著者
姜 英淑
著者別名
Youngsook KANG
雑誌名
東洋大学社会学部紀要
巻
51
号
1
ページ
83-98
発行年
2014-01
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00008355/
韓国における雇用形態による企業福祉の格差問題
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KANG
はじめに
韓国における企業福祉の歴史は長くないが、労使ともにその役割について関心が高いといえよう。 韓国における企業福祉は、経済成長に重点をおいていた1980年代の福利厚生とは違い、安定した経済 成長があった1990年代からは、今までの企業福祉の役割に関する再検討が行われるようになった。 その理由の一つに、経済が成長する段階の企業福祉の役割は、労働者の長期労働の誘導や企業への 所属意識の向上を図り、生産性を高めることができ、究極的には企業の利益につながる役割があるか らである。 しかし、近年においては経済成長が遅くなり、企業福祉は企業にとって負担と考える傾向がある。 日本においても企業福祉の規模の縮小や企業福祉の賃金化などのような企業福祉の変化がみえてい る。 このような企業福祉の傾向は韓国においても同様であり、 1997年の金融危機後から多くの企業が企 業福祉規模を縮小している。そして、急速な少子・高齢化のなかで人口構造の変化による雇用形態の 変化から、企業福祉のその有り方自体についても再検討が行われている。 この研究では、以上のような韓国における企業福祉の過程の現状を検討した後、人口構成や雇用形 態の変化による企業福祉の格差について考察する。韓国は人口の少子高齢化がかなり早いスピードで 進んでいるとともに、労働形態も変化し、非正規労働者が多く増加している。企業福祉は企業が従業 員のために自発的に実施している法定外福利にあたるが、雇用形態の変化にどう適用していくべきか を考える。そして、雇用形態の変化による企業福祉の格差問題を検討し、これからの企業福祉の展望 を明らかにする。 *社会学部社会福祉学科専任講師1
.企業福祉の定義
韓国における企業福祉に関する用語を整理してみると、勤労者のための福祉制度として、「産業福 祉J
I
福利厚生J
I
職業福祉J
I
企業福祉J
I
産業社会事業J
I
職業社会事業」などの用語があるなか で、企業福祉と福利厚生は、ほほ同じ意味の用語として経営学で多く使われている10 また、韓国の労働部 (2010) では、企業福祉の概念を「企業が主体となり当該の企業内勤労者に自 発的に提供する福利厚生制度で、従業員である勤労者の仕事と人生の質の向上を通じて生産性を向上 させる目的をもっ」と定義している。 その他に、園田 (2010) は、「企業経営における労務管理の手段の一つであり、その主たる目的は 職場における生産性(労働能率)の維持・向上、人材の確保・定着、労使関係の安定などにある」と 定義している。 企業福祉の定義をまとめてみると、企業福祉とは、企業が従業員やその家族を対象に提供する自発 的・自主的なサービスであるといえよう。そして、以前から使われている「福利厚生」に代わる言葉 であるともいえる。 最近においては、「産業福祉J
I
企業内福祉J
I
職域福祉J
I
勤労者福祉J
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従業員福祉J
I
労働者福 祉」等など、企業福祉に関する新しい用語も多い。これらの用語は企業福祉を行う主体や内容によっ て名づけられているが、勤労者に関わる福祉内容が含まれている共通点をもっO 次に、企業福祉の位置づけをみると、以下の表1-1でもわかるように、社会福祉枠に含まれてお り、その中で企業が行う私的な福祉ととらわれているのが一般的である。 表1-1 社会福祉の種類 「社会保険 「公的福祉ベ L 公的サービス 社会福祉「 ,-企業福祉 」私的福祉ート自援福祉 」個人福祉 資料:呉学珠 (2004)。
失業保険、医療保険、労災保険、 雇用保険など 公的プログラム 賦課給与、福祉給与 民間団体の自発的なサービス 個人、家族、親族の物質的な恩恵2
. 韓国における企業福祉の内容
1 )企業福祉の内容 一人の勤労者を雇用することによってかかる労働費用には、現金給与、退職金、現物給与、法定福 1 金 (2007)、p.67.利費、法定外福利費、教育訓練費、募集費、その他の費用があるO このなかで、福利厚生は、法定福利と法定外福利に大きく分類されるら企業福祉は福利厚生とほ ぼ同じ意味として使われているが、企業福祉の内容は法定外福利に分類される場合が多い。 法定福利費には、一般的に健康保険料、国民年金、雇用保険料、労災保険料、障がい者雇用促進基 金負担金およびその他の法定福利費がある。そして、法定外福利費には、住居、食事、健康・保健、 文化・体育・レクレーション、自社株支援金、慶弔などが含まれ、使用者が単独で行う負担分をいう。 以下の表2-1は、企業福祉の前身ともいえる福利厚生制度が英米においてはじめられた1800年代 の企業福祉の内容と韓国における1990年代の企業福祉の内容である。韓国において企業福祉は、経済 成長が著しかった1980年代後半から制度が整えつつ1990年代に入ってから制度が動きはじめた。 