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褥婦のバースプランの認識と出産満足度との関連に関する研究

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日本助産学会誌 J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 25, No. 1, 27-35, 2011

*1大分県立看護科学大学大学院博士前期課程(Graduate School, Oita University of Nursing and Health Sciences)

*2大分県立看護科学大学母性看護学・助産学(Department of Maternal Nursing and Midwifery, Oita University of Nursing and Health Sciences) 2010年4月12日受付 2011年5月12日採用

原  著

褥婦のバースプランの認識と

出産満足度との関連に関する研究

The relationship between the recognition of postpatum

mothers’ birth plan and the degree of satisfaction with delivery

佐 藤 彰 子(Shoko SATO)

*1

梅 野 貴 恵(Yoshie UMENO)

*2 抄  録 目 的  褥婦のバースプランの認識を調査し,出産満足度との関連を明らかにすることを目的とし,妊産婦が 満足な出産をするためにバースプラン作成のプロセスの中で助産師に求められる役割について検討する 基礎資料とした。 対象と方法  対象は産褥2日∼7日の褥婦442名で,データは自記式質問紙調査を用いて収集した。調査内容は属性, 分娩時の状況,バースプラン記入時の状況について,バースプランの認識(10項目5件法),出産体験の 自己評価尺度短縮版(常盤2001,18項目5件法)である。分析はSPSSver.16.0を使用し,有意水準は5% とした。 結 果  質問紙は416部が回収され(回収率94.1%),有効回答数は370部(有効回答率88.9%)であった。出産 満足度を従属変数とした重回帰分析(調整済みR2=0.361,p<0.01)により出産満足度に関連する要因 として,分娩歴,分娩様式,分娩時間,褥婦から見た児の状態,医療スタッフの理解や尊重ある対応, バースプランの認識が抽出された。この出産満足度に関連する要因を調整し,分娩経過に問題のなかっ た群を対象に,分娩歴別での褥婦のバースプランの認識と出産満足度との相関係数を求めると,初産婦 r=.326(p<0.01),経産婦r=.442 (p<0.01)であり,出産満足度と有意な正の相関が認められた。また, 褥婦のバースプランの認識はバースプラン記入時の相談があること,バースプランに関する情報収集を していること,バースプランへの期待やこだわりを持っていることで,それらをしていない,持ってい ない場合に比べ有意に高くなった(p<0.01) 結 論  分娩経過に異常がなかった褥婦のバースプランの認識は出産満足度と関連があることが明らかとなっ た。バースプラン作成のプロセスは出産満足度を高めるひとつのアプローチであり,バースプランの活 用は満足なお産を提供する上で重要であることが再確認された。 キーワード:バースプラン,満足なお産,助産師,出産体験の自己評価尺度

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The purpose of this study was to clarify the relationship between the recognition of postpartum mothers of their birth plan and the degree of satisfaction with their delivery, as well as to examine the role of the midwife in giving satisfaction with the delivery.

Methods

The subjects were 442 mothers who had delivered 2-7 days earlier. The data was collected using a self-reported questionnaire. The questionnaire consisted of the attributes, the situation during the delivery, the situation when writing the birth plan, recognition of the birth plan (10 item 5 case law), and the Design of Self-evaluation Scale for Experience of Delivery (Tokiwa 2001, 18 item 5 case law). Data analysis was conducted using SPSSver.16.0. The significant level was set to 5%.

Results

The responses were 416 (94.1% of rate of collection), and the effective number of answers were 370 (88.9% of the effective answering rate). By using multi regression analysis (R2=0.361, p<0.01), the satisfaction with delivery was evaluated related to the following factors: number deliveries, delivery style, delivery time, the state of the new-born, correspondence between the medical staff's understanding and respect, and the recognition of the postpar-tum mother's birth plan. According to the delivery experience with no problem during the delivery progression, the recognition of birth the birth plans of both primipara 0.326 (p<0.01) and multipara 0.442 (p<0.01) had a significantly positive correlation with satisfaction with the delivery. The recognition of the birth plans of postpartum mothers be-came significantly higher by consulting about the birth plan, by gathering information about the birth plan, and by having expectations and desires for the birth plan (p<0.01).

Conclusion

The recognition of birth plans by postpartum mothers is related to the satisfaction with their delivery. The pro-cess of making the birth plan is one of the effective approaches that raises the degree of satisfaction with the deliv-ery, and reconfirms that it is important to give mothers satisfaction with their delivery.

