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鳴門教育大学小学校英語教育センター紀要第 10 号, 1 14, 2019 令和元年度鳴門教育大学小学校英語教育センター シンポジウム 令和元年 10 月 19 日 ( 土 ) 基調講演 コミュニケーションの資質 能力の育成のための言語活動 ( 信州大学教授酒井英樹 ) 皆さん こんにちは 信州大学

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令和元年度 鳴門教育大学小学校英語教育センター「シンポジウム」 令和元年 10 月 19 日(土) 【基調講演】 「コミュニケーションの資質・能力の育成のための言語活動」 (信州大学 教授 酒井 英樹) 皆さん、こんにちは。信州大学の酒井といいます。山森先生から今ご紹介をいただきました。紹介して くださった中で、中学校の教員をしていたということですけれども、なぜ小学校、あるいは児童の英語教 育に関わるようになったのかというと、実は学生時代に遡ります。 こういう話はあまり外でしたことがないんですけれども、当時長野市に幼稚園でイマージョンプログラ ムとしてカナダの先生を主として行うクラスがありまして、そこに大学2年生ぐらいから観察研究、月1 回~2回ぐらいビデオ、当時は大きいビデオでしたけれども担いで、それで幼児の英語教育、あるいは幼 児の英語習得の研究をずっとしていました。修士論もそれで書いたということです。 その時に、日本児童英語教育学会等々ですね、児童英語に関する、英語教育に関わるようになりました。 またお分かりの先生は時代が分かるかと思うのですが、大阪で研究開発校が指定を受けた後、各県で一斉 に研究開発校が設置されて、小学校の英語教育・英会話・異文化理解の研究が進んだ時があります。長野 県は当時、軽井沢東部小学校が指定を受けまして、私は大学院生でしたけれども、そこの研究というのも 結構頻繁に観察に行っていました。そんなこともあって中学校に就職をしましたけれども、小学校の英語 教育、あるいは中学校の英語教育等とつながり続けているというような形になっています。 今日は、コミュニケーションの資質・能力を育成するための言語活動ということで、全面実施に対して どうしていくかという話をしていきます。後ほど平山先生・竹内先生の方からたぶん具体的な示唆のある お話があると思うのですけれども、改めて学習指導要領の中で今回、大きい改訂になったという風に私は 思っているんですが、学習過程の部分、つまり言語活動とは何なのか、というお話を差し上げたいなと思 っています。 ちょっと英語で活動を示しながらやりますので下りていきますが、ギョッとしないで普通に声を上げて いただければと思います。“Look at the screen. What do you see on the screen?”、全然反応がないで すね。“What do you see on the screen? Coffee, spoon, coffee cup, saucer, and coffee beans, How many coffee beans do you see?(“Four beans”)Yes, four beans.”

この活動を小学生にやったら、他に見えるものとして、white が見える、brown が見える、black が見え る、そんなことを言いますね。silver も見えるじゃないかとか、そんなような話ですけれども、子どもた ちは結構色んなことに気付きながら、これを見ていったりします。

私が小学校の外国語活動をやっているのを見た時に、先生が教えたいものを一生懸命教えるのに、あれ は coffee だとして、他に beans が見えているのに beans のことは置いておく。スプーンが見えているとこ ろで、スプーンが気になっているかもしれないけど、スプーンのことは言わないとかいうことがあります。 そういう風な子どもの声がちょっと閉ざされてしまうような風潮があるので、私としてはできれば小学 生が自分で気付きながら色々言葉を使っていくような英語教育になれば良いなという風に思っています。 “Look at that. It is coffee.”といきなり言わずに、子どもに問いかけて、何が見えますか?というや りとりをしながら授業を進めてもらえると良いかなと思っています。

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酒井が何かしら自分のことを語って、自分の情報がちゃんと相手に伝わっているという、そういう言語 活動ということになります。ちょっと言語活動とかコミュニケーションという言葉を紹介していきますけ ど、もう少しこちらの話をしてからいきたいと思います。 最初に紹介したいのは、改めてですけれども、教科であろうと外国語活動だろうと、英語の授業を進め るにあたって、聞くことあるいは読むこと、すなわち情報を収集したり言語に触れる機会というのがとて もある授業というのが望ましいなという風に思っています。 これは、後ほど紹介する、あるいは先ほど山森先生が紹介してくださった私の専門の言語習得の考え方 によります。言語習得の考え方では、やはりたくさんの言語、あるいは使用していることにたくさん触れ ることで言葉を覚えていくということになります。 で、知識が十分ないところで一生懸命英語を使うのも言語習得上、役には立つのですけれども、新たな 表現、新たな使い方、新たな気付きというところがないので、習得につながりません。新たな気付きがた くさんあるような授業というのが知識・技能を増やしていくと考えます。 また、知識・技能を増やすだけではなくて、他の人の考え方、振る舞い方から思考・判断・表現、どう やってそういう勉強をしたらいいのかという点についても学んでいけると思うと、たくさん聞いたり読ん だりする授業というのを目指したいな、という風に思っています。 もう1つは、コミュニケーションということを考えた時に、聞く・読む・受け止めるという要素を忘れ がちですけれども、情報を発信するだけでは実はコミュニケーションというのは成立せずに、それが誰か に受け止められるというところまできて初めてコミュニケーションというのが成立をします。聞くことが ないと、コミュニケーションというのは成立しないということになります。 例えば、一生懸命、表現集で覚えて、その表現を海外の人にパッと言ったとして、それが通じて相手が 何かを教えてくれたとします。この教えてくれた英語の意味が理解できなかったら、やりとりにならない ということになります。聞くということはコミュニケーションの一部でもあるということです。 次に、考えるということ、これもまたとても大事だなという風に思っています。考えるというのは意味 を考える、相手のことを理解する、状況について考える、どんなことを言っているのかを考えるというこ とですけれども、これは専門的には意味と形式を結びつけていく、form-meaning mapping というのを実際 の活動の中で行っていくことが英語習得上大事だということです。意味と形式を結びつけていく活動です。 これをその場でやっていくことが大事です。そういう意味では、考えるというところが1つ、その form-meaning mapping ということの促進を図っていくものと思っています。 最後は関わるということですね。関わるというのは、involvement という風に私は書きましたけれども、 活動に従事している、関与している、また没頭しているという、そういう意味合いで使っています。なの で、一人ひとりがやる活動でも、一人ひとりがその場できちんと居場所があって、その活動にのめり込ん でいるような状態というのが、私は作り出せるといいなという風に思っています。一人ひとり安心して子 どもが過ごせていれば、隣同士でやりとりをした時でも恐れずにやりとりができたりとか、発言ができた りとかいうことになるのかなと思います。 この3つの項目と、“かきくけこ”のか行から始まっており、小学校の先生に言う時には Three K’s (ス リーケイズ)と紹介してます。そのための授業ということですけれども、できるだけ本物の情報、authentic information をできるだけ扱っていく。それをできるだけ簡単な英語で扱っていくということになります。 本物の情報を使うと、人は自分の持っている知識を使いながら理解をしたり、分かろうとしたり、あるい は関連づけて捉えようとしたりします。これは本物の情報でないと、そういうことをしないということに That is my favorite drink, I like drinking coffee. I like drinking coffee. I like drinking coffee