表から比較できるように、職務関連では、健康診断・昼食代・被服費・寄宿舎・生活資金貸出・子 女学費資金融資など同じ項目が多くみられる。また、施設関連では、食堂・医療施設・娯楽室・シャ ワー室・図書館・託児施設などが用意されている。つまり、韓国の企業福祉制度は、英米の初期の企 業福祉内容と類似しているのがわかる。 表2-1 韓国と英米の企業福祉制度 韓国の企業福祉制度 1994年 英米の企業福祉制度 1800~1880年 職務関連 慶弔金、健康検診、昼食代、被服費、ガソリン代、 健康検診、昼食代、被服費、通勤パス、 子女学資金融資、通勤パス、社宅、寄宿舎、社報発 寄宿舎、社宅、社報発行費用、生活資金 行費用、住宅資金貸出、生活資金貸出、自社製品割 貸出、子女学資金補助、職業訓練、病気 引、当直費、金融控除制度、休暇補償… 手当、勤労者相談-施設関連 食堂、医療施設、娯楽室、休憩室、お風呂、シャ 食堂、医療施設、娯楽室、シャワー室、 ワ一室、体育施設、運動場、図書室、休養施設、託 運動場、図書室、消費組合、託児施設… 児室、消費組合3 資料:金 (2007)、p.72.[①韓国労働研究院 (1995)、pp.54-55.②Carter(1977)、pp.8 -10J 韓国は、 1960年 代 か ら 経 済 発 展 過 程 に 入 札 そ の 後1961年に勤労基準法が改訂され、退職金制度が 導入される過程を経て、 1963年から社会保障に関する法律および産業災害補償保健法などが制定され た。 表2-2は、韓国における企業福祉制度の発展過程である。 1987年以前の企業福祉は、経済発展が 優先であったために従業員のための企業福祉が重視されるよりは、企業の成長が優先で国家発展が重 視された時期である。 1987年頃からは民主化運動が起こり、それに合わせ労働運動も活発となって分配の公平性の要求な どによる福祉要求が企業福祉の拡充に大きく影響された4。そして、 1990年代に入ってからは、経済 2 大枠に法定福利と法定外福利に分類される。企業福祉としては、法定外福利を示すのが一般的ではあるが、 学者によっては法定福利を含める場合もある。 3 日本の生協のような施設。
政策が成長と福祉の調和に変わったことで、雇用保険や社会保険制度の忠実が計られ、企業福祉の内 容も拡充されてきた。 表
2-2
韓国の企業福祉の発展過程 区分│
企業福祉の変化 附 年 以 前 │。労働力の供給超過、就業機会の不足で低賃金・長期間労働の受入 。産災保険の導入など社会保険制度の部分的な実施 。使用者の恩恵主義における生活援助中心の制限的な企業福祉 1977~1986年19
労働力の高学歴化の進展と部分的な人材不足現状が発生 。医療保険導入、産災保険の摘要拡大など社会保険の拡充 。使用者の恩恵主義における生活支援制度の拡充 1987~199昨 19労働運動の活性化で民主化、分配の公正性などの要求増大 。医療、産災保険の充実化、国民年金の導入などの社会保障制度の拡充 。労使関係安定のための企業福祉の充実化 1991~1996年 19成長と福祉の調和で経済政策の基調変化 。雇用保険導入などの社会保険制度の充実化、勤労福祉の公平牲のため中小企業福祉の拡充す る支援努力を強化1
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年以降19
豊かでゆとりあるライフのための生活福祉の要求の増大 。余暇および生活の質を重視、ワーク・ライフのバランス 。社会保障制度の完備、勤労福祉の公平化対策を強化 資 料 : 金 他(
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[韓国生産性本部(
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韓国の企業福祉の実態および正立法案J)1
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年以降からは、勤労者のライフスタイルに合わせた仕事とライフとのバランスを考えた内容を 入れるなど、先進国の企業福祉内容に近づいてきている。しかし、このような内容は、一部の企業に よるもので、多くの企業はまだ生計補助に近いレベルに留まっているのが現状である。 2 )企業福祉費用 企業福祉費用の推移を表2-3
からみると、労働費用の中の賃金比率が1
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年の83.9%
から2
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1
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年 には78.7%
と5.2%
減 少 し て い る 。 そ し て 、 賃 金 他 比 率 は1
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年 に15.9%
だったが、2
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年 に は2
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.