Key words: birth plan, satisfaction with delivery, midwife, self evaluation scale for experience of delivery

Ⅰ.緒   言

 出産は女性にとって,人生において記憶に残る大イ ベントであり,また発達課題の点からも重要な過程と なる。近年は少子化が進み,1人の女性が子ども1人を 出産するにあたり出産に求められるニーズも高まって きている。それに伴い,医療者側は個別性を重視し満 足できるお産を提供していくことが求められている。 妊産婦個々で妊娠期より,理想のお産やお産に対する ニーズ,イメージが違うことは当然であり,褥婦の出 産体験の受け止め方や満足度がそれぞれ異なることも 当然のことといえる。その中で個別性を重視し,満足 できるお産を提供するために,バースプランを用いる 医療施設も増えている。バースプランの目的や効果に ついては,医療者とのコミュニケーションツールや出 産・育児に向けた準備と言われている(杉本,2004; 石川・木野,2004)。  満足なお産に関しては,分娩時の異常の有無や児 の状態,医療スタッフの対応,分娩様式と出産満足 度との関連が明らかにされている(中野・森・前原, 2003;常盤,2001)。しかし,これらの先行研究にお いてバースプラン作成のプロセスが出産満足度を高め る要因の一つと示唆されるものの,バースプランが 出産満足度と関連しているという報告は少ない。バー スプランの作成により分娩に対する満足感が高まった (稲垣,1997),バースプラン未提出者よりもバースプ ラン提出者は出産に対する満足度が有意に高かったが, バースプランの効果と出産満足度との関連が認められ なかった(横手・社方・百田他,2000)との報告もあり, 出産満足度を示す尺度を用いて述べられたものはない。  そこで本研究では,褥婦のバースプランの認識を調 査し,出産体験の自己評価尺度短縮版(常盤,2001)を 用いて出産満足度との関連を明らかにすることを目的 とし,妊産婦が満足な出産をするためにバースプラン 作成のプロセスの中で助産師に求められる役割につい て検討していく基礎資料とする。 用語の定義:本調査におけるバースプランとは,妊娠 中に医療施設で妊婦に配布し,妊婦やその家族が希 望する出産形式や医療処置,産褥入院中の過ごし方, 児に対する気持ちなどを記入し,提出してもらう出

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褥婦のバースプランの認識と出産満足度との関連に関する研究 思う:5∼全くそう思わない:1),医療スタッフの理 解・尊重ある対応(5件法,非常にそう思う:5∼全く そう思わない:1) 3 ) バースプラン記入時の状況4項目:バースプラン の記憶(5件法,よく覚えている:5∼全く覚えていな い:1),相談,情報収集,バースプランへの期待・こ だわり(5件法,非常に持っていた:5∼全く持ってい なかった:1) 4 ) バースプランの認識10項目:表1に示す。バー スプランの認識に関する質問項目は先行研究(横手・ 社方・百田他,2000;杉本,2004;稲垣,2001;石川 ・木野,2004;Kitzinger, 1999;Way, 1996;上田・村 田・小倉他,2008)をもとに10項目の質問項目を抽出 し,「非常にそう思う:5点」から「全くそう思わない: 1点」の5件法にて研究者が作成したものである。これ はバースプランの内容についてではなく,褥婦が認識 するバースプランの目的を挙げている。バースプラン の認識得点として,10項目の合計(10∼50)点で得点 が高いほどバースプランの認識が高いことを意味する。 事前にプレテストを実施し,質問方法等の意見を頂き, 修正した後作成し,本研究においてバースプランの認 識の尺度のCronbach α係数は0.914であり,内的整合 性は保たれていることを確認した。 5 ) 出産満足度18項目:出産体験の自己評価尺度短 縮版(常盤,2001)を用いた。出産体験の自己評価尺度 短縮版は,出産体験に対して褥婦がどの程度満足した かを評価するものである。18項目(産痛コーピングス キル7項目,医療スタッフへの信頼6項目,生理的分 娩経過5項目)を「非常にそう思う:5点」から「全くそ う思わない:1点」の5件法で構成されており,18項目 の合計(18∼90)点で得点が高いほど出産満足度が高 いことを意味する。尺度の信頼性,妥当性は確認され ている(常盤・今関,2000;常盤,2001)。本研究にお いても出産満足度の尺度のCronbach α係数は0.897で あり,尺度の信頼性が証明された。 6 ) バースプランに関する自由記述 4.分析方法  データの集計・分析には統計解析ソフトSPSSver 16.0を用いた。分娩歴別及び分娩様式別の比較にはU 検定またはχ2検定,3施設間での属性の比較にはχ2 定,平均値の比較には一元配置分散分析,出産満足 度の関連因子の抽出には重回帰分析によって検討し た。出産満足度については,初産経産別で結果が異な 産計画書である。今回の研究における褥婦のバース プランの認識とは,表1の10項目について,妊娠中 に作成したバースプランを分娩後に振り返って認識 したその目的を示す。

