Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service
Japanese Sooiety for the Soienoe of Design時代性
を
超
え
て
Beyond
the
Thnes
ふつ
う
の鍋 を
っくる
曽根
眞佐 子 (
iore
隔sako)
文化
女子
大 学/
GK
デ
ザイ
ン機 構
・
GK
道 具 学
研究 所
客員
研究
員
1 .
は じ
め に台 所 をつ ぶ さに見る
。
どこ に何
が、
どれだけ あ るかを 見 る。
何 が 起こっ て い る の かを見
る。
何
が消
えて何が うま れ た か。
ど れ が 何 に とっ て かわっ たか。
どれが どれ く らし梗
わ れ ているの か。
どれ が どれ
くら
い、
使
わ れ ていない のか。
何 を食
べ て い る の か。
食
品食
料 を どこで 手 にいれ るの か。
台所
のあ
る 目、
あ
る時
を凍結
.
して 見 る。
そ して腑 分 け
して いく
。
全体
を 見失 わ
ぬま まに一
生 活
反応
を持
っ ていた状態
のま まで。
こ の 「ふつ うの
鍋
」の研 究は、
7
ツ…
の生 活 を 見 る、
知 る、
こと に は じまっ た。
そ し て、
人々 の生
活にお け る「
も
の ご と」 の、
そ の本 質 的な成
りたち
を 見 わ け、
本 来 あ るべき 姿
、
かたち
を摘 出
し てい く、
とい う とこと で あ る。
デ ザ イ ナー
の目
から見
て、
役
に立
ち そ う もない 対象
を わけ
へ
だてな く見
つめ てい く。
考
現学 的
手 法 に よっ て、
見
え ないも
の ご とを
目に 見え
る よ う に す る作業
の積
み重 ねに徹す
る。
生 活の実
相 を 見 ること か らデ ザ イン を考
えてい く、
という
こ と であ
る。
喰
べ る営
み 」 の現 場
、
台
所 を ウォ ッチン グす る。
台所
を成
り立 た せて い るすべ て の背景
にそ れ ぞ れの歴 史 が ある
,
食器
、
食
具、
布巾
、
調
理具
、
包
丁、
砥 石 や 研 ぎ 器、
鍋類
、
自動 調
理機
器 類、
シンク、
調
理 台、
ガス台
。
荒神 様
も。
浅
済llに も歴 史 が う か が わ れ る。
工夫
の歴 史 も刻 まれ
ている。
工夫 を あ き ら め、
成
り行 き ま か せ に して しまっ た状
況 も露
出 さ れてい く。
その壮 絶
な、
活
きいき
とした(
あ
るいは 死 んでいる )光
景に は、
ほ と ん ど 記述
を 絶 する情 報
に満 ち
み ち てい る。
そ の
家
ご との、
家
の誕 生 と、
台 所の誕 生 が 重 な りあっ て、
ひ とつ の特性
の ベー
スが 形成
さ れて いる。
家 族
の歴 史
、
生
活意
識 の歴史
、
食
文化
へ
の意 識
”
見識
の成長
も読
み とれ る。 その うえ
に 日々 の食
べる 営 み が 重 なっ て いる。
デ
ザ
イン の世 界 は 「つ く り手t
側
の素材 や技 術 主導
、
「売 り手
」側
のマー
ケッ ト動 向 主導
。
「つかい
手
1
のニー
ズ主導 な
ど に よっ てコ ン セプ トを創
出し、
生
活 に変
化 を促 し 「時 代 性」を生
みつ づ け、
リー
ドし てき
た。
し かし、
生 活の現
場 に踏
みこん でみて、
台所
は時代性
を追
う ところではな
い、
時代 性 を積
み重
ねる と こ ろ であ
る、
と実 感 し た。
デ ザ
イン の世 界 でイ メー
ジ さ れてき た 生活
の 「あ
り よ う」やデザ
インに お け る 「時代
性へ の挑
戦」は、
デ ザイ
ナー
の身 勝
手な思
