 が筒内輝炎,下段がクロム膜からの赤外放射画像である.図中 の点線が視野領域であり,左から右へディーゼル噴霧火炎が 通過している様子である.輝炎直接写真を見てみると,ピスト ンリップ部に衝突した噴霧がスキッシュエリアへと流され, 漂いながらシリンダヘッドに取り付けたガラス表面に衝突し ている様子が観察されている.衝突した輝炎は温度低下に伴 い輝度が低下して観察され,その後膨張行程による筒内及び 火炎温度の低下によって観察されなくなる.一方,クロム膜か らの赤外線放射画像を見てみると,可視光カメラによる輝炎 Fig.1 Optical setup for high-speed infrared imaging

Fig.2 Schematic of top view field

table.1 Engine specification

Engine type 4 stroke 1 cylinder engine Bore x Stroke φ115 mm x 125 mm Displacement 1.298 L Compression ratio 20.1 Swirl ratio 1.29

Valve train Electro-hydraulic variable valve actuation system table.2 Experimental condition

Engine speed 1000 rpm Intake pressure 110 kPa (abs.)

Nozzle φ0.137 mm x 9 holes Injection pressure 60MPa, 100MPa Injection quantity 50mm3/st.

Injection timing 3°ATDC

table.3 Camera acquisition conditions Visible camera Infrared camera Camera HX-5 Fast IR M3k Frame rate 50000 fps 10000 fps Exp. dur. 20 s 10 s pixels 384 x 384 128 x 128

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直接撮影でガラス表面に噴霧火炎が衝突する時刻と同時刻か ら次第に観察されはじめ,それ以前では赤外放射分布に変化 は見られない.衝突により生じた赤外放射分布は燃焼後半の 膨張行程においても長い間観察され続けている.以上の比較 より,可視光カメラによる輝炎直接写真と赤外線カメラによ る赤外放射画像は全く異なる挙動を示しており,クロム膜に よって輝炎による赤外線放射を遮断し,噴霧火炎が壁面に衝 突することで生じる壁面温度上昇によるクロム膜の赤外線放 射を観察できていることが確認できた. 次に赤外線放射強度計測の妥当性を確認するために,熱流 束センサの計測結果と比較した.図 4 は熱流束センサと同じ 位置における赤外線放射強度の平均値を比較したものである. 赤外線強度は石英ガラスからのバックグラウンド放射を減算 した値,熱流束センサは赤外放射と比較するために表面温度 を 4 乗した値をそれぞれピーク値で正規化している.石英窓 及び撮影用レンズの分光透過特性,カメラの分光感度特性に よって,赤外放射強度は単純にセンサ表面温度の 4 乗とはな らないが,定性的な傾向を比較するため熱流束センサ表面温 度を4 乗して比較している.赤外線放射強度の立ち上がりや, ピーク値のクランク角は熱流束センサと概ね一致しており, 赤外放射強度計測は噴霧火炎衝突による壁面の温度上昇を捉 Fig.3 Example high-speed images of soot luminosity (top) and infrared radiation from chromium (bottom)

Fig.4 Normalized signal intensity of IR radiation from chromium and fourth power of the sensor surface temperature

table.4 Submodels for combustion simulation Breakup model KH-RT

Ignition model Shell

Combustion model CTC (Characteristic Time Combustion) Turbulence model RNG k-ε Wall heat transfer

