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Microsoft Word _水和反応速度Ver.03_最終.doc

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Academic year: 2021

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(1)

Hydration process of many kinds of cement paste is investigated by Powder X-ray diffraction (XRD)/Rietveld analysis. The parameters of the present study are type of cement (ordinary Portland cement, low heat Portland cement, and Eco-cement), water to cement ratio (0.50, 0.35), and curing temperature (283, 293, 313K). In this contribution, reaction of alite and belite is focused and evaluated. Experimental results show that the reaction of alite is affected by the temperature, but the effect of W/C is rather small. Regarding belite, its reaction is strongly affected by the reaction of alite and temperature. The hypothesis, in which rate of reaction of belite is explained by the ion concentration of CaO and SiO2 in the capillary water and solution equilibrium curve of alite, belite, C-S-H and Ca(OH)2, is proposed. Based on these experimental facts, simple hydration model is proposed.

Keywords : Portland cement, alite, belite, degree of hydration, hydration model ポルトランドセメント,エーライト,ビーライト,水和反応率,水和反応モデル 1. はじめに 近年,コンクリートを用いた構造物の性能およびその時間依存性 を予測・評価するにあたり,セメントの水和反応からコンクリート, あるいはコンクリート部材や構造物の性能を予測する試みが行わ れている1)。この時間依存性の問題において,外部環境とコンクリ ート中で生じている変化の相互依存性の中核となるのが,いわゆる 水和反応モデルである。 水和反応モデルは,従来より主として速度論的な取り扱いがなさ れてきた2),3)。その中で,コンクリートの耐久性を念頭においた相 組成の評価や4),断熱温度上昇曲線のように,速度論を問題とする 場合であっても鉱物組成の違いによる性状の変化を対象とする場 合には,セメント全体の速度論ではなく,セメントの各鉱物の速度 論に着目した研究が行われている5) 著者らも,こうした目的から,友澤の提案した未反応核モデル 3)にもとづく水和反応モデルCCBM を開発し,各鉱物の反応速度を 取り扱う研究を行ってきた6),7) 本研究では,近年,粉末 X 線回折を用いたリートベルト解析8) によって,セメントの各鉱物の反応に関する研究が盛んに行われる ようになり9),10),11),12),13),各鉱物の水和反応速度に対して多くの知見 が得られるようになってきていることを背景に,異なるセメント種 類,水セメント比,養生温度を因子としたセメントペーストについ てリートベルト解析を用いて分析し,その結果について,特に反応 速度の観点から考察を行った。また,これらの特徴を評価し,工学 的に利用しやすい水和反応速度モデルの提案についても併せて行 うこととした。本報ではセメント中の鉱物の中でも,特にエーライ ト(C3S)とビーライト(C2S)の水和反応速度を中心に取り扱う。こう した検討は,建築材料学の観点において,マスコンクリートの発熱 特性の評価,脱型によって影響をうけるコンクリート部材の品質評 価や建築物の長期性能評価・予測に貢献する。 2. 実験概要 2.1 使用材料及び調合 本実験の対象となる試験体は,既報で報じたものの一部である14) 検討における大きな違いは,粉末X 線回折/リートベルト法(以下, リートベルト解析)と熱重量-示差熱重量分析(以下,TG-DTA)によ って測定したポルトランダイト(Ca(OH)2)量の差異が小さくなる ように,ポルトランダイトに関する計算条件を最適化・再設定した ことと,リートベルト解析より得られたデータの整理手法を改良し

エーライトおよびビーライトの水和反応速度に関する研究

-ポルトランドセメントの水和機構に関する研究 その1-

RATE OF HYDRATION OF ALITE AND BELITE IN PORTLAND CEMENT

-Hydration System of Portland Cement Part 1-

丸山 一平

*1

,松下 哲郎

*2

,野口 貴文

*3

,細川 佳史

*4

,山田 一夫

*5

Ippei MARUYAMA, Tetsuro MATSUSHITA, Takafumi NOGUCHI, Yoshifumi HOSOKAWA, and Kazuo YAMADA

*1 名古屋大学大学院環境学研究科都市環境学専攻 准教授・博士(工学) Assoc. Prof., Dept. of Environmental Engineering and Architecture, Nagoya Univ., Dr. Eng.

*2 株式会社竹中工務店 技術研究所 研究員・博士(工学) Researcher, Takenaka Research & Development Institute, Takenaka Corporation, Dr. Eng.

