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(甕鶴竺輔請柔晶晶)
剖検ぜる総動脈幹の臨床帳面の検討
東京女子医科大学小児科教室(主任磯田仙三郎教授) 緒 言 講 三 芳 アオ井 令 子
イ レイ コ(受付 昭和30年12月23日)
大動脈と肺動脈とは胎生初期に於ては未だ総動 脈幹と称せられる一・一一つの大』直暗にすぎす,之が正 常の発達をなす際に中隔を生じ乍ら分離しつつ互 に捻れて大動脈と肺動脈に分れるものであるが, 不明の原因に依って正常発達を遂げす総動脈幹の ままで止まり,それより分岐した血管に依って肺 血行が行われる割合がある。これ即ち総動脈幹の 遺存である。可成り稀な崎型心であって,臨床上 之に類する剖検例は本邦に於ては村田(5),富沢(6), 水野(7)の世辞の報告しか探し得なV・。本症と思わ れるものは適例遭遇しているが,臨床上の診断は 果して誤りないとは断言し難いので,剖検に依っ て確認された一例について生前の所見及び検査成 績を検討することは臨床診断の上に有意義である と考えて次の症例を述べるものである。 症 例 患ig ;井○雅○,13才2ヵ月,男児。昭和29年3月 22日入院,同年6月24日手術施行,同年6月25日死 亡Q 家族歴:両親健在,同胞4名の中の第2子である。 思事の在胎中母親は副耳しなかった。 既径歴:満期正常分娩で生下時体重800匁,乳児期 は母乳栄養で生後3カ月迄は普通に生育し,他の子供 と変った処はなかった。4ヵ月の時気管麦炎に罹り, 其の後発育が遅れて来た様に思:われたと言う。8ヵ月 にして歯芽繭出を見た。2才頃からチアノーゼに気付 き,4才になって居坐って動き,5才にして歩き始め たが少し歩いてもチアノーゼが増強し常に背中を丸め て小さくなって居た。一昨年(11才)初めて心臓病の疑 を置かれた。現在は少し歩いてもチアノーゼが強く, 階段の昇降は勿論何かに掴まらなければ出来ない状態 である。精神発育も遅れていて,小学一年生程度しか ないと母親は言う。昭和29年3月22日入院して心臓の 諸検査を芋デう事哲ニノよつた○ 臨床所見と諸検査成績 身長120.6 cm(標準値133.3 crn) 体重 20.1kg( 〃 30。O kg) 胸囲 60.5cm( 〃 65.0 cm) 計測の結果は以上の通りで身体発育が遅滞して いる。殊に体重が少い,耳介が小さい,脈搏は左 右共に整調だけれど小である。ifi/圧は上肢に於て右124∼11emgHg,左130∼50mgHg。呼吸は少
しの異動によって頻数となる。チアノーゼは顕著 にして,殊に口唇,耳介滑滑端に著しく,頬にも 亦認められる。鼓婬指は軽度に存し,爪も円く膨 隆す。胸廓は正常。肺には異常なし。胸部の静脈 拡張が目立って多い。 心臓は胸骨左側下部に於て心動を触れるが振蕩 は触れなb。胸骨左右の第H肋間腔に於て,第H 音は共に冗進す。左側第∬肋聞腔では第1音が分 裂している。心雑音は全く聴取出来ない時が多く, 稀に胸骨右側第丑及び第皿早る時には第]y肋間腔 に渦巻様の弱V・雑音を聴く時もあった。然も辛じ て聴き得る程度のもので今迄のファn一氏四三症 とは異った雑音である。打診上野拡大を思わせた。 X線所見:正面撮影では心臓が横臥し肺動脈弓 著しく陥凹し大動脈の上行部が右に偏し弓部が左 に偏する状を見る。肺門像は殆ど消:失す。右回H: 弓梢汝突出す(写真参照)。第1及び第2斜位では 特別の点は見えないσ 心電図p II 2.OmV>11.2mV>皿0.7mV
Q I O=: 翌 0 〈皿1.5mV
R 1 4.OmV>K 6.OmV>III 14.OmV
