<論文>企業の競争環境監査論
著者
滝野 隆永
著者別名
Takino Takanaga
雑誌名
経営論集
巻
1
ページ
1-19
発行年
1975-06-30
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00005920/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja企業 の競争環境監査論
滝 野 隆 永
序 L 市 場の定義づけ2. 競 争企業 の実績 との差 異分 析 (1) 競争企業並 びに業 界実 績と の差 異分析 (2) 製品の種類y 用途, 販売 地 域,並 びに 流通 チ ャンネル に関 する差 異分析 (3) 顧客層別 の業 績 に関 する差 異分析3. 競 争企業 の戦略計画 と の対 比4. 競 争企業 の戦略 に関 する再検討 と戦略 的 計画設定 のため の機 構 の明確化5. ま とめ あ とがき 1 序 企業戦略は全般的な市場競争環境と有機的な関連性を有し てお り,かかる つかまえ どころ のない競争環境につい てあらゆる角度から理解を深めてゆく ためには, ダ イナミックなアプpi ーチが必要 である。 ところで,企業 が直面 せざるを得ない環境との相関関係について議論するためには,次の諸点を明 らかにし てお く必要がある。 L すべての企業は殆んど例外なく,全 般的な環境の管理に力を注ぎなが ら経営成果を向上させることによって, 利益 極大化の目的を達成出来るチ ャ ンスを有し てい る。 2. 経営改善 のための努力は不完全な情報,行為 の選択,チ ャV スおよび 他企業 との相互 依存関係が存在するが故に複雑であ る凪 かかる条件は決し て克服出来ない性質のものではない。 3. かかる複雑な条件を克服するためには,広汎な範囲に亙る適切な戦略2 計画を設定することが先決問題である。4. かかる戦略を展開するためには,企業環境を監査する必要があ り,こ の為には次に示 す5 つ のステ ップからなる準備体制を整えなけ ればならない。 5. かかる企業 環境に関する監査は長期に亙ってその会社の性格, 目的お よび戦略に影響を与えるとかもおれる比較的広範囲に亙る政治的,社会的, 経済的,お よび観念的その他の諸勢力を評価することが必要 になるので, モ の範囲は今後共益 々拡大してゆくであろ う。 以上 の論拠に基づい て, キ ャノンは次の如く5 つのステップからなる市場 競争環境 の監査手続に関して具体的に議論を展開している。 市場競争環境の監査手順 とそ の重要なポイント 第1 ステップ「市場を定義づけ よ」 L 顧客の便益 性とい う観点からみた企業目的に関する一覧 表の作成 2. 製品の範囲 3. 当初の戦略 と新たに選択し ようとし ている戦略のそれぞれについ て必 要な規模,成長率お よび成熟段階に関する対比 圭 成功のための必要条件 5. 上記の1 ∼4 の諸点に関する各競争企業との相違点 氏 当該企業 として採用すべき市場定 義の明確化 第2 ステップ「 競争企業 と対比し て,その業績の差異を明確にせ よ」 1. 所属業界 の業績と当社の業 績とを評価し比較せ よ 2. 製品 の種類, 販売 のしかた,販売地域および販売経路に関する相違点 を明らかに せ よ 3. 顧客層に関する相違点を明らかにせよ 第3 ステップ「 競争企業 の戦略計画との相違点を明らかにせ よ」 1. 市場開発戦略 2. 製品開発戦略3. 財務ならびに管理戦略 とその重点 第4 ステップ「各 競争企業 の戦略を洗い直せ」 1. 主要な競争企業お よび, または,全 く別のタイプの企業 の混合戦略を 洗い直せ 2. 自社 と競争企業 との戦略 とを比較せよ
企業の競争環境監査論 3 第5 ス テ ップ 「戦略的 計 画 を設 定 す るため の機構を 明確 に せ よ」 戦略 の規模 な らびに 複雑 性 とい う観点 か らみて, 妥当な戦 略 であ ると か も お れる時 に は, 1. 各 計画要 素 の内容 を 明 ら か にし, そ の主 副 の関 係を 明示 せ よ 2. 製 品種類 別 に分割 さ れた販 売 部門 や販売先 の業 種別 に分割 さ れた 販売 部門 の各所 属長 等 に対 し, 計 画 を達 炭 するた め の情報提 供を 得 るた め に 組織的 な割 当を せ よ 1 市場の定義づけ 第1 ス テ ップ 「 市場を 定 義づけ よ」 会社 の対象 市 場を 明確 に定 義づけ るた め には, 前記 の1 ∼5 の各 ポ イン ト を 考慮 に入 れなけ れ ばな ら ない。 こ の5 要素 につい て, 慎重 に検討 を 下し, 評 価すれ ば, 市場 の範 囲 な らび に そ の重点 につ いて, 会 社自身 の定 義づけ が 果し て適 切 であ るか ど うか とい う問 題 を解 決 するた め の糸口を与 え て く れる に ちがい ない。 また, かか る定 義 の改 訂 なら び に強 化 のチ ャV ス は常 に与 え ら れ てい る と い う確信を もっ て も よい だろ う。 すなわ ち, そ の第1 は, 市 場 範 囲 の拡 大 を めざす こ とであ り, そ の第2 は 市 場密度 の深化を ぱ か る こ とであ り, 第3 は市 場へ の適 用を 推 進す る こ とで あ るとキ ャノン は主 張し, 第1 の市 場 範囲拡 大 の例 とし ては ク ライス ラ ー社 の例をあ げ てい る。 同 社 の主 力 事業 は自動車 製 造業 であ るが, 同 社 は これ を 「 輸送力 の創造 」 と「 長期 に 亙 り, 顧客 が満足 する輸 送 サ ービ ス の販売 」 を めざす事業 であ ると概 念 化し た。 