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第2章 下水道事業の現状と課題
本市を取り巻く状況として、人口増加の鈍化や少子化が進行し高齢社会である現状をはじめ、 都市構造の変化への対応、地球温暖化などの環境問題、さらに資源エネルギー問題などがありま す。 また、安全で安心なまちづくりを進めるため、東日本大震災を教訓とした地震や津波対策への 取組が求められています。 このような社会情勢を踏まえ、下水道事業の現状と課題を整理しました。1 汚水処理未整備地区の解消
汚水処理施設の整備の現状と汚水処理未整備地区の解消についての課題は次のとおりです。⑴
汚水処理施設の整備の現状 本市の下水道事業は、図-4のように市街化区域内と区域外においてそれぞれの事業を適用し 整備を進めています。 図-4 下水道事業の区分について 平成 23 年度末現在の本市の汚水処理施設を利用できる人口は、総人口約 118 万人に対し て約 111 万人であり、汚水処理人口普及率は 94.4%です。 表-1のとおり、市街化区域内の汚水処理人口普及率は 97.5%ですが、市街化区域外につい ては、33.0%と低い値になっています。 表-1 汚水処理人口普及率(平成 23 年度末) ア 公共下水道(市街化区域内において行う事業) 現在、公共下水道の計画面積15,757 haのうち、千田、江波、旭町処理区については、概ね 整備が完了し、太田川処理区については、平成16年度に新たに市街化区域に編入された安佐北 区可部町の南原地区や狩留家町など1,580ha、流域関連公共下水道瀬野川処理区については、 南区青崎土地区画整理区域など398haの整備が完了していません。 区 分 人口(人) 汚水処理人口(人) 人口普及率汚水処理 (参考)全国平均 市街化区域内 公共下水道 1,123,607 1,095,900 97.5% 市街化区域外 特定環境保全公共下水道 32,783 7,260 22.1% 農業集落排水 14,329 10,781 75.2% 市営浄化槽 9,837 759 7.7% 小 計 56,949 18,800 33.0% 合 計 1,180,556 1,114,700 94.4% 87.6% 農 業 集 落 排 水 市 営 浄 化 槽 特 定 環 境 保 全 公 共 下 水 道 市 街 化 区 域 内 市 街 化 区 域 外 公 共 下 水 道- 5 - イ 特定環境保全公共下水道(市街化区域外において家屋が集まっている地区で行う事業) 現在、特定環境保全公共下水道の計画面積811haのうち、安佐北区安佐町の鈴張地区、佐 伯区五日市町の魚切地区など673haの整備が完了していません。 ウ 農業集落排水(市街化区域外において農業振興地域で行う事業) 農業振興地域に指定された安佐南区沼田町の戸山、安佐北区白木町の井原、市川、井原高南、 三田、上三田、下三田、須沢、安佐町の小河内、安芸区阿戸町の阿戸、佐伯区湯来町の太田部、 鹿ノ道、棡地区の13地区を対象としています。 平成23年度末現在、13地区のうち12地区は既に処理開始していますが、残りの安佐南区 沼田町の戸山地区の整備が完了していません。 エ 市営浄化槽(市街化区域外においてイ及びウの計画区域以外で行う事業) 公共下水道、特定環境保全公共下水道及び農業集落排水の計画区域以外を対象区域とし、平 成20年4月1日から、本市が個人住宅に合併処理浄化槽※1を設置、もしくは、すでに個人が設 置した合併処理浄化槽を市が引き取り、市営浄化槽として維持管理を行う事業を行っています が、普及率は7.7%と整備が遅れています。
⑵
