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Lunascape 4 Lunascape () ARPANET HTML, http Tim Berners-Lee WorldWideWeb ( Nexus ) 1993 Marc Andreessen(Net

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特集●ソフトウェア論文

ウェブブラウザ「

Lunascape

近藤 秀和 村岡 洋一

タブにより効率的に切り替えられるウェブブラウザや,インターネットをより効率的に利用することができる豊富な 機能を持ったウェブブラウザが広く使われるようになっている.その背景には,インターネットとウェブブラウザ が進化してきた過程で,パーサの能力を中心にして進化してきたウェブブラウザの本質が変わりつつあることがあ る.本論文では,その変化に対応した新しい世代のウェブブラウザとして,我々が研究開発してきたウェブブラウザ 「Lunascape」の紹介とともに,今後のウェブブラウザの方向性について論ずる.

In recent years, the share of a web browser which has many functions — tab browsing, mouse gesture, etc. — to improve web surfine efficiency is getting increasing. By considerng about the reason, we can find that a essence of a web browser is changing from expression to function. In this thesis, we would like to introduce the web browser — Lunascape, which have been developed for five years, as a kind of next generation web browser, and discuss about the future of a web browser.

1 はじめに

ここ数年,Mosaicの登場以来長らく利用されてい たSDI(シングル・ドキュメント・インターフェース) 型ウェブブラウザなどに代わって,複数のブラウジン グ・ウインドウを切り替えて利用することのできる MDI(マルチ・ドキュメント・インターフェース)型 のウェブブラウザが普及してきている.これらのウェ ブブラウザは,今までのSDI型ウェブブラウザを第 1世代ブラウザと定義すれば,MDI型である第2世 代ブラウザはタブという概念をもって複数ウェブサイ トを切り替えて閲覧することが容易にできる機能1を 搭載してるほか,ウェブ閲覧をより快適に,効率よく する便利な機能を数多く搭載していることが大きな 特徴である.例えば,ポップアップ広告を抑止し,余 計な広告からユーザを守る「ポップアップ・ブロック 機能」,複数の検索エンジンがあらかじめ登録され,

Web Browser Lunascape.

Hidekazu Kondo,Yoichi Muraoka, 早稲田大学大学院理 工学研究科情報・ネットワーク専攻, Dept. of Informa-tion and Computer Science, Waseda University. コンピュータソフトウェア, Vol.24, No.4 (2007), pp.139–152. [ソフトウェア論文] 2007 年 1 月 22 日受付. ツールバーエリアにある文字入力ボックスから直接 検索結果ページに飛ぶことができる「検索バー機能」, ツールバーの戻る,進むなどのボタンを押下すること なく,マウスの動きだけでブラウザ操作を可能にする 「マウスジェスチャ機能」など,ブラウザによっては 100種類以上の機能を搭載しているものもある. インターネット白書2007によると, 日本における タブ型ウェブブラウザのシェアは,Firefox Windows 版が8.4%, Opera Windows版が2.6%となっており, この2つを合わせただけでもPCからのインターネッ ト利用者人口6826.7万人2の中で1割を越えてきて いる.最も普及が進んでいるFirefoxのシェアは,登 場以前からタブ型ウェブブラウザが普及していた日 本でこそ8.4%にとどまるが,アメリカでは2006年 段階で10%を超え,ドイツなどでは2005年段階で 22.58%を超えている3. 我々が5年間研究し,開発してきたウェブブラウ ザLunascape[1]も,同様のタブ型によるウインドウ †1 TDI タブドキュメント・インターフェースとも言う. †2 日本インターネット人口の中から携帯電話・PHS の みの利用を引いた数字. †3 http://www.websidestory.com より.

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切り替え機能を持ち,ウェブサーフィンを快適にする 100種類以上の機能をもったタブ型ウェブブラウザで あり,様々な機能によるウェブサーフィンの効率化を 実践してきた.また日本国内におけるユーザ数は68 万人4と,そのシェアを広げてきた. 本論文では,第2章にて現在までのブラウザの歴史 を振り返り,そして第3章にて第2世代ブラウザとし て我々が開発してきたウェブブラウザ「Lunascape」 の主要機能の実装を解説し,第4章にてLunascape の開発スタイルを解説,第6章で今後のウェブブラ ウザの未来について予測を行う.

2 ブラウザの歴史

ウェブブラウザ発展の歴史をたどってみると,ウェ ブブラウザの機能は,インターネット,そしてウェブ に求められている機能と密接に関連してることがわ かる.そこで本章では,ウェブブラウザの現状と今後 の未来をより深く見通すために,まずはウェブとウェ ブブラウザがどのような相関関係を持って進化してき たかを示す. 2. 1 ブラウザの誕生 インターネットの歴史は,1969年,冷戦のさなか, 軍事的攻撃(核攻撃)を受けても維持できる通信網の 研究の成果から「ARPANET」が米国で開発された ことで始まった.その後,1990年∼1991年にかけ て,HTML, httpなどを発明したTim Berners-Lee が世界初のウェブブラウザ「WorldWideWeb」(後に 「Nexus」と呼称)を開発したことで,ウェブブラウザ の歴史が始まった. 当時はテキストだけしか扱えなかったウェブブラウ ザであるが,1993年にMarc Andreessen(Netscape Communicationsのco-Founder)が,初めて画像を 扱えるウェブブラウザ「Mosaic」を開発,ウェブは 画像という表現力を持つことが出来るようになった. とはいえ,当時のウェブ情報が主にコンピュータ・ サイエンスに関する学術的な情報を中心としていた ため,ウェブは画像を扱えるようにはなったもののブ †4 2007 年 7 月,インターネット白書 2007 より. ラウザの利用者が必要とするウェブページの数もまだ まだ少なかった.そのため,ウェブブラウザに求めら れる機能も少なく,当時はまだ,「戻る」,「進む」,「更 新」,「停止」,「ホーム」に「アドレスバー」,そして 「ブックマーク」という現在からすると非常にシンプ ルな構成であり,また利用者はブックマーク機能の利 用だけで,インターネット上の情報を整理することが 出来た. 2. 2 Netscapeの登場