without sugar or milk. I like black coffee. I like black coffee. How many cups do I drink every morning? I drink four cups of coffee every morning for breakfast. I like coffee very much. That is my favorite sport. What do I like? Swimming. I like swimming. Recently I have not had so much time to enjoy swimming. So I don’t know. But I think I can swim, I believe I can swim very fast. Very fast.

I can play the?(“guitar”)Guitar yes, I like playing the guitar. But once again I’m busy to play the guitar.

That is my favorite drink. That is my favorite sport. That is my favorite musical instrument. What is that for me? That is my favorite…? (Color.) Yes, color. So what color do I like? (Purple.) Yes I like purple.

You know my university. What university? (Shinshu university). Shinshu university. Education department is very very small. This is my campus of Shinshu university. Before I came to Shinshu university, I worked for Joetsu university education in Niigata. So I have been teaching junior high school and two universities. This is about Mr. Sakai.

これは、もし小学生だったら、今度は子どもに「何が好き?」とか、「どんなスポーツが好きですか?」 とか聞きます。「確か水泳やってたよね」というような話をしてから、ペアでやりとりをしましょうねとい う、そういうような流れになるかと思います。 で、こうやって自己紹介をしますけれども、もし大人向けだとすれば、コーヒーが好きとか、水泳が好 きなんていう自己紹介はしませんよね。子ども同士なので自分のこと、身近なこと、生活のことというの を考えた時には、こういう自己紹介になってくると思いますが、これが今度は中学生になると日常的なこ とや社会的な話題になってきます。 ですので、自己紹介をするにしても今度は自分の日常生活も絡めて自己紹介をしたり、あるいは様々な 関心のある社会事象について取れ入れながら自己紹介をしたりという風に広がっていく必要があります。 小学校の場合は、まずは自分のことを語っていきましょうということになってきます。

This on the screen. What’s that? (Tokushima prefecture.) Yes Tokushima prefecture. You are from Tokushima prefecture. I'm from Nagano prefecture. This is Nagano prefecture, It’s a big prefecture. Do you know where Nagano prefecture is? Please point to the place of Nagano prefecture.

あんまりこれはやりませんけど、子どもだったら前に来てやるということですね。

This is Nagano prefecture. Which cities do you know? Which cities in Nagano prefecture do you know? Nagano city. Matsumoto city. (Suwa city.) Yes, Suwa city. Only three cities? Nagano has many many towns and cities.

私はでも実は松本市ってどれかというと、ちょっと自信がなくて、なぜかというと合併で山の方まであ ったのが、昔の松本市のイメージと少し違うところがありますので。

I live in Nagano city. Which is Nagano city? Nagano city is the largest city in Nagano. This is Nagano. OK? I live in Nagano city, and I’m from Nagano city. I was born in Nagano city.

今、私、酒井の情報を一生懸命聞いてもらっていますよね。酒井のことを知りたくないと思う人にはつま らない情報ですけれども、酒井はどんな感じのことが好きなのかなということを今日のやりとりで理解し てもらったと思いますが、実はこれは聞くことの言語活動ですね。

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酒井が何かしら自分のことを語って、自分の情報がちゃんと相手に伝わっているという、そういう言語 活動ということになります。ちょっと言語活動とかコミュニケーションという言葉を紹介していきますけ ど、もう少しこちらの話をしてからいきたいと思います。 最初に紹介したいのは、改めてですけれども、教科であろうと外国語活動だろうと、英語の授業を進め るにあたって、聞くことあるいは読むこと、すなわち情報を収集したり言語に触れる機会というのがとて もある授業というのが望ましいなという風に思っています。 これは、後ほど紹介する、あるいは先ほど山森先生が紹介してくださった私の専門の言語習得の考え方 によります。言語習得の考え方では、やはりたくさんの言語、あるいは使用していることにたくさん触れ ることで言葉を覚えていくということになります。 で、知識が十分ないところで一生懸命英語を使うのも言語習得上、役には立つのですけれども、新たな 表現、新たな使い方、新たな気付きというところがないので、習得につながりません。新たな気付きがた くさんあるような授業というのが知識・技能を増やしていくと考えます。 また、知識・技能を増やすだけではなくて、他の人の考え方、振る舞い方から思考・判断・表現、どう やってそういう勉強をしたらいいのかという点についても学んでいけると思うと、たくさん聞いたり読ん だりする授業というのを目指したいな、という風に思っています。 もう1つは、コミュニケーションということを考えた時に、聞く・読む・受け止めるという要素を忘れ がちですけれども、情報を発信するだけでは実はコミュニケーションというのは成立せずに、それが誰か に受け止められるというところまできて初めてコミュニケーションというのが成立をします。聞くことが ないと、コミュニケーションというのは成立しないということになります。 例えば、一生懸命、表現集で覚えて、その表現を海外の人にパッと言ったとして、それが通じて相手が 何かを教えてくれたとします。この教えてくれた英語の意味が理解できなかったら、やりとりにならない ということになります。聞くということはコミュニケーションの一部でもあるということです。 次に、考えるということ、これもまたとても大事だなという風に思っています。考えるというのは意味 を考える、相手のことを理解する、状況について考える、どんなことを言っているのかを考えるというこ とですけれども、これは専門的には意味と形式を結びつけていく、form-meaning mapping というのを実際 の活動の中で行っていくことが英語習得上大事だということです。意味と形式を結びつけていく活動です。 これをその場でやっていくことが大事です。そういう意味では、考えるというところが1つ、その form-meaning mapping ということの促進を図っていくものと思っています。 最後は関わるということですね。関わるというのは、involvement という風に私は書きましたけれども、 活動に従事している、関与している、また没頭しているという、そういう意味合いで使っています。なの で、一人ひとりがやる活動でも、一人ひとりがその場できちんと居場所があって、その活動にのめり込ん でいるような状態というのが、私は作り出せるといいなという風に思っています。一人ひとり安心して子 どもが過ごせていれば、隣同士でやりとりをした時でも恐れずにやりとりができたりとか、発言ができた りとかいうことになるのかなと思います。 この3つの項目と、“かきくけこ”のか行から始まっており、小学校の先生に言う時には Three K’s (ス リーケイズ)と紹介してます。そのための授業ということですけれども、できるだけ本物の情報、authentic information をできるだけ扱っていく。それをできるだけ簡単な英語で扱っていくということになります。 本物の情報を使うと、人は自分の持っている知識を使いながら理解をしたり、分かろうとしたり、あるい は関連づけて捉えようとしたりします。これは本物の情報でないと、そういうことをしないということに That is my favorite drink, I like drinking coffee. I like drinking coffee. I like drinking coffee

