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化石 論 Fossils The Palaeontological Society of Japan 説 下部更新統上総層群野島層今泉砂礫岩部層から採取されたタマガイ科絶滅種 Glossaulax hyugensis (Shuto) 軟体動物門 腹足綱 の発見とその意義

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(1)

The Palaeontological Society of Japan

化石 102,63‒71,2017

下部更新統上総層群野島層今泉砂礫岩部層から採取されたタマガイ科絶滅種

Glossaulax hyugensis (Shuto)(軟体動物門,腹足綱)の発見とその意義

神保幸則*・間嶋隆一**・市村俊樹***・楠 稚枝*・野崎 篤****・宇都宮正志*****

*横浜国立大学環境情報学府・**横浜国立大学環境情報研究院・***国際航業株式会社東北事業所・****平塚市博物館・*****産業技術総 合研究所地質情報研究部門

An extinct naticid species Glossaulax hyugensis (Shuto) (Mollusca:

Gastropoda) from the Lower Pleistocene Imaizumi Sandstone and

Conglomerate Member in the Nojima Formation (Kazusa Group, central

Japan): Discovery and implications

Yukinori Jimbo*, Ryuichi Majima**, Toshiki Ichimura***, Chie Kusu*, Atsushi Nozaki**** and Masayuki

Utsunomiya*****

*Graduate School of Environment and Information Sciences, Yokohama National University, 79-7 Tokiwadai, Hodogaya-ku, Yokohama 240-8501, Japan ([email protected], [email protected], [email protected]); **Faculty of Environment and Information Sciences, Yokohama National University, 79-7 Tokiwadai, Hodogaya-ku, Yokohama 240-8501, Japan (majima-ryuichi-ym@ ynu.ac.jp); ***Tohoku office, Kokusai Kogyo CO., LTD. 1-3-45, Shintera, Wakabayashi-ku, Sendai 984-0051, Japan (ichimura-toshiki-sg@ ynu.jp); ****Hiratsuka City Museum, 12-41 Sengencho, Hiratsuka, Kanagawa 254-0041, Japan ([email protected]); *****Research Institute of Geology and Geoinformation, Geological Survey of Japan, AIST, Tsukuba, Ibaraki 305-8567, Japan ([email protected]).

Abstract. A juvenile specimen of Glossaulax hyugensis (Shuto) was collected from the Lower Pleistocene

Imaizumi Sandstone and Conglomerate Member in the Nojima Formation. This formation is in the lower part of the Kazusa Group, a forearc-basin-fill sequence exposed on the Pacific Ocean side of central Japan. The specimen was found in a 9-m-thick conglomeratic sandstone bed in a channel-fill sequence. G. hyugensis is characteristic of the warm- and shallow-water Kakegawa fauna, which flourished on the Pacific Ocean side of southwestern Japan during the Late Pliocene to Early Pleistocene. The stratigraphic level at which the fossil was found is estimated to lie above the KGP tuff bed (2.5 Ma) and below the Olduvai subchronozone (1.97 Ma). This finding marks one of the latest fossil records for the species and suggests that it occurred for a long time period in the southern Kanto area, from the Late Pliocene to Early Pleistocene.

Keywords: Glossaulax hyugensis, Kakegawa fauna, Pleistocene, Nojima Formation, Kazusa Group, Miura

Peninsula

はじめに

神奈川県南東部の三浦半島北部に露出する下部更新統 上総層群野島層今泉砂礫岩部層(江藤, 1986; 以下今泉部 層)から腹足綱タマガイ科の絶滅種Glossaulax hyugensis (Shuto) の幼貝が産出した.同部層からは,これまで G. hyugensisの近縁絶滅種であるG. hagenoshitensis (Shuto) と G. nodai Majima が報告されていた(Majima, 1985). これら3種は,西南日本太平洋側の上部新生界掛川層群 (静岡県),唐の浜層群(高知県),宮崎層群(宮崎県)な どから多産し(Majima, 1985; 間嶋, 1987; 間嶋, 1988b; Majima, 1989),後期鮮新世から前期更新世の暖流浅海 棲貝化石群である掛川動物群(Otuka, 1939; 小澤・冨田, 1992; 小澤ほか, 1995)を最も良く特徴づけるタマガイ 科の化石である. 一 方 , 今 泉 部 層 か ら は , オ ト ヒ メ ハ マ グ リ 科 (Vesicomyidae)の大型二枚貝(以下シロウリガイ類)が 産出することから(Shikama and Masujima, 1969など), 陸棚より深い深海環境で堆積したことが示唆されており, 浅海棲の掛川動物群構成種がなぜ深海堆積物から産出す るのかという疑問があった.また,本種の生息期間を各 産地の最近の年代層序学的研究によって再検討したとこ ろ,本産地は本種の最も若い時代の産出層のひとつであ ることが判明した.

