第2 退職後の医療保険制度について
1 退職後に加入する医療保険制度について
わが国の社会保障制度における医療保険については、「国民皆保険制度」をとっており、何らかの医療保険 制度に加入することが義務づけられています。 組合員の方は、在職中は共済組合に加入していますが、退職することで共済組合員の資格を喪失するため、 今後加入する医療保険制度を選択する必要があります。 退職後の医療保険制度については、「①再就職先の健康保険への加入」「②公立学校共済組合の任意継 続組合員」「③国民健康保険への加入」「④家族の健康保険に被扶養者として加入」のいずれかになります。 ※ 障害年金受給者または60歳以上の公的年金受給者は「130万円」 を「180万円」に読み替える。 ↓ 再就職先の 健康保険制度に 加入できる (就職先に必ず確認) 再就職先の 健康保険制度に 加入できない退 職
※組合員証は、退職時の所属所へ返却。退職の翌日から再就職しない
退職の翌日から再就職する
年間130万円(※)以上 の収入(年金等含) または 扶養できる家族がいない 年間130万円(※)未満 の収入(年金等含) かつ 扶養できる家族がいる③
②
②、③のいずれか ※ 障害者年金受給者または60歳以上の公的年金 受給者は「130万円」を「180万円」に読み替える。 就職先の 健康保険に 加入する 再就職を考えている方 は、就職先の健康保険制 度に加入することができる か、事前に確認してくださ い。 公立学校 共済組合の 任意継続組合員 になる 「2 任意継続組合員制 度について」参照④
国民健康保険に 加入する 加入手続き等について は、居住している市町村に 確認してください。 家族の健康保険の 被扶養者になる 家族の被扶養者になるに は一定の認定要件がありま す。事前に家族の加入して いる健康保険制度に問い合 わせて被扶養者になれるか の確認を行ってください。。①
被扶養者 としての要件 を満たしてい ない場合 被扶養者として の要件を すべて満たして いる場合 強制加入(1)退職後の再就職先で健康保険制度に加入することができる場合(強制加入)
再就職をして、一定時間以上の就労をする場合には、就職先の健康保険制度に加入することとなります。 再就職の予定がある方は、就職先の健康保険制度への加入について事前に必ず確認してください。 <再就職先別の健康保険制度適用の例> 再就職先 健康保険の加入 民間企業 健康保険の加入の有無については、就職先に確認する。 期間採用職員 産休・育休代替職員 任用期間が当初から2ヶ月を超える場合は、健康保険に加入する。 市町村の教育長 市町村職員共済組合に加入する。(2)
医療保険制度の比較
任意継続組合員 国民健康保険 被扶養者 給 付 1ヶ月間に1つの医療機関での 窓口負担が 25,000 円以上の場 合は、自動的に払戻金等が支給 される。 高額療養費に該当する場合は 申請により支給される。(詳細 は、居住している市役所等に確 認すること。) 家族の加入している健 康保険により異なる。 被扶養者の 取り扱い 被扶養者の有無、人数による保 険料の差はない。 被扶養者の概念なし。現在、被 扶養者になっている方も国民健 康保険に加入することとなるた め保険料が増える。 保 険 料 退職時の給料をもとに算出。 (H27年度最高額:507,732 円) 退職後2年目は国民健康保険の 方が安くなる傾向がある。 前 年 の 所 得 を も と に 算 出 。 (H26 年度最高額:810,000 円) 退職後2年目は安くなる傾向が ある。 なし 窓口負担 本人 3割 ・ 家族 3割( 乳幼児 2割、70 歳以上の高齢者 1割または 2 割 )(3)
家族の健康保険の被扶養者になる場合