*3 東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻 准教授・博士(工学) Assoc. Prof. Graduate School of Engineering, Dept. of Architecture, The University of Tokyo, Dr. Eng.

*4 太平洋セメント株式会社 中央研究所 主任研究員・博士(工学) Research Scientist, Central Research & Development Center, Taiheiyo Cement Corporation, Dr. Eng.

*5 太平洋セメント株式会社 中央研究所 リーダー・博士(工学) Manager, Central Research & Development Center, Taiheiyo Cement Corporation, Dr. Eng.

*1 名古屋大学大学院環境学研究科都市環境学専攻 准教授・博士(工学) Assoc. Prof., Dept. of Environmental Engineering and Architecture, Nagoya Univ., Dr. Eng.

*2 株式会社竹中工務店 技術研究所 研究員・博士(工学) Researcher, Takenaka Research & Development Institute, Takenaka Corporation, Dr. Eng.

*3 東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻 准教授・博士(工学) Assoc. Prof. Graduate School of Engineering, Dept. of Architecture, The University of Tokyo, Dr. Eng.

*4 太平洋セメント株式会社 中央研究所 主任研究員・博士(工学) Research Scientist, Central Research & Development Center, Taiheiyo Cement Corporation, Dr. Eng.

(2)

た点である。整理手法は2.2に後述する。 使用したセメントは,JIS R 5210 (2003)に基づく市販の普通ポル トランドセメント(N),低熱ポルトランドセメント(L),都市ゴ ミ焼却灰を主原料としたJIS R 5214 (2003)に基づく普通エコセメン ト(E)である。本実験で用いたセメントの化学組成を表1,リー トベルト解析によるセメントの鉱物組成および物性を表2に示す。 実験因子として,水セメント比を0.50 と 0.35,養生温度を 10, 20,40℃,養生期間を 1,3,7,28,91,190,365 日とした。試験 体名は,セメントタイプ(N/L/E) W/C(50/35)- 養生温度(10/20/40) として表現することとする。 セメントペーストの練混ぜは,JIS R5201 に準拠し,所定の温度 で行った。材料・ミキサは前日より温度管理を行った。W/C=0.50 のセメントペーストでは,分離が懸念されたので練混ぜ直後から, 材齢1 日まで低速度(1r/min)で養生容器を回転させて材料が分離・ 沈降が生じないように配慮した。試験体は,円柱のポリエチレン容 器(φ32.5×50mm)に 80ml 程度を打込み封緘養生を行った。 養生終了後は円柱試験体の中央部分(約 50ml 程度)をダイヤモン ドカッターで5mm 角程度に切断し,アセトンとともにディスクミ ルを用いて微粉砕し,吸引濾過により粉末試料とアセトンを分離後, 窒素を飽和塩化リチウム溶液中を通過させた気体を用いて,乾燥を 行い水和反応分析試料とした。この雰囲気の理論的な相対湿度は 11%RH である。 2.2 リートベルト解析 粉末X 線回折の測定は,X 線源 Cu-K,管電圧50kV,管電流 250mA,走査範囲 2θ=5~65°,ステップ幅:0.02°,スキャンス ピード:2°/min.の条件で行い,リートベルト解析ソフトは TOPAS (BrukerAXS 社製)を使用した。分析試料は 1 サンプルに 1 回の分析 を行った。定量に際しては,C3S(エーライト),C2S(ビーライト), cubic-C3A,orthorhombic-C3A(総量を C3A,アルミネート相),C4AF (フェライト相),MgO(ペリクレース),Free-CaO(フリーライム), CaCO3(C ,方解石),CaSOC 4・2H2O(CSH2,二水石膏),CaSO4・ 1/2H2O(CSH0.5,半水石膏),Ca(OH)2(CH,ポルトランダイト),