い いれ で しか な かっ たの では ないか、
と思 え
る ほ ど、
生
活 の現 場
は、
た く さんの要 素 が複 雑
に か ら ま り、
無
限 と もい え る問
題 や 課 題 を 露 呈し、
また かぎ
り ない知 恵 と情 報の宝 庫でも
あっ た。
すでに 「時
代性
」 と いう
言葉
を舌L
用 し て き た が、
時 代性 と
いう概 念
は一
体 何 な
のだ ろう
。
時代性
一
の持
っ概 念
は、
時
間・
空 間のマ トリックスの上 に さ まざ
まにと らえ
られ る価 値概 念
であ る。
ひ とつ には
、
時間軸
を たて に とっ た、
むか しふ う一
一
一
い ま ふう
□
先 進 的の対 立概 念
の立て方 があ
ろ う。
むか しふ うが 封 建 的 と批 判 され
、
先進 的 な
のは欧 米
の近 代
化さ
れ た 文 明的
生 活 で ある
、
とされ
たりす
る、
も うひ とつ に は
、
時代
を 采 配す
る 主体
の変化
をさす
、
という
側
面 が あ る。
時 代 を す す める主体
の性 格
を、
時代
性 といっ てい る 場 合である。
時代
の イニ シ ア テ ィブ を 何が、
誰が とっ てい る のか、
を さ してい う.
.
ものづ くり の世 界
で は メー
カー・
イニ シ アティブ、
マー
ケッ ト・
イニ シ ア テ ィブ、
ユー
ザー ・
イニ シ ア ティブによ る時代 性
の形成 が あ
る。さ ら
に は、
人々 の感
性の テー
マ (主 題) 性
凵
テー
マ の性 格
を
いう
。
「
デ ザ
インに お け る時
代 性」をいう
な らば、
感性
の推
移 に あた る。
た と え ば、
白
の時代
、
花柄
の時 代
、
ナ チュ ラルな時
代、
丸 型の時代
、
角
型の時代 な
ど見栄
えの フ ァ ッ シ ョ ン史
とも
い えるが、
それら
を もた らし た構 造的
要 因 に時
代 性 が あ る。
た と え ば、
白の時代
が もた らし た要 因 は、
近代化
=
衛
生、
機
能 主義
一
能 率
、
効 率
、
合
理性
一
で あっ た。
時 代性
を超 え
る一
と は、
この いず れ も超 え よ う、
という意 図
の表 現
にな
る。
2 .
ふつう
の鍋 を
つく
る一
誕 生
のあ
らす
じ使
いや すい利便
性 と 豊 か な 感 性 に 呼 応 する、
使
っ て楽し い道 具。
そ して そ れ らが 織 り な す 生 活 景観
の美
しさ を 求め て い る生活
の現場
に、
イニ シ ア テ ィ ブを とってい け るの は、
生活 現場
の実態
研究
に も とつい て、
そこに 無い モ ノを創 出
し て いく
、
生活
プロデュー
サー
と して のデ ザイ
ン の スタ
ン スであ
ろう
。
こ こ に
紹介 す
る 「ふっう
の鍋
」プロ ジェ ク トは、
デ ザ
インを と り ま く さ ま ざ ま な時 代性
と深
くか かわ
っ て、
その呪 縛 を解
い ていっ た、
存
在理由 (レ…
ゾンデ
ー
トル ) を はっ き り持っ た も の である。
そ れは
、
こ んな
ふ うに してう
ま れ た。
数 年
にわたる 「食
べ る営
みの現 場
」一
台所 を
つ ぶさ
に見
て歩
く う ち、
鍋
に異
常 あ り、
という事 態
が発 覚
した。
鍋
が台
所 を混
乱 させて いるの である。
調
理台
の上 は も と よ り、
棚
や冷蔵 庫
の 上、
いた る ところ に鍋
が居
っい ている。
そ して流
しの 下の扉
を 開 け る と鍋 類 が積
み重 なっ て い て、
下の ほ うの鍋
は とて も と り 出 せ ない。
出す
のが 面倒
だか ら、
使
い勝
手が悪いか ら料 理 を し ない、
現 象
も見 うけ られ る.