被扶養者の要件等は加入している健康保険制度により異なります。被扶養者になることを希望している場合 は、事前に家族の加入している健康保険制度に問い合わせて、被扶養者の要件を確認してください。 <公立学校共済組合の場合の被扶養者認定要件> ① 身分関係(次ページの図を参照)及び生計維持関係を満たしている者。 ② 年間収入が 130 万円未満の者。 ただし、障害年金受給者及び 60 歳以上の公的年金受給者は、年間収入が 180 万円未満の者。 ※ 収入には、障害年金、遺族年金、個人年金、財形年金、企業年金、就業による 給与収入や、農業収入、 株取引による収入等が含まれます。 ③ パート、アルバイト等の収入が3ヶ月連続で、月額 108,334 円以上にならない者。 ④ 雇用保険を日額 3,612 円以上受給していない者。<身分関係の範囲> の者は、組合員との同一世帯要件なし。その他の者は、組合員との同一世帯要件あり。 婚姻 ①~③ : 姻族親等 ○ ○ ○ 3 父 母 ③ ① 孫 配偶者 ② 血族 1~3 : 血族親等 ③ 2 ② 弟妹 甥 姪 3 2 ① ② ① 1 父 母 伯(叔)父母 配偶者 ③ ③ ② 3 祖 父 母 曾祖父母 2 曾祖父母 祖 父 母 配偶者 ③ 配偶者 子 兄姉 組 合 員 配偶者 曾孫 伯(叔)父母 甥 姪 1 ① 子 兄姉弟妹 配 偶 者 ② 孫 3 ③ 曾孫 配偶者
(4)被扶養者になれない場合の任意継続組合員と国民健康保険の選択
以下の①~③を参考にし、保険料、家族の状況等を勘案のうえ、選択してください。 ① 被扶養者がいない、かつ医療機関にかかることが少ない場合 → 任意継続と国民健康保険の保険料を比較して、安い方を選択する。 ただし、任意継続を選択した場合でも、2年目は国民健康保険の方が安くなることが多いため、国民 健康保険への切り替えを検討すると良い。 (国民健康保険の保険料は、前年度の所得をもとに算出されるため、退職後、 収入が減ることにより、 1年目より保険料が安くなる傾向がある。) ② 被扶養者が複数名いる場合 → 任意継続と国民健康保険の保険料を比較して、安い方を選択する。 ただし、国民健康保険は被扶養者の概念がないため、現在、被扶養者になっている方も加入するこ とになるため、加入者数が増え、保険料が高くなる場合もある。 現在、被扶養者が多数いる場合には、2年目も任意継続の方が安いことがあるため、保険料を比 較して選択すると良い。 ③ 医療機関にかかることが多い場合 → 任意継続組合員になるのがよいと思われる。 任意継続組合員の場合、1ヶ月に1つの医療機関での窓口負担が 25,000 円以上になった場合、 自動的に払戻金等が支給されるため、医療機関にかかることが多い場合は有利である。※国民健康保険の保険料は、市町村によって計算方法が異なります。このため、任意継 続組合員掛金額と国民健康保険の保険料のどちらが安いかは、お住まいの市町村によっ ても異なります。任意継続掛金額についてはご希望によりお知らせしますので、国民健 康保険の保険料については居住している市役所等に確認してください。
(5)医療保険制度選択の際の注意点
① 任意継続組合員への加入について 任意継続組合員は、退職後引き続き共済組合の健康保険の適用を受ける制度のため、平成26年 4月1日に他の健康保険制度(国民健康保険、再就職先の健康保険、家族の健康保険の被扶養者) に加入した場合、その後、他の健康保険を脱退しても任意継続に加入することができません。 (例)平成26年4月1日から家族の被扶養者になったが、平成26年5月1日から収入が発生し、 家族の被扶養者でいられなくなった場合。→ 退職後に任意継続組合員以外の健康保険制度に加 入したため、5月1日から任意継続組合員には加入できません。国民健康保険に加入することと なります。 ② 家族の健康保険の被扶養者になった場合 ア 年金の受給が開始された場合 公的年金受給者が被扶養者でいるためには、年間収入が180万円未満であることが要件とな ります。このため、年金の受給開始時に、年間収入見込額が180万円を超えないことを確認す る必要があります。(年金の受給開始時期は生年月日により異なり、受給開始年齢に達した月の 翌月分から支給されます。) ※ 年間収入には、年金以外の収入も含まれます。例えば、年金額が170万円、給与収入が年間1 5万円の場合には、年間収入が180万円を超えるため 被扶養者のままでいることはできませ ん。退職後に家族の被扶養者になっていた方も、年金支給額によっては国民健康保険への移行が 必要になります。 (例)家族の健康保険の被扶養者になっていた方の誕生日が昭和29年6月10日の場合。 平成27年7月分から年金が支給されます。