(1)椙山女学園大学生活科学部管理栄養学科
臨床栄養学研究室
メタボリックシンドローム予防メニュー開発
-地産地消の取り組みによる
東海3県で生産される食材の利用-
平成26年度東海地域食料自給率向上研究会
(2)目次
• 本研究の背景と目的
• メタボリックシンドローム
• 食料自給率
• 地産地消
• 今回開発したメニュー
(3)背景
• 戦後、日本人の食事が欧米化したことにより
生活習慣病が増加し、脳卒中や心疾患など、
動脈硬化性疾患の危険因子となるメタボリッ
クシンドローム(内臓脂肪症候群)への関心
が高まっている。
• 食生活の欧米化により、自給率の低い畜産
物や油脂の消費が拡大したことは、日本の食
料自給率低下という問題の原因ともなってい
る。
(4)目的
• 愛知・岐阜・三重の東海
3県で多く生産される
食材を中心に使用した、バランスのよい食事
メニューの開発を行うことにより、メタボリック
シンドロームの予防と食料自給率向上を目指
す。
(5)メタボリックシンドローム
内臓脂肪の蓄積に加え、高血圧、耐糖能障害、
脂質代謝異常などを併せ持った状態
メタボリックシンドローム
とは?
(6)メタボリックシンドロームの診断基準
男性 85cm以上 女性 90cm以上
(男女ともに、腹部
CT検査の内臓脂肪面積が100cm²以上に相当)
上記に加えて、下記の
2つ以上の項目があてはまるとメタボリックシンドロームと診断される。
中性脂肪
150mg/dL以上
かつ/または
HDLコレステロール 40mg/dL未満
最高(収縮期)血圧
130mmHg以上
かつ/または
最低(拡張期)血圧
85mmHg以上
空腹時血糖
110mg/dL以上
脂質異常
高血圧
高血糖
腹囲
(7)現状
• 男性
51.8
%
(
2人に1人)
• 女性
18.0
%
(
5人に1人)
(平成24年 国民健康・栄養調査)
40~74歳のメタボリックシンドロームが
強く疑われる者とその予備群の割合
(8)原因
メタボリックシンドローム
過栄養 運動不足 加齢 遺伝素因
内臓脂肪の蓄積
(9)メタボリックシンドローム予防
• 適切なエネルギー量
•
1日3食規則正しく、たんぱく質・脂質・炭水化物
の比率が適正な食事
• 運動(特に有酸素運動)
メタボ予防には・・・
内臓脂肪は皮下脂肪に比べて代謝されやすい
食事や運動によって改善しやすい!
(10)メタボ予防のための食事
• 脂質や糖質の多い食事を控える。
• 野菜類を多く摂取する。
•
1日のうち3食の配分を均等にし、偏りのない
ようにする。
食事で気をつけること
予防には、野菜を多く使用した栄養バランスの
よい食事が有効!
(11)食料自給率とは
• 食料自給率とは、国内の食料消費が、国産
でどの程度賄えているかを示す指標。
• 畜産物については、国産であっても輸入した
飼料を使って生産された分は、国産には算入
していない。
(12)昭和40年以降の日本の食料自給率の推移
日本の食料自給率
減少している!
(13)食料自給率低下による問題
• 輸送に伴う
CO₂の排出量増加
• 日本の農業の衰退
• 世界的な食料価格の高騰による食料供給の
不安定化
CO2
(14)(15)自給率を上げるためには
• 旬の食べ物を選ぶ
• 地元で作られる食材を使う
• ごはんを中心に野菜を多く使った
バランスのよい食事を心がける
近年、地産地消の取り組みが注目されている
(16)地産池消
地域で生産された農林水産物をその地域で消
費する取り組み。
地産地消
とは?
