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Keysight Technologies SystemVueによるLTE-Advancedの信号生成と測定

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Keysight Technologies

SystemVue

による

LTE-Advanced

信号生成と測定

(2)

はじめに

LTE-Advancedは、3GPP仕様のリリース10の一部として規定され、現在は4GのIMT-Advancedと して承認されています。このアプリケーション・ノートでは、LTE-Advancedの主な手法と、

Keysight SystemVue W1918 LTE-Advancedライブラリを使用して、ダウンリンク(DL)の直交周波 数分割多元接続(OFDMA)信号源およびアップリンク(UL)のクラスタ型DFT拡散OFDM( DFT-S-OFDM)信号源をMIMOを使用して作成し、閉ループ・スループットを測定する方法を紹介します。 また、MIMOチャネル・モデルに対するLTE-Advancedの機能拡張と、それに対応したW1715 SystemVue MIMOチャネル・ビルダと呼ばれるシミュレーション・モデル・セットについても紹介 します。このオプションのモデル・セットを使えば、実際に測定されたアンテナ・パターンと標準 のMIMOフェージング・モデルを使用して、シミュレーションによるMIMO無線(OTA)テストが行え、

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表1. リリース8の主なパラメータ アクセス方式 DL OFDMA UL SC-FDMA 帯域幅 1.4、3、5、10、15、20 MHz 最小TTI 1 ms 副搬送波間隔 15 kHz 巡回プリフィックスの長さ ショート 4.7 μs ロング 16.7 μs 変調 QPSK、16-QAM、64-QAM 空間多重化 ULではUEごとに1レイヤ DLではUEごとに最大4レイヤ ULとDLでMU-MIMOをサポート

LTE

の概要

LTEリリース8のダウンリンク(DL)では、無線伝送方式として直交周波数分割 多重化方式(OFDM)が採用されています。OFDM方式により、レシーバのベー スバンド処理が単純になり、端末のコストと消費電力を削減できます。このこ とは、LTEの広い伝送帯域幅を考慮すればきわめて重要であり、特に空間多重 化などのDLの高度なマルチアンテナ伝送と組み合わせた場合に重要性が増しま す。リリース8のアップリンク(UL)では、無線伝送方式としてDFT-S-OFDM(シ ングル・キャリアFDMA)が採用されています。SC-FDMAは通常のOFDMに比 べてピーク対アベレージ・パワー比(PAPR)が小さいため、端末の簡素化や低 消費電力化に有効です。表1に、リリース8の主なパラメータを示します。

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LTEは1.4 MHzから20 MHzまでのシステム帯域幅をサポートし、最高データ・ レートを実現するには上限の帯域幅が必要です。LTEではULとDLで異なる帯域 幅を使用でき、アプリケーションや規制の要件に応じて最適なスペクトラム使 用を選択できます。LTEは、周波数分割デュプレックス(FDD)と時分割デュプ レックス(TDD)の両方の動作を1つの無線アクセス・テクノロジーでサポート しているので、ペア・スペクトラムと非ペア・スペクトラムのどちらでも動作 します。図1に、LTEのFDDとTDDのフレーム構造を示します[14]。 FDDの場合は、アップリンク用に1つの搬送波周波数(fUL)、ダウンリンク用に別 の搬送波周波数(fDL)が使用されます。1つのLTEフレーム内で、ULとDLの10個 のサブフレームのどれに対しても、セル内でULとDLの伝送を同時に行うこと ができます。 TDD動作の場合は、搬送波周波数は1つだけなので、ULとDLの伝送は常に時間 的に分離されていて、セル単位でも分離されています。TDD動作に必要なガー ド間隔は、各無線フレームの10個のサブフレームのうちの1個または2個を、 DL部分(DwPTS)、ガード間隔、UL部分(UpPTS)の3つの特殊なフィールドに 分割することによって実現されています。これらの特殊なフィールドの長さは、 配備シナリオに応じて調整可能です。

図1. LTEのFDD/TDDフレーム構造(Parkvall & Astely, pp 148 [14])

マルチアンテナ伝送は、LTEリリース8の主要な機能の1つです。LTEは以下の 8種類の伝送モードをサポートしています(詳細については[15]を参照)。 LTE-Advanced(リリース10)では、この他にモード9が追加されています。これにつ いては後で説明します。 モード1:単一アンテナ・ポート、ポート0 モード2:送信ダイバーシティ モード3:大遅延CDD モード4:閉ループ空間多重化 モード5:MU-MIMO モード6:閉ループ空間多重化、単一レイヤ モード7:単一アンテナ・ポート、UE固有RS(ポート5) モード8:シングルまたはデュアル・レイヤ伝送、UE固有RS(ポート7、8) 1個の無線フレーム10 ms 1スロット 1サブフレーム 特殊なサブフレーム 特殊なサブフレーム

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図2. ダウンリンク・チャネル・コード化(TS 36.212)と物理チャネル処理(TS36.211)[参考資料3、4、16] 図2(a)に、DL-SCHトランスポート・チャネルの各トランスポート・ブロック の処理構造を示します。データは、各伝送タイム・インターバル(TTI)毎に最 大2個のトランスポート・ブロックとしてコード化ユニットに到着します。各 トランスポート・ブロックに対して、以下のコード化ステップがあります。 ー トランスポート・ブロックにCRCを追加 ー コード・ブロックのセグメント化とコード・ブロックCRCの追加 ー チャネル・コード化 ー レート・マッチング ー コード・ブロックの連結 DL物理チャネルを表すベースバンド信号は、以下の手順に基づいて定義され ます。 ー 物理チャネルで伝送する各コードワード内のコード化ビットのスクランブ リング ー スクランブルされたビットの変調によるI/Q変調シンボルの作成 ー I/Q変調シンボルの1つまたは複数の伝送レイヤへのマッピング ー アンテナ・ポートでの伝送のための各レイヤのI/Q変調シンボルのプリコー ド化 ー 各アンテナ・ポートのI/Q変調シンボルのリソース・エレメントへのマッピ ング ー 各アンテナ・ポート用のI/Qタイム・ドメインOFDM信号の作成 図2(b)に、物理チャネル処理のDL構造を示します。 トランスポート・ ブロックにCRCを追加 チャネル・コード化 レート・マッチング コード・ブロックの 追加 コード・ブロックのセグメント化 コード・ブロックCRCの追加 (a)DL-SCH用のトランスポート・チャネル処理 (b)アップリンク物理チャネル処理の概要 コードワード スクランブ リング 変調マッパ エレメント・マッパリソース・ OFDM信号生成 OFDM信号生成 リソース・ エレメント・マッパ レイヤ・ マッパ プリコード化 変調マッパ スクランブ リング レイヤ アンテナ・ポート

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図3(a)に、UL-SCHトランスポート・チャネルの処理構造を示します。データは、 各TTI毎に最大1個のトランスポート・ブロックとしてコード化ユニットに到着 します。以下のコード化ステップがあります。 ー トランスポート・ブロックにCRCを追加 ー コード・ブロックのセグメント化とコード・ブロックCRCの追加 ー データおよび制御情報のチャネル・コード化 ー レート・マッチング ー コード・ブロックの連結 ー データおよび制御情報の多重化 ー チャネル・インタリーバ 物理UL共有チャネルを表すベースバンド信号は、以下の手順に基づいて定義さ れます(図3(b))。 ー スクランブル ー スクランブルされたビットの変調によるI/Qシンボルの作成 ー 変換プリコード化によるI/Qシンボルの作成 ー I/Qシンボルのリソース・エレメントへのマッピング ー 各アンテナ・ポート用のI/Qタイム・ドメインSC-FDMA信号の作成 図3. アップリンク・チャネル・コード化(TS 36.212)および物理チャネル処理(TS36.211)[参考資料3、4、16] トランスポート・ ブロックにCRCを追加 チャネル・コード化 レート・マッチング コード・ブロックの 追加 データ/制御多重化 スクランブ リング 変調マッパ 変換 プリコーダ SC-FDMA 信号生成 リソース・ エレメント・マッパ チャネル・インタリーバ (a)UL-SCH用のトランスポート・チャネルの処理 (b)アップリンク物理チャネル処理の概要 チャネル・ コード化 チャネル・ コード化 チャネル・ コード化 コード・ブロックのセグメント化 コード・ブロックCRCの追加

