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消費生活相談の視点からみた消費者契約法のあり方

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記者説明会資料 2 0 0 7 年 1 1 月 9 日 独立行政法人 国民生活センター [調査研究報告]

消費生活相談の視点からみた消費者契約法のあり方

〈概要〉 国民生活センターや全国の消費生活センターに寄せられる消費生活相談の約 9 割 は「取引」(「契約・解約」または「販売方法」)に関する相談である(2006 年度、 PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム))。 2001 年 4 月に施行された消費者契約法は、消費者・事業者間の契約(消費者契約) に関し、事業者の不当行為(不当な勧誘、不当な契約条項)があった場合に、契約 の取消しや契約条項の無効の効果を生じさせるものであり、消費者契約にかかわる トラブルを解決する手段として消費生活相談などの場で活用されている。 しかし、近年の社会・経済環境の変化に伴い、消費者契約は多様化・高度化し、 契約内容をさらに複雑なものとしている。また、消費者の弱みにつけ込んだ不当な 勧誘が多数見受けられるなど、事業者の行為の悪質化・巧妙化も進んでおり、被害 回復の困難な事例も目立ってきている。 そこで、国民生活センターでは、深刻化する消費者被害の救済の方途を探るため、 学識経験者、弁護士、消費生活相談員らによる「消費者契約法に関する研究会」(座 長:後藤巻則早稲田大学大学院法務研究科教授)を設置し、消費者契約にかかわる 相談事例の分析と、消費生活相談員を対象とした消費者契約法の活用状況等に関す る調査を実施した。 本報告は、調査の結果、明らかになった消費者契約法に関する問題状況を踏まえ て、消費者契約法に関する 3 つの提言を行うものである。 1 消費者・事業者間の格差是正を徹底すべき 2 消費者の弱みにつけ込む不当な勧誘への対応が不可欠 3 紛争解決過程においても消費者・事業者間の格差是正が必要 報告書は 5 章から成るが、以下、調査結果と提言の概要を報告する。

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Ⅰ 調査の概要

1 消費者契約にかかわる相談事例の分析 PIO-NET に蓄積された消費者契約にかかわる相談事例のなかから、消費者契約法 では被害救済が困難と考えられる事例を抽出し、同法の問題点を整理した。 2 消費者契約法の活用状況等に関する調査 (1) 調査の目的 消費生活センターにおける、消費生活相談員の消費者契約法の活用状況等を明 らかにし、消費者契約法のあり方を探ろうとした。 (2) 調査対象・調査事項等 ① 調査地域・対象:全国の消費生活センターに勤務する消費生活相談員 ② 調査対象数: 2,040 ③ 有効回収数・回収率: 1,553 (76.1%) ④ 調査方法:相談業務を週 4 日以上行っている消費生活センター 510 ヵ所を通 じて、消費生活相談員に調査票を配布。 各個人が国民生活センターに返信用封筒で郵送。 ⑤ 調査時期:2007 年 6 月~7 月 ⑥ 調査事項 <1> 「情報提供に関する努力義務」規定(3 条 1 項)の利用経験 <2> 「情報提供に関する努力義務」規定(3 条 1 項)の利用しやすさ <3> 不当勧誘規定(4 条)の利用経験 <4> 広告の表示内容に関する、事業者からの資料の提示状況 <5> 契約取消権の行使期間(7 条 1 項)を過ぎた相談を受けた経験 <6> 不当条項規定(8~10 条)の利用経験 <7> 違約金等の額に関する、事業者からの資料の提示状況 <8> 事業者名義の取引に関する相談への対応状況等 <9> 消費者契約法と特定商取引法のどちらを優先して利用しているか

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(参考) 消費者契約法の概要 ・ 消費者契約法は、消費者・事業者間の情報や交渉力の格差是正を目的として、 2000 年に成立(2001 年施行)。 ・ 消費者・事業者間の契約(消費者契約)に関し、事業者の不当行為(不当な勧 誘、不当な契約条項)があった場合、消費者は契約の取消しや契約条項の無効を 主張できる。 ・ また、本年 6 月 7 日からは、消費者被害の発生・拡大を防止するため、一定の 消費者団体(適格消費者団体)に、事業者の不当行為に対する差止請求権を認め る制度(消費者団体訴訟制度)が導入された。 <消費者契約法における事業者の不当行為> 不当行為の類型 具体的に想定される 不当な勧誘・不当な契約条項の例 ① 不実告知 (4 条 1 項 1 号) 「この機械を取り付ければ電話代が安くなる」と言っ て、実際にはそのような効果のない機械を販売した ② 断定的判断の提供 (4 条 1 項 2 号) 元本保証のない金融商品を「確実に値上りする」と説 明して販売した 誤認 類型 ③ 不利益事実の不告知 (4 条 2 項) 見晴らしが悪くなる隣接マンション建設計画を知りな がら、「眺望良好」と説明し、その隣接マンション建 設計画の事実を説明しないで販売した ④ 不退去 (4 条 3 項 1 号) 消費者の自宅等で、消費者が「帰ってほしい」と言っ ているのに、長時間勧誘した 不当 な勧 誘 (4条関係) 困惑類型 ⑤ 退去妨害 (4 条 3 項 2 号) 事業者の販売店等で、消費者が「帰りたい」と言って いるのに、長時間勧誘した ① 事業者の損害賠償責任を免 除する条項(8 条 1 項) いかなる理由があっても事業者は一切損害賠償責任を 負わないとする条項 ② 消費者が支払う違約金等の 額を過大に設定する条項 (9 条 1 号) 消費者が解約した場合、支払済みの代金を一切返金し ないとする条項(無効となるのは、事業者に生ずべき 「平均的な損害の額」を超える部分) ③ 年 14.6%を超える遅延損害 金を定める条項(9 条 2 号) 料金の支払が遅延した場合、年30%の遅延損害金を支 払うとする条項(無効となるのは、年14.6%を超える 部分) 不当 な 契 約 条 項 (8~10条関係) ④ 消費者の利益を一方的に害 する条項(10 条) 不動産の賃貸借契約において、借主に過大な原状回復 義務を課す条項

