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日本甲殻類学会第55回大会を開催して

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Academic year: 2021

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大会報告

日本甲殻類学会第

55回大会を開催して

Some afterthoughts on managing the 55th annual meeting of CSJ

猿渡敏郎

Toshiro Saruwatari

2017年10月6日から8日に東京大学大気海洋研究 所(千葉県柏市)において,日本甲殻類第55回大 会を開催いたしました.大会の概要は大土直哉博士 が「大会だより」にて紹介してくださっていますの で,私のほうでは今大会で新たに取り入れたネット 参加申し込みや中高生研究発表会などについてご紹 介いたします.少しでも今後の大会運営の参考にな ればと思います. ありがたいことに,アクアワールド茨城県大洗水 族館の田中宏典さんと東北大学(現在は福山大学) の南卓志博士とのマンジュウガニ類の幼生の発育史 に関する研究が,2011年に日本甲殻類学会の学会 賞を受賞いたしました.首都圏にある大学の常勤教 員が栄えある学会賞を頂戴した以上,何かしら日本 甲殻類学会に貢献しなければならないと思い,中央 水産研究所の小西光一博士に相談を持ち掛けたとこ ろ,大会長をしてはどうかというお話がでました. 過去に何度も共同利用シンポジウムのコンビーナー や,日本水産学会,日本魚類学会,水産海洋学会の 大会運営委員,日本DNA多型学会第25回学術集 会の大会長を経験していることから,不安はありま したが,どうにかなるだろうと思い,お引き受けし た次第です. 予算など 何 は と も あ れ お 金 で す.2016年12月に(公財) 千葉国際コンベンションビューローへ開催助成金を 申請しました. 次いで予算案の作成です.過去の参加人数や大会 開催補助金などについて学会本部へ問い合わせたと ころ,参考になる情報を得ることはできませんでし た.正直これには戸惑いました.今後,日本甲殻類 学会として,大会の参加者数などの基本データを蓄 積していくべきです.運営委員の記憶をもとに参加 者数を予測して予算案を作成しましたが,後日大幅 な修正を行っております. 参加・発表申し込み 今回,ネット経由での参加・発表申し込みを行う こととしました.省力化と人為的ミスを排除するた めです.本業務のほかに,参加者の名札作成,領収 書の発行,講演要旨集の印刷も株式会社コームラへ と発注しました. 会告の作成・発送 運営委員で日程,参加費,懇親会費などを協議し たのち,会告を作成し,2017年6月8日に発送しま した.封筒詰めなどの作業には,東大大海研の甲殻 類学会メンバー総出で当たりました.学会本部から 送っていただいた会員名簿をもとにフリーウェアで 宛名ラベルを作成しました.封筒はネットで発注し ました.シール式の切手は作業効率を大いに上げて います.大会長印もネットで購入しました.これら 品々の代金は,一旦私が全額立て替えております. 大会HP 大会HPの立ち上げと管理は,村田明久博士に担 当していただきました.ネット会社との折衝,会告 や最新情報のアップロードなど,実質的な作業が不 定期に発生し,大変だったと思います.特にHPの