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LTE-Advanced

の要件

表2. LTE、LTE-Advanced、IMT-Advancedの性能目標

性能指標 LTEリリース8 ITU-Advanced LTE-Advancedリリース10

ピーク・データ・レート DL 300 Mbps 1 Gbps UL 75 Mbps 500 Mbps ピーク・スペクトラム効率 [bps/Hz] DLUL 15 [bps/Hz]3.75 [bps/Hz] 15 [bps/Hz]6.75 [bps/Hz] 30 [bps/Hz]15 [bps/Hz] 制御プレーンの遅延 <100 ms 100 ms <50 ms ユーザ・プレーンの遅延 <5 ms 10 ms <リリース8 LTE スケーラブルな帯域幅のサポート 20 MHzまで 40 MHzまで 100 MHzまで VoIP容量 5 MHzで1セルあたり 200アクティブ・ユーザ 5 MHz で1セルあたり 最大200のUE LTE の3倍 セルのスペクトラム効率 DL 2×2 1.69 2.4 4×2 1.87 2.6 2.6 4×4 2.67 3.7 UL 1×2 0.735 1.2 2×4 − 2 セル・エッジのスペクトラム 効率 DL 2×2 0.05 0.07 4×2 0.06 0.075 0.09 4×4 0.08 0.12 UL 1×2 0.024 0.04 2×4 − 0.07 3GPPによる4G無線インタフェース・テクノロジーの定義作業は、リリース9の LTE-Advancedの研究段階から始まりました。LTE-Advancedの要件は、3GPP

テクニカル・レポート(TR)36.913、“Requirements for Further Advancements for E-UTRA(LTE-Advanced)”で定義されています。主な技術的考慮事項を以 下に示します。

ー LTEの無線テクノロジーとアーキテクチャの継続的改良。

ー 従来の無線アクセス・テクノロジーとの相互運用を可能にするシナリオと性 能要件。

ー LTEに対するLTE-Advancedの後方互換性。LTE端末がLTE-Advancedネット ワークで動作し、LTE-Advanced端末がLTEネットワークで動作するように すること。例外については3GPPで検討。

ー Advanced E-UTRAおよびAdvanced E-UTRANは、IMT-Advancedの要件を 満たすかそれを超えること。

表2に、LTE、LTE-Advanced、IMT-Advancedのスペクトラム効率の目標の比 較を示します。LTE-Advancedのピーク・レートは4Gの要件よりも大幅に高く なっています。これは、4G LTEのピーク性能の向上に対する欲求の現れです。 ただし、平均性能目標はITU要件に近くなっています。なお、ピーク性能は、 理想的な条件だけで実現できればよいため、平均性能よりも実証が容易です。

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LTE-Advanced

:新機能

LTEリリース8/9に対する機能拡張 新しいテクノロジー ー キャリア・アグレゲーション(CA) ー 連続および不連続 ー UL/DLの制御チャネルのデザイン ー DL多元接続方式の機能拡張 ー UL多元接続方式の機能拡張 (クラスタ型SC-FDMA) ー DL MIMO伝送の機能拡張 ー UL MIMO伝送の機能拡張 ー リレー機能(マルチホップ伝送) ー 多地上協調送受信(CoMP) ー ヘテロジニアス・ネットワークのサポート ー LTE自己最適化ネットワーク(SON) ー HNBおよびHeNBのモビリティの機能拡張 ー CPE RF要件 新しいテクノロジーのセクション(上記)のいくつかの項目は、LTEリリース10 には含まれていません。このアプリケーション・ノートでは、LTE-Advanced の 機 能 の う ち、 リ リ ー ス8/9へ の 機 能 拡 張 で、SystemVue W1918 LTE-Advancedライブラリに実装されているものだけを取り上げます。 LTE-Advancedの新機能には、LTEリリース8/9に対する機能拡張と、全く新 しいテクノロジーの2種類があります。LTE-Advanced無線インタフェースの 性 能 目 標 を 達 成 す る た め の 方 法 の 提 案 は、3GPP TR 36.814、“Further

Advancements for E-UTRA Physical Layer Aspects”で定義されています。

キャリア・アグレゲーション(

CA

LTEリリース8では、1.4 MHz∼20 MHzの範囲のペア/非ペア・バンドのさ まざまなスペクトラム割り当てに対する幅広いサポートが提供されています。 20 MHzの最大伝送帯域幅を使っても、LTE-Advancedの最高目標ピーク・ス ループット・レートには達しません。これを実現する現実的な方法は、伝送帯 域幅の拡大だけです。このため、LTE-Advancedでは、キャリア・アグレゲーショ ンという手法を使って、最大100 MHzのスペクトラム割り当てを可能にしてい ます。これは、複数のコンポーネント・キャリアを結合して必要な帯域幅を実 現するものです。すべてのコンポーネント・キャリアをLTEリリース8互換にす ることもできます。ただしそのためには、ULとDLでキャリア・アグレゲーショ ンの対象となるコンポーネント・キャリアの数が等しい必要があります。一方、 一部のコンポーネント・キャリアをリリース8非互換にすることもできます。 図4に、連続するキャリア・コンポーネントと不連続のキャリア・コンポーネ ントを使用したキャリア・アグレゲーションを示します。

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図4. キャリア・アグレゲーション(CA)、連続キャリア割り当てと不連続キャリア割り当て eNBのリソース割り当ての後方互換性を確保するために、スケジューリング、 MIMO、リンク・アダプテーション、HARQのすべてを20 MHzのキャリア・グ ループ単位で実行すれば、仕様に対する変更は最小限で済みます。例えば、 100 MHz帯域幅で情報を受信するユーザには、各20 MHzブロックに1つずつ、 合計5つのレシーバ・チェーンが必要です。キャリア・アグレゲーションは、 連続と不連続の両方のコンポーネント・キャリアに対してサポートされ、各コ ンポーネント・キャリアが使用できる周波数ドメインのリソース・ブロック(RB) 数は最大110個に制限されます(LTEリリース8の番号付けを使用)。UEが、同じ eNBからのコンポーネント・キャリアをULとDLで異なる数だけ結合したり、 ULとDLで異なる帯域幅を使用したりする構成も可能です。もちろん、通常の TDD実装では、コンポーネント・キャリア数と各コンポーネント・キャリアの 帯域幅は、ULとDLで同じになります。 連続キャリア・アグレゲーションでのコンポーネント・キャリアの中心周波数 の間隔は、300 kHzの倍数です。これは、リリース8の100 kHzステップの周波 数との互換性を維持しながら、15 kHz間隔の副搬送波の直交性を保持するため です。アグレゲーションのシナリオによっては、連続するコンポーネント・キャ リアの間に少数の使用されない副搬送波を挿入することにより、N*300 kHz 間隔を実現することもできます。 LTE端末 20 MHz LTE端末 20 MHz LTE-Advanced端末、100 MHz LTE-Advanced端末、100 MHz (a)連続キャリア・アグレゲーション (b)不連続キャリア・アグレゲーション

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図5. DLの連続キャリア・アグレゲーションでのキャリア割り当て[15] こ の 構 造 は リ リ ー ス8仕 様 に よ く 適 合 し て い ま す。 一 方、1つ の 搬 送 波 の PDCCHが別の搬送波のデータに関連する、クロス搬送波スケジューリングも 可能です。クロス搬送波スケジューリングをサポートするために、DL制御チャ ネル(PDCCH、PCFICH、PHICHなど)がアップデートされています。 クロス搬送波スケジューリングは、DCIにキャリア・インジケータ・フィール ド(CIF)を追加することにより、UE単位で(システムやセル単位ではなく)設定 できます。

CIFは固定の3ビット・フィールドです。CIFの位置は、DCIフォーマットのサイ ズ、設定の有無、設定がUE固有(システム固有またはセル固有ではなく)かどう かに関わらず一定です。CIFは常に、UE固有の探索空間のDCIフォーマット0、1、 1A、1B、1D、2、2A、2Bに対して、クロス搬送波スケジューリングをサポー トしています。CRCがC-RNTI/SPS CRNTIでスクランブルされる場合は、共通 探索空間のDCIフォーマット0、1AにはCIFは含まれません。

ダウンリンク多元接続の機能拡張

基地局(eNB)でのキャリア・アグレゲーションをサポートするために、DLを 更新する必要があります。DLでは、コンポーネント・キャリア(CC)の構造に 基づいたOFDMAが用いられます。図5に、4個の連続するキャリア・コンポー ネントを使用したDLのキャリア・アグレゲーションを示します。DLの多元接 続では、1個のトランスポート・ブロックが1個のCCにマッピングされ、並列 伝送によってマルチCC伝送が実現されます。 トランスポート・ ブロック1 トランスポート・ ブロック2 トランスポート・ ブロック3 トランスポート・ ブロック4 チャネル・ コード化 HARQ 変調 マッピング マッピング マッピング マッピング 変調 変調 変調