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%
にまでになった。この賃金他比率が企業福祉費用にあたるが、この費用が1
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年以降から20%
以上になってきている。この比率の変化は賃金に対する企業福祉費用が増えたことで労働費用の全体 で賃金が占める比率が減少した事になる。 また、表2-2
にもあったように、1
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0
年代に企業福祉の拡張があったことで比率が大きくなった が、1
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年の金融危機によって現金給与が減少され、企業福祉費用も減少することになったのであ る。しかし、これは単純に企業福祉費用が減少したという意味ではなく、長期的に企業福祉費用が相 対的に減少していることを意味し、これは企業福祉の賃金への移行によるものである九 賃金外費用の増加は、1
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年の1
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年の聞で8.7%
も増加している。そして、法定福利4
金 他(
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費と法定外福利費の両方が増加している。 企業の自発的な福利である法定外福利費だけをみると、 1994年に8.4%と一番高かったが、 2010年 には4.3%までに下がった。また、 1994年の法定外福利比率は法定福利比率との差が他の年より大き いがこれらの内訳に関しては明らかになっていない。 表2-3 労働費用における企業福祉費用率 労働費用 1987年 1994年 2002年 2006年 2010年 賃金比率 83.9% 75.4% 72.6% 79.2% 78.7% 賃金他比率 15.9% 24.6% 27.4% 20.8% 21.3% 法定福利比率
*
3.7% 7.8% 6.7% 6.6% 法定外福利1比率*
8.4% 7目0% 6.1% 4.3% その他*
12.5% 12.6% 8% 10.4% 資料:菩 (2012、p9) と金 (2007、p.69)より作成。*データなし。 企業福祉費用は、経済成長とともに労働費用として増えている。 1980年代の半ばから 2000年まで に、 30人以上の企業において企業福祉費用は7.1%も増加した。この比率は、 30人以上の企業におけ る賃金総額が年平均5.4%増加した6ことに比べるとわかるように、企業福祉に関する企業の意識変化 の現れであり、さらに企業の社会的責任や企業の役割について企業が意識しはじめてきたことでもあ る。 次に、法定外福利費の項目とその内訳について考察する。表 2-4は2000年のデータで少し古い が、 1997年、金融危機以後の経済回復がみえて来た時で、企業福祉も安定した水準になってきた時期 であるため、法定外福利費の数値は現在と大きな差はないと思われる。 法定外福利費のなかで、一番大きい項目は「食事」の28.0%、次に「社内勤労福祉基金J
16.8%、 「その他の法定外福利費」が12.9%、「学費補助」が11.4%となっている。社内勤労福祉基金は、企業 が企業利益の 5 %を基金に積立てして雇用勤労者に提供する様々な福祉給与で、 1991年に新しく設置 された項目である。続けて、住居費用9.7%、保険料支援6.2%、文化・体育・娯楽など3.6%、健康 保険3.4%、勤労者休養など3.3%、自社株支援0.4%、保育支援0.2%の順になっている。 5 苓 (2012. 9)、p.lo
.
