原 著 〔書女愁茜57鉾57豊栄。雛甥〕
点頭てんかんに対するACTH−Z少量投与法の検討
一短期治療効果について一
東京女子医科大学 小児科学教室(主任:福山幸夫教授) イマイズミ トモイチ ァワヤ ユタカ フクヤマ ユキオ今泉 友一・粟屋 豊・福山 幸夫
(受付 昭和62年3月30日)ASearch for a Minimal E従ective Dose of ACTH against Infantile Spasms −An Evaluation of Short Term Ejfects一
Tomoichi IMAIZUMI, Yutaka AWAYA and Yukio FUKUYAMA
Department of Pediatrics(Director:Prof. Yukio FUKUYAMA),Tokyo Women’s Medical College
The effect of short−term therapy with low−dose ACTH−Z on seizures and EEG abnormalities and changes in the serum cortisol level were studied in 18 patients with infantile spasms (including two idiopathic cases)by dividing the灯1 at random according to dose of ACTH−Z into two groups:group I(0.025mg/kg)and gourp II(0.0125mg/kg). Since the two idiopathic cases
were both placed in group I, they were not included in the comparison of the effects of short−term
therapy between groups I and II. The following results were obtaind:(1)The therapy was markedly effective in 62.5%of 8 cases in group I(excluding the idiopathic cases)and in 50%of
8cases in group II, showing no statistically signi丘cant difference between the groups(p>0.1).(2) The epileptiform electric discharges disappeared in 25%of patients in both groups I and II,(3)
The maximum serum level of cortisol was not necessarily correlated with the clinical effects.
はじめに 点頭てんかんは,難治性年齢依存性てんかん性 脳症の一つであるが,その基礎的成因は不明であ る.ACTH−Z療法は,1958年Sorelら1)の報告以 来,今なお第一選択剤であるが,CT上の脳収縮2> が全例に認められ,時に硬膜下水腫の合併3)を来 すことがあり,また発達途上の脳に対する成熟抑 制4)も指摘されるなど,副作用はかなり深刻なも のである.そこで副作用を最少に止めながら最高 の効果を発揮するための少量投与法を再検討する 必要がある. 今回我々は,少量ACTH−Z療法の血中コーチ ゾール値動態と,臨床および脳波に対する効果を, 1日投与量の異なる2群間で比較した. 対 象 1984年4月より1986年10月までに東京女子医大 小児科に入院した点頭てんかん児のうち,初回 ACTH−Z療法を施行した!8例(男12例,女6例) で,年齢分布は4ヵ月から1歳9ヵ月であった. 方 法 性,発症年齢,治療前のDQ,推定原因,発症後 ACTH−Z投与までのtreatment l3gなど他の条 件を考慮することなく,全く無作為に,2つの異 なる治療方式のいずれかに,患児を割り振りした. 2種の治療方式とは,ACTH−Zの1日投与量が, 0.025mg/kgの1群と,0.0125mg/kgのII群とか ら成る.症例数は1群10例,II群8例であった. ACTH−Z筋注は従来の福山方式5)(漸減延べ8週 間)に従ったが,一部の例では筋注は発作の消失