HARQ HARQ HARQ

チャネル・ コード化 チャネル・ コード化 チャネル・ コード化 1つのeNB

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LTE-Advancedは、クラスタ型DFT-S-OFDMの採用により、ULの多元接続方 式を拡張しています。この方式はSC-FDMAに似ていますが、1台のUEからの 送信に、連続しない(クラスタ状の)副搬送波のグループを割り当てられるとい う利点があります。これにより、ULの周波数選択型スケジューリングが可能 になり、リンク性能が向上します。純粋なOFDMの代わりにクラスタ型 DFT-S-OFDMを採用したのは、PAPRが大幅に上昇するのを避けるためです。これ により、LTEとの後方互換性を維持しながら、ULのスペクトラム効率の向上と いう要件を満たすことができます。なお、SC-FDMAとクラスタ型 DFT-S-OFDMの違いは、図6に示す副搬送波マッピング・ブロックだけです。 SC-FDMAの副搬送波マッピングでは、スペクトラムのどの部分が送信に使用 されるかを決定するために、図8に示すように、上端または下端に適切な個数 の0が挿入されます。 図6. SC-FDMAのトランスミッタ方式 図7. SC-FDMAの副搬送波マッピング LTEリリース8では、連続PRB割り当て(図7)を採用しています。特定のユーザ に対して特定のサブフレームで割り当てられるPRBの数は、2、3、5の倍数で 表されるため、DFTの実装が簡単になります。さらに、LTEリリース8/9では PUSCHとPUCCHを同時に送信することはできません。

アップリンク多元接続の機能拡張

基本的なUL伝送方式は、巡回プリフィックスを使用した単一搬送波伝送 (SC-FDMA)であり、ユーザ間のアップリンクの直交性と、レシーバ側での周 波数ドメインの効率的なイコライゼーションが可能です。図6に示す周波数ド メインの信号生成(DFT-S-OFDMとも呼ばれる)が仮定されています。これは LTEのDLのOFDM方式と比較的共通性が高く、同じパラメータ(クロック周波 数など)を再利用できます。 副搬送波 マッピング CP挿入 DFTから IFFTへ

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図8に、クラスタ型DFT-S-OFDM(LTE-Advanced)のDFTとIFFTの間の副搬送 波マッピングのダイアグラムを示します。クラスタ型DFT-S-OFDMでは不連 続の副搬送波割り当てがサポートされていることがわかります。これに対して、

SC-FDMAは連続的な副搬送波割り当てをサポートします。クラスタ型

SC-FDMA伝送では、LTEのSC-FDMAに比べてより柔軟なスケジューリング が可能です。 リリース10では、ULでクラスタ型DFT-S-OFDMとSC-FDMAのハイブリッド 多元接続が可能になり、連続と不連続のリソース割り当てがサポートされてい ます。このハイブリッド多元接続により、リソース割り当ての柔軟性と効率が 向上します。リリース8の単一クラスタ伝送と、LTEリリース10のクラスタ型 伝 送 を 動 的 に 切 り 替 え る こ と が で き ま す。 さ ら に、LTE-Advancedで は PUCCHとPUSCHの同時送信が可能です。 LTEとの後方互換性を維持しながら、ULで500 Mb/sのピーク・データ・レー トを実現するために、LTE-Advancedでは並列マルチコンポーネント・キャリ ア(CC)伝送を採用して帯域幅を広げています。これについては前のキャリア・ アグレゲーションのセクションで説明しました。UL帯域幅は最大100 MHzで、 1つのUEに最大5個のCCが存在できます。図9に示すのは、2個の連続するCC を持つULの例です。 図9. UEの2個の連続するCC 図8. クラスタ型SC-FDMAのマッピング機能 DFTから IFFTへ

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UEから見れば、LTE-Advancedには(空間多重化がない場合)1個のトランスポー ト・ブロックしかなく、スケジュールされた各コンポーネント・キャリアに1個 ずつのハイブリッドARQエンティティが存在します。各トランスポート・ブロッ クは、1個のコンポーネント・キャリアにマッピングされます。もちろん、キャ リア・アグレゲーションにより、1つのUEが同時に複数のコンポーネント・キャ リアにわたってスケジュールされることもあります。図10は、4個のトランス ポート・ブロックを持つULの例です。 ULに複数(最大5個)の並列マルチコンポーネント・キャリアが存在する場合は、 各コンポーネント・キャリアに1つずつのDFTがPUSCH伝送用に存在し(図10 を参照)、PUSCH伝送は空間多重化をサポートします。また、PUSCHには2種 類のリソース割り当て(周波数連続と周波数不連続)が存在します。図10では、 各トランスポート・ブロック(1、2、3、4)が、クラスタ型DFT-S-OFDM(不連 続な副搬送波割り当て)またはSC-FDMA(連続した副搬送波割り当て、LTEの ULと同じ)のどちらかを採用できます。 図10. 1つのUEに4個のトランスポート・ブロックCC トランスポート・ ブロック1 トランスポート・ ブロック2 トランスポート・ ブロック3 トランスポート・ ブロック4 チャネル・ コード化 HARQ 変調 DFT RBマッピング RBマッピング RBマッピング RBマッピング DFT DFT DFT 変調 変調 変調

HARQ HARQ HARQ

チャネル・ コード化 チャネル・ コード化 チャネル・ コード化 1つのUE

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物理ULの制御チャネルPUCCHは、ULの制御情報を伝送します。リリース8で は6種類のPUCCHフォーマット(1/1a/1b/2/2a/2b)がサポートされています。 フォーマット2aと2bは、ノーマル巡回プリフィックスだけでサポートされま す。LTE-Advancedには、6種類のPUCCHフォーマット(1/1a/1b/2/ 2a/2b) に加えて、多数のACK/NACKビットを伝送するための新しいフォーマット3が 存在します。 表3. 物理ULでサポートされる制御チャネル(PUCCH)フォーマット PUCCHのフォーマット 変調方式 サブフレームあたりのビット数、 1 − − 1a BPSK 1 1b QPSK 2 2 QPSK 20 2a QPSK+BPSK 21 2b QPSK+QPSK 22 3 QPSK 48

PUSCH伝送がない場合は、UEに対するすべてのACK/NACKはPUCCHで送信 できます。PUCCHでACK/NACKを伝送するために、単一のUE固有のUL CC

が半固定で設定されます。この方法は、キャリア・アグレゲーションの場合に 上の単一UL搬送波でPUCCHリソースをUEに割り当てるために使用されます。

ACK/NACKの他に、UEからのPUCCH SRと周期的なCSIを伝送するために、 単一のUE固有のUL CCが半固定で設定されます。1つのUEからの複数のUL CCでのPUCCHによる同時ACK/NACK送信と、隣接しない複数のPRBでの

ACK/NACK用の複数のPUCCHの同時送信は、どちらもLTE-Aではサポートさ れていません。 FDDシステムでは最大10個のACK/NACKビットがサポートされ、TDDシステ ムでは最大20ビットのACK/NACKペイロード・サイズがサポートされていま す。バンドリングの使用を考慮する際には、FDDシステムではキャリア・ドメ イン・バンドリングも空間ドメイン・バンドリングもサポートされないことに 注意する必要があります。TDDでは、一部のバンドリング方式(タイム・ドメ イン・バンドリングまたはキャリア・ドメイン・バンドリング)と空間ドメイン・ バンドリングの組み合わせがサポートされています。

リリース8のPUCCHフォーマット1a/1bは最大2個のACK/NACKビットをサ ポートし、チャネル選択を伴うPUCCHフォーマット1bは最大4個のACK/ NACKビットをサポートしています。さらに多くのACK/NACKビットをサポー ト す る た め に、DFT-S-OFDMに 基 づ い て、 新 し いPUCCHフ ォ ー マ ッ ト (PUCCHフォーマット3)が導入されています。

UEがCQI、PMI、RIのレポートに使用できる時間/周波数リソースは、eNBに よって制御されます。CQI、PMI、RIレポートは、周期的または非周期的です。

PUSCHの割り当てのないサブフレームでは、UEはPUCCHで周期的CQI/PMI

またはRIレポートを送信します。PUSCHの割り当てがあるサブフレームでは、 UEはPUSCHで周期的CQI/PMIまたはRIレポートを送信します。この場合、 UEは同じPUCCHベースの周期的なCQI/PMIまたはRIレポート・フォーマット をPUSCHで使用します。 指定された条件が満たされれば、UEはPUSCHで非周期的CQI/PMIおよびRIレ ポートを送信します。非周期的CQIレポートの場合は、RIレポートは、設定さ れているCQI/PMI/RIフィードバック・タイプがRIレポートをサポートする場 合のみ送信されます。各スケジューリング・モードでのPUCCHおよびPUSCH でのCQI送信のまとめを表4に示します。

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表4. 非周期的または周期的CQIレポートに使用される物理チャネル

