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寄生者・共生者の宿主となる甲殻類(シンポジウム報告 甲殻類の寄生・共生と生物多様性)

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Cancer 22: 41-44 (2013)

Carcinological Society 01 Japan

寄生者・共生者の宿主となる甲殻類

C ru stacean s a s h osts for p arasites a n d sym b io n ts

伊 谷 行

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ani . は じめに 甲殻類は,様々な宿主を相手に寄生・共生関係を 結んでおり,本特集でも,他の著者らにより,いく つかの興味深い関係が紹介されている . 本稿では, 逆に,十脚目の甲殻類が他の寄生者や共生者の宿主 となる例について紹介する . た だし,フクロムシ類 や吸虫類など体内寄生者( 内部寄生者) と甲殻類宿 主の関係については扱わない. 寄生 ・共生関係を理解するためにはいくつかの視 座が必要である. そもそも ,近接して共に暮らす2 者の関係すべてが共生であり,その関係から 2 者と もに利益を受ける場合を相利共生,片方が利益を受 け,他方に利害がない場合を偏利共生,片方が利益 を受け,他方に害がある場合を寄生と細分される . 宿主と共生者の閣の利害関係は,そ の進化を考える うえで最重要ではあるものの,研究が進まないと分 からないことが多い. 本稿では,寄生を含むすべて の関係を単に共生と呼び,一部,寄生関係である こ とが明白なものは寄生と呼ぶ. 寄生者や共生者にとって,宿主との関係が必要不 可欠であるかどうかも重要である. 必ずしも宿主を 必要としない場合,その関係は条件的であり (facul-tative),一方,宿主との関係がなくては,生存や繁 殖ができない場合,その関係は絶対的である (oblト gate) . さらに,利用する宿主が特定の種や属に限 l 高知大学教育学部 干780-8520 高知市曙町 2-5- 1

Faculty of Education, Kochi University, 2-5-1 Akebono, Kochi 780-8520, Japan

E-mail: itani@ kochi-u.ac.jp

られるかどうか,つまり,宿主特異性が高いか低い かということも,寄生 ・共生関係の進化を考えるう えで欠くことのできない視座となる. しかし,これ らについても研究が進まないと分からないことが多 宿主利用の位置関係は寄生者 ・共生者の生態を考 えるうえで最も分かりやすく,かっ重要な区分を与 える. 寄生者や共生者が甲穀類を宿主とする場合, 体内寄生を除くと,その利用場所は2つに分類され る. 甲殻類の体表( 体表共生) と,甲殻類が構築す る巣穴の内部( 巣穴共生) である . 以下,体表共生 と巣穴共生について, いくつかの トピ ックを紹介す る. 引用文献については, Ross (1983),伊谷 (2003, 2004, 2008),長津 (2008) を参照のこと. これらに 収録されていないものについてのみ引用を示した. 圃 再 表 瓦生 体表共生の例として,ウズマキゴカイ科の多毛類 やフジツボ類などが大型の甲殻類に付着することが ある. これらの多くは,岩や他の基質を利用する 付 着生物が,甲殻類の体表に付着したものであり ,そ の関係は条件的である. フジツボ類と同じ蔓脚類で あっても ,エ ボシガイ類の一部は甲殻類の体表や鯨 を着底場所として選択的に利用しており,その関係 は絶対的である. 十脚類の甲羅に二枚員類が付着することもある. イガイ類が条件的に,あるいは偶然に付着する場合 もあるが,これは稀なケ ースであり,共生者の多く は絶対共生者である. シャコ Oratosquilla oratoria の 胸部に付着する コフ ジガイ Pseudopythina subsinuata 日本甲殻類学会

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図1 . 甲殻類の体表共生者.

