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日本調理科学会誌 Vol. 46 No. 2(2013) 同地域で栽培された 2004 年度産 10) と同じ含量であった アントシアニジン含量は飯の色調に影響を与えると考えられるので,2004 年度産の数値 10) を使用し, 搗精後のアントシアニジンの残存率を計算すると, 搗精歩留まり 95%

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* 神戸学院大学

(Kobe Gakuin Univrsity) ** 別府大学短期大学部

(Beppu University Junior Callege) § 連絡先 神戸学院大学栄養学部

〒 651-2180 神戸市西区伊川谷町有瀬 518

TEL 078(974)1551(内線 3247)  FAX 078(974)5689

紫黒米混合飯の色調と物性に与える有機酸の影響

Effect of Organic Acids on the Color and Texture of

Cooked White Rice mixed with Purple-black Rice.

岸 本 律 子*

§

長谷川悦子* 中嶋加代子** 森   光 寿* 地 上 博 子*

Ritsuko Kishimoto Etsuko Hasegawa Kayoko Nakashima Terutoshi Mori Hiroko Chiue

The effects of organic acids on the color and texture of cooked white rice mixed with purple-black rice (mixed rice) were examined by using Hinohikari white rice (H-rice) and Murasakinomai purple-black rice (M-rice) pol-ished to 90% and 95%, and unpolpol-ished. A 10% (w/w) amount of M-rice was mixed with H-rice and added to dis-tilled water or to a 0.2 M organic acid (acetic, succinic , lactic, malic , or citric acid) in the cooking solution. The L* value was lower in all cooked rice samples with an added organic acid than with distilled water. The a* values of all the mixed rice samples progressively increased with decreasing pH value of the cooking solution, while also progres-sively increasing with decreasing degree of M-rice polishing in the cooking solution of the same organic acids. The breaking stress of grains in the cooked H-rice and cooked M-rice samples was markedly decreased by adding any organic acid, while the hardness was decreased in all cooked rice samples by adding malic acid or citric acid. The cohesiveness and adhesiveness were markedly increased in all cooked rice samples by adding an organic acid . These results indicate that the color and texture of mixed rice were improved by adding an organic acid to the cooking solution.

キーワード:紫黒米 purple-black rice;米飯 cooked rice;むらさきの舞 Murasakinomai;色調 color;物性 

texture;有機酸 organic acid 緒  言  近年,新形質米1)として色素米である紫黒米の品種が多 数育成され,料理の素材や清酒,酢,ワインなどの食品加 工などへの利用が種々試みられている2-4)。紫黒米玄米の種 皮および糠層には色素アントシアニン5)(AN, 主要成分は cyanidin 3-glucoside)が多量に存在している。AN は食用 色素として利用されるほか,抗酸化能6,7)および視力改善作 用などの生理的機能を有する8,9)ので,日本人の主食である 飯に利用すれば, 健康維持増進と生活習慣病の予防にも有 効と考えられる。一般的に紫黒米を炊飯する場合, 白米に 混ぜて炊飯する。紫黒米混合飯(混合飯)の色調は暗い赤 みがかった紫色を呈する10)。紫黒米の食品機能性は AN を 含む種皮および糠層を利用することで発揮されると考えら れるが, 玄米または搗精歩留まりの高いものは, 炊飯に用 いると硬くて食べにくい。大石ら11,12)は炊飯時に食酢を加 えると軟らかい米飯が得られること,江間ら13,14)は, 柑橘 果汁添加は粘りが強くやわらかい飯となり,古米の食味を 改善すると報告している。食酢や柑橘果汁を添加すると, 酢酸やクエン酸などの有機酸が含まれているため, 炊飯液 の pH は低下する。一般的に AN の色調は, pH と関係があ り,強酸性で美しい赤紫色を呈し比較的安定であるが, 弱 酸性および中性領域では不安定で速やかに分解し退色する。 紫黒飯の色調は AN の含量,すなわち 紫黒米の搗精度, 配 合割合および炊飯条件(浸漬時間,洗浄方法および炊飯溶 液)により影響を受けると推測され,これらの因子は混合 飯の物性にも影響を及ぼすと考えられる。本研究は, 紫黒 米に含まれる AN を有効に利用し,美しい色調および食べ やすい硬さを呈する混合飯の調理法を確立するために,炊 飯溶液に各種有機酸を添加し,米飯の色調および物性に及 ぼす有機酸の影響を検討した。 実験方法 1. 試料  炊飯には,紫黒米として農林水産技術総合センターで育 成(1999 年に品種登録)されたウルチ種むらさきの舞(兵 庫県加西市産,2005 年 9 月)および白米として同時期, 同 地域で栽培されたウルチ種ヒノヒカリを用いた。両品種の 玄米を収穫直後に生産者から購入後,1 kg に小分けし,ビ ニール袋に密封して測定に供するまで冷蔵庫(7℃~10℃) に保管した。むらさきの舞は搗精歩留まり 90%,同 95%お よび玄米を,ヒノヒカリは搗精歩留まり 90%のものを用い た。玄米の搗精には家庭用精米器(象印 BR-BD35 )を用 いた。むらさきの舞玄米にはアントシアニジン(デルフィ ニジンとして)が 0.24 g/100 g 含まれ(日本食品分析セン ターに依頼, 試験成績書発酵番号: 第 20602062-001 号),