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容量制限が厳しく,立ち上げ当初には苦労されたよ うです. 中高生研究発表会 本大会が初となる中高生研究発表会は,元高校教 諭の橋詰知慶博士の発案と希望によります.私自身 出身高校などで出前授業を多数こなしており,次世 代の研究者の卵を発掘・刺激する上で有効だと考 え,実施することとしました.甲殻類に関する研究 に絞って募集をかけることにより,将来の会員,特 に学生会員獲得をもくろんでのことです.7月初旬 に生物部,自然科学部のある全国74校へと案内を 郵送しました.受付などの実務は橋詰さんが担当し ました. 7演題の申し込みがありました.いずれの発表 も,中高生によるものとは思えない,興味深い,質 の高い研究発表でした.大会運営委員が採点者とな り,最優秀賞1点,優秀賞1点,特別賞 1点,奨 励賞4点を授与しました.各賞の受賞演題と高校は 以下の通りです. 最優秀賞 「なぜ塩水は毒なのか?―カニ類の耐塩性―」 鈴 鹿工業高等専門学校 優秀賞 「海のスターの大好物~ウミホタルVargula hilgen-dorfiiの食性について~」福岡工業大学附属城東 高等学校 特別賞 「ニホンザリガニ保全プロジェクト」大館鳳鳴高 等学校 奨励賞 「国外のカワリヌマエビ属にミナミヌマエビは浸 食されているか.~遺伝子解析と交雑実験による 検証~」 神戸高等学校 「干潟のカニの乾燥対策―吸水毛(仮称)の形態 と機能―」 広島学院中学校&広島なぎさ中学校 「田園甲殻類の休眠打破について」 熊谷西高等学 校 「アメリカザリガニProcambarus clarkiiの摂食行動 について」 千葉東高等学校 渉外活動 関連企業13社へ大会会期中のブース展示と要旨 集への広告掲載を依頼しました.残念ながらブース 展示の申し込みはありませんでしたが,ビジョンバ イオ株式会社が要旨集へ広告を掲載してくださりま した. プログラム・要旨集の編集作業 8月31日(木)に事前参加申し込みと発表申し込 みをいったん締め切りました.発表の申し込み数が 少なかったので,参加・発表申し込み期間を9月6 日(水)17 : 00まで延長しました.その結果,事前 参加申し込み59名.口頭発表14題.ポスター発表 19題.招待講演1題となりました. 9月7日(木)に第二会運営会議を開き,大会プ ログラム,会期中の役割分担,予算について議論し ました.要旨の確認作業は大土さんが,プログラム と要旨集の編集作業は奥野淳兒博士が担当し作業に あたりました. 招待講演は,極地研究所の佐野雅美博士にお願い することとしました.東大大海研で甲殻類学会を開 催することから,是非海洋のカイアシ類に関する研 究紹介をして欲しいという,私と大土さんの強い希 望からです. 従来,ポスター発表は奇数番,偶数番でコアタイ ムを分けていました.これではポスター発表を行う 方は半分のポスターの説明しか聞くことができませ ん.そこで今大会ではポスター発表をABCの三グ ループに分けてコアタイムを設けました. 中高生研究発表会ではなく,一般枠で学会の正会 員である小学生から口頭発表の申し込みがありまし た.発表の可否について,運営委員会と朝倉会長と で議論をしました.中高生研究発表会とのバラン ス,小学生が一般会員になっているという会則の盲 点,発表の質の担保などが主な論点です.最終的に は,講演要旨の内容を確認し運営委員会で検討し, 発表を認めることとしました.