次に, 同 社 はレジ ャ ー用 の輸送 に 奉 仕す る ために, ボ ート事業 に目を つけ , 更 に, ボ ート, 発動 機, ボ ー ト牽 引車, キ ャン プ用 具。 自動車を 代 表 品種 と す る更 に広 汎 な範囲 に亙 る完全 な リ クリ エ ーシ3 V 'シス テ ム の市 場を 自 社 の対象 とす る 市場 とし て定 義づけ る に至っ た との べてい る。 第2 の市 場密 度 の深 化を はかっ だ 例 とし て キ ャノンは クラー ク装 備 会 社 の 例をあげ てい る。 同 社 は設 立 後37 年 間 ぱ 専 ら, ト ラ ック, バス, ト ラ クタ ー 用 の心棒 とト ラソ ス ・ ミッシa ン の製 造 に専念し た。 そ の後, 最 も 周期変 動 の傾向 の強い 若干 の産業 (特 に建 設 業 )向け の利益 採算 性の 極め て高い 資 本
4 財をその対象市場 として選択し今日に至ってい る。 すなわち,同社の製品系列は当初の系列 より右拡大され, フ ォーク・ リフ ト用ト ラック41%, 建設機械23%, トラック牽引車11%, 冷凍食品用陳列棚7 %を新たに追加するようになった。 また,これらの製 品系列 の大部分は, 比較的狭い範囲に限定されてい るが, クラーク社固有の極めて卓越した製造 面におけ るノーハ ウにより支えられている。す なわち, 運転用 の機械装感 心棒,動力切 り換え用のトランス・ ミッション, トルク・ コンバーター,そ の他,殆 んど無制限 の範囲に亙って適用できる仕事を遂行するために必要な 諸条件につい て益 々深い技術的な理解力を確立するに至っ た。 当初手がけた 材 料処理用 の製品領域においては,その販売面における景気変動に伴う落も 込 みを平準化し てくれるに足 る極めて多岐に亙る市場を対象にし ているため に全く爆発的に異常な成長を遂げっっ ある。 この結果, 同社は極めて卓越し てし るが,狭い範囲における特殊な技術を駆使することに より, 健全な成果 を達成 することが出来たとのべている。 第3 の市場への適用を推進した例として, キャノンはカ ーボ ランダム社O 例をあげている。すなわち,同社は自社の対象とす る市場 の定 義を当初手が けた研磨剤市場 の定義から研磨用車輪 より金属のさびを落ナトータル・シス テ ムに至るまでその市場の定義を拡張したとのべてい る。 また, かかる市場の拡大,深化,適用ないし現状維持の如何を問わず,年 に少 くとも1 回はかかる市場概念に関する課題を徹底的に追求する必要かお り,かかる努力を払えば払 うほど,経営者はその視野を広げ ることが出来る と共に, 激しい競争的条件すなわち市場浸食ないし陳 腐化に よる脅威に対し ても警戒を怠 らない ようになるだろ うと主張している点に注 目すべきである。 ま仁 もし, 会社がマーケティング・ リサ ーチに関し て,しっか りした基礎 を有し てい れば,これに対する答がたとえ会社に対して非常に大きな影響を 与える可能性があって 乱 そ の技術は次に例示する如 く,ほ んの少数 の簡単 な問題を含めるだけ で足 りると述べ,次の質問例を列挙し ている。 1. 我 々は如何なる市場をその対象とし ていると考えてい るか? その市 場の大 きさは如何? 今後の成長率はいくらと予想されるか ? 2. 我 々の下し た以上の市場に関する定 義について異議を 唱える競争企業 や顧客はい ないか? 彼等の主張に従えば,我 々の対象市場はどのよう
企業の競争環境監査論 5 な市 場 に な り, 雲だ, 市 場 の大 き さは如 何 なる規 模 にな るか ? 雲仙 我 々 の主 張 と何 故 くい違 いを 生じ た のか ? 3. 何人 か市 場 の範囲 ないし 規 模 につ い て誤 解 し てい る可能 性 ぱない か ? 屯 以 上 の諸 問題 に照し て, 成 功を 収 める た めに は, どの よ うな点 が要請 さ れ るか ? 我 々 の市 場 の地 位を 最 高 水準 に まで向 上 させ るために は, どの よ うな一連 の必要 条 件を 満 た す必 要 があ るか ? 5. 今 後, 我 々は如 何 なる市 場を追 求 す べ き であ る か ? キャ ノンは以 上 の質 問 事項 はす べて 重要 で あ る が, 特 にこ の うち4 番 目の 質 問 事項 が こ の問題 の中心的 な役割を 果 し てい る との べ てい る。 また, か か る市 場概 念 の再定 義とそ の必要 条 件を 徹 底的 に追 求し て成功 を 収 めた 事 例 とし て/ あ る米 国 の自 動式 機 械 の販売 会社 の例を 挙げ てい る。 この 会社 で は, あ る好 まし くない 傾向 を 解 消 す べ き要 請を受 け て, 新社長 が 就任し て か ら, 多方 面 に亙 る積 極的 な多 角 化計 画を 採 用 するに至 った。 す な わち, 新 社 長け先 ず 第一に, 会 社 は如 何 な る市 場を 追 求す べ きであ るか と い う質 問か らス タ ー1ヽし, 次に, 具 体的 に市 場を 何 処 に求 め るべ きか とい う 問 題を 解決 す る ために市 浜調査 を はじ め た。 かくし て得 られた今 まで よ りも一 層的 確 な市 場 の再定 義は次 の如 くであっ た。「 飲 食物 を 機械使 用並 びに手 仕 事 で, レジ ャー用 とし て魅力的 であ る と 伺 時に, 商 慣 習並 びに製 造工業 の立場 か ら みて も魅力 のあ る市 場 へ供給す る こ と。」 