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同地域で栽培された 2004 年度産10)と同じ含量であった。 アントシアニジン含量は飯の色調に影響を与えると考えら れるので, 2004 年度産の数値10)を使用し,搗精後のアント シアニジンの残存率を計算すると,搗精歩留まり 95%は約 80%,同 90%は約 61%,であり,搗精歩留まりが高いもの ほどアントシアニジンの含量は多かった。 2. 混合飯の調製  Table 1 に示す混合割合で混合飯を調製した。飯 A はむ らさきの舞搗精歩留まり 90%を,飯 B は同 95%を, 飯 C は玄米をヒノヒカリに混合し,対照は白飯(ヒノヒカリの み)とした。ヒノヒカリとむらさきの舞の混合重量比は, 一般的に使用されている 9:1 とし,加水量(炊飯溶液)は 米の 1.5 倍量(225 g),全重量を 375 g として炊飯した。 ガラス製のボールにヒノヒカリと玄米以外のむらさきの舞 を入れ, 蒸留水を加えてガラス棒で 20 回撹拌した後蒸留水 を捨て, この操作を 5 回繰り返して洗浄した。むらさきの 舞玄米は蒸留水に 10℃で 24 時間浸漬後,浸漬液を濾過し て捨て, むらさきの舞玄米をヒノヒカリと混ぜ,上記の方 法で洗米した10,15)。炊飯溶液については, 0.2 M 酢酸添加 米飯の硬さと粘りが最も低下としたとする香西ら16)の報告 を参考に,すべての有機酸で最終濃度 0.2 M になるよう調 整した。添加する有機酸は, 酸度が異なる代表的なカルボ ン酸を選び,酢酸(カルボキシル基の数:1 個),乳酸 (同:1 個),コハク酸(同:2 個),リンゴ酸(同:2 個) およびクエン酸(同:3 個)を用いた。対照は蒸留水とし た。炊飯はタイガー炊飯器(JAT-A550)を用いた。炊飯 溶液を添加し, 30 分間放置後,炊飯を開始した。炊飯時間 を記録し,スイッチを入れてから 60 分後に蓋を開け,飯の 炊き上がり重量を計った後,米飯全体を混ぜて測定に用い た。 3. 炊飯溶液の pH および飯の水分含量の測定  炊飯条件の 1/10 の量, すなわち, むらさきの舞 1.5 g, ヒノヒカリ 13.5 g および炊飯液 22.5 g をビーカーにとり, 30 分放置後,炊飯液の pH を pH メーター(堀場製作所 M-8s)を用いて測定し,炊飯直前の炊飯溶液の pH とした。 飯の水分含量は赤外線水分計(ケット FD240)を用いて 3 回測定し, 平均値を算出した。 4. 飯の色差の測定  白飯および飯 A ~ C の色調の測定はヒノヒカリ飯粒のみ を選別し,約 10 g をラップに包み,測色色差計(日本電色 工業 ZE − 2000)で L*値(明度), a値および b値(色相 および彩度)を測定することにより評価した。L*値の範囲 は 0(明るい)~100(暗い), a* 値および b値の範囲は −60~+60 である。 5. 飯の物性の測定  白飯および飯 A ~ C の物性特性はクリープメーター(山 電 RE2-3305)を用いて,試料台の温度を 60℃に保ち(山 電 ETC-3302B),各飯粒の破断応力の測定および飯のテク スチャー解析を行った。 1) 破断応力の測定  飯 A ~ C にはヒノヒカリとむらさきの舞が混合している ため, 1 粒法で,ヒノヒカリおよびむらさきの舞それぞれ の飯粒の破断応力を測定した。各飯粒をくさび型プラン ジャー No. 49,ロードセル 2 kgf,歪率 100%,試料台速度 1 mm/sec の条件で測定した。飯粒の厚さをサンプル厚さ計 (山電 HC2 − 3305)であらかじめ測定し,圧縮速度 1 mm/ sec で測定した。1 回の炊飯実験につき飯粒 10 粒を測定し 平均値を求めた。 2) テクスチャーの測定  飯約 10 g を,ステンレスシャーレ(直怪 40 mm, 高さ 15 mm)に入れ 200 g の加重を加え,集合体(おにぎり型) を作成した。この集合体を直径 20 mm の円柱型アクリル 製プランジャー No. 56 を用い,測定歪率 50%,戻り距離 5 mm,測定速度 1 mm/sec の条件で測定した。1 回の炊飯実 験につき集合体 8 個を測定し平均値を求めた。 6. 統計処理  測定結果は統計ソフト StateView J-4.5 を用いて処理し た。試料間の有意差検定は一元配置の分散分析と, Duncan の新多重比較法17)で行い, p<0.05 を有意差ありとした。 実験結果および考察 1. 炊飯液の pH  炊飯溶液の pH を Table 2 に示す。炊飯溶液の pH は, 値 の高い順に並べると蒸留水(pH 6.74~6.77), 酢酸(pH 3.44~3.59),コハク酸(pH 2.98~3.08),乳酸(pH 2.72~