A. シャコ Oratosqui//a oratoriaの第3 歩胸l基部に付着するコフジガイ Pseudopythina sllbsinuata. B. ヨコヤ アナジャコゆogebia yokoyaiの胸部に付着するマゴコロガイ P eregrinamor ohshimai. C.ヘイケガニ H eikea japonlcaが背負 っているウミサボテン Cavernlllaria obesa. D. スナギンチャクヒメヨコパサミ Paguristes

palythophilllsが利用する貝殻に付着するスナギンチャク類 EpizoanthllsSp. C

(図I A) が知られているほか,オサガニヤドリガ、イ

P selldopythina m acrophthalmensisやガンヅキ A

rthriti-ca japonicaなど小型の二枚貝が干潟のカ ニ類に付着

する. これらはウロコガイ科に属しているが,一 方,イタヤ 力。イ科のハリナデシコ D electopecten vit-rells macrocheiricolllsは深海でタカアシガ

ニMacro-cheira kaempferiを付着基質として利用している . エビヤドリムシ科の等脚類は十脚類の鯨室に雌雄 のペアで付着し吸血する寄生者である. 宿主には寄 生去勢の影響が起きるため,宿主の個体群動態を考 えるうえで無視できない重要なグループである . 鯉 室内は解剖学的には体表の一部ではあるが,外界へ の露出の程度からすると感覚的には体内寄生に近 い ( 特に,カニ類ではなおさらである) . ただし,エビ ヤドリムシ科はコエビ 類,アナジャコ類,ヤドカリ 類の腹部に付着するクボル ープもいるため ,体表共生 に含めても良いだろう. エビヤドリムシ類は宿主特 異性が高いため穫の多様性も高く,日本からは100 種近くが知られている. 十脚甲殻類の体表が産卵基質となるケ ースも体表 42

I

Cancer 22 (2013) 共生の一部と考えることができる. カニビル類がズ ワイカボニ Chionoecetes opilio の甲羅に産みつけた黒 い卵塊は,冬の風物詩ともな っている . 深海で産卵 基質が限られる中で, カニビル類が甲殻類の甲羅を 利用するようになったとすると,ハリナデシコと同 様の進化が起きたものと考えることができる. モク ズガニ科な どのカ ニ類が藻類の破片を甲羅に 付着させたり (decoration). カイカムリ科などのカ ニ類が海綿類など第4. 5胸脚を用いて背負ったり する (carrying) 行動は,どちらが宿主でどちらが 共生者であるか,混乱させられる しかし ,共生関 係にある2者のうち ,大型のものが宿主であるとす れば、,体表共生の一部とも考えるこ とができる 著 者は春の大潮の最干潮時に,へイケガ‘ニ H eikeopsis japomcaがウミサボテン C avernularia obωαを背負う 姿を多数目撃した( 図IC). へイケガ、ニはこれまで 貝殻などを背負うことが知られていたが,他に背負 うものない場合にウミサボテンを条件的に利用した のだと考えられる( 伊谷 ・藤原. 2001). ヤドカリ類が背負う貝殻の表面や内部もさまざま

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な寄生者 ・共生者に利用される (Williams & Mc-D ermott, 2004). これは,体表共生の特殊なもので あるが,殻内の空間利用という意味では,巣穴共生 に似た要素も含まれており,ヤドカリ共生とでも名 付けた方がよいかもしれない. ヤドカリ類とイソギ ンチャク類の閣の相利共生が有名であるが,ここで はスナギンチャク類との関係を紹介する . スナギン チャクヒメヨコバサミ P aguristes p alythophilusが背 負う貝殻にスナギンチャク類が付着することが知ら れているが,同じ貝でも生貝では異なるスナギン チャク類が付着することが分かった( 図10). スナ ギンチャク類の付着様式の特異性を考えると ,ヤド カリとスナギンチャク類の聞には興味深い共生関係 があるものと予想される (R eimer et al., 2010).

