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今月の話題
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震災と住宅のＱ＆Ａ
東日本大震災発生後、地震による自宅損壊後の対応や地震保険に関する問い合わせ が金融機関などに殺到している。住宅ローンアドバイザーとしても、返済中に借入者 の自宅が自然災害によって被害をうけるというリスクも視野に入れておく必要があ るだろう。そこで、今回は緊急企画として、住宅が震災により被害を受けた際の様々 な疑問点をまとめた。 特定非営利活動法人 金融検定協会 試験部 佐藤潤実 各質問内容に対して、考えられる回答の対応は以下の通り。 ① 勤務先がなくなり、収入が途絶えてしまった ① 地震保険に加入していた場合は、建物 及び家財の最大 50％まで保険金の支払い が見込まれるため（後記Ｑ４参照）、この保険 金を返済の原資に充てる（債務が残る可能 性が高い）、あるいはこの保険金を新たな住 宅の建設資金としてローンを払い続けること が考えられる。借入先の金融機関は、金融 円滑化法の範囲内での対応により返済の猶 予等の相談に積極的に応じることが求めら れる。（後記Ｑ３等参照） ① 借入者が亡くなってしまった ② 団信保険に加入していた場合は、ローン の残債務が保険金により金融機関等に支払 われる。 ② 借入者が行方不明となっている ③ 大きな災害等で行方不明になられた場 合には、1 年間程度で失踪宣告を受けるよう Ｑ１：震災で被災した借入者について、以下の問題が発生している。住宅ローンアド バイザーとしては、どのような提案が求められるのか。 ①勤務先がなくなり、収入が途絶えてしまった ②借入者が亡くなってしまった。 ③借入者が行方不明となっている。2 -な特別な措置がとられて（通常の失踪宣告 は行方が分からなくなってから 7 年）、死亡と みなされるが、今回の被害についても短期間 での死亡認定が検討されている。生命保険 会社各社では、ご遺体が未発見であっても、 自治体などから死亡を証明する書類が発行 されれば死亡保険金の支払いに応じるなど の対応を明らかにした。 各質問内容に対して、考えられる回答の対応は以下の通り。 ① 自宅が全壊して住めなくなったので、新た に自宅を再建したい ①従来の住宅ローン残債の一部が義援金で返 済できた、あるいは特例法等が成立して一部 免除されたとしても、住宅ローンの支払い自体 はなくならないため、新たに住宅ローンを借り 入れると二重ローン状態となるので、収入の見 通しや家族構成など適合性を考慮した慎重な 判断が求められる。 ② 自宅のあった地域が津波などの影響で長 期間住めなくなったので、区域外に新たに 自宅を再建したい ②一部金融機関には設問の問い合わせが増 えているようであるが、①で述べた通り二重ロ ーン状態となることに加え、住み慣れた地域を 離れて新たに収入を得る見通しが立たない限 りは適合性を考慮した慎重な判断が求められ る。 ①②いずれにしても、震災義援金などの特例措置や立法などの対応を待ちたいが、長期 にわたる負担増により借入者の被災後の生活が被災前よりも一層苦しくなるような提案は 避けたい。 Ｑ２：震災で住宅が滅失・損壊した借入者について、以下の問題が発生している。 住宅ローンアドバイザーとしては、どのような対応が求められるのか。 ①自宅が全壊して住めなくなったので、再建したい ②自宅のあった地域が津波などの影響で長期間住めなくなったので、区域外に再建し たい。