without sugar or milk. I like black coffee. I like black coffee. How many cups do I drink every morning? I drink four cups of coffee every morning for breakfast. I like coffee very much. That is my favorite sport. What do I like? Swimming. I like swimming. Recently I have not had so much time to enjoy swimming. So I don’t know. But I think I can swim, I believe I can swim very fast. Very fast.

I can play the?(“guitar”)Guitar yes, I like playing the guitar. But once again I’m busy to play the guitar.

That is my favorite drink. That is my favorite sport. That is my favorite musical instrument. What is that for me? That is my favorite…? (Color.) Yes, color. So what color do I like? (Purple.) Yes I like purple.

You know my university. What university? (Shinshu university). Shinshu university. Education department is very very small. This is my campus of Shinshu university. Before I came to Shinshu university, I worked for Joetsu university education in Niigata. So I have been teaching junior high school and two universities. This is about Mr. Sakai.

これは、もし小学生だったら、今度は子どもに「何が好き?」とか、「どんなスポーツが好きですか?」 とか聞きます。「確か水泳やってたよね」というような話をしてから、ペアでやりとりをしましょうねとい う、そういうような流れになるかと思います。 で、こうやって自己紹介をしますけれども、もし大人向けだとすれば、コーヒーが好きとか、水泳が好 きなんていう自己紹介はしませんよね。子ども同士なので自分のこと、身近なこと、生活のことというの を考えた時には、こういう自己紹介になってくると思いますが、これが今度は中学生になると日常的なこ とや社会的な話題になってきます。 ですので、自己紹介をするにしても今度は自分の日常生活も絡めて自己紹介をしたり、あるいは様々な 関心のある社会事象について取れ入れながら自己紹介をしたりという風に広がっていく必要があります。 小学校の場合は、まずは自分のことを語っていきましょうということになってきます。

This on the screen. What’s that? (Tokushima prefecture.) Yes Tokushima prefecture. You are from Tokushima prefecture. I'm from Nagano prefecture. This is Nagano prefecture, It’s a big prefecture. Do you know where Nagano prefecture is? Please point to the place of Nagano prefecture.

あんまりこれはやりませんけど、子どもだったら前に来てやるということですね。

This is Nagano prefecture. Which cities do you know? Which cities in Nagano prefecture do you know? Nagano city. Matsumoto city. (Suwa city.) Yes, Suwa city. Only three cities? Nagano has many many towns and cities.

私はでも実は松本市ってどれかというと、ちょっと自信がなくて、なぜかというと合併で山の方まであ ったのが、昔の松本市のイメージと少し違うところがありますので。

I live in Nagano city. Which is Nagano city? Nagano city is the largest city in Nagano. This is Nagano. OK? I live in Nagano city, and I’m from Nagano city. I was born in Nagano city.

今、私、酒井の情報を一生懸命聞いてもらっていますよね。酒井のことを知りたくないと思う人にはつま らない情報ですけれども、酒井はどんな感じのことが好きなのかなということを今日のやりとりで理解し てもらったと思いますが、実はこれは聞くことの言語活動ですね。

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その後で、実際、活動で使ってみよう、表出してみようという流れになります。この PPP は、古くから 指摘されているのですが、例えば can を使った活動として Can you, Yes I can の can、その導入をして練 習をして、Production で使いましたということですね。これをあと単元の中でやった時に、やはりどの子 も Can you が言える訳ではない。あるいは、言えるようになっているけど、そこまで深まっていない。そ うするとこの後でどういう場面になるかというと、今度は I want to とか、別の表現の PPP の単元になっ ていきます。そうすると、子どもたちはいったん学べないと、Can you に触れたり使ったりする機会がな い訳です。学び直しができない状態になります。 また、ここでできた!としても、次の例えば道案内の単元に入ったあと、Can you を一切使わない時期 が1ヶ月~2ヶ月続く訳です。そうすると、せっかく覚えた、できるようになったことも忘れてしまうよ うなことになります。その意味では繰り返し、繰り返し、同じような表現を学んでいくことが今後は大事 になるだろう、ということを思っています。 これは、コミュニケーション重視の英語教育・外国語教育の中では、コミュニケーションをしながらコ ミュニケーションの仕方を学んでいきましょうと考えています。そのため、PPP で示す一つのポイントに 焦点を当てるような言語の学び方というのは、すべてを網羅できないということで批判を受けています。 “Learning by Doing”、このような言い方も最近されますけれども、今後そのような学び方をしていく必 要があるだろうということです。 では、その身につけるところですけれども、コミュニケーションとは何なのか、ということの定義をも う1回確認したいと思います。ここで示すのは、一番シンプルな定義と呼ばれているものです。メッセー ジの送り手がいます。メッセージがあります。メッセージを受け止める人がいます。手紙を書いて、手紙 が届いて、手紙が読まれるというところまでがコミュニケーションの一番基本的な考え方ということにな ります。私は one way、一方通行でもまずはコミュニケーションは成立するという風に、個人的にはそう いう立場をとっています。なぜかというと、例えばマスコミュニケーション、あるいは新聞、書き物、図 書みたいなものというのは、比較的 one way のコミュニケーション形態をとっているからです。 実際のコミュニケーションの時には、これがメッセンジの送り手とレシーバーの役割はコロコロ変わり ますし、同時に行われている部分もあったりします。ですから聞くこと、先ほど私はこれぐらいのことは 知っておいてほしいなというところについて、今日はまた情報を得てほしいなということで自己紹介をし ましたけれども、その情報を一生懸命伝えている、皆さんがそれを聞いて酒井について分かった、分かっ たという部分があるだけで、聞くことのコミュニケーションは成立しているという風に考えるということ です。 一方で、聞くことがない場合もたくさん見られます。発表させることはたくさんやるんだけれども、そ れを聞いている人が誰もいない。“Big voice, very good. Eye contact, very good”と言っているんです けれども、それを伝えたい子どものメッセージを受け止めてくれている人がいない、というような授業も 多々あります。当然、子ども同士は聞き合うということが大事なんですけど、先生が子どものメッセージ を受け止めてあげるということも、とても大事だと思ったりします。 このコミュニケーションというのは、色んなノイズがあって上手くいかないというのが通常です。物理 的なノイズ、騒音であるとか、文字が擦れてしまって読めないとか、何かコーヒーを落としてしまって読 めないとかいうような感じのノイズというものがあります。心理的なノイズもあります。色々考え事をし ていたら相手の情報を受け止められない、ということですね。 それから、送信者・受信者の言語能力というのが限界をもたらす場合もあります。特に子どもたちです なります。 子どもたちにとってみれば既有の知識がある訳ですので、そこに“background Knowledge”と書きまし たけれども、既有の知識を活用できるように、もっと言うと既有の知識からスタートをする。2番目です けれども、子どもたちが知っていることからスタートをして授業が進んでいくといいなという風に思う訳 です。 本物の情報、それから子どもたちが知っていることというのは、来年度の教科化、あるいは教科書が採 用された時にとても重要になってきます。なぜかというと、教科書で扱われている世界というのは、やは り子どもたちにとってどこかで遠い世界な訳です。子どもたちが今ここで学んでいること、昨日学んだこ ととの関連性がなかなか無かったりします。