Ⅱ.研 究 方 法

1.調査対象  調査期間は平成20年4月から平成21年3月である。 調査票配布期間は平成21年5月から9月である。調査 対象者は,A県内の産科診療所3施設で分娩した産褥2 日∼7日の褥婦442名である。また,対象者は全員バー スプランを作成している。 2.調査方法  調査は調査票とともに研究の趣旨や倫理的配慮につ いて記載した依頼文書を用いて説明し,口頭で承諾の 得られた褥婦に配布し,無記名の自記式質問紙調査を 実施した。回収は同封の封筒に入れ,封をした上で施 設内に設置した回収ボックスにて行った。  3施設のバースプランの書式は統一されたものでは ないが,項目,配布時期,介入方法,提出方法,立案 時期はほぼ同様に行われている。 3.調査内容  質問紙の内容は1)∼6)のとおりである。 1 ) 属性4項目:年齢,出産回数,母親学級受講状況, お産に関する情報収集 2 ) 分娩時の状況7項目:分娩様式,分娩時間,出生 児体重,褥婦から見た児の状態(5件法,非常に元気 そうだった:5∼全く元気そうではなかった:1),家 族の児の出生に対する満足度(5件法,非常に満足し ている:5∼全く満足していない:1),医療スタッフ による医療処置への説明・同意(5件法,非常にそう 表1 バースプランの役割から抽出したバースプランの 認識10項目 1.医療者とコミュニケーションがとれる 2.自分の望むお産や育児の姿勢を伝えることができる 3.安心感が得られる 4.お産や育児に向けて気持ちの準備ができる 5.お産を具体的にイメージできる 6.お産や育児に関する情報を得ることができる 7.健康管理に注意を払うようになる 8.お産や育児について家族と話し合う機会になる 9.家族の絆が強くなる 10.自分らしいお産ができる

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析を行った。そして,バースプランの認識と出産満足 度の関連にはPearsonの相関係数を求め,バースプラ ンの認識とバースプランに関する各要因の比較はU検 定,バースプランに関する各要因間の関連はχ2検定 によって検討した。いずれの検定においても有意水準 は5%とした。 5.倫理的配慮  質問紙は無記名とし,対象者には調査票とともに依 頼文書を添付し,調査で得られた情報は研究目的以外 に使用しないこと,個人の情報などプライバシーに関 する情報は一切公開せず,プライバシーは確実に保護 されること,回答は強制されるものではなく対象者の 自由意思であり,回答しなくても対象者に不利益が生 じないこと,この調査は施設の業務とは無関係である ことを説明した。  本研究は,大分県立看護科学大学の研究倫理・安全 委員会の承認を得て実施した(承認番号297)。

