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随伴性に基づく体験の回避指標の反応性-広場恐怖症患者を対象とした検討

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-38 372

-随伴性に基づく体験の回避指標の反応性-広場恐怖症患者を対象とした検討

○嶋 大樹1,2)、井上 和哉3)、熊野 宏昭4)、武藤 崇1) 1 )同志社大学心理学部、 2 )日本学術振興会特別研究員、 3 )早稲田大学大学院人間科学研究科、 4 )早稲田大学人間科 学学術院 【目的】 体験の回避は,特定の私的出来事と接触し続けるこ とを避けようとし,当該私的出来事の形態や頻度,ま たは文脈を変えようとする試みである (Hayes et al., 1996)。近年,日常生活下における体験の回避を 測定するために,Ecological Momentary Assessment (EMA; Stone & Shiffman, 1994) が採用されている (e.g., Kashidan et al., 2013; 嶋ら, 2017)。EMAは

日常生活下で反復的にデータを収集する方法であり, 即時測定による回答の歪みの回避,自然な環境下での 測定による生態学的妥当性の向上といったメリットが ある。 EMAを用いた体験の回避の測定には 2 種類の方法が 提案されている。ひとつは,リッカート尺度で測定す る方法 (主観指標) であり,体験の回避の程度を評定 する (e.g., Kashdan et al., 2013)。この方法で は,各回答で体験の回避得点が算出され,体験の回避 の強度の推移を可視化できる。もうひとつは,随伴性 に基づく測定法 (随伴性指標) であり,不快な状況に おいて,行動前後で不快な私的出来事の強度が低減し た 回 答 を 体 験 の 回 避 と み な す 方 法 で あ る ( 嶋 ら, 2017)。こちらの方法では,体験の回避の累積頻度を 可視化できる。 両測定法は体験の回避を測定可能であると考えられ ているが,支援場面を想定した応用例は数が限られて いる。とくに,介入による得点の変化については検討 がなされていない。日常生活下における体験の回避の 低減は,臨床場面における重要な関心事のひとつであ るため,EMAを用いてその変化をとらえることができ ることは重要である。 そこで本研究では,臨床場面においてEMAを用いた 体験の回避測定を実行し,介入前後での両指標の推移 を確認することで,反応性の有無について検討するこ とを目的とする。 【方法】 対象 A 診療所にてカウンセリング (Co.) 導入となった 24歳の女性 ( B ),50歳の女性 ( C ) を対象とした。 いずれも診断は広場恐怖症であった。 手続き 研究の概要について説明し,同意を得た。スマート フォンを用いたEMAが実施可能であることを確認し, Co.を開始した。Co.は臨床心理士 (臨床経験 2 年) が 担当し,以下のような手順で進められた。 初回には主訴,経過等を聴取し,Co.の方向性を共 有した。その後,EMAの方法を説明し,測定を開始し た。 2 回目はアセスメントを継続し,Co.の目標につ いて決定した。その後,対象者のペースに合わせて ACTに基づく介入を実施した。 EMA 予期不安が生じ,どのように対処するかを決定した タ イ ミ ン グ で 回 答 を 求 め た。 回 答 フ ォ ー マ ッ ト は Googleフォームで作成し,研究協力者には基本的に 1 日 1 回送信するリマインドメールにURLを記載した。 主要測定項目 a ) “回避したいと思う感覚や感情”の程度:10件法 b ) 対処行動を決めた際の“回避したいと思う感覚や 感情”の程度の変化:10件法 c ) その行動時にどのような対処 (体験の回避) をし ていたか: 5 項目10件法 体験の回避指標 1 ) 随伴性指標:行動前後で“回避したいと思う感覚 や感情”の程度が低下した回答を体験の回避とし て選定した。

