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自閉症児のトイレットトレーニング:排便行動の形成と排便後の処置を扱った事例

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-19 158

-自閉症児のトイレットトレーニング:排便行動の形成と排便後の処置を扱った事例

○伊藤 久志 アイズサポート はじめに 自閉症などの発達障害の人に対するトイレットト レーニングは、将来の社会生活にとって非常に重要な 支援目標である。Fox & Azrin法をはじめ、定時誘導、 強化、プロンプティング・プロンプトフェーディング などを含めた行動的介入が有効であることが明らかに なってきている。 排尿に関する実践研究が多く実施されてきた一方、 排便に関する実践研究は非常に少ない。Sutherland et al.(2017)は、自閉症児の便器内排便をターゲッ トとしたトイレットトレーニングにおいて、アセスメ ントとして機能的アセスメント・排便の前兆行動アセ スメント・強化子アセスメントを実施した後に、便器 に着座させ10分排泄を促しても排泄されなかった場 合、一旦15分休憩し再度排泄を促すことを繰り返す手 続きを用いた結果、適切な排便行動を形成できた事例 を報告している。 また、トイレットトレーニングにおいては排泄だけ ではなく、お尻をトイレットペーパーで拭くなどの排 泄後の処置もターゲットとなる。排便後の処置に関し て扱った実践研究は、坂井・須藤(2012)のみである。 坂井・須藤はウォシュレットを用いた排便後の処理ス キルをターゲットにして特別支援学校の授業の一環と して指導した。チリ紙が濡れなくなるまで拭くという 枠組みで遂行させた。しかし、適切にお尻についた便 を拭き取ったり、ペーパーが濡れなくなるまで拭くの は、難易度が高いスキルだと思われる。では、落し所 として、何をターゲットとし、どのような手続きを用 いるのかという疑問が残る。 本 報 告 で は、 自 閉 症 児 の 排 便 行 動 に 対 し て Sutherland et al.(2017)の再誘導手続きを用いた 実践に関して報告する。また、排泄後の処置に関して 実施した実践経過を報告する。 方法 1 .対象児 8 歳の自閉症と診断された男児であり、特別支援学 校に通っていた。 5 歳時のDQ:15であった。 1 歳時よ り発達の偏りに気づき始め、 2 歳 6 か月時に自閉症と 診断された。 3 歳時より通園施設に通うようになっ た。 5 歳時より、著者が運営する療育施設に週 1 回通 うようになった。事前に排尿に関するトイレットト レーニングは完了しており、自発的に排泄できるよう になっていた。しかし、排便に関してはオムツ内に排 泄することが続いており、便器内に排泄できたことは 一度もなかった。 コミュニケーションに関しては、絵カードを渡すこ とによる要求が単語レベルで可能であった。カードの 同一性マッチングはクリアしていた。模倣に関して は、道具を用いた模倣はクリアしていたが、動作模倣 は挙手・バンザイ・拍手などの単純な動作のみ可能で あった。音声弁別に関しては、簡単な日常の音声指示 は通ることもあるが、実物やカードを用いて音声弁別 は正答できなかった。 2 .対象児を取り巻く支援の環境 著者の施設の療育支援では、週 1 回、 1 時間のセッ ションをしており、セッションではトイレットトレー ニングに関する話し合いの他に、コミュニケーション (絵カード交換形式の要求)、模倣、マッチング、作業 に関する課題を実施していた。本実践は、そのセッ ション内で10分程度実施した。その他、放課後デイ サービス事業所に週 3 〜 4 回通っていた。対象児は自 宅以外で排便することが少なく、学校やデイサービス では排便に関して取り組まれてはいなかった。 3 .手続き ・標的行動の設定 排尿に関して適切な排泄行動を習 得したが、排便に関しては般化して習得することは なかった。保護者は排便に関してやむを得ないと 思っていた一方、ターゲットになるならそろそろ取 り組みたいという意向もあった。そこで、排便行動 をターゲットとして取り組むこととした。 ・ベースライン測定 便器への排便経験はなかった。 ・行動アセスメント 機能的アセスメントと前兆行動 アセスメントと強化子アセスメントを実施した。機 能的アセスメント リビングで気がついたら排便し ていることが多かった。排便の前兆があった時に便 器に座らせると 5 分程度座らせても排便せず、その 後オムツを履かせると、オムツ内に排便していた。 弁別刺激として、リビング、立位、オムツが機能し ていると思われた。 前兆行動アセスメント 母親はだんだんと前兆行動 を識別するようになってきたが、それを言語化する

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-19 159 -ことが難しかった。今後、他者に前兆行動を伝える ためにも、言語化するよう促した。 強化子アセスメント 筆者の施設でのみ用いてい るチョコを排便に対する強化子としても用いること とした。 ・インフォームドコンセントに基づく適正手続きの選 択 選択肢として、下痢時の誘導、再誘導手続き、 浣腸を用いた手続き、を提案した。保護者は浣腸に 関して強く拒否しており、下痢になることが少ない ということだった。そこで、再誘導手続きを選択す ることとした。 ・介入手続き 対象児が前兆行動を示したら、トイレ に誘導し便器に着座させ、 5 分経過しても排便がな ければ、一旦休憩し、オムツを脱いだままで過ごさ せ、 5 分後に再度トイレに誘導し便器に着座させる 手続きを排泄するまで繰り返した。 次に、排泄後の処置に関しては、筆者と保護者が協 議する上で、将来像の検討をし、そのために適切な ターゲットとしてウォシュレットへの馴化を選択し、 手続きとして 1 ケ月に 1 回ウォシュレットへの反応を チェックすることとした。 4 .倫理的配慮 本実践を開始するにあたり、対象児の保護者に対し て介入手続きを説明し、同意を得た。本実践終了後 に、保護者に成果公開の許可申請を行い、文書で同意 を得た。 結果・考察 本実践における対象児の排便行動の経過について図 1 に示す。保護者が前兆行動を弁別できるのに伴っ て、便器内への排泄に成功できることが増えていっ た。排便後の処置に関しては、 3 か月後にチェックし た時に拒否が少なかったので、それ以来ウォシュレッ トを使用するようになった。 保護者の意向に基づき選択肢を提示し、適正な手続 きを選択できたことが、家庭での介入の実行可能性を 高めたと思われる。また、本実践では一定時間着座さ せることに困難はなかったが、それが難しい場合も多 いと思われる。そのようなケースでは、さらに別の選 択肢を用意できることが必要である。例えば、オムツ を履いたまま便器に着座して排泄するステップを入れ たり、穴の開いたオムツを履いたまま便器に着座して 排泄するステップを入れたりすることが考えられる。 文献 坂井直樹・須藤邦彦(2012)知的障害生徒における排 便後の処理スキルに関する研究―洗浄便座を使用した スキル獲得の過程―,山口大学教育学部研究論叢 芸 術・体育・教育・心理 62,205-213.

Sutherland.J., A.Carnett, Denton, L.van der Meer, H.Waddington, A.Bravo & L.McLay 2017 Intensive toilet training targeting defecation for a child with Autism Spectrum Disorder. Research and Practice in Intellectual and Developmental Disabilities,5, 87-97.

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