スケジューリング・モード 周期的CQIレポート・チャネル 非周期的CQIレポート・チャネル

周波数非選択 PUCCH

周波数選択 PUCCH PUSCH

ULがLTE-Advancedのマルチコンポーネント・キャリアをサポートする場合、 周期的PUCCHまたは非周期的PUSCHでのCQI/PMI/RIレポートに関して、1つ のコンポーネント・キャリアでの複数のCQI、複数のリソース送信のジョイント・ コード化、およびTDMを考慮する必要があります。この文書の作成時点では、 ULの拡張機能のうちどれがリリース10仕様に採用されるかはまだ検討中です。 図11(a)に、1つのULセルのUL-SCHトランスポート・チャネルの処理構造を 示します。データは、ULセル毎に各TTIで最大2個のトランスポート・ブロック としてコード化ユニットに到着します。ULセルの各トランスポート・ブロック に対して、以下のコード化ステップがあります。 ー トランスポート・ブロックにCRCを追加 ー コード・ブロックのセグメント化とコード・ブロックCRCの追加 ー データおよび制御情報のチャネル・コード化 ー レート・マッチング ー コード・ブロックの連結 ー データおよび制御情報の多重化 ー チャネル・インタリーバ 図11(b)は、LTE-AdvancedのUL_SCHのベースバンド信号処理です。物理UL 共有チャネルを表すベースバンド信号は、以下の手順に基づいて定義されます。 ー スクランブル ー スクランブルされたビットの変調によるI/Qシンボルの作成 ー I/Q変調シンボルの1つまたは複数の伝送レイヤへのマッピング ー 変換プリコード化によるI/Qシンボルの作成 ー I/Qシンボルのプリコード化 ー プリコード化されたI/Qシンボルのリソース・エレメントへのマッピング ー 各アンテナ・ポート用のI/Qタイム・ドメインSC-FDMA信号の作成

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図11. アップリンク・チャネル・コード化(TS 36.212)および物理チャネル処理(TS36.211)[参考資料3、4、16] 図3と図11を比較することにより、LTEとLTE-Advancedのチャネル・コード化 と物理チャネル処理の違いがわかります。 トランスポート・ ブロックにCRCを追加 コード・ブロックのセグメント化 コード・ブロックCRCの追加 チャネル・コード化 レート・マッチング コード・ブロックの 追加 スクランブ リング 変調マッパ レイヤ・ マッパ 変換 プリコーダ 変換 プリコーダ プリコード化 リソース・ エレメント・マッパ 信号生成OFDM OFDM 信号生成 リソース・ エレメント・マッパ レイヤ 変調マッパ スクランブ リング データ/制御多重化 チャネル・インタリーバ (a)UL-SCH用のトランスポート・チャネルの処理 (b)アップリンク物理チャネル処理の概要 チャネル・ コード化 チャネル・ コード化 コードワード チャネル・ コード化 アンテナ・ポート

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LTE-Advancedは、帯域幅の拡大の他に、データ・レートの向上とシステム性 能の改善を目指しています。このために、LTEの最初のリリースに比べて、マ ルチアンテナ伝送のサポートがさらに拡張されています。DLでは、8×8のアン テナ構成を使用して、最大8レイヤの伝送が可能です。これにより、ピーク・ スペクトラム効率は30 ビット/s/Hzの要件を超え、40 MHzの帯域幅で1 Gビッ ト/sを、帯域幅を広げることによりさらに高いデータ・レートを実現できる可 能性があります。最初に、リリース10で定義されている5種類のDL基準信号を 紹介します。 1. セル固有基準信号(CRS) 2. MBSFN基準信号 3. UE固有基準信号(DMRS) 4. 位置決定基準信号(PRS) 5. CSI基準信号(CSI-RS) セル固有RSは、各物理アンテナ・ポートで送信されます。これは復調と測定の 両方の目的に使用されます。パターン・デザインにより、正確なチャネル予測 が可能になっています。LTE-AdvancedのeNBは、LTEのUEもサポートするこ とが要求されています。このCRSは、LTE-AdvancedのUEがPCFICH、PHICH、

PDCCH、PBCH、PDSCH(送信ダイバーシティのみ)を検出するためにも使用 されます。 CSI基準信号は、各物理アンテナ・ポートまたは仮想化アンテナ・ポートで送 信され、測定の目的だけに使用されます。チャネル予測精度はDMRSに比べて 劣ります。 リリース8では、CRSは復調と測定の両方に使用されます。CRSに基づいて、 プリコード化情報がUEに送信され、UEは物理アンテナ・ポートを検出できます。 さまざまな種類のUEをサポートするためにはCRSパワー・ブーストが必要にな ります。LTEのDLのMIMO伝送は、CRSに基づいています。図12に、CRSベー スの構造を示します。 図12. LTEのCRSベースのMIMO方式

ダウンリンク

MIMO

伝送の機能拡張

レイヤ・ マッパ プリコード化 リソース・ エレメント・マッパ リソース・ エレメント・マッパ

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図13. LTE-AdvancedのDMRSベースのMIMO方式 リリース8では、「LTEの概要」で説明したように、8種類の伝送モードがサポー トされています。LTE-Advancedでは、新しい伝送モードとして、モード9「マ ル チ レ イ ヤ 伝 送 モ ー ド 」 が 追 加 さ れ て い ま す。 こ れ は、 ラ ン ク8ま で の SU-MIMO閉ループをサポートしています。このモードでは、リリース10の DMRSが復調に使用され、最大8レイヤの伝送がサポートされます。プリコー ダ・インデックスは通知不要であり、DLプリコーダは指定されていません。 このため、プリコード化されたDMRSベースの伝送を使用することにより、 eNBのデザインでプリコーダの柔軟な使用が可能になります。モード9伝送を サポートするために、DCIフォーマット2Cが定義されています。 LTEリリース10では、後方互換性を維持するために、通常のサブフレームでリ リース8のセル固有基準信号(CRS)による送信ダイバーシティ(TD)方式も採用 されています。 LTE-AdvancedでのDL MIMOのアップグレードに対応して、フィードバック (CQI/PMI/RI)もアップデートする必要があります。 LTE-Advancedでは、DLのMIMO伝送はDMRSに基づいています。図13に、 DMRSベースの構造を示します。ここでは、DMRSが復調に、CSI-RSが測定 に用いられます。プリコード化情報は復調には不要です。UEは仮想アンテナ・ ポート(ストリーム)を検出できます。プリコード化利得がチャネル予測に利用 できるので、DMRSパワー・ブーストが必要でない可能性があります。 レイヤ・ マッパ プリコード化 リソース・ エレメント・マッパ リソース・ エレメント・マッパ

(19)

LTE-Advancedでは、ULで最大4レイヤの空間多重化が採用されています。UL で4レイヤの伝送を行うことにより、ULのピーク・スペクトラム効率は15ビッ ト/s/Hzを超えます。DLの空間多重化のための手法の多くは、リリース8にす でに存在します。例えば、コードブック・ベースおよび非コードブック・ベー スのチャネル依存プリコード化は、ピーク・レートだけでなく、セル・エッジ でのデータ・レートの向上にも効果があります。 UL空間多重化モードでのコードワード−レイヤ間のマッピングは、リリース8 で定義されている2 TXおよび4 TXの場合のDLコードワード−レイヤ間マッピ ングと同じです。異なるランクに対して、それぞれ独立したコードブック・デ ザインと、ULコンポーネント・キャリア毎に1つの広帯域TPMIが存在します。 送信アンテナ2本のコードブック・サイズは8未満であり、2 TXに対しては3ビッ トのコードブックがあります。送信アンテナ4本のコードブック・サイズは64 未満であり、4 TXに対しては6ビットのコードブックがあります。 送信アンテナ2本のUL空間多重化に使用する3ビットのプリコード化コード ブックの定義を表5に示します。ランク1(v=1)のコードブック・サイズは6で、 ランク2(v=2)は1です。ランク1のコードブック・インデックス4と5は、アン テナ選択プリコーダです。 表5. 送信アンテナ2本の場合のコードブック V= レイヤ数

アップリンク

MIMO

伝送の機能拡張

0 1 − 2 − 3 − 4 − 5 −

[ ]

1 1

[ ]

1 −1

[ ]

1 j

[ ]

0 1

[ ]

1 0

[ ]

1 −j

[ ]

1 0 1 1 2 1 √ 2 1 √ 2 1 √ 2 1 √ 2 1 √ 2 1 √ 2 1 √

(20)