2 ) 主観指標:先行研究 (e.g., Kashdan et al., 2013) を参考に項目を作成した。そのうち,主成 分分析によって抽出された 3 項目の合計点を使用 した。 分析 分析には統計解析ソフトR (ver. 3. 4. 1) および SPSS (ver. 24) を用いた。 1 ) 随伴性指標 累積数の増加の傾きが介入前後で異なるかを検討し た。累積数の増加の傾きを従属変数,回答数を共変 量,時期および回答数と時期の交互作用項を独立変数 とする,回帰直線の平行性の検定を実行した。ここで は,体験の回避の頻度が多い介入前に比べて,頻度が 減少することが想定される介入後に,累積度数のグラ フの傾きが緩やかになることを想定した。 2 ) 主観指標 主観指標については,介入前後での得点に有意な差 が認められるかをウィルコクソンの順位和検定により 検討した。

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-38 373 -倫理審査 本研究は早稲田大学「人を対象とする研究に関する 倫理委員会」の承認を得て実施された。 【結果】 1 ) 随伴性指標 B においては介入後に回帰直線の傾きが有意に急峻 になった (F (1, 66) = 20.15, p < .00)。つまり, 体験の回避が増加したと判定された。一方で C におい ては介入前後で回帰直線の傾きが有意に緩やかに なった (F (1, 66) = 5.34, p = .03)。つまり,体験 の回避が減少したと判定された。 2 ) 主観指標 B , C において介入前後で有意な得点の減少が認め られた( B : W = 932.50, p < .00; C: W = 131.50, p < .00)。 結果を対象者ごとにFigure 1,Figure 2にまとめ た。 【考察】 本研究では,介入前後での体験の回避の指標の推移 を確認し,反応性の有無について検討することを目的 とした。分析の結果,主観指標では 2 名とも介入後に おける体験の回避得点の減少が認められ,反応性を有 することが示された。随伴性指標については, C にお いてのみ仮説どおりの変化が認められ,反応性を有す る可能性が示唆されるにとどまった。 随伴性指標では,負の強化事態をとらえることで体 験の回避の測定を試みている。しかし,体験の回避は ルール支配行動でもある (武藤, 2011) ことをふまえ ると,負の強化事態をとらえるのみでは十分ではない 可能性がある。今後は,ルール支配行動の観点も考慮 したうえで,測定項目を改良する必要がある。 本研究により,EMAを用いた体験の回避測定に関す る 2 つの指標について,臨床応用可能性が示された。 両指標の差異や臨床的な有用性について比較検討し, 上述の課題を改善することで,日常生活下における行 動の変化を詳細にとらえることが可能な,新たな指標 の導入が可能になると考えられる。 【謝辞】 本 研 究 は J S P S 科 研 費 ( 特 別 研 究 員 奨 励 費: 17J10709) の助成を受けたものです。 【主要文献】

1 ) Hayes, S. C., Wilson, K. G., Gifford, E. V., F o l l e t t e , V . M . , & S t r o s a h l , K . 1 9 9 6 . Experiential avoidance and behavioral disorders: A functional dimensional approach to diagnosis a n d t r e a t m e n t . J o u r n a l o f C o n s u l t i n g a n d Clinical Psychology, 64 ( 6 ), 1152-1168.

2 ) Stone, A. A. & Shiffman, S. 1994. Ecological momentary assessment in behavioral medicine. Annals of Behavioral Medicine, 16 , 199-202.

3 ) Kashdan, T. B., Farmer, A. S., Adams, L. M., Ferssizidis, P., McKnight, P. E., & Nezlek, J. B. 2013. Distinguishing healthy adults from people with social anxiety disorder: Evidence for the value of experiential avoidance and p o s i t i v e e m o t i o n s i n e v e r y d a y s o c i a l interactions. Journal of Abnormal Psychology, 122 ( 3 ), 645.

4 ) 嶋 大樹・本田 暉・熊野宏昭 2017. 日常生活下 における随伴性に基づく体験の回避の測定方法論の検 討-Computerized Ecological Momentary Assessment (cEMA) の応用- 早稲田大学人間科学研究, 30 ( 2 ),

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