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Ⅱ 調査結果のポイントと提言

1 消費者・事業者間の格差是正を徹底すべき 消費者契約法は、消費者・事業者間に一般的に存在する情報の質・量及び交渉力 の格差を踏まえて制定されたものであるが、現実には、その格差は是正しきれてい ない。 (1) 事業者の情報提供義務の強化 消費者契約法では、事業者の積極的な情報提供義務として、3 条 1 項で「情報 提供に関する努力義務」を、4 条 2 項で「不利益事実の不告知」(事業者が利益 となる旨を告げ、かつ不利益となる事実を知りながら告げなかった場合の契約の 取消し)を定めているが、いずれも、事業者が重要な事実を告げなかったことを もってただちに契約を取り消すことができる訳ではない。 調査結果 ① 相談事例をみると、「中古車を購入する際に事故車であることが告げられな かった」ものや「携帯電話の定額通話プランを申し込んだが、翌月からの適用 となることが告げられず高額な支払いを求められた」ものなど、事業者が重要 な事実を告げなかったため、消費者が誤認して契約を締結してしまったものが あった。 ② 相談員を対象とした調査では、消費者から寄せられた相談のあっせんを行う 際に、事業者との話し合いのなかで、消費者契約法の不当勧誘規定(情報提供 に関する努力義務、不実告知、断定的判断の提供、不利益事実の不告知、不退 去・退去妨害)を利用したことがあるか、尋ねた。 (図1) <1> 「よく利用している」と答えた相談員の多い条項は、「不実告知」(25.7%)、 「不退去・退去妨害」(20.2%)、「断定的判断の提供」(14.0%)の順である が、「情報提供に関する努力義務」は 7.1%、「不利益事実の不告知」は 5.9% にとどまる。

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一方、「利用したことはない」と答えた相談員は、「情報提供に関する努 力義務」(46.5%)と「不利益事実の不告知」(47.6%)で半数近い。 (断定的判断の提供 24.9%、不退去・退去妨害 21.6%、不実告知 12.8%) <2> さらに、「情報提供に関する努力義務」の利用しやすさを尋ねたところ、 「利用しにくいと思う」と答えた相談員は 9 割近い(87.1%)。 その理由として「契約を取り消すことができない」ことを挙げた相談員は 59.1%、「“しなければならない”という規定ではないため、強く主張しに くい」は 57.6%、「“努力している”と言い逃れされてしまう」は 41.3% となっている。(複数回答。%は「利用しにくいと思う」と答えた相談員に 占める比率) <3> また、「不利益事実の不告知」については、「わかりにくい」、「故意を 立証することは難しい」、「利益となることを告げていなくてはならず、ま た不告知は故意でなければならないため、使いづらい」といった意見が寄せ られている。 図1 消費者契約法の不当勧誘規定を利用したことがあるか 20.2 5.9 14.0 25.7 7.1 56.6 44.0 59.0 59.8 45.7 21.6 47.6 24.9 12.8 46.5 0.7 1.7 2.1 2.4 1.5 0% 50% 100% 不退去・退去妨害        (4条3項) 不利益事実の不告知        (4条2項) 断定的判断の提供       (4条1項2号) 不実告知(4条1項1号) 情報提供に関する     努力義務    (3条1項) よく利用している 何度か利用したことがある 利用したことはない 無回答

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提 言 ① 消費者契約法が、消費者と事業者との情報格差を是正する必要があるとの視 点から制定されたことを前提とすれば、その格差是正のために、情報を有する 事業者が消費者に対して積極的に情報を提供すると考えるのが妥当である。 ② 調査結果からは、事業者が必要な情報を提供しなかったために、消費者が誤 認して契約を締結しトラブルになっていることと、消費生活センターによるあ っせんにおいて「情報提供に関する努力義務」規定と「不利益事実の不告知」 規定の利用状況が低く、利用しにくいとの声が上がっていることが明らかとな った。 ③ こうした状況を踏まえれば、事業者が重要な事項を故意に(知りながら)告 げなかったために、消費者が誤認して契約を締結した場合には、消費者はその 契約を取り消すことができることとすべきである。具体的には、現行の「不利 益事実の不告知」規定において、「先行行為」(利益となる旨を告げ)の要件 を削除すること等が考えられる。 ④ なお、事業者の「故意」の要件については、それを一切削除することは、一 般事業者に対し過大な責任を負わせるおそれがあり困難であると考えられる 一方、消費者側で事業者の「故意」を立証することは極めて難しいとの指摘を 勘案すれば、重要事項を告知しなかったこと自体から事業者の「故意」を推認 した裁判例(神戸簡判平成 14 年 3 月 12 日)などを踏まえて、「故意」の認定 について相応の緩和を図るべきである。 ⑤ 他方、「情報提供に関する努力義務」については、重要事項の不告知による 契約の取消し規定が導入された場合であっても引き続き重要な役割を担う。な ぜなら、消費者に誤認を生じさせる事業者の行為の態様は、「不実告知」や「断 定的判断の提供」といった同法 4 条に定められた態様に限られないからである。 同法 4 条では対応し難い様々な事案を救済するためには、事業者に対し消費者 の「理解」を前提とした適切な情報の提供を求める一般的な規定がなお不可欠 である。その場合、当該規定があっせんの場で十分に利用できていない現状を 踏まえれば、新たに法的な効力を生ずる義務として規定することが検討される べきである。

