給餌・無給餌によるハマチ群の見かけの酸素消費量
著者
門脇 秀策, 中薗 貫幸, 加世堂 照男
雑誌名
鹿児島大学水産学部紀要=Memoirs of Faculty of
Fisheries Kagoshima University
巻
30
ページ
173-178
別言語のタイトル
Apparent Oxygen Consumption of Yellowtails
Seriora quinqueradiata on Feeding and
Non-feeding Days
pp、173∼178(1981)
給餌・無給餌によるハマチ群の見かけの酸素消費量*’
門脇秀策*2.中薗貫幸*2.加世堂照男*2
ApparentOxygenConsumptionofYellowtailsSeγjom9"j"9"emdIata
onFeedingandNon-feedingDays*’
ShusakuKADowAKI*2,TsurayukiNAKAzoNo*2andTeruoKAsEDo*2 AbStract lnordertodeterminetheoxygenbudgetsofculturedyellowtail,theirapparentoxygen consumption,AOC,wasobservedinanoutdoorconcretetank.Theresultsobtainedoffもeding andnon-企edingdaysarecompared・ AOConthe化edingdaywerecaluculatedtobe221士37m"kg・hrontheaverage;248mノノkg・ hrasanactiverate,andl80m"kg・hrasastandardrate・AOConthenon-feedingdaywas observedtobel41士24m"kg・hrontheaverage;201mノノk9.hrmaximum,and88mノノkg・hr minimum・TheAOCrateonthefbedingdaywas1.5timeshigherthanthatof、therateonthe non-fセedingday・ ItisinterestingtonotethatacircardianrhythmofAOConthefセedingdayshowedasingle modeinthedaytimeaftermeeding,buttherhythmonnon-meedingdaywasobservedtobedouble modeataroundsunriseandsunset. は じ め に 近年,ハマチやマダイなどの浅海養殖漁業の発展はきわめて著しいが,一方ではそれが自家汚染をまねく一因にもなっている(平田・田中,1978).それで著者らは,養魚に関する
技術体係づくりを目途として,これまで浅海養魚場における給餌と環境との関わりについて 検討を加えてきた(門脇・他1978a,b;1980a,b).そして養魚に伴う漁場の酸素収支の解明が飼育管理技術の向上に役立つことがわかった(平田・他1981,井上1977).
その漁場における酸素収支には,養魚自体の酸素消費もさることながら,養魚に伴う懸濁
性の残餌や排↑世物等の分解による酸素消費も考慮しなければならない.しかし浅海養魚場で は,気象や海象などの自然的要素や,生賓養魚という人為的要素がそれぞれ複雑に関連する ので,養魚場における酸素収支の仔細な解明は至難である.それで,本実験では,陸上タンクを海面生費のモデルとみなし,給餌と無給餌,あるいは
活動時と非活動時などによる養成ハマチ群の「見かけの酸素消費量_,(ApparentOxygen
*’鹿児島大学水産学部附属水産実験所業績19号(ContributionNo、19fromFish・Res・Lab.,Fac・ Fish.,KagoshimaUniv.)*2鹿児島大学水産学部附属水産実験所(FishRes、Lab.,Fac、Fish.,KagoshimaUniv.,Azuma-cho,
Izumi、gun,Kagoshima899-14Japan)174 鹿児島大学水産学部紀要第30巻(1981)
Consumption,以下AOC量とよぶ)について調べた.その結果,給餌・無給餌によるAOC
量の違いや,そのAOC量からみたハマチの日周‘性についても若干の知見が得られたので,
その概要を報告する.本文に入るに先立ち,本文の御校閲を賜わった鹿児島大学平田八郎教授に対して深謝の意
を表する.また,本実験の一部は全日本かん水養魚協会からの奨学研究費(代表者,八木庸
夫教授)によっておこなったものであり,関係各位に厚くお礼を申し上げる. F 一1
C④