また、『We can!』とか、『Let’s try!』の教材はよく作られていて、最新の話題であるとか、ものすご い近い話題、例えば、オリンピック・パラリンピックの話題なんかが入っていますね。それから子どもた ちが知っていそうな有名な選手等々が入っていたり、あるいは有名な科学者が入っていたりということで、 子どもたちの身近になるような工夫がとてもたくさんされています。 検定教科書となると、ちょっとそうはいきません。これは中学校で検定教科書をしている時の経験です けれども、教科書を 10 年ぐらいは使う訳です。そうすると 10 年、活躍できるかというとそうではなくて、 そうするとどうしてもかつての、昔の人を取り上げて話題にしていくというような、そういうようなこと が行われたり、あるいは架空の人たちを作って、架空の世界を教科書に取り込んだりということをせざる を得ない訳です。 その意味では本物の情報に、より近づけていく工夫、あるいは教材化、あるいは生徒・児童が知ってい ることを活用しながら授業が進められるように、という工夫というのは小学校の先生たち、これから益々 大事になるかなという風に思っています。 一番下に書いてあるのが、聞きながら学んでいくんですけれども、私としては“do”ですね。まずやっ てみて、学んで、もう一度やってみるという、そういうプロセスが大事だなという風に思っています。 これは、今回の学習指導要領の中では、例えば語句や表現を異なる場面で繰り返し、繰り返し使うこと という、そういうような言い方がされると思いますが、使いきりではなくて何回も、何回も使う場面を与 えていく。似たような場面で使っていくということが大事。ただ、それもやりっ放しではなくて、学ぶタ イミングもきちんと作っていくというのが大事だなという風に思っています。

俗に“PPP”という言い方をしますが、PPP(Presentation, Practice, Production)ですけれども、表 現とかをまずは提示をする。そのあと練習をして再度使ってみるという、そういう流れですけれども、こ れは外国語活動の中では生きたと思うんです。慣れ親しむためにも、上手くいっていた学習過程だと思う んですけれども、今度身につけるということを考えた時、あるいは色んな技能面を育てていかなければい けない時には、PPP ではなかなか授業展開として上手くいかないだろうと、私は予想しています。 プレゼンテーションで一番よく行われているのは、担任の先生と ALT の先生がモデルを示して、どうい う状況でどういう表現を使うのかということを、モデルを示しながら提示をするパターンです。これは今 回でいくと、たぶん教科書の中でその場面設定がされていて、その表現を聞いたり見たりしながら表現の 使われ方にまず触れるということですね。 その後、Practice をしていきます。つまり、練習をしていきます。練習は中学校の場合、あるいは高等 学校の場合には、Pattern Practice みたいな機械的な練習になります。小学校の場合によく行われている のはゲーム、あるいはチャンツ、歌のような形で表現を練習していくという形です。