いっ た い どれ く らい の鍋 が あ るのか
。
保 有数
の調
査で は、
10
ケ
以 上持
っ ている家
が75
% をこえ、50〜
60
ケ をも
っ ている人 も
いる.
案
の定
のもの持 ち ぶ りを 示 して いる
。
と
ころ
で実際
に使
いま わす 鍋
の数
はど
のく ら
いかを問
う と、
75
%の人
が5
ケ 以下
で済
むとい う。
現 代
の鍋
は乱 調にあ り一
そ ん な矛 盾 した 風 景の中で、
実 際
に16SPECIAL
ISSUE OF JSSD VoF,
2 NQ.
3 1994 デ ザ イ ン学 研 究 特 集 号Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service
Japanese Sooiety for the Soienoe of Design図
1
台所
を混 乱
さ せ ている鍋
図
2
使 わ な
い鍋 蓋が
い っぱ
い調
理 に使
わ れて い る鍋
に は貧相 な
、
その場
し のぎ
の安
手の鍋
が多
い。デ
パー
トに並 ぶ
さまざ
ま な付加
的
機 能
、
性 能
を売 り
に し てい る鍋
、
デ
ザ イ ナー
ブ ラン ドから外 国製
の鍋ま
で、
の豊
かな
選 択肢
の中 か ら見っ く ろっ た鍋
は、
ふ だ ん に使
いま わす
には一
長一
短
が あっ て、
結 局 な んの取柄 も
ない、
安 手
のふつう
の鍋
が、
使い ま わ さ れ てい る。
こ の普
段 つ かい のふつう
の鍋 を
、
シ ャ ンとした取
り合
わせ の セ ッ トに仕
立てな
おし たら、
料 理 は ぐん と美 味
しく
なり、
必 要 十分 な
セッ トが、
使
いや す く、
美
し く、
おさ
ま りがよく、
風景
にな
る もの に す れば
、
い らざ
る鍋
を 処分し て し ま える。
壮 絶
な る 台 所 風 景 に も秩 序 が た ち あ らわ れ るだ
ろ う、
,
そ ん
な
こ と を 話あ
っ ている ところへ 「クロ ワッサン 」誌 か ら、い
ま、
問 題の多
い道具
は?
と問
わ れて、
迷
わず そ れ
は 「鍋」 と答 え た。
「クロ ワッサン 」
誌 (
マ ガ ジンハ ウス社
) は 目常
生 活の実感
と本 音 を 基 本 とし て、
主婦層
の読者
に問題
を投 げ
かけ る生活誌
であり、
そ の考
えに即し た オ リジナル商
品 をつ く り、
あ るい は セ レクト
し た商
品 を扱 う
「クロ ワッサ
ン の店
」を持
つ社会
派の生 活 情 報
メデ
ィア であ
る。鍋
の、
デザ
イン以前
と もい うべき惨状
のヴ
ィジ
ュ アルデ
ー
タ を共
にうち眺
めて、
「
一
緒
に 開 発 し よ う、
本 来 あ るべ き姿
の必 要 十分
セ ッ トを…
」 と意
気 統合
。
道 具学
研 究所
サ イ ドで集
め たウ
ォ ッチング デー
タ と、
クロ ワッサン誌 を
つう
じ て得
た膨 大 な
ア ンケー
トデー
タ をつ き あ わせ て、
両者
はまず
、
本 当
に 必要 な鍋
の かたち
が先
にあ
るべき
だ と、
互 いに納 得
の い くデ ザ
インコ ン セプト
、
造 形デ ザ
イン(
GK
道 具学 研 究
所+GK
テ ック)
を かため
た。
こ
う
してデ ザイ
ンコ ンセプト
、
造形 を決 定
した うえ
で、
私
たち
は、こ
れ をっ くって く れ るメー
カー
を探
した。
幸
い技
術
開発
力、
製
品のグレー
ド とも
に トップメー
カー
といっ てよい東 新
プ レ ス 工業
が製 造
を希 望
し、
メー
カ・
.