S I 18.OmV>H7.OmV>皿2.OmV
T 1 1.5mV 〉 ll O.5mV >M 1.OmV
PQ
I O.12” ■ 0.13” 皿0.15” QRs 1・o.ostt ll o.07r, m・ o.ost,ST 1 O.42’i U 023” M・ O.3t, 即ち右肥大型を呈してV・る。 血液像24/皿 R 540×104 Hg 110%(ザーリー) 色素係数1.01
Ht 45%
(赤血球の大きさ) 7 ”一8.5pa 86% 6 .v 7 pa 7e% 8.5”一9.5pa 7% 」血液型 AB型。W氏反応
(白血球分布) W 7eoON『諜
E 4%
B O%
L31%{宗16
M 3%
Pl O% 陰性,ツベルクリン反応 陰性。 肝機能検査:ヘバトサルファレ■ン試験20分 5%,40分0%。 赤沈速度:30分0,1時間0.5,2時間1.0,中 等値0.5。 血液酸素含有:量 動脈血(股動脈一難) 13.3vo1%(59.6%) 静脈1血(正中静脈1血) 65vo1%(27.3%) 基礎代謝:1431Ca1(02消費量2.141CO2発 生量1.421) 循環血液量:3670cc ギゆ ヤ ザ ヘ ワかゆ・∴難燃纏轍
,艶∵・バ鷲轡師・ 評・. 賢響鞭昏睡
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り∵慰融か{ きナや お ラ :轟∵疑 ぎ ザ ンサ きなふ !欝靭ぴ堪 弓 豊贈誌 ㍉ウ^ } ヒ 俺 卍雰遡 気掴’冷 血液循環時間臆:一肺
胆}一纏
(エーテル法) (スルファミン法) 第1回 Z.tl 18”第2回 18” 17”
第3回 17” 17’t (標準値) 7±2” 11.8±2tt 騰肺と臆耳循環が共に遅く2回に亘って殆ど同 時間で第1回だけ臆耳より寧ろ搏肺が遅かった。 脳瀦 謡目測贈 ㌔二胃㍉ ,燐ゾ }v 辞 層♂画 .三三、 セまやぴやぜ ぴヰ ・乱職1,鑑 ㌔婁 ボ ・ か夷㍉毛や 頓 苧 此〃 晦懸・ ぬやンぜや ゑぐほ ノごド ら べ鐸織続弟ド ゆ をサいサ ド㌦鷲ド 。、鐸 軸 象副 博て感吟!
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時制’想磯・
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う隆ξ㌦ ’ ・ウi 心臓カテーテル法:心内各部の02量,圧及び 圧曲線をまとめて示すと図の如くで右房上部と下 部,右回及肺動脈幹部と思われる部所のOz量と 内圧を測定した(成績に就ては考察の部で述べる) 吃 … { 雪綴傭
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・ 躍45 一血管心臓造影法:朝食を牛乳とパンとし昼食は 与えす沃度反応試験異常なきを以て午後股静脈を 局麻にて露出し全麻なしにピラセトン30cc(体:重 20kg)を注入し1秒間隔で撮影した。その所見は 写真で示す如く最初から終り迄造影剤の肺野像が 極めて少く,肺動脈及び肺動脈枝と思われる像は なく,大動脈像のみが最初から太く現われてv・る。 又最:初から終り迄左右心室の区別が判然せす,最 初から左心室の一部に達した感がある。この所見 に依って心室中隔欠損と肺動脈の欠損乃至狭窄を 想像し,大動脈の形態から大動脈右側転位あるも のと老えた。従って此像からはファロー氏離職症 を思わざるを得なかった。 蟷 (アンギオカ7レジオグラフィー) 1 ,:触詩ド 甥も冨’・ 縛e 蕪1無 難鵠嬉毅駕器曽。