送信アンテナ4本の場合のUL空間多重化では、6ビットのプリコード化コードブックが使用されます。ランク1(1レイヤ) 伝送に使用されるプリコード化コードブックのサブセットの定義を表6に示します。ランク1(v=1)のコードブック・サ イズは24です。コードブック・インデックス16∼23はアンテナ選択プリコーダであり、インデックス0∼15は定数係 数です。 表6. 送信アンテナ4本、ランク1(V=1)の場合のコードブック ランク2伝送に使用されるプリコード化コードブックのサブセットのベースラインの定義を表7に示します。 ランク2(v=2)のコードブック・サイズは16であり、コードブックはCM保存行列とQPSKアルファベットです。 表7. 送信アンテナ4本、ランク2(V=2)の場合のコードブック ランク3(3レイヤ)伝送に使用されるプリコード化コードブックのサブセットの定義を表8に示します。 ランク3(v=3)のコードブック・サイズは12です。コードブックはCM保存行列とBPSKアルファベットです。 コードブック・ インデックス レイヤ数V1 0 - 7 8 - 15 16 - 23 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 1 1 −1 1 1 j j 1 1 −1 −1 1 1 −j j 1 j 1 j 1 j j −1 1 j 1 −j 1 j −j 1 1 −1 1 1 1 −1 j −j 1 −1 −1 1 1 −1 −j j 1 −j 1 −j 1 −j j −1 1 −j −1 j 1 −j −j 1 1 0 1 0 1 0 −1 0 1 0 j 0 1 0 −j 0 0 1 0 1 0 1 0 −1 0 1 0 j 0 1 −0 −j コードブック・ インデックス レイヤ数V2 0 - 3 4 - 7 8 - 11 12-15 0 0 1 −j 1 1 0 0 1 1 0 0 0 0 1 j 1 −j 0 0 0 0 1 1 1 −j 0 0 0 0 1 −1 0 0 1 −j 1 −1 0 0 1 −1 0 0 0 0 1 j 1 j 0 0 0 0 1 1 1 j 0 0 0 0 1 −1 0 1 0 1 1 0 1 0 1 0 1 0 0 1 0 −1 1 0 −1 0 0 1 0 1 1 0 −1 0 0 1 0 −1 0 1 1 0 1 0 0 1 1 0 0 1 0 1 −1 0 1 0 0 −1 0 1 1 0 1 0 0 −1 0 1 −1 0 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2

(21)

表8. 送信アンテナ4本、ランク3(V=3)の場合のコードブック ランク4(4レイヤ)伝送に使用されるプリコード化コードブックは、表9に示す単一の単位行列です。 ULでは、送信ダイバーシティも採用されています。PUCCHは送信ダイバーシティをサポートしています。この送信ダ イバーシティは、空間直交リソース送信ダイバーシティ(SORTD)と呼ばれます。これはほとんどの場合にきわめて優れ た性能を示します。ただし、送信ダイバーシティがない場合に比べて、2倍のリソースが必要です。 表9. 送信アンテナ4本、ランク4(V=4)の場合のコードブック コードブック・ インデックス レイヤ数V3 0 - 3 4 - 7 8 - 11 0 0 1 0 1 1 0 0 0 0 0 1 0 0 1 0 1 −1 0 0 0 0 0 1 0 1 0 0 1 0 1 0 0 0 0 1 0 1 0 0 1 0 −1 0 0 0 0 1 0 1 0 0 1 0 0 1 0 0 1 0 0 1 0 0 1 0 0 −1 0 0 1 0 1 0 0 0 0 1 1 0 0 0 0 1 1 0 0 0 0 1 −1 0 0 0 0 1 1 0 0 0 0 1 0 1 0 0 1 0 1 0 0 0 0 1 0 −1 0 0 1 0 1 0 0 0 0 0 1 1 0 1 0 0 1 0 0 0 0 0 1 −1 0 1 0 −0 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 コードブック・ インデックス レイヤ数V4 0 0 1 0 0 1 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 1 2

(22)

ITU-RのIMT-Advancedチャネル・モデルは、WINNER IIに基づいたジオメト リ・ベースの確率論的モデルです。このモデルは、散乱の位置ではなく、よく 知られている空間チャネル・モデル(SCM)と同じように、レイ(放射された電 波)の方向を明示的に指定します。無線チャネルのジオメトリ・ベースのモデ リングでは、伝搬パラメータとアンテナを分離できます。 個々のスナップショットのチャネル・パラメータは、チャネル測定から抽出さ れた統計分布に基づいて確率的に決定されます。アンテナのジオメトリと放射 パターンは、モデルのユーザが適切な方法で定義できます。チャネル実装は、 幾何学的な原理を適用して、各レイ(平面波)の寄与と、遅延、パワー、到着角 (AoA)、放射角(AoD)などの個々の小スケール・パラメータを考慮して作成さ れます。重ね合わせにより、アンテナ要素間の相関と、ジオメトリ依存のドッ プラ・スペクトラムによる一時的なフェージングが得られます。 いくつかのレイによってクラスタが構成されます。このドキュメントでは、ク ラスタという用語を、空間的に拡散している伝搬経路(遅延ドメインまたは角 度ドメイン)を表すために使用します。MIMOチャネルの要素(リンクの両端の アンテナ・アレイや伝搬経路など)を図14に示します。一般的なMIMOチャネル・ モデルは、すべてのシナリオ(屋内、都市、農村)に適用できます。 図14. MIMOチャネルの表現

LTE-Advanced/IMT-Advanced

のチャネル・モデル

アレイ1 (S個のTxエレメント) アレイ2 (U個のRxエレメント) クラスタn クラスタn+1 経路n 経路n+1 MS/UEアレイ・ボアサイト BSアレイ・ボアサイト

(23)

U×S MIMOチャネルの時間変動インパルス応答行列は、以下の式で与えられ ます。 , (1) ここで、tは時間、τは遅延、Nは経路(クラスタ)数、nは経路インデックスです。 この行列は、トランスミッタ(Tx)のアンテナ・アレイ応答マトリクスFtxとレシー バ(Rx)のアンテナ・アレイ応答マトリクスFrx、およびクラスタnのデュアル偏 波伝搬チャネル応答マトリクスhnから、以下のように構成されています。 (2) クラスタnのTxアンテナ要素sからRx要素uへのチャネルは、以下のように表さ れます。 (3) ここで、Frx,u,VとFrx,u,Hはそれぞれ、垂直偏波と水平偏波のアンテナ要素uの電界 パターンです。αn,m,VVとαn,m,VHはそれぞれ、レイn、mの垂直−垂直偏波およ び水平−垂直偏波の複素利得です。λ0は、中心周波数の波長です。φn,mは、 AoD単位ベクトルです。φn,mは、AoA単位ベクトルです。rtx,sとrrx,uはそれぞれ、

要素sとuの位置ベクトルです。Vn,mは、レイn、mのドップラ周波数成分です。 無線チャネルが動的にモデリングされている場合は、上記の小スケール・パラ メータはすべて時間変動します(tの関数)。 一般的なチャネル・モデルは、双方向のジオメトリ・ベースの確率論的モデル です。これは、例えばSCMモデルなどに使用されるという意味において、シス テム・レベルのモデルです。これは、単一または複数の無線リンクにおける、 定義されたすべてのシナリオおよび任意のアンテナ構成での無制限の数の伝搬 環境の実装を異なるパラメータ・セットを使用した1つの数学的な枠組みで記 述できます。一般的なチャネル・モデルは、2(または3)レベルのランダムさを 持つ確率モデルです。図15に、チャネル・モデル作成の概要を示します。第1 段階には2つのステップがあります。最初に、伝搬シナリオを選択します。次に、 ネットワーク・レイアウトとアンテナ構成を決定します。第2段階では、大スケー ル・パラメータと小スケール・パラメータを定義します。第3段階では、チャ ネル・インパルス応答(ChIR)を計算します。ChIRの生成の際には、相関マト リクスを計算するために、アンテナ・パターンを入力する必要があります。

(24)

チャネル実装は、図16に示すステップ式の手順で作成されます。注意すべきこ ととして、ジオメトリ記述の対象となるのは、最後のバウンス散乱からの到着 角と、送信側と相互作用する最初の散乱体への放射角です。最初と最後の相互 作用の間の伝搬は定義されません。したがって、この手法では散乱媒体との間 の複数の相互作用もモデリングできます。また、このことから、マルチパス・ コンポーネントの遅延はジオメトリからは決定できないこともわかります。次 のステップでは、DLを仮定しています。ULでは、到着パラメータと放射パラメー タを入れ替える必要があります。 図16. チャネル係数の作成手順[TR 36.814] 図15. 一般的なチャネル・モデル作成プロセス[TR 36.814] ユーザ定義パラメータ 伝搬パラメータ作成 ChIR作成 シナリオ 選択 ネット ワーク・ レイアウト 大スケール・ パラメータ マルチパス・ パラメータ チャネル 係数作成 アンテナ -都市マクロ -都市ミクロ -屋内 -屋外から屋内 など -BS/MS位置 -速度 -DS、AS、K -XPR -シャドー  イング -経路損失 -パワー、遅延、  AoA、AoD、  など -要素数 -向き -電界パターン 一般パラメータ 小スケール・パラメータ 係数作成 シナリオ、ネットワーク・ レイアウト、アンテナ・ パラメータの設定 伝搬条件(NLOS/LOS)の 指定 相関する大スケール・ パラメータ(DS、AS、 SF、K)の作成 遅延の作成 クラスタ・パワーの 作成 到着角/放射角の 作成 レイのランダム結合の 実行 ランダム初期位相の 作成 経路損失/シャドー イングの適用 チャネル係数の作成 経路損失の計算