6 金 (2007)、p.72.表2-4 法定外福利費の項目 単位:千ウォン 内 容 2000年の数値 法定外福利費 168.7 (100%) 住居費用 社宅や寮、住宅購入支援 16.4 (9.7%) 健康保健 病院、医院、診療所などや健康診断などの疾病防止 5.8 (3.4%) 食事 給食施設など 47.2 (28.0%) 保育支援 託児および乳児費用など 0.4 (0.2%) 保険料支援 生命保険などの保険料の一部または全部の負担 10.4 (6.2%) 学費補助 勤労者およびその児童に支給 19.3 (11.4%) 勤労者休養等 休憩所、コンドミニアム 5.6 (3目3%) 自社株支援 自社株組合運営費、支援金額など 0.7 (0.4%) 社内勤労福祉基金 社内勤労者福祉支援 28.4 (16.8%) 文化・体育・娯楽など 図書館、企業内の体育館、娯楽室などや活動支援 6.1 (3.6%) その他の法定外福利費 通勤パス、駐車費、通勤に関する費用など 21.8 (12.9%) 資料:雇用労働部「企業体労働費用調査報告書J2000年会計年度。 そして、法定外福利費のなかで、食事費47,200ウォン、社内勤労福祉基金28,400ウォン、その他の 費用(通勤などに関する費用)2,1800ウォン、学費補助19,300ウォン、住居費用16,400ウォン、保険 料10,400ウ ォ ン 、 文 化 ・ 体 育 ・ 娯 楽 な ど6,100ウ ォ ン 、 健 康 保 険5,800ウ ォ ン 、 勤 労 者 休 養5,600ウォ ン、自社株700ウォン、保険支援400ウォンとなる。 こ の な か で 、 食 事 費 用 は 一 ヶ 月 分 の 昼 食 費 用 の 半 分 に あ た る 金 額7となり、ほとんどの勤労者が利 用できるが、他の費用については勤労者によって変わる,恩恵でもあるので、勤労者に公平に配分され ているかどうかは明確ではない。また、金額もかなり少ないので、勤労者にどれほど役にたっている かについては検討が必要である。 3)勤労者一人当たりの福利厚生費 勤労者一人当たりの企業福祉費用の変動をみると、 1987年から1997年 の10年 に か け て214,369ウォ ン増加した。これは、貨幣価値の変動もあったが、 1980年代後半から1990年 代 半 ば ま で 経 済 成 長 が 著 しかった理由もあって労働費用の増加とともに福利厚生費も増加し、企業福祉費が増えたのである。 1997年の総福利厚生費のなかで、法定外福利費が法定福利費より大きいのは、社会福祉制度と関連 して企業福祉の比率が高くなった時期である。その後、法定福利費が増えてきたのは、社会保険制度 の拡充によるものである。 7 2000年度の昼食費用は大体3,000ウォン-5,000ウォン程度である。
表2-5 勤労者一人の福利厚生費 単位:ウォン 1987 1997 2000 2005キ 2009* 総福利厚生費 37, 731 252. 100 350.900 386,200 444,200 法定福利費 10.621 98. 100 182.200 208,200 259,100 法定外福利費 27,110 154,000 168, 700 178,000 185.100 資料:朴 (2001)と労働部(韓国)
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企業体労働費用調査報告書」より作成。 *10人以上企業の調査結果3
.
韓国の雇用変化
韓国における企業福祉は、産業化が始まった1960年代初期を起点にしている。この時期に社会保険 制度はほとんどなく、 1970年代後半から企業福祉が勤労者の生計に必要不可欠とされていた。 1987年 以降からは企業福祉の量的な成長はあったが、質的にはあまり成長しなかった。 1990年代に入って企業福祉の機能に関する問題提起がなされたりして、企業福祉の役割に関する意 識は高まってきた。こういった傾向は、経済環境の変化とともに人口動向などによる社会構造の変化 による対応である。以下においては、企業福祉を取り巻く環境として人口動向による雇用環境を取り 上げ、韓国における企業福祉の現状を検討し、これからの企業福祉を展望する。 1 )人口動向による雇用変化 2006年の韓国統計庁の予測によれば、韓国の人口構成比率は、生産年齢人口の比率が減少していく とともに、高齢化が急速に進んでいくと予測されている。表3-1は早いうちに高齢化になった国と 韓国のこれからの高齢化の予測である。 表でみる韓国の高齢化は、他の固と比べると、 65歳以上の高齢人口が7 %に達した高齢化社会から 高齢人口が14%になる高齢社会までのスピードが他の国に比べると非常に早いのがわかる。高齢化社 会から高齢社会になるのに、フランスは115年、アメリカは72年、イギリスが46年、日本が24年かか るが、韓国はわずか18年で高齢社会に到達する。 