Title
手術侵襲軽減策としての術前ステロイド投与が,生体反応
及び血行性転移に及ぼす影響に関する検討 1. 担癌生体にお
ける処置前ステロイド投与が手術侵襲と肺転移に及ぼす影
響について 2. 術前ステロイド投与が食道癌周術期の生体反
応に及ぼす影響について( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
竹村, 茂之
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)甲 第408号
Issue Date
1999-03-25
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/14718
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氏名 (本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 員 竹 村 茂 之(岐阜県) 博 士(医学) 甲第 408 号 平成11年 3 月 25 日
学位規則第4条第1項該当
手術俸襲軽減策としての術前ステロイド投与が,生体反応及び血行性転移
に及ぼす影響に関する検討
1.担癌生体における処置前ステロイド投与が手術侵襲と肺転移に及ぼす
影響について 2.術前ステロイド投与が食道癌周術期の生休反応に及ぼす影響について (主査)教授 佐 治 重 豊 (副査)教授 高 見 剛 教授 安 田 圭 吾 論 文 内 容 の 要 旨 近年,分子生物学的手法を用いた解析法の進歩により,様々な疾患の病態や手術侵♯をはじめとする生体反応 が,サイトカインや各種メディエータの組合せや.その量的多寡で説明可能となってきた。そして,サイトカイ ンやメディエータの制御方法として,抗サイトカイン抗体や受容体桔抗体等を用いた治療方法が検討されている が,一般臨床では過大侵襲を伴う超拡大手術時等にステロイドが術直前に投与され,その有用性が高く評価され っっある。作用機序として,過大侵執こよる炎症性サイトカインの過剰産生をステロイドがネットワークを遮断 することで制御可能との考えが推察されている。しかし,担癌生体での安易なステロイド投与は宿主免疫活性を 低下させ,残存腫瘍の増殖と転移を促進する可能性が危倶されている。そこで,申請者らはマウス実験腫瘍を用 い術直前のステロイド投与が手術侵襲と肺転移に及ぼす影響をinterleukin(IL)-6やsolubleintercellular cell adhesion molecule(sICAM)-1およびinterferon(IFN)-γの処置後変動と肺転移結節敷から検索し,その結 果を論文1にまとめた。また,三領域郭清を伴う食道癌手術症例を対象に,サイトカイン産生に及ぼす影響をIL-1β,IL6,Ⅰし8,IL-10,IL-12,tumOrneCrOSis factor(TNF)-aおよびIFN-γの術後変動と臨床経過及び合 併症発生頻度或いは宿主免疫活性低下に及ぼす影響を観察し,周術期に及ぼすステロイド投与の功罪を論文2に まとめた。 研究方法と結果 Ⅰ.実験的研究:BALB/cマウスの背部皮膚切除に熱凝固を負荷する軽度侵襲群と,これに15分間の開腹を負 荷する高度侵襲群を作製し,処置直前に1mg/bodyのメチルプレドニゾロン(MP)を投与した場合の影響を観 察した。その結果, 1)血中IL-6値は,処置後3時間目をピークとして軽度侵襲群では37.1±14.0(mean±S.D.)pg/mlまで上昇し, 高度侵襲群では567.1±223.2pg/mlと有意に増加した。しかし,MP投与により高度侵襲群でも106・9±37・6pg/ mlと有意に産生が抑制された。 2)血中sICAM-1値は軽度侵襲では処置後3,24,72時間とも著差はみられなかったが,高度侵襲群では術後24 時間目に有意に増加し,MP処置前投与でこの増加が有意に抑制された。 3)牌細胞のCon A刺激によるIFN-γ産生能は,高度侵襲群で術後3時間目に有意の増加を示したが,72時間目 には逆に有意の抑制が観察された。この場合も,処置前MP投与で術後3時間目から72時間目まではIFN-γの産 生を抑制した。一方,肺細胞のIL-10産生能ほ手術侵襲度別で著明な変動はみられなかったが,術後72時間目に はMP投与群で軽度の上昇が観察された。 4)BALB/cマウスの尾静脈よりcolon26細胞を注入移植すると,肺転移結節数は平均15.0±4.1個であったが, MPを移植直前に投与すると転移結節数は90.4±64.0個に増加した。肺転移結節数と侵襲度との関連では,軽度-35-侵襲群は非侵襲群との間に差はみられなかったが●高度侵襲群では249.3±87.7個と有意の増加を示した。しか し・高度侵襲負荷群ではMP処置直前投与により・転移結節数は98・6±86・1個と非投与群に比べ有意に減少した。 Ⅱ・臨床的研究:開胸,開腹,頚部の三領郭清を伴う食道癌手術症例を対象に,術直前ステロイド投与(S)9 例と非投与対照(C)9例につき,血清中サイトカインの変動と術後臨床経過の推移との関連を比較検討した。 その結果, 1)血中IL-6とIL-8値は術後3から6時間目に有意の高値(IL-6:2037・5±948・8pg/ml・IL-8:767・5±295.3pg/ ml,mean±S.E.)を示し,24から72時間目に術前値に回復した。 2)S群はC群に比べ術後の心拍数とカテコラミン投与量が有意に少なく,IL-6とⅠし8値が有意に低値(Ⅰし6‥296.9 ±110・1pg/ml,IL-8:100.3±39.1pg/ml)で,CRPも低値であった。 3)IL-10値はS群で術後7日目に有意の高値を示し,IL-12はC群で3から7日目に9例中5例で増加する傾向がみられ た。 4)宿主免疫抑制活性であるTcellgrowthsuppression(TGS)活性は,S群が術後6から72時間目の問で抑制さ れる傾向が観察された。 5)S群の2例で術後3日目以降に軽度のショック様症状と合併症の発生を認めた。 考察と結語 過大侵襲時の術直前ステロイド投与は,術後の炎症性サイトカインの過剰産生と接着分子過剰発現を抑制する ことにより生体反応を軽減させたが,術後3日目以降の宿主免疫活性をも抑制する可能性が示唆された。一方, 担癌生体でのステロイド投与は宿主免疫活性を有意に低下させ,残存腫瘍の増殖や転移を促進させる可能性が危 慎されているが.今回の検討でも通常程度の手術侵♯時には同様傾向が観察された。また,高度侵襲時にはサイ トカインの過剰産生と転移促進現象が観察されたが,ステロイド投与によりサイトカインの過剰産生部分が抑制 され,結果的に転移が抑制された。この機序として,サイトカインの過剰産生による接着分子の過剰発現がステ ロイド投与で抑制された結果,転移抑制に作用した可能性を推察している。 以上の結果,過大侵襲時のステロイド術直前投与は生体反応を有意に軽減でき,血行性転移の促進を抑制する 可能性が示唆されたが,軽度侵♯時には免疫活性低下による転移促進を惹起する可能性があり,担癌時には慎重 な投与が必要と考えられた。 論文審査の結果の要旨 申請者竹村茂之は高度侵襲時の炎症性サイトカイン過剰産生による生体反応を分子生物学的に検索し,担癌 生体における術直前ステロイド投与の功罪を実験的・臨床的に明らかにした。この研究結果は.周手術期におけ る新しい術前・後管理法として有用で,外科侵襲学の発展に少なからず寄与するものと認める。 [主論文公表誌] 手術侵襲軽減策としての術前ステロイド投与が,生体反応及び血行性転移に及ぼす影響に関する検討 1.担癌生体における処置前ステロイド投与が手術侵襲と肺転移に及ぼす影響について Biotherapy12:1591∼1598,1998 2.術前ステロイド投与が食道癌周術期の生体反応に及ぼす影響について 日消外会誌 32:印刷中