論 説

(2)

本研究の目的は,今泉部層における本種の産状を詳細 に記載し,浅海棲種の深海堆積物中での産状を明らかに すること,本種と本種に近縁なタマガイ科巻貝化石の幼 貝の分類基準を示し同定の妥当性を議論すること,およ び本種の産出年代を最近の年代層序学的研究に基づき検 討することによって,その時空分布を明らかにすること である.

化石産地

Glossaulax hyugensisは,横浜市栄区公田町にある,荒 井沢市民の森入口付近にある崖から産出した(図1, 2). 崖には下部更新統野島層に挟在する今泉部層が露出し, 崖の最上部は野島層主部の泥質砂岩層からなる.著者ら の調査では,今泉部層は全体として上方粗粒化を示す砂 礫質の海底扇状地堆積物を構成し,化石を採取した露頭 は,扇状地最上部のチャネル充填堆積物からなる(図1, 2のTraverse 1). 露頭の下半部は,下部が礫質砂岩,中部が軽石を散在 的に含む粗粒砂岩,最上部は平行葉理からなる細粒砂岩 へと級化する層厚9 mに達する単層からなり,この単層 は,下位の軽石を豊富に含む粗粒砂岩層と明瞭な浸食面 で接する(図2C, 2E).露頭の上半部は,級化構造を頻 繁に示す粗粒砂岩層や中粒砂岩層が明瞭な浸食面を伴っ て累重し,最上位は泥質砂岩層となる(図2DのTraverse 1の柱状図).これらの地層は全体としてチャネル充填堆 積物特有の上方細粒化および薄層化傾向(Walker, 1984) を示す.貝化石は層厚9 mの単層の基底から上位へ約2 m の礫質砂岩から採取した(図2).この層準では,径5 mm 前後の礫や貝殻の破片が散在し,礫は亜角礫から円礫よ りなり,礫径はまれに数 cm を超えることがある.以上 の堆積相の特徴から,礫質砂岩から産出する貝化石は, チャネルを流下した堆積物重力流によって運搬され,堆 積したと判断される.Majima(1985)が野島層から報告 したG. hagenoshitensisとG. nodaiも今泉部層から産出す るが(Shikama and Masujima, 1969の産地318-II),露頭 は宅地化のため消失し,詳しい化石の産状は不明である.

化石の産状と共産化石

貝化石の多くは破片として産出し,殻は極めて脆く, また,殻の表面は砂や礫の粒子が食い込むように固着し ている個体が多かった.二枚貝化石は破片か離弁の状態 で産出し,露頭表面で見る限り,殻の埋没姿勢に定向配 図1.化石産地の位置(A),地質図(B)および化石産地の崖の全景(C).Traverse 1〜3の柱状図は図2に示す. マークは図1,2の写真 撮影位置を示す.地形図は国土地理院発行1万分1「港南台」を使用.

Fig. 1. Index map (A), site locality (B), and sampling site (C). Geological columns for traverses 1‒3 are shown in Fig. 2D. The two marks indicate the locations where the images in Figs 1 and 2 were taken. The base map used in B is the 1:10,000 “Kônandai” topographic map, published by the Geospatial Information Authority of Japan.