・
に とっ て都合
の悪い (っく
りにく
い) 部 分 を克 服
し て、
所与
の条 件
であ
っ たコ ン セプ ト・
デザ
インの鍋
は実 現 さ
れ、
「クロ ワッサン」の
店
に並
べ ら れ る と と も に、
東 新
プレスサ イ ドのデ
パー
ト等
の一
般市
場 に 出さ
れ、
目覚
ま しい売
れ 行 き を 示 し た 「ヒ ッ ト商
品」 となっ た。
3 .
時代性
を
超
え た
一 10
の側
面
さ て
、
こう
して 生 ま れ た 「ふつ うの鍋
」 だ が、
さ まざ
ま な時
図
3
ふ
だ
ん使
う
のは
この中
で3
〜4
個
代 性 を 超 え たこ とが 成 功の理 由である。
具 体 的 に はそれは ど うい
う
て点であっ たかを、
以 下に整
理 し てみよ う
。
D
「ふっう
の鍋
」と
いうデ ザ
インテー
マひ とっ には
、
「ふつう
の鍋
と
いうデ ザ
イン テー
マが
、
デ ザ
イ
ンにおけ
る時 代性 な
るよ
り どころ を、
かな
ぐ りす
て た地
平に立っ たテ
ー
マ設定 だ
、
という
こ とがあ
る。
2
)ク ラ イアン トのオー
ダ
ー
に よ らない 自 主 開 発こ の
デザ
インテー
マ は特定
の ク ライア ン ト企 業から依 頼 された もの で は な く
、
デ ザ インす る側の、
いわ ば自
主 プロ ジェ クトであっ たこと
も
、
時代 性
に反
してい る。
この鍋
は、
ク ラ イア ン トのオ
ー
ダ…
な し に、
デ ザ インを完 成
させ た。
いま や
、
デ ザ
インの大多
数 は ク ライ アン トか らの要
請 に よって おこな わ れ る
。
デ ザ インサ イ ドで アイ ディ アな り
、
コ ンセプ ト
な
りが生
まれ て、
クラ イア ン トに受
入 れ られな
け れば
、
お 蔵 入 りに な るのが 通 例 で あ る
。
け れ ど も ク ライアン トがいな け れ
ば
な に も で き ない。
この 時 代 性 を 私 た ち は切
りか え したのであ る
。
3
)
生活
の現 場
から道 具
と して の発想
こ の
鍋
は、
デ
パー
トの売 り場
から
ではな く
、
生活
の現場
か ら発 想
され た。
商
品 と して では な く、
道具
と して発 想
され た。
競 合 商
品ひ し めく売
り場 (
流
通の現場 )
から
の、
差
別化
という発
想
を無視
し、
生
活 現場
、
台
所 ウォッチ ング を重
ねな
がら
発 想 され
た。
売 り場
で勝
つ た めのデ ザ インでは なく
、
台 所
をデ ザ イン学研究特集 号 SPECIAL ISSUE OF JSSD Vol
.