Table 1. Compositon of cooked rice and yield rate of H- and M-rice.

Cooked rice H-rice M-rice Liquid

(g) Yield rate (%) (g) Yield rate (%) (g)

W-R 150 90 0 - 225

R-A 135 90 15 90 225

R-B 135 90 15 95 225

R-C 135 90  15* 100 (unpolished) 225

* soaked in distilled water for 24 hour H-rice: Hinohikari, M-rice: Murasakinomai

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2.81),リンゴ酸(pH 2.46~2.52),クエン酸(pH 2.21~ 2.41)となった。カルボキシル基の数が 2 個のコハク酸よ りも酸度が低いと考えられる 1 個の乳酸添加溶液のほうが pH は低く, カルボキシル基の数と pH は必ずしも相関しな かった。むらさきの舞玄米の蒸留水 24 時間浸漬後の溶液の pH 5.78(表の下に示す)は,蒸留水の炊飯溶液よりも低 かった。 2. 飯の水分含量に及ぼす有機酸の影響  飯の炊飯時間および炊き上がり重量を Table 3 に示す。 同じ炊飯溶液では炊飯時間および炊き上がり重量は同じ値 を示した。蒸留水が最も速く 35 分,リンゴ酸およびクエン 酸が最も遅く 41 分であった。炊き上がり重量は, 蒸留水, 酢酸およびコハク酸は 335 g(元の重量の 2.23 倍), 乳酸, リンゴ酸およびクエン酸は 325 g(同 2.17 倍)であった。 白飯および飯 A ~ C の水分含量を Table 4 に示す。全試料 において,水分含量は 56.5%~61.3%の範囲にあった。同 じ炊飯溶液では白飯, 飯 A ~ C 間に有意差は認められな かった。酢酸を添加した飯 A ~ C の水分含量は蒸留水とほ ぼ等しく約 60.1~61.3%であり,酢酸以外の有機酸は,蒸 留水よりも明らかに低下し,最も低い値を示したのは, 飯 A のクエン酸(56.5%),次いで飯 A のリンゴ酸と飯 C の クエン酸(57.0%)であった。炊き上がり時間が長く,炊 き上がり重量が軽い飯ほど,水分含量が低い傾向がみられ た。 3. 飯の色調に及ぼす有機酸の影響  白飯および飯 A ~ C の色差の測定結果を Fig. 1 に示す。 白飯の L*値は 82.1~84.6 の範囲にあり,有機酸添加によ りわずかに低下する傾向が認められた。飯 A ~ C の L* 値 は, 41.8~65.6 の範囲にあり,白飯よりも明らかに低値を 示し, 有機酸別に比較すると,むらさきの舞の搗精歩留ま りが高いものほど L* 値は低下した。飯 A ~ C の L* 値は, すべての有機酸添加で低下し,特にリンゴ酸およびクエン 酸添加で顕著に低下した。有機酸を添加したすべての試料 において, a* 値は,白飯では負の値(−3.10~−1.97)を