課題 汚水処理未整備地区の解消 汚水処理施設整備にあたっては、公共下水道、特定環境保全公共下水道、農業集落排水、 市営浄化槽による4つの事業を地域の特性に応じて適用し、市内全域における汚水処理未整 備地区の解消を図り、生活環境の改善を促進するとともに河川や広島湾の水質を向上させる 必要があります。 特に、市街化区域外においては、現状では特定環境保全公共下水道など下水道管による整 備が経済的に有利な地区であっても、人口減尐傾向が著しい地区では将来的には市営浄化槽 での整備が有利となることも予想されます。したがって、常に投資対効果を考慮しながら適 用する事業について柔軟な対応を行い、効率的な整備に努める必要があります。 ア 公共下水道 新たに市街化区域に編入された地区や土地区画整理区域などの整備が完了していない 地区で引き続き整備を推進する必要がある。 イ 特定環境保全公共下水道 安佐北区鈴張地区などの整備が完了していない地区で整備を一層推進する必要がある。 ウ 農業集落排水 整備が完了していない安佐南区戸山地区において地元の協力を得ながら整備を推進す る必要がある。 エ 市営浄化槽 市街化区域外においてイ及びウの計画区域以外の地区で地元の要望に応じて整備する とともに、すでに個人が設置した合併処理浄化槽の引取りを推進する必要がある。 ※1)合併処理浄化槽(がっぺいしょりじょうかそう) し尿と生活雑排水を併せて処理する施設のこと(環境省所管)。 お お た ぶ か の ち ゆずりは2 浸水被害の解消
浸水対策の現状と浸水被害の解消についての課題は次のとおりです。⑴
浸水対策の現状 ア 浸水対策施設の整備 合流式下水道※1で整備している中心市街地は、地盤が低く、近年の都市化の進展により雨水 が浸透する空き地が減尐したことに伴い、雨水が一気に下水道管に流れ込むようになり、また、 局所的な豪雨に下水道の排水能力が対応できていないために、写真-1のように各地区で浸水 被害が発生しています。 現在、合流式下水道で整備している中心市街地において5地区(千田・京橋、江波、宇品・ 旭町、大州、三篠・福島・観音)に加えて、浸水が発生している西部臨海地区を対象に、写真 -2や図-5のような雨水ポンプ場や雨水幹線、雨水貯留池、雨水貯留管※2の整備に取り組ん でおり、図-6に示す整備状況となっています。なお、雨水幹線に接続する雨水管も順次整備 を行っています。 【新千田ポンプ場】雨水ポンプ場 ポンプの口径は2mあり、市内で最も大きい ポンプです。 グラウンド下の透視図です。 中央の青色部分に雨水を貯留し、雨が止んだ 後に下水道管へ送水します。 市民球場のグラウンドの下に雨水貯留池が あります。 図-5 大州雨水貯留池の例 【千田幹線】雨水幹線(施工当時の状況) 内径は約6mあり、作業用の配管やレールは 撤去して使用します。 ※1)合流式下水道(ごうりゅうしきげすいどう) 汚水と雨水を同一の管きょで排水する形式の下水道のこと。 ※2)雨水貯留池・貯留管(うすいちょりゅうち・ちょりゅうかん) 大雨が降った時に、道路や家に水があふれないように一時的に雨水を溜めておく池や管きょ施設のこと。 写真-2 雨水ポンプ場や雨水幹線の整備例 写真-1 市内の浸水状況 三篠地区(平成 23 年 9 月) 三篠地区(平成 23 年 9 月)- 7 - イ 浸水ハザードマップの活用 市民自らが浸水の危険度を把握し、浸水被害の軽減につながる対策ができるよう、現在中心 市街地の6つの地区(千田・京橋、江波、宇品・旭町、大州、三篠・福島・観音、吉島)にお いて、大雨が降った場合に発生する浸水の想定区域と避難場所を明示した浸水ハザードマップ ※1を作成しており、作成した地区の公民館などで掲示するとともに、関係する区役所で配布す るなどして活用しています。
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課題 浸水被害の解消 浸水被害の解消に向けて、引き続き雨水ポンプ場や雨水幹線などの浸水対策施設を整備す る必要があります。 一方で、浸水対策施設の整備には相当の期間を必要とすること、また施設整備が完了して も下水道施設の処理能力を超える降雨には対応できないことから、市民自らも浸水被害の軽 減を図ることが必要であり、市民が浸水の危険度を把握し、浸水被害の軽減につながる対策 ができるよう、引き続き浸水想定区域や市民自らできる対策について情報提供に努める必要 があります。 