2 No.
3 199417Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service
Japanese Sooiety for the Soienoe of Design図
4
「
エバ
ー
ウエ ア・
シャ ンブ
ルド
クロワッサン」
鍋
シ リ
ー
ズ
(
7
ル ミ 十チ タ ン合
金のク ラッ ド材 )
生かす 道 具 とし て
、
す
で に台
所に累
々 と溜
まっ てい る鍋
、
使
いに くい鍋
、
使
わ れ ない鍋
の現 状 を 超 え る本 当
の鍋 を
めざ
した
。
生
活
の現 場
の観 察
に よっ て、
そこに 欠 けて いるあ
た り前 な
もの
、
まっ とう
なも
の、
ふつう
のよい ものをつ く りだ して いけ
ば
、
おのず
とマー
ケ
ット
は成 立
し、
時
代 性も
生 まれ てく る とい う
、
シ ゴク素 直 な
見方
であ
る。
4
>メディ ア の作
用力
を 活かすメ
デ
ィア (情 報 流
通媒 体
)の作 用 力 を 逆 流 させたのも、
時 代
性へ の ア ン チ テ
ー
ゼの提 出 で あっ た。
私
たち
は クロ ワッサン誌 とい
う社 会
派の メデ
ィ ア と 心 を一
に して、
「モ ノ」 をっく
っ た。
メデ
ィ アツー
ル を、
ユー
ザーへ
の宣伝 媒 体
で あ る より
先
に、
ユー
ザ
ー
か らの情
報 収集 媒 体
と して機 能 さ
せ た。
延
々、
3
号
6
ペー
ジ
に わ た る アンケー
ト
の詳細 な質 疑
へ の応
答
は1
万 通 に も お よび、
とり わ け 「ひ とこ と」の記 述欄
には
、
鍋
に対す
る 不満
や 願いが 綿々 と述べ られ、
デ ザ イン の源
資 と して貴 重 な
情 報
であ
っ た。
あ わ せて こ の 「鍋
」が どう
いう鍋か
、
どう
し て生まれたの か、
を12
ペー
ジ にわ
たっ て きち
んと読 者
に伝 え
る こ と が で き たのも
メデ
ィ ア の力
といえ る。
5
)長期
にわ た る開
発期
間調査研 究
か ら開 発、
デ ザ イン、
発売
ま で に足かけ4
年 とい う歳
月 をか け た。
モ ノ生 みのプロセスに おいて 取 るべ き手
つづき
の、
ど こ にも 手 をぬ かな かっ た。
鍋
とはな
にかeど う存在
し て いるか。 ど
う使
わ れて いる
の か。
あ
るべ き ものが ど うナイ か
。
問
いは道具
の原 点
から
発 し、
解
は鍋
のひ しめく台 所
の現場
で検 証 され
、
じっ く り と時
間 をかけて あた た め られ ていっ た
。
現 今
のデ ザ
インは 朝、
オー
ダー
を受
けて夕べ にバネ
図
5
薄手片手鍋
3
サイズ
・
蓋
1
個
、ゆで も
のな ど
短時間調
理 用
図
6
厚 手鍋
3
サイズ、
長
時間煮
込
み用
図
7
楕
円鍋
、
大 型 食材 ま るご と調 理 用
ル を 提 出 す る
、
の勢
い。
デ ザ
イン期
間 は3
ヵ月 か、
せいぜい6
ヵ月、
実 質 的
にデ ザ
インに 取 り組
め るの はそ
のうち何割
か
。
こ の手合
い のデ ザ
インに年 単位
で時 間 を
かけ
る こ と は、
ク ラ イ アン トも ちのデ ザ
イ
ン では、
不 可能
にち
かい。
6
)
メー
カー
を 後 か ら探 した調
査
研究
に よ るコ ンセ プ トを 叶
え るデ ザイ
ンが
で きあ
がっ たところで
、
私 た ちは そ れ をつく るメー
カー
を探
した。こ こ で
も
、
時
代 性の モ ノ のつ く ら れか たの反転
が 試 み られ た。
メー
カ
ー
が イニ シ アティブを
と り、
メー
カー
の都
合
で か た ちを決
める の で は
な
く、
デ ザ
インサ イ ドが イニ シア ティブを と
った
。鍋
の材
質
、
工法
を 企業
の技 術 特 性
に合 わ
せ るので はな
く
、
調
理のう
えで の必要
によっ て選 択
した。
鍋
メー
カー
は、
それ ぞ れ
に得 意
とす
る技 術
体
系 をも
っ て いる
。
プレ ス成
形 を主 軸 とす る企 業、
鋳 造
を主軸
とす
る 企業
、
セラミックを 主
軸
とす るメー
カー
がク ライア ン トであ
れば
、
18SPECIAL
ISSUE OF JSSD Vol.