Table 2. The pH value of solution for cooking rice.

Cooked rice Cooking solution

Distilled water Acetic acid Succinic acid Lactic acid Malic acid Citric acid

W-R 6.77 3.46 3.03 2.72 2.46 2.21

R-A 6.74 3.44 3.08 2.80 2.50 2.41

R-B 6.74 3.58 2.98 2.81 2.52 2.33

R-C 6.75 3.59 3.03 2.80 2.46 2.25

Density of organic acid in cooking solution: 0.2 M W-R: white rice, R-A: rice-A, R-B: rice-B, R-C: rice-C

The pH value of soaking solution of unpolished Murasakinomai (for 24 h): pH 5.78

Table 3. Time of cooking rice and weight of cooked rice.

Cooked rice

Cooking solution

Distilled water Acetic acid Succinic acid Lactic acid Malic acid Citric acid Time (min) Weight (g) Time (min) Weight (g) Time (min) Weight (g) Time (min) Weight (g) Time (min) Weight (g) Time (min) Weight (g)

W-R 35 335 39 335 38 335 39 325 41 325 41 325

R-A 35 335 39 335 38 335 39 325 41 325 41 325

R-B 35 335 39 335 38 335 39 325 41 325 41 325

R-C 35 335 39 335 38 335 39 325 41 325 41 325

Density of organic acid in cooking solution : 0.2 M W-R: white rice, R-A: rice-A, R-B: rice-B, R-C: rice-C The weight of before cooking rice: 375 g

Table 4. Moisture (%) of cooked rice.

Cooked rice Cooking solution

Distilled water Acetic acid Succinic acid Lactic acid Malic acid Citric acid

W-R 61.3±0.8a 61.3±0.5a 58.6±0.3b 59.2±0.7b 58.7±0.3b 57.9±0.5b

R-A 60.3±0.2a 60.3±0.3a  59.5±0.3ab   58.0±0.0abc  57.0±1.8bc 56.5±1.1c

R-B 60.1±0.9a 60.3±0.5a  58.6±0.4ab  58.0±0.4bc  58.2±0.6bc 58.0±0.8b

R-C 60.3±0.1a 60.1±0.5a 59.2±0.1b  59.5±0.5ab  59.4±0.0ab 57.0±0.4c

Values are expressed as means ±S.E. (n=3) Density of organic acid in cooking solution : 0.2 M W-R: white rice, R-A: rice-A, R-B: rice-B, R-C: rice-C