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(注1) 消費者契約法制定後、個別法および裁判例には大きな進展が見られる。 ・ 平成 16 年の特定商取引法の改正では、「不利益事実の不告知」に関して消費者 契約法と同様の契約取消権が認められたが、特定商取引法では、「先行行為」(利 益となる旨を告げ)を要求しない点で要件が緩和されている。その他、平成 16 年 の商品取引所法の改正では、事業者に商品先物取引のリスク等について説明する義 務が課せられ(218 条 1 項)、また、平成 18 年の金融商品販売法の改正では、同 法 3 条に定める「重要事項」の範囲が大幅に拡充されている。 ・ また、消費者契約法に関連する裁判例においても、同法 3 条 1 項(情報提供に関 する努力義務)に法的効力を認めたと理解できるもの(大津地判平成 15 年 10 月 3 日)、「不利益事実の不告知」における故意の認定を緩和したもの(神戸簡判平成 14 年 3 月 12 日)など、同法の規定の解釈を拡張し、消費者被害の救済を図る事案 が蓄積されている。 (注2) なお、「情報提供に関する努力義務」の解釈においては、単なる書面の交付をもっ て当該義務が果たされるものではないことが明らかにされるべきである。

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(2) 「重要事項」(4 条 4 項)の範囲の拡張 現行消費者契約法では、事業者による「不実告知」(4 条 1 項 1 号)があった場 合でも、当該不実を告げた事項が、契約内容に関する事項(「重要事項」(4 条 4 項)に該当する事項)でなければ、契約を取り消すことができない。 調査結果 ① 相談事例とみると、 ・ 床下が傷んで傾いているので地震が来たら家が倒れると言われて、必要の ない耐震補強工事を契約したもの、 ・ 水道水は将来飲めなくなると言われて、浄水器を購入したもの、 ・ 教材メーカーのグループ会社と称する業者から補習教材を購入したが、全 く関係のない業者だったものなど、 事業者が、契約内容以外の事項(契約締結の必要性や契約の信頼性といった、 契約を締結する動機に関する事項)について不実を告げたため、消費者が誤認 して契約を締結してしまったものがあった。 ② その他、相談員を対象とした調査では、「契約内容以外のところで消費者が 判断を狂わされているのが実情」や「契約の動機に関する事項についても取消 し対象にしてほしい」といった意見が寄せられている。 提 言 ① 契約内容以外の事項であっても、消費者の契約を締結するか否かの判断に影 響を及ぼすものは多く、契約内容に関する事項と区別して対象外とする合理的 な理由はない。 ② したがって、「重要事項」(4 条 4 項)の範囲を拡張し、「その他契約を締結 する動機に関する事項」を取消事由とすべきである。 (注) 平成 16 年の特定商取引法の改正では、「不実告知」に関して消費者契約法と同様の 契約取消権が認められたが、特定商取引法では、「不実告知」の対象となる事項に「顧 客が契約締結を必要とする事情に関する事項」(6 条 1 項 6 号)まで含むなど、要件が緩 和されている。 また、消費者契約法に関連する裁判例においても、「重要事項」を広く解釈して契約 を締結する動機に関する事項を取り込んだもの(神戸簡判平成 16 年 6 月 25 日、大阪簡 判平成 16 年 10 月 7 日、東京地判平成 17 年 3 月 10 日)がある。

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(3) 「断定的判断の提供」の解釈の拡張 事業者による「断定的判断の提供」(4 条 1 項 2 号)があった場合でも、当該断 定的判断を提供した事項が「財産上の利得」(金融取引における各種の指数・数 値、金利、通貨の価値等)に関するものでなければ、契約を取り消すことができ ないと解釈されている(内閣府・逐条解説消費者契約法〔新版〕100 頁)。 調査結果 ① 相談事例をみると、「必ず結果を出すと言われて、高額のエステ商品を購入 してしまった」ものなど、事業者が、「財産上の利得」以外の将来的に不確実 な事項(商品やサービスの効果に関する事項など)について断定的判断を提供 したため、消費者が誤認して契約を締結してしまったものがあった。 ② その他、相談員を対象とした調査では、「金融など財産に関するもの以外に、 体型や学力など幅広い解釈の定着が必要だと思う」や「財産上の利得に限定さ れているので使いにくい」といった意見が寄せられている。 提 言 ① 事業者から将来的に不確実な事項について「断定的判断の提供」があった場 合には、それが「財産上の利得」に関する事項であろうとなかろうと、消費者 の契約を締結するか否かの判断に影響を及ぼす場合が多い。 ② したがって、「断定的判断の提供」の解釈においては、事業者が、消費者の 契約を締結するか否かの判断に通常影響を及ぼす事項について断定的判断を 提供したために、消費者が誤認して契約を締結した場合には、消費者はその契 約を取り消すことができると考えるべきである。 (注1) 裁判例としては、「運勢や将来の生活状態という変動が不確実な事項につき断定的 判断の提供がなされたことにより、上記提供された断定的判断の内容が確実であると 誤認して、上記各契約を締結し」たものとして、「断定的判断の提供」による契約の 取消しを認めたものがある(神戸地尼崎支判平成 15 年 10 月 24 日。ただし、控訴審 判決(大阪高判平成 16 年 7 月 30 日)では、「断定的判断の提供」による取消しを認 めず、暴利行為として公序良俗に反し無効とした)。 (注2) 断定的判断が提供された事項が商品やサービスの効果等に関するものである場合、 当該事項を「重要事項」(4 条 4 項)として読み込み「不実告知」による契約の取消し を主張することも考えられるが、「断定的判断の提供」を利用するほうが、条文への あてはめが容易であるとの指摘がある。