食料自給率の向上
新鮮
安心
地域の活性化
流通コストの削減
メリット
(17)メニュー開発
メタボリックシンドローム予防には、野菜を多く使用
した栄養バランスの良い食事が有効。
食料自給率の高い食材は米や野菜、魚などである。
地域で生産される食材を使って、メタボリックシンド
ローム予防のメニューを考案することは、メタボリッ
クシンドローム予防だけでなく食料自給率の向上へ
つながるのではないかと考えた。
(18)メニューについて
メタボリックシンドロームの一次予防を目的とした、身体活
動レベルⅠ(軽労作)の40歳以上の男性
X=25kcal~30kcal×標準体重
PFC比: P比15~20、F比20~25、C比50~70
食塩相当量: 9g未満
食物繊維: 25g以上
コレステロール
: 300mg/日以下
対象
栄養価の基準
(19)エネルギー
摂取エネルギーの過剰は、肥満の原因となる。
メタボリックシンドロームの予防のためには適
切なエネルギー量の食事が大切であり、今回
の献立では、身体状況に応じて2通りの摂取エ
ネルギーを設定した。
X=25kcal~30kcal×標準体重((身長m)²×22)
(20)P:F:C比
脂質や糖質の多い偏った食事は、肥満の原
因となる。そのため、メタボリックシンドロームの
予防には、三大栄養素である、たんぱく質(P)・
脂質(F)・炭水化物(C)を適正なバランスとする
ことも重要である。
この献立は、三大栄養素の理想的な比率とさ
れるP :F :C バランスを目指して作成した。
P:F:C 15~20%:20~25%:50~70%
(21)塩分
食塩の多い食事は、食べ過ぎや高血圧の原
因となる。そのため、この献立では食塩相当量
を1日9g未満として作成した。
(22)食物繊維
食物繊維は、コレステロールの吸収を抑える
効果や、血糖の急激な上昇を抑えるため、メタ
ボリックシンドローム予防に効果がある。そのた
め、この献立では食物繊維が1日25g以上にな
るように作成した。
食物繊維25g以上/日
(23)コレステロール
血中のコレステロールが多いと動脈硬化の原
因となる。食事からのコレステロールを多く摂り
すぎないようにすることも脂質異常症の予防に
繋がるため、この献立では、コレステロールを
抑えた食事とした。
コレステロール300mg以下/日
(24)献立作成のポイント
☆だしを効かせる
☆酸味を利用する
☆香辛料や香味野菜を利用する
☆種実類や焼きのりなどを利用する
☆とろみをつける
塩分を控えるために
(25)献立作成のポイント
☆野菜を中心に使用した料理にする
☆こんにゃく・きのこ・海藻を取り入れる
☆玄米を取り入れる
(26)献立作成のポイント
☆脂質の少ない部位を選ぶ
☆コレステロールの多い食材を控える
☆魚や大豆製品を取り入れる
(27)献立作成のポイント
☆主食をお米にする
☆野菜類を多く使う
☆ごぼうやれんこんなど噛み応えのある食材を
使う
満腹感を出すために
(28)地域の食材
愛知・岐阜・三重の東海3県で多く生産される旬
の食材を利用してメニューを作成した。
☆主な食材
アサリ
ひじき
春キャベツ
新たまねぎ
たけのこ
アジ
トマト
冬瓜
オクラ
なす
すいか
れんこん
さといも
かぶ
きのこ
柿
牡蠣
キャベツ
ブロッコリー
ほうれん草
白菜
カリフラワー
みかん
(29)(30)(31)(32)基準とした栄養価との比較
1日の設定1600kcal
基準とした栄養価
エネルギー:
1600kcal
食塩相当量
: 9g未満
食物繊維
: 25g以上
コレステロール
: 300mg/日以下
P:F:C比 15~20%:20~25%:50~70%
1日の設定1600kcal
春のメニュー
1日分の栄養価
エネルギー:
1553kcal
食塩相当量:
8.8g
食物繊維:
25.2g
コレステロール:
278mg
P:F:C比 17.0:21.4:61.7
(33)メニューの例
◇ごはん
◇アサリと小松菜の酒蒸し
◇ごぼうの炒め煮