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示し,飯 A ~ C では,正の値(9.28~34.36)を示し,赤 色が強くなることがわかった。飯 A ~ C では, a*値は高い ものから順にクエン酸>リンゴ酸>乳酸>コハク酸> 酢酸>蒸留水となり,炊飯溶液の pH が低いものほど高値 を示し,赤色が強くなった。また,同じ炊飯溶液で飯 A ~ C の a* 値を比較すると,すべての炊飯溶液で 飯 A<飯 B <飯 C となり,乳酸,コハク酸およびクエン酸では飯 A ~ C 間に有意差が認められた。むらさきの舞の搗精度歩留ま りが高いほど,すなわち AN 含量が多いほど, a*値は高く なり,赤色が強く発現することがわかった。b* 値について, 飯 A ~ C は,−0.14~4.56 であり,白飯の 6.66~8.42 よ り低く,白飯にむらさきの舞を混合することにより低下し, 黄色味が弱くなることがわかった。b* 値は,白飯は酢酸以 外で,飯 A および 飯 B はすべての有機酸で,飯 C はリン ゴ酸およびクエン酸以外の試料で蒸留水よりも有意に低下 した。AN は溶液の pH が強酸性→弱酸・中性→塩基性と 変化すると,分子構造を変化させ,赤色→紫色(または無 色)→青色と連続的にその色を変え, pH が低いほど安定で あることが知られている。混合飯の色調は, 主として,炊 飯過程で溶液中に溶出したむらさきの舞に含まれる色素AN が,溶液の pH および AN の濃度(搗精歩留まりの差)に よって変色し,飯粒の表面に付着して発現すると考えられ る。AN は Sn, Al, Fe, Cu イオンなどの影響を受け変色お よび退色の原因となる18)。米粒に含まれる Mg, Fe, Zn, Cu などのミネラルは第 1 外層部に偏在しており10), 大石ら は 0.2M 酢酸溶液に浸漬すると,金属イオンの溶出量は水 浸漬よりも多く,温度に依存して増加することを報告して いる11)。本実験においても,同様の現象が起こっているも のと考えられ,炊飯溶液に溶出した AN が金属イオンに影 響を受け紫黒飯の色調に影響を与えることも推測される。 An は Mg2+, Fe3+,Al3+などの金属イオンと錯塩を形成し 安定することが知られているが,本実験の混合飯の色調の 変化との関連は不明である。 4. 飯の物性特性に及ぼす有機酸の影響 1)飯粒の破断応力  白飯および飯 A ~ C のヒノヒカリおよびむらさきの舞の 飯粒の破断応力の測定結果を Fig. 2 に示す。 白飯のヒノヒ カリ飯粒の破断応力は,有機酸添加で蒸留水よりも低下し, 炊飯溶液の pH が低い有機酸ほど大きく低下した。飯 A ~ C のヒノヒカリ飯粒の破断応力は,白飯と同様,酢酸以外 の有機酸添加において大きく低下し,炊飯溶液の pH が低 い有機酸ほど大きく低下する傾向が認められた。白飯およ び飯 A ~ C において,水分含量が低いコハク酸,乳酸,リ ンゴ酸およびクエン酸添加では破断応力は大きく低下した。 同じ炊飯溶液でヒノヒカリ飯粒の破断応力を比較すると, すべての炊飯溶液において白飯および飯 A ~ C の間に差は なく, むらさきの舞の混合および搗精歩留まりの差による 影響はなかった。飯 A ~ C のむらさきの舞飯粒の破断応力 は, ヒノヒカリ飯粒と同様すべての有機酸添加において蒸 留水より低値を示し,酢酸以外の有機酸間で比較すると, 飯 A ではリンゴ酸は乳酸よりも有意に低く,飯 B および飯 C においては有機酸間に有意差は認められなかった。 同じ 炊飯溶液でむらさきの舞飯粒の破断応力を比較すると,飯

Fig. 1. Effect of organic acids on L*-, a*- and b*-value of cooked

rice.

Cooking solution, D.W; distilled water, A; acetic acid, S; succinic acid, L; lactic acid, M; Malic acid, C; Citric acid, W-R; white rice, R-A; rice-A, R-B; rice-B, R-C; rice-C

Values are mean±S.E. (n=3). Different superscripts in the same cooked rice (a, b, c, and d) and in the same cooking solution (w, x, y and z) show significant difference (p<0.05) by Duncan’s new multi-ple range tests.