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その後で、実際、活動で使ってみよう、表出してみようという流れになります。この PPP は、古くから 指摘されているのですが、例えば can を使った活動として Can you, Yes I can の can、その導入をして練 習をして、Production で使いましたということですね。これをあと単元の中でやった時に、やはりどの子 も Can you が言える訳ではない。あるいは、言えるようになっているけど、そこまで深まっていない。そ うするとこの後でどういう場面になるかというと、今度は I want to とか、別の表現の PPP の単元になっ ていきます。そうすると、子どもたちはいったん学べないと、Can you に触れたり使ったりする機会がな い訳です。学び直しができない状態になります。 また、ここでできた!としても、次の例えば道案内の単元に入ったあと、Can you を一切使わない時期 が1ヶ月~2ヶ月続く訳です。そうすると、せっかく覚えた、できるようになったことも忘れてしまうよ うなことになります。その意味では繰り返し、繰り返し、同じような表現を学んでいくことが今後は大事 になるだろう、ということを思っています。 これは、コミュニケーション重視の英語教育・外国語教育の中では、コミュニケーションをしながらコ ミュニケーションの仕方を学んでいきましょうと考えています。そのため、PPP で示す一つのポイントに 焦点を当てるような言語の学び方というのは、すべてを網羅できないということで批判を受けています。 “Learning by Doing”、このような言い方も最近されますけれども、今後そのような学び方をしていく必 要があるだろうということです。 では、その身につけるところですけれども、コミュニケーションとは何なのか、ということの定義をも う1回確認したいと思います。ここで示すのは、一番シンプルな定義と呼ばれているものです。メッセー ジの送り手がいます。メッセージがあります。メッセージを受け止める人がいます。手紙を書いて、手紙 が届いて、手紙が読まれるというところまでがコミュニケーションの一番基本的な考え方ということにな ります。私は one way、一方通行でもまずはコミュニケーションは成立するという風に、個人的にはそう いう立場をとっています。なぜかというと、例えばマスコミュニケーション、あるいは新聞、書き物、図 書みたいなものというのは、比較的 one way のコミュニケーション形態をとっているからです。 実際のコミュニケーションの時には、これがメッセンジの送り手とレシーバーの役割はコロコロ変わり ますし、同時に行われている部分もあったりします。ですから聞くこと、先ほど私はこれぐらいのことは 知っておいてほしいなというところについて、今日はまた情報を得てほしいなということで自己紹介をし ましたけれども、その情報を一生懸命伝えている、皆さんがそれを聞いて酒井について分かった、分かっ たという部分があるだけで、聞くことのコミュニケーションは成立しているという風に考えるということ です。 一方で、聞くことがない場合もたくさん見られます。発表させることはたくさんやるんだけれども、そ れを聞いている人が誰もいない。“Big voice, very good. Eye contact, very good”と言っているんです けれども、それを伝えたい子どものメッセージを受け止めてくれている人がいない、というような授業も 多々あります。当然、子ども同士は聞き合うということが大事なんですけど、先生が子どものメッセージ を受け止めてあげるということも、とても大事だと思ったりします。 このコミュニケーションというのは、色んなノイズがあって上手くいかないというのが通常です。物理 的なノイズ、騒音であるとか、文字が擦れてしまって読めないとか、何かコーヒーを落としてしまって読 めないとかいうような感じのノイズというものがあります。心理的なノイズもあります。色々考え事をし ていたら相手の情報を受け止められない、ということですね。 それから、送信者・受信者の言語能力というのが限界をもたらす場合もあります。特に子どもたちです なります。 子どもたちにとってみれば既有の知識がある訳ですので、そこに“background Knowledge”と書きまし たけれども、既有の知識を活用できるように、もっと言うと既有の知識からスタートをする。2番目です けれども、子どもたちが知っていることからスタートをして授業が進んでいくといいなという風に思う訳 です。 本物の情報、それから子どもたちが知っていることというのは、来年度の教科化、あるいは教科書が採 用された時にとても重要になってきます。なぜかというと、教科書で扱われている世界というのは、やは り子どもたちにとってどこかで遠い世界な訳です。子どもたちが今ここで学んでいること、昨日学んだこ ととの関連性がなかなか無かったりします。

また、『We can!』とか、『Let’s try!』の教材はよく作られていて、最新の話題であるとか、ものすご い近い話題、例えば、オリンピック・パラリンピックの話題なんかが入っていますね。それから子どもた ちが知っていそうな有名な選手等々が入っていたり、あるいは有名な科学者が入っていたりということで、 子どもたちの身近になるような工夫がとてもたくさんされています。 検定教科書となると、ちょっとそうはいきません。これは中学校で検定教科書をしている時の経験です けれども、教科書を 10 年ぐらいは使う訳です。そうすると 10 年、活躍できるかというとそうではなくて、 そうするとどうしてもかつての、昔の人を取り上げて話題にしていくというような、そういうようなこと が行われたり、あるいは架空の人たちを作って、架空の世界を教科書に取り込んだりということをせざる を得ない訳です。 その意味では本物の情報に、より近づけていく工夫、あるいは教材化、あるいは生徒・児童が知ってい ることを活用しながら授業が進められるように、という工夫というのは小学校の先生たち、これから益々 大事になるかなという風に思っています。 一番下に書いてあるのが、聞きながら学んでいくんですけれども、私としては“do”ですね。まずやっ てみて、学んで、もう一度やってみるという、そういうプロセスが大事だなという風に思っています。 これは、今回の学習指導要領の中では、例えば語句や表現を異なる場面で繰り返し、繰り返し使うこと という、そういうような言い方がされると思いますが、使いきりではなくて何回も、何回も使う場面を与 えていく。似たような場面で使っていくということが大事。ただ、それもやりっ放しではなくて、学ぶタ イミングもきちんと作っていくというのが大事だなという風に思っています。

俗に“PPP”という言い方をしますが、PPP(Presentation, Practice, Production)ですけれども、表 現とかをまずは提示をする。そのあと練習をして再度使ってみるという、そういう流れですけれども、こ れは外国語活動の中では生きたと思うんです。慣れ親しむためにも、上手くいっていた学習過程だと思う んですけれども、今度身につけるということを考えた時、あるいは色んな技能面を育てていかなければい けない時には、PPP ではなかなか授業展開として上手くいかないだろうと、私は予想しています。 プレゼンテーションで一番よく行われているのは、担任の先生と ALT の先生がモデルを示して、どうい う状況でどういう表現を使うのかということを、モデルを示しながら提示をするパターンです。これは今 回でいくと、たぶん教科書の中でその場面設定がされていて、その表現を聞いたり見たりしながら表現の 使われ方にまず触れるということですね。 その後、Practice をしていきます。つまり、練習をしていきます。練習は中学校の場合、あるいは高等 学校の場合には、Pattern Practice みたいな機械的な練習になります。小学校の場合によく行われている のはゲーム、あるいはチャンツ、歌のような形で表現を練習していくという形です。

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い物ごっこみたいな活動をよくやったりします。

こういう活動をどんどんやっていくと、“Hello”“Hello, yellow.”と、yellow しか言わなくなってい きます。それで黄色いカードをもらい、“Thank you, see you.”“See you.”というように、“What color do you like?”や“I like yellow.”を言わなくなっていくということです。

この表現を言わなくなった時に、先生たちはこの子たちの姿をどう捉えますか?多くの先生方に聞くと、 What color do you like? I like….という表現の練習が足りなかったので、もっと練習するべきであると 答える先生が多いような気がします。皆さん方には問いませんけれども、今までの色んな所の話では、そ ういう答えをされる先生が多かったです。 私は、ここの中で何を伝え合っているのかな、という目で子どもの姿を見てほしいなという風に思う訳 です。そうすると、B さんは“yellow”と言いながら自分の欲しい物を実際、手に入れています。簡単な 語句や表現、単語を用いて自分の意図を伝えて、成功している訳です。更にコミュニケーションを円滑に するために、挨拶はきちんとしている訳です。 そうすると、やりとりで挨拶をしながら自分の欲しいものを伝え、これは単語であったとしても、yellow という自分の欲しい物をきちんと伝えられているということになります。で、yellow というのが表現です ね。表現語彙と言いますけれども、伝える語彙を持っているということになります。但し、I like と What color do you like?というのは、まだ身に付けていないかもしれないし、省略しているだけかもしれませ ん。 A さんの方もちょっと見てみますね。A さんの方はどうかというと、yellow と言われて、きちんと黄色 いカードを渡しているんです。そうすると相手の英語を聞いて、ちゃんと相手の意向を汲み取って自分の 適切な行動をしている訳です。そうするとコミュニケーションをしているかというと、きちんとメッセー ジのやりとりがここには存在しているということになります。但し先生が使って欲しいと意図した表現は 使われていないということになります。