次の変化は,1994年,Mosaicの次にMark An-dreesen等が中心となって開発したNetscape Navi-gatorが登場したことで始まった.Mark Andreesen

は同時にNetscape Communication社を設立,ウェ ブブラウザの世界にビジネスの概念を持ち込み,そ れがインターネットとウェブ,そしてウェブブラウザ の普及を大きく加速させた.またWindows 95の登 場とともに,その普及はさらに加速し,その頃にはイ ンターネットが商用に開放されていたこともあって, ウェブサイトの数も爆発的に増えていった.さらに, インターネット上でのビジネスで必須であるSSLな どがNetscape社によって発明され,ブラウザに搭載 され普及をしていった. 1995 年 8 月 9 日 (米 国 時 間),NASDAQ に Netscape社が上場すると,世界中の起業家たちが インターネットの世界に次々と参加し,ネットバブル が生まれた.その結果,ウェブページの数はとても ブックマークなどでは管理しきれないほど飛躍的に増 大した. そのウェブページを再整理したのが,Yahoo!であっ た.Yahoo!はウェブ上の情報をディレクトリ型に人 手で整理し,一躍有名サイトとなった.Yahoo!が登 場して以降,ウェブブラウザ利用者の行動は,まず Yahoo!にアクセスし,情報を探す.そしてどうしても 取っておきたい情報を見つけた場合のみ,ブックマー クを行う,という行動パターンを取るようになった. 2. 3 ブラウザ競争時代 その頃,ウェブブラウザの世界では1つの大きな変 化があった.NetscapeがJavaの搭載を発表し,マ

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ルチプラットフォームでのアプリケーションの実現構 想を明らかにすると,Microsoft社が1995年, Spy-glass社からMosaicのライセンスを取得,Internet Explorerの開発を開始しNetscapeに対抗を始めた. この際Microsoft社はそのOSの独占力を生かして, Netscape社に対抗して無料でウェブブラウザを提供 するという戦略をとったため,当時主流であったウェ ブブラウザとその周辺ソフトウェアを有料で販売する ビジネスモデルは成立しなくなり,ブラウザというも のはフリー(無料)であるという流れがこの頃に完全 に定着した. そ の よ う な 競 争 の 中 で ,Internet Explorer と Netscape Navigator は お互 いの シェア を 確保 する ために激しい開発競争を繰り広げ,ブラウザは急速に 進化していった.当時のウェブブラウザはマルチメ ディア機能をどれだけサポートしているかなど,その 表現力の高さがそのブラウザの大きな特徴となって いたため,その進化の方向性は主にそのレンダリン グエンジン表現力を磨くことが中心であった.CSS のサポート,DHTML, Javascriptの強化など,現在 Ajaxなどで再び脚光をあび始めている技術の基礎の ほとんどは,この頃に作られた. しかしながら最終的には,当初は善戦していた Netscapeも,無料でブラウザ・ビジネスをするすべを 見つける事が出来ずに企業としての体力を失い,次第 にシェアを落としていった.2000年を過ぎた頃には, Internet Explorerのシェアは9割以上に達し,シェ ア争いがInternet Explorerの勝利におわると,競争 による進化が必要なくなったウェブブラウザはその進 化のスピードを急速に弱めていった. その頃インターネットの世界では,さらにウェブ ページの数は増え続け情報爆発とよばれるような状 況になりつつあった.当初は人手でのウェブ情報整理 に成功していたYahoo!も,ウェブページの爆発的な 増大に対して人手では整理能力が追いつかなくなって いた. そこで,人手ではない方法でウェブ情報の整理を始 めたのがGoogleであった.Googleは,Yahoo!とは 異なる手法,つまりロボット型検索エンジンにPage Rankアルゴリズムを搭載し,その検索精度を突き詰 めることで,新たに検索という手法でウェブ情報を再 整理することに成功した.また各社もこれに追随した ため,この事がウェブブラウザの利用者のウェブサー フィンのスタイルをブックマーク型やハイパーリンク クリック型から検索型へと大きく変革させることと なった. 2. 4 タブ型ブラウザの登場 タブ機能をおそらく世界で始めて搭載したウェブブ ラウザは,1994年に登場した,BookLink Technolo-giesのInternetWorksである.そして世の中にはじ めて広く使われるようになったタブ型ウェブブラウ ザは,1997年に登場したNetcaptorというウェブブ ラウザであった.Netcaptorは,IEコンポーネント ブラウザと呼ばれる,Internet Explorerのレンダリ ングエンジンであるTridentエンジンを利用したウェ ブブラウザである.このようなTridentエンジンを 利用したウェブブラウザの開発が実現した背景には,

NetscapeとInternet Explorerのブラウザ競争があ る.Netscapeとの競争の過程で,Microsoft 社はブ ラウザはOS の一部であると主張し, それに従い

Microsoft 社がInternet Explorerのほとんどの機能 をOS上でCOM を利用して開放した.これにより 開発者が自由にInternet Explorerのレンダリングエ ンジンを利用して独自ウェブブラウザを作成できるよ うになり,Trident系のウェブブラウザが数多く作ら れる結果となった. その他のウェブブラウザでは,IBrowser(Amiga用) が1999年にタブ機能を搭載した.またメジャーな ブラウザではOperaが2000年6月にリリースした バージョン4.0にてはじめてタブに似た概念のイン ターフェースを搭載している.Mozillaは2001年, Multizillaエクステンションで初めてその概念を実現 し,2003年にはKDEを作成しているオープンソー ス団体がKHTMLという独自のレンダリングエンジ ンを採用したKonquerorを作成,またApple社も KHTMLベースのレンダリングエンジンを採用した MacOS用ブラウザSafariをリリース,そして2006