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(4) 不当な「広告」に対する民事ルールの適用 「広告」は、消費者契約法における「勧誘」の概念に含まれず、同法の適用は ないと解釈されている(内閣府・逐条解説消費者契約法〔新版〕93 頁)。 調査結果 ① 相談事例をみると、「広告に公的な資格が取れるとあったので講座を申し込 んだが、ウソだった」ものなど、事業者から提供された「広告」に不実の表示 があったため、消費者が誤認して契約を締結してしまったものがあった。 ② 相談員を対象とした調査では、消費者から広告の表示内容が事実かどうか疑 わしいとの相談を受けた経験のある相談員は、8 割近く(79.7%)を占める。 また、「広告は勧誘にあたらないとの解釈について改善を望む」といった意見 も寄せられている。 提 言 ① 消費者が商品やサービスを購入する際に利用できる最も一般的な情報は、事 業者が行う広告によって提供される情報であり、それが消費者の期待する役割 を果たさない場合には、消費者の信頼を裏切り多大な被害を生じさせる。 ② 広告に関して寄せられる相談は多く、そのなかには、広告の表示内容を信じ たからこそ契約を締結したといったものがある。こうした広告は、実質的に「勧 誘」と同視しうるものであり、このような場合に消費者契約法による救済が一 切受けられないとするのは妥当ではない。 ③ したがって、客観的にみて、個別の消費者の契約締結の意思の形成に影響を 及ぼすと考えられる「広告」については、消費者契約法の「勧誘」の概念に該 当し、同法の規定が適用されると考えるべきである。 (注) 「広告」の定義は必ずしも明確ではないが、ここでは、「広告」を、多数の者に対し て同様の内容で行う契約締結の誘引となりうる情報の提供と捉えている。 参考として、本年 9 月 30 日に施行された金融商品取引法では、「広告その他これに 類似するものとして内閣府令で定める行為」を広告規制の対象としている(37 条)が、 広告類似行為の具体的な内容としては、郵便、信書便、FAXを用いて送信する方法、 電子メールを送信する方法、ビラ又はパンフレットを配布する方法などにより多数の者 に対して同様の内容で行う情報の提供としている(金融商品取引業等に関する内閣府令 72 条)。

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(5) 「消費者契約」の定義の明確化 消費者契約法は、「消費者」と「事業者」との間で締結されるすべての契約(消 費者契約)に適用される(2 条)。ただし、個人が「事業として」又は「事業のた めに」契約を締結する場合には、当該個人は「事業者」となるため、同法による 救済を受けることはできない。 (注1) 消費者契約法における「消費者契約」の定義は次のとおり(2 条各号)。 ・ 消費者 : 個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く) ・ 事業者 : 法人その他の団体、及び、事業として又は事業のために契約の当事者となる 場合における個人 ・ 消費者契約 : 消費者と事業者との間で締結される契約(労働契約を除く(48 条)) 調査結果 ① 相談事例をみると、「新しい電話機のリース契約をしたが、自宅用のものま で事業者 ... 名義 .. でサインさせられた」ものなど、個人生活にかかわる契約につい て、強引に「事業者」として契約を締結させられたものがあった。 また、「インターネット・オークションで個人間...取引..をしたが、相手方は同 種の商品を大量に出品していた」ものなど、個人名義を用いているが、相手方 は実質的に「事業者」と考えられるようなものもあった。 ② その他、相談員を対象とした調査では、「事業を営んでいる個人を消費者と みるか事業者とみるかについて目安があればよい」といった意見があった。 提 言 「消費者契約」の定義については、取引の名義だけで杓子定規に判断するので はなく、購入した商品やサービスの利用実態(主として事業にかかわるものか、 個人生活にかかわるものか)や勧誘の状況といった取引の実情を総合的に勘案し たうえで消費者契約法の立法趣旨に照らして解釈されるべきである。その場合、 特に意図的に消費者契約法等の適用を逃れようとする悪質な事業者が存在して いることを踏まえれば、その定義の解釈基準を法的に明らかにすることも考えら れる。 (注2) 裁判例としては、内職商法におけるシステム購入契約について、当該購入者を「消 費者」に該当するとしたものがある(東京簡判平成 16 年 11 月 15 日)。 (注3) なお、消費生活センターにおいては、少なくとも消費者契約法の適用対象となりう る相談が受付の段階で排除されることのないような配慮が期待される。