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C は飯 A および飯 B よりも明らかに高値を示した。飯 C の むらさきの舞は玄米であり,有機酸添加により飯粒の破断 応力は蒸留水よりも低下し,硬い飯を軟らかくし,物性を 改善する効果があると考えられる。 2)飯のテクスチャー  白飯および飯 A ~ C のテクスチャー解析(かたさ応力, 凝集性および付着性)の結果を Fig. 3 に示す。 ⅰ) かたさ応力  かたさ応力は,蒸留水との比較において, 白飯は, 酢酸, コハク酸および乳酸添加では有意差はなく,リンゴ酸およ びクエン酸添加で大きく低下した。飯 A および飯 C のかた さ応力は酢酸およびコハク酸添加で上昇する傾向があり, リンゴ酸およびクエン酸添加で大きく低下した。すべての 飯において,クエン酸のかたさ応力は蒸留水の約 1/2 まで 低下した。ヒノヒカリおよびむらさきの舞の飯粒の破断応 力は,コハク酸および乳酸添加により,顕著に低下したの に対し,飯(集合体)のかたさ応力は蒸留水と差はなく, 逆に上昇し,飯粒の破断応力と米飯のかたさ応力とはかな

Fig. 2. Effect of organic acids on the breaking stress of cooked rice.

H-rice; Hinohikari, M-rice; Murasakinomai, Cooking solution: D.W; distilled water, A; acetic acid, S; succinic acid, L; lactic acid, M; Malic acid, C; Citric acid, W-R; white rice, R-A; rice-A, R-B; rice-B, R-C; rice-C

Values are mean±S.E. (n=10). Different superscripts in the same cooked rice (a, b, c, and d) and in the same cooking solution (w, x, y and z) show significant difference (p<0.05) by Duncan’s new multi-ple range tests.

Fig. 3. Effect of organic acids on the hardness stress, the

cohesive-ness and the adhesivecohesive-ness of cooked rice.

Cooking solution: D.W; distilled water, A; acetic acid, S; succinic acid, L; lactic acid, M; Malic acid, C; Citric acid, W-R; white rice, R-A; rice-A, R-B; rice-B, R-C; rice-C

Values are mean±S.E. (n=10). Different superscripts in the same cooked rice (a, b, c, and d) and in the same cooking solution (w, x, y and z) show significant difference (p<0.05) by Duncan’s new multi-ple range tests.