C3A・3CaSO4・32H2O(AFt,エトリンガイト),C3A・CaSO4・12H2O (AFm,モノサルフェート),C3A・CaCO3・12H2O(AFm(C),モノ カ ー ボ ネ ー ト 水 和 物 )、C3A・1/2CaC O3・1 /2 Ca (O H )2・12H2O (AFm(0.5C),ヘミカーボネート水和物)の各セメント鉱物・水和 生成物及び内部標準試料として分析試料に混合した -Al2O3 表3 各乾燥状態における水和生成物の組成 水和物 乾燥状態 H/C 組成式 分子量 (g/mol) 密度 (g/cm3) 参考 文献 C-S-H 1000℃ 0 CxSH0 155 - ※1 11%RH,20℃1.18 CxSH2.0 191 2.40 15), 16) Saturated 1.18 CxSH2.0 191 2.40 17) ※2 AFt 1000℃ 0 C AS H6 3 0 ※5 679 - 11%RH,20℃5.33 C AS H 6 3 32 1255 1.77 18) Saturated 5.33 C AS H6 3 32 1255 1.77 AFm 1000℃ 0 C ASH4 0※5 406 - 11%RH,20℃3.00 C ASH 4 12 615 1.99 19) Saturated 3.00 C ASH 4 12 623 1.99 CAH 1000℃ 0 C4AH0 326 - 11%RH,20℃3.25 C4AH13 561 2.04 Saturated 3.25 C4AH13 561 2.04 20) ※3 CFH 1000℃ 0 C4FH0 384 - 11%RH,20℃3.25 C4FH13 618 2.23 Saturated 3.25 C4FH13 618 2.23 18) ※4 AFm(C) 1000℃ 0 C ACH4 0 ※5 326 11%RH,20℃2.75 C ACH 4 11 568 2.21 18) Saturated 2.75 C ACH 4 11 568 2.21 18) AFm(0.5C) 1000℃ 0 C AC H4 0.5 0 ※5 326 11%RH,20℃ 3.0 C AC H 4 0.5 12 564 1.98 18) Saturated 3.0 C AC H4 0.5 12 564 1.98 18) ※1:C-S-H については,x=1.7 のときの値を記載した。※2:一般的にこの相対湿度以 上の結合水は,容易に乾燥し,水和による自己乾燥条件下では水和にも利用されうる水 であるので,飽水状態であっても強く結合している水の量は11%RH と同様のものと扱う こととした。※3:相対湿度 88%以上では C4AH19になるという報告もあるが,容易に脱 水する条件であることから結晶としては安定なC4AH13を考えることとした。※4:一般 的にはF は CAH 中の A と置換する形を取ると推察されるが,今回の解析では便宜上,全 てが置換されるものとした。※5:アルミネート化合物が 1000℃の条件で,この組成を保 持するものではないが便宜上このように記した。 (10mass%混合)を定量対象とした。本実験で使用した N には混 合 材 と し て 石 灰 石 微 粉 末 が 混 合 さ れ て い た た め AFm(C)と AFm(0.5C)21)も定量対象としている。定量に用いた各鉱物の結晶系, 表1 セメントの化学組成 セメント 種類 強熱減量 (%) 化学組成(mass%) 合計

SiO2 Al2O3 Fe2O3 CaO MgO SO3 Na2O K2O Cl

N 2.40 20.23 5.39 3.04 64.64 0.92 1.91 0.30 0.31 0.025 99.17 L 0.87 26.53 2.65 2.95 63.19 0.72 2.18 0.19 0.34 0.002 99.62 E 1.37 17.07 6.98 3.79 61.98 1.92 3.93 0.47 0.02 0.030 97.56 表2 リートベルト解析によるセメントの鉱物組成とセメントの物性 セメント 種類 鉱物組成※1mass%) 物性※2 3 C S C S 2 C A 3 C AF MgO4 CSH2 CSH0.5 CC 合計 密度(g/cm3) 比表面積(cm2/g) N 58.6 17.2 6.97 9.90 0.77 0.43 2.01 3.75 99.63 3.16 3300 L 30.6 54.7 0.83 8.25 0.40 2.06 1.42 0.74 99.00 3.22 3430 E 56.8 10.7 7.66 16.0 1.59 2.80 3.44 0.53 99.52 3.17 4220

※1 C3S:3CaO·SiO2,C2S:2CaO·SiO2,C3A:3CaO·Al2O3,C4AF:4CaO·Al2O3·Fe2O3,CSH2:CaSO4·2H2O,CSH0.5:CaSO4·0.5H2O

(3)

C3S,C2S,cubic-C3A,orthorhombic- C3A,C4AFの結晶構造に関す るパラメータはNist Technical Report22)と同様とし,MgOCC

2

H S

C ,CSH0.5,CH,AFt,AFm,AFm(C), -Al2O3に関しては

ICSD Database23)と同様とした。AFm(0.5C)に関しては、確立された 構造モデルが存在しないため、合成試料から設定した星野らのパラ メータ24)を使用した。非晶質物質量は内部標準物質である -Al 2O3 の定量値から式(1)に従い算出した25)