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(6) 取消権の行使期間の延長 消費者契約法上の契約取消権は、追認できる時(誤認に気づいた時・困惑から 脱した時)から 6 ヵ月を経過したとき、または契約締結時から 5 年を経過したと きは時効によって消滅する(7 条 1 項)。 (注1) 民法上の時効は、それぞれ、5 年、20 年である(126 条)。 調査結果 相談員を対象とした調査では、消費者から寄せられた相談が、消費者契約法上 の取消権の行使期間を過ぎていたことがあったか、尋ねた。(複数回答) <1> 73.1%の相談員が、「騙されて契約していたことに気づいてから(誤認に 気づいた時から)6 ヵ月以上経っていた」相談を受けたことがあると答えてい る。 その際、すぐに相談にこなかった理由としては、「悩んでいたら時間が経 ってしまった」と答えた相談員が 72.4%、「事業者に苦情を聞き入れてもら えずあきらめていた」が 56.7%であり、その他、「信販の支払いが半年して からであり、引き落とされるに至ってあわてて相談に来た」といった意見も 寄せられている。(%は、このような相談を受けたことがあると答えた相談 員に占める比率) <2> 「不退去・退去妨害から解放されてから(困惑から脱した時から)6 ヵ月以 上経っていた」相談を受けたことがある相談員は 24.7%。 <3> 「契約してから 5 年以上経っていた」相談を受けたことがある相談員は 51.9%。 提 言 ① 調査結果からは、取消権の行使期間が過ぎているために、消費者契約法の適 用が困難となっている事例が多数存在することが明らかとなった。なかでも誤 認に気づいた時から 6 ヵ月以上経過していた相談が多く、その場合に、すぐに 相談してこなかった理由として、「悩んでいたら時間が経ってしまった」が 1 位(72.4%)に挙げられていることからすると、一般の消費者の行動パターン として、問題を認識してもすぐには行動を起こせていない状況がうかがわれる。

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② 取消制度は、事業者に取消事由に該当する不当な勧誘があった場合の消費者 の権利である。したがって、その行使期間は、被害を受けた消費者が、その被 害の回復を図るために一般的に必要となる期間は確保されなければならない。 ③ このように考えれば、「追認できる時から 6 ヵ月」とする現行の行使期間は あまりにも短く、相応の期間に延長すべきである。なお、どの程度延長すべき かについては、相談事例等をさらに調査したうえで、取消制度の趣旨を踏まえ て十分に検討する必要がある。 (注2) なお、困惑類型(不退去・退去妨害)における「追認できる時(困惑から脱した時)」 の起算点については、「拘束から解放された時」ではなく、「心理的に困惑から脱し た時」と解釈すべきである。 裁判例としては、契約締結後、販売店から商品を引き取りに来るようにとの連絡を 受け納品確認書に署名押印した時点でも、困惑した状況のもとに署名押印したことが 認められるとして、取消権の行使期間もこの時から進行すると解するのが相当とした もの(東京簡判平成 15 年 5 月 14 日。同旨として名古屋簡判平成 17 年 9 月 6 日)が ある。

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2 消費者の弱みにつけ込む不当な勧誘への対応が不可欠 現行の消費者契約法が前提として捉える消費者(一般的な消費者)は、事業者と の情報や交渉力の格差はあるものの「事実認識がしっかりとでき、合理的に経済活 動を行える人」であるが、現実には、判断能力に問題があり合理的な行動をとるこ とが難しい消費者も多い。また、一般的な消費者であっても、事業者により勧誘を 断れない状況を意図的に作り出され、断りたくても断れずに契約させられてしまう ことも多く、こうした消費者の弱みにつけ込んた不当な勧誘が目立ってきている。 (1) 判断能力に問題のある人への不当な勧誘への対応 近年、一人暮らしの高齢者など判断能力の低下した人を狙い、高額な商品を売 りつける悪質な勧誘が社会問題となった。高額な住宅リフォーム工事がその典型 例であり、一旦契約すると“次々に”かつ“大量に”契約させられ(次々販売、 過量販売)、その後の生活に支障を及ぼすこととなる場合も多い。 調査結果 ① 相談事例をみると、「事業者が、認知症の高齢者に対して、商品を次々に(過 量に)売りつけたため、その後の生活に支障を生じた」ものや「知的障害者に 対して、不当に高額な商品を売りつけた」ものなど、事業者が、消費者の判断 能力の不十分さにつけ込んで、必要のない契約を勧める、生活に支障を及ぼす ような契約を勧める、不当に高額な契約を勧めるといった、不当な勧誘を行っ ているものが多数あった。 ② 「判断能力に問題のある人の契約」に関する相談件数は、2006 年度で 7,037 件であり、2000 年度(2,637 件)に比べて 2.7 倍に増加している。また、その うち「次々販売」が問題となった相談件数は、2000 年度は 417 件(15.8%)で あったが、2006 年度は 1,687 件(24.0%)と、件数・割合とも増加している。 (注) 2007 年 9 月末日までに PIO-NET に登録された販売方法に関する相談から抽出。以 下、同じ。 ③ その他、相談員を対象とした調査では、「高齢者や障害者などの判断不十分 者であることにつけ込んだ契約が多い」、「高齢者からの相談が増えている状 況のなかで、契約に至った経緯の聞き取りが難しく救済できないジレンマを感