(25)

ここからは、SystemVue W1918 LTE-Advancedベースバンド検証ライブラリ について説明します。SystemVueは、Keysightの電子システム・レベル・デザ イン用のエレクトロニック・デザイン・オートメーション(EDA)環境であり、 無線通信システムの物理層(PHY)が主な対象です。SystemVueを使えば、シス テム・アーキテクチャやアルゴリズムの開発において、革新的な信号処理技術 と、正確なRFシステム・モデリング、テスト機器との協調動作、アルゴリズム・ レベルのリファレンスIPおよびアプリケーションを組み合わせて利用できます。 W1918 LTE-Advancedライブラリは、SystemVueのオプションであり、100 種類以上のリファレンス・モデル、コード化信号源/レシーバ、3GPPリリー ス8およびリリース10用のテストベンチを提供しています。 以下の各セクションでは、リリース10用の新しい高度にパラメータ化された信 号源のいくつかを紹介します。これらは、アルゴリズム開発のためのオープン なブロック図リファレンスとして、あるいはハードウェア検証のためのカスタ マイズ可能なテスト・ベクタを作成してテスト機器にダウンロードするために 使用できます。SystemVueで特に注目に値するのは、実際にハードウェア測定 を行うのが面倒なマルチチャネルMIMOシナリオをシミュレートする機能です。 これにより、アルゴリズムや機能の検証をシミュレーションを利用して早い段 階で行うことができます。 リリース8仕様は、eNBで最大4個のトランスミッタとレシーバ、UEで最大2台 のトランスミッタと4個のレシーバをサポートしています。LTE-Advancedで は、DLで 最 大8レ イ ヤ の 空 間 多 重 化 が サ ポ ー ト さ れ て い ま す。Keysight SystemVue W1918 LTE-Advancedライブラリは、最大8本のアンテナによる フル・コード化DL信号源を実装しています。図17に、LTE-AdvancedのDL MIMO信号源のコンポーネントを示します。

SystemVue

LTE-Advanced

ダウンリンク

MIMO

信号源

SystemVue

LTE-Advanced

ベースバンド・リファレンス・ライブラリ

図17. SystemVueのLTE-AdvancedライブラリにあるダウンリンクMIMO信号源

このトップ・レベル信号源を開けば、図18のように詳細が表示されます。ユー ザがMATLABやC++で作成した独自のコンポーネントをSystemVueコンポー ネントの代わりに使用して、アルゴリズムを検証することもできます。

(26)

図18. 図17のシンボルの下にあるLTE-AdvancedのDL MIMO信号源のスケマティック。この回路はパラメータ化されていて、図19~24に示す使いや すいGUIから利用できます。 このトップレベル・コンポーネントに対応して、パラメータを制御するGUIも 用意されています。GUIの1ページ目(図19)では、LTE-Advancedのシステム・ パラメータ(FDD/TDD、帯域幅、CRSアンテナ・ポートなど)を設定します。 物理信号 制御チャネル 逓倍器、OFDM変調器、フレーミング、 スペクトラム・シェーピング レンジ・ チェック

(27)

図19. LTE-AdvancedのDL信号源のシステム・パラメータ用のGUI

図20. LTE-AdvancedのDL信号源のPDSCH MIMOパラメータ用のGUI

GUIの2ページ目(図20)では、LTE-AdvancedのMIMO設定のPDSCHパラメー タ(MIMOモード、レイヤ数、コードブック・インデックスなど)を設定します。

GUIの3ページ目(図21)では、LTE-AdvancedのRB割り当て設定のPDSCHパラ メータ(リソース割り当てタイプ、トランスポート・ブロック・サイズのコード ワード1/

(28)

図21. LTE-AdvancedのDL信号源のPDSCH RB割り当てパラメータ用のGUI

図22. LTE-AdvancedのDL信号源の制御チャネル・パラメータ用のGUI

GUIの4ページ目(図22)では、LTE-Advancedの制御チャネル設定(DCFフォー マット、PHICHおよびHARQ設定など)を指定します。

GUIの5ページ目(図23)では、LTE-Advancedのパワー設定(RS_EPRE、EPRE

(29)

図23. LTE-AdvancedのDL信号源のパワー・パラメータ用のGUI

図24. LTE-AdvancedのDL信号源のスペクトル・シェーピング・パラメータ用のGUI

GUIの6ページ目(図24)では、スペクトラム・シェーピングを設定します。ス ペクトラム・シェーピングとして、シンボル・ウィンドウとFIRフィルタリン グが使用できます。

(30)

LTEのリリース8仕様では、単一アンテナ送信だけがサポートされています。 LTE-Advancedでは、ULで最大4レイヤの空間多重化MIMOがサポートされて います。SystemVueでは、LTE-Advancedの最大4アンテナのフル・コード化 されたUL信号源が実装されています。図25に、LTE-AdvancedのUL MIMO信 号源のコンポーネントを示します。 このトップレベル信号源を開いて、内部の詳細を見ることができます(図26)。 ユーザは、SystemVueのコンポーネントを、MATLABやC++のコードで作成し た独自のアルゴリズム・コンポーネントに置き換えて、リリース10のアルゴリ ズムの検証に利用できます。

SystemVue

LTE-Advanced

アップリンク

MIMO

信号源

(31)

図26. 図25のLTE-AdvancedのUL MIMO信号源のスケマティックの詳細

このトップレベル・コンポーネントに対応して、パラメータを設定するための

GUIも用意されています。GUIの1ページ目(図27)では、LTE-AdvancedのUL

のシステム・パラメータ(FDD/TDD、帯域幅など)を設定します。 その他の物理チャネルと信号

(32)

図27. LTE-AdvancedのUL MIMO信号源のシステム・パラメータ用のGUI

GUIの2ページ目(図28)では、LTE-AdvancedのULのMIMOパラメータ(レイヤ 数など)を設定します。

(33)

図29. LTE-AdvancedのUL MIMO信号源のPUSCHパラメータ用のGUI

GUIの4ペ ー ジ 目( 図30)で は、LTE-AdvancedのULのRB割 り 当 て 設 定 の

PUSCHパラメータ(リソース割り当てタイプ、トランスポート・ブロック・サ イズのコードワード1/2設定、マッピング・タイプなど)を設定します。

GUIの3ペ ー ジ 目( 図29)で は、LTE-AdvancedのULのPUSCHパ ラ メ ー タ (DMRS、ホッピングなど)を設定します。

(34)

図32. LTE-AdvancedのUL MIMO信号源のPRACHパラメータ用のGUI

図31. LTE-AdvancedのUL MIMO信号源のPUCCHパラメータ用のGUI

GUIの6ページ目(図32)では、LTE-AdvancedのULのPRACH設定(プリアンブ ル・インデックス、リソース・インデックスなど)を指定します。

GUIの5ペ ー ジ 目( 図31)で は、LTE-AdvancedのULのPUCCHパ ラ メ ー タ (PUCCHフォーマットなど)を設定します。

(35)

図33. LTE-AdvancedのUL MIMO信号源のSRSパラメータ用のGUI

GUIの8ページ目(図34)では、LTE-AdvancedのULのパワー・パラメータを設 定します。

GUIの7ページ目(図33)では、LTE-AdvancedのULのサウンディング基準信号 (SRS)パラメータを設定します。

(36)

図35. LTE-AdvancedのUL MIMO信号源のスペクトル・シェーピング・パラメータ用のGUI

GUIの10ページ目(図36)では、LTE-AdvancedのULのサブフレームごとの制御 情報(CQI、RI、ACK/NACKなど)パラメータを設定します。

図36. LTE-AdvancedのUL MIMO信号源の制御情報パラメータ用のGUI

GUIの9ページ目(図35)では、スペクトラム・シェーピングを設定します。ス ペクトラム・シェーピング・パラメータとして、シンボル・ウィンドウとFIRフィ ルタリングが使用できます。

(37)