年にはついにInternet ExplorerにもVer7.0にてタ ブ機能が搭載された.日本でも,この頃に主に個人の

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フリーウェア作者を中心として,Dona Web Browser, Donut, Moon Browser, MdiBrowser, Lunascape[1], Sleipnirなど,10種類以上のウェブブラウザが作ら れた. このように,現在ではほぼすべてのウェブブラウザ がタブ型を採用するに至っている.その大きな理由と しては,先ほど述べたように人々のウェブサーフィン のスタイルが,ブックマークを起点にハイパーリンク をクリックしネットをたどってゆくスタイルから,ま ず検索をしてウェブサーフィンをスタートとし,さら に増え続ける情報を一度に表示するためにより多くの ウェブサイトを同時に開くスタイルに使い方が変革し た影響が最も大きいと考えられる. つまりこの頃に は,ウェブブラウザの進化の方向性は,表現力を磨く ことではなく,いかに効率よくウェブの情報を閲覧・ 収集することができるかにシフトを始めたと言える. 例えば,当時数多く見られたポップアップ広告に対応 するための「ポップアップブロック機能」,情報閲覧 をより快適にする「マウスジェスチャ」など,その他 に搭載された機能に注目してみると,ほとんどの機能 は主に表現力ではなく,ウェブサーフィンの効率性に 重点を置いていることが大きな特徴となっている. 我々はこれらのウェブ閲覧の効率性に注目したウェ ブブラウザを,第二世代ウェブブラウザと呼んでいる. 2. 5 第二世代ウェブブラウザの普及 近年,これら第二世代ウェブブラウザで最も普及を したのは,2004年11月に登場したFirefoxである. 当初Pohenixと呼ばれていた頃にはそれほど注目を 集めてはいなかったが,Firefoxがタブ型を採用する とあっという間に世界シェアの1割を占めるようなブ ラウザに成長した. その爆発的な普及を後押ししたのは,タブ型ウェブ ブラウザであったという事も大きかったが,Internet Explorerに敗れたNetscapeや,Mozillaの系列であ るというブランドから大きな注目を集めたことや,そ の柔軟な拡張性の高さ,そして拡張機能の作りやすさ が従来のウェブブラウザとは一線を画していたため, ユーザ参加型でブラウザを拡張してゆくという当時 ウェブの世界で始まりつつあったマッシュアップを中 心としたWeb2.0の概念にマッチした事も,非常に大 きい要因として考えられる. そして長らくブラウザという観点からInternet Ex-plorerの開発にあまり力を注いでこなかったMicrosoft 社も,ついにタブ型に対応したInternet Explorer7の 開発に着手,リリースした.さらに2007年6月には

Apple社がMacOS専用であったSafariをWindows

に対応させ,Safari for Windowsを発表,ウェブブ ラウザの世界は新たな進化と競争の時代を迎えた.

3 ウェブブラウザ Lunascape

Lunascape[1]は,2001年8月にVer0.90の最初の バージョンが国内で公開さて以降,現在までに800万 回以上のダウンロードが行われ,アクティブなユーザ として68万人のユーザが日本国内に存在するウェブ ブラウザである. Lunascapeは当初からタブ型ウェブブラウザとし て発表され,その後数多くのウェブサーフィンを効率 化する機能を取り入れ成長した第二世代ウェブブラウ ザである.また,ユーザからのフィードバックを元に 非常に速いスピードで機能,ユーザビリティの改善を しながら細かいリリースを繰り返し,品質と機能を改 善してゆく開発手法をベースとして開発を続けてい る.さらに,2004年8月には日本製ウェブブラウザ としては初めて会社を設立し,その普及活動を行って いる. Lunascapeは全部で100種類以上の機能を搭載し ているが,本章では,Lunascapeが実装している機 能のうち,特に主要な機能をいくつか解説し,次章に てその特徴的な開発手法について解説する. 3. 1 タブ機能 タブ機能は,今日のウェブブラウザに欠かせない といっても過言ではないほど重要な機能である. Lu-nascapeでは,タブにまつわる機能だけでも数十項 目5もの機能を搭載している. †5 多段タブ,タブサイズ可変,固定選択可能,ホイール による切り替え (タブ上以外でも可能), タブ上の閉じ るボタン,タブ追加ボタン,タブの表示エンジン切 り替え,すべてのタブを閉じる,右側のタブを閉じ る,左側のタブを閉じる,お気に入りへ追加,Drag

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本論文ですべての機能について詳細に解説するこ とは困難であるので,特にLunascape[1]に搭載され ているタブ機能のうち表現と切り替えにおける機能 である 1. 多段タブ 2. タブサイズ固定 3. マウスホイールによるタブ切り替え 4. タブを閉じるための×ボタン について解説する. 3. 1. 1 多段タブ タブ表現としての一般的な問題として,タブが増 えてゆき,横幅を超えたときに,どのようにタブを表 現するかが問題となる.現在世の中に出ているタブ 型ウェブブラウザにはInternet Explorer[2]や Fire-fox[3]にて採用されているような1段方式のものと, Lunascapeで採用しているような多段タブ方式のも のがある.1段方式のものでは,図1のようにタブの 大きさを小さくして詰めるか,表示しきれなくなると 横方向にスクロールをするようになっているが,多段 式では,図2のようにタブを複数段にすることで表 現する. 多段方式にも,Windows標準と同様の方式と,タ ブの位置が移動しないタブ固定方式が存在する. Win-dows標準のタブ方式では,タブが2段のとき,上段 のタブをクリックすると,その段が下段に移動し,常 に選択されているタブが下にある状態となるが,ユー ザが選択していたタブを見失ってしまう可能性があ る.逆にタブ位置が移動しないタブ固定方式は,タブ 位置が選択直後に変わる事がないため,見失うリスク は低いが,Windows標準の動きではないため逆に戸 惑う場合もある. 一般的に,ユーザビリティはユーザのターゲット層 とその熟練度によって論じる必要があり,また最終的 にはユーザへのトレーニングと慣れが大きく影響す & Drop でお気に入りに追加,表示されているタブの 今後の表示禁止,自動更新 (カスタム設定可能), タブ ごとの画像,Javascript,ActiveX,Java,Midi の許可 禁止,タブごとの文字サイズの変更,シフトロック, ナビゲートロック機能,アクティブタブ・非アクティ ブタブのフォント背景カラーの変更,タブの上下選択, タイトルバー表示文字数制限など. 図 1 タブ 1 段方式 図 2 タブ多段方式 図 3 変動タブ方式 るため,すべてのターゲットにとって最適なユーザ ビリティが1つの形態であることはありえない.そ こでLunascapeでは,ユーザターゲットをインター ネットに詳しすぎないが,インターネットを常用する 層,つまりアーリーマジョリティからアーリーアダプ ターの中間である層とし,タブはWindowsに標準搭 載されているタブと同様の動きをすることが望ましい との観点,またユーザからのフィードバックに基づい て,Windows標準のタブと同様の動作をする多段方 式を採用している.将来的には,年齢やインターネッ トへの熟練度に応じて,タブの大きさや表現方法が変 化する事が望ましいと考えている.なお,Lunascape では,1段方式,多段方式のどちらでも設定で選択す る事が出来る. 3. 1. 2 タブサイズ固定 タブのサイズを常に固定しておく方式と,タブが増 えるにしたがってタブの大きさを変更するタブ幅変動 方式が存在する(図3).タブ幅変動方式では,タブを たくさん1つの段に表示する事が出来る反面,タブ のサイズが変わることによるわかりにくさ,タブが小 さくなることによる使いにくさが発生する.タブ固定 方式はそのような問題は発生しないが,画面に入るタ ブの数が前者よりも少ないという問題がある. ここで,タブを利用する人々のタブ利用方法を観察 すると,大きく分けて3つのタイプに分かれること