5 km 0 N N

Fig. 1B

Core E

Core I

Fig. 2A

Traverse 1

Traverse 1

Traverse 3

Traverse

2

Nojima Formation

Nojima Formation

Imaizumi Sandstone and

Conglomerate Member

100 m

Fossil

Locality

6

9

3

6

5

3

Miura Peninsula Kazusa Group

B

A

C

(3)

列などの傾向は見られなかった.巻貝化石も破片で産 出するものが多い.また,破片化していない個体は幼 貝が多く,多くの標本で種レベルの同定は行えなかっ た.種まで同定できた二枚貝類は Scapharca broughtonii (Schrenck)(図 3D),Cryptopecten vesiculosus (Dunker), Cyclocardia ferruginea (Clessin) など,巻貝類は Olivella japonica Pilsbry,Euspira yokoyamai (Kuroda and Habe), Glossaulax hyugensis(図3B)などで,現生種は陸棚以浅 に生息する種から主になる.これら以外に,ウニ類の棘 やフジツボ類の破片,単体サンゴ類などが産出した. 破片として産出するイタヤガイ類の中に,Amussiopecten 属に同定できるものがあった(図 3E, 3F).殻の外表面 は幅の広い放射肋が顕著で,内表面の腹縁側には,幅の 狭い肋が外表面の放射肋の側縁に対応した位置に対に なって発達し,この形質は Amussiopecten 属を特徴づけ る(Hertlein, 1969).日本から産出する本属は放射肋 の数などによって種が区別されているので(Masuda, 1962),採取した破片標本だけでは種の同定は困難であ る.馬場(1990)は本部層中からAmussiopecten praesignis (Yokoyama)を報告している.本種は,掛川動物群を最も 良く特徴づける分類群のひとつである. 二枚貝の破片の中にシロウリガイ類の可能性が高い標 本があった.近傍の産地(宇都宮ほか, 2014など)から 産出した Calyptogena kawamurai (Kuroda) の破片化して いない標本と比較したところ,殻の厚さと顕著な成長 脈を持つ表面彫刻などから,形態上区別はできなかっ た.三浦半島の新生界からはシロウリガイ類化石が多産 し,本部層からも幾つかの報告例がある(Shikama and Masujima, 1969; 平 田 ほ か, 1991; 宇 都 宮 ほ か, 2014). Utsunomiya et al.(2015)は,三浦半島から産出する化 学合成化石群集の古水深をまとめ,シロウリガイ類が卓 越する群集は水深400 m以深に生息し,ツキガイ類やオ ウナガイ類が卓越する群集は300 m以浅に生息すること を示した.このことから,本部層は400 mよりも深い水 深で堆積したと推定される. 図2.化石を産出した露頭の写真(A, B, C, E)と産地およびその周辺の柱状図(D).各柱状図を作成した位置(Traverse)は図1に示す. Fig. 2. Outcrops at the fossil locality (A, B, C, E), and geological columns of traverses 1‒3 (D). The locations of traverses 1‒3 are shown in Fig. 1.

50 cm

Fig. 2B

Fig. 2E

Fig. 2C

Traverse 1

5 m

20 cm

5 cm

B

A

C

D

E

Thickness (m)

Legend

Fossil horizon

studied

Erosional surface

Coarse ash tuff Fine ash tuff

Coarse-grained sandstone Fine-grained sandstone Muddy sandstone Geomagnetic polarity Medium-grained sandstone Pumice Scoria Fragments of fossil shell Gravel Parallel lamination Pumice-rich lapilli tuff

Imaizumi

Sand-stone and

Cong-lomerate Member

Nojima Formation

10 5 0 5 0 15 10 5 0

Traverse 2

Traverse 3

Traverse 1

5 0 Scoria-rich lapilli tuff Reverse

(4)