ア 中心市街地における浸水被害を早期に解消するため、浸水対策のための施設整備を推 進する必要がある。 イ 浸水ハザードマップについては、ホームページに掲載するとともに、関係する区役所 で配布しているが、より積極的な市民への情報提供に取り組む必要がある。 図-6 浸水対策整備状況図(平成 24 年 4 月現在) ※1)浸水ハザードマップ(しんすいはざーどまっぷ) 大雨が降った場合に発生する浸水の想定区域と避難場所を明示したもの。自分の住んでいる場所などがどの程度浸水す る恐れがあるかを把握し、日ごろから浸水に備えることにより浸水被害の軽減を図るものです。 注)雨水幹線に流入する雨水管についても整備を行っています。- 8 -
3 地震対策
地震対策の現状と課題は次のとおりです。⑴
地震対策の現状 本市では、平成19年度に実施した「広島市地震被害想定」により、市内に大きな影響を不え る地震として、図-7の5つの地震(東南海・南海地震、己斐断層による地震、五日市断層によ る地震、岩国断層帯による地震、安芸灘~伊予灘の地震)を挙げています。 また、国が公表した「南海トラフの巨大地震※1による震度分布・津波高(第一次報告)〔平 成24年3月〕」、「南海トラフの巨大地震による津波高、浸水域等(第二次報告)及び被害想 定(第一次報告)〔平成24年8月〕」などを踏まえ、広島県とも連携を図りながら平成24年 度に現行の地震被害想定の見直しを行っています。 これらの大規模な地震により下水道施設が被災した場合、代替手段の確保が困難であり、ま た、水道、電気、ガスなどに比べ、復旧までに長い期間を必要とすることから、防災対策だけ でなく、震災時の対応を含めた地震対策を行っています。 ア 防災対策 (ア) 耐震化 本市では、平成 10 年度以前に工事着手した施設については、必要な耐震性能※2を保持 していない施設があるため、優先順位を付けて順次耐震診断を行い、必要な耐震性能の確保 を目指して取り組んでいます。 このため、平成 18 年度に管きょや水資源再生センターなどの既存施設の耐震化を図るこ とを目的として、千田処理区(約 500ha)を対象とする「広島市下水道地震対策緊急整備計 画」を策定し、平成 21 年度には、これを見直し、対象地区を合流式下水道整備地区の概ね 全域(約 2,400ha)に拡大した「広島市下水道総合地震対策計画」を策定しました。対象地 区の既存の管きょについて、平成 18 年度から 23 年度までに約 35 km の耐震化を実施し ています。 図-7 本市に影響を不える震源位置図 ※1)南海トラフの巨大地震(なんかいとらふのきょだいじしん) 駿河湾から九州にかけての太平洋沖のプレート間で発生が予想される地震で、東海地震、東南海地震、南海地震の三つ が連動した地震のことをいいます。 ※2)耐震性能(たいしんせいのう) 施設が地震エネルギーをどれだけ吸収できるか、揺れにどれだけ耐えられるかを表す能力のこと。 東南海・南海 岩国断層帯 安芸灘~伊予灘 五日市断層 己斐断層 佐伯区 安佐南区 安芸区 安佐北区 東区 南区 西区 注) は、過去に発生した地震のおおよその震源位置を示します。 中区 南海トラフ 2001 年 1905 年 1857 年 1686 年- 9 - (イ) 津波対策 国が公表した、「南海トラフの巨大地震による津波高、浸水域等(第二次報告)」では T.P.※1+4mとなっており、現在高潮対策で想定している計画高潮位(T.P.+4.4m)よ り低くなっていますが、堤防が必要な高さまで整備されていない区域もあり、また堤防が地 震被害を受けて機能しない場合は広い区域で浸水が想定されています。 本市では、平成 24 年度に現行の地震被害想定の見直しを行っており、その結果に基づい て下水道施設への津波対策について検討します。 (ウ) 液状化対策 近年の大規模地震では地盤の液状化※2による被害が多く発生しています。本市の中心市 街地である太田川デルタも液状化の危険性が高い地盤ですが、特にマンホールが浮上すると、 交通を阻害するだけでなく、マンホールに接続する下水道管も含めて全面的な改修が必要に なるため、液状化に伴うマンホールの浮上防止対策について検討に着手しています。 