この結 果, 仲買 業務 とか コップ製 造業 務 の よ うに 採 算 も悪 く, また, 他 の 業 務 と相 関 性を もたず, また, 危険 性 のあ る若干 の業 務 を廃 止し, 専 ら, 直 売 業 務, 自 ら の手 仕事 に よる配給業 務お よび, 自動 販売 機 の製 造業 務に的を し ばっ た。 ま た,徹 底し た予 算管理 なら びに 原価 管 理 シ ステ ムを 採用し た。 更に, ヤン キ ース タジ ア ム, メト μポ リタソ オペ ラノヽウス,p ス アソゼル ズ 野球公 園 の如 く娯楽 セン タ ーに おけ る飲食 物 供給 業 務 に関 す る権 限を 得る た めの認可 を とる な ど,常 に群 集 の群 る場 所を 積 極的 に求 め る と共 に, か か る サ ービス業 務 の拡 大 と利益 採算 性 の向 上を め ざし て, 群集 が何を 最 も欲求 し , また, 必 要 とし てい るか とい う点 に関 す る調 査を 常 に怠 らなか った のが 成 功 の大 き な要 因であ る との べてい る。
6 2 競争企業の業績との差異分析 第2 ステップ「競争企業 と比較し てその業績の差異を明確に せよ」 市場調査を効果的に実施し ようとする場合に よく遭遇し がちな難点の一つ は,各社が市場において達成し九業績を分析し ようとするに際し て,各社ぱ それぞれ別個の市場を追求し てお り, また,市場開発方策 も相違してい るた めに混乱を来たす場合が多い とい う点 てある。 市場地位の面におけ る業績に関する分析はこれを次の二つの部分に分け て 考え ることが基本的であり, また, この方法が最も効果的 であ る。 すなわち ステップ2 では専ら市場の地位に関する業績上 の差異点 がどの点にあるかと い う点だけを強調し,ステ ップ3 では差異発生の理由ならびに過程の説明を 求めるために,各競争企業の計画立案,具体的なプログラムの組 み方, なら びに政策設定に関す る差 異点についてそれぞれ明らかにし,こ九を評価づけ ることにし たとキ ャノンは述べている。 かくの如く, 市場地位に関する分析を二段階に分けて調 べることに より得 られる利点は,そ の一 つとし て,業績を明らかにし ようとし てい る個々のフ アクタ ーぱたった一づのプl==・グ ラムの要素から生じ た結果 てあることが少な い ので,このように二段階に分け て分析することによって, 競争企業のマー ケテ ィング・ ミックスに関し て比較的的確な注意を払 うことが出来る ように なるとい う点 が考えられ, 第2 の利点 とし ては一般に代替的 な方法を余 り急 いで物色することを避け る傾向 があ り, この結果方 法改善 の必要 が切迫し て くると,止かを 得ずかかる代替的方策 が果して望 ましい方策であ るか否かと い う点に関し ては徹底的に探求 せずに,無暗に他社の真似をした がる傾向 が 強い。かかるあや まちを防止 するために,常に競争企業 と比較し て,その市 場競争力からみた弱点を明らかにし,常にその欠点を克服するための改善案 を物色し,その是 非について徹底的に追求出来るような態勢を整 えることが 出来るとい う点をあげ てい る。 ところで,便宜上並 びに何らかめ意味におけ る全般的 な見透しをつけるた めに市場地位に関する業 績はこれを次の三つの断面に分け て吟味し てみる必 要があるとキ ャノンは指摘し ている。 1 ) 競争企業 ならびに業界全 体の実績に関する包括的な評価 q ) 製品の種類,用途, 販売地域並びに流通経路上の差 異点に関する更 に
企業 の競争 環境 監査 論 7 詳細 な調査 -- ・ 曹・ --3 )]>X上 の諸点と顧客層の差 異点 との相関関係に関する研究1) 競争企業並びに業界実績との差異分析1 )−㈲競争企業実績との差異分析 ( 重 要 な評 価ポ イント )1.. 各 社0 支 配 する 製品並び に 市場 の 範 囲2. 重点市 場 ない し調 査中 の市 場 の範 囲3. 市 場 の限 定4. 会 社0 イメ ージ l )-(b) 業界実績 との差異分析 (重要な評価ポイント) 1 。 販売 金 額・ 数 量2. 市 場占 拠 率・順 位3. 利 益 指標 :資本 利益 率 売上 高利益 率 資本 回転 率4. 主 要な 費 用比 率 ( 特に 考慮 す べ き重要 な相違 点) ==--・-I・-- 一 各競 争 企 業に対 す る市 場の 相対的 な重要 性 一 市 場 設 計 と研究 所 設計 との 比較 革 新型 か 環 境順 応型 か 一 専門 家 志向 型か,重点 志向 型 か,全般 志向型 か ? 現在 直面 し てい る緊 急な 問 題はない か ? 潜 在的 な 競 争力 を有 す る とみ ら れる隠 さ れた 資源 ない し新 しい資 源 は存 在しない か ? ( 特 に 考慮 す べき 重要な 相違点) 特 に注 目すべ き趨 勢 傾向 並び に順 位の変 化 業 界 特有 の重要 な要 素を も合 めた利 益 並び に 費 用に 関す る比 率 数値 の相違 点 選択 し か戦 略 の利益 採算 性 現 在直面 し てい る 緊急問 題を 分析 した 結果 , そ の利 益採 算性 に 及ぼす 諸 影響 競争企業並びに所属業 界の実績との差 異分析に際し て特に考慮を払うべき 諸点は前記 のリスト の中にまとめて示されているが, このうち特にしばしば 看過されやすい のは,消費者の立場からみた各競争企業 のイメージに関する 比較評価であ り,その会社は革新的 な企業 とし て知られているか? 或いは 徹底し た専門化がその力の源泉になってい るのか? 或いは,全般的な分野 に まで手を拡げているか? また,消費者にとってはかかる会社の特色はど の程度重要性を もっているか? 以上 の諸点について十分に比較し検討すべ きであると説いている。 また,このリストにかかげられた利益採算性の比較については特殊な観点 から利益採算性に関して考察することに より,伝統的な利益分析を 補充する 役割を果すと共に,会社の選択した戦略またぱ緊急問題を解決するための戦