Glossaulax hyugensis幼貝の同定

露頭からGlossaulax属の幼貝3標本を得た(図3A, 3B, 3C).いずれも日本産の現生 Glossaulax 属全種に比較し て相対的に殻底部が角張り,臍孔壁が平滑で,これらの 特徴は掛川動物群から多産する絶滅種Glossaulax hyugensis (Shuto),G. hagenoshitensis (Shuto)およびG. nodai Majima に共通する.産出した標本は幼貝であったが,1標本を G. hyugensisに同定できた.以下に同定の根拠を示す.な お,以下で用いるGlossaulax属の記載用語については,間 嶋(1988a)の図1を,また,“1J, 1T, 3J”などの各種の 成長段階を示す各“型”については,間嶋(1988b)の 図2およびMajima(1989)のText-fig. 8を参照した.主 要な形質の部位とその名称,および以下に引用する各 “型”については図4に示した.これら3種の成貝を含む 個体発生上の形態変異は異時性の特殊な様式で説明され ており,間嶋(1988b)と間嶋・塚越(2004)で解説さ れている. Majima(1985)は,掛川動物群から産出する上記3種 の幼貝の臍滑層前丘の形態変異を,臍滑層前丘の両端を 結ぶcの長さに対し,それに垂直な臍滑層前丘の張り出 しの最大長dの比d/cを散布図にプロットすることで示し た.なお,cの後端は索溝の端である(図4).今回得ら れた3標本のcとdの測定値と,それらをMajima(1985) のText-fig. 7にプロットした図を図4に示す.なお,測定 はMajima(1985)同様,写真上で行った. G. hyugensis の幼貝(1J)は三角形の臍滑層前丘を持 ち,臍滑層前丘外縁は成長に伴って次第に張り出し四角 形の臍滑層前丘を持つ成貝(1T)に変異する(図4Bの △).G. hagenoshitensis の幼貝(3J)は四角形の臍滑層 前丘を持ち(図4の○),G. hyugensisの成貝(1T)に似 るが,殻の大きさが異なるので区別できる.c の値を殻 の大きさと考えた場合,同じ大きさの幼貝同士では,臍 滑層前丘外縁の張り出しの程度(d/c )が両種間で明ら かに異なる(図4B).この形質で比較すると,図3Bと3C の2標本はG. hyugensisの変異の領域にほぼ入ることが分 図3.今泉部層の露頭(図2)から採取された貝化石(国立科学博物館筑波研究施設所蔵).

Fig. 3. Molluscan fossils collected from the study outcrop in the Imaizumi Sandstone and Conglomerate Member. A: Glossaulax sp. NMNS PM 27617. C: Glossaulax sp. NMNS PM 27619. B: Glossaulax hyugensis (Shuto), NMNS PM 27618. D: Scapharca broughtonii (Schrenck), NMNS PM 27620. E: Amussiopecten sp., NMNS PM 27622. F: Amussiopecten sp., NMNS PM 27623. NMNS PM = National Museum of Nature and Science, Paleontology, Mollusca.

5 mm

10 mm

Eb

Fa

Fb

Ea

Db

Da

Cb

Ca

Bb

Ba

Ab

Aa

A, B, C

D, E, F

(5)

かり,G. hagenoshitensisの幼貝(3J)と区別できる(図 4B の Fig. 3B と 3C の ▲ ). 一 方 , 図 3A 標 本 は , G. hagenoshitensisの変異の領域に入るように見えるが,c値 が 1 mm から 2 mm の個体を比較した場合,d/c 値は G. hagenoshitensis(図4Bの○)よりも小さい.なお,一部 のG. hagenoshitensisの個体群(同一産地から得られた同 一種の標本群)には縫合下に沿って浅い溝状のバンド (subsutural band)が見られるが,検討した3標本には確 認できなかった. G. nodaiは臍滑層前丘外縁の張り出しが弱いことが特 徴である(図4Bの▽).G. nodaiにはc値が4 mm以下の 幼貝がこれまでほとんど採集されていない.そのため, 今泉部層産3標本(c<3 mm)を,同じ大きさのG. nodai と比較できなかった.そこでG. nodaiのd/c値の変異の 範囲が幼貝から成貝まで同様であったと仮定すると,d/c 値が 0.2 を超える図 3B の標本は,G. nodai の d/c 値の変 異の範囲よりも大きな値を示すので,G. nodaiから区別 が可能である.一方,d/c値が0.2以下の図3Aと3Cの2 標本は,G. nodai の d/c 値の変異の範囲と重複すること から,これらをG. nodaiから区別はできない. 以上の比較から,今泉部層産の幼貝のうち,図3Bの標 本はG. hagenoshitensisおよびG. nodaiと,殻の大きさに 対する臍滑層前丘外縁の張り出しの程度で区別が可能な ので,G. hyugensisに同定した.一方,図3Aの標本はG. hyugensisの幼貝のd/c値の変異の範囲から外れ,G. nodai のd/c値の変異の範囲と重複する.また,図3Cの標本は G. nodaiのd/c値の変異の範囲と重複する.以上から,こ の2標本は種の同定は行わず,Glossaulax sp.とした.な お,Majima(1985)が本部層から報告したG. nodaiの1 標本(Majima, 1985 の pl. 18, fig. O:NMNS PM27397) の滑層前丘の測定値(c:5.40 mm,d:0.40 mm,d/c: 0.07)を図4Bにプロットしたところ,この標本はG. nodai の変異の範囲に入ることが確認できた(図4Bの▼).ま た,今泉部層産のG. hagenoshitensisはMajima(1985, pl.