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がわかる. 1. ウェブサイトを閲覧し終わったら,タブを消す人 2. とにかくもう表示できないくらい多くのタブを 出してから,すべて消す人 3. 仕事などで利用する必要なタブを常に出してお き消すことはない人 正確な統計を取ったわけではないが,ヒヤリングや 観察によると1のタイプが最も多く,そのような人で は10個以上のタブを同時に出して作業する人は少な い.そこで,Lunascapeでは10個までのタブをわか りやすく表現し,さらに識別や選択がしやすい大きさ を固定で持っていることがもっとも使いやすいと判断 し,タブ幅150ピクセルの固定タブをデフォルトで 採用している.これは,タブが5個表示された状態 で750ピクセルであり,800*600のディスプレイ や1024*768のディスプレイでサイドバーにお気に 入りを表示した時にも5*2段で10個のタブをわか りやすく表示できることを基準としている. また,10個以上のタブを出したい人でも使えるよ う,タブの幅は設定にて自由に変えられるようになっ ている.中には30個以上のタブをだして作業してい るような人も見受けられるが,そのような人はたいて いタブ幅を50ピクセルほどに小さくして利用してい るようである. 他のウェブブラウザでは,例えばFirefoxでは当 初タブの幅をどうするかの激しい議論があったよう だが,厳密なユーザビリティテストの統計を元に現 在のタブの幅が決定されたようである.デフォルト のタブの幅は250ピクセル(最小140ピクセル)と, Lunascapeに比べて非常に広いが,これは対象とす るユーザ層が異なることと,タブ可変方式を取ってい ることが要因であると思われる. 3. 1. 3 マウスホイールによるタブ切り替え 本機能は,マウスポインタがタブの上にあるときに マウスのホイールを回転させると,タブが切り替わ る機能である.例えば,下にマウスホイールを回転さ せれば,現在選択されているタブの右のタブが選択 されるといった具合である.この機能により,タブを いちいちクリックしなくてもタブを切り替えること が出来るため,ユーザの負担を減らすことが出来る. 図 4 タブ上の×ボタン

なお,Internet Explorer7, Firefoxなどでは同機能は まだ標準では採用されていない. Lunascapeでは同機能をサポートしているが,さ らにその考え方を一歩進めて,タブ以外の場所でもホ イールを回転させてタブを切り替える事が出来る機 能を搭載した.この機能により,タブの上までマウス を移動しなくてすむことから,よりマウスポインタの 移動が少なくて済み,利用者にとってはさらに効率よ くウェブサーフィンを行うことが出来る. 3. 1. 4 タブを閉じるための×ボタン タブ上にマウスを持ってゆくと,×ボタンが表示さ れ(図4),それをクリックすればそのタブを閉じる事 が出来る.×ボタンの表示方式としては,すべての タブに表示されている方式と,アクティブなタブの みに表示されている方式,マウスオーバーしたタブ に表示される方式がある.現在,Firefox[3], Internet Explorer7[2]が同様の方式を採用したことから,ほ とんどのタブ型ブラウザで同様の方式が採用されて いる. なお,当初Lunascapeではすべてのタブに×ボタ ンを表示する方式を選択していたが,タブを選択しよ うと考えて誤ってタブを閉じてしまう事例がユーザか ら数多く報告されたため,アクティブなタブのみ表示 する方式に切り替えている. さらにLunascapeでは,ツールバー上に「タブを すべて閉じる」ボタン,「アクティブなタブを残して すべて閉じる」ボタン,「アクティブなタブのみを閉 じる」ボタンを搭載し,タブの閉じ方に多様性をあた え,よりタブのユーザビリティを向上させている. 3. 2 検索バー機能 検索バーの概念は,Lunascapeが2001年に Lu-nascapeがメタ検索機能付き検索バーとしては初め て搭載して以来,世界中のブラウザで採用されてい る.検索バーの仕様で重要なのが,検索エンジンの選

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図 5 コンボ方式 図 6 ツリー方式 図 7 メニュー方式と検索ボタン 択のしやすさ,そして検索のしやすさである.当初 Lunascapeの検索バーは,図5のようなコンボボッ クス選択型であったが,図6のようなツリー選択型 を経て,図7のようなコンテキストメニュー選択型 に変化,最新バージョンでは検索ボタン機能を搭載し ている.世界的にも,コンテキストメニュー型が主流 となりつつある. 3. 3 マウスジェスチャ機能 マウスジェスチャ機能とは,マウスの右ボタンを押 しながらマウスである決まった動作をし,右ボタン を離すと対応するコマンドが実行される機能である. 図 8 マウスジェスチャ設定 例えば,左の動作に戻る,右の動作に進むの機能を割 り当てれば,いちいちツールバーまでマウスポインタ を移動しなくても利用者はウェブサイトをまるで紙を めくる感覚でウェブサーフィンする事が出来るように なる. 初めてこの機能を搭載したウェブブラウザはOpera であったが,Lunascapeではさらに改良を加え,あ らゆる機能を自分の好きなジェスチャに割り当てられ るようにしている.この機能により,利用者は非常に 柔軟にカスタマイズをすることが可能となり,具体的 には図8のような設定画面を使って,利用者は自分 の好きな動作に好きな機能を割り当てる事が出来る.