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開催準備 プログラムと要旨集の編集作業が軌道に乗り,い よいよ大会本番に向けた準備作業に入りました.休 憩室で提供する茶菓子類の購入,お弁当の発注,看 板や各種掲示物の準備,人員配置の決定,物品の確 認作業などです.物品購入は極力ネット購入で済ま せました. 懇親会は,大海研一階にある「おさかな倶楽部は ま」にお願いしました.甲殻類学会の懇親会らしく するために,タカアシガニを戸田から入手するよう お願いしました.さらに,会期中に大会運営委員と ボランティアがユニフォームよろしく着用すべく, 戸田観光協会からタカアシガニ柄の法被をお借りし ました. 所内で学生ボランティアを募りました.大変心苦 しくはありましたが,出費を抑えるべく,大会会期 中にお手伝いしていただいた大学院生,ポスドクの 方々へは,アルバイト代などは支給しませんでし た.代わりに,会期中のお弁当,懇親会&反省会 への参加は無料としました.大会終了後,全員に大 会長名で大会運営ボランティア証明書を発行し,お 渡ししました. 大会当日 10月6日(金) 午前中から会場の設営準備に入り,午後の貝類学 会との共催シンポジウム開催中は,事前参加申し込 み者への対応のみとし,当日参加の受付はしません でした.実際のプログラムについては「大会だよ り」をご参照ください. 日本甲殻類学会・日本貝類学会共催シンポジウム 「捕食・被食と殻の役割」 10月7日(土) 開会式,口頭発表11題,ポスター発表6題と中高 生研究発表4題のコアタイム,総会を実施.当日参 加13名. 招待講演 「中層性カイアシ類摂餌生態:雑食・デトリタス 食性種とマリンスノー」 佐野雅美博士 国立極地研究所 10月8日(日) 口頭発表3題,ポスター発表13題と中高生研究発 表3題のコアタイム,集合写真撮影,中高生研究発 表会表彰式,総会,国際シンポジウム,閉会式を実 施. 10月9日(月,祝日) 日本甲殻類学会 公開シンポジウム 「アメリカ ザリガニとの新しい関係」 会場:すみだ生涯学習センター(ユートリア)マ スターホール 総 括 大会運営委員の皆様,学生ボランティアの皆様の おかげで,大過なく,無事に大会を終了させること ができました.心から御礼申し上げます. 大会長印の作製,ネット経由の参加・発表申し込 み,中高生研究発表会,小学生による研究発表は, いずれも日本甲殻類学会にとって初の試みです.い ずれも問題なく終了いたしました.以下,気がつい た点を羅列させていただきます. 過去の開催実績に関する情報:参加者数,演題数 などを学会本部で一覧表にしておけば,予算案作成 の上で大いに参考になります.Cancerのバックナン バーに掲載された「大会だより」から情報を拾い集 めるのは非効率的です.甲殻類学会として是非始め ていただきたい情報の蓄積です.会員の動静,学会 の活動レベルを知る上でも有益な情報だと思いま す. 学会からの開催補助金:これは,あってしかるべ きです.過去に大会運営委員や大会長を務めた学会 は,金額の差こそあれ,いずれも開催補助金を支給 していました.学会から補助があれば,学生の参加 費を安くするなど,会員サービスにもつながりま す.過去の大会でも,参加費の振込みがあるまでは 会告の印刷・郵送費は大会委員長個人が立て替えて いたと思います.大会初日に評議員の方々へお声を 掛けて評議員会で議論していただいた結果,来年の 大会からは会告の印刷・郵送費の実費程度は補助金 が出るようになりました. 地元自治体からの補助:ちば国際コンベンション ビューローからの補助金には大いに助けられまし た.首都圏開催にもかかわらず,地元から補助金を

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いただけたことは非常にありがたいことです.注意 すべきは,助成の申し込みは早めに,大会開催の前 年度中に済ませる必要がある点です. 会告の印刷・発送業務:幸い大海研には甲殻類学 会会員が複数名おりましたので,人海戦術でこなす ことができました.人手さえあれば,甲殻類学会の 規模であれば業者委託の必要はないと思います. 参加・発表申し込み:村田さん,朝倉会長のおか げで,大会HPの立ち上げは比較的スムーズにでき たと思います.株式会社コームラが用意したネット 経由の受付システムも,大きな問題なく受け付け業 務をこなしました.個人情報であり,担当運営委員 による誤字脱字といった人為的ミスを未然に防ぐと いった意味でも,ネット経由の参加・発表の申し込 み受付は有効だったと思います.しかし,参加人 数,演題数からすると,メールでの個別対応でもこ なせたかもしれません.これは今後の大会運営委員 会が費用対効果を勘案して,個別に判断することだ と思います. プログラム・要旨集の編集作業:参加・発表申し 込み期間を延長したために,担当された奥野さんと 大土さんは大変だったと思います.毎年のことだと は思いますが,要旨の訂正依頼がそれなりの件数あ りました.ここは会員各位,運営委員の負担を軽減 すべく,十分配慮していただきたい点です.経費節 約のために講演要旨集はpdf入稿としました.最終 的な細々とした編集作業も大変だったと思います. 一般研究発表:ポスター発表を3セッションに分 けました.このため,口頭発表会場とポスター発表 会場間の移動をせわしなく感じた参加者もおられた かもしれません.しかし,各セッションのコアタイ ムではポスターの前で活発な議論が繰り広げられて 写真2. ポスター発表の様子. 写真3. 懇親会のメイン,タカアシガニ. 写真4. 高校生研究発表会 表彰式. 写真1. 小学生による研究発表の様子.