図4.今泉部層産Glossaulax標本の臍滑層前丘の形質に関する測定値(A),散布図(B),および主要な形質の名称(C).散布図はMajima (1985)のtext-fig. 7を再描画した.△:G. hyugensis.○:G. hagenoshitensis.▽:G. nodai.▲:図3A, 3B, 3C.▼:Majima(1985)で 今泉部層から報告されたG. nodai(GIYU no. 563=NMNS PM27397).Majima(1985)で使用された標本のうち,横浜国立大学所蔵標本 (標本番号にGIYUが付されたもの)は,全て筑波の国立科学博物館に移管されている.

Fig. 4. Measurements of the anterior umbilical callus lobe of Glossaulax specimens (A). Scatter diagram of the measurements (B). Terminology used for the basal part of Glossaulax (C). The diagram is redrawn from fig. 7 of Majima (1985). △: G. hyugensis. ○: G. hagenoshitensis. ▽: G. nodai. ▲: Fig. 3A, 3B, 3C. ▼: G. nodai (GIYU no. 563 = NMNS PM27397), reported by Majima (1985). All specimens having the prefix GIYU (Geological Institute, Yokohama National University) that were studied by Majima (1985) are now stored in the National Museum of Nature and Science, Tsukuba.

0

0.1

0.2

0.3

1

2

3

4

5

6

7

8

9 mm

d/c

c

d c

Fig. 3A Fig. 3B Fig. 3C

Glossaulax

hagenoshitensis

Glossaulax

hyugensis

Glossaulax

nodai

3J 1T 1J

d c

Glossaulax hyugensis Glossaulax sp.

Fig. 3B Fig. 3A Fig. 3C (mm) 2.60 1.45 2.42 (mm) 0.54 0.24 0.24 0.21 0.17 0.10 pl. 18, fig. O (Majima, 1985)

d/c

c

d

NMNS PM 27618 NMNS PM 27617 NMNS PM 27619 Anterior umbilical callus lobe

Outer margin of anterior umbilical callus lobe Umbilical wall Groove Parietal callus

A

B

C

索溝 臍滑層前丘 臍滑層前丘外縁 口頂滑層 臍孔壁

(6)

19, fig. M)で図示されており,成貝の3T型に同定され る.以上から,今泉部層から,G. hagenoshitensis,G. nodai,G. hyugensis の 3 種が産出することが確実となっ た. なお,著者の一人間嶋は,以下の考察から図3Cの標本 はG. hyugensisではないかと考えている.すなわち,3種 の進化は異時性に支配されていることから,これらの種 の臍滑層前丘外縁は成長に伴って共通的に張り出す傾向 を持つと予想され,G. nodaiも同様な傾向を持っていた と思われる.G. nodaiには成貝になってもd/c値が0.1以 下の個体が普通に見られること(図4B)をふまえると, 未発見の G. nodai の幼貝(c 値が 1 から 3 mm)の d/c 値 は0前後(d≒0,臍滑層前丘外縁はほぼ直線)になる可 能性が高い.この推定が正しいとすると,図3Cの標本の 臍滑層前丘外縁の張り出しは同じ大きさのG. nodaiに比 較して大きすぎると予測され,G. hyugensisの幼貝とする のが妥当と思われる. 一方,図3Aの標本の臍滑層前丘外縁の張り出しは(d/c 値 0.2 以下),G. hagenoshitensis の幼貝と比較して弱く, この個体を G. hyugensis の幼貝としても矛盾はないよう に思えるが,G. hyugensis と G. hagenoshitensis はしばし ば共産することから(Majima, 1985),G. hagenoshitensis の幼貝の可能性を否定しきれない.図3Aと3Cの2標本 の確実な同定のためには,形態発達の解析を,成貝を含 む同一産地の一定数の標本に基づいて行う必要があるこ とから,今回は類型的な形態比較に基づく同定に議論を とどめた.