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じている」、「適合性の原則に照らして取消権ができたらどんなにか救える人 が増えることだろう」といった意見が寄せられている。 提 言 ① 認知症高齢者、知的障害者、精神障害者などの判断能力に問題のある人は、 合理的な判断を行うことが難しいため、通常の判断能力があれば締結しないよ うな、本人にとって利益を害することとなる契約についても、事業者に“言わ れるままに”契約してしまうことが多い。また、消費者契約法の誤認類型や困 惑類型により救済できる可能性のある場合でも、記憶があいまいで契約当時の 事実関係や意思を確認することが難しいため、事業者による不当行為の事実等 を主張することが困難となっている。そのため、こうした判断能力に問題のあ る人を救済するためには、誤認類型や困惑類型の強化といった方法ではなく、 新たな救済法理を導入することが必要となる。 ② 判断能力に問題のある人の場合、本人が事業者と直接交渉し、その被害の回 復を図ることは極めて難しい。そのため、各地の消費生活センターでは、特に こうした人の被害の救済に力を入れている。しかし、本来は、こうした弱みを 抱える消費者こそ、制度として第一に救済されるべきであり、それは消費者契 約法が担うべき役割であるといえる。 ③ こうした考え方からすれば、消費者契約法において、消費者の判断能力、知 識、経験、財産の状況及び契約締結の目的に照らして、当該契約が消費者の利 益を著しく害すると認められる場合に契約の取消し等を可能とする、新たな規 定(適合性の原則)の創設が検討されるべきである。具体的には、消費者が、 当該契約を締結する必要性及び合理性が認められないなどの、当該消費者の利 益を著しく害すると認められる契約を締結した場合であって、当該消費者に通 常の判断能力があれば当該契約を締結していなかったと認められるときには、 消費者は契約を取り消すことができる、とすることが考えられる。 ④ なお、事業者は、消費者の判断能力の不十分さ等につけ込んだ不適切な勧誘 をすべきではないことを明らかにするため、「事業者は、消費者の判断能力、 知識、経験、財産の状況及び契約締結の目的に照らして不適当と認められる勧 誘をしてはならない」とする適合性の原則に関する一般的な規定を創設するこ とも考えられる。

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(2) 困惑類型の要件の拡張 消費者契約法では、消費者が困惑して契約を締結した場合の契約の取消しを定 めているが、契約を取り消すことができるのは、事業者による「不退去」又は「退 去妨害」があり、かつ、その際に消費者が事業者に対して「帰ってほしい」又は 「帰りたい」等の意思(拒絶の意思)を表示した場合に限られている(4 条 3 項)。 調査結果 ① 相談事例をみると、 ・ 事業者に「帰ってほしい」と思った又は勧誘場所から「帰りたい」と思っ たものの、口に出せないまま、契約を締結させられてしまったもの、 ・ 「電話」で何度も執拗に勧誘されたため、勧誘から逃れたくて契約を締結 してしまったもの、 ・ 不安を煽られたために動揺し、どうしていいかわからず契約を締結してし まったもの、 ・ 恋愛感情を抱かせるなど人間関係を利用して契約を迫られため、断わりき れずに契約を締結してしまったもの、 ・ 急迫した状況等に乗じて契約を迫られたため、仕方なく契約を締結してし まったものなど、 事業者が、消費者を、契約を締結せざるをえない状況に追い込んだうえで(又 はそれに乗じて)、不当に契約させているものがあった。 ② 相談員を対象とした調査では、「意思の弱い断れない人々への不当な勧誘も 多数見受けられる」、「電話を切ることができない人、何度断っても電話があ って仕方なく契約した人を救済できるようにしてほしい」、「親切を装い近づ き断りづらい状況のなかで契約したものの取消しが難しい」といった意見が寄 せられている。 ③ なお、事業者の強引又は強迫的な行為が問題となった電話勧誘販売に関する 相談件数は、2006 年度で 18,177 件となっている。 提 言 ① 悪質な事業者のなかには、消費者を威迫したり、不安を煽って動揺させたり、 恋愛感情を抱かせたりして、勧誘を断れない状況を意図的に作り上げたうえで