住宅ローンは金銭消費貸借契約であるため、基本的には震災で建物が全壊した場合でも 住宅ローンの債務は消滅しない。したがって、設問の状況に陥ったとしても、住宅ローン を支払う義務はある。ただし、震災による被害は甚大であることから、住宅金融支援機構 や民間金融機関等でも被災の度合いに応じ住宅ローンの軽減措置はとられる。 住宅金融支援機構は、東日本大震災により被害を受けた借入者に対し、返済方法変更（災害 特例）を緊急支援対策として実施することを公表している。ポイントは以下の通り。 ①フラット３５借入者 ・ 返済金の払込据置（１～３年） 据置期間中は、元金・利息の返済は不要。ただし、据置期間終了後、据置期間中の利息を通 常の元金・利息に加えて返済する。 ・ 返済期間の延長（１～３年） 据置期間分だけ返済期間を延長するが、特に据置期間を設けず返済期間だけを延長することも できる。 ※詳細は、住宅金融支援機構サイトの以下のページを参照。http://www.jhf.go.jp/files/100120411.pdf ②機構借入者 ①に加え、据置期間中は、現在の適用金利を 0.5～1.5％引下げる。 ※詳細は、住宅金融支援機構サイトの以下のページを参照。 http://www.jhf.go.jp/files/100120410.pdf ①②とも、以下の要件のいずれかに該当し被災後の収入が一定以下となる場合が対象。 ●商品、農作物その他の事業財産等又は勤務先が損害を受け、大幅に収入が減少した ●融資住宅が損害を受け、その復旧に相当の費用が必要である ●債務者又は家族の死亡・負傷により、収入が大幅に減少した 民間金融機関においては、現在個別にフリーダイヤルや相談窓口を設置し返済猶予など への対応に務めている。具体的な対応は金融機関ごとに対応は異なるので、個別に確認が 必要であるが、過去の震災の例では、資金繰りに目処がつくまで、１年程度の据置措置、 0.5％程度の金利減免措置がとられた例もあった模様である。 また、もし、抵当不動産に地震保険をつけている場合には、その保険金の範囲内で、ロ ーンの残債を返済することはできる。通常、金融機関が保険に質権をつけていれば、抵当 権の効力は保険金請求権にも及ぶため、金融機関が質権を行使すれば、保険金は金融機関 に直接支払われることになるが、今回の震災で、金融機関が実際に行使するかは個別金融 機関の対応によると推測される。 Ｑ３：持ち家や建設中の家が全壊したが、住宅ローンの残債は支払わなければならな いのか？
4 -火災保険とは、火災だけでなく、風水災などの自然災害によって建物や家財などに生じ た損害を補填する保険である。また、泥棒に入られて家財が盗まれたり、あるいは自動車 が建物に飛び込んできたりした場合など、日常生活で起きた突発的な事故による損害補填 する商品もある。注意しなければならないのは、建物についての損害についてのみの保険 であるので、住宅ローンで土地代も含めて借り入れている場合には、住宅ローンの返済の 穴埋めには金額的に足りないことが多い点である。この点、住宅ローン借入時に火災保険 を付保する際に、十分に説明しておくことが大切である。 火災保険で支払われる対象は以下の通り。 損害保険金 費用保険金 ●火災・落雷・破裂または爆発 ●風災・ひょう災・雪災※ ●建物の外部からの物体の落下、飛来、衝突もしく は倒壊または建物内部での車両もしくはその積載 物の衝突もしくは接触 ●給排水設備に生じた事故による漏水、放水、また は溢水による水漏れ ●盗難によって生じた盗取、損傷または汚損※ ●通貨または預貯金証書の盗難※ ●持ち出し家財の損害※ ●水災※ ●日常の不測・突発的な事故による破損・汚損※ ●損害防止費用 ●災害時の臨時費用※ ●残存物の取り片付け費用 ※ ●失火見舞費用※ ●地震火災費用※ ※ 一定の制限付で補償される場合がある。 保険の対象である建物・家財などが損害を受けた場合に、その損害に支払われる保険金 を損害保険金といい、火災などにより損害を受けた場合にその損害により派生する費用に 支払われる保険金を費用保険金という。地震による火災は補償の対象外となる。 補償内容は保険会社によって異なるため、保険会社及び代理店まで問い合わせること。 一方、地震保険は、「地震・噴火・これらによる津波」（「地震等」とする）を原因とする 火災・損壊・埋没・流失による建物や家財の損害を補償する保険である。地震保険の目的 は震災後の生活安定で、被災住宅の建て直しではないことに注意する。原則として単独で は契約できず、必ず火災保険に付帯して契約する必要がある。地震保険の補償となる損害 は、地震等を直接または間接の原因とする以下の内容となる。 ● 地震による倒壊、破損 ● 地震によって生じた火災による焼損 ● 地震によって河川の堤防やダムが決壊し、洪水となったため生じた流失、埋没 ● 噴火に伴う溶岩流、噴石、火山灰や爆風によって生じた倒壊、埋没 Ｑ４：火災保険で支払われる保険金と、地震保険で支払われる保険金とでは、どのよう に違うのか？