E と ⑥ (B) Fig.1.Schematicdiagramsoftheculturetanksetwithanapparatusfbrcontinuousrecordsof fishmetabolismbyasingleoxygenelectrode、Thefigures(A)and(B)showacross-section andplaneviewofapparatus,respectively.A;30m3concretetank,B;inletpipe,C; outletpipe,D;inlettube,E;inletoxygenbox,F;outlettube,G;outletoxygenbox, H;oxygenelectrode,I;pipetcleaner,J;lift,K;oxygenmeterandL;recorder. L材料および方法 実験水槽は,Fig.1に示すように,水深1.6m,面積17.5,2のコンクリート製の屋外八角
水槽である.その中に供試魚として,30尾のハマチ(平均魚体重7679)を移し入れた.そ
の水槽での馴致飼育は,冷凍サバのミンチ肉を2∼3日毎に給餌しながら,16日間おこなっ
た.飼育水の注入は,水槽内での回流を促すために,水槽側面の中層から一定方向に流入させ
た.換水は1時間に0.45回の割合でおこなった.AOC量の測定は,門脇・他(1980a)の
方法によっておこなった.すなわち,注水と排水との酸素量は同一の酸素電極(水中スター ラー付YSI-57型)を用いて10分間交互に記録した. なお,AOC量は下記の式で算出した. AOC= (0,-02)・V W AOC:見かけの酸素消費量(mj/kg・hr) O,:注水の酸素量(m恥) 02:排水の酸素量(mj/Z) V:1時間当りの換水量(j/hr) W:総魚体重量(kg)実験Iは,無給餌状態におけるハマチ群のAOC量について調べた.AOC量の測定は32時
間絶食させたのちに開始した.その実験期間中の飼育水温は19.0∼19.6.Cであり,注入水
の酸素飽和量は93∼95%であった.実験11は,給餌日におけるハマチ群のAOC量について調べた.給餌は,160時間絶食状
態のハマチに,午前10時から11時のあいだ数回にわたって,残餌を招かないように観察しな
がらおこなった.AOC量の測定は給餌前6時間,給餌中1時間および給餌後22時間の合計
29時間にわたっておこなった.その間の飼育水温は18.2。∼19.2.Cであり,注入水の酸素飽
和量は94∼98%であった. 結 果 お よ び 考 察無給餌日のAOC量は,81∼201mノノkg・hrの範囲であり,その平均値は141士24mj/kg・hr
であった.また給餌日のそれは,168∼311mj/kg・hrの範囲であり,その平均値は221±
37,J/kg・hrであった.このことから,給餌日におけるハマチ群のAOC量は,無給餌日の
それに比べて約1.5倍も高いことがわかった.そのような無給餌日と給餌日とのAOC量の
差は,給餌日におけるハマチの摂餌に伴う活動代謝量の増加や,餌の消化・吸収によるハマ
チの特異動的作用,さらに排池物や残餌による飼育水の酸素消費などに起因するものと考え
られる.無給餌日(実験I)および給餌日(実験11)におけるハマチのAOC量の日周変化は,Fig.
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く,AOC量は日の出と日没の前後にそれぞれピークが現われ,そのリズムパターンは双峰
形を示した.しかも,日の出前後におけるハマチ群のAOC量は日没前後のそれに比べて約
25%高い値を示した.つぎに,給餌日のAOC量の日周変化は,Fig.2の破線部で示した.その図から,給餌直
前のハマチのAOC量は178mj/kg・hrであったが,給餌を開始すると,摂餌活動の増加に
伴い,そのAOC量は248mj/kg・hrに急上昇した.この値はハマチの摂餌に伴う活動代謝
量を示すものと考えられる.しかし,AOC量の最大値は,摂餌活動時よりもむしろ摂餌後3時間経過して出現した,
このことは,ハマチが餌を消化・吸収するのに必要とするエナジー代謝によるものではなか
ろうか.また,排糞は飽食後5時間頃に黄色便を確認したことから,餌の消化・吸収は摂
餌後4∼5時間かけておこなわれたものといえる.さらに,本実験の排糞パターンは,古川
(1966)がハマチにイカナゴのミンチ肉を給餌した例と類似していた.従って,飽食後4時
2 4 6 1 2 1 8 2 4 6 TIIvlEOFDAY Fig、2.,ユilyvariation3ofapparentoxygenconsumptionofyellowtailson企eding(experimentl) andnon-fbeding(experimentlI)days.Nov,27-28 Table1.Apparentoxygenconsumption(ml/kghr)ofyellowtailson 企edingandnon-fbedingday. Dec、2−3
間までの平均AOC量は288士18mj/kg・hrであり,そのような高い値は特異動的作用
(WARRENandDAvIs1967)に関与するものと考えられる.