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(又はそれに乗じて)、強引に契約締結を迫る者も多い。この場合、消費者は 自由な意思決定を阻害され、困惑状況の中で契約を締結させられることとなる が、こうした消費者の弱みにつけ込んだ不当な勧誘が許されるべきでないこと は明らかである。特に、判断能力が低下している人の場合には、しっかりとし た意思の表示が難しくなるため、断れない状況に陥りやすいものと考えられる。 ② このような状況を踏まえれば、事業者による「消費者の私生活又は業務の平 穏を害するような言動」や「消費者との間に生じた関係又は状況を濫用するよ うな言動」といった、消費者に困惑を惹起させるような不当の行為が取消事由 となるよう、困惑類型の要件の拡張が検討されるべきである(その被害の状況 からすれば、電話勧誘等の非対面取引を含むべきである)。なお、具体的な規 定としては、相談事例等を類型化し例示を設けるなどにより、さらに要件を明 確化する必要もあると考えられる。 ③ また、ここでの問題状況は、不招請勧誘規制の問題とかなりの部分重なると 考えられる。そこで、困惑類型の要件の拡張と並んで、事業者は、消費者が望 まない勧誘をすべきではないことを明らかにするため、「事業者は、契約締結 の要請をしていない消費者に対して、訪問したり電話をかけるなどして契約締 結の勧誘をしてはならない」とする不招請勧誘規制の一般的な規定を創設する ことも考えられる。 (注1) 消費者契約法の制定準備をした第 16 次国民生活審議会消費者政策部会の報告(「消 費者契約法(仮称)の制定に向けて」1999 年 1 月)では、消費者の私生活又は業務........... の平穏を害するような言動............を、「『困惑』の概念ないし手段を明確化・具体化したも の」と捉えていた。また、貸金業法においては、貸金業者等は、貸付の取立てにあた って、人を威迫し又は人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動.......................により、そ の者を困惑させてはならないとしている(21 条 1 項)。 (注2) 不招請勧誘は消費者が望まない勧誘であり、通常の勧誘方法ではなかなか契約には 至らない。そのため、事業者は強引、執拗、または不意打ち的な行為を行うことで消 費者を「困惑」させて契約を締結させようとすることが多くなる。 (注3) 国民生活センターでは、2006 年 8 月~9 月に、政令指定都市等に居住する既婚女性 を対象として、訪問販売と電話勧誘(不招請勧誘)に関する調査を行っている(国民 生活センター「第 37 回国民生活動向調査」2007 年 3 月)。その調査結果によれば、 ・ この 1 年間に勧誘を受けた経験のある人は、訪問販売は 77.3%、電話勧誘は 89.7%、 ・ 勧誘に対してどう感じているかとの質問に対し「来てほしくない」又は「かけて ほしくない」と答えた人は、訪問販売は 92.7%、電話勧誘は 91.4%、 ・ 「契約しなければよかった」と答えた人は、訪問販売は 53.5%、電話勧誘は 50.0%。

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3 紛争解決過程においても消費者・事業者間の格差是正が必要 消費者と事業者との間の情報や交渉力の格差は、契約締結過程においてだけでな く、その後に紛争が生じた場合の解決過程においても大きい。 消費者契約にかかわる紛争を解決するための事実関係の整理においては、当該契 約に関して様々な情報を持つ事業者からの情報提供が不可欠であるし、また交渉力 においても格段の差がある。消費者が、消費者契約法による契約の取消しや契約条 項の無効を主張する場合、原則として消費者側で事業者による不当な行為の事実や 契約条項の不当性等を立証する必要があるが、事業者が、自らが持つ情報を一切提 供することなく、消費者側に一方的に立証を押しつけるなどの不誠実な対応を行え ば、紛争を適切に解決することは難しくなる。 調査結果 ① 相談事例をみると、 ・ 事業者固有の情報に関する事項(商品やサービスの効果が事実かどうか等) を消費者側で立証しなければならなかったもの、 ・ 消費者・事業者双方に十分な証拠が残っておらず、言った言わないの水掛 け論となったもの、 ・ 事業者側に形式上の証拠(消費者が押印した確認書等)があったため、消 費者側からの主張が難しくなったもの、 ・ 事業者が事実関係の整理に協力せず、一方的に消費者側に立証を強要した ものなど、 紛争の解決過程で問題が生じたため、適切な解決が困難となったものが多数あ った。 ② 相談員を対象とした調査では、事業者による広告の表示内容(商品やサービ スの効果といった事業者固有の情報)が事実かどうか疑わしいとの相談を受け た際に、当該事実関係に関して事業者から何らかの資料を提示されたことがあ るか、尋ねた。 (図2) <1> 広告の表示内容が事実かどうか疑わしいとの相談を受けた場合に、当該広 告の表示内容に関して「事業者から何らかの資料を提示されたことがある」 相談員は 24.7%にとどまる。

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さらに、「事実であることを裏づける資料を提示されたことがある」相談 員は、わずか 2.1%にすぎない。 <2> 「資料を求めたことはあるが提示されたことはない」相談員は 30.7%。 <3> 「求めたことも提示されたこともない」相談員は 24.3%。 <4> その他、「言った言わないで事業者が逃げようとする」、「4 条関連で事 業者と交渉しても立証ができない」、「特定商取引法 6 条の 2 のような合理 的根拠を示す資料の提出を事業者に求めることを望む」といった意見が寄せ られている。 図2 広告の表示内容に関する資料を事業者から提示されたことがあるか 24.7 30.7 24.3 15.7 2.6 1.9 0% 50% 100% 事業者から何らかの資料を提示されたことがある 求めたことはあるが提示されたことはない 求めたことも提示されたこともない そのような相談を受けたことがない その他 無回答 提 言 (1) 事業者固有の情報に関する資料提出義務の導入 ① 調査結果からは、自らが情報を持つ事項に関して事実関係が争われている 場合であっても、その事実関係を明らかにするような努力を怠っている事業 者が多数存在することが明らかになった。 ② このような状況を踏まえれば、立証責任を一方的に事業者側に転換するこ とは困難であるとしても、消費者契約にかかわる情報の偏在性を考慮して、 立証責任に関する消費者の過度な負担を軽減する方法が検討されるべきで ある。 ③ 特に、事業者が告げた、商品やサービスの性能・効果・利益などの「重要 事項」(4 条 4 項)について、その真実性が争われる場合には、当該事項は事 業者固有の情報であるから、事業者側で当該事項が真実であることを裏づけ る根拠を有していると考えるのが妥当である。したがって、このような場合