冨嘉夫英生

甲殻類の巣穴共生として最も有名なものは,テッ ポウエビ類とハゼ類との関係である. テッポウエビ 類が生息場所を提供する一方で,ハゼ類は外敵を見 張っており,ハゼ類が不在であるとテッポウエビは 採餌や巣穴の修繕などの巣穴外活動を控えることが 知られている (K arp1us& T hom pson, 2011 ). 多くは 絶対的相利共生となっており,様々な種が関係して いる. 巣穴共生で,続いてよく知られているのが,アナ ジャコ類の巣穴共生者であろう. アナジャコ類は干 図2. 甲殻類の巣穴共生者. 寄生者・共生者の宿主 となる甲殻類 潟に Y 字状の大型の巣穴を形成する十脚目甲殻類で ある . 巣穴共生者としては,キセルハゼ'Gym nogo-bius cy/indricusやヒモハゼ Eutaeniichthys gilli などの 魚類( 図2 A ), トリウミアカイソモドキ Seslroslom a

torium iiなどのカニ類( 図28 ), クボミテ y ポウエ

ビStenal}フheops anacanthusなどのテッポウエビ類な どが知られる . また, クシケマスオガイ Cryptom y a trunca仰はアナジャコ類の巣穴の中に生息するわけ ではないが,巣穴に水管を伸ばしているため,巣穴 共生者の特殊な例と見なすことができる. これらの 巣穴共生者の研究は単なる採集事例の記述にとど まっていることが多く ,絶対共生なのかどうか,宿 主特異性の程度など,分からないことがあまりにも 多い. 筆者の研究室では, ヒモハゼの巣穴利用の定 量を皮切りに研究を始めたところである . さて,多毛類のアナジャコウロコムシ H esperonoe hw anghaiensisは,幼体はアナジャコの体に付着し 体表を動き回っているが,成体は巣穴壁で過ごすな ど,巣穴と体表が一連の生息環境となっている. 巣 穴共生者のトリウミアカイソモドキと同属の未記載 種シタゴコロカ。ニ Sestrostom a sp.は, アナジャコ類 の腹部に常にしがみついている. アナジャコ類の胸 部に付着するマゴコロガイ Peregrinamor ohshimai は,扇平な形態と寄生的な生態をもち,甲殻類の体 表共生者のなかで傑出した存在であるが( 図 18), 近年,本種がウロコガイ( 上) 科に属することが確 認された (G oto et al., 2012). ウロコガイ科の二枚

A. ヨコヤアナジャコゆogebia yokoyaiの巣穴( 矢印) を出入りするヒモハセ" Eutaeniichthys gilli. B . アナ ジャコ Upogebia m ajor の巣穴を利用するトリウミアカイソモドキ Sestrostom a toriumu.

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貝類 は, 無脊椎動物の体表や巣穴壁に付着するもの が多数含 まれている . これ ら3 種の 体表共生者か ら は,甲殻類の巣穴の中で,巣穴共生者から 体表共生 者, または体表共生者から巣穴共生者 とい った進化 が活発 に起 きていること を推測する ことができ る. 他 の造巣性 甲殻類で も,級密な 研究を行 い,比較可 能 な事例を積み上 げる ことが肝要であろ う. . 謝 辞 本研究の一部 は, JSPS科 研費24510328の助成を 受け た ものです.

国文

Goto, R ., Kawakita, A., Ishikawa, H., Hamamura, Y.,

&

Kato, M ., 2012. Molecular phylogeny ofthe bivalve su perfamily Galeommatoidea (Heterodonta, Veneroida) reveals dynamic evolution of symbiotic lifestyle and in-terphylum host switching. B M C Evolutionary Biology,

12, a口no. 172. 伊 谷 行,2003. 巣 穴 の 中 の 共 生 関 係. 朝 倉 彰 ( 編) , 甲殻類学,東海大学 出版会, 東京,pp 233-253. 4 4

I

C a n伺r22 (2013) 伊谷 行,2004. エ ビの上で二人で暮らすー エビヤ ド リムシの生活史と穫の多様性. 長津和也 ( 編) , フィ ール ドの寄生虫学,東海大学 出版会,東京, pp.13-26 伊谷 行,2008. 干潟の巣穴をめぐる様々な共生. 石 橋信義 ・名手日行文( 編) ,寄生と共生,東海大学 出版会,神奈川,pp. 217-237 伊谷 行 ・藤原秀樹,2001 . ヘイケガニ, ウミ サボ テ ンを背負う . 南紀生物,43: 47-49

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