では、先生の意図した表現ですね。“What color do you like?”“I like…”、これは重要かというと、 この場合は実は重要じゃないですよね。つまり好きな色を言って、その色の紙を貰うという状況下におい ては、コミュニケーションの経済的に考えると省略して良い表現ということになります。Hello. Hello. 「はい君の番」と言っているだけですね。そうしたら相手は Yellow.と言っているだけですね。

What color do you like?はコミュニケーション上の価値をあまり持っていない想定になっているんで す。I like が重要ではないんです。そうすると、I like が重要な場面では今度は I like を使わなければ いけないんですけど、ここではどんどん省略されてくるということになります。

では、I like が重要な場面はどういう場合かと言うと、好きなのか、やっているのか、持っているのか。 そのうち自分は好きなことを伝えたいという思いの中では、like という表現をきちんと表現して相手に伝 えることが大事になってきます。いくつか質問事項があって、その質問に応じて適切に、これは次の学習 指導要領では、その場で質問をしたり、質問に答えたりすることができるようにするということです。 何が来るか分からない中で、What color do you like?というのを聞かなければいけない場合には一生 懸命聞くし、きちんと質問するはずです。ここでは質問しなくても良いような状況だということですね。 私としては yellow というのが一番大事で、子どもに伝えたいことなので、そこはぜひ言えるようになって ほしいなという風に思う訳です。

この点について、中学校の先生は逆の考え方をします。文法の方が大事なので、私が見た授業では What do you eat for breakfast? What do you usually eat for breakfast? という活動をやっていた時、先生 よね。何か言いたい、言いたいけれども、それを表現するための言語能力に限りがあるため、何かひとこ と言うことで代用していたり、本当はこれを言いたかったんだけど別の表現で代用したりというような、 そういう風なことがあります。 そうすると今度、受信者の側としては、それで何を言っているのかな?ということを一生懸命推論して いくことが必要になってきます。もちろん、送る側からそれは適切な英語であったとしても、受け止める 側の言語能力が欠けている場合は、当然正しく解釈されないということです。 また、非言語情報によって伝わるものが伝わらなかったり、あるいは伝えたくないものが伝わってしま ったりということも多々あります。顔の表情、ジェスチャー、振る舞い方、服装、立ち位置、あるいは座 る位置とか、そういうことですね。 異なる文化背景によって、当然1つのメッセージが違った解釈をされるということもあります。小学校 で扱う部分でいくとジェスチャーみたいなものは扱ってもよいと思います。せっかく「おいで!」と言っ ているのに、「向こうへ行け!」と受け止められたりとかすることもあります。「おいで」というジェスチ ャーが「向こうへ行け!」という風に受け止められますよという風な、文化的な違いというのも多々ある という風に思います。 その意味では、コミュニケーションは誤解や無理解を前提として思う必要がある。そうするとじゃあど ういう行動が出てくるかというと、聞き直しをしたり確認をしたり、もう一度質問をしたり、自分の理解 を相手に伝えたりということをしながら、お互いの理解を深めていくための努力をお互いにしていくこと になります。

これは、この間見た授業なんですけれども、“What you want to be?”という授業をやっていたんです。 子ども同士がたくさん、小学校6年生でしたけれども、自分のなりたい職業を紹介して、“Why?”とか聞き ながらやりとりしていました。色んなペアになって、それで5~6名の人とあたったのかな、やり取りし ます。それで授業が終わりましたということだったんです。

もちろん中間評価とかもしながら進めたのですが、たまたまその子に先生が近寄ってきて、先生が“What you want to be?”と、小さい声で話し掛けました。その子は今までやってきた通りなので、“I want to be ○○”と言いました。先生はよかったんですけれども、“Oh you want to be this?”と言って、ワークシ ートを指さしたんです。“This”と言ってこのピクチャーを指さした。そうしたらその子、ハタと止まって “No”と言いました。今まで“I want to be A”、“I want to be A”、“I want to be A”と言っていたの ですが、A が実は本人がなりたいものではなかった。そのことに本人が気付いたんです。実際 B になりた かったと言いたかった訳です。これって、その先生が確認をしたので、お互いに誤解が解けて、その子は 自分の言いたいこともきちんと伝えられたということになります。 正しい英語を言っていたからといって、正しい内容を伝えているとは限らないという風に思いながら聞 き返して、こういうことを言っていますか?あぁこういうことですか?というやりとりをしていくことが 大事かなと思います。 その意味ではパフォーマンス、そうですね、それをコミュニケーションと言い換えるということです。 そういうことができる力をこのコミュニケーションをしながら育てていくというのが、次の学習指導要領 の目標ということになります。

パフォーマンスをどのように見るかということですけれども、例えば“What color do you like?”の ような表現があった時、“Hello”“Hello. What color do you like?”、“I like yellow.”と言って、黄色 のカードをもらい、“Thank you, see you”“see you”みたいな、こういう物をやりとりをするような、買

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い物ごっこみたいな活動をよくやったりします。

こういう活動をどんどんやっていくと、“Hello”“Hello, yellow.”と、yellow しか言わなくなってい きます。それで黄色いカードをもらい、“Thank you, see you.”“See you.”というように、“What color do you like?”や“I like yellow.”を言わなくなっていくということです。