model O’Rourke and Amsden Soot model Hiroyasu

Fig.5 Comparison between experimental and calculated rate of heat release

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えることができていると考えられる.しかしピーク値を迎え た後は赤外放射強度の減衰が緩やかである.紙面では膨張行 程の可視化画像は省略しているが,赤外線放射は可視光カメ ラで撮影した輝炎消失後も長い間観察され続けている.これ は可視化に使用している石英ガラスがセンサの材質に比べて 熱伝導率が低いために,ガラス内部への熱移動に時間を要す るためであると考えられる. 材質による熱移動の違いを確認するために,Convergent Science 社の CFD コード CONVERGE を用いて,燃焼計算と 連成させた 1 次元の熱伝導計算を行った.主要なサブモデル は表4 に示す通りである. まず計算結果の妥当性を確認した.計算結果の熱発生率を 可視化試験と比較した結果を図5 に,筒内 soot 分布を図 6 に 示す.図6 中の点線は可視化領域を示している.計算結果の方 が熱発生率のピーク値が高いが概ね燃焼状態を模擬している. また筒内soot 分布を可視化試験の輝炎直接写真と比較すると 同様の分布を示しており,計算結果が実験結果を再現できて いることが確認された.図7 に材質を変えた場合の 1 次元熱 伝導解析結果を示す.材質は熱流束センサのクロメル(熱伝導 率:20.3W/mK),クロム(熱伝導率:50 W/mK)膜厚さ 1.2m の石英(熱伝導率:1.38 W/mK)とし,熱流束をピーク値で正 規化した値を示している.計算結果は熱流束同士を比較して いるため,実験結果とは異なりセンサの値は4 乗していない. 実験結果と同様にピーク値を迎えた後に差がみられ,可視化 用の石英ガラスはクロメルより高い値を示していて,石英ガ ラスへの熱移動に時間を要していることが確認できた. 赤外線放射分布から壁面全体の熱流束分布を求めるには, 壁面温度分布を初期条件とした3 次元熱伝導解析を行う必要 がある.そのためにはクロム膜の赤外線放射に対する温度の 詳細な検定作業が必要となるが,今回の可視化試験のように クロム膜表面に噴霧火炎が衝突し,すす粒子が付着するよう な条件では,クロム膜の筒内側表面の壁面熱伝達が変化して しまい,実験条件と同条件での検定作業が困難である.検定方 法に関してはさらなる検討が必要であるが,クロム膜からの 赤外線放射に対する温度の検定ができれば,CFD を用いた熱 伝導解析結果と熱流束センサの点計測の結果を用いて赤外線 強度を補正し,実シリンダヘッド条件下での定量的な熱損失 の評価が可能であると考えられる. 赤外線放射の検定作業ができていないため,定量的な比較 はできないが,運転条件を変化させた場合の定性的な比較を することは可能である.図8 に赤外線放射強度の視野範囲全 体での平均値を噴射圧違いで比較した例を示す.噴射圧力を 増加させることにより赤外線放射強度の立ち上がりのタイミ ングが早くなり,ピーク値の値が高くなっていることが分か る.これらの噴射圧力を増加させることで噴霧流速が増加し, 壁面温度上昇が促進される傾向は従来の計測結果(6,7)と一致し ている.材質が実際のシリンダヘッドと異なる点に留意する 必要があるが,赤外線放射強度計測は熱損失低減に向けた計 測手法として有用であると考えられる. 3.2. 面計測と点計測の比較 赤外線放射強度による壁面温度分布計測の可能性が示され たが,材質の違いによる影響やクロム膜の赤外線放射に対す る温度の検定作業が必要となるために定量計測が困難である. また壁面の赤外線放射を計測するためにクロム膜を蒸着した ガラスを用いるために,高圧縮比燃焼系における計測時のガ ラス強度やピストン表面など複雑な表面形状での計測が課題 となる.これらを考慮すると定量性に優れ,比較的高負荷条件 でも繰り返し計測が可能な熱流束センサを用いて,壁面の熱 Fig.6 Calculated in-cylinder soot distribution

Fig.7 Effect of wall material difference between quartz window and metal surface on wall heat transfer