■8 略 から期待される予測利益 値を推定し ようとする際その手 がか りとし ても役 に立つだろ うと解説を加えてい る。 次に,製品 の種類,用途,販売地域,流通チャンネルに関する差 異分析に ついて も前述の場合と同じ くキャノンはそれぞれ重要 な評価ポイントと特に 考慮すべき重要な相違点を次の如 くリストとし てあげ ている。 2) 製品の種類,用途,販売地域,並びに流通チ申ソネルに関 する差異分析2) 一回 製品の言毎に関する差異分析 (重要な評価ポイント)1 - 製品のタイプと市場占拠率-2. 製品,政策,サービスに関する各系列別 の構成因子の分析- -3. 製品導入.の歴史5. 開発中ならびに潜在的な市場をもっ製品 2)/b ) 製品の用途に関する差異分析 1 ( 重要 な評 価 ポ イ ント) 一 各 製品 タ イプ 毎 のそ れぞ れ の用途 2. 利 用者 の 便益 -3, 導 入 の歴史 胤 使 用 者へ の援助 , す なわ ち 消費者 教育 -5. 潜 在的 な 用途 の開発 , 既 存 の 用 途 の 拡 張, 潜 在的 な 用途 の利 用,新 規 用途 の開発2) 一 白 販 売 地 域 に 関 す る 差 異 分 析 ( 重 要 な評 価 ポ イ ント )1. 市 場 範囲2. 市場 全 体へ の惨 透 度は 強い か ? ( 特 に 考 慮 す べ き 重 要 な 相 違 点) 製 品の市場 革新 的 性 格 比較 すべ 列 寺徴 と利 用者 の 便宜性 一 足飛び の成 功を 収 め,か つ 機会 を生か し て い るか ? 石橋を たたい て波 る よ うな 着 災な アプ ローチ が採 用さ れてい るか ? 顧 客獲 得力0 弾 力 性 は 存在す るか ? 製 品サ ービ スに 対 す る顧 客 の反 応はあ るか ? 各製 品毎 の市場 地 位か ら みた 相違 点 ( 特に 考慮 すべ き重 要な 相違 点) 市 場革新 の リーダ ー シップ た る性 格を もって い るか ? 具 体的 な利 用可 能性 消費者 教育に 関す る反 応 各用途 毎 の市 場地 位 か らみ た 相違点 ( 特に 考慮 す べ き重要 な 相違点) ギャップ は存 在しな い か ? 市 場 飽和 点へ の到達 度 か ら みた 相違 点
企業 四競争 環 境監三 諭 9 3 重 点 市 場 の 位 言 と 集 中 度 工 場 と競 技 場 との 地 域 配 分 とい う点 か ら み た 相 違 点 各 地 域 毎 の 丁ぼ場 途 位 とい レ 面か ら みた 相 違 点 2)−(d) 流 通 チ 十ソネル に関す る差 異分析 1. 2 よ 唾琵昌巌評 価ポ イン ト) 各チ ャ ンネ ル毎 で)市 場占 拠率 各地 域 毎 の利 用度 包 含 さ れ てい る市場 の範 ち ゅう 4. 各クラス毎,各個人毎の中堅幹部の才能 と実行力5. 製造業者に対するサービスのタイプ ( 特 に考慮 す べ き重要 な 相違点) 一 全地 域, 各 クラス毎 な らびに 市場 範ち ゅ う毎0 販売 重 点 の 相違 点 利 用 政策 上 の 相違 点( 集 約的 か ,選択 的 か, 排他的 か) 実 縫 上 の杵│違点 倉 庫貯 蔵 ,部品 生 産 ,修繕 その他 の サ ービ ス 上 の 相逮 点 市場地位にかんする業績につい て分析する際の第三 の断面たる顧客層別 の 業績に関する差異分析について, キャノンはまず, 次に示す重要な評価ポイ ントと特に考慮すべき重要な相違点を リスト・ アップしている。 3 ) 顧客層別の業績に関する差異分析 ( 見要 な評 価ポ イ ント )L 産業 別 サ イズ別 大 口取 引 先別 流 通チ ャ ンネ ル別 以 上 の 顧 客層群 に 分類2. 会 社別 製 品別 用 途別 販 売地 域別 市 場 惨透度 潜 在的 販売 力 以 上0 諸 点 に関 す る顧 客層 の差 異3. 顧 客 の信 頼度 , 継続取 引 の割 合,新I目交 替 の回 転 率.-I 顧 客増 加 率 人 数 ,新 タ イプ , 新顧 客 層 ( 特 に 考 慮 す べ き 重 要 な 相 違 点 ) 一 一a. 会 社 の 設 定 し た 得 意 先 別 セ ー ル ス ・ ミ ッ ク ス の 差 異 点b. 顧 客 層 の 拡 張 ・ 追 加c. 竪 産 性 ( 経 済的 に 引 き 合 わ な い 顧 客 層 ) に 関 す る 差 異d. 大 口 取 引 先 に 過 度 に 依 存 し て い る 程 度e. 交 叉 し た 産 泉 需 ⑤o 機 会 の 存 否 ●f. 顧 客 交 替 の 回 転 率g . 顧 客 層 別 か ら み た 顧 客 を ふ や す た め に 必 要 な 費 用h. 顧 客 層 別 か ら み た 販 売 を 成 功 さ せ る た め に 必 要 な 条 件 の 差 異