Ⅲ.結   果

1.対象者の属性と分析対象者   調 査 票 は442部 配 布 し, 回 収 数 は416部(回 収 率 94.1%)であった。本研究の目的であるバースプラン の認識や出産満足度などの記入漏れ,帝王切開による 分娩は対象外と考え削除し,有効回答数は370部(有 効回答率88.9%)得られた。帝王切開による分娩につ いては,出産満足度の質問項目で回答しづらい項目を 含むこと,帝王切開分娩が調査対象者の2.2%であっ たことから検討意義が少ないと考え,分析対象外とし た。  対象者370名の属性を表2に示す。分娩歴は初産婦 155名(41.9%),経産婦215名(58.1%)であった。分 娩様式では,自然分娩244名(65.9%),誘発分娩94 名(25.4%),吸引分娩20名(5.4%),骨盤位分娩4名 (1.1%)であった。分娩時間の平均値(平均 標準偏 差)は初産婦744.3 522.5分(範囲60∼2880分),経産 婦379.4 294.6分(範囲10∼2095分)であり,分娩時間 における正常分娩は331名(89.5%),遷延分娩は16名 (4.3%)であった。出生時の児体重の平均値は3100.3 394.7gであった。バースプランの認識得点は38.9 7.3であり,出産満足度得点は71.8 10.8(初産婦68.5 4.13 0.55)であった。  褥婦から見た児の状態,褥婦の家族の満足度,医療 処置への説明・同意,医療スタッフの理解・尊重ある 対応については5件法で質問し,3群に分けた。  分娩歴により有意差が認められたのは,年齢,分娩 様式,分娩時間,出生児体重,医療スタッフの理解・ 尊重ある対応,バースプランに関する情報収集,バー スプランに関する相談,出産満足度であった。また, 調査対象の3施設間の対象者の属性,分娩状況に関し て施設間に差があるか確認した。その結果,年齢,児 体重については差が見られたが,出産満足度への影響 があるとされる分娩歴,分娩様式,分娩時間などでは 差は認められなかったため,対象者を出産施設別に分 類せずに以降の分析を行った。 2.分娩様式別バースプランの認識と出産満足度  分娩様式において誘発分娩・吸引分娩・骨盤位分娩 を異常分娩とし,自然分娩・異常分娩別にバースプラ ンの認識や出産満足度について検討した(表3)。自然 ・異常分娩別でのバースプランの認識に差は認められ なかったものの,出産満足度において自然分娩群の方 が,異常分娩群に比べ有意に出産満足度が高かった(p <0.01)。 3.出産満足度と関連のある因子の抽出  バースプランの認識と出産満足度との関連を検討す るために,本調査項目の中で出産満足度に関連する他 の要因を抽出した。属性,分娩時の状況,バースプラ ン記入時の状況,バースプランの認識を独立変数とし, 出産満足度を従属変数として重回帰分析(ステップワ イズ法)を行った(表4)。重回帰分析の重決定係数(R2 は有意であり,36.1%の範囲で投入した独立変数で従 属変数が説明された。出産体験に影響を及ぼしている 要因としては,分娩歴,分娩様式,分娩時間,褥婦か ら見た児の状態,医療スタッフの理解や尊重ある対応, バースプランの認識が挙げられ,特にバースプランの 認識と医療スタッフの理解や尊重ある対応が出産満足 度に強く影響を及ぼすことが明らかになった。  この結果より,バースプランの認識と出産満足度の 関連を検討するにあたり,①分娩様式が自然分娩,② 児の体重2500g以上,③分娩時間初産婦30時間以内 ・経産婦15時間以内,④褥婦から見た児の状態良好,