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らずしも相関しなかった。同じ炊飯溶液において,飯のか たさ応力を比較すると,リンゴ酸添加において飯 A ~ C は 白飯よりも高い値を示したが,その他の有機酸添加では大 きな差はなかった。 ⅱ) 凝集性  白飯の凝集性は,すべての有機酸添加飯は蒸留水よりも 高くなり,炊飯溶液の pH が低くなるに従い上昇する傾向 がみられた。飯 A ~ C の凝集性は,すべての有機酸添加で 蒸留水よりも高くなり,飯 A は,乳酸,リンゴ酸およびク エン酸添加で,飯 B はコハク酸以外の有機酸で,飯 C はク エン酸以外の有機酸添加で有意に上昇した。同じ炊飯溶液 において飯の凝集性を比較すると,蒸留水,酢酸およびコ ハク酸添加は白飯および飯 A ~ C 間に差はなく,リンゴ酸 添加により飯 A ~ C は白飯よりも高い値を示し,クエン酸 添加では,飯 C は他の飯よりも低い値を示した。 ⅲ) 付着性  白飯および飯 A ~ C の付着性は,すべての有機酸添加に おいて,蒸留水よりも高い値を示し,特にリンゴ酸は顕著 に高い値を示した。付着性は pH が最も低いクエン酸を除 いた有機酸で比較すると,炊飯溶液の pH が低くなるに従 い高くなった。クエン酸添加では,白飯よりも飯 A ~ C の 付着性は低くなり,飯 A および飯 C は有意に低下した。同 じ炊飯溶液において飯の付着性を比較すると,リンゴ酸は, 飯 A ~ C は白飯よりも高い値を示した。  以上の結果より,酸度の異なる 5 種の有機酸を添加して 炊飯した混合飯の色調は,炊飯溶液の pH が低くなるに従 い, またむらさきの舞の搗精歩留まりが高くなるに従い赤 色が強く発現し,鮮やかになり美しい色調へと改善された。 飯粒および混合飯の物性については,0.2 M 有機酸添加は, 飯粒の破断応力を低下させ,飯の凝集性と付着性が高くな り, 硬いむらさきの舞玄米の破断応力を低下させ,物性を 改善する効果が認められた。  Fig. 4 に示す飯の写真からわかるようにリンゴ酸および クエン酸を添加した飯粒の表面には,米粒から溶出したと 考えられるべとべとした水っぽい固形物が多量に付着し, クエン酸ではこれらの固形物の一部はしばらく放置すると 乾燥し透明な膜を形成した。大石ら11,12)は, 0.2M 酢酸を 添加すると,炊飯中に米からデンプンが多く溶出し,飯表 層部を覆い米飯の付着性の増加に寄与することを報告して いる。飯 A ~ C の付着性は,大石ら11,12)と同様, 0.2M 酢 酸添加により,蒸留水よりも上昇した。本実験に用いた有 機酸の濃度は 0.2 M であり,酢酸以外の有機酸の pH は酢 酸よりも低かった。酢酸以外の有機酸添加においてもデン プンや固形物の溶出量が増加し,飯粒の表面に付着するこ とが推測され,乳酸,リンゴ酸およびクエン酸の付着性を 上昇させたと考えられる。混合飯の付着性は, pH が最も低 いクエン酸はリンゴ酸の 1/2~1/3 の値となり,付着性の上 昇が抑制されたが,この原因は不明である。0.2 M 有機酸 添加は,飯の凝集性と付着性が上昇し,逆に,飯の食味に 悪影響を及ぼすことも考えられる。  本実験は,むらさきの舞に含まれる AN を有効に利用す るために,混合飯の炊飯溶液に 0.2 M 有機酸を用いたが, 色調および物性の両面から, 0.2 M よりも低い濃度の有機 酸を用いて検討する必要があると考えられる。 要  約  美しい色調を呈し食べやすい物性を有する混合飯の調理 法を検討するために,白米ヒノヒカリと紫黒米むらさきの 舞を混合し「混合飯:飯 A(搗精歩留まり 90%),飯 B(同 95%), 飯 C(玄米)」,混合飯の色調と物性に及ぼす有機酸 の影響について検討した。 1.  炊飯溶液の pH は,蒸留水は 6.75, 0.2 M 有機酸添加 溶液は 3.52~2.30 であり, pH の高い順に酢酸>コハク 酸>乳酸>リンゴ酸>クエン酸となった。 2.  白飯および混合飯の水分含量は,酢酸以外の有機酸添 加で減少した。 3.  混合飯の色調は有機酸添加により赤色が強まった。L* 値は白飯よりも混合飯のほうが低かった。混合飯の a* 値 は白飯よりも高く,白飯の a* 値は有機酸を添加しても変 化しなかったが,混合飯では炊飯溶液の pH が低くなる

Fig. 4. Cooked rice (R-B) mixed with purple-black rice

‘Murasakinomai’ (polished to 95%) by adding 0.2M organic acid to the cooking solution

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ほど,またむらさきの舞の搗精歩留まりの高い飯ほど大 きく上昇した。全炊飯溶液において,b*値は白飯よりも 飯 A ~ C のほうが低値を示した。 4.  ヒノヒカリ飯粒の破断応力は, 白飯では炊飯溶液の pH が低くなるに従い低下し,混合飯では,酢酸以外の有機 酸で大きく低下した。むらさきの舞飯粒の破断応力は有 機酸添加により低下し,すべての有機酸添加において, むらさきの舞の搗精歩留まりの高い飯ほど高い値を示し た。白飯および飯 A ~ C において,水分含量が低い飯の 破断応力は大きく低下した。 5.  かたさ応力は,白飯および混合飯においてリンゴ酸お よびクエン酸で大きく低下した。白飯および混合飯の凝 集性および付着性は有機酸添加により顕著に上昇した。 文 献  1) 石谷孝佑(1993), 日本の米の特性と新形質米の開発, 調理 科学, 26, 365-372  2) 中嶋加代子(2003),色素米の調理, 日調科誌,36,340-343  3) 中嶋加代子(2000),古代米の食事典~紫黒米(黒米)の ポリフェノール活用料理~,近代文芸社, 東京  4) 大坪研一(2002),新形質米の特性とその利用例,日調科 誌,35,393-398  5) 深井洋一,金谷清身,松澤恒友,小田切一広,石谷孝佑 (1997),新形質米の理化学的性質と新形態食品への利用の検 討 , 日調科誌,30,44-49