100 R

R

100 100

A  SS S  S (1) ここで、A :非晶質量(%)、S: -Al2O3の混合率(%)、S :R  -Al2O3 の定量値(%)である。 なお,エーライトとビーライトには多形が存在し,多形を考慮し た定量計算を行うことでより精度が高まる可能性はある。しかし, 本検討では多形を考慮した定量計算結果が妥当であるという確証 が得られるまでに至っておらず,かつ本検討における測定再現性は 十分に得られていると考え、文献24)の手法を踏襲した。 セメントの各鉱物の反応率や相組成を評価するにあたり,表3に 示される組成や結合水量を用い,すべて無水物として評価した上で 水和率を評価した。既報14)ではこれらの無水物への換算に強熱減 量の測定結果を用いたが,本検討では,リートベルト解析による分 析値のみから以下のような繰り返し計算によって相組成および反 応率を算出することとした。 1)セメントの各相を水和前の未水和物量に換算する。このとき, C-S-Hは暫定的なCa/Si比の値を用いる。 2)測定結果から各未水和物相の水和反応率を算出し,結晶相か ら確認できる Al2O3(A)および Fe2O3(F)の量とセメント鉱物 の 反 応 量 か ら 反 応 に 利 用 さ れ た は ず の Al2O3(A)お よ び Fe2O3(F)の量を算出し,非晶質中に存在する各量を算出する。 このときのAおよびFはそれぞれC4AH13,C4FH13の組成の 水和物を形成していると仮定する26) 3)次に非晶質中のCAHおよびCFHで利用されたCaO(C)量 が計算されるので,セメント鉱物の反応量から算出された反 応に利用されたはずのCを算出し,C-S-Hの中で利用され ているCを物質収支から計算し,Ca/Siモル比を算定する。 4)1)~3)を繰り返し計算を行い,収束したら計算を終える。 なお,本検討の範囲ではCa/Si比の違いによる分子量の違い は考慮したが,それによる H/S比の変化は無いものとし, また,密度も変化しないものとした。 2.3 強熱減量 水和反応分析試料を975±25℃の電気炉で1時間熱した際の減量 分を測定し,強熱減量(ig.loss)を測定した。ここで減量されたもの は,主として結合水とNにおいて混合材として用いられていた方 解石中の CO2である。試料の材齢間,水セメント比の違い,ある いはセメント間の比較を目的として,本研究では 1000℃で熱した 後のサンプル質量に対する減量分として評価することとした。これ は,一般的なセメントの評価においては結合水量の定義と同様であ る。 2.4 TG-DTA リートベルト解析に使用した試料を使用し,TG-DTA測定を実施 し,ポルトランダイト(CH)の定量を行った。測定は,昇温速度 20℃/min,N2フロー環境下で行い,CH生成量はTG-DTA曲線にお ける415℃~515℃付近の減量分をCHの脱水による減量と仮定し, DTG曲線から各試料の脱水範囲を特定して算出した。 3. 実験結果 3.1 リートベルト解析の精度評価 リートベルト解析における各鉱物の定量精度や再現性について は文献24)に記載されているが,実験で着目するデータの信頼性を 評価する目的で, TG-DTAの測定によるポルトランダイトの定量 値および強熱減量の測定結果に対してリートベルト解析による定 量値あるいは推定値との相互比較を行った。これは,特にリートベ ルト解析において結晶構造パラメータを固定して評価する場合に は,解析のフィットの精度だけでなく,データの整合性についての 評価が必要であると考えたからであり,誤差の評価として変動係数 を示すべきと考えたからである。 図1に示されるように本研究で用いたリートベルト解析による 0 0.1 0.2 0.3

0

0.1

0.2

0.3

N50-10 N50-20 N50-40 N35-10 N35-20 N35-40 E50-10 E50-20 E50-40 E35-10 E35-20 E35-40 L50-10 L50-20 L50-40 L35-10 L35-20 L35-40 TG-DTAによるCHの定量値 (g/g) Ri et ve ld 解析に よる CH の 定量値 (g/ g) y=1.0093x  図1 TG-DTAによるポルトランダイト(CH)の定量値とリ ートベルト解析によるポルトランダイトの定量値の比較