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臨床診断=症状及び諸種所見が以上の如くで聴 診上に疑念はあったが,その他の点からファーロ ー氏四徴症であろうと結論し手術を依頼する象に した。然し開胸の結果肺動脈は如何に探しても見 当らす,太い大動脈幹と思われるもののみであっ た。不幸にして翌日死亡したので心臓の剖検を行 った6 剖検所見: 1 肺動脈幹は全然痕跡すらもなく,太v・巨大な雌のみで,その太さ贈根部の直径42㎜で
左右両心室の闇に跨り三つの半月弁を有す。弁口 の附近から冠動脈が排出し,更にそれより先から 皿 rv醤
v 無名動脈,左総頸動脈,猶之に続V・て左右の肺動 脈枝,それに次で左鎖骨下動脈が分出している。 ”2 心室中隔は膜様部の開存あり,左右両心室 壁の厚さは11mmで同じである。 3 心房壁は完成しているが卵円孔の開存があ る。. 4 三尖弁,僧帽弁には異常がなV・。 難 、灘鍵 /’・ョ
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灘,、 ・鞭 左側より観察の図 ゾンデは右室から総動脈幹に 通ずR,膜様部中隔の開存あり正常の肺動脈欠損す 上騰曙鼠 ρ labd 脚酬露
t房一 丁大碧祇・一 纐及上r気 ミ ・ 、左房 ▼ ノ ’ 1 ↓ 刀羅
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マ左4買弩下灘邸し 考 察 1 剖検所見に就て 総動脈幹は大動脈と肺動脈とに分離する以前の 単一なる大血管幹でこの総動脈幹遺存には二種の 状態があると言わる。即ち真性動脈幹True・trun・ cus arteriosusと偽性動脈幹Pseudo・truncus arteriosusとに区別されている。前者に於ては 肺動脈が直接総動脈幹から出発して居り,後者に 三三
饗
総動脈幹切開の図 1無名動脈孔 1左総頸動脈孔 皿左肺動脈孔 1V右肺動脈孔 V左鎖骨下動脈孔唱47 後方より観た図 ゾンデは卵円孔愚存を示す 於ては発生学的に前者と異って肺動脈の痕跡はあ っても心室とも大動脈とも連結せす」血液を肺に運 ばなV・。従って本曇は肺動脈は痕跡もみられす, 総動脈幹から肺動脈が出発しているので真性型で ある。真性総動脈幹の弁はTaussigやSchnitker の記載によれば2,3又は4弁と言われるが本例に 於ては3つの半月弁を有してv・た。又ボタロー氏 管も通常存在しなV・と言われるが本例もその通り であった。心房中隔欠損は無V・ものと有るものと あり,心室中隔は通常上部で欠損するが時には全 く発達せす一心室をなすものもあると言うが上例 では卵円孔も開存し心室中隔も欠損していた。 2 チアノーゼは早期より現われ且強度とされ ている。本例ではチアノーゼに気付V・たのは2才 頃で歩行開始から強くなりそれ以前には気付かな かったと言う。然し入院当時は既に強度で範囲も 広V・。爪は丸いが鼓温品は軽度であった。 3 血液は赤血球品々多く,血色素量も高く110 %,ヘマトクリット値も高い点はチアノーゼを有 する他の異常心の揚合と同様で,動静脈血の酸素 量低く,その差は59.6−27.3=32.3%であった。 4 呼吸困難存在し,殊に少しの歩行にも息苦 しい事は,一般に記載され,ている通りである。’ 5 心雑音及び振顛は認められるものと無V・も のとの両者がある様であるが,本例では稀に弱V・ 雑音を聴いた時もあったが,全く聴取出来なV・時 が多かったので,此点は鑑別診断上重要視すべき 点と考える。振頭は勿論何処にも触れなかった。 第H心音が胸骨左右の第H肋間腔で充離してV・た ので,後から纏えれば総動脈幹の第H音充進であ ったに違v・なv・。 