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褥婦のバースプランの認識と出産満足度との関連に関する研究 表2 対象の属性とバースプランの関連変数 全体(n=370) 初産婦(n=155) 経産婦(n=215) 検定 年齢(歳) 平均 標準偏差範囲 無回答 30.1 4.5 16∼44 1名(0.3%) 28.4 4.6 16∼41 0名 31.3 4.1 20∼44 1名(0.5%) ** 分娩様式 自然分娩 誘発分娩 吸引分娩 骨盤位分娩 無回答 244名(65.9%) 94名(25.4%) 20名( 5.4%) 4名( 1.1%) 8名( 2.2%) 86名(55.5%) 48名(31.0%) 12名( 7.7%) 2名( 1.3%) 7名( 4.5%) 158名(73.5%) 46名(21.4%) 8名( 3.7%) 2名( 0.9%) 1名( 0.5%) ** 分娩時間 正常範囲内遷延分娩 無回答 331名(89.5%) 16名( 4.3%) 23名( 6.2%) 134名(86.4%) 8名( 5.2%) 13名( 8.4%) 197名(91.6%) 8名( 3.7%) 10名( 4.7%) ** 出生児体重(g) 平均 標準偏差範囲 無回答 3100.3 394.7 2158∼4870 1名( 0.3%) 3009.4 364.0 2222∼4226 0名 3166.5 404.4 2158∼4870 1名( 0.5%) ** 褥婦から見た児の状態 どちらでもない良好 不良 369名(99.7%) 0名 1名( 0.3%) 154名(99.4%) 0名 1名( 0.6%) 215名(100%) 0名 0名 ns 家族の児の出生に対する 満足度 満足 どちらでもない 不満 369名(99.7%) 1名( 0.3%) 0名 154名(99.4%) 1名( 0.6%) 0名 215名(100%) 0名 0名 ns 医療スタッフによる 医療処置への説明・同意 あり どちらでもない なし 無回答 338名(91.4%) 22名( 5.9%) 6名( 1.6%) 4名( 1.1%) 141名(90.9%) 8名( 5.2%) 4名( 2.6%) 2名( 1.3%) 197名(91.6%) 14名( 6.5%) 2名( 0.9%) 2名( 0.9%) ns 医療スタッフの理解・ 尊重ある対応 あり どちらでもない なし 358名(96.7%) 8名( 2.2%) 4名( 1.1%) 148名(95.5%) 5名( 3.2%) 2名( 1.3%) 210名(97.7%) 3名( 1.4%) 2名( 0.9%) * バースプランの 内容について 覚えている どちらでもない 覚えていない 無回答 325名(87.8%) 5名( 1.4%) 39名(10.5%) 1名( 0.3%) 139名(89.7%) 2名( 1.3%) 14名( 9.0%) 0名 186名(86.5%) 3名( 1.4%) 25名(11.6%) 1名( 0.5%) ns バースプランに対する 期待・こだわり あり どちらでもない なし 無回答 261名(70.5%) 70名(18.9%) 33名( 8.9%) 6名( 1.6%) 106名(68.4%) 33名(21.3%) 15名( 9.7%) 1名( 0.6%) 155名(72.1%) 37名(17.2%) 18名( 8.4%) 5名( 2.3%) ns 母親学級受講の有無 受講あり受講なし 無回答 252名(68.1%) 117名(31.6%) 1名( 0.3%) 107名(69.0%) 48名(31.0%) 0名 145名(67.4%) 69名(32.1%) 1名( 0.5%) ns お産に関する情報収集 ありなし 無回答 358名(96.7%) 11名( 3.0%) 1名( 0.3%) 151名(97.4%) 4名( 2.6%) 0名 207名(96.3%) 7名( 3.3%) 1名( 0.5%) ns バースプランに関する 情報収集 あり なし 無回答 134名(36.2%) 231名(62.4%) 5名( 1.4%) 79名(51.0%) 75名(48.4%) 1名( 0.6%) 55名(25.6%) 156名(72.6%) 4名( 1.9%) ** バースプランに関する相談 ありなし 無回答 239名(64.6%) 127名(34.3%) 4名( 1.1%) 117名(75.5%) 36名(23.2%) 2名( 1.3%) 122名(56.7%) 91名(42.3%) 2名( 0.9%) ** バースプランの認識得点 (10項目) 平均 標準偏差範囲 38.9 7.310∼50 38.1 7.014∼50 39.5 7.410∼50 ns 出産満足度得点(18項目) 平均 標準偏差範囲 71.8 10.837∼90 68.5 11.137∼89 74.3 9.942∼90 ** 注1)誘導分娩とは、陣痛発来前の分娩誘発と分娩中の分娩促進を含む。 注2)遷延分娩とは、初産婦は30時間以上、経産婦は15時間以上をいう。 注3)( )内の%は全体(n=370)・初産婦(n=155)・経産婦(n=215)の%をそれぞれ示している。 注4)分娩様式・バースプランの認識得点・出産満足度得点についてはU検定、その他χ2検定を行った。 **:p<.01  *:p<.05  ns:有意差なし