およびてんかん波の消失まで連日とした.そこで 症例により多少注射本数が異なる.ホルモン療法 中は,血算,CRP,血沈,血液生化学,尿検査,血 圧・体重測定,眼科受診を定期的に行い,副作用
の出現には充分な注意を払った.脳波検査は
ACTH−Z隔日筋注終了時までは週2回,その後は 週1回記録した.頭部CTはホルモン療法開始前, 終了時,終了2ヵ月後の3回検査した.血中コー チゾール値は早期空腹時に採血し,ACTH−Zは午 前10時頃に筋注した.臨床効果は,1クール終了 時点において判定し,発作完全消失を著効,発作 が1/3以下に減少した場合を有効,発作が2/3以下 に減少した場合をやや有効,発作が不変または増 悪を無効と4段階に分類した.脳波に対する効果 は1クール終了直後の脳波で検討した.統計処理 は,T検定およびカイ2乗検定を使用した. 結 果 1.ACTH−Z投与量別の症例の比較(表1) 性,発症年齢,treatment lag,治療前のDQに 統計的有意差を認めなかったが,II群は女児が1 例のみであり,発症年齢は1群が,おそい傾向を 示し,治療前のDQはII群で低い傾向にあったが これは特発例2例(11%)がともに1群であった 表1 ACTH−Z投与量別の症例の比較 1群(0.025mg/kg) II 群i0.0125mg/kg) 症例数 10 8* 8 性差(男:女) 5:5① 5:3② 7:1③ 発症年齢 @ (月) 8.6±4.8④ 8.1±5.1⑤ 5.9±3.3⑥ Treatment Lag @ (月) 2.3±2.2⑦ 2.8±2.5⑧ 2.5±1.6⑨ 治療前のDQ 60±25⑲ 49±17⑪ 43±25⑫ 原 因 チ発性 ヌ候性 @結節性硬化症 @出生前因子 @周生期異常 @出生後因子 @不 明 221221 010214 *特発例を除外した場合 ①or②VS③④or⑤VS⑥⑦or⑧VS⑨,⑩or⑪ VS⑫有意差なし(p>0.1) ためと思われる.特発例を除外した1群とII群を 比較すると,発症年齢のみ1群がII群に比しおそ い傾向にあったが,treatment lag,発症前のDQ には全く差がなかった.2.1クール終了時点でのACTH・Z投与量別
の臨床効果と脳波に対する効果(表2,表3) 臨床効果は,1群では著効7/10(70%),特発例 を除外すると5/8(62.5%)であった.一方II群で は著効4/8(50%)であった.特発例を除外した1 群とII群では,著効率に統計的有意差を認めな かった(κ2検定,p>0.1).有効例は1群には認め られなかったが,II群に2例認めた.著効十有効 は,特発例を除外した1群で5/8(62.5%),II二 二2 ACTH−Z投与量別の臨床効果と脳波に対す る効果(1) (1クール終了時点) ACTH・Zの1日置 1 群O.0251ng/kg II 群f.0125mg/kg 症 例 数 10 8* 8(特発例0) 著効 7(70%) 5(62.5%)① 4(50%)② 臨床効果 有効 0(0%) 0(0%) 2(25%) やや有効 2(20%) 2(25%) 2(25%) 無効 1(1G%) 1(12.5%) 0(0%) てんかん波消失 3(30%) 2(25%) 2(25%) 脳波に ホする 果 局在性棘波(+) 6〔60%) 5(62.5%) 5(62.5%) びまん性 剌剩g複合(+) 1(30%) 1(12.5%) 1(12.5%) 発作消失までに要した 﨎煤i著効例のみ) 5,0±2,4 4.4±2,7③ 5.8±2.5④ *特発例を除外した場合 ①VS②,③VS④有意日なし(p>0.1) 表3 ACTH−Z投与量別の臨床効果と脳 波に対する効果(2) (1クール終了時点) 臨床効果 ]波に @対する効果 著効 有効 無効 てんかん波消失nO