10 なお, キ ャノV は前 記 のV ス ト につい て, 特 にた とえ 顧客m 別 の区 分が 余 り大切 で ない とか もお れ る市 場 におい て 乱 少 く とも右側 の 欄 の諸 要素 の分 析は 重要 な競争 企業 に対 し て す べ て適 用す べ きであ る と注 意し て い る。 また特 に, 単一 製 品 の みを取 り扱 う企業 が顧 客層別 の市 場 構造 を 分 析す る に際し て, 最小限 度必 要不 可欠 な入手し かっ評 価 す べき情 報 のア ウト ラ イン ー ,タ 〃.i7 ゝ ,・や 之べゝ戸-卜7 i..X -. tj についx 友仄 の例? あ げ て。凪 明を 那 え 兄い る。 す なわ ち, こ の リス トを みる とABC 社 は現 在三企業 ( #1, #2, #4 ) をそ の顧客 とし てい る のに 対し て,W, X お よびY の各 競 争企 業 はABC 社 の手 の届か ない# 3 と き5 の二 企業 に対し ても積 極的に 市場 を 開 拓し てお り, また, 更 に, 潜在 的市 場 とし て,# 6, # 7, # 8 の三企 業 に対 し て市 場開 発活 動を 進行中 で あ る とい うこ とが判 る。 こ の外, 実際 に 分析し よ うとす るに際し ては, 企 業レ ベ ル の顧 客 た る各製 造 企業 側 から みた 相対的 な重 要 度 とか,製 品 の価 格 水準 か らみ た製 造 企業 側 におげ る販売量 の差 異 とい う よう な各 種 の補足 情報 が必要 に なっ て くるだ ろ う。 宜だ, 潜在的 な顧 客 であ るか否 かを識 別す るこ と もか か る市 場 構造 の分 析 に際し て 最 右重 要 な条 件 の一 つ である。 こ の場 合に資 料 とな る のは, 市場 調査を 含 む各 種 の資 料す な わ ち, セールス マン がレ ポ ートし て くれ た競 争企 業 に関 す るテス ト販売 活 動 の提案 な らびに, 市場 の将来 に関 す る調 査 資 料等 であ る。 こ の場 合, 特に 市 場 の変数 を拡 張 する方 法に関 す る調 査 に 重点を お くべ きであ る と指 摘し て い る。 顧 客 層 ( 企 業 レ ベ ル) 別 の 市 場 分 類 〔 企業 レベ ルの 顧客区 分〕 〔 需要 数 量百 分 率〕 ABC 社 A 現 在 の顧 客 μ1 #2 #?> #4 #5 B 潜 在的 顧 客 #6 #7 #8 40 %30 %15 %10 %5 % 30 %10 % 不 明 × × × × 〔 製 造 企 業 つ W 社 X 社 Y 社 Z 社 × × × × × × × × × × × × × × ×
企業の競争環境監査論 11 更に, キ ャ ノン は多 品 種か つ多 数 の得 意先を 対象 とする 会社 に おい て 乱 か かる市 場構造 の分析 が 重要 で あ る との べ, こ の場合, 各社 共完 全 に マ ッチ し た製 品 系列 な り, 顧客 層を つ か んで い るこ とは 滅多 にない ので, 地 域的 な 戦 略的 計画 の設 定は益 々 複雑 に なる。し たがっ て, 仝 競争 企業 の市 場構 造 を 明 らか にし た完 全な形 の市 場構 造 の 分析 は製品系 列や 新 顧客層 の拡 張, 販 売 方 法の変更 に関 す る機 会を 探求 し た り, 市場開 発に関 す る基 本方 針 を求 め よ うとす る際 貴重 な手 が か りを 提供 して くれる との べ, 次 の リス トを 示 し て, 説 明を加 え てい る。 ABC 社 のガ ラス繊維製品に関 する市場構造 の概要 ◎印は最重要,○印は可成り重要,o 印は少し重要 適 用 対 象 現 在 の 販 売 実 績 五 年 後の 潜 在 的 需 要 製 品 種 類 こ ら ま 出 切 来 れ て の い よ る り マ 糸 ッ か ト ガラ ス 製 の 織 物 穴 が に ラ 通 ス し 糸 で 結 ば れ た 左 も の の 糸 を 編 み 上 げ た 表 面 処 理 し た マ ッ ト ヴ 工1 ノレ 布 地 フ イ ノレ ク 1 用 媒 体 織 糸 電 気 絶 縁 体 1 現 在 の 顧 客 (100)% (100)% 1. 建 築 用 の パ イ プ と パ ネ ル2. 輸 送 設 備3. コ ン テ ナ ー, 箱 , タ ン ク4. 電 気 シ ー テ ィ ン グ5. ダ イ ス, 備 品 氏 パ イ プ ラ イ ン 包 装7. フ ィ ル タ ー 用 媒 体8. 屋 根 材9. そ の 他 10 29 10 3 − に)1213 216 n 31 12 2 5 9 n 3 16 ⑨ ⑥ ⑥ ○ ○ O ○ ◎ ○ ○ O ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ◎ n 将 来 の 潜 在的 顧 客 % (100) % (100) A 固着 シ ーテ ィングB 遊 泳プ ールC プ ラステ ィッ ク製 の棒D そ の他 少 量 少量 少 量 L O L O L O O I ○ ○ ○ ○ ○ ︱ ○ ○
12 上記 の一覧表について,キャノV は次の如く説明を加えてい る。 この一覧表は,ガラス繊維 の零細製造企業 に関する市場構造 と競争企業 の 利害関係について描写したものである。この業 界は現在唯一 の大企業たるオ ーエンズ・ コーニング・ガラス繊維会社に よって独占されてい るが,今後五 年間のうちに,市場は少くとも50%拡大するだろうと期 待されている外,技 術革新によって, 特殊製品 の製造業 者として成長してゆける機会 亀与えられ ている。 ABC 社は, この丿 に進出し た会社であ り,その販売高は業界全 体の販売高中僅か2 %しか占め ておらず,しかもその製品系列は極く一部に制限されている。 しかしながら, この会社はガ ラス繊維で表面処理した マット製品について はユニークな生産技術に恵まれている。 