- 87 -
ストレス対処性飲酒者のストレスコーピングスタイルについての考察
一質問紙調査と雨中人物画法を用いて一
人間教育専攻
臨床心理士養成コース
勝 浦 達
1.問題と目的
わが国のアルコール依存症患者I詰動日してお
り,それに伴い年齢層も若年化しているといえ
る。また,国吉ら(1985)は餅酉軍機が以前の対人
関係、的な載機から「ストレス解消期待j等といっ
た個人的な観磯に変化していると述べている。
先行研究には,飲酒動機が多様になってきてい
ること,大学生等のアルコール関連問題に焦点
を当てた研究が多くあるものの,その多くは飲
酒の動機を明らかにする目的や,飲酒後に起き
ている事象に焦点を当てたものであり,特定の
餅酉動機で飲酒を行う者の特性に焦点を当て,
質問紙法と投餅去の両側面から考察する研究は
従来では見られない。以上のことから大学生や
20代 30代の「ストレス対処目的」で蜘酉を行う
者,すなわち若年のストレス対処性餅酉者の特
性を研究することは,飲酒行動以外のストレス
コーピングを提案することの一助になると考え
られるとともに,アルコール関連問題の予防に
もつながるのではなし、かと考えられる。
本研究の目的は,ストレス対処性餅霞者のス
トレスコーピングスタイルを明らかにすること
である。そのために質問紙を用いてストレス対
処性餅酉の得点が高い群と低い群に 2分し,群
聞の SCI得点,雨中人物画法の特徴出現率の比
較を行う。
2
.
方法
研究1:質問紙調査:2015年6月にX大学続
指導教員 今 回 雄 三
の修士課程に所属する大朝涜生
6
0
名(男性:32
名,女性28名,平均年齢28.7鵡に対して,一回当
たりの飲酒量を問う質問紙,飲酒動機尺度(今
回・鈴木,200ω,ラザルス式ストレスコーヒ。ング
インベントリー(以下SCI:実務教育出版有料)
を配布し回答を求めた。
研究ll:雨中人物画法:2015年6月から9月
にかけて,研究Iの質問紙調査に添付した「面接
調査へのご協力願いJについて,了承を得ること
ができた 15名を対象に行った。対象者につい
て質問紙調査のみの対象者も含めた飲酒動機尺
度の得点の平均値よりも高い得点の者を高群,
低い得点の者を低群として分析を行った。
3.結果と考察
ω
結果噴聞紙調査:調査対象者の餅酉動機尺度
何処闘の得点を平均値:+lSD以上を高群,平均
値-lSD以下を偲群として分析を行ったところ,
対矧主の得点と SCIの因子得点:E配臼鎚盟釦こ
ついて弱い正の相関(p三05)がみられた。高群
と低群のE配得点についてt検定を行ったとこ
ろ,低群よりも高群の方が
E
配得点、が有意に高
かった(七=-2.7,df=23,p三05)。
ω
考察:質問紙調査:上記の結果は吉井ら(1993)
のアルコール依存底患者は回雌句人格傾向を有
しているという結果を支持していると考えられ,
非臨床群で、あってもストレス対矧生餅酉者のコ
ーピングスタイルには固有の特徴がみられ,ス
トレス対処陸艇酉者はアルコール依存症のリス
- 88 -
クが高いことが示唆された。
(訪結果:
r
雨中人物画J:銑酉動機尺度
6
対処舶
の平均値で群分けした高群・
t
邸平において,雨中
人物画の各描画特徴の出現率をフイッシャーの
直接法を用いて分析したところ,
r
水たまり有J
についてのみ有意な差(χ2=8.182,df=1,p豆.05)
がみられ,この結果と残差を見ると
A
闘平は高群
よりも「水たまりJを描くことが多いと解釈す
ることができた。
(必考察:
r
雨中人物画J:藤掛ら(1994)の調査に
よると,
r
雨中人物画」における水たまりの出現
率は 20%を超えており,標準的な即芯と考えら
れること,
r
水たまり有り」はストレスの持続性
に関係した指様であることが述べられている。
久保ら(1992)の調査によると,r水たまりの数J
が多い者は少ない者よりも神経症傾向,心気症,
抑うつおよび偏狭の得点が高いと述べられてい
る。久保らの先行研究の結果を参考に解釈する
と,ストレス対処性餅酉を行わない対象者の方
が,神経症傾向,抑うつ的であるということにな
る。ただし出現が想定される特徴が出現しない
としづ現象について弛世set al(1974)は「雨が
描かれない」ことを挙げて,回酎句な性格,スト
レスを抑圧もしくは否認していると述べており,
雨中人物画の描画特徴において「水たまりJが描
かれないということは,ストレスの持続性を直
視せずに回避していると解釈できるのではない
かと考えられる。以上のことからストレス対処
性餅酉者はそうではない者よりも回蝉怜コー
ヒ。ングスタイノレを有していることが示唆された。
4.研究のまとめ
(1)本研究の成果:ストレス対処性樹酉を行う者
は逆鎚盟のコーピングスタイルを有しているこ
とが剥変された。大朝境生を対象とした調査に
よってこうした結果が得られたことは,ストレ
ス対矧企飲酒がアルコール関連問題化してし、な
くとも,ストレス対処性飲酒を行う者のコーヒ。
ング、スタイルにはある程度似ている部分がある
ことを示唆するものであった。
ω
コーヒ。ングスタイルのアセスメントについ
て:結果の分析の際に群分けを行ったところ,
質問紙調査は平均値:t
lSD
以上で分ける必要
があったことに対して,
r
雨中人物画」法は平均
値で群分けしても結果を得ることができた。こ
のことから,雨中人物画法は質問紙法よりもス
トレス対処世餅酉者の予備軍に対してのアセス
メントとして有効である可語性が示唆された占
しかし,描画法のみで、コーヒ。ングスタイルを特
定することは容易なことではなく,狙いとする
指標以外の描画表現特徴,その他の標準化され
た指標を基に解釈することが必要であると考え
られる。
(劫今後の課題:ストレス対処性餅障者のストレ
スコーピング、スタイル
l
こついて検討を行った。
ストレス対矧企餅酉者のストレスコーピング、ス
タイルについて,共通する特徴を示唆すること
ができたものの,筆者の認識よりも,餅酉の動機
は多様であり,ストレス解消を目的としたもの
のみではなく,多様な軍機が入り混じっている。
ストレス対処性餅酉といっても,餅酉を行う者
によってその輩出換はさまざまであることを今回
の調査では見ることがで、きなかったのではない
かと考えている。本研究の調査は非臨床群を対
象としたものであったが,臨床群と共通する結
果を得ることができた。今後はストレス対矧全
館酉がアルコール関連問題を引き起こしている
ケースに関わっていくことで本研究で示唆され
た部分について臨床的な知見を得ていくことが
必要であると考えられる。