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には、事業者に対し、当該事項の裏づけとなる合理的な根拠を示す資料の提 出義務を課し、当該資料の提出がない又は根拠に合理性がない場合には、消 費者側の主張を真実と認めることができる、とすることが考えられる。 ④ また、消費者が支払う違約金等を過大に設定する条項(9 条 1 号)における 「平均的な損害の額」の立証については、昨年出された最高裁判決(最判平 成 18 年 11 月 27 日民集 60 巻 9 号 3437 頁)において、事実上の推定が働く 余地があるとしても、基本的には消費者側が証明責任を負うものと解すべき とされた。しかし、違約金等の設定方法はまさしく事業者固有の情報である から、③の場合と同様に、事業者に対し、違約金等の設定方法が合理的であ ることの根拠を示す資料の提出義務を課すことが考えられる。 ⑤ さらに、消費者の利益を一方的に害する条項(10 条)が争われる場合につい ても、当該条項の内容は事業者側で検討し決定したものであり、その必要性 や内容の合理性に関する情報は事業者側にあると考えられる。したがって、 このような場合にも、事業者に対し、当該条項の内容が合理的であること等 の根拠を示す資料の提出義務を課すことが考えられる。 (注1) 不当景品類及び不当表示防止法においては、公正取引委員会は、事業者による商 品・サービスの品質・規格等に関する表示が不当な表示か否かを判断するために必 要があると認めるときは、事業者に対し当該表示の裏づけとなる合理的な根拠を示 す資料の提出を求めることができ、当該資料の提出がない場合には、排除命令の適 用に関して当該表示は不当な表示とみなすとしている(4 条 2 項)。また、特定商 取引法にも同様の規定がある(6 条の 2)。 (2) 紛争解決に向けた事業者の努力義務の導入 ① 消費者契約にかかわる紛争においては、事業者の勧誘時の発言や態様など、 勧誘状況に関する事実関係が争われる場合が多く(その場合、言った言わな いの水掛け論になることも多い)、こうした場合の立証責任まで一律に事業 者側に負わせることは困難である。 ② しかし、現実には、勧誘状況に関する情報についても事業者側により多く の情報があると考えられるし、また、紛争解決に向けた話し合いのなかでは、 事業者は自らに優位なように交渉を導くことも容易であるといえる。 ③ さらに、事業者のなかには立証責任を盾に言い逃れをしようとする者も多 く、このような不誠実な対応が行われれば、紛争を適切に解決することは極

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めて難しくなる。現に、消費生活センターによりあっせんが行われた事例を みると、本来は、消費者契約法等の法令にもとづき救済されるべきと考えら れるものであっても、事業者の不誠実な対応が原因となりあっせん不調とな ったものが多く見受けられる。 ④ こうした状況を踏まえれば、少なくとも、事業者は、立証責任の所在にか かわらず、消費者との間に生じた紛争を解決するための努力を行うべきであ り、特に紛争解決過程において不誠実な対応をとる事業者が多く存在するこ とを考慮すれば、消費者契約法において、事業者に対し紛争解決に向けた努 力を求める一般的な規定を創設することが検討されるべきである。その場合、 具体的な規定としては、消費者基本法において事業者の責務として苦情の適 切な処理が規定された(5 条 1 項 4 号)ことを具体化し、事業者は、消費者と の間に生じた消費者契約にかかわる紛争を解決するために、適切に対応する よう努めなければならない、とすることが考えられる。 (注2) 消費者基本法では、事業者の責務として、「消費者との間に生じた苦情を適切か つ迅速に処理するために必要な体制の整備等に努め、当該苦情を適切に処理するこ と」(5 条 1 項 4 号) を定めている。 (注3) なお、消費生活センターによるあっせんは、訴訟とは異なり、消費者・事業者間 で自主的な解決が行われるように助言や調整等を行うものである。そのため、両者 が誠意を尽くして議論してもなお合意に至らない場合には、あっせん等は困難とな る(その場合、訴訟により解決が図られることとなる)。また、消費生活センター によるあっせんには、手続き的に強制力はないので、いかに説得に努力しても、全 く話し合いに応じない事業者(法律違反を意に介さない事業者)に対しては十分な 効果を発揮することが難しくなる。 要望書提出先 : 内閣府国民生活局消費者企画課

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「消費者契約法に関する研究会」委員 座 長 後藤 巻則 早稲田大学大学院法務研究科教授 委 員 小塚荘一郎 上智大学法科大学院教授 村 千鶴子 東京経済大学現代法学部教授・弁護士 山本 和彦 一橋大学大学院法学研究科教授 山口由紀子 相模女子大学学芸学部人間社会学科准教授 吉松 惠子 国民生活センター相談調査部 主任相談員 事務局 林 大介 国民生活センター相談調査部調査室 調査研究員 報告書の構成 第Ⅰ章 消費者契約法の問題点と課題 後藤巻則 早稲田大学大学院法務研究科教授 第Ⅱ章 消費者契約法の評価と消費生活相談 村千鶴子 東京経済大学現代法学部教授・弁護士 第Ⅲ章 消費者契約にかかわる相談事例の分析 林 大介 国民生活センター相談調査部調査室 調査研究員 第Ⅳ章 消費者契約法の活用状況等に関する調査 林 大介 第Ⅴ章 消費者契約法に関する提言 ☆ 担 当 : 国民生活センター相談調査部調査室 ☆ 報告書 : 204 頁 1,000 円(本体 953 円) ☆ 申込先 : 書店で「全官報扱い」と指定の上、申し込む。 最寄りの政府刊行物サービスセンター又は官報販売所に申し込む。 <title>消費生活相談の視点からみた消費者契約法のあり方</title>

参照

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