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いたことから,この方式は導入してよかったと思い ます.ポスター数が多ければ,4セッションに増や しても良いかもしれません. 小学生が一般枠で研究発表を申し込んできたとき には,運営委員会として戸惑いを隠せませんでし た.いざ発表を聞くと,発表練習をかなりつんでき たようで,下手な大学院生よりも上手に発表してい ました.子供ならではの目線での観察結果の披露も あり,非常に質の高い発表でした.指導されたご両 親と関係者に敬意を表します.発表した兄弟の将来 が楽しみでなりません.残念というか寂しいのは, 彼らが大学へ進学したときには,参加者の1/5程度 が定年を迎えていることです.小学生の入会は想定 外かもしれませんが,今後会員資格に関わる会則の 改定が必要性でしょう. 中高生研究発表会:今回,発表対象が甲殻類に限 定されていたにもかかわらず,7つの研究発表が行 われました.過去の経験から,秋に開催される学会 での中高生研究発表会は,開催時期によって参加校 数が大きく変わります.二学期は,中間試験,修学 旅行,体育祭,文化祭などの学校行事が多く,生 徒,教諭共にそちらに縛られるからです.甲殻類学 会としては初の試みでしたが,十分成功したと思い ます.指導され,引率された先生方に御礼申し上げ ます. 採点は,5名の運営委員が最優秀,優秀,及第の 発表をそれぞれ一題選ぶ方式としました.採点基準 は以下のとおりです. 1, 独創的であるか. 2, データの質・量が十分か. 3, 図表が見やすく,解析方法が妥当か. 4, 考察が十分に行われているか.正しいか. 5, ポスターの質.わかりやすいか,ひきつけら れかなど. 6, 説明のわかりやすさ,熱心さ,積極性など. 7, 中高生らしさ.外部から過度の指導が行われ ていないかどうか.中高生独自の研究である か. 厳正な審査により受賞校が決定しました. 中高生の関心を甲殻類へと向けさせ,関連学部学 科へと進学してもらい,次世代の研究者となっても らう.そのような流れを作り出すためにも,中高生 研究発表会は,甲殻類学会として今後も継続すべき です. 日本甲殻類学会第55回大会 運営委員 大会長 猿渡敏郎 東京大学大気海洋研究所 運営委員 大土直哉 東京大学大気海洋研究所  運営委員 奥野淳兒 千葉県立中央博物館海の 博物館 運営委員 橋詰知慶 戸板女子短期大学 運営委員 村田明久 千葉県立中央博物館海の 博物館

ボランティア Carlos Andres Satizabal Ramirez  東 京大学大気海洋研究所 ボランティア 神吉隆行 東京大学大気海洋研究所 ボランティア 岸波 興 東京大学大気海洋研究所 ボランティア 小玉将史 東京大学大気海洋研究所 ボランティア 瀬尾絵理子 東京大学大気海洋研究 所 ボランティア 野本昌代 東京大学大気海洋研究所 *所属:東京大学大気海洋研究所 住所:〒277–8564 千葉県柏市柏の葉5–1–5 Atmosphere and Ocean Research Institute, The Universi-ty of Tokyo, 5–1–5 Kashiwanoha, Kashiwa, Chiba 277– 8564, Japan

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