Firefox[3]やInternet Explorer[2]では,既定の状 態ではマウスジェスチャを利用することは出来ないが, 拡張機能を導入することで利用することも出来る. 3. 4 レンダリングエンジン切り替え機能 Lunacsapeの大きな特徴の1つが,Tridentエン ジンを利用しているInternet Explorer互換ウェブブ ラウザであることである.Microsoft 社の方針によ り,Internet Explorer4以降においては,レンダリン グエンジンを含めInternet Explorerの機能のほとん どがCOM経由で公開されているため,その機能を 利用してウェブブラウザのパースに関する主要機能 をInternet Explorerに任せる事が出来る.Internet Explorerとの互換性が高いため,ユーザは今まで利 用していたウェブサイトをそのままほぼ何の問題もな

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く利用できるというメリットがある.

さらにLunascapeは,Tridentエンジンのみなら ず,Netscape, Mozilla, Firefoxなどで主要エンジン として積まれているGeckoエンジンも利用する事が 可能なダブルエンジン搭載ウェブブラウザとなってい る.利用者は,ワンクリックでレンダリング・エンジ ンの切り替えを行うことが出来,例えばウェブサイト 制作者などにとっては1つのブラウザで両方のレン ダリングエンジンで正常に表示できるかどうかを試す ことが可能で,また片方のエンジンにてセキュリティ ホールが発見されたような場合でも,もう片方のエン ジンにてウェブサーフィンをすればゼロデイ攻撃を避 ける事が出来るため,よりセキュアであると言える. また,我々はレンダリングエンジンの開発をしない ことを開発ポリシーとしている.我々がレンダリング エンジンの開発を放棄した理由は,レンダリングエ ンジンの開発競争はすでに過去のものとなり,今後の ウェブブラウザの開発の方向性は,利用者の使い勝手 の向上,インターネット閲覧効率の向上,そしてユー ザエクスペリエンスの向上にあると考えた為である. また,すでにInternet Explorerが広く普及し,その レンダリングエンジンの不具合も含めて広くウェブサ イトが実装されてしまっている現状を考慮すると,レ ンダリングエンジンを独自に開発する意味はあまりな い.レンダリングエンジンを他に依存することで開発 工数を削減し,開発リソースをユーザビリティおよび 閲覧効率向上に特化することができると考えている. 他にもエンジンを切り替えることが出来るウェブブ ラウザも存在するが,そのほとんどがメインのエンジ ン以外では機能が制限され,両エンジンを常用できる ものは現段階ではない. 3. 5 Internet Explorerプ ラグ イン のホ スト 機能 Internet Explorer以外のウェブブラウザが普及し てきたとはいえ,ウェブブラウザの世界では,まだま だInternet Explorerの占めるシェアは大きい.また, 過去ほぼ独占状態であったこともあり,その拡張機能 (プラグイン)も数多く開発されている.その内訳は主 に,ツールバー,サイドバー, ActiveXコントロール, 図 9 IE プラグインのサポート BHOと呼ばれるトリガコンポーネントである.当然 この拡張機能をInternet Explorer以外のウェブブラ ウザから利用することが出来ればより便利であるが, Internet Explorer以外のウェブブラウザにおいては, ツールバー,サイドバーの拡張機能に対応すること は従来難しかった.なぜならば,従来型のInternet Explorer用拡張機能はInternet ExplorerがSDI(シ ングル・ドキュメント・インターフェース)であること を前提にしており,タブとなりMDI(マルチ・ドキュ メント・インターフェース)となって複数のブラウザ ウインドウがあることを想定していない為である. Lunascapeでは独自の手法を用いて,このInternet Explorer用ツールバー及びサイドバープラグインも サポートしている(図9).このため,Lunascapeで は膨大なInternet Explorer用のプラグインをそのま ま利用6する事が可能であり,Internet Explorerの 持つ拡張性をそのまま持つウェブブラウザとなって いる. なお,Internet Explorer7では,すべてのタブに1 対1でツールバーをホストすることでその問題を解決 しているようであるが,その方式ではタブを変えると 入力していた文字が消えてしまうなどの問題がある. 3. 6 RSSリーダ機能 Lunascapeは,RSSリーダ機能を搭載している. ただし,通常のRSSリーダと違い,ブラウザとして ウェブサーフィンする上でどのようなUIが最適であ るかを吟味した作りとなっている. Lunascapeではお気に入りとRSSリーダが完全に 統合されており,ダイナミックブックマークと呼ばれ ている.お気に入りと完全に統合することで,利用 †6 一部ツールバーを除く.