②@o 焦点性棘波(+) ⑤●● 宦 ○ 宦o●● びまん性毛徐波(+) ● ○ ⑳;ACTH−Z O,025mg/kg O;ACTH−Z O.0125mg/kgでは6/8(75%)であり,II群では高い傾向を示し たが,統計的有意差を認めなかった(p>0.1). 脳波に対する効果は,発症時全例ヒプスアリス ミアを示したが,治療により全例ヒプスアリスミ アは消失した.てんかん波の消失例は1群3/10 (30%),特発例を除外すると2/8(25%)で,1}群 でも2/8(25%)であった. 発作消失までに要した日数(著効例のみ)は, 特発例を除外した1群では4.4±2。7日,II群では 5.8±2.5日で,統計的有意差を認めなかった(T 検定,p>0.1). 脳波に対する効果と臨床効果との関係について は,1群ではてんかん波消失例は全例著効,局在 性棘波(十)例は著効3例,無効3例,びまん性 棘徐波複合(+)例は著効であった.一方II群で は,てんかん波消失例は1群と同様に全例著効, 局在性棘波(+)例は著効2例,有効1例,無効 2例,びまん性棘波複合(+)例は有効であった. 3.著効例のACTH・Z療法後の再発(表4) 今回は点頭てんかんの再発とその他の発作の出
現をまとめて再発とした.経過観察期間は
ACTH−Z療法終了後2ヵ月から2年4ヵ月であ
る. ng/mI 2000 ユ500 1000 500一
正君羊 O.025mg/kg ng/m1 2000 ユ500 1000 500 表4 ACTH−Z療法後の再発(著効例) ACTH−Zの1日量 1 群 O.025mg/kg II 群 O.0125mg/kg 著 効 7 5* 4 再発{甥識律 1⊥・・43%・ 1}・…%・ 1}・・25%・ 再発までの期間(月) 1.8±0.24 1.75±0.35 1.2 *特発例を除外した場合 ・経過観察期間は2ヵ月から2年4ヵ月である. ・てんかん波消失例は,局在性棘波あるいはびまん性棘徐 波複合の出現を認めなかった. 再発は両群をあわせると4/11(36.4%)であっ た.1群では3/7(43%),特発例を除外すると2/5 (40%)であり,点頭てんかんの再発2例,シリー ズ形成のない強直発作の出現1例であった.点頭 てんかんの再発をみた2例における1クール終了 時点での脳波に対する効果は,局在性棘波(+) が1例,びまん性棘徐波複合(+)が1例であっ た.一方II群では局在性女波(+)の1例がシリー ズ形成のない強直発作を続発した.再発までの期 間は全例2ヵ月以内であった. 4.ACTH・Z投与量別の血中コーチゾール値の 推移(図1) 全例がACTH−Zに反応し,血中コーチゾール II群 0.0ユ25mg/kg 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 days 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 days 図1 投与量別の血中コーチゾール値(ng/ml)の推移n9/m彦 2000 10GO 工群 0,025mg/kg 響
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・L_」’NS
ng/m2 2000 1000 1 群 0,0125mg/kg ●:』…
卜∫S 無 有 著 無 有 著 効 効 効 効 効 効 図2 臨床効果と最高血中コーチゾール値(Max SC) 値は上昇したが,ピークの時期はさまざまであっ た.両群での推移の比較は,より少量投与のII群 の方が上昇が低い傾向にあった.さらに打盤の最 高血中コーチゾール値(以後Max SC)を比較す ると,1群1,551±453ng/ml, II群867±299ng/ml で2群間に統計的有意差を認めた(T検定,p〈 0.01). 5.臨床効果とMax SC(図2) 歯群をあわせたMax SCは520∼2,500ng/ml と幅広く分散していた.1群では著効群1,639± 420ng/ml,著効以外群1,377±357ng/mlで,統計 的有意差を認めなかった(p>0.1).またII群でも 著効群769±181ng/ml,著効以外群953±339ng/ ml’で,統計的有意差を認めなかった(p>0.1). 考 察 点頭てんかんに対するACTH−Z療法が短期間 の効果(点頭てんかん発作の消失および脳波の改 善)に極めて有効であることは異論のないところ である. しかし,ACTH−Z療法によるCT上の脳収縮は ACTH−Z投与量の多いものほど強い6)7)と言われ ており,また大部分は可逆性であるが,一部に回 復の遅い症例8)も報告されている.さらに硬膜下 水腫や水頭症をきたした症例3)7)の報告もある. ACTH−Zの投与量は,各国,各施設でさまざま であるが,ACTH−Zの投与量をできるだけ少量に 保ち,従来の福山方式(1歳未満0.25mg/日,1歳 以上0.5mg/日)と同じ臨床効果を維持するための 少量投与量を決めることはは重要なことである. 