特 例 概 要 条 文 雑損控除の特例● 震災税特法3条 地方税法附則4条の3 被災事業用資産の損失の必要経費算入の特例 震災税特法4条 災害被災者に対する所得税の減免の特例 震災税特法42条 財産形成住宅貯蓄契約等の要件に該当しない事実 が生じた場合の課税の特例 被災者が財形貯蓄等の要件外払出を行って も、遡及課税を行わない。 震災税特法7条 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控 除の控除額に係る特例 震災により住宅ローン減税を受けている住宅 に居住できなくなっても、残りの適用期間につ いて住宅ローン減税の適用を継続する。 震災税特法16条 被災給与所得者等が住宅資金の無利息貸付け等 を受けた場合の課税の特例 被災者が事業主から無利息・低利で住宅資金 の貸付を受けた場合、その経済的利益につい て所得税を課さない。 震災税特法11条 被災市街地復興土地区画整理事業による換地処分 に伴い代替住宅等を取得した場合の譲渡所得の課 税の特例 被災者が保有する土地等について、被災市街 地復興土地区画整理事業による換地処分を受 け、代替住宅を取得した場合、原則として譲渡 益課税を行わず、取得価額を引き継ぐ。 震災税特法12条 被災者が保有する土地等にういて、被災市街 震災による損失等について、震災があった 1995年の所得等からの控除に代えて1994年の 所得等から控除できるようにする。 ● 地震や噴火の結果生じた土砂災害による流失、埋没 ● 津波によって生じた流失、倒壊 先日、政府税制調査会は、東日本大震災の被災地を支援するための税制特例措置案を決 定した。被災企業が過去に納めた法人税から災害の損失分を還付するほか、住宅を買い替 えた場合は不動産取得税を非課税にする。津波で被災した土地や建物は固定資産税を免除 し、震災関連の寄付には所得税の控除を拡充することなどが内容に盛り込まれた（４月 14 日現在では案の段階）。一部報道によると、政府が東日本大震災の被災者や被災企業などを 支援するための緊急支援税制を実施する方針であるとされている。 ちなみに、1995 年に発生した阪神・淡路大震災の際には発生１ヶ月後の２月に「阪神・ 淡路大震災の被災者等にかかる国税関係法律の臨時特例に関する法律（以下、震災税特法）」 などが制定され、所得税、法人税、相続税、贈与税などにおいて特例措置が設けられた。 同法は、５年間の時限立法であった。加えて、災害減免法においても改正及び 1996 年度税 制改正において機能強化が行われた。当時の主な対応は、以下の通り。 【相続税・贈与税に関する特例】 【所得税（個人住民税）に関する特例】 Ｑ５：被災者に対する税制優遇は行われるのか？ 特 例 概 要 条 文 特定土地等及び特定株式等にかかわる相続税の 課税価格の計算の特例 震災税特法29条 特定土地等及び特定株式等にかかわる贈与税の 課税価格の計算の特例 震災税特法30条 相続税及び贈与税の申告書の提出期限の特例 震災税特法31条 震災前に相続・贈与により取得した財産に係る 相続税・贈与税で、震災後に申告期限が到来 するものについて、震災直後の評価額を用い ることができ、かつ申告期限を延長できる。対 象財産については、被災した土地及び被災地 域内に保有する資産の割合が高い一定の未 公開会社等の株式等。
6 -● 個人住民税にも同様の措置がとられた。 ○ 法人税にも同様の措置がとられた。 【その他の主な特例】 生命保険や損害保険の証券は、財産権を表章するための有価証券ではなく、法律関係の 証明を容易にするための証拠証券であるため、紛失または破損、焼失しても契約が無効に なるわけではなく、保障は継続されている。したがって、なくても保険金は支払われる。 また、運転免許証など本人を確認するための書類を紛失してしまっても、契約してい た保険会社に問合せれば、名前・住所・電話番号などで本人確認のうえ、対応してもらえ る。身内が震災で亡くなり、保険に加入していたかどうかを確かめたいときも同様である。 