また、高齢人口が21%を超える超高齢社会への到達も、他の国よりかなり短く、高齢社会になる 2018年から8年後である2026年には超高齢社会になる。フランスは、 1864年に高齢化社会になった が、超高齢社会になるのは韓国が8年も早い。表3-1 主要国家別高齢化比較 到達年度 増加所要年数 7% 14% 20% 14%→20% I (高齢化) (高齢) (超高齢) 7%→14% 日本 1970 1994 2005 24 11 フランス 1864 1979 2018 115 39 イギリス 1929 1975 2028 46 53 アメリカ 1942 2014 2032 72 18 韓国 2000 2018 2026 18 8 資料・国立社会保障・人口統計研究所、「人口統計資料集」、 2010.より作成。 日本の2011年労働経済白書による韓国と日本の高齢化率は表 3-2にあるように、 2010年に 11%、 2030年に24%、2050年に37%と予測されている。日本の高齢化率と比べてみると、 2010年に23.1%、 2030年に 31.8%、2050年に 39.6%と見込まれている。日本と比べると 2010年に 12.1%の差であるが 2030年に 7.8%、2050年に2.6%とその差が小さくなる。 表3-2 日本と韓国の高齢化予測値 2010年 2030年 2050年 日本 23.1% 31.8% 39.6% 韓国 11% 24% 37% 高齢化数値の差 12.1% 7.8% 2.6% 資料:労働経済白書・(韓国)労働部の資料より作成。 2)雇用動向 近年の韓国の雇用事情は、 1 )でみたような人口変化を反映している部分がある。たとえば、 1980 年代の中盤以降に55歳以上の中高齢者の比率が10%ほどであったが、 2000年代に入って増加し、 2011 年には20%を超えてきた80 2011 年 4 月の全体の雇用率が59.3% と前年度に比べ0.2% 上昇し、 15~64歳の雇用率が63.9% 、失 業率が3.7%となっている。そのなか、若年層9の雇用率は40.9%、失業率が7.3%と若年層の雇用状 況が非常に悪く、失業率も高い。このような雇用状況のなかに非正規雇用の増加問題が含まれている。 非正規労働者の現状を韓国統計庁〈経済活動人口調査付加調査 (2011.3) >の調査では、非正規 労働者数が、 6.522千名と全体の38.2%を占めている九また、全体の非正規勤労者を企業規模別にみ 8 南 (2012)、p.l. 9 韓国における若年層は、 15歳 ~29歳までである。 OECD による若年層は 15歳 ~24歳である。 10他の調査(労働社会)によると、非正規労働者の数は8.312千名で48.7%となっている。統計庁との結果の差 は、勤労条件が非正規労働より低い正規臨時日雇いを除外したため。
ると、 5人未満の企業が32.1%、10人未満の企業が22.1%、30人未満の企業が22.9%で、小規模企業 に76.1%の労働者が非正規労働者である(害、 2009)。韓国の非正規職は、図3-1のように2000年か ら増加し、 2004年にピークであったが、その後少しずつ減少している。 移同 糊 ⋮ 哨 規 で 呼 m w ⋮思 棚 同 一 対 一 主 ⋮ 湖 吋 手 阿 波 1 ω 滋 ト w 掛 図 仰 単位:干名・% 校側喜一者逮噂草寺蓮E 注・グラフは非正規勤労者数で、線は比率である。 資料・「国の指標J
http://www.index.go.k王rげ/egams/s坑ttωs/jsp/po飢talν/st此ts/PO一STIS一_IdxMa必in.おpμ?i凶dx一cd=2477&bbs=INDX一001&cl均as丸一 d 必iv=C&ro
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ot低K,伝匂e匂y=l.48. 0 (2013年 9 月1ωO日日;検検索) 以上の内容で韓国における雇用状況をまとめてみると、少子化・高齢化による人口変動とともに雇 用市場も変化していることが分かる。現状として、若年層の雇用問題が深刻であり、これを解消する ために国が政策11を出しているが、若年層雇用問題を解決する根本的な雇用創出がないと解決は難しい。 3) 正規労働者と非正規労働者の賃金格差 正規労働者と非正規労働者の時間給をみると、正規労働者12,160ウォン、非正規労働者が8,067 ウォンと4,093ウォンの差があり、労働者平均時間給と3,088ウォンの差がある。月給金額は、正規労 働者が2,285千ウォン、非正規労働者が1,219千ウォンと1,066千ウォンの差があり、定額給与になる と正規労働者が2,139千ウォン、非正規労働者が1,181千ウォンと958千ウォンの差がある。 ちなみに、韓国での最低生活費町立、一人世帯で約53.3万ウォン、 4人家族では143.9万ウォンと なっている。 11若年層雇用政策は、 2000年以降国では若年層の雇用創出や失業対策のための政策が打ち出されている。 