イ 減災対策 東日本大震災では、下水道管きょは被災地における管きょ総延長の約1%となる約 550km、 下水処理場は 120 箇所が被災しました。特に下水処理場の機能が停止したところでは、仮設 で設けた沈殿池に下水を送水して汚濁物を沈殿除去し、消毒して河川や海に放流する速やかな 対応が求められました。 本市では、これらの教訓を踏まえ、地震発生後に日常生活へ及ぼす影響などの二次的被害も 含めて、被害の最小化を図る減災対策の検討に着手しています。
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課題 地震対策 ※1)T.P.(てぃーぴー) 全国の標高の基準となる海水面の高さで、東京湾平均海面のこと。「東京湾中等潮位」とも呼ばれます。 ※2)液状化(えきじょうか) 地震の際に地下水位の高い砂地盤が、振動により液体状になる現象のこと。これにより比重の大きい構造物が埋もれ、 倒れたり、地中の比重の軽いマンホールなどの構造物が浮き上がったりします。 大規模な地震に対応できるよう、下水道施設の耐震化や津波対策、液状化対策を推進する 必要があります。 一方、下水道施設の対策には膨大な事業費と長い期間がかかるため、被災時においても 水質汚濁防止法を遵守するという下水道が果たすべき最低限の機能を確保し、また、速やか に機能回復できるように、被災を想定して被害の最小化を図る減災対策を速やかに検討して おく必要があります。 ア 防災対策 大規模な地震に対応できるよう必要な耐震性能を確保するとともに、津波被害に対する 対策や液状化に伴う浮上防止対策を検討する必要がある。 (ア) 下水道施設の耐震化工事を推進する必要がある。 (イ) 津波対策を検討する必要がある。 (ウ) 液状化対策を検討する必要がある。 イ 減災対策 下水道施設が被災した場合の最低限の機能確保を検討する必要がある。4 下水道施設の維持管理
下水道施設の維持管理の現状と課題は次のとおりです。⑴
下水道施設の維持管理の現状 ア 管きょ 本市の公共下水道、特定環境保全公共下水道及び農業集落排水における管きょ総延長は、図 -8で示すように推移しており平成23年度末で約5,800kmですが、合流式下水道で整備した 中心市街地の管きょは、整備後相当の期間を経過し、約144kmが供用開始から50年を経過 しており、今後改築を実施しなければ、10年後には管きょ総延長の約8%に相当する約 444kmになります。 こうしたことから、写真-3のように老朽化した管きょの劣化に伴う道路陥没は、これまで の年間数件から急速に増加することが想定され、陥没による人命や交通への影響、また汚水の 流出による環境上の問題が発生することや、将来にわたり継続した下水道のサービスの提供が できなくなるおそれがあります。 写真-3 管きょ点検(テレビカメラ調査)による劣化状況 注)延長は公共下水道、特定環境保全公共下水道及び農業集落排水の合計 図-8 年度別管きょ整備延長と総延長の推移 約 40 年経過した鉄筋コンクリート管が 腐食して鉄筋が露出している状態 約 40 年経過した鉄筋コンクリート管が 劣化して亀裂(ヒビ)が入っている状態- 11 - 管きょは、今後耐用年数※1を超えるものが大幅に増加しますが、現在は管きょ内のテレビカ メラ調査やマンホール内の目視調査を行い、必要に応じて布設替えによる改築や、写真-4のよ うに管更生工法※2による改築を実施しており、本格的に改築を開始した平成13年度から平成 23年度の期間では、約57kmの改築を実施しました。 また、管きょ内に沈殿物が堆積すると排水能力が低下したり悪臭の問題があることから、主 に合流式下水道で整備した地区や西部臨海地区の管きょの溜まった砂などを取り除く清掃作業 を定期的に行っています。 イ ポンプ場、水資源再生センター及び農業集落排水施設 平成23年度末で、図-9のとおりポンプ場59箇所、水資源再生センター5箇所、農業集落 排水処理施設12箇所の施設を保有していますが、早くから整備した中心市街地のポンプ場や 水資源再生センターは整備後、相当の期間を経過し、老朽化しています。 (箇所) 1 7 5 8 1 6 1 4 2 9 9 1 2 2 1 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 S25~S34 S35~S44 S45~S54 S55~H1 H2~H11 H12~ H22~ ポンプ場 水資源再生センター 農業集落排水処理施設 改築前(硫化水素によりコンクリート が腐食して鉄筋が露出した状態) 改築後(管更生工法により内面が きれいに補修された状態) 写真-4 管きょの改築の例 ※1)耐用年数(たいようねんすう) 地域特性や使用条件等により、次第にその機能が減尐し、通常の維持修繕を行っても使用に耐えきれない状態になるまで の期間のこと。 ※2)管更生工法(かんこうせいこうほう) 古くなって穴があいてしまった管きょや、接続したところがはずれてしまった管きょを、道路を掘らずに直す工法のこと。 図-9 年代別施設整備数(平成 23 年度末) 注)水資源再生センターは、平成 23 年度末に1箇所(大州)廃止しています。
また、ポンプ場、水資源再生センター及び農業集落排水処理施設を安定的に稼働させるため、 写真-5のように機械や電気など設備の点検を行うとともに、電力使用量やコストの削減など 効率的な運転に取り組んでいます。今後とも年々施設が老朽化していく中で、修繕を行いなが ら正常な機能を発揮させなければなりません。 写真-5 ポンプ場及び水資源再生センターにおける維持管理の状況
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課題 下水道施設の維持管理 ※1)アセットマネジメント 「下水道」を資産として捉え、下水道施設の状態を客観的に把握、評価し、中長期的な資産の状態を予測するとともに、 予算制約を考慮して下水道施設を計画的、かつ、効果的に管理する手法のこと。 設備の点検状況(ポンプ場) 運転管理の状況(水資源再生センター) 下水道施設は、市民生活に欠かせないライフラインであり、永続的にその機能を保持させ なければならないことから、施設の維持管理は重要な課題です。 管きょは、引き続き計画的に老朽管の改築を進める必要があります。 また、ポンプ場、水資源再生センター及び農業集落排水処理施設においても、修繕及び改 築を行いながら、その機能を維持する必要があります。 ア 老朽化の進んだ下水道施設から計画的に改築を行い、適切な維持管理に取り組む必要が ある。 イ 短期的な下水道施設ごとの維持管理ではなく、全施設を対象とし、中長期的な視点で計 画的、かつ効果的な維持管理を行うため、アセットマネジメント※1の導入を検討する必 要がある。- 13 -
5 公共用水域の水質向上
公共用水域の水質の現状や水質向上のための合流式下水道の改善状況、水資源再生センター の処理の現状とこれらに対する課題は次のとおりです。⑴
公共用水域の水質の現状 下水道の普及とともに、本市の河川の水質は改善され、河川水質の指標であるBOD※1は環境 基準※2を達成しています。水資源再生センターで処理された晴天時の放流水質はこれまでも下 水道法の基準を遵守しており、平成23年度においても表-2のとおり放流基準の範囲内となっ ています。一方、雨天時の放流水質の状況は表-3のように暫定基準値である70mg/ℓ を超え ている場合があり、水質保全上の問題があります。また、広島湾の水質については、海域水質の 指標であるCOD※3が環境基準2~3mg/ℓ 以下を達成していません。その理由は、流域内の複 数の自治体から流入してくる家庭、工場などの排水や、田畑、山林などから流出する汚水に起因 しています。 広島湾のように周りを山や島で囲まれ、水の出入りが尐ない閉鎖性海域では、ひとたび汚濁が 進行するとその回復が容易でないという特性があり、生活排水や農業排水などに含まれている窒 素やリンなどの栄養塩類※4が蓄積すると富栄養化※5して赤潮が発生することがあります。 