Glossaulax hyugensisの産出年代

Glossaulax hyugensisは,宮崎層群(宮崎県),唐の浜層 群(高知県),掛川層群(静岡県),中津層群(神奈川県) から報告されてきた.以下に本種を産出する産地の堆積 年代を検討し,本種の時空分布を明らかにする.なお, 古地磁気年代については,一部の引用文献でCande and Kent(1995)の年代を使用しているが,全てLisiecki and Raymo(2005)の年代に統一して引用した. 宮崎層群 Shuto(1964)により5産地から報告された.これらの 産地の詳細は不明であるが,産地Hagenoshita(禿の下: 模式産地)とNihonmatsu(二本松)は,Majima(1985) の産地M-1とM-4にそれぞれほぼ一致すると思われるが, Majima(1985)は M-4 から本種を採集できていない. Shuto(1964)の残りの 3 産地については,標本が本種 であるかどうか確認が取れていない.以上から,宮崎層 群の本種の確実な産地は,Majima(1985)の産地 M-1, M-2,M-3とMajima et al.(2003)の産地F3となり,こ れらは高鍋層とされている(遠藤・鈴木, 1986など).産 地M-2,M-3を,Oda et al.(2011)のfig. 3の地質図と 比較し,彼らのfig. 10の層序総括図で該当する時代を検 討した.その結果,両産地は Oda et al.(2011)の佐土 原層と高鍋層の境界直上に位置し,HST-4凝灰岩層(8 m 下位層準の HST-3 凝灰岩層の年代は 3.05 ± 0.16 Ma:鳥 井ほか, 2000)の直下(産地M-3),あるいはほぼ同層準 (産地M-2)に位置すると判断される.この層準は,Oda et al.(2011)の fig. 10 によればガウス正磁極帯の下限 (3.59 Ma)からマンモス逆磁極亜帯の上限(3.21 Ma)の 時代に相当する.産地M-1の年代については,上記2産 地のほぼ走向方向の高鍋層の層準ということしか分から なかった.一方,産地 F3 は,Majima et al.(2003)の T-4 凝灰岩層の約 10 m 上位の層準に位置する.T-4 凝灰 岩層は鳥井ほか(2000)によって2.71±0.16 Maとされ たNGT-1凝灰岩層に一致する(Majima et al., 2003).千 代延ほか(2012)は,NGT-1 凝灰岩層の上位約 40 m に ガウス正磁極帯とマツヤマ逆磁極帯の境界(2.61 Ma)が 存在し,地磁気境界は泥質砂岩層から泥岩層へと上方細 粒化する直前の層準に一致することを示した.産地F3は 泥質砂岩層よりなり,この層準の岩相の側方への大きな 変化はないことを著者らは確認しているので,同産地は ガウス正磁極帯の層準と判断できる.したがって,宮崎 層群から産出する本種は,3.59 Maから2.61 Maの間の層 準から産出するといえる. 唐の浜層群 高知県の唐の浜層群の産地T-1(登層)とT-2(穴内層) から本種は産出している(Majima, 1985).また,登層 からAoki and Baba(1984)とMatsubara(2004)によっ て本種が報告されているが,Aoki and Baba(1984)が 図示した標本は臍孔部の形質が不明で本種かどうか確認 できていない.北ほか(2009)は,穴内層のほぼ全層準 をカバーしているボーリングコア(岩井ほか, 2006)か ら,同層の年代を微化石層序,古地磁気層序,および有 孔虫の酸素安定同位体比層序に基づき,3.14 Ma から 2.42 Maと推定した.また,増渕ほか(2008)は,登層 で掘削されたボーリングコアから同層の堆積年代を 3.2 Maから2.8 Ma(酸素同位体比ステージKM5からG12) とした.以上から唐の浜層群の穴内層(泥質砂岩層およ び砂質泥岩層主体)と登層(泥岩層主体)はほぼ同時異 相の関係にあり,本種は唐の浜層群の3.2 Maから2.42 Ma の間の層準から産出すると考えられる. 掛川層群 静岡県の掛川層群の産地K-9(Majima, 1985)から報 告されている.産地K-9は,掛川層群の基底をなす砂岩 層あるいは礫岩層(大日層)の上位に重なる泥質砂岩層 (槇山, 1963の天王寺砂岩部層,Ishibashi, 1989の宇刈層 など)からなるが,これらの地層の定義は研究者間で著