特にこの製品は種 々の用途を有する のみならず,多数 の主要企業0 事業場で,少しずつではあるが市場性をもっ ているものの,別 の企業 が取扱っている既に定評 のあ るこま切れ0 より糸で つくられた々 ツトがこの会社の製品をし のいでいた。こ の外,ABC 社の主 要製品は,その他二,三の特殊製品 の製造業者 と重大な競争関係に立ってい た。以上 の事由から, この会社 の戦略的計画は将来 の成 長とい う点 からみる と極端に消極的 であった。 ABC 社が計画の設定に際し,最初に採用したおきま りのステ ップは,前 記の一覧表に示される ような広汎な範囲に亙る市場調査 であった。この外, 補足的調査資料とし て,約二十五の業界に亙るこの会社並びに競争企業の各 製品に関す る用途の明細,市場規模,潜在的顧客 と固定 客,そ の長所と短所 について 七徹底的に調 べあげた。 この複雑な市場類型は,基礎的化学産業,鉄鋼, 銅, その他の全属産業, 建設資材産業 の如き,業 種において戦略的計画を設定し ようとする際に遭遇
企業の競争環恍監査論 m す る問題 と同じ タ イプ に属す る。 す な わ ち, 広 汎 な範 囲に亙 る市 場機 会 の中 か ら個 々の企業 目 標 と戦略 を 選択 す る問 題 であ る と共 に,広 汎 な製品系 列を 有 する会社 並 びに一 種類 ないし 二 種 類 程度 の高 度 に特 殊化 された 会社 との競 争 関係 に関 す る問題 のい ずれ にっ い て も同 様 に説 明を与 え て くれ ると思 うと キ ャノV は 結 んでい る。 3 競争企業の戦略計画との対比 第3 ステップ「競争企業の戦略計画 との相違点を明らかにせよ」 次に, キ ャノンは上記 の第2 ステップの一般的な線に浴つて業績差異に関 す る厳密かつ継続的な監査を実施することは市場地位に関する業績の差異が 生じた諸要因を決定するための基礎条件を確立し てくれる。 また,この監査 は各競争企業 の戦略が何か,また,具体的にどのような方法を採用している かとい う点を明確にしかつ評価出来る段 階にまで到達させてくれる。 … … …… ( 中 略 )1 こめ監査 の第2 並びに第3 ステップのいずれに対しても色々な方 法を適用J することが出来るが,各企業は, 様々な経験を重ねて,市場地位の測定, 顧 客の購買態度並びに選択に関する意思決定, 並びに競争企業 の戦略に関する 裏づけを明らかにする方法を開発し て来た。 このうち,特に有名であ り,まノ だ,各企業 で広く適用されている監査技術とし て,次の諸技術をあげること が出来 る, と指摘し ている。 1. 顧客層,製品 の種類,市場, 販売経路の各範ちゅうからみた,販売高 の趨勢分析 2. 特殊な新しい開発製品 または重点製品に関する売上高の報告書 3. フィードバック情報 のうち注文書その他 の商取引に関する契約書から 拾い集 められセールスマン の報告書に基礎をおいた正規のシステム 4. 顧客 の不平と利益,サ ービス,注文並びに修繕に関する仕事に関する 状況 の分析 5. 現在の顧客層を分類するための製品保証書の活用 6. 仲介業者ならびに直接販売業 者の分布に関する毎期の調査 7. 顧客訪問 ならびに郵便に よるアンケート調査を実施し ようとする際⑤ サンプ リン グ抽出に関する論理的 な技術
14 8. 顧客名簿 9. 経営幹部連からの諸要求 10. 各領域別の販売管理者に よる販売活動と競争状況 に関す る月 次報告書 11. 同業 者協会に対 する各力デブリ一別の販売高に関する定期的な概要報 告と同協会メン バーに対する前記レポート と統計報告 の利用 ] 。2.顧客の当社商品 と同一の各銘柄商品に対する反応 と商品市場への効果 に関する広範囲に亙る広告代理店サ ービス の利用 13. 例えばA.C. Nielsen 会社の如き会社に よる独立し た製品銘柄別の業 績測定に関するサービスの利用 址 新聞に よる各銘柄商品に関する調査資料の利用 15. 独立した コV サルタV ト,並びに調査研究機関に よるモチベイショソ とそ の他の潜在的市場に関する調査資料の利用 キャノンは上記の現行におけ るマーケティングに関す る監査技術にみられ る如く,多数かつ立派な技術 とアプ=t −チの仕方 が開発されて来たにも拘ら ず,大多数 の会社におい てはその市場地位の測定並びに評価 の方法がどれ程 進歩したかとい う点からみると疑問かお り,結局かかるマ ーケティソダに関 す る業績測定方法を改善するためのい と口は如何なる情報を如何にして蒐集 するかとい う問題 よりもむしろ,業績測定のためのシ不テ ムを どのように構 \築し,更 に,一 旦かかる情報を入手した後,これを如何に利用するかとい う 問題に帰す ると述べてい る点 は注目に値し よう。 この場合,次 の四つの問題 があるとキ ャノンは指摘し てい る。 すなわち 1. 既述 の通 り,市場構造 の定義ならびに概念それ自体につい て,ギ ャッ プが存在する ようにお もわれる, かかるギ ャップや不一致は必要な情報を入 手し ようとする際 の基礎条件となり,かつ, どのような問題を もはっき りさ せてくれる。 市場地位に関する分析がとりもなおさず,市場構造 の定義に より確立され た青写真そ のものであるとい うことは自明の理である。 2. 各種のインプットの中には必ずし も市場の地位に関し てその仝ぼ うを 明 らかにし てくれない ものも含まれている。すなわち情 報源には限界があ り, また,情報を受 取る者には様 々なラインに所属する者 もおれば,様 々なスタ ッフ・グル ープに所 属する者 もおり千差万別であ る。従って,各種 の情報源