この表現を言わなくなった時に、先生たちはこの子たちの姿をどう捉えますか?多くの先生方に聞くと、 What color do you like? I like….という表現の練習が足りなかったので、もっと練習するべきであると 答える先生が多いような気がします。皆さん方には問いませんけれども、今までの色んな所の話では、そ ういう答えをされる先生が多かったです。 私は、ここの中で何を伝え合っているのかな、という目で子どもの姿を見てほしいなという風に思う訳 です。そうすると、B さんは“yellow”と言いながら自分の欲しい物を実際、手に入れています。簡単な 語句や表現、単語を用いて自分の意図を伝えて、成功している訳です。更にコミュニケーションを円滑に するために、挨拶はきちんとしている訳です。 そうすると、やりとりで挨拶をしながら自分の欲しいものを伝え、これは単語であったとしても、yellow という自分の欲しい物をきちんと伝えられているということになります。で、yellow というのが表現です ね。表現語彙と言いますけれども、伝える語彙を持っているということになります。但し、I like と What color do you like?というのは、まだ身に付けていないかもしれないし、省略しているだけかもしれませ ん。 A さんの方もちょっと見てみますね。A さんの方はどうかというと、yellow と言われて、きちんと黄色 いカードを渡しているんです。そうすると相手の英語を聞いて、ちゃんと相手の意向を汲み取って自分の 適切な行動をしている訳です。そうするとコミュニケーションをしているかというと、きちんとメッセー ジのやりとりがここには存在しているということになります。但し先生が使って欲しいと意図した表現は 使われていないということになります。

では、先生の意図した表現ですね。“What color do you like?”“I like…”、これは重要かというと、 この場合は実は重要じゃないですよね。つまり好きな色を言って、その色の紙を貰うという状況下におい ては、コミュニケーションの経済的に考えると省略して良い表現ということになります。Hello. Hello. 「はい君の番」と言っているだけですね。そうしたら相手は Yellow.と言っているだけですね。

What color do you like?はコミュニケーション上の価値をあまり持っていない想定になっているんで す。I like が重要ではないんです。そうすると、I like が重要な場面では今度は I like を使わなければ いけないんですけど、ここではどんどん省略されてくるということになります。

では、I like が重要な場面はどういう場合かと言うと、好きなのか、やっているのか、持っているのか。 そのうち自分は好きなことを伝えたいという思いの中では、like という表現をきちんと表現して相手に伝 えることが大事になってきます。いくつか質問事項があって、その質問に応じて適切に、これは次の学習 指導要領では、その場で質問をしたり、質問に答えたりすることができるようにするということです。 何が来るか分からない中で、What color do you like?というのを聞かなければいけない場合には一生 懸命聞くし、きちんと質問するはずです。ここでは質問しなくても良いような状況だということですね。 私としては yellow というのが一番大事で、子どもに伝えたいことなので、そこはぜひ言えるようになって ほしいなという風に思う訳です。

この点について、中学校の先生は逆の考え方をします。文法の方が大事なので、私が見た授業では What do you eat for breakfast? What do you usually eat for breakfast? という活動をやっていた時、先生 よね。何か言いたい、言いたいけれども、それを表現するための言語能力に限りがあるため、何かひとこ と言うことで代用していたり、本当はこれを言いたかったんだけど別の表現で代用したりというような、 そういう風なことがあります。 そうすると今度、受信者の側としては、それで何を言っているのかな?ということを一生懸命推論して いくことが必要になってきます。もちろん、送る側からそれは適切な英語であったとしても、受け止める 側の言語能力が欠けている場合は、当然正しく解釈されないということです。 また、非言語情報によって伝わるものが伝わらなかったり、あるいは伝えたくないものが伝わってしま ったりということも多々あります。顔の表情、ジェスチャー、振る舞い方、服装、立ち位置、あるいは座 る位置とか、そういうことですね。 異なる文化背景によって、当然1つのメッセージが違った解釈をされるということもあります。小学校 で扱う部分でいくとジェスチャーみたいなものは扱ってもよいと思います。せっかく「おいで!」と言っ ているのに、「向こうへ行け!」と受け止められたりとかすることもあります。「おいで」というジェスチ ャーが「向こうへ行け!」という風に受け止められますよという風な、文化的な違いというのも多々ある という風に思います。 その意味では、コミュニケーションは誤解や無理解を前提として思う必要がある。そうするとじゃあど ういう行動が出てくるかというと、聞き直しをしたり確認をしたり、もう一度質問をしたり、自分の理解 を相手に伝えたりということをしながら、お互いの理解を深めていくための努力をお互いにしていくこと になります。

これは、この間見た授業なんですけれども、“What you want to be?”という授業をやっていたんです。 子ども同士がたくさん、小学校6年生でしたけれども、自分のなりたい職業を紹介して、“Why?”とか聞き ながらやりとりしていました。色んなペアになって、それで5~6名の人とあたったのかな、やり取りし ます。それで授業が終わりましたということだったんです。

もちろん中間評価とかもしながら進めたのですが、たまたまその子に先生が近寄ってきて、先生が“What you want to be?”と、小さい声で話し掛けました。その子は今までやってきた通りなので、“I want to be ○○”と言いました。先生はよかったんですけれども、“Oh you want to be this?”と言って、ワークシ ートを指さしたんです。“This”と言ってこのピクチャーを指さした。そうしたらその子、ハタと止まって “No”と言いました。今まで“I want to be A”、“I want to be A”、“I want to be A”と言っていたの ですが、A が実は本人がなりたいものではなかった。そのことに本人が気付いたんです。実際 B になりた かったと言いたかった訳です。これって、その先生が確認をしたので、お互いに誤解が解けて、その子は 自分の言いたいこともきちんと伝えられたということになります。 正しい英語を言っていたからといって、正しい内容を伝えているとは限らないという風に思いながら聞 き返して、こういうことを言っていますか?あぁこういうことですか?というやりとりをしていくことが 大事かなと思います。 その意味ではパフォーマンス、そうですね、それをコミュニケーションと言い換えるということです。 そういうことができる力をこのコミュニケーションをしながら育てていくというのが、次の学習指導要領 の目標ということになります。

パフォーマンスをどのように見るかということですけれども、例えば“What color do you like?”の ような表現があった時、“Hello”“Hello. What color do you like?”、“I like yellow.”と言って、黄色 のカードをもらい、“Thank you, see you”“see you”みたいな、こういう物をやりとりをするような、買