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図 10 Lunascape の RSS 表示 図 11 Firefox の RSS 表示 者は通常のウェブサーフィンの過程でお気に入りを使 うのと同様の感覚でRSSによるブックマークを利用 する事が出来る.同様の機能はFirefoxでは,ライブ ブックマークと呼ばれて存在しているが,Lunascape とFirefoxではその表示方法には図10,図11のよう な違いがある.これは,ツリー型ではフォルダをク リックするたびにツリーの状態が変わり,いくつもの RSSを順番にクリックしてゆく過程にロスが生じる が,それを防ぐためにLunascapeではポップアップ 表示をすることで解決している. さらに,Lunascapeには登録してあるRSSフィー ドの中身をすべてマージして,時系列に並び替えて見 やすく表示するRSSビューモード(図12)がある.こ の機能により,特にRSSというものを知らない初心 者であっても,インターネット上の様々なニュースや ブログ情報をすばやく簡単に手に入れる事が出来る. 図 12 RSS View 図 13 デザイン機能 3. 7 フルデザイン機能 Lunascapeでは,ブラウザデザイン(図13)もウェ ブサーフィンにとって非常に重要なファクタだと考え ている.直感的に理解しやすいデザインは,ユーザビ リティを向上させ,さらにツールの利用を楽しくして くれる. 他のブラウザにはない特徴として,非常に柔軟性の 高いスキン機能7を搭載しており,フレームから背景 まで,あらゆる部分のデザインが可能となっており, ユーザがデザイン可能なタブブラウザとしては,現在 の所これ以上にデザインが可能なウェブブラウザは ない. とはいえ,仕組みがあってもデザインができあがる 訳ではないため,ユーザ参加を促すためにブラウザデ ザインコンテストを開催するなど,マーケティング面 †7 ユーザが自由にデザインを作成できる機能.

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図 14 livedoor TOVIRA 図 15 切り替えボタン での工夫も凝らしている. 3. 8 スタイル機能 近年のウェブブラウザが多機能化した結果,利用者 にとっては多機能すぎてブラウザの機能を見つけられ ないという問題が起こり始めている.また多くの拡張 機能をブラウザに入れれば,その傾向はより顕著と なる. さらにウェブサイトも,従来のように情報を表示 するだけではなく,FlashやAjaxなどの普及により, ツールとしてより多くの機能を持ち始めている.最近 ではOS上のクライアント・アプリケーションで実現 していたような表計算のような比較的リッチなアプ リケーションまで,ウェブ上に存在するようになって きている.その結果として,インターネットの上級者 と一般利用者の間に機能の機会発見に関する大きな デジタルデバイドが生まれ始めており,上級者ではな い利用者にとっては,自力でインターネット上の様々 な機能を探し出すこと自体が難しくなりつつある. そこで, 1. ブラウザの機能爆発によるブラウザの複雑性の 回避 2. インターネットの機能爆発による機能発見機会 喪失の回避 の2つの問題を解決するために,Lunascapeでは 様々なブラウザ・インターネット機能をボタン1つで 切り替えることが可能な,スタイル機能を開発した. スタイル機能は,「スタイル」という概念の下,ブ ラウザの様々な機能をワンクリックで切り替えられる ことができる機能である.現在ライブドア社からリ リースしているLunascapeベースのニュースリーダ 型ウェブブラウザ「TOVIRA」(図14),Lunascape の執筆時点での最新バージョン「Lunascape 4.3.0」 (図15)にて,その概念を実現したものが実装されて いる. スタイル機能を搭載したブラウザは,様々な機能の 設定が切り替え可能である.この機能により,利用者 は多機能に迷うことなく,目的に応じて最適な機能を 容易に見つけることが出来るようになる.

4 開発スタイル

Lunascapeの開発スタイルは,ユーザ参加型βテ ストモデルによるスパイラル開発モデルとなってい る.ある程度完成した段階でユーザにβ版を公開し, 不具合に関する報告,新機能に関する意見などを得な がら1月ほどの間細かいリリースを繰り返し,最終 的に正式版を公開する.βテスタとして,5000人か ら10000人ほどに毎回参加していただいている.ア ジャイル開発モデルであるとも言えるが,そのイテ レーション期間の中にテスターとして数多くのユーザ が参加している事が大きな特徴である. 本章では,その詳細について述べる. 4. 1 ユーザからの報告 ユーザからの報告は,すべて内部のバグトラッキン グシステムに蓄積され,週1回のミーティングの際 にプライオリティがつけられ,マネージャがタスクを 開発者に割り振り,タスク単位で順番に処理される. バグトラッキングシステム自体を公開する案も存在 したが,不具合のプライオリティ付けがユーザ主導に なり,またヘビーユーザの声が大きくなり通常のユー ザの声が埋もれてしまう危険性があったため,公開す るバグトラッキングシステムと,内部的なバグトラッ キングシステムを明確に分離することにした経緯が

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ある. 4. 2 要望からのタスク化  ブラウザに搭載される機能も,ユーザの報告が主 になってタスク化されてゆく.これにより,利用者の 要望と,開発側の要望の乖離を未然に防ぐ事が可能 となる.ただし,声の大きいユーザは往々にしてイン ターネットのヘビーユーザであることも多い事から, インターネットからの情報収集だけではなくターゲッ トを絞った平均的なヒアリングやアンケートによる情 報収集も欠かさないで行う.また,ブラウザのアンイ ンストール時に,アンインストールした理由を問うア ンケートを行っており,その数値に基づいて改善を開 発チームにたいして要求する. 4. 3 リリース前のテスト リリース前には,OSのクラッシュ,ブラウザ利用 不能,設定の消失の3つを致命的不具合とし,β版 リリースも含めリリース前には,テスト項目に従った 十分な内部テストを行う.それ以外の結合テストは, スパイラル開発スピードを維持するために軽くしか行 わない.万が一致命的な不具合が起こったときには, すべての開発チームがほかのあらゆるタスクを休止 し,緊急的に不具合の対策に臨むことで,被害の拡大 を最小限に抑える. 4. 4 リリース後 正式に世の中に対してリリースを行った後は,1週 間を監視期間とし,掲示板,ブログなどの情報源で新 バージョンに対してどのようなことが言及されてい るかを調査する.もし致命的な不具合や,新しい機能 に対する強い不満などがあれば,すぐに改善の検討 を行う.上記のプロセスを繰り返すことにより,少人 数で,高品質かつ大規模アプリケーションの開発が可 能となる.100万人近い利用者に安定したウェブブラ ウザを届けながら,高速な開発スピードを保つには, 同モデルが必要不可欠である. この開発モデルは,もともとNetscape社が始めた モデルであるが,現在はMicrosoft社を初めとする 様々な会社でも,同様にユーザからのフィードバック を開発プロセスの一部に組み込む手法を採用してい る.ただし,Lunascape社のようにすべてのユーザ に公開するのではなく,公開するのは登録しているβ テスターのみとなっている会社も多い. 4. 5 事例 以下に,掲示板でのやりとりとそれが機能にフィー ドバックされた事例を紹介する. ティッカーを消さないで 1:Luna愛好者 投稿日時:2006/10/27 10:41:15 いつもルナさんにはお世話になっております. タブを全て閉じたとき,ティッカーは独りぼっ ちになるのが嫌みたいで,一緒に隠れてしま います.私は,一人ぼっちでもがんばって流 れているティッカーの姿を見たいです.どう か,ティッカーにがんばって仕事をするよう に伝えてください. 2:hide 投稿日時:2006/10/27 21:18:21 ありがとうございます.検討してみます. 3: ほ 投稿日時:2007/03/29 22:04:45 コレ出たとき,私も激しく首を縦に振りまし た.最近の更新でも搭載されてないようで… まだー!? って思ってます.どうぞ宜しくです. 4:mark@Lunascape 投稿日時:2007/04/05 23:05:27 ほさんご意見,ありがとうございます. 改めてティッカーについては配置について検 討いたします.今後とも,よろしくお願いい たします. そもそもニュースティッカーが消えるようにしたのは, ティッカーが消えないと背景のデザインが損なわれる