ただし、保険金の受け取り等の手続きの際には、保険証券が必要となるため、紛失した 場合はなるべく早めに保険会社に連絡して保険証券の再発行する手続きを進める必要があ る。保険証書は、申込んだ後１～２週間をめやすに再発行してもらえる。 日本損害保険協会は、東日本大震災の被災者を対象に、地震保険照会センターを設置し た。保険証券を紛失しても契約内容を確認できる対応が調っている。詳しくは、以下の URL を確認のこと。http://www.sonpo.or.jp/news/release/2011/1103_08.html 地震保険における区分認定基準と、支給される保険金は以下の通り。時価額とは、同等 の物を新たに建築あるいは購入するのに必要な金額から、使用による消耗分を控除して算 出した金額をいう。 Ｑ６：地震保険の損害区分は全損・半損・一部損の３段階に区分されているが、具体的にはど のような損害状況で判断されるのか？ Ｑ５：保険証書などを震災で紛失してしまったが、火災保険や地震保険などの保険金は支払われる のか？また、再発行はしてもらえるのか？ 特 例 概 要 条 文 被災代替建物・土地の取得所有権の保存登記等に 係る登録免許税の免税 震災により滅失等をした建物・土地に代わるもの として取得する建物・土地についての取得所有 権の保存登記等にかかわる登録免許税を免除 する。 震災税特法37条、38条 特別貸付けに係る消費貸借に関する契約書の非課 税 公的金融機関などが被災者に対して特別貸付を 行う際、消費貸借に関する契約書について印紙 税を非課税とする。 震災税特法41条 固定資産税の減免 被災者が建物等を建て替えた際に、建て替え後 の建物について、固定資産税を減免する。 （各自治体対応）
保険の対象は住居用の建物（併用住宅含む）とその建物に収容されている家財であり、 店舗や事務所のみに使用されている建物や什器、30 万円を超える貴金属や骨董品などは対 象とならない。また、損害基準は木造・非木造の差や工法、地盤沈下や傾斜による損害、 部分的被害による損害などにより認定基準が分かれる。たとえば、鉄筋コンクリート造と 鉄骨造とでは最大沈下量や傾斜による認定基準が大幅に異なる。また、集合住宅の場合は、 建物全体の状況から損害状況が認定されすべての居室が同じ補償内容となるが、居室ごと によって損害状況が異なる場合は、再調査を行う場合もある。 なお、地震保険の保険金額は以下の通り。 火災保険の保険金額 に対する割合 限度額 建物 （住居のみに使用される建物及び併用住宅） 5,000万円 家財 （３０万円を超える貴金属・宝石などは含まれない） 1,000万円 30％～50％ 罹災証明書とは、被災地の自治体が、住宅の外観など損傷の状況を調べ、被害状況を複 数に区分し、住宅の所有者に発行する書類をいう。被災者生活再建支援法に基づいて、震 災などで倒壊して住めなくなってしまった家の修築費用に使うための支援金を受け取る際 に、あるいは義捐金の配分などに必要な書類となる。また、被災地に寄付された義援金を 配分してもらったり、被災者向けの低利子融資を受けたりするときに、証明書類の役割を 果たすことも多い。 一般的には、震災などの大きな災害が起きた後、自治体職員など被害認定調査について 研修を受けた調査員が２人以上のグループで被災した住宅に直接出向き、住宅の傾斜や屋 Ｑ７：罹災（りさい）証明書とは何か？どうすれば発行してもらえるのか？ 全損 半損 一部損 保険金額の100％ 保険金額の50％ 保険金額の５％ 主要構造部 （軸組、基礎、屋根、 外壁等）の損害額 建物の時価額の50％以上 建物の時価額の20％以上 50％未満 時価額の3％以上20％未満 焼失または流失した 床面積 建物の延床面積の70％以上 建物の延床面積の20％以上 70％未満 家財の損害額 時価額の80％以上 時価額の30％以上80％未満 時価額の10％以上30％未満 床上浸水 床上浸水あるいは地面から 45cmを超える浸水の損害を被っ た場合で、建物が全損・半損・一 部損に至らないとき 損害の程度 保険金 状態
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