年金収入とその他の収入を合計して180万円 を超える場合、年金証書が届いた時点から家族の被扶養者でいることはできなくなります。 イ パート、アルバイト等の収入がある場合。 年間収入が130万円にならなくても、3ヶ月連続で給与収入が月額 108,334 円以上になった 時点で家族の被扶養者でいることはできなくなります。 ウ 障害年金受給者及び60歳以上の公的年金受給者の場合 年間収入が180万円にならなくても、3ヶ月連続で給与収入が月額 150,000 円以上になった 時点で被扶養者でいることはできなくなります。 エ 再就職先で健康保険に加入した場合 収入金額に関係なく被扶養者でいることはできませんので、注意が必要です。 ※ 被扶養者については、要件を欠いた時点が取消日となります。手続きが遅れると遡及取 消となり、取消日以降に被扶養者証を使用して医療機関に受診した場合、医療費を戻入して いただくこととなりますので、ご注意ください。 ④ 再就職を希望しているが、採用結果が3月末でないとわからない場合。 就職しない場合には任意継続組合員を希望する方は、任意継続組合員の手続きを進め、再就職 が決定し、任意継続組合員への加入不要となった時点で、必ず、共済組合まで連絡してください。任意継続組合員掛金の6ヶ月・12ヶ月前納払いには割引制度がありますが、3月末日まで の納付が必要です。(31ページ参照)
2 任意継続組合員制度について
(1)任意継続組合員制度
退職日の前日までに引き続き1年以上組合員であった方が、退職の日から起算して20日を経過する 日までに、任意継続組合員となることを申し出ることにより、最長で2年まで、引き続き公立学校共済 組合として、組合員と同様に、短期給付及び附加給付を受けることができます。 ただし、休業給付(傷病手当金、出産手当金、休業手当金、育児休業手当金、介護休業手当金)につ いては、その給付の趣旨を鑑みて、給付されないこととなっています。(2)任意継続掛金の算出
任意継続組合員も、組合員と同様に掛金を収める必要があります。任意継続組合員の掛金は、「短期 任継掛金」と「介護任継掛金」の合計となります。 任意継続掛金 = A[短期任継掛金]+B[介護任継掛金] A : 短期任継掛金 =[任継掛金の標準額]×[短期任継掛金率(H27 年度は 101.5/1,000)] B : 介護任継掛金 =[任継掛金の標準額]×[介護任継掛金率(H27 年度は 12.24/1,000)] [任継掛金の標準額]は、退職月の掛金の標準となった給料額と全組合員平均給料額のうちいずれか 少ない額となります。 ① 退職月の掛金の標準となった給料額={[給料月額]+[給料の調整額]+[教職調整額]}×0.7 ※1 ※1注意 55 歳未満あるいは組合員期間が 15 年未満の者については、0.7 を乗じない。 ② 全組合員平均給料額 平成27年度 372,000円(平均給料の額は年度ごとに変更となります) (例1) 55歳以降初めての退職で、組合員期間が15年以上あった者 退職月の掛金の標準となった給料額 =(給料月額+教職調整額+給料の調整額)400,000 円× 0.7 = 280,000 円 280,000 円(退職月の掛金の標準となった給料額)< 372,000 円(全組合員の平均給料の額) →任継掛金の標準額は 280,000 円 A : 短期任継掛金・・・280,000×(101.5/1,000)= 28,420 円(月額) B : 介護任継掛金・・・280,000×(12.24/1,000)= 3,427 円(月額) A + B = 31,847 円(月額) 計算例 現給保障後、特例減額後の額で計算(例2)55歳未満あるいは組合員期間が15年未満の者 退職月の掛金の標準となった給料額=(給料月額+教職調整額+給料の調整額)400,000 円 400,000 円(退職月の掛金の標準となった給料額)> 372,000 円(全組合員の平均給料の額) →任継掛金の標準額は 372,000 円 A : 短期任継掛金・・・372,000×(101.5/1,000)= 37,758 円(月額) B : 介護任継掛金・・・372,000×(12.24/1,000)= 4,553 円(月額) A + B = 42,311 円(月額)