6 X線所見は心臓の横臥を呈し,肺動脈弓は 全く欠けてV・た。総動脈幹は大動脈よりも太V・像 を現わす事を知り,又左心室弓がファロー二四二 二の場合よりも更に著しく高く膨隆して四角心室 像を呈した事は本症に特有な型で,この事はTau・ ssig其他に記載されている通りである。肺野肺門 像の欠損がみられた事は肺動脈の欠損と左右肺動 脈枝の細小を明瞭に示してV・た。 7 心電図は右肥大型で脚ブロックは示さな い0 8 心臓カテーテル検査では臨床診断は困難で あった。正中静脈血の酸素量よりも右房酸素量が 多く,次第に減少しつつ心室に達し,最後の先端 は圧の低V・事と酸素量から考えて先端は肺動脈に 進行した様に思われた。然し剖検後から推定する と正中静脈血の酸素量が6.5vol%(27.3%)なる に,右房上部の酸素量が13。3vo1%(59.6%)に著 しく増加してV・たのは心房中隔欠損の為左房から 流入していた事を示すと考えられ,更に開室の酸 素量が減少し之が為総動脈幹の酸素量はたとえ左 室からの酸素で補っても右房程に達しなかったの であろうと思われる。右筆から更に進入した先端 は肺動脈と思われたのであるが,然らナして総動 脈幹であったのである。 . 9 .血管心臓造影法検査,股静脈から注入した 造影剤は前述した如く直に守勢,響町,左室の一 部,大動脈に殆ど同時に達し,肺動脈像は終始出 現せナ,肺門肺野には殆ど造影剤が達しなかった 点はファn ・一二四徴症の時と同じであった。然し 異る処は大動脈と思われるもの(剖検後から思え ば総動脈幹)が頗る太く,且つ右方に曲り弓部が 更に左に傾いてV・た事でファロー氏四徴症との鑑 別に注意すべき点と考える。 結 語 剖検上で卵円孔二丁と心室中隔膜様部欠損とを 併有する真性総動脈幹遺存たる事を確められた13 年2カ月の男児に就て,臨床所見及び諸検査成績 に就ての検査を述べた。此患児は2才頃から初め てチアノーゼを認め,歩行開始も遅れ,次第にチ アノーゼ増強し,動く事も殆ど出来す,脊を丸め て坐っているのみであった。斯様にチアノーゼ著 明なるも心雑音は殆ど聴取出来す,X線所見では 特有な横臥心で四角心室型を示し,肺動脈弓欠損 し,肺門肺野二二亦少く,血管心臓造影法,カテ ーテル法,血液循環時間,心電図,血液像等では
ファロー氏四三症との鑑別が困難であった。その 鑑別点は心雑音の殆ど聴取出来ない点であった。 然し剖検後の臨床検討によれば,心雑音の殆ど聴 取し得ない事とX線像とには特徴ある事を認め, 之が本症の診断と鑑別診断に重要なるもの.と老え る。 稿を終るに臨み,終始御懇篤なる御指導三校閥を賜 った磯田教授に深謝の意を表し,外科教室諸賢並に小 児科医局諸姉の御援助に対して厚く謝意を表す。 .主要文献
1) Schnitker : Congenital anomalies oC the
he.art and great vesse!s, New York, Oxfotd university press. 1952.
2) Taussig;Congenital malformation$’of the
heart.
3) Jordan and Kindred : Textbook of Embr一一 yoJogy, D. Appleton−Cantry Co., th ed by pe− rmission of the Publisher.
4)呉 :児科雑誌,205号,P63(大正6年)
5)村田: 〃 241号,P79(大正9年)
6)富沢: 〃 262号,P248(大正11年) 7)水野: 〃...43巻,P1752(昭和12年)