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という問題があるためである.Lunascapeではデザ インを重視しているため,機能よりもデザイン性を 取っていたが,上記のようなやり取りがあり,ユーザ からの要望が多いと判断したため,最新のバージョン 4.3.0ではすべてのタブを消してもティッカーが消え ないように改善を行った. しかし,このような改善を行うと必ずそれに反発し た意見がでる.この場合は,おそらく背景のデザイン に関するクレームがつくであろうことが予想される. 最終的には,ユーザの意見を元に,こちら側でどちら の意見が最も適切であるかを考慮し,さらにプロダク ト全体やマーケティング戦略を考慮しながら最終決定 する必要がある.

5 開発成果

2007年1月22日現在で,日本国内において数十 万人の利用者が存在する.また,ヤフー株式会社,ラ イブドア株式会社,トヨタ自動車株式会社,ウィルコ ム株式会社,カカクコム株式会社,富士通株式会社な ど,10社以上にLunascapeベースのウェブブラウザ をOEM供給している.また無料でウェブブラウザ を配布しながらも広告モデルを主として様々な方法を 駆使して収益を得て開発費用を回収するビジネスモ デルを確立している.

6 今後のウェブブラウザの展望

インターネットとウェブブラウザは,情報をより早 く伝えるための手段として発展してきたが,その歴史 を振り返ってみると,その関係は常に補完関係であっ た.つまり,現在のインターネットで起こっている問 題点や現象を分析すれば,次のウェブブラウザが何を するべきかという方向性が見えてくる. 過去インターネット利用者におけるウェブの利用 方法が文書の閲覧が中心であったときには,ウェブブ ラウザは表現力を磨く方向に進化していたが,路線 検索,英和辞典,高度な検索エンジンなどが登場し, ウェブが文書の集合だけではなく機能を持ち始める と,それに応じてウェブブラウザは検索バーやタブ機 能などを取得し,進化した. 現在,インターネットの世界では2004年にTim O’Reilly[27]が提唱した,Web2.0[27]の概念に近い 世界へとシフトしている.まだその変化は始まった ばかりで,利用者はインターネット上級者を中心と した人々であるが,今後はWeb2.0が興味深い技術か ら一般的な技術へとシフトするにともない,Web2.0 的コンテンツ8が爆発的に増加してゆくことになるだ ろう. さらにsalesforce.comのような,ビジネスにおい てもSaasと呼ばれるASP型アプリケーションへの 依存度が高くなっていることも見逃せない変化であ る.大きな企業の社内システムは既にほとんどがウェ ブブラウザベースに置き換わっており,クライアン ト・アプリケーションとしてのウェブブラウザの重要 性は日に日に高まっている. これらの変化の意味するところは,インターネット 自体がOS並の機能を持ち始めているばかりか,ツー ルとしても進化しつつあるということであり,ブラウ ザは単なる文書閲覧アプリケーションから,あらゆ る機能の統合されたリッチクライアント・アプリケー ション・インターフェースへと進化してゆかなければ ならないことを示している. もちろん,すべての機能がブラウザに統合される必 要もなく,Adobeが開発しているようなブラウザ非 依存のFlash技術を利用したアプリケーション・プ ラットフォームであるApolloのように,ブラウザと は独立して存在し,独自にインターネットへ接続して いるようなアプリケーションも数多くなってくるだろ う.しかしながら,Internet Explorerを複数立ち上 げることよりも,タブ型にしたほうが圧倒的に便利で あったことが示すように,統合インターフェースへの 需要もまた,増えることになると考えられる. また,ハードウェア,サービスの進化も見逃せない. 従来Apple社はPC, OS,そこに付随するアプリケー ションソフトウェアを製作し,すべてを独自プラット フォーム上のみで完結させることで非常に強い囲い 込みを行うことをビジネスモデルの中核に置くメー カーであったが,iPodの成功がそのビジネスモデル を大きく変化させた.iPodの爆発的なヒットで重要 †8 ここでは主にマッシュアップや CGM を指している.

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なことは,ハードウェアがよくてヒットしたのではな く,誰もがやろうとしていた音楽配信ビジネスをいち 早くサービスとして完璧な形で完成し,そこに必要不 可欠なハード(iPod)とソフト(iTune)を付属し,実 現した事である. この事実から推測すると,今後重要なのはサービス の囲い込みであって,ハードやソフトの囲い込みだけ でビジネスモデルを構築することが難しくなってくる と考えられる.もちろんサービスだけでは成功する はずはなく,それを利用するための非常に高いユーザ ビリティをもったハードウェア,そしてソフトウェア があってはじめてすべてのビジネスモデルが完成す るのであるが,逆にサービスなくしては未来はない, という時代に突入したのではないだろうか. 以上を考慮すると,インターネットに接続されたユ ビキタス端末における先進的なハードウェア機能と, ウェブブラウザにおけるCGM型ソフトウェア開発 を利用したインターネットのツールとしての進化,そ してそれらを統合しユーザの囲い込みを行う強力な サービスという,これら3つのポイントが複雑に絡み 合う状況がインターネットとウェブブラウザの未来で あり,今後のインターネットとウェブブラウザの研究 を進めるためには,それらの融合を予測し,さらにそ の先を考慮しながら研究・開発を進める必要があるだ ろう.