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⑤家族の児の出生に対する満足度が高い,⑥医療処置 への説明・同意あり,⑦スタッフの理解や尊重ある対 応あり,という①∼⑦の条件を満たす分娩経過に異常 がなかったものを抽出し,さらに詳細に初経産別で検 討した。 4.バースプランの認識と出産満足度との関連 1 )初産婦におけるバースプランの認識と出産満足度 との関連  初産婦において,上記①∼⑦の条件に該当する 65 名を対象に,バースプランの認識と出産満足度との相 関を求めた。初産婦のバースプランの認識得点の平均 値は38.3 7.3,出産満足度得点の平均値は73.3 9.4で あった。バースプランの認識と出産満足度における Pearsonの相関係数は,0.326で弱い正の相関が認めら れた(p<0.01)。 2 )経産婦におけるバースプランの認識と出産満足度 との関連  経産婦において,上記①∼⑦の条件に該当する129 名を対象に,バースプランの認識と出産満足度との相 関を求めた。経産婦のバースプランの認識得点の平均 値は40.3 6.9,出産満足度得点の平均値は75.8 9.6で あった。バースプランの認識と出産満足度における Pearsonの相関係数は,0.442で中程度正の相関が認め られた(p<0.01)。 5.バースプランの認識に関連する要因  バースプランの認識と,母親学級受講の有無,お産 に関する情報収集の有無,バースプランに関する情報 収集の有無,バースプランに関する相談の有無,バー スプランへの期待やこだわりの有無との関連を表5に 示す。バースプランに関する情報収集あり,バースプ ランに関する相談あり,バースプランへの期待やこだ わりありの場合,それぞれない場合よりもバースプラ ンの認識が有意に高かった(p<0.01)。  また,バースプランへの期待・こだわりの有無と バースプランに関する情報収集の有無,バースプラン に関する相談相手の有無との関連について表6に示す。 表4 出産満足度を従属変数とした重回帰分析における各独立 変数の標準偏回帰係数 標準化係数 p値 年齢 分娩歴 分娩様式 分娩時間 出生児体重 褥婦から見た児の状態 家族の児の出生に対する家族満足度 医療処置への説明・同意 医療スタッフの理解・尊重ある対応 バースプランの認識 0.008 0.171 ­0.152 ­0.120 ­0.037 0.152 ­0.002 0.075 0.231 0.260 ** ** * ** ** ** 0.874 0.001 0.001 0.011 0.408 0.001 0.958 0.166 0.000 0.000 調整済みR2=0.361**  **:p<.01  *:p<.05 バースプランの認識得点 自然分娩(n=244)異常分娩(n=118) 38.9 7.738.8 6.6 ns 0.559 出産満足度得点 自然分娩(n=244)異常分娩(n=118) 73.7 10.068.6 11.3 ** 0.000 **:p<.01    ns:有意差なし 表5 バースプランの認識得点と各要因との関連 平均値 U検定(p値) 母親学級受講 あり(n=252)なし(n=117) 39.3 7.038.0 7.8 ns 0.159 お産に関する情報収集 あり(n=358)なし(n=11) 39.0 7.235.6 9.2 ns 0.177 バースプランに関する情報収集 あり(n=134)なし(n=231) 40.4 6.637.9 7.6 ** 0.002 バースプランに関する相談 あり(n=239)なし(n=127) 39.9 6.636.8 8.1 ** 0.000 バースプランへの期待・こだわり あり(n=261)なし (n=33) 39.9 6.633.2 9.8 ** 0.000 **:p<.01  ns:有意差なし

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褥婦のバースプランの認識と出産満足度との関連に関する研究 バースプランへの期待・こだわりの有無とバースプラ ンに関する情報収集の有無,バースプランに関する相 談相手の有無との間で関連があることが認められた (p<0.05)。  バースプランに関する自由記述のうち,医療者への 要望として,初産婦では,「具体的な例が欲しかった」, 「医療者と話し合いたい」,経産婦では,「家族の意見 を取り入れてほしい」といった意見が見られた。他に, 「母児ともに無事であることが一番」や「こちらの思い 通りにいかないのであれば,選択肢の中に項目を入れ ないでほしい」という意見もあった。