企業の競争環境監査論 15 をあ る共 通 の評 価 ポ イン ト だけ に 焦点 をしぼ っ て, 全 体を ま とめ あげ るこ と はし ばし ば困難 で ある 場 合 が多 い。 例えば, ラ イン の管 理者 は 各 部門 の責任者 のレ ポ ートはご く 内輪 の も ので あ り,そ れ ぞ れが専有 権 を 持っ てい る と考え る傾向 があ り, かか るレ ポ ート は市場調査 部門 の人 々 の手 に渡 ら ない こと も多 い のが実 情であ る。 3. 市 場 の地 位 が如 何 な る水 準 にあ るかとい う問題 と比 較す る と, そ の市 場地 位の差 異 が生じ た 根 本要 因 を 把握し , かつ決定 す る とい う問 題 につ い て は,あ ま り十分 な注 意 が払 われ てい ない のが実 情 であ る。 か か る理 由を 究 明 す るこ とは, 過去 の実 績 と将来 にお い て必要 とか もお れ る計画 なら びに 戦 略 の設定 とを つ な ぎ合 わ せて くれ る きず なであ る と考 え られる ので, こ の よ う な ギャップ が存 在す る のは 誠に 嘆 か わし い。 4. 日常, 企 業競 争 と経済 的 危機 の圧 迫 にさ らされて い るた めに, 最 高 幹 部 の意思 決定 は 当面 の問 題 を解 決す る ために最 もふ 吝わし い す べて のイン プ ットを考 慮に入 れない ま ま行 わ れる こ とが極め て多い。 従 っ て, 既 に入 手し た インプ ットす ら十分 に 活用 され てい ない のが実 情 であ る。 キ ャノV は前 記 の如 く, 市 場 情 報入 手後 の活 用 の仕方 につ い て, 各 種 の問 凰 点,が存在す るこ とを 指 摘し た 後, か か る市場分析 を めぐ る諸問 題 の発生を 回避す るには, 評 価 す べ き実 績 フ ァクタ ーを完 全に 限定 す るこ とに よっ て は じ め て達成 出来 る と主 張し てい る。 た だし,特 殊 な局面 に関 す る問 題 につい ては, そ れぞ れ が構 成 す る 各市 場 毎 に若干 変え る必要 が 出て来 る 場合 もあ ろ う。 こ の場 合,少 くと も最 初に 手 探 りを入 れ る際 に は, 監 査プ ロ セ ス の第2 不テ ップ と第3 ス テ ップ とを 区 別し て 適用 する必 要 があ ると強調 し て い る。 4 競争企業の戦略に関する再検討と戦略的計画設定のための機構の明確化 第4 ステップ「各競争企業 の戦略を洗い直せ」 企業環境全般に亙る監査 の目的は経営者がすぐれた戦略 の採用に より企業 環境の管理を益 々有効に実施出来 るような状態にもってゆくことにある。 全く新しい市場に最初に進出す る会社を除けば,かかる企業環境 に対する 挑戦とは所詮企業 競争力 とい う点からみて相対的な効果をあげ得るか否かと い う問題にっ きる。 会社は将来 の重要な方針を設定する際,重要な競争戦略を個々別に, また,
16 市場に与える総合的な効果との関連性の下に, 出来 る限 り明確に提示する必 要 かおる。 かくの如く戦略の素描を示すことは,かか る監査 の効果 が適切であ り,か つ包括的であったかどうかを究明す るために最善 の実 行可能 なテストであ り, また, 市場調査部門 の人 々を訓練し, かつ,尻込みし ない ようにしむけ るた めに 乱 効果 があるとキ ャノンは強調している。 第5 ステップ「戦略的計画を設定するための機構を明確 にせよ」 一般に小企業におけ る総合的な戦略的計画 の設定は一人か二人 の手に よっ て行なわれることが多いが,この場合ですら, 市場規模の大小が戦略として 展開する際 の基礎的条件とし て採用されるとい うアカデ ミックな性格を帯び ている場合が常 である。 勿論事業 の性格の如何に より, 製品種類, 用途, 顧客層, 販売地域のう ちのい ずれかに重点がおかれる。また,大会社で,特に専属の市場調査スタ ッフをお く必要がある場合には,戦略的計画を設定するためにど0 ような機 構を選択するかとい う問題が重要になって来 るJ この場合戦略的計画を設定 幽齢 子 る た め の 機 構 の 性 格 如 何 に よ っ て , 製 品 系 列 別 に 分 れ た 各 販 売 部 門 の 所 属 長 や販 売 先 の業 種別 に分 れた各販 売部門(乙)所 属 長 また は マ ー ケテ ィン グに 関 す る各 監 督 者か ら マーケ テ ィン グ活 動 推 進 のた め の更 に強 力 な バ ック・ ア ッ プ を 期 待 す るこ と も可能 に なる。 こ の場 合問 題 にな るのは全 市場 の う 牡 特 に各 種 の観 点 か ら 意味深 長に検 討を 加 え るに足 る価 値があ る とお 七わ れ る対 象 市 場 に つい て は, どの よ うな 観点 か ら 分類 す る必要 があ るか ? とい うこ とであ る。 す な わち, マ ーケテ ィン グ計画 を た てる ため の対象 市 場を(1)販 売製 品別,(2)販 売業 種別,(3)販 売 地 域別 に 分類 す る会社 もあ るだろ う。 あ るい は必 要 に 応じ て更 に ㈲用途別 , ㈲ 顧客 層 別 バc) 流 通 経路別 に細 分割 す る アプ1==・−チを 採用 す る 会社 もあ るだ ろ う。 い ず れに せ よ,最 七重点 を お くべ き市 場 分割 の ため の デ ィメンジ ョン の 選択 は 特定 の戦略 と計画を 設定し ようとす るに際し て最 も好 都 合なチ ャン スを 与 え て くれ る ものであ る と共 に, 個 々別 々に測 定 でき る もので なけ れば な ら ない。 従 っ て, 家庭 用 品に関 す る製造業 者 の場 合 には, そ の計画 設 定 と業 績測定 のた め の基 準を 流 通経路別, 顧客層 別べ