このような状況になると、藻類その他の水生生物が増殖し、水質が急速に悪化するようにな り、漁業や水産業などに支障をきたすとともに自然環境にも影響を不えます。 対象の水資源 再生センター 下水道法放流基準値 放流水の水質 判定 平均 最大 千 田 BOD 15 6.1 12 ○ 江 波 6.5 12 ○ 旭 町 1.4 3.0 ○ 西 部 6.7 10 ○ 和 田 2.7 4.2 ○ 区 域 下水道法放流基準値 放流水の水質 判定 平均 最大 千田処理区 BOD 暫定基準 70 29 52 ○ 江波処理区 43 110 × 旭町処理区 26 48 ○ ※1)BOD(びーおーでぃー) 生物化学的酸素要求量のこと。水中に含まれる有機物の汚染状態を表す指標で、微生物が水中の汚れを分解するのに必要 な酸素の量で汚れの大きさを示します。 ※2)環境基準(かんきょうきじゅん) 環境基本法により、人の健康の保護及び生活環境の保全のうえで維持されることが望ましい基準として、終局的に、大気、 水、土壌、騒音をどの程度に保つことを目標に施策を実施していくのかという目標を定めたもの。 ※3)COD(しーおーでぃー) 化学的酸素要求量のこと。水中に含まれる無機物や有機物の汚染状態を表す指標で、酸化剤により水中の汚れを分解する のに必要な酸素の量で汚れの大きさを示します。 ※4)栄養塩類(えいようえんるい) 生物が生活を営むのに必要な無機塩類のこと。海域や湖沼では、窒素やリンなどの無機塩類があげられます。 ※5)富栄養化(ふえいようか) 海や川などの水域において、窒素やリンなどの栄養塩類が豊富になり、これをもとにして植物プランクトンや海藻類など が繁殖するなどして水質が汚濁すること。 (単位:mg/ℓ ) (単位:mg/ℓ ) 表-3 雨天時放流水質(平成 23 年度) 表-2 晴天時放流水質(平成 23 年度)⑵
合流式下水道の改善状況 汚水と雨水を同じ下水道管で処理する合流式下水道で整備している中心市街地では、写真-6 のように雨天時に汚れた雨水が公共用水域※1へ放流されることがあります。このような状況を改 善し「水の都ひろしま」にふさわしい美しい水環境を創出するため、河川における水質や底質の 改善を進める必要があり、昭和61年度から合流式下水道を改善する事業に着手しています。 写真-6 降り始めの汚れた雨水が放流される状況 その後、全国的に同様な問題が発生している状況を受けて平成16年4月施行の下水道法施行 令が改正され、平成35年度までに合流式下水道を改善することが義務付けられました。このた め、平成16年度に策定し、平成21年度に更新した「広島市合流式下水道緊急改善計画」に基 づき、写真-7のような雨水滞水池※2などの施設に一時的に溜め、雨が止んだ後に水資源再生 センターへ送水して処理した後、放流する合流式下水道改善事業を行っています。〔改善のイ メージは図-10のとおり〕 平成23年度末現在の合流式下水道の改善状況は図-11のとおりで、改善率※3は15%である ことから、引き続き、改善のための事業を一層推進する必要があります。 江波雨水滞水池(内部) 千田雨水滞水池 写真-7 合流式下水道改善対策施設の例 ※1)公共用水域(こうきょうようすいいき) 水質汚濁防止法によって定められる、公共利用のための水域や水路のこと。 ※2)雨水滞水池(うすいたいすいち) 合流式下水道の地域において、未処理の下水が川や海に流れ出るのを防ぐため、降雨直後の一定量を超えた下水を一時 的に溜める施設のこと。溜めた下水は晴天時に水資源再生センターへ送って処理してから放流します。 ※3)改善率(かいぜんりつ) 合流式下水道により整備されている区域の面積のうち、雨天時において公共用水域に放流される汚濁負荷量が分流式下 水道並以下までに改善されている区域の面積の割合のこと。- 15 -
図-11 合流式下水道改善状況図(平成 23 年度末) 図-10 合流式下水道の改善のイメージ図
改善対策前 改善対策後