7 おわりに

本論文では,ウェブブラウザの今までの歴史ととも に,ウェブブラウザLunascapeを解説した.広く使 われるソフトウェアを開発するときには,そのジャン ルの持つ歴史・利用者の声,産業の動向,そして成果 が世の中に与えるインパクト(不具合も含めて)をよ く考慮しながら開発する必要がある. マッシュアップを中心としたWeb2.0がさらに進化 し,ウェブブラウザ拡張も進化してゆくとすると,今 後考えられることはWeb2.0的コンテンツの爆発と, それに対応するブラウザ拡張の爆発である.現実に Firefoxにおいては,インターネット上で公開されて いる拡張機能が多すぎて,初・中級者にとっては何を 入れたらよいのかわからないような状況が発生しつ つある.そのような状況になると,インターネット初 心者・中級者はもちろんのこと,上級者ですら,ブラ ウザの機能,ひいてはインターネット上の機能を利用 することができないばかりか,発見すらできないとい う状況が生まれる恐れがある. また,制作者がわからないエクステンションを入れ ることによるセキュリティの問題も見逃せない大きな 問題である.現在世界中で1億台以上のPCが,署名 のない自動更新可能な拡張機能を入れていることは, 非常に大きな脅威と言える. そのような時代には,新たなインターネット,お よびブラウザの進化が必要となるだろう.Lunascape に搭載されている様々なインターネット閲覧効率化の 機能や,スタイル機構は,そのような時代を見据えた 解決策の1つであるといえる.今後は,さらにハー ドウェア,ソフトウェア,そしてサービスが密接にか かわるインターネットの新しい時代に必要とされる, より良いウェブブラウザを開発してゆきたい. 参 考 文 献 [ 1 ] Lunascape, http://www.lunascape.jp

[ 2 ] Internet Explorer, http://www.microsoft.com/ japan/windows/ie/.

[ 3 ] Mozilla Firefox, http://www.mozilla-japan.org/. [ 4 ] Mozilla, http://www.mozilla-japan.org/.

[ 5 ] Netscape Navigator, http://browser.netscape.com/ ns8/.

[ 6 ] Sleipnir, http://sleipnir.pos.to/. [ 7 ] unDonut, http://undonut.sakura.ne.jp/. [ 8 ] Green Browser, http://www.morequick.com/

indexen.htm.

[ 9 ] Fast Browser, http://www.softpedia.com/get/ Internet/Browsers/Fast-Browser-Pro.shtml. [10] Maxthon, http://tabbrowser.info/valinor/

maxthon.html.

[11] BugBrowser, http://eg6p.smallnews.net/. [12] Moon Browser, http://www.geocities.co.jp/

SiliconValley-Cupertino/8986/. [13] fub, http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Bay/6049/index2.html. [14] AvantBrowser, http://www.avantbrowser.com/. [15] Opera, http://jp.opera.com/. [16] Bagel, http://ipt.sakura.ne.jp/gecko/bagel/. [17] Sylera, http://www.zawameki.net/sylera/. [18] The World Browser, http://www.ioage.com/en/

index.htm.

[19] Tame X, http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Sunnyvale/5277/.

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net/se236516.html. [21] MDIBrowser, http://void.in/. [22] Acty, http://delphi.sakura.vg/acty/. [23] Dolphin, http://griffy.pekori.to/index.html. [24] KIKI, http://www.din.or.jp/ blmzf/. [25] 増井俊之, 本棚通信: 控え目なグループコミュニケー ション. インタラクション 2005 論文集, pp. 135–142. [26] 椎尾一郎, 増井俊之, 塚田浩二 : MouseField: ユビ キタスコンピューティングのための入力デバイス, 情報 処理学会論文誌, Vol. 46, No. 7, pp. 1661–1670. [27] O’Reilly, T.: What Is Web2.0, http://www.

oreillynet.com/pub/a/oreilly/tim/news/2005/09/ 30/what-is-web-20.html.

図 5 コンボ方式 図 6 ツリー方式 図 7 メニュー方式と検索ボタン 択のしやすさ,そして検索のしやすさである.当初 Lunascape の検索バーは,図 5 のようなコンボボッ クス選択型であったが,図 6 のようなツリー選択型 を経て,図 7 のようなコンテキストメニュー選択型 に変化,最新バージョンでは検索ボタン機能を搭載し ている.世界的にも,コンテキストメニュー型が主流 となりつつある. 3
図 10 Lunascape の RSS 表示 図 11 Firefox の RSS 表示 者は通常のウェブサーフィンの過程でお気に入りを使 うのと同様の感覚で RSS によるブックマークを利用 する事が出来る.同様の機能は Firefox では,ライブ ブックマークと呼ばれて存在しているが, Lunascape と Firefox ではその表示方法には図 10 ,図 11 のよう な違いがある.これは,ツリー型ではフォルダをク リックするたびにツリーの状態が変わり,いくつもの RSS を順番にクリックして
図 14 livedoor TOVIRA 図 15 切り替えボタン での工夫も凝らしている. 3. 8 スタイル機能 近年のウェブブラウザが多機能化した結果,利用者 にとっては多機能すぎてブラウザの機能を見つけられ ないという問題が起こり始めている.また多くの拡張 機能をブラウザに入れれば,その傾向はより顕著と なる. さらにウェブサイトも,従来のように情報を表示 するだけではなく, Flash や Ajax などの普及により, ツールとしてより多くの機能を持ち始めている.最近 では OS 上のクライアント

参照

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