Keysight SystemVue W1715 MIMOチャネル・ビルダは、WINNER IIと LTE-Advanced MIMOの両方のチャネル・モデルを提供するオプションのブロック・ セットで、LTE、LTE-Advanced、802.16mシステムのBER/FERおよびスルー プ ッ ト・ フ ェ ー ジ ン グ・ シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に 使 用 で き ま す。 図37に、

SystemVueのLTE-Advanced MIMOチャネル・モデルを示します。

GUIの1ページ目(図38)では、搬送波周波数やサンプリング・レートなどのシ ステム・パラメータをシステム・シミュレーション条件に合わせて設定します。

SystemVue

LTE-Advanced

チャネル・モデル

(38)

図38. LTE-AdvancedのMIMOチャネル・モデルのシステム・パラメータ用のGUI

図39. LTE-Advanced MIMOチャネル・モデルのチャネル・モデル・シナリオ・パラメータ用のGUI

GUIの3ページ目(図40)では、アンテナ・パターン・パラメータを設定します。 パラメータとしては、直交偏波(通常はリニア・シータ(θ)/ファイ(φ)偏波) や遠方界放射パターン(Keysight EMProソフトウェアなどの電磁界シミュレー ション・ツールでシミュレートされたもの)があります。全方向性パターン、 3セクタ・パターン、6セクタ・パターンなどの理想アンテナ・パターンも選択 できます。現在のW1715 MIMOチャネル・ビルダでは、2次元と3次元の両方 のアンテナ・パターンが考慮されています。電磁波の伝搬は1つのパネル内の 伝搬によって近似され、チャネル・シミュレーションで広く用いられている方 法です。 GUIの2ページ目(図39)では、チャネル・モデル・パラメータを設定します。 LTE-AdvancedのMIMOチャネル・モデルでは、チャネル・シナリオによって 経路パラメータが決定されます。4つのシナリオ(InH、Umi、Uma、RMa)が あり、屋内から屋外までの環境に応じて選択できます。LTE-Advancedチャネル・ モデルは、仕様と完全に一致しています。

(39)

LTE-Advancedでは、広い帯域幅をサポートするために、複数のコンポーネント・ キャリアの結合(キャリア・アグレゲーション)により必要な帯域幅を実現しま す。LTE-Advancedでは、この方法により最大100 MHzの伝送帯域幅がサポー トされています。 LTE-Advancedでは、2種類のキャリア・アグレゲーション手法が提案されてい ます。1つは連続CAで、複数の使用可能なコンポーネント・キャリアが互いに 隣接しているものです。もう1つは不連続CAで、コンポーネント・キャリア同 士が周波数バンド内で分離されているものです。 配備シナリオはTR 36.815で定義されています。SystemVueでは、スペクトラ ム、CCDF、PAPRを記述する3つのシナリオが実装されています。表10に、シ ナリオ番号1、2、4を示します。 表10. LTE-Advancedの配備シナリオ シナリオ番号 配備シナリオ LTE-A搬送波の 伝送帯域幅 LTE-Aキャリアの数コンポーネント・ LTE-Aバンド搬送波の デュプレックス・モード 1 単一バンド連続スペクトラ ム割り当て、FDD用の 3.5 GHzバンド UL:40 MHz UL:連続する2×20 MHz CC 3.5 GHzバンド FDD DL:80 MHz DL:連続する4×20 MHz CC 2 単一バンド連続スペクトラ ム割り当て(TDD用の バンド40) 100 MHz 連続する5×20 MHz CC バンド40(2.3 GHz) TDD 4 単一バンド不連続スペクト ラム割り当て、FDD用の 3.5 GHzバンド UL:40 MHz UL:不連続の1×20+1× 20 MHz CC 3.5 GHz バンド FDD DL:80 MHz DL:不連続の2×20+2× 20 MHz CC

SystemVue

LTE-Advanced

キャリア・アグレゲーション(

CA

図40. LTE-AdvancedのMIMOチャネル・モデルのアンテナ・パターン・パラメータ用のGUI

Keysight EMPro

(40)

図41は、SystemVueのシナリオ1のスケマティックです。これは4×20 MHzの FDD DLキャリア・アグレゲーションです。そのスペクトラムを図42(a)に示し ます。図42(b)はシナリオ2のスペクトラムで、TDDの例です。 図41. SystemVueのシナリオ1(4×20 MHzのキャリア・アグレゲーション)のスケマティック シナリオ4は、不連続キャリア・アグレゲーションの例です。図43(a)と図43(b) は、それぞれDL CAとUL CAのスペクトラムを示します。 図42. ダウンリンク連続CCのスペクトラム。(a)はシナリオ1(4×20 MHz CC)、(b)はシナリオ2(5×20 MHz CC)のスペクトラム キャリア・アグレゲーション・スペクトラム キャリア・アグレゲーション・スペクトラム ス ペ ク ト ル( dB m ) ス ペ ク ト ル( dB m ) 連続5×20 MHz CC 連続4×20 MHz CC 周波数(GHz) 周波数(GHz)

(41)

複数のキャリア・コンポーネントがeNBとUEの両方で並列に伝送される場合は、 eNBとUEの両方のPAPRが大幅に上昇します。表11に、上記3つのCAシナリオ のPAPRの値を示します。 図43. シナリオ4(不連続CC)のスペクトラム。(a)はDL(2×20+2×20 MHz CC)、(b)はUL(1×20+1×20 MHz CC)のスペクトラム 表11. LTE-Advancedの配備シナリオ シナリオ リンク 構成 1つのCCPAPR、 アグレゲーション前 複数のアグレゲーション後CCPAPR、 シナリオ1 FDD DL 4×20 MHz CC 8.45 dB 9.98 dB シナリオ2 TDD DL 5×20 MHz CC 9.17 dB 11.71 dB シナリオ4 FDD DL 2×20+2×20 MHz 8.38 dB 9.58 dB シナリオ4 FDD UL 20+20 MHz 5.79 dB 6.86 dB キャリア・アグレゲーション・システムでは、帯域幅は最大100 MHzになりま す。このため、パワーアンプ(PA)のデザインがきわめて重要になります。これ に加えて、デジタル・プリディストーション(DPD)が鍵となります。このよう な広帯域システムでは、PAPRが大きいため、クレスト・ファクタ低減(CFR) アルゴリズムの研究が必要です。SystemVueには、LTE-Advancedのキャリア・ アグレゲーションを扱うために、W1716デジタル・プリディストーション・ア プリケーション・キットが用意されています。これはPAリニアライゼーション の性能を高めるために利用できます。詳細は、SystemVueアプリケーション・ ノート5990-6534ENなどに記載されています。 100 MHz端末のデザイン上の問題として、有効な帯域幅を持つ市販のRFフィ ルタの性能、市販のADCのサンプリング・レートの性能、チャネル・デコーディ ングの量子化分解能とデコードの複雑さ、ソフト・バッファのサイズなどがあ ります。 キャリア・アグレゲーション・スペクトラム キャリア・アグレゲーション・スペクトラム ス ペ ク ト ル( dB m ) 周波数(GHz) 不連続2×20 MHz+2×20 MHz ス ペ ク ト ル( dB m ) 不連続20 MHz+20 MHz 周波数(GHz)

(42)

LTE-Advancedでは、PUSCHの伝送方式として、空間多重化の有無に関わらず、 DFTプリコード化OFDMが使用されます。コンポーネント・キャリアが複数あ る場合は、コンポーネント・キャリア1つにつき1つずつのDFTが存在します。 各コンポーネント・キャリアに対して、周波数連続と周波数不連続の両方のリ ソース割り当てがサポートされています。 UL L1/L2制御信号とデータの同時伝送を実現するために、2つの方式が用いら れます。制御信号は、リリース8と同じ原理に基づいてPUSCHでデータと多重 化されるか、PUSCH上のデータと同時にPUCCH上で伝送されます。

図44に、SystemVueでのLTE-Advancedのクラスタ型DFT-S-OFDMのスケマ ティックを示します。 図44. クラスタ型DFT-S-OFDMのスケマティック

SystemVue

LTE-Advanced

アップリンク拡張

アンテナ

1

UL MIMO

信号源

アンテナ

2

(43)

図45に、アンテナ1のスペクトラムを示します。2つのクラスタ型PUSCHと PUCCHが同時に伝送されていることがわかります。 図45. SystemVueでのクラスタ型DFT-S-OFDMのスペクトラム クラスタ型DFT-S-OFDMのスペクトラム クラスタ1 クラスタ2 ス ペ ク ト ル( dB m ) 周波数(GHz)

(44)

SystemVueでは、MIMO信号源以外に、DLとULの両方のMIMOレシーバも提 供されています。図46に、8×8のLTE-AdvancedシステムのSystemVueでの デザイン例を示します。ACK/NACKとPMIをレシーバからフィードバックする ことにより、閉ループHARQスループットを測定しています。