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0

0.1

0.2

0.3

0.4

N50-10 N50-20 N50-40 N35-10 N35-20 N35-40 E50-10 E50-20 E50-40 E35-10 E35-20 E35-40 L50-10 L50-20 L50-40 L35-10 L35-20 L35-40 実験による強熱減量 (g/g) Ri et ve ld 解析 によ る強 熱減 量の 予 測 値 (g/ g) y=0.9983x  図2 強熱減量試験による強熱減量とリートベルト解析によ る分析結果と表3の値から予測した強熱減量の比較

(4)

0.5 1 5 10 50100 500 N50-40 材齢 (day) 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 水和 率 (-) N35-10 0 0.2 0.4 0.6 0.8 N35-20 0.5 1 5 10 50100 0 0.2 0.4 0.6 0.8 N35-40 N50-10 C3S C2S C3A C4AF C3S-sim. C2S-sim. N50-20 0.5 1 5 10 50100 500 E50-40 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 水和 率 (-) E35-10 0 0.2 0.4 0.6 0.8 E35-20 0.5 1 5 10 50100 0 0.2 0.4 0.6 0.8 E35-40 材齢 (day) E50-10 C3S C2S C3A C4AF C3S-sim. C2S-sim. E50-20 図3 普通ポルトランドセメント(N)における各鉱物の反応率 図4 エコセメント(E)における各鉱物の反応率 0.5 1 5 10 50100 500 L50-40 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 水和 率 (-) L35-10 0 0.2 0.4 0.6 0.8 L35-20 0.5 1 5 10 50100 0 0.2 0.4 0.6 0.8 L35-40 材齢 (day) L50-10 C3S C2S C3A C4AF C3S-sim. C2S-sim. L50-20 0.5 1 5 10 50100 500 40oC C 2S 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 水和 率 (-) E35 E50 N35 N50 L35 L50 10oC C3S 0 0.2 0.4 0.6 0.8 20oC C3S 0.5 1 5 10 50100 0 0.2 0.4 0.6 0.8 40oC C 3S 材齢(day) 10oC C 2S 20oC C2S 図5 低熱ポルトランドセメント(L)における各鉱物の反応率 図6 C3S および C2S の水和率の推移

(5)

CHの定量値は,平均値として見た場合は,TG-DTAの測定結果に ほぼ等しく,その変動係数は 14%であった。また,全体的な傾向 として,Lのシリーズにおいて材齢が比較的大きい場合に小さく見 積もる傾向があった。 また,図2に示されるように,強熱減量の測定結果から見た場合 にも,リートベルト解析の結果と表3の値を用いて得られた強熱減 量は平均的には実験値と等しく,変動係数は10%であった。 以上のように本検討におけるリートベルト解析は,各相の推定精 度は誤差として 10~14%程度であるが,平均的には他の手法によ る実験値に等しいことを踏まえるとポルトランドセメント中の水 和反応を考察するに足る精度を有していると考えられる。 3.2 エーライト(C3S)の反応 リートベルト解析によって得られた各鉱物の反応の経時変化に ついて,普通ポルトランドセメントの場合を図3に,エコセメント の場合を図4に,低熱ポルトランドセメントの場合を図5に示す。 なお,ここでは後述するモデルによるエーライト,ビーライトの反 応速度予測結果についても,図中に併記している。 これらの全体的な挙動を評価するためには,それぞれの反応に着 目した考察が必要となる。そこで,まずはC3Sの反応に着目する。 図6は,各セメントのC3SおよびC2Sの水和反応率の推移である。 ここに示されるように,各温度においてセメント間に±約5%の相 違はあるものの,C3Sの水和反応率の経時変化は,セメント種類に よらずほぼ同様の傾向を示すことがわかる。また,温度依存性はそ れぞれのセメント間でもほぼ共通であり,高い温度であるほど水和 が早期にすすむ傾向が確認される。 材齢365日までに到達する水和率について着目すると,Nおよび Eの場合は,W/C=0.35の場合とW/C=0.50の場合を比較するとどち らのケースもW/C=0.35の場合の方が到達する水和反応率が6%程 度小さい傾向を示した。一方,Lの場合には水セメント比の影響が 無く,ほぼ同様であり,C3Sの反応率は水セメント比の影響を本検 討の範囲では受けなかった。これらの現象は,いわゆる自己乾燥に 起因するもので,自由水の残存量によって析出可能な領域が変化す るために生じたものであると考えられる。このことを確認するため, リートベルト解析の結果から算出した,20℃一定条件のそれぞれの セメント硬化体1cm3中に残存する自由水量の経時変化を図7に示 す。なお,ここで自由水とは,表3における11%RH条件での結合 水を基準として,水和物に結合していない余剰水と定義している。 ここに見られるようにL35の条件は材齢28日程度までE50の条件 とほぼ同等の自由水を保有しており,L35については水和の継続に 十分な自由水量を長期間保持することで水和が継続するものと考 えられる。 また,NおよびEではC3S含有量が同程度でありながら,最終的 に到達する水和率や初期の水和反応速度に若干の違いが見られる。 これは,表2に見られるように比表面積の違いが水和反応に影響を 及ぼしたものと考えられる。すなわち,初期の水和プロセス,とり わけカルシウムイオンが過飽和状態からポルトランダイトの析出 に至るプロセスにおいて,カルシウムイオン濃度に対して,アルミ ネート相,フェライト相,および石膏は影響を持つものと考えられ るが,その後の継続的な水和プロセスについての溶解反応は,溶液 中のイオン濃度の不足に律速される溶解であると推察される。比表