また,図中の破線部で示す給餌後5∼17時間までのAOC量は218士8mj/kg・hrと比較的
安定した値を示した.この値には,ハマチの呼吸による酸素消費量に加えて,糞尿による水
中溶存酸素量の消費も含まれている.今回の実験で求めたAOC(見かけの酸素消費量)は,
養魚に伴う「飼育用水の酸素要求量」を表わしているといえよう.しかし,そのような安定
した値はハマチの平常時のAOC量も考えられるので,飼育換水率の差に伴う糞尿の水槽
内滞留等に関する吟味も必要と思われる.実験11の結果から給餌日の標準代謝量は,摂餌前1時間および摂餌後18∼22時間とみな
されるので,その値は180±11m"kg・hrと算定された.この値は本実験とほぼ同温・同
魚体重でえられた安静時の酸素消費量(長崎水試1966)の値とよく一致した.
164 158 166 195 186 178 *248 281 291 311 268 229 208 211 218 219 211 214 225 ‘Non-fbeding, ‘Feeding, timeof day 215 219 234 215 213 196 171 191 175 168 4塁︵b︵b5兜︶q︶︵U14△QJQ︶111Q︶4△︿bQJPJ︿U9︵b︽ひ5 2.114a3PoR︶、﹀︵ひ︵bのo4△兜︶⑨0︵Uワ︽55戸o44ワニワー11 1lq1勺1・11具勺1ワ今・1・1・1勺114.1.11△勺1勺112勺1勺101、11 *fbodsupplied012345678901234567890123000000000011111111112222
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11111
178 鹿児島大学水産学部紀要第30巻(1981) なお,今回調べたAOC量には,空気中からの酸素溶入や植物プランクトンによる酸素 需給などの諸要因が総合的に加味されているので,今後それらの要因について検討を重ねた い. 引 用 文 献 古川厚(1966):ハマチ餌料,特にその消化を中心にして.水産増殖,臨6,51-61. 平田八郎・門脇秀策・稲塚洋一朗(1981):養殖場の物質収支.「はまち養殖経営指導関連調査委託事業 報告書』,全国かん水養魚協会,13-25. ・田中淑人(1978):鹿児島湾’77年型種赤潮に関する諸問題.“鹿児島湾における赤潮の研 究''’1−9(鹿県漁連,鹿信漁連,鹿大水,鹿児島). 井上裕雄(1977):養殖場環境の管理,“浅海養殖と自家汚染''88-108(恒星社厚生閣,東京). 門脇秀策・中薗貫幸・加世堂照男(1978,a):浅海養殖漁場におけるDOの航走連続記録−1.2.3の記録 例とその解析,特にDOと養魚密度.鹿大水紀要,27,273-282. .-・平田八郎(1978,b):浅海養殖場におけるDOの航走連続記録-11.給 ● 餌にともなう浮遊懸濁物の拡散.鹿大水紀要,27,283-290. (1980,a):同一電極法による魚介類の酸素消費量の連続測 一●‐ ● − − ● 定装置.鹿大水紀要,29,203-208. ・山下八百喜・平田八郎(1980,b):浅海養殖漁場における沈降性物質 一 ● ● 量と給餌量ならびに餌質との関係.鹿大水紀要,29,217 224. 長崎県水産試験場(1966):活魚輸送技術報告-111.(総括),1-67.