 6) Ichikawa, H., Ichiyanagi, T., Xu, B., Yoshii, Y., Nakajima, M. and Konishi, T.(2001), Antioxidant Activity of Antho-cyanin Extract from Purple Black Rice, J. Med. Food, 4, 211-218  7) 猪谷富雄, 建本秀樹,岡本実剛,藤井一範,武藤徳男 (2002),有色米の抗酸化活性とポリフェノール成分の品種間 差異,日食工誌,49,540-543  8) 津田孝範,須田郁夫,津志田藤二郎編著(2009),「アント シアニンの科学―生理機能・製品開発の新展開―」 建帛社, 東京,pp. 112-113,pp. 48-49

 9) Hu, C., Zawistowski, J., Ling, W. and Kittes, DD.  (2003), Black rice (Oryza Sativa L. indica) pigmented fraction sup-pressed both reactive species and nitricoxide in chemical and biological model systems, J. Agric. Food Chem., 51, 5271-5277 10) 岸本律子,長谷川悦子,合田 清,尼子克己,中嶋加代子 (2007),紫黒米“むらさきの舞の学校給食への利用,日調科 誌,40,90-98 11) 大石恭子(2011),米飯の物性に及ぼす酢酸添加の影響, 日調科誌,44, 359-366 12) 大石恭子,関本美貴,香西みどり,畑江敬子,島田淳子 (2005),酢酸添加による飯粒の全体および表層の物性変化に ついて,日調科誌,38, 319-323 13) 江間章子,貝沼やす子(1991),柑橘果汁の炊飯への利用, 調理科学,24,89-95 14) 江間章子,貝沼やす子(1990),柑橘果汁の炊飯への利用 (第 2 報)―古米への効果―,調理科学,23,198-205 15) 中嶋加代子,岸本律子(2006),モチ種紫黒米玄米の吸水 ならびに利用特性,日調科誌,39,227-232 16) 香西みどり,谷畠早苗,大石恭子,島田淳子,畑江敬子  (2001),米飯の嗜好的および物理化学的特性に及ぼす酢酸添 加の影響,日家政誌,52,1091-1097

17) Duncan, DB.(1957), Multiple Range Tests for Correlated and Heteroscedastic Means. Biometrics 13: 164-176 18) 大庭理一郎,五十嵐喜治, 津久井亜紀夫編著(2000),「ア ントシアニン―食品の色と健康―」,建帛社,東京,pp48-49 (平成 24 年 5 月 28 日受付,平成 25 年 1 月 23 日受理) 和文抄録 紫黒米混合飯(混合飯)の色調と物性に及ぼす有機酸の影響について検討した。白米ヒノヒカリ(H-rice)と紫黒米むら さきの舞(M-rice, 搗精歩留まり 90%, 同 95%, 玄米)を重量比 9:1 の割合で混合し, 炊飯溶液に 0.2M 有機酸(酢酸, 乳酸, コハク酸, リンゴ酸またはクエン酸)を添加して混合飯を調製した。混合飯の L* 値は低下し, むらさきの舞の搗精 歩留まりが高いものほど低下した。a* 値は添加した有機酸の pH が低くなるに従い, 同じ有機酸では M-rice の搗精歩留 まりが高くなるに従い上昇した。H-rice および M-rice の飯粒の破断応力は, すべての有機酸において, 蒸留水よりも顕著 に低下した。白飯(H-rice のみ)および混合飯のかたさ応力はリンゴ酸およびクエン酸添加で, 蒸留水よりも顕著に低下 し, 凝集性および付着性はすべての有機酸で上昇した。以上の結果から, 0.2M 有機酸添加は混合飯の色調および物性を改 善する効果があると考えられる。

Table 1. Compositon  of cooked rice and yield rate of H- and  M-rice.
Table 3. Time of cooking rice and  weight of cooked rice.
Fig. 3. Effect of organic acids on the hardness stress, the cohesive- cohesive-ness and the adhesivecohesive-ness of cooked rice

参照

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