0.1

1

10

100

0

0.2

0.4

0.6

自由水

(g

/1

cm

3

-p

as

te

)

10℃

0.1

1

10

100

材 齢

(day)

N35

E35

L35

N50

E50

L50

20℃

0.1

1

10

100

40℃

図7 リートベルト解析と表3より算出したせメントペースト中の自由水量の経時変化

0

0.2

0.4

0.6

0.8

E

C

3

Sの水和率(-)

E35-10 E35-20 E35-40 E50-10 E50-20 E50-40

0

0.2 0.4

0.6

0.8

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

N

C

2

S

の水和率

(-)

N50-10 N50-20 N50-40 N35-10 N35-20 N35-40

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

L

L50-10 L50-20 L50-40 L35-10 L35-20 L35-40 図8 C3Sの反応率とC2Sの反応率の関係

(6)

面積が大きく,微粒子が多い場合には析出サイトの増大やイオンの 拡散移動が生ずる水和生成物層のセメント粒子表面における厚さ が薄くなることによって反応速度が大きくなるものと推察される。 以上の事柄より,本検討で得られたC3Sの水和反応率の経時変 化については,温度の活性,比表面積の違いによる水和反応速度等 への影響,セメント硬化体中の自由水分量変化による水和反応速度 の変化についてモデル化することで水和反応速度を予測すること が可能であると考えられる。 3.3 ビーライト(C2S)の反応 次にビーライトに着目する。再び図6に戻ると,C3Sの反応がセ メント毎,水セメント比毎の挙動が同様だったのに反して,C2Sの 反応は水セメント比やセメント種類によって大きな違いを示すこ とがわかる。全体的な傾向として確認できるのは,以下の通りであ る。 1)温度が高いほど水和反応の進行が早い。 2)水セメント比が小さい方が水和の進展が緩やかである。 3)E50のシリーズのC2Sの反応が他のシリーズと比べて極端に 迅速である。 4)NおよびEのシリーズでは材齢1日において10~20%の水和 率を有するが,Lシリーズはそれよりも小さい。 これらの傾向のうち,1),2)については従来の水和に関する一 般論と大きな相違はない。3)については,Eの比表面積が大きい こと,またC2Sの含有量が他のものよりも少ないため,反応が開始 されると,相対的に水和反応率が大きく進展するということが考え られる。また,このような反応は表面反応律速・拡散律速のような 反応形態でなく,溶解・析出といったプロセスで律速されている可 能性を示唆する。 このことは,NおよびEのシリーズで,かなり初期の段階から 10~20%の水和率があるという実験結果によって支持される。Lに おいて水和率として値が小さいのは,溶解するC2S量に対してセメ ント中のC2S量が相対的に多いからであると考えられる。 なお,本議論において,リートベルト解析のビーライトの定量精 度の問題,N,Eにおけるビーライト量が少ないことの問題が存在 していることは認識しているが,水和進行を示す傾向も捉えられて いることから,定性的議論については問題が無いものと考えている。 このようにC2Sの反応は,様々な状況に応じたものであると考え られるが,C3Sの反応の観点からC2Sの反応を見てみると,一つの 統一的な挙動が確認される。 図8は図3~図5において示したC3SとC2Sの反応について, 同一材齢のデータに着目し,C2Sの反応率をC3Sの反応率で整理し たものである。ここに示されたようにC2Sの反応率はC3Sの反応 率の関数として,養生温度や水セメント比の影響をほとんどうける ことなく一つの関数として表現することができることがわかる。