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水資源再生センターの下水処理の現状 本市の水資源再生センターでは、標準的な処理方式(標準活性汚泥法等)で下水の処理を行 っており、高度処理※1といわれる窒素やリンの削減が可能な方法は施設整備費や維持管理費が 高くなることなどから実施していません。しかし、広島湾の水質については、海域の指標であ る COD の環境基準を達成していないため、関係する自治体と協力して水質の向上を図る必要 があり、水資源再生センターにおいて高度処理の導入を検討する必要があります。高度処理を 行うと、図-12 のように窒素とリンを削減することができます。 なお、高度処理により、削減される窒素は窒素ガスとなって大気中に放出され、リンは凝集 剤により汚泥と一体になって沈殿して除去されます。 図-12 高度処理の仕組み(窒素及びリンの削減)⑷
課題 公共用水域の水質向上 平成 16 年4月施行の下水道法施行令の改正により、平成 35 年度までに合流式下水道を 改善することが義務付けられましたが、現在、合流式下水道の面積のうち、改善した対象の 面積の割合は 15%であり、さらに整備を進める必要があります。 また、現在、広島湾の水質については、海域の指標であるCODの環境基準を達成していな いため、関係する自治体と協力して海域の水質向上を図る必要があります。 ア 合流式下水道を改善するための施設(雨水滞水池、雨水滞水管、分流化)の整備を一 層推進し、河川や広島湾の水質向上を図る必要がある。 イ 海域の汚濁を招く窒素とリンを削減するため、水資源再生センターへの高度処理の導 入を検討する必要がある。 ※1)高度処理(こうどしょり) 下水処理において、通常の有機物除去を主とした二次処理で得られる処理水質以上の水質を得る目的で行う処理のこと。 有機物を減らし、窒素、リンも大半 を除去できます。 有機物を除去することができます。 窒素、リンについては、有機物除去 にともない若干の除去がなされま す。 有機物を減らし、窒素、リンも大半を 削除できます。 有機物を削減することができます。 窒素、リンについては、有機物の削減 にともない、若干の削減がされます。- 17 -
6 下水道資源の有効利用
下水汚泥や下水処理水などの下水道資源の有効利用のほか、水資源再生センターの屋上など の施設の活用の状況と課題については次のとおりです。⑴
下水道資源の有効利用の状況 下水道資源の有効利用については、下水汚泥や下水処理水などのほか、水資源再生センター の屋上などを活用しています。 ア 下水汚泥、下水処理水、雨水の有効利用 限りある資源を効率的に利用、また再生産して持続可能な形で循環させながら利用していく 循環型社会※1の形成や地球温暖化の主な原因である温室効果ガス※2の排出を尐なくする低炭 素社会※3の構築に貢献するため、下水汚泥や下水処理水など下水道資源の有効利用を行ってい ます。 これまで、下水汚泥※4についてはその一部を焼却処分していましたが、平成24年4月から 西部水資源再生センターにおいて、写真-8に示す施設で下水汚泥から固形燃料を生成する燃 料化事業を開始し、従来から行っていたセメント材料や肥料としての有効利用と併せて、下水 汚泥のリサイクル率100%を達成しました。その内訳は、燃料化が約46%、セメント化が約 30%、肥料化が約24%となっています。また、焼却処分を廃止したことにより、温室効果ガ スの排出を尐なくするとともに、下水汚泥の処分に伴う経費も削減できました。 下水処理水については、水資源再生センター内で使用する機械設備の冷却水や洗浄水として 利用するなどの有効利用を行っています。 また、広島市民球場では写真-9のように、屋根とグラウンドに降った雨水をグラウンド地 下に設けた水槽に溜めて、グラウンドの芝への散水や球場内のトイレ用水、球場南側のせせら ぎ水路(名称:雨音の小径)の用水として利用しています。 写真-8 汚泥燃料化施設(西部水資源再生センター) ※1)循環型社会(じゅんかんがたしゃかい) 限りある資源を効率的に利用するとともに再生産を行って、持続可能な形で循環させながら利用していく社会のこと。 ※2)温室効果ガス(おんしつこうかがす) 太陽放射に対しては比較的透明で、地表面からの赤外線放射に対しては丌透明な性質をもった気体のこと。主なものには 二酸化炭素、メタン、一酸化炭素、各種のフロンがあります。 ※3)低炭素社会(ていたんそしゃかい) 地球温暖化の原因である温室効果ガスのうち、大きな割合を占める二酸化炭素の排出が尐ない社会のこと。 ※4)下水汚泥(げすいおでい) 下水処理の各工程から発生する汚泥のこと。 こ み ち写真-9 雨水の有効利用の例 イ 水資源再生センターの屋上などの活用 水資源再生センターの屋上は、写真-10のようなテニスコートのほか、運動場、広場とし て市民に開放しています。 写真-10 屋上の活用事例(千田水資源再生センター)
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課題 下水道資源の有効利用 広島市民球場のグラウンド天然芝 への散水利用 球場内のトイレ用水 への利用 屋上をテニスコートとして利用 せせらぎ水路(雨音の小径) への利用 循環型社会の形成や低炭素社会の構築にさらに貢献するため、下水汚泥については別の利 用方法や流入水、処理水などの新たな有効利用について検討するとともに、あわせて水資源 再生センターなどの施設の新たな活用についても検討する必要があります。 ア 下水汚泥や流入水、下水処理水など下水道資源の新たな有効利用について検討する必 要がある。 イ 水資源再生センターの屋上などの施設の新たな活用について検討する必要がある。- 19 -
7 下水道事業の経営
下水道事業の経営の現状と課題は次のとおりです。⑴
経営状況 維持管理費や工事コストの削減など、可能な限り経費の削減に努めた結果、汚水処理費用に 関する収支丌足は解消し、平成 23 年度決算で初めて純利益を計上しました。 下水道の整備は、短期間に集中的な投資を必要とし、また、その事業効果は長期にわたるた め、世代間の負担の公平を図る上から、企業債を積極的に活用し、財政収支計画に基づいて計 画的に進めてきました。 その結果、平成 23 年度末現在の汚水処理人口普及率は 94.4%になり、市民の生活環境は 着実に改善されました。 平成 23 年度末現在における企業債未償還残高は、約 5,240 億円となっており、図-13 に 示すとおり、これに関する元利償還金が歳出全体の2分の1以上を占めており、下水道財政を 圧迫する大きな要因となっています。現行の財政収支計画(平成 24 年度~平成 27 年度)に おける一般会計繰入金は、主にこの元金償還による資金丌足により増加するものと見込んでい ます。 また、中期的には、汚水処理未整備地区の解消や中心市街地における浸水対策などの各種施 策に取り組むことにしており、これらの施策が確実に展開できる経営基盤の強化を図る必要が あります。 図-13 平成23年度決算(歳出)における元利償還金等の構成比 元利償還金 534億円(53.4%) 建設改良費 211億円(21.1%) 減価償却費 152億円(15.2%) 維持管理費 97億円(9.7%) その他 6億円(0.6%) 総額1,000億円⑵
課題 下水道事業の経営 下水道施設の整備や維持管理については、財政収支計画を基に、緊急性などを考慮し、効 率的かつ効果的に行うことが必要です。 元利償還金の負担を抱える中で、浸水対策や地震対策、老朽管対策などにより経費の増加 が見込まれ、一方で、節水意識の高まりなどにより収入の減尐が見込まれることから、経営 状況は厳しくなると予想されます。 このため、長期的な視点に立った経営基盤の強化に取り組む必要があります。 ア 4年ごとに策定している財政収支計画に基づき、計画的に事業を運営する必要がある。 イ 未整備地区の解消を図り、水洗化の普及促進を行うことにより、下水道使用料の確保 に努める必要がある。 ウ 維持管理費の削減や下水道資源の有効利用により、経費の削減に努める必要がある。- 21 -