Ⅳ.考   察

1.出産満足度と関連のある要因  本研究の調査対象者の出産満足度1項目の平均値は, 初産婦3.80 0.62,経産婦4.13 0.55であり,初産婦よ りも経産婦の方が高かった。常盤(2001)の報告結果 の初産群3.81 0.60,経産群4.01 0.47とほぼ同様の結 果が示された。  本研究の出産満足度と関連のある要因は,分娩歴, 分娩様式,分娩時間,褥婦から見た児の状態,医療ス タッフの理解や尊重ある対応,バースプランの認識で あった。出産満足度に関連する要因は,中野・森・前 原(2003)が異常疑いによる心配の有無や元気な出生 児の存在,安全・安楽への配慮,理解ある・尊重し た態度などを挙げており,常盤(2001)は,分娩様式, 分娩時間,出産時の不安などを報告している。本調査 でも,分娩歴,分娩様式,分娩時間,児の状態,スタ ッフの理解や尊重ある対応について一致していた。さ らに本研究において,バースプランの認識も出産満足 度に関連しうる要因の一つとして抽出された。 2.バースプランの認識と出産満足度との関連につい ての検討  出産満足度には多くの要因が関わっており,バース プランの認識と出産満足度との関連を検討するために, 出産満足度に関わる他の要因による影響を考慮しなけ ればならない。本研究ではバースプランの認識と出産 満足度を述べる上で,分娩経過に異常がなかったも のを抽出した。これは,分娩経過に異常があった場合, バースプランの認識が高くなれば,出産満足度が高く なるわけではないことを前提にしている。出産満足度 に影響を及ぼす要因として分娩の異常や産科スタッ フの対応が報告(Cranley, Hedahl & Pegg, 1983; Norr,

Block & Charles et al., 1977)されており,中野・森・

前原(2003)も満足なお産についてまず分娩時異常な どの心配がなく,安全性が確保されることが前提であ ると述べている。これらの先行研究や本研究結果から, バースプランと出産満足度との関連を述べる上で,ま ず分娩時の異常や児の良好な状態などを考慮しなけれ ばならない。これは,自由記述の母児ともに無事であ ることが一番であるといった意見からも,母児の状態 が良好であることが,自身の出産体験を肯定的に捉え る前提となっていることがわかる。  そこで,重回帰分析により得られた結果を参考に7 つの条件に該当するものを抽出し,初経産別で検討し た。その結果,初産婦,経産婦ともに,バースプラン の認識と出産満足度には関連があることが認められた。 つまり,バースプランの認識が高いほど出産満足度が 高くなることがわかった。横手・社方・百田他(2000) は,出産にとても満足していた場合でもバースプラン が役に立ったか・立たなかったかということに有意差 はなかったと報告している。しかし,本研究では,褥 婦がバースプランをどのように認識しているかという ことが出産満足度に影響を与えていることが明らかと なった。  今回研究者が作成したバースプランの認識10項目 は,バースプランそのものの内容についてではなく, バースプラン作成のプロセスで褥婦が認識するバー スプランの目的を挙げている。横手・社方・百田他 (2000)は,バースプランの意義はバースプランを作 成し,その実現に向けて妊産婦と医療者が協力して いくプロセスそのものにあると述べている。従って, 表6 バースプランへの期待・こだわりの有無とバースプランに関する情報収集・相談の有無との関連 期待・こだわりあり 期待・こだわりなし χ2検定 バースプランに関する情報収集 ありなし 109151(95.6%)(84.4%) 528( 4.4%)(15.6%) * バースプランに関する相談 ありなし 182 78(93.3%)(79.6%) 1320( 6.7%)(20.4%) * *:p<.05