特 にセメントにかかわらず C3S の反応率が 90%前後に到達すると C2Sの反応は活性化することが認められる。なおこのように水和反 応過程においてC3SがC2Sについて先行する傾向については,著 者らの既報においても報告しているものである27), 7) この現象は以下のような仮説によって説明が可能である。すなわ ち,C2Sの反応は表面反応律速や水和生成物中のイオンの移動によ る拡散律速ではなく,細孔溶液中の組成に依存した溶解プロセスに よって律速されるというものである。 図9は,この反応速度と細孔溶液の組成という観点を整理するた めに示した,細孔溶液中のCaOおよびSiO2の濃度に対するC-S-H の溶解度曲線28)C 3SとC2Sの溶解度曲線29)である。 セメントの水和が開始すると,セメントの各鉱物は水に溶解し, 液相はすぐに過飽和状態になる。図9①のプロセスにおいて,液相 はC3Sの溶解によって,C/S=3の値を保持しつつ過飽和状態に至る。 その後, C-S-Hの過溶解曲線上において,C-S-Hを析出しながら, SiO2濃度が下がっていき(図9②),さらにポルトランダイトが析 出して,C3Sの溶解度曲線とCHの溶解度曲線の交点(図9③)で, C3Sの反応が継続する。このとき,C2Sの溶解度曲線と比較すると 細孔溶液中ではCaOおよびSiO2の濃度が高いためにC2Sはほとん ど溶解・反応することができない。その後,C3Sの反応が終了した 領域から, CaOおよびSiO2濃度が水和生成物の析出とともに低下 し,C2Sの溶解度曲線と交わった状態(図9④)に移行し,この時 点からC2Sの反応が進行する。この図9③から④への推移が,C3S の水和反応率が 90%程度に進んだ状況から除々に生じる,という ことが図9によって示されているものと考えられる。 このような溶解の考え方は,E の反応速度が速いことや初期に 10~20%の水和率がNおよびEで確認されることとも符合する。 以上を総合すると,C2Sの反応をモデル化するには,従来研究に あるような比表面積,温度による反応依存性だけでなく,析出範囲 の低減のモデル化,また,C3Sとの反応の相互依存性を評価する必 要があるものと考えられる。なお,図6や図8に見られるようにセ メント毎にビーライトの反応に大きな違いがあるのは,焼成温度条 件や冷却プロセスに依存した多形が影響している可能性が推察さ れるが,この点については今後の検討課題である。 3.4 エーライトおよびビーライトの簡易水和反応モデル 以上の議論を踏まえ,C3SおよびC2Sの水和反応率の経時変化を モデル化することを試みる。Parrotは,セメントの水和反応に対し ていくつかの反応速度式をメカニズムに立脚する形で提案してい るが,水和生成物形成をモデル化するにあたり,未反応のセメント 量と現象を律速する反応速度定数の関数として,水和反応速度を表 現する以下の式を提案している30) 図9 C-S-HおよびC3S,C2Sの溶解度曲線とCaO-SiO2図 上における水和プロセスにおける液層の各イオン濃度

(7)

( )t k 1 ( )t n t  (2) ここに,( )t :水和反応率,t:材齢,k :反応速度定数, n :反 応に関する係数である。本式は,従来は拡散律速過程以降の現象を 表現するために用いられて来たが,現象を律速する反応速度を用い た式であるので,前述のC2S の溶解律速過程にも適用が可能である と考えられる。 これをC3S および C2S それぞれに適用し,前節までの各影響因 子を考慮可能なものとするため,以下の式を考える。 C3S:

3( ) 3 3 3 3 ( ) 1 ( )rC Sw nC S C S C S C S t k t t    (3) 3 3 3 ,20 1 1 exp 293 C S C S srf C S E k r k R T           (4) 3 ( ) 1 2 exp( 10 ) C S r w    w (5) C2S:

2( ) 2 2 3 2 2 ( ) ( ) 1 ( )rC Sw nC S C S C S C S C S t r k t t    (6) 2 2 2 ,20 1 1 exp 293 C S C S srf C S E k r k R T           (7) 2 ( ) 1 4exp( 10 ) C S r w    w (8) 3 2 3 3 0.9 1.0 ( ) 0.9 0.3 C S C S C S C S r         (9) 0 / srf rS S (10) ここに,C S3 :C3S の水和反応率,C S2 :C2S の水和反応率,kC S3 ,20, 2 ,20 C S knC S3nC S2 :各鉱物の水和反応速度に関する係数,kC S3 , 2 C S k :任意温度条件における各鉱物の水和反応に関する係数であ り,基準温度を20℃として kc3s,20kc2s,20としてその反応係数を表し, 温 度 の 影 響 に 関 し て 見 か け の 活 性 化 エ ネ ル ギ ー にEC S3 , 2 C S E (J/mol)を用い,アレニウス式に従うと仮定して評価される係 数,R:ガス定数(J/mol/K),T:温度(K),rC S3( )w ,rC S2( )w :体積 含水率w (g/cm3)の関数として表現した析出可能領域の低減による 水和反応速度に関する係数,rC S2 (C S3 ):C2S の C3S の反応依存性 を表す係数,r :比表面積の影響を表す係数でセメントの比表面srf 積(S)と基準とする比表面積 S0(=3300m2/g)との比,である。 これらの各係数については,実験値に整合するように表4のよう に定めた。その結果は,図3~図5において,太線および破線とし て示したとおりである。体積含水率については,図7の値を材齢の 対数で内挿補完した値を各計算材齢において用いている。 これらのパラメータの精度について確認したものが図 10 および 図11 である。この結果は,あくまでもフィッティングの精度であ って予測式の精度を示すものではないが,平均的な傾向は良い一致 を有しており,ばらつきは,C3S は±10%程度,C2S については± 20%程度の範囲に収まる結果となっている。 この提案式は,各係数の物理的意味合いが明確であるとともに, CCBM よりは係数の数が少なく7),見通しのよい簡易モデルとして 利用できる。 本提案式は,W/C=0.50 という水和の停滞が少ない水セメント比に おいて一定精度を表現できたことから,水和の停滞がより少ないと 思われるW/C=0.50 以上の領域も含めた一般的なコンクリートを製 造可能な範囲において水セメント比0.35 以上を適用範囲とする。 また,表4のパラメータが適用できる範囲はエーライト量の含有量 が30~60%,ビーライトの含有量が 10~55%のセメントであり, モデルの適用材齢は,エーライトの反応率が 40%以上の領域であ る。 4. まとめ 本研究では,普通ポルトランドセメント,エコセメント,低熱ポ ルトランドセメントを用い,水セメント比を0.50 および 0.35,養 生温度を 10,20,40℃としたセメント硬化体を対象に,リートベ ルト解析を行い,各セメントの水和について,特にエーライト(C3S) 表4 水和反応モデルの定数一覧 kX,20 nX EX (kJ/mol) rsrf r wX( ) rC S2 (C S3 ) C3S 1.7 2.5 58 eq.(10) eq.(5) - C2S 0.1 2.0 58 eq.(8) C3S>0.9 1.0 C3S≤0.9 0.3 X: C3S あるいは C2S を表す。 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 y=0.97x R2=0.92 C3Sの水和反応率(予測値) C3 S の水和反応 率(実験値) N L E 図 10 C3S の水和反応率の予測値と実験値の比較 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 y=1.00x R2=0.90 C2Sの水和反応率(予測値) C2 S の水和反 応率(実験値) N L E 図 11 C2S の水和反応率の予測値と実験値の比較

(8)

およびビーライト(C2S)の反応速度に着目した。 その結果,エーライトの水和反応は水セメント比0.35 と 0.50 で は大きな差異は生じず,いずれのセメントにおいても類似した水和 反応プロセスであることが示された。 一方,ビーライトの反応はエーライトとは異なり,それぞれの水 セメント比あるいはセメント種類によって異なる挙動となった。し かし,エーライトの水和率によってビーライトの水和率を評価する と,養生温度,水セメント比の影響はほとんどみられず,エーライ トの反応が 90%を超えた時点から反応が活性になるという傾向が 確認された。この傾向は,エーライトの反応中は液相の組成の関係 から,ビーライトの反応が生じにくい状況が作られているためであ ると推察された。 これらのセメント硬化体中のエーライトおよびビーライトの反 応の特徴を生かし,簡易な水和反応式を提案した。本モデルは,全 体的な傾向としては良い一致を示したが,ビーライトについては, 若干ばらつきが大きい。 謝辞 実験を遂行するにあたり様々なご助言とご配慮を頂きました,星野 清一氏(太平洋セメント株式会社・中央研究所),平尾宙博士(同) 及び関係各位に記して謝意を表します。 参考文献

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