12 1人増えることで、約266,000ウォン増となる。表3-3 雇用形態による給与比較 雇用形態 正常勤労時間 超過勤労時間 月給金額日 定額給与14 時間当定額給与* 勤労者全体 176.2 10.8 2.023 1.904 11.155 正規勤労者 181.6 12.9 2.285 2. 139 12. 160 非正規勤労者 159.8 4.4 1.219 1.181 8.067 派遣・嘱託勤労者 191.2 10.3 1.306 1.224 6. 797 日雇い勤労者 151.6 1.5 1.255 1.238 8.585 資料:非正規雇用センター (2011)より。*の単位はウォン。 さらに、派遣・嘱託労働者の場合は非正規労働者よりも低く、正規労働者との差が時間給で5.363 ウォン、月給で979千ウォン、定額給与で915千ウォンと月給の差は非正規労働者よりは少ないが、そ れは超過労働時聞が非正規労働者より長いから多いだけであり、実際非正規労働者より厳しい労働条 件である。 4) 転職・離職 韓国における雇用市場の特徴として、転職と離職の状況を取り上げる。韓国の労働市場では、転職 と離職のサイクルが短い。 2011年の非正規雇用労働センターによる調査15で、転職の経験がない人は 1l.3%とされ、残りの 88.7%は転職経験をもつことになる。また、 2011年の韓国の統計庁による離職(退職)の平均年齢は 53歳で、男性55歳、女性51歳となっている。高年齢層 (55-79歳)が一番長く働いた職場での勤続期 間は 19年 9ヶ月で辞める平均年齢は53歳となっているO これらの調査で、韓国は退職(離職)する平均年齢が低く、転職も多く行われていることがわか る。韓国にも定年制度はあるが、実際に退職する平均年齢は53歳となっており、定年年齢より早期の 退職となるのが一般的であるO
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企業福祉格差
企業福祉は、主に法定外福利の部分であるが、企業の規模や雇用形態によってその内容や適用範囲 などの格差が生じる。そのため、近年において問題化されているのが、企業規模聞の格差と正規・非 正規雇用聞の格差である。韓国においても、このような企業福祉の格差がみられる。 13 月給金額とは、定額給与に超過給与、賞与および期末手当などの合計額をいう。(単位:千ウォン) 14 定額給与とは、基本給や手当など。 15 2010年 3月調査、 221名のデ}ターである。回答者の平均年齢は44歳で、月平均所得は 122万ウォン。1 )企業規模間格差 表 4-1から企業規模聞の法定外福利費をみると、 l千人以上の企業が190千ウォンであるのに比 べ、 30-99人規模の企業では96千ウォンで、 94千ウォンの格差がある。これは、ほほ倍に近い数値で ある。また、法定福利費にも格差があるのがわかる。 表4-1 企業規模別労働費用 単位:千ウォン 区 分 労働費用 直接労働費用 間接労働費用 退 職 金 法定福利費 法定外福利費 全規模 2. 777 1. 741 ,1037 629 182 169 30-99人 1. 526 ,1157 369 137 117 96 1 ,000人 3. 164 1. 905 1. 259 803 199 190 資料:労働部 (2000年度会計) 2) 正規雇用と非正規雇用聞の企業福祉格差 2000年以降、韓国における正規雇用と非正規雇用の比率は50%近くなっているとともに、企業規模 が小さいほど非正規雇用の比率が高くなっていて、賃金および企業福祉の水準に深刻な格差が生じて いる160 表 4-2は、正規雇用と非正規雇用における企業福祉の提供有無に関するデータである。このデー タで分かるのは、企業福祉の項目のなかで一般的に実施されているのが食費項目で、非正規労働者の 50%以上が恩恵を受けている。 次に、慶弔費、休養、学費支援などになるが、正規労働者の20%-30%に提供されているのに対し て、非正規労働者には 10%-15%程に提供されている。さらに、所得支援にもなる、貯金奨励金支援 や従業員持ち株制度支援では、非正規労働者の 1 %程度でかなり低い。 韓国において企業福祉の主要項目とされるのが、学費補助や住宅準備支援、社内勤労福祉基金、慶 弔費支援、保育費支援となっているが、このデータからも正規雇用と非正規産用の間に格差があるこ とがわかる。 表4-2 雇用形態による企業福祉の提供状況 単位・% 区分 全体 正規労働 非正規労働 正規と非正規の格差 1.食事費用補助 提供される 69.8 75.8 54.4 21. 0 提供なし 29. 7 23.9 44.5 その他 0.5 0.3 1.1 2.学費補助 提供される 23.4 29.0 8.9 20. 1 提供なし 73.3 67.5 88. 1 その他 3.4 3.5 3.0 16 社(ハン、 2011.8)、pp.1.