◇たまねぎの酢の物
◇たけのこのスープ
1食分の栄養価
エネルギー
……556kcal コレステロール
…36mg
たんぱく質
……21.2g 食物繊維
…………9.4g
脂質
………12.7g 食塩相当量
………3.3g
食料自給率
80.4%
春 1600kcal 夕食
(34)アサリの栄養
アサリに含まれる成分
アミノ酸の一種で、胆汁酸代謝に関与する。肝
機能の改善や、血圧や血糖値、コレステロール
を減少させるなど、動脈硬化の予防に効果が
ある。
貧血の予防改善に効果がある。
タウリン
ビタミンB12 鉄
(35)メニューの例
1食分の栄養価
エネルギー
……599kcal コレステロール
…40mg
たんぱく質
……26.3g 食物繊維
…………11.6g
脂質
………16.1g 食塩相当量
………2.8g
◇玄米ごはん
◇たけのこの肉巻き
◇こんにゃくの炒め煮
~梅風味~
◇小松菜のお浸し
◇いちご
食料自給率
76.8%
春 1800kcal 昼食
(36)たけのこの栄養
たけのこ含まれる成分
不溶性食物繊維は、大腸を刺激し、便通を促す
働きがあるため、便秘解消や大腸がん予防に
効果がある。
不溶性食物繊維
(37)メニューの例
食料自給率
64.2%
春 1800kcal 夕食
◇ごはん
◇春キャベツのメンチカツ
◇大根サラダ
◇ひじきの白和え
◇新たまねぎのみそ汁
◇メロンヨーグルト
1食分の栄養価
エネルギー……659kcal コレステロール…85mg
たんぱく質……25.5g 食物繊維…………6.6g
脂質………18.1g 食塩相当量………3.4g
(38)たまねぎの栄養
たまねぎに含まれる成分
血液をサラサラにし、血栓を防ぐ作用があると
される。
ポリフェノールの一種。強い抗酸化
作用をもつ。
硫化アリル
ケルセチン
(39)メニューの例
◇ごはん
◇スズキのマスタード焼き
◇モロヘイヤとオクラのお浸し
◇夏野菜のチーズ焼き
◇枝豆の冷製スープ
◇すいか
1食分の栄養価
エネルギー
……641kcal コレステロール
…64mg
たんぱく質
……31.1g 食物繊維
…………8.6g
脂質
………14.3g 食塩相当量
………3.2g
食料自給率
86.1%
夏 1600kcal 夕食
(40)オクラの栄養
オクラに含まれる成分
オクラのネバネバ成分。ムチンは粘膜を守り、
胃潰瘍や胃炎を予防する作用がある。
水溶性食物繊維。コレステロールを
下げる働きや血糖値の急激な
上昇を抑える作用がある。
ムチン
ペクチン
(41)メニューの例
食料自給率
76.1%
◇枝豆ごはん
◇アジのカレー焼き
◇いんげんのごま和え
◇オクラときのこの焼き浸し
◇夏みかん
1食分の栄養価
エネルギー
……630kcal コレステロール
…49mg
たんぱく質
……29.5g 食物繊維
…………11.7g
脂質
………16.8g 食塩相当量
………2.3g
夏 1800kcal 昼食
(42)アジの栄養
アジの成分
n-3系多価不飽和脂肪酸。コレステロールや中
性脂肪を低下させ、血栓を防ぐ作用がある。
そのため、動脈硬化や高血圧
など生活習慣病の予防に効果が
あるとされる。
EPA・DHA
(43)メニューの例
◇米粉のニョッキ
~夏野菜のトマトソースがけ~
◇セロリのサラダ
◇キャベツのコンソメスープ
1食分の栄養価
エネルギー
……655kcal コレステロール
…79mg
たんぱく質
……28.1g 食物繊維
…………10.1g
脂質
………17.2g 食塩相当量
………3.3g
食料自給率
53.8%
夏 1800kcal 夕食
(44)トマトの栄養
トマトに含まれる成分
トマトの赤色の成分。強い抗酸化性を持ち、動
脈硬化の予防に効果があるとされる。
余分なナトリウムの排出を促すため、
高血圧の予防に効果がある。
リコピン
カリウム
(45)メニューの例
食料自給率
71.0%
秋 1600kcal 朝食
◇米粉のキャベツ焼き
(おろしだれ、甘辛だれ)
◇なめこのすまし汁