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しく異なっている.柴ほか(2007)は,掛川層群の微化 石層序とシーケンス層序を検討し,各パラシーケンスに 年代を与えている(柴ほか, 2007のfig. 7).産地K-9は, 彼らの大日層のパラシーケンスPD1あるいはPD2に相当 し(柴ほか, 2007のfig. 2),これらはおおよそ2.3 Maか ら2.1 Maの間に堆積したとされている. 中津層群 神奈川県中部の相模川沿いに露出する中津層群神沢層 から報告され(馬場, 1992),図示された個体は本種の1T 型(図4)に同定される.植木ほか(2013)は,凝灰岩 層の年代を基に中津層群の古地磁気層序を確立し,神沢 層はおおよそガウス正磁極帯のマンモス逆磁極亜帯の下 限(3.32 Ma)からカエナ正磁極亜帯の下限(3.13 Ma) の堆積物であるとした. 今泉砂礫岩部層 上総層群野島層今泉砂礫岩部層の堆積年代は,下位の 浦郷層に挟在する2.5 MaとされるKGP凝灰岩層(稲垣ほ か, 2007; 田村ほか, 2010)の上位で,かつ1.97 Maとさ れるオルドバイ正磁極亜帯下限の下位の層準と見積もる ことができる.その根拠を以下に示す. 化石産地より下位の浦郷層に挟在するざくろ石を含む KGP凝灰岩層(稲垣ほか, 2007)の堆積年代は,広域火 山灰層序に基づき約2.5 Maと見積もられている(田村ほ か, 2010).この年代は,KGP凝灰岩層と対比される中津 層群に挟在する凝灰岩層の直下でガウス正磁極帯上限 (2.61 Ma)が見つかっていること(植木ほか, 2013)と 調和的である. 今泉砂礫岩部層の上位に重なる泥質砂岩層から逆磁極 の極性を得た(図2のTraverse 3).測定は,各層準から ドリルで5,6本の定方位試料を採取し,各試料を楠ほか (2014)の手法で測定した.楠ほか(2014)はオルドバ イ正磁極亜帯上限(1.78 Ma)を本研究の調査地より東北 東へ約2.5 kmの地点で掘削されたボーリングコア中に認 め(図1AのCore I),その層準はSg3凝灰岩層(藤岡ほ か, 2003)の75 m下位に位置するとした.また,著者ら の調査で,オルドバイ正磁極亜帯下限(1.97 Ma)は,同 亜帯上限の 61 m 下位に位置することが分かっている. Nozaki et al.(2014)は「瀬上市民の森」から「氷取沢 市民の森」に露出する野島層上部から小柴層下部に挟在 する全ての凝灰岩層を追跡記載し,Sg3凝灰岩層をNOT-12凝灰岩層として再定義した.NOT-12凝灰岩層は,本 研究の調査露頭の約2.2 km北北東に位置するボーリング コアE中に確認されている(Nozaki et al., 2014のfig. 3; 図 1A の Core E).調査露頭と NOT-12 凝灰岩層の間は, 宅地開発により露頭が失われているが,三梨・菊地(1982) の地質図に基づくと,地層は同斜構造をなすと推定でき, これらのデータから古地磁気試料採取層準はNOT-12凝 灰岩層からおおよそ255 m下位と見積もることができた. オルドバイ正磁極亜帯上限は NOT-12 凝灰岩層の下位 75 mに,また同亜帯下限は下位136 m(75 m+61 m)に 存在することから,上記層厚差255 mを考慮すると,調 査地の逆磁極はオルドバイ正磁極亜帯下限(1.97 Ma)よ りも下位の層準とするのが合理的である.以上から,調 査露頭の堆積年代は,2.5 Ma から 1.97 Ma の間と推定さ れる. 産出年代のまとめ 以上をまとめると,本種は宮崎層群の 3.59 Ma から 2.61 Maの間の層準,唐の浜層群の3.2 Maから2.42 Maの 間の層準,掛川層群の2.3 Maから2.1 Maの間の層準,中 津層群の 3.32 Ma から 3.13 Ma の間の層準,上総層群の 2.5 Maから1.97 Maの間の層準から産出すると推定され る.すなわち,本種は,宮崎層群,唐の浜層群,中津層 群の産出が最も古く,掛川層群と上総層群の産出が最も 若い.以上から,今泉部層は本種の記録が最も若い地層 のひとつであり,関東地域は本種の記録が最も古く(中 津層群),また最も若い時代の地層(上総層群)が露出す る地域のひとつであることが分かった.