Fig.8 Average infrared radiation intensity from chromium

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流束を評価することが望ましい.壁面全体の熱流束を計測す るにはセンサ径を拡大する方法が考えられるが,センサの機 械強度が課題となる.複数のセンサを配置して壁面全体の傾 向を捉える研究(12)は存在するが,点計測であるために各点で の計測ばらつきは大きく,壁面全体の熱流束を計測すること ができているのかは不明である.そこで複数の点計測の組み 合わせにより,壁面全体の情報が得られるようなセンサ個数 と配置を検討する.今回は赤外線放射画像を用いて,センサ径 内の赤外線放射強度の平均値が視野範囲全体の平均値と同等 となるようにセンサ個数と配置を検討した. 図9 に検討したセンサ配置を示す.図中の白線内が視野領 域全体であり,噴霧位置及び噴射方向は図 3 と同様である.セ ンサ径を3mmとして半径方向に領域を分割するように配置し た.各領域の面積に対してセンサ 1 個当たりの面積割合が同 じになるようにセンサを配置すると,1 分割では 1 個,2 分割 では9 個,3 分割では 25 個,4 分割では 49 個のセンサが必要 となる.図10 に半径方向の分割数を変化させた場合のセンサ 径内の赤外放射強度の平均値と視野領域全体の赤外放射強度 を比較した結果を示す.半径方向の分割数を増加させること で,視野範囲全体の値に近づいていくことが分かり,4 分割す ることで全体の傾向と概ね同じとなる.しかしながらセンサ 数49 個は現実的ではなく,3 分割でセンサ数 25 個とした場合 のピーク値が全体平均のそれと5%ほどの差であり,30mmの 領域に対しては,半径方向に3 分割することで全体の傾向を 捉えることができていると考えられる. 次にセンサ数の削減に関して検討する.センサ数を減らし た場合の配置を図11 に示す.図中の白線内が視野領域全体で あり,噴霧位置及び噴射方向は図3 と同様である.左から領域3 分割でセンサ数を 9 個に減らした場合,その状態からセ ンサ位置を45°回転させた場合,4 分割でセンサ数を 13 個に 減らした場合の配置である.図12 に図 11 のセンサ配置時に おける赤外放射強度を示す.センサ数削減により,各領域にお けるセンサ 1 個当たりの面積割合が変化してしまうため割合 が同じになるように放射強度を補正している.領域全体の平 均値,2 分割でセンサ数 9 個,3 分割でセンサ数 25 個の場合 も重ねて表示している.センサ数9 個の結果を見てみると,同 じ個数でも2 分割から 3 分割にすることで平均値が全体の傾 向に近づくこと,また3 分割で 45°回転させた場合も平均値に 大きな違いはなく,3 分割でセンサ数 25 個の結果と同等であ ることが分かる.4 分割でセンサ数を 13 個とした場合は,さ らに全体の傾向に近づくが3 分割でセンサ数 9 個の場合から 劇的に改善することはなかった. 最後にセンサ径の影響を確認する.図13 に領域 3 分割でセ Fig.10 Variation of infrared radiation intensity at different sensor

layout shown in fig.9

Fig.11 Reduction of the number of sensors

Fig.12 Variation of infrared radiation intensity at different sensor layout shown in fig.11

Fig.13 Variation of infrared radiation intensity at different sensor diameter

Fig.9 Schematic of sensor layout

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ンサ数25 個の場合において,センサ径を 1.5mm に減少させた 場合の結果を示す.センサ径3mm の結果と比較すると両者に 違いは見られずセンサ径の影響は少ないことが分かった. 以上より,複数の点計測の組み合わせにより,壁面全体の情 報を得ようとする場合はセンサ個数よりも配置が重要である ことが分かり,今回の視野範囲内30mm の領域に対しては, 少なくとも半径方向に3 分割し,9 個のセンサが必要であるこ とが分かった.現在熱流束センサの開発中であり,今後実施予 定である複数の点計測と赤外線放射分布計測の組み合わせに より,壁面熱伝達現象の詳細把握が期待される. 今回の実験結果より赤外線放射強度を用いた壁面温度分布 計測は,壁面熱伝達現象の解明に対してポテンシャルがある ことが分かった.また点計測センサであっても複数個を適切 に配置すれば壁面の熱流束を把握できることが確認された. 今後は実験条件,例えば噴射率などを変更した場合の熱損失 評価を進めていき,実機筒内におけるピストン表面熱流束分 布計測手法についても検討する. 4.ま と め 石英ガラス表面に蒸着したクロム膜からの赤外放射を高速 度赤外線カメラにより時系列可視化することで,実機エンジ ン筒内における壁面赤外放射分布計測を試み,赤外線放射強 度計測結果を熱流束センサの点計測,CFD と連成させた 1 次 元熱伝導計算の結果と比較した.得られた結論を以下に示す. 1. 石英ガラス表面に蒸着したクロム膜により輝炎による 赤外線放射を遮断し,噴霧火炎が壁面に衝突することで 生じる壁面温度上昇によるクロム膜の赤外線放射を観 察できることが分かった.壁面温度の定量的な計測には 詳細な検定作業が必要であるが,噴射圧力を変化させた 場合の定性的な傾向は捉えることができる. 2. 赤外線放射強度を熱流束センサ計測の結果及び CFD と 連成させた1 次元熱伝導解析と比較すると温度の立ち上 がりやピーク値を向かえるタイミングは概ね一致して おり,噴霧衝突よる壁面の温度上昇を捉えることができ ることが分かった.しかしピーク値を迎えた後は石英ガ ラスの熱伝導率が低いために,ガラスへの熱移動に時間 を要し,両者の結果が乖離する. 3. 赤外線放射分布画像から,壁面全体の情報を得るための センサ個数と配置を検討した結果,30mm の領域内に対 しては,少なくとも半径方向に領域を3 分割し,9 個の センサを配置する必要があることが分かった. 謝 辞 高速度赤外線カメラを用いた可視化には株式会社コーンズ テクノロジーから多大なるご協力をいただいた.ここに感謝 の意を記す. 参 考 文 献 (1) 脇坂佳史,稲吉三七二,福井健二,小坂英雅,堀田義博, 川口暁生,壁温スイング遮熱法によるエンジンの熱損失低減 (第2 報).-単筒エンジンによる遮熱効果の先行検討-,自 動車技術会論文集,Vol.47,No.1,p.39-45 (2016). (2) 稲垣和久,水田準一,冬頭孝之,橋詰剛,伊藤弘和,高分 散と筒内低流動を利用した低エミッション・高効率ディーゼ ル燃焼‐燃焼コンセプトの提案と単筒エンジンによる基本性 能の検証‐,自動車技術会論文集,Vol.42,No.1,p.219-224 (2011).