2 No,
3 1994 デ ザ イ ン学研究 特 集 号Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service
Japanese Sooiety for the Soienoe of Designこ の
技 術
の枠 組 み
を外
れ た セッ トは、
たいへ
んっ く り に くい
。
わ が 「ふつう
の鍋
」は材質
、
工法
選択
の自
由、
のな かで発 想 され
て い っ た。
7
>過剰 な商
品世 界
へ の挑 戦
現
代の 鍋の世 界 は一
望 す る に、
数 十シ リー
ズ、
数 百点
が、
家
庭
向 けセ ッ ト と して発 売
され てい る。
デ ザ イン過 剰の中で、
デ ザ イン の
余
地 を見 出
す、
という
こと 自体 が反
時 代 性 とい って よい
状
況 で あっ た。
市
場 は、
鍋
のデ ザ
イン ? も う沢 山 だ、
とい
う
な かで、
いろいろの変
り鍋
は過
剰 に あっ た が、
自然
に手
がのび る、
ふ だ ん つ かい の 「ふっう
の鍋
」だ け が 無 かった
。
こ れ も時代 性
に反す
る選択
であっ た といっ て よい。
8
)
道 具
とし て の素 直
な デ ザ イン商
品性
を無
視
して、
道 具
としてのデ ザ
イン に徹
し た。
鍋
に商
品性 を持
た せる
た め に は、
ユー
ザー
のラ イフ・
イ メー
ジ やセグメ ン テ
イ
ショ ン にあ
わせ てさ
まざ
まな付
加機 能や 装飾
、
カラ
ー
リング が な され る傾 向
に(
これ は現代
の鍋
の産
)っ て い る時
代 性 )対
して、
いっ さいを切
り捨
て て、
鍋の持つ べき 基 本機 能 を追 求
した。
その意 味
で こ の鍋
は幾世 代 も前
の純 粋
な機
能 主義 デ ザ
インであ
り、
クラシックな
デザ
イ ン術
に戻っ た よう
な懐
か しさ さ
えあ
る。
9)ふ だ んの調
理 を 大事
に食
文化 ブ
ー
ムを受 け て、調
理 特 性 に 対応
し た鍋
は多様 だ
が、
毎
日 の茹 で ものや だ し と りな どの基 本 調 理 用 に徹
し た。
また
、
ふ だ んの家
庭
料 理 か ら消
えっ つあ
る ま るご
との煮魚 や 蒸
し
物
の復権
を願
っ たこと も、
調
理の手抜
き 化 (レ トル ト食
、
外 食 化
な ど) が 進行
しつ つ あ る時 流
に反
してい る。
10
>
モ ノ の売
れ ない時代
に、
売
れ たこれ
も
時流
に反
して いる。
こ の鍋 が 発 売 され たの は’
92年9
月。 世 は 不
景 気
のさな
か。
先
の見 え な
い構 造 不況
のな
か で、
鍋 業 界
は鍋
底状 態
で あっ た。 モ ノ が動
かな
い状
況、
そ んな 中
で の
新製 品発 売
だっ た が、
爆発 的
に売
れ、
いま も な お売
れっづ けて い る
。
デパー
トの鍋売
り場で、
他の鍋
を押
しわ け て棚
を
確 保す
る の は至難
の こと なのだ がこ の鍋
に は、
幅 広
い棚 が
あ け られた。 ふっ
う
の よ いものを
つく
りだし て いけ
ば、
マー
ケ
ットは
おのず
と成
立 し、
時
代
性 も 生 ま れ て く る という
、
考
え
方 を実 証
した。
時 代性
の一
語 をや や 乱雑
に使
いすぎ
た き らいは あ るが
、
わ が
「ふっう
の鍋
」はさ
ま ざ ま な面
で 時 代 性 に反
す る、
とい うべ き か、
時
代 性 を 超 え た存在
と し て、
台所
に位 置
を得
て、
存在
理 由 を獲 得 したので あっ た。
い、
と され ていた 時 代 に は、
あ る 程度