考察とまとめ

Glossaulax hyugensis,G. hagenoshitensis,G. nodaiの3 種は,西南日本太平洋側の外洋浅海域に生息していた掛 川動物群を最も良く特徴づけるタマガイ科絶滅種である. 今回発見されたG. hyugensisは,約3.6 Maから2 Maの生 息期間を有し,宮崎層群,唐の浜層群,中津層群に最初 に現れ,掛川層群と上総層群が最後の記録となる.した がって,関東地域から産出する本種は,西南日本の掛川 動物群産出域と同様な期間の化石記録を有している. これまで,南関東地域では掛川動物群のいくつかの構 成種が,上部鮮新統中津層群神沢層(神奈川県:馬場, 1992),下部更新統上総層群野島層(神奈川県:馬場, 1990),下部更新統上総層群黒滝層(千葉県:大原・高 橋, 1975)などから断片的に報告されていただけであっ た.南関東地域で掛川動物群の産出が少ない原因のひと つとして,南関東地域に現在露出する上部鮮新統から下 部更新統の地層の多くが,200 m以深に堆積した深海堆 積物からなることがあげられる(Ito and Katsura, 1992; 宇都宮・間嶋, 2012など).中津層群と上総層群は新規堆 積物に広く覆われ,連続して露出しないことから別々の 層群として扱われているが,堆積当時南関東に広がって いた広大な堆積盆の一部を構成し,地下で連続すること が知られ(鈴木, 2002など),連続して露出していた場合 には同一の層群として扱われるべき地層である.この時 代の浅海外洋性の堆積層は新規堆積物に広く覆われ,現 在の地表での露出は限定的である可能性が高く,浅海の

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貝類が発見されにくい原因のひとつになっていると考え られる. 北関東地域の上部鮮新統久米層(茨城県)から掛川動 物群が発見されている(高橋, 1986; Noda et al., 1993; 野 田ほか, 2004)ことを考えると,南関東地域には後期鮮 新世から前期更新世にかけて普遍的に掛川動物群構成種 が生息していた可能性が高く,少なくともタマガイ類で は,掛川動物群を特徴づける絶滅種3種全てが南関東地 方の上部新生界から産出することが明らかとなった.そ の意味で,今泉部層の深海性チャネル充填堆積物は多く の浅海性貝類を含み,当時の南関東地域に生息していた 浅海貝類相を知る上で極めて重要な地層であるといえる.

謝辞

近藤康生氏(高知大学),中島 礼氏(産業技術総合研 究所),中村栄子氏(横浜国立大学),田口公則氏(神奈 川県立生命の星・地球博物館),西田 梢氏(茨城工業高 等専門学校),佐藤 圭氏(京都大学)には,様々なご助 言やご協力をいただいた.松原尚志氏(北海道教育大学) には文献の便宜をはかっていただいた.横浜国立大学大 学院の長浜千展氏,瀬戸大暉氏,諸隈暁俊氏,古澤明輝 氏(現島根大学)および他の院生諸氏には,現地調査, 試料整理,機器操作などで種々のご助言とご協力をいた だいた.茨城大学の岡田 誠氏には古地磁気試料の測定 にご便宜をいただいた.2名の査読者からは貴重なご助 言をいただいた.国立科学博物館の加瀬友喜氏には,筑 波研究施設に標本登録をしていただいた.研究経費の一 部は,横浜国立大学統合的海洋教育・研究センターから ご支援を頂いた.以上の方々および研究教育機関に厚く 御礼申し上げます.

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Fig. 1. Index map (A), site locality (B), and sampling site (C). Geological columns for traverses 1‒3 are shown in Fig
Fig. 2. Outcrops at the fossil locality (A, B, C, E), and geological columns of traverses 1‒3 (D)
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