(3) Aizawa, T., Akiyama, S., Shimada, T., Toyama, Y. et al., "TAIZAC -TAndem Injectors Zapping ACtivation- for Thermal Efficiency Improvement of Diesel Engine," SAE Int. J. Adv. & Curr. Prac. in Mobility 2(1):310-318, (2020).

(4) Arato, K. and Takashima, T., "A Study on Reduction of Heat Loss by Optimizing Combustion Chamber Shape," SAE Int. J.Engines 8(2):2015 (5) 稲垣和久,上田松栄,高巣祐介,谷俊宏,ディーゼル燃焼 シミュレーション UniDES の精度向上‐筒内流動と衝突噴霧 火炎を考慮した壁面熱伝達モデルの提案‐,自動車技術会論 文集,Vol.45,No.1,p.35-41 (2014). (6) 江見雅彦,青木勇太,島野健仁郎,榎本良輝,コモンレー ル式DI ディーゼル機関における燃焼室壁面への直接熱損失‐ 燃料噴射圧力,過給圧,吸気酸素濃度が瞬時熱流束に与える影 響‐,自動車技術会論文集,Vol.41,No.2,p.371-376 (2010). (7) Aizawa, T. and Kosaka, H., "Laser-Induced Phosphorescence Thermography of Combustion Chamber Wall of Diesel Engine," SAE Int. J. Fuels Lubr. 1(1):549-558, (2009).

(8) Mancaruso, E., Sequino, L., and Vaglieco, B., "Temperature Measurements of the Piston Optical Window in a Research Compression Ignition Engine via Thermography and Templugs," SAE Technical Paper 2018-01-0083, (2018).

(9) 木下智貴,秋山忍,篠原昂陽,宮川雄成,相澤哲哉ほか,赤 外高速度カメラを用いたディーゼル噴霧火炎衝突壁面からの 赤外放射の時系列可視化,第30 回内燃機関シンポジウム講演 論文集, Paper No.46 (2019).

(10) Osada, H., Uchida, N., and Zama, Y., "An Analysis on Heat Loss of a Heavy-Duty Diesel Engine by Wall-Impinged Spray Flame Observation," SAE Technical Paper 2015-01-1832, (2015). (11) R. Kitabatake, A. Minato, N. Inukai, and N. Shimazaki, “Simultaneous Improvement of Fuel Consumption and Exhaust Emissions on a Multi-Cylinder Camless Engine”, SAE paper, 2011-01-0937, (2011). (12) 江見雅彦,鈴木康子,葛巻隆彦,杉原健,島野健仁郎,榎 本良輝, DI ディーゼル機関における燃焼室壁面への直接熱損 失‐全燃焼室壁面の温度分布および熱流束分布‐,自動車技 術会論文集,Vol.40,No.2,p.355-360 (2010). 高速度赤外線カメラを用いたエンジン筒内熱損失低減に関する研究

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