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もしこの子が何かのメッセージを伝えるために言葉を使っていると思えば、私だったら Really? と反応し ます。あるいは“Oh, where?”と聞きます。ここにパンダいますか? もし Oh I see two pandas と言っ たら、Oh where?ですよね。どこにいるの、ホント?そういう反応がポイントになりますね。メッセージを きちんと受け止めた上で、この子のやりとりが生きているのか生きていないのかということを考える必要 があります。 これは、コミュニケーションということを考えた時に、教科化されたことで知識・技能・正確さという のがとても強調される時があります。その時に私はその相手に正しく伝えているかどうか、しかも場面・ 状況・目的に応じてきちんと伝わっているかどうかという観点で子どもの姿を見ていかないと、どうして も場面から取り出されてきて、表面だけを扱ってしまうキライがあるなと思い、この話をしています。 学習指導要領が変わり、言語活動を充実させ、言語活動の中で主体的・対話的で深い学びの実現を図る ということを理解していくというのが重要になってきます。で、変わることか変わらないことかというと、 実は今回の指導要領の中では言語活動を通して指導するというのは変わらない内容になります。それから 主体的・対話的で深い学びをしてからの授業改善という点でも変わっていくと思います。 言語活動って何でしょうか?これは、今回学習指導要領の中で、実際に英語を使用して互いの考えや気 持ちを伝え合うなどの言語活動を行う際には、言語材料について理解したり、練習したりするための指導 を必要に応じて行うこと、というように書かれました。つまり言語活動というものと、言語材料を理解し たり練習するための活動を分けたということなんです。で、言語活動だけをやりなさいということではな くて、必要に応じて指導をしなさいと。 例えば、チャンツは言語活動ではないですね。その中でメッセージを伝え合うということはしません。 そうすると、チャンツをやった結果、必要に応じてというのはどういう時かというと、どんな言語活動で 活用できるようにするためにチャンツをやるのか、ということをきちんと意識してチャンツをやる必要が あるということになります。 どこにも行かない練習活動というとちょっとオーバーですが、ここで練習したことは一体いつ発揮され るのかな?と疑問の思うぐらい、単元の中でどこにも発揮される場面がないということもあります。練習 活動は、実際、言語活動において発揮するための活動と捉える必要があります。 それから、互いの考え・気持ちを伝え合うなどの活動で、小学校なので、しかも面と向かったコミュニ ケーションからスタートしていきます。なので「考え・気持ちを伝え合う」と書かれていますけれども、 コミュニケーションでいくと、まずは伝える、それから聞いて分かるという要素がある訳です。 そうすると、その聞いて分かるというのも言語活動の1つですし、伝えるというのも言語活動の1つで すし、それが合わさって伝え合うというのも言語活動ということになります。これは指導要領によると、 聞くこと・話すことをやれという、話すことは発表、これらが全部言語活動の例として出てきているとい うことからもお分かりかと思います。伝え合うの“合う”に引きずられないようにしてもらえると、本当 はいいなと思ったりします。 それから、互いの考えや気持ちですけれども、これは中学校・高等学校、特に高等学校では考えや気持 ちに加えて、情報とか事実とかそういうことが入ってきています。メッセージと思うと、まず小学校3年 生の子たちがお互い伝え合うとしたら、まず自分の考えとか自分の気持ち、自分の考えていることでしょ う、好きなものでしょう、というところからスタートです。 これが段々と生活圏が広がったり、日常生活について語っていったり、学校生活について語っていくと、 情報について、つまり事実に導いてやりとりをするというのも、当然この言語活動の中に入ってくる訳で が5種類ぐらいのメニューを示していたんですね。ある子が、「先生、そこにカツ丼がない。でも自分は朝 カツ丼を食べる。カツ丼って言いたいけど、先生、何?」みたいな、「今日はこの5つの中から選んでみて」 と言いました。これは、何か伝えたいことが一番ねじ曲げられてしまって、子どものメッセージがないが しろにされている場面ということになります。 言語材料の点からいくと、小学校は「今は日本語だけど、あとで調べておくね」とか、あるいは「今は 日本語だけれども、またジェームズ先生が来た時に教えてもらおうね」という風に先延ばしをして、「今は 日本語で」というのはあるかもしれませんけれども、本当はできるだけ子どもが言いたいことはきちんと 英語にしていくようにしないと、コミュニケーションできる子どもに育たないなと思っています。 正しさということの評価観に合わせて、たくさん言われますけれども、私はこの正しさ、“正しい”に2 つ意味合いがあると考えています。正しい英語で表現するということと、自分の意図を正しく伝えるとい う意味の“正しい”があります。実は学習指導要領では両方が混ざっている部分があります。正しさもそ うだけれども、正しく伝わるということを求めている部分があります。 例えば、ここに場面などがあるという風に用意をしましたけれども、ここに果物の絵がたくさんあった とします。そして先生から“Which fruit do you like?”、“What fruit do you like?”とか聞かれたとし ます。その時に、子どもはすぐ指を差したとします。指を差して好きなものを言っているに違いないので、 “Do you like oranges?”という反応を返しますよね。そうするとジェスチャーとか絵を使って、相手に きちんと自分の考えを伝えている訳です。

但し、英語を使って伝えているのではないので、話すこととしてはもちろんまだまだ足りないなと思う んですけど、しっかり質問の意図を捉えて適切に反応している。聞くことの力としては、しっかり力がつ いていると考えることができます。

もちろん、ここに果物があった時に“Which fruit do you like?”と言って、“I like orange”、これは もちろん oranges というようにしないといけないと思うんですけれども、でも誰も orange と言った時に、 みかん以外のものを思い浮かべる人はいない。色のことを思い浮かべたりする人はいない訳です、フルー ツのことを聞かれている訳ですから。 そうすると、この状況においては I like orange だけでも当然適切に反応をしているということになり ます。但し、複数形の oranges という言い方は、まだ身についていないという判断をすることができます。 では、何もなかったらどうか。何もない場面で、いきなり指を差しても分かりません。何もない場面で orange と言っても、何のことか分かりません。オレンジ色なのか、みかんのことを言いたいのか、オレン ジという映画のことを言いたいのか、漫画のことを言いたいのか。オレンジさんという名前の何かペット がいて、そのペットのことを言いたいのか、という風によく分かりません。

I like orange も同じです。I like orange といきなり言ったとしたら、通常色んなことを思い浮かべま すかね。もしかしたら、みかんかなぁと言うかもしれないし、もしかしたらオレンジさんという人がいる のかな、という風に思い浮かべるかもしれません。当然、何もないところであれば、I like oranges とい うのが一番ニュートラルに伝わる表現ということになります。

正しく伝える、伝えているかというのは、場面・状況・目的などによって判断が変わるということです。 もちろん正しい英語で表現しているかどうかということでいくと、I like oranges というのが正しいとい うことになります。

複数形の練習をして、子どもが“I see two pandas”と言って教室を出ていったという話を聞きました。 教室を出ていった時に先生は、複数形がきちんと使えてるなぁという風に思うのか、違うように思うのか。

参照

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