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をどのように妊産婦が認識していくかということが大 切であり,そのことが出産満足度につながると考える。 これは,妊産婦がバースプラン作成のプロセスの中で, 家族を含め自身のお産について考えるという積極的な 姿勢を持つことから始まる。さらに妊産婦は,医療者 側が妊産褥婦個々のニーズに応じるための支援体制を とっていることを理解することになり,バースプラン の認識を高め,出産満足度につながったのではないか と考える。 本研究の結果からも,分娩経過に異常がなかった場合 においてバースプラン作成のプロセスは出産満足度を 高めるひとつのアプローチであり,バースプランの活 用は満足なお産を提供する上で重要であるということ が再認識された。 3.分娩歴からみたバースプランの認識と出産満足度 との関連  バースプランの認識と出産満足度との関連について, 初産婦よりも経産婦の方が強い相関が見られた。経産 婦は初産婦よりも分娩時間も短く,出産満足度に関連 する他の要因が少なく,バースプランの活用がより出 産満足度に反映されるのだと思われる。バースプラン に対する期待やこだわりは分娩歴による差は見られな いが,経産婦は前回のお産をもとにバースプランを具 体的に記載し,理想とするお産をイメージすることが できる。つまり経産婦は,初産婦よりもバースプラン を活用しやすい状況にあり,十分に活用できたかとい ったことが出産満足度に強い影響を与えることが示唆 される。従って,医療者はバースプラン作成のプロセ スの中で特に経産婦に対しては前回のお産の経験をも とにしたアプローチを行い,バースプランを十分に活 用させていくことが出産満足度を高めることにつなが るのではないかと考える。 4.バースプランの認識に関連する要因  バースプランに関する情報収集や相談が行われ, バースプランへの期待やこだわりがあると,バースプ ランの認識が高くなることが明らかとなった。このこ とから,医療者は妊婦がバースプランに関する情報収 集や相談を積極的に行えるような援助や,バースプラ ンへの期待やこだわりを高めるようなアプローチを する役割が求められる。竹原(2009)は,出産への期 産への期待感を高める援助を行うことが求められる。 Whitford, Hillan(1998)によると,助産師や医師がバー スプランを読んでいたかわからないとの報告もあり, バースプラン作成のプロセスの中で医療者と妊産婦間 で意思確認をフィードバックしながら,医療者は妊産 婦が記入したバースプランを尊重していく姿勢を表わ す必要があると考える。一方で自由記述にも,「思い 通りにいかないのであれば,選択肢の中に項目を入れ ないでほしい」という意見があるように,バースプラ ンへの期待やこだわりがあり,希望するバースプラン 通りの出産にならなかった場合,出産満足度が低くな ることが予測される。このことについて石川ら(2004) も,分娩の経過中,予想外の体験により思い描いてい た分娩とのギャップから,分娩が不満足な体験に終わ ることがあると述べている。そのため,バースプラン 通りにいかないことがしばしば発生することなどを, バースプラン作成のプロセスの中で医療者と妊産婦が 十分に話し合いを行い,妊産婦が納得のいく形でお産 に臨めるようにする必要がある。また,もし出産が期 待どおりでなかった場合,助産師と自由に話し合うこ とによって,肯定的な自己概念の回復を助ける(新道, 1990)といわれてり,やむを得ずバースプランの希望 がかなわなかった場合,助産師は分娩後に褥婦と出産 体験を振り返ることで褥婦が出産体験を肯定的に受け 止められるように援助していく必要があると考える。  これらのことから,個々で異なる妊産婦のニーズに 応じてお産を提供していくために,バースプランを活 用し,妊産婦のバースプランの認識を高く持つように することが出産満足度を高める要因の一つであること が明らかとなった。そして,出産満足度を高めるバー スプラン作成のプロセスの中で,助産師が妊娠期より 積極的にバースプラン作成に向けて情報提供や相談に 応じること,妊産婦が期待やこだわりを持ってお産に 臨めるようにアプローチすることに加え,妊産婦の意 思をフィードバックして医療者と妊産婦が確認し合う ことが重要であると示唆された。 5.今後の課題  分娩前のバースプランとともに,分娩後のバース レビューは出産体験を肯定的にするものである。バー スプランの認識を高くもつことが満足したお産につな がったかは,バースプランとバースレビューを照合す

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褥婦のバースプランの認識と出産満足度との関連に関する研究 ることで個別的に明らかにすることができる。従って, バースレビューという観点からもバースプランのあり 方を考えていかなければならない。また,今回研究者 が作成したバースプランに対する認識の尺度のCron-bachのα係数は0.914と信頼性の高いものであり,今 後対象者を変えて使用していくことで信頼性を確認し, 今後の研究に有用なものかを検討する必要がある。そ して今回の調査は3施設を対象として行ったが,バー スプランの書式や運用方法で妊産婦のバースプランの 認識の違いが生じる可能性もあるため,今後これらを 統一させ,調査を行っていくことが課題である。

Ⅴ.結   論

 分娩経過に異常がなかった場合,バースプランの認 識は出産満足度に影響することが明らかとなった。こ のことから,より満足なお産を提供するためにバース プランの活用を進めていくべきであり,妊産婦と関わ る機会が多い助産師は特に,バースプラン作成のプロ セスの中で積極的にバースプランの認識を高めるよう に相談に応じたり,情報提供を行ったりするなど妊産 婦に働きかける必要がある。 謝 辞  本研究にご協力いただきましたお母様方,施設長,施設 のスタッフの皆様に心から感謝申し上げます。また,研究 を進めるにあたって,ご指導をいただきました大分県立看 護科学大学品川講師,甲斐研究科長,田中講師に深謝致し ます。  本研究は,大分県立看護科学大学大学院修士課程修士論 文に加筆・修正したものである。 文 献

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参照

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