企業の競争環境監査論 17 く 製品 種類 別に 分割 され た各販 売 部門 の所 属長 か らの マ ーケ テ ィン グ情 報を 利 用す る よ うに すべ きであ ろ う。 また, コン ピ ュ ータ ーの製 造業 者 は, 用 途 別, 製品 別, 販売 地域別 に そ れ ぞ れ分類 され た マ ーケテ ィン グ情 報を各 販売業 種別 に 分割 された販 売部 門 の 所 属長 から入 手す る のがいい。 また, 基幹 的 な化学工 業 の場 合 には 用 途別 , 製 品種類 別, 販売 地域別 に 分 偏 され たマ ーケテ ィング情 報を 用 途別 に 分割 さ れた各 販売 部門 の所 属長か ら 入 手し て戦 略的 計画を 設定 す べ きであ る。 以 上 の如 く分類 さ れた情報 を入 手し て 計画 設 定 のた めに活 用す る よ うに 常 に 心がけ れば, 潜在的 需要 お よび市 場 浸 透 力並 び に シ ェアの測定, 販 売 な らび に製品 計画 の設定 と開発, そ の他各 種 のマ ーケテ ィン グ活 動を 推進し ようと す る場 合,益 々 情報 の正確 性を ふや す た めに 役 に 立ち, これに よって有 力 な助 言 を得 る こと が出来 る よ うに な るに ち がい な い とキ ャノンは主 張し てい る。 5 ま と め 前述 の如くキ ャノンは,全般的 な戦略的環境 のうち,市場競争力に関する 評 価に重点をお く必要があ ると主張し, この場合とくに次の二点について留 意すべきであ ると主張し てい る。 (1) 余 り重要性 の少ないマーケティング情報 の洪水から身を守 り,市場地 位に関する競争企業 との業績 の差を明らかにし,市場競争に打ち克つために は,必要 とおもねれる具体的なプ ログラ ムの作成に焦点をしぼることに より, 市場競争力の分析業務の近代化をぱかる必要がある。 (2) もう一度市場を定 義し直し, 戦略的 計画 の明細を設定 出来 るよりに工 夫をこ らすことに よって,市場分析 のために必要な条件を確立する必要があ る。 しかしながら,かかる市場競争環境を分析し,管理してゆくことは確かに 重要なことであるにはちがいないが, かかる側面ばか りに重点をおき過ぎる と,全領域に亙る会社活動の うちの別 の要因 から出て来る諸条件を軽視せざ るを得なくなるとい う危険を 冒しやすい。例えば競争企業以 外に市場環境に 影響を与えることが多い別 の要因とし て次 のものがあるとキャノンは指摘す る。すなわち,
18 1) 例えば労 働契約 と賃金に関する政府による規整 とその他各種の制約条こ 件の影響力の増大 2 ) 公正取引委員会による反トラスト法による吸収合併に関す る調査なら びに,会社間 の垂直的統合を規整し ようとする立法に関す る議会の関心 の増大 3 ) 特許権保護法の簡略化とその緩和に関する法律の提案 4) 健康,福祉お よび安全性を考慮に入れる必要がある 例 え ば 製 薬 , 煙草,自動車会社の如き一 企業 が生産面ならびに販売面において考慮 ,を払わなけ ればならなくなった問題に対する社会的 な関心 j-) 戦争並 びに紛争 の巻きぞえ,共産圏との貿易 の進 展など, 世界情勢 の 変化に対 する世論の関心度の増大 従って,現代の企業 はそ の企業目標ならびにそ の具体的 な実施条件として 戦略を設定するに際し ては,市場の競争環境を分析す るだけに止 まらず,更 に倫理的,道義的, 博愛的な意味合いをも考慮に入 れ,企業をめ ぐる全般的ご な戦略的環境を対象 とする包括的な社会環境監査にまで発展させる必要があ るとキャノンは指摘し てい る。 お もうに,キ ャノン の競争環境監査論は,企業 が対外的な市場戦略を設定 し ようとするに当 り,その前提条件 とし て考慮に入れるべき諸条件の分析を 綿密かつ具体的に示してい る点は,これを高く評価すべきものであると考え るが, かかる対外的な市場戦略の設定は, キャノン自身 も指摘している如く, 倫理的√道義的,博愛的な意味合いを含めた企業 の社会的責任との関連性の 下において,総合的 に考察 する必要があるばかりでな く,更 に内部的戦略す なわち,研究開発その他 の体質改善ないし,経営改善戦略 との関連性の下に 考察することを要 する。 かかる内部的戦略 と外部的市場戦略との有機的な関連性, ならびに両者を 総合的に分析し,評価する際 の基本原理ならびに,業 績評価基準については 既にこの企業戦略論 の各章 において考察し て来たが, 企業 の社会的責任の遂。 行と競争市場戦略 の設定 とに関する総合的な分析 と評価 の問題については, 「企業の社会的責任 と社会監査」とい う論題の下に稿を改 めて論究するつ 心 りであ る。
企業 の競争 環境 監 査論 19 あ と が き と の 論 文 は , 経 済 経 営 論 集 めNo. 71 (1974 年1 月 号 ) か らNo. 76 号 (1975 年3 月 号 ) ま で ,6 回 に 亙 っ て 連 載 し た 企 業 戦 略 論 の 続 編 で 最 終 稿 で あ り , ( そ の6 ) に 記 載 し た 第5 章 企 業 戦 略 の 評 価 の ( そ の2 ) に 相 当 す る 論 文 で あ る こ と を お こ と わ り し て お く 。 1
)J. i homas Cannon ; Business Strategy &Policy (1968. Harcourt Brace Jovanovich ), pp. 84−102.