長 じる ま で は 仮の名前
を つ け て、
いわ ば様 子 を み た。
だ か らこそ、
七 五 三の祝
いはこん にち
にく ら
べ て、
真剣
に祝
わ れ たも
のだっ た。
そのよ
う
な生命
力の は かな さ が、
現 代
の商
品界
にう
つ して見
られ ない かn7 年 は おろ か5
年
、
3
年
の寿 命
を保
つ商
品と てな
く、
天逝
す るモ ノ、
おび た だ しく、
そ れが ふつ うにな
っ てきて い る。
材 木 は樹 齢だけ保つ といわれ る
。
千年
の樹 令
を持
つ材
は、
千
年 保ち
、
4
百年
の樹 令 な ら
用材
と して4
百年
しか保
たな
いと
い う。コ ンセ プ ト
、
開 発、
デ ザ
イン のプ
ロセスは、
こ の樹齢
を は ぐ くんで い く作業
の よ うに 思 う。
手 間ひま をかけ、
気
くば
り を尽 く し、
調
査 を か け、
検
証 を してい く歳
月 と、
知 力
の投
入量 が
、
や
っ ぱり道 具
の生命
力 を 左右 す
る。
そ して、
生 命 力 あ る 道 具 は、
活 き 活 き と した息 吹
きの よ うな
ものを、
手に とる 人に感
じ させ るも
のら しい。
「ふつ うの鍋」 クロ ワッサン の
鍋
の 買わ
れ方
は、
こ の鍋 を
み と め るや、
さっ さっさ
とや
っ て き て、
パ ッと買
っ て いく
,
健康
と美 味
一
ふ だ んの、
毎
日、
毎
日の調 理一
を叶 え
る道 具
、
と見
ぬ い てく
れる鍋の使い手 た ち が意
外 に多
い。
「
皆 さ
ん、
見 る 目は あるん だ1
と、
ユー
ザー
のま な ざ しの鋭
さ を、
い ま、
見 直 し て、
む しろ怖
く さ え なっ て い る。
ふ りか
え
っ てす くな く
とも
こ の鍋
に関
し てだけ
は、
モ ノうみ
のプロセスにおい て と るべき 手
つ づき
の、
どこ にも手
をぬか な かっ たこと
が、
そう
したユー
ザー
の鋭
いま な ざ しに 気づ いた と き に、
お おいな
る安堵
のよす
が とな
っ たの であ る。
時 流
をかえ
りみず 時 代性 を超
えて、
モ ノ の本質
と生活
の実 態
に 迫 るこ とに よっ て、
コ ンセプト研 究
にエネ
ルギー
を過
大に傾 注 し、
デザ
インサ イ ドがイニ シ ア テ ィブ を とっ てプロデュー
スを
おこない、
デザ
インデ
ィレク ションを おこな
い、
かた ち を 生 み だし て いく
。
そ
のか ん、
メー
カー
の都 合
を一・
切 うけつけず
、
使
い手の都 合 を最優 先
して、
道 具
のか た ち を決
していく。
この もの生
みの段
どり
が 正 しい こと が、
「ふつ うの鍋
」プロ ジェ ク トによ
っ て 立証 され
たの であ る。
い ま
、こ
の立 証 に 勇 を 得 て、
鍋
とい う台所
の主役
にっ ぐ 沢 山 の脇役
た ちに 「ふつ うの姿
」 を 立 ち あ らわ れ ること を願っ て、
取
り組 み
は じ めてい る。
デ ザイ
ンにいま 必要
なの は、
時代
を ど う読
むか、
よ りも
時代
を超
えて、
デ ザ
イ ナー
自
身 が 真 に ほ しい ものを提
示 し、
その こ とに よっ て自分
たち
が何 者 な
のか を明
ら か に し、
主体性
を 示 し てい くこと で はな
いだ ろ う
か。
ひる
が えっ ていえば
、
そ れ が い まの時 代性 な
の かも
しれ ない。
4 .
結
び
最後
に、
道 具
の生命
力、
とい う点
での 反時代性
に触
れ たい。
その昔
、
幼 児
死 亡率
が たいへ
ん高
かっ た時 代
、
半数
も育 た な
デ ザ イン学研究 特 集号 SPECIAL