図46. LTE-AdvancedのDLの8×8 MIMOシナリオのスケマティック。アクティブHARQフィードバックによりフェージングと閉ループ・スループット

測定を実行します。この仮想OTAシミュレーションの実行には、SystemVueの「ダイナミック・データフロー」テクノロジーが重要な役割を果たします。

SystemVue

LTE-Advanced

拡張

MIMO

伝送

LTE-Advancedの8x8 DLのスループット・シミュレーションにはかなりのコン ピュータ・リソースが必要であり、直接測定法を使用する場合のテスト機器の 要 件 は さ ら に 厳 し く な り ま す。 代 わ り の 方 法 と し て、 図47に 示 す LTE-Advanced DL 2×2スループット測定があります。この例では、マルチプローブ・ アンテナとチャネル・エミュレータを使用して、電波暗室内でRayleigh無線環 境を構築しています。半波長間隔の2ダイポール・アンテナ・アレイをターンテー ブルの中央に置き、テーブルをさまざまな角度に向けることで、異なるAoA効 果を実現しています。 図の赤い曲線は実験結果であり、アンテナ・アレイの実環境での方向性を反映 しています。この測定のために、プローブ・アンテナからLTE波形を出力し、 Keysight 89600 VSAソフトウェアを使用してダイポール・アンテナから受信 データを捕捉し、捕捉したI/Qデータと測定されたフェージングをファイルに保 存しました。そのデータ・ファイルをSystemVueでシミュレートした基準レシー バに入力して、スループットの結果が得られました。

LTE-Advanced

MIMO DL

基準信号源

LTE-Advanced

MIMO DL

基準レシーバ

LTE-Advanced

MIMO

チャネル

(45)

図47の青い曲線は、より純粋なシミュレーション結果を表しています。この曲 線を得るには、測定されたアンテナ・パターン・ファイルを電波暗室測定の代 わりにSystemVueにロードし、W1715 MIMOチャネル・ビルダのモデルを SystemVueシミュレーションで使用して、フェージングのある無線チャネルと、 それに対する方向性MIMOアンテナの効果を予測しました。これら2つの測定の 結果は、同じシミュレートされた基準レシーバでデコードされています。 シミュレートされたMIMOスループットと電波暗室での実験結果の比較が、図47 に示されています。垂直軸のスケールが小さいことと、赤いトレース(シミュレー ション)が青いトレース(測定結果)の予測になっていることに注目してくださ い。この結果から、きわめて早い段階でのUEアンテナ配置の工業デザインの

3DEMシミュレーション(ヒューマンSAMモデルを使用)と、早い段階でのUE/ eNB基準アルゴリズムおよび早い段階でのRFトランシーバ・モデルとを組み合 わせて、実際に動作するUEハードウェアが得られるよりも何ヶ月も前に、リン クレベル性能を高い信頼度で予測できることがわかります。シミュレーション にかなり時間がかかるため、シミュレーション・ツールではリリース10のカバ レージ・テストのごく一部しか実際には実行できませんが、デザイン・プロセ スのきわめて早い段階で重要なシステム・レベルの性能パラメータを予測でき るのは大きな利点です。Keysight SystemVueでこれらのモデルを統合し、動 作するUEハードウェアが使用可能になった時点でテスト機器と連携することに より、実環境での性能に関する有効な診断が可能になり、研究開発でのウェー ハの作成回数を減らせる可能性があります。 図47. LTE-Advancedのスループットと到着角(AoA)の関係、測定結果とシミュレーション結果の 比較 ス ル ー プ ッ ト 係 数 AoA(度) 実験結果 シミュレーション結果

(46)

このアプリケーション・ノートでは、LTE、LTE-Advanced、LTE-Advanced MIMOチャネル・モデルに関する、主な手法と概念について説明しました。

W1918 SystemVue LTE-Advancedライブラリと、W1715 SystemVue MIMO

チャネル・ビルダの機能拡張を使用して、リリース10のコード化スループット を正確に予測する方法も紹介しました。 上記の結果からわかるように、SystemVueを使えば、LTE-Advancedの変更可 能なリファレンス物理層が得られ、物理層アルゴリズムのデザインや製品開発 の時間を短縮できます。このアプリケーション・ノートでは説明しませんでし たが、SystemVueには、シミュレートした波形をKeysightの信号発生器にダウ ンロードしたり、Keysightシグナル・アナライザから信号を受け取ったりする 機能もあるので、研究開発の早い段階でハードウェア・プロトタイプの検証を 実行し、より詳細な解析と高い信頼度を実現できます。このように、強力なオー プン・モデリング・プラットフォームと、最先端のリファレンスIP、テスト機 器との連携により、キーサイトはLTE-Advancedなどの最新規格に基づいた優 れたシステム・デザインの作成を支援します。

まとめ

1. 3GPP TR 21.905 v9.1.0:"Vocabulary for 3GPP Specifications (Release 9)," 2010-03. 2. 3GPP TS 36.201 v9.1.0:"Evolved Universal Terrestrial Radio Access(E-UTRA); Physical

Layer – General Description(Release 9)," 2010-03.

3. 3GPP TS 36.211 v9.1.0:"Evolved Universal Terrestrial Radio Access(E-UTRA); Physical channels and modulation(Release 9)," 2010-03.

4. 3GPP TS 36.212 v9.1.0:"Evolved Universal Terrestrial Radio Access(E-UTRA); Multiplexing and channel coding(Release 9)," 2010-03.

5. 3GPP TS 36.213 v9.1.0:"Evolved Universal Terrestrial Radio Access(E-UTRA); Physical layer procedures(Release 9)," 2010-03.

6. 3GPP TR 36.814 V9.0.0, “Further advancements for E-UTRA physical layer aspects,” 2010-03.

7. 3GPP TR 36.815 V9.1.0, “LTE-Advanced feasibility studies in RAN WG4,” 2010-06.

8. 3GPP TR 36.912 V9.3.0, “Further Advancements for E-UTRA(LTE-Advanced),” 2010-06. 9. 3GPP TR 36.913 V9.0.0, “Evolved Universal Terrestrial Radio Access(E-UTRA)

(LTE-Advanced),” 2009-12.

10. 3GPP TR 36.300 V10.1.0, “Evolved Universal Terrestrial Radio Access(E-UTRA)and Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network(E-UTRAN); Overall description; Stage 2 (Release 10),” 2010-09.

11. IST-WINNER II Deliverable 1.1.2 v.1.2, “WINNER II Channel Models,” IST-WINNER2, Tech. Rep., 2007(http://www.ist-winner.org/deliverables.html).

12. LTE-Advancedの概要、http://literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5990-6706JAJP.pdf 13. Juho Lee, Jin-Kyu Han, and Jianzhong(Charlie)Zhang, “MIMO Technologies in 3GPP LTE

and LTE-Advanced,” EURASIP Journal on Wireless Communications and Networking, Volume 2009.

14. Stefan Parkvall and David Astely, “The Evolution of LTE towards IMT-Advanced,” Journal of Communications, Vol. 4, No. 3, April 2009.

15. Matthew Baker, Chairman 3GPP TSG RAN WG1 “REV-090003r1, LTE-Advanced Physical Layer,” Dec 2009.

16. http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/TSG_RAN/TSGR_50/Docs/RP-101320.zip , Dec 2010. 17. Keysight SystemVue DPD, http://literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5990-6534EN.pdf 18. Keysight SystemVueを使用したアンテナ/MIMOチャネル効果の評価,

http://literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5990-6535JAJP.pdf

図 1.   LTE の FDD/TDD フレーム構造( Parkvall & Astely, pp 148 [14] )
表 2.   LTE 、 LTE-Advanced 、 IMT-Advanced の性能目標
図 5.   DL の連続キャリア・アグレゲーションでのキャリア割り当て [15] こ の 構 造 は リ リ ー ス 8 仕 様 に よ く 適 合 し て い ま す。 一 方、 1 つ の 搬 送 波 の PDCCH が別の搬送波のデータに関連する、クロス搬送波スケジューリングも 可能です。クロス搬送波スケジューリングをサポートするために、 DL 制御チャ ネル( PDCCH 、 PCFICH 、 PHICH など)がアップデートされています。 クロス搬送波スケジューリングは、 DCI にキャリア・イ
図 8 に、クラスタ型 DFT-S-OFDM ( LTE-Advanced )の DFT と IFFT の間の副搬送 波マッピングのダイアグラムを示します。クラスタ型 DFT-S-OFDM では不連 続の副搬送波割り当てがサポートされていることがわかります。これに対して、
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参照

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