1食分の栄養価
エネルギー
……378kcal コレステロール
…189mg
たんぱく質
……16.0g 食物繊維
…………5.7g
脂質
………10.0g 食塩相当量
………2.4g
(46)まいたけの栄養
まいたけの成分
免疫力を高め、がん予防に効果があるとされる
多糖類。
エネルギー代謝に欠かせない
ビタミン。皮膚や粘膜を健康に保つ。
β‐グルカン
ビタミンB₂
(47)メニューの例
◇玄米ごはん
◇鶏肉と根菜の甘辛煮
◇野菜の酢醤油和え
◇さつまいもときのこの炒め物
◇ごぼうミルクスープ
1食分の栄養価
エネルギー
……606kcal コレステロール
…59mg
たんぱく質
……26.8g 食物繊維
…………10.7g
脂質
………15.4g 食塩相当量
………3.1g
食料自給率
68.7%
秋 1600kcal 昼食
(48)れんこんの栄養
れんこんの成分
健康な肌を作るために欠かせないコラーゲンの
合成に必要なビタミン。体の酸化を防ぐ抗酸化
作用も持つ。
れんこんに含まれるビタミンCは、
でんぷんに守られているため、
加熱しても損失しにくい。
ビタミンC
(49)メニューの例
食料自給率
89.7%
◇かぶごはん
◇サバのゆず風味つけ焼き
◇里芋と切り干し大根の煮つけ
◇きのこのすまし汁
◇干し柿ヨーグルト
1食分の栄養価
エネルギー
……689kcal コレステロール
…57mg
たんぱく質
……27.9g 食物繊維
…………10.4g
脂質
………16.1g 食塩相当量
………3.1g
秋 1800kcal 夕食
(50)さといもの栄養
さといもの成分
さといものぬめり成分。水溶性食物繊維であり、
血圧降下作用、コレステロール低下作用がある。
ナトリウムの排出を促進するため、
高血圧を予防する効果がある。
ガラクタン
カリウム
(51)メニューの例
◇ごはん
◇かぶの肉みそがけ
◇キャベツの中華サラダ
◇さっぱり卵スープ
1食分の栄養価
エネルギー
……417kcal コレステロール
…86mg
たんぱく質
……16.6 g 食物繊維
…………5.2g
脂質
………10.6g 食塩相当量
………2.7g
食料自給率
62.3%
冬 1600kcal 朝食
(52)キャベツの栄養
キャベツの成分
抗酸化作用があり、体内で活性酸素を抑える
働きがある。
アミノ酸の一種。胃の粘膜を
守る作用がある。
ビタミンC
ビタミンU
(53)メニューの例
1食分の栄養価
エネルギー
……593kcal コレステロール
…24mg
たんぱく質
……25.5g 食物繊維
…………12.4g
脂質
………14.3g 食塩相当量
………3.9g
◇白玉団子の牡蠣鍋
◇たたきごぼう
食料自給率
70.3%
冬 1600kcal 夕食
(54)牡蠣の栄養
牡蠣の成分
肝機能を改善させる効果がある。
たんぱく質の合成や、血糖値を下げる
ホルモンであるインスリンの生成に
不可欠なミネラル。
タウリン
亜鉛
(55)メニューの例
◇玄米ごはん
◇ブリの照り焼き
◇ブロッコリーと
カリフラワーのしらす炒め
◇キャベツのからし和え
◇かぶのあんかけ汁
◇みかん
1食分の栄養価
エネルギー
……653kcal コレステロール
…55mg
たんぱく質
……25.7g 食物繊維
…………10.1g
脂質
………17.6g 食塩相当量
………3.2g
食料自給率
89.6%
冬 1800kcal 昼食
(56)ブロッコリーの栄養
ブロッコリーの成分
体内での脂質の酸化を防ぐ働きがある。
発がん物質を無毒化して体外に
排出する酵素を誘導する働きをもつ
ため、発がん抑制効果が期待される。
β-カロテン
スルフォラファン
(57)まとめ
地域で生産される旬の食材には、野菜や魚
介類が多く、メタボリックシンドローム予防のた
めの栄養バランスのよい食事に利用しやすい。
さらに、地域の食材を使うことは、食料自給率
の向上にもつながる。
今後もメタボリックシンドローム予防のための
食事に地域の食材を利用することを検討したい。
(58)