3.住宅支援 提供される 16. 1 20.5 4.9 15.6 提供なし 79.4 75.2 90. 1 その他 4.4 4.3 4.9 4.社内勤労福祉 提供される 11.0 13.9 3.5 10.4 提供なし 82. 1 78.8 90. 7 その他 6.9 7.3 5.8 5.慶弔支援 提供される 32. 1 39. 7 12. 7 27.0 提供なし 64.6 57.4 83.2 その他 3.2 2.8 4. 1 6.休養費用支援 提供される 26.4 32.4 10.8 21.6 提供なし 70.8 65. 1 85.6 その他 2.8 2.5 3.6 7.保育費支援 提供される 9.6 11.7 4.2 7.5 提供なし 84. 7 82.2 91.1 その他 5. 7 6. 1 4. 7 8.貯蓄奨励金支援 提供される 2.5 3.0 1.3 1.7 提供なし 91.3 90.5 93. 1 その他 6.2 6.4 5.5 9.従業員持ち株制度支援 提供される 2.9 3. 7 0.9 2.8 提供なし 89.5 88. 1 93.0 その他 7.6 8.3 6. 1 10.個人年金保険料支援 提供される 16.8 20.5 7.4 13. 1 提供なし 78.8 75. 1 88. 1 その他 4.4 4.4 4.5 11.生命保険料支援 提供される 3.5 3.8 2.6 1.2 提供なし 91.3 90.8 92.5 その他 5.3 5.4 4.9 12.個人医療/傷害保険支援 提供される 13.6 16.4 6.5 9.9 提供なし 81.4 78.6 88.6 その他 5.0 5.0 4.8 資料:叫(ぺ、 2005.4)、pp228-229.より再編。
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まとめ
企業福祉とは、企業が従業員やその家族を対象に提供する自発的・自主的なサービスで福利厚生制 度に替わる制度ともいえる。 韓国において企業福祉は、経済発展の過程であった1960年代からはじまったといえよう。 1961年に 勤労基準法が改訂され、退職金制度が導入される過程などを経て、 1980年代後半から企業福祉制度が 整うようになった。 1987年以前の韓国の企業福祉は、経済発展が優先されていて従業員のための企業福祉は重視されて いなかったが、 1987年頃から民主化運動が起こり、それに合わせ労働運動も活発になった。この労働 運動で、分配の公平性の要求などをしたことが、福祉要求につながり、企業福祉が拡充されることに なった。 その後、 1990年代からの経済政策が「成長と福祉の調和」を図っていたことから雇用保険や社会保 険制度の忠実が進められ、企業福祉の内容もさらに拡大された。 しかし、 1997年の金融危機以降に雇用の柔軟性が認められたことにより、非正規労働者が増加し、 労働者にとって厳しい労働環境が続いている。 2000年には、正規労働者と非正規労働者の割合が半々 になるほど非正規労働者が増えている。とくに、若年層の非正規労働率が非常に高くなり重要な社会 問題になっている。 韓国における企業福祉は、ほとんどが正規労働者を対象にして実施されているが、近年、非正規労 働者が増加して、企業福祉が適用されない労働者が多いのが現状である。また、人口構成も若年層の 減少とともに高齢化が非常に速く進んで、いる。 韓国におけるこれからの企業福祉は、以上のような雇用形態の変化や人口構成の変化を反映させて 進めて行く必要がある。 そのためには、ここで取り上げた正規・非正規労働者や企業規模による格差問題を解消するための 企業福祉制度を考えなければならない。たとえば、正規労働者にだけ適用している企業福祉を非正規 労働者にも拡大適用することや人口構成や雇用形態に柔軟に対応できるような制度を考える必要があ る。その他にも、男女聞の格差や転職・離職などの雇用環境も考慮すべきである。 最後に、近年において世界的な経済低迷による「企業福祉の縮小」ゃ「企業福祉の賃金化」などの 傾向が進んでいるが、企業福祉の役割や目的を慎重に考慮しながら進めていかなければならない。[参考文献] (日本文献〉 ・川村・亀井 (1998)