我々は以前,福山方式の投与量での点頭てんか んに対する発作消失率と0.025mg/kg,ないし 0.0125mg/kgの最少有効量投与法での発作消失 率とを比較し,同等の効果を示したことを報告し ている6). 最近は0.025mg/kgより少ない投与量でも十分 有効であるとする報告9)10)が散見される.今回我々 は症例を無作為に2群に割り振りしたにもかかわ らず,特発例が2例とも0.025mg/kg群に属した ため,激怒間の比較を特発例を除外して検討した. 1クール終了時点での発作消失率は,特発例を除 外した0.025mg/kg群62.5%,0,0125mg/kg群 50%,てんかん波消失率は特発例を除外した0.025 mg/kg群,0.0125mg/kg群とも25%であり,短期 の効果に統計的有意差を認めなかった.著効例の 再発率については,特発例を除外した0.025mg/ kg群が高い傾向にあったが,2群に統計的有意差 存認めなかった. 次に,血中コーチゾール動態と臨床効果の検討 より,Max SCが1,760ng/mlと高値をとりなが ら無効にとどまった症例があった一方,520ng/ml でも著効であった症例もあり,血中コーチゾール 濃度が必ずしも臨床効果と一致しなかった. 最後に,ACTH−Zの少量投与量を決定するため には,さらに多数例で検討する必要があり,また 今後,長期予後に対する効果も検討しなければな らない. 結 語 点頭てんかんのACTH−Z投与量については, 0.025mg/kg群と,0.0125mg/kg群では臨床効 果,脳波に対する短期効果に統計的有意差がな かった. なお稿を終るにあたり,御校閲いただいた福山幸夫 教授に深謝いたします. 本論文の要旨は昭和61年11月第20回日本てんかん 学会において発表した. 文 献1)Sorel I、, Dusancy・Bauloye A:Apropos de 21
spectraculaire par l’ACTH. Acta Neurol Belg
.58:130−141, 1958
2)Satoh J, Takeshige H, Hara H et al: Brain shrinkage and subdural effusion associated with ACTH administration. Brain Dev 4: !3−20, 1982 3)渡辺一功,原紀美子,袴田 享ほか:点頭てんか んに対するACTH療法の再評価一ACTH療法 によるCT上の変化を中心に一. ACTH療法中に 硬膜下血腫をきたした症例を中心に.脳と発達 13:227−232, 1981
4)Izumi T, Shishikura K, Fukuyama Y:Sup−
pression of 2ノ,3’・cyclic nucleotide 3’・phosphohy−
drolase activity in suckling rat brain by ACTH, Brain Dev 8:500−504,1986
5)福山幸夫:点頭てんかんの診断基準および治療指 針の私案.小児科臨床 29:164−168,1976 6)粟屋豊:難治性てんかんに対するACTH療法 の再検討一少量投与法を中心に「小児科の進歩4, 小児科学年鑑(!984−85)」(前川喜平,今村栄一 編),pp148−152,診断と治療社,東京(1984) 7)伊藤正利,奥野武彦,高尾龍雄ほか:点頭てんか んにおけるACTH投与量の検討一CT所見発症 および脳波異常に対する関連について.日児誌 87 :162−168, 1983
8)Okuno T, lto M, Konishi Y et al:Cerebral
atrophy following ACTH therapy. J Comput
Assist Tomogr 4:20−23,1980
9)Hashimoto K, Tamamoto A, Ozaki N et a1: Astudy of ACTH therapy of infantile spasms. 2nd report concerning synthetic ACTH. Brain
Dev 6:197,1984
10)Ichiba N, Yamatogi Y, Ohtahara S:Reap− praisal of the ACTH treatment for the age− dependent epileptic encephalopathy, Brain Dev