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<リサーチコンペ研究成果><活動報告>現代社会における周産期母子と社会的包摂

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Academic year: 2021

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<リサーチコンペ研究成果><活動報告>現代社会にお

ける周産期母子と社会的包摂

著者

岡 いくよ

雑誌名

関西学院大学先端社会研究所紀要

16

ページ

107-109

発行年

2019-03-31

URL

http://hdl.handle.net/10236/00027686

(2)

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! " リサーチコンペ研究成果 " ◆ 活動報告 ◆

1 はじめに

筆者は、2016 年度関西学院大学先端社会研究所リサーチコンペにおいて、2017 年 3 月まで助成 金をいただき研究活動を行った。成果は現在投稿論文として査読審査中である。以下では研究に至 るきっかけから助成金を用いた研究活動において得られた知見、および引き続き継続している研究 活動から経過を報告したい。

2 研究活動と得られた知見

2-1 妊産婦への視点 筆者が妊婦や乳児のつどいに関心を持ち、妊産婦1)の対話を重視した活動を始めて 25 年が経過 した。助産師として産院で勤務していると出産や日々の業務に追われ、ゆっくり妊産婦に向き合う 時間の余裕さえなかった。一方勤務を離れてのつどい活動は、じっくり話を聴けることに加え、集 まる妊産婦の生活や想いを肌で感じる場であった。日常生活の些細な不安を親同士で語り合うこと で、さまざまな思いが共有され、育児の共同性や新たなコミュニティについて考える機会となって きた。活動を開始した当時誕生した子ども達は、現在の妊産婦世代となってきている。 妊産婦の乳児の抱き方、扱い方の変化とそのことによる乳児への影響、出産医療機関での指導が 妊産婦に与える影響の大きさが気になり始めたのは 10 年以上前のことである。携帯電話さえなか った時代と、インターネットが普及し育児情報が豊富に検索できる現代とでは、妊産婦の発する質 問や不安の内容も大きく変化した。医療機関の指導が各家庭でのオリジナルな育児へと軌道修正さ れるのに時間を要し、揺さぶられっこ症候群への過剰な心配から子どもをあやすために、軽く揺す って抱くことさえ不安な母に何人も出会った。 妊産婦の日常に着目する理由は 2 つある。ひとつは、育児を開始する時期にある妊産婦の現状を 把握することにより、その後の育児と何らかの関連性を見出すことができるのではないかと仮定で きるからである。もうひとつは、現代は 99.9% を超える出産が医療のもとで行われ、妊産婦が医 療の管理下に置かれているという状況から、育児の出発点に医療から何らかの大きな影響を受けて いると考えられるからである。例えば妊産婦は、出産のため医療機関に入院し、産後、退院日が決 ────────────── *関西学院大学大学院社会学研究科大学院研究員 1)「妊産婦」は、母子保健法の定義で妊娠してから産後 1 年間をさす。

現代社会における周産期母子と社会的包摂

いくよ

* 関西学院大学 先端社会研究所紀要 第 16 号

Annual Review of the Institute for Advanced Social Research vol.16

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められた 5 日間程度の入院期間に、誕生した子どもの養育の一切を担えるよう集中して育児の指導 を受ける。画一的な医学的知識は、どのように母子の生活のスキルに影響を及ぼしているのかにつ いて具体的に把握しておくことは、現代社会の産前・産後をめぐる親子の課題を理解するうえで重 要なのではないだろうか。 産前・産後に関する社会学的研究は、これまで出産自体が主体となり議論がなされ、産前・産後 を継続的に捉えた視点で十分には議論されてこなかった。近年、産後うつや妊産婦の自殺率などの 課題が指摘され(竹田 2017)、育児に自信が持てず、育児が困難だと感じる親の増加に、どのよう に対処していけばいいのかについて、医療、福祉現場での模索は続いている。また、国は母子保健 サービスと子育て支援サービスを一体化した子育て世代包括支援として、母と子を妊娠期から継続 的に支えるモデル事業を開始し2)、少しずつ産前からの子育てについて考えられる傾向にある。 2-2 今回の成果に関する概要 本研究では、周産期にある妊産婦が、医療機関で受けた保健指導をどのように受け止め、どのよ うに周囲の人と関係を持ちながら育児の知恵を獲得していくのかについて検討し、妊産婦の日常的 実践の一端を明らかにすることにより、現代の妊産婦の現状理解へとつなげていくことを目的とし て調査を進めた。事例に挙げる妊産婦は、我が子を身ごもり、出産、産後の育児へと生活が変化す る中で、医療による保健指導を真面目に受け止め、実際の生活とのズレに悩み、医療機関で聞くこ とができない些細な心配や不安を解消できる場所を見出すまでに時間を要していた。またインター ネットの検索を重ねてさらに不安が募り、子どものいる生活が想像できず、出産が近くなっても自 分のことではないような受け止め方で、漠然とした先行きの見えない中で暮らしていた。出産後は 急激な生活の変化についていけずに困惑し、その対応に苦慮する夫が存在した。しかしながら同じ 乳児をもつ親同士が出会い、経験を重ねていく中で少しずつ日常生活に折り合いをつけていくこと ができていた。 論文執筆の段階で妊娠、出産、育児をめぐる妊産婦と人びとの相互関係から新たな関係構築の可 能性について考察するために、今回は次の課題に沿って検討を行った。まず現代の妊産婦は医療や 医療的ケアをどのように受け止め、妊娠、出産、育児に関する知識や支援にどのように対応するの であろうかという点である。次に医療施設と日常生活の狭間で妊産婦と家族や仲間、社会とのかか わりはどのように行われているのであろうかという点である。単に昔の共同体に戻ることはできな い。また現代の妊娠、出産、産後は医療と切り離して考えることは難しい。現状ではすべての妊産 婦同士が人との交流やコミュニティをもつわけではないが、医療施設での出産が 99.9% であると いう点に妊産婦との接点を活かす可能性は開かれているのではないだろうか。

3 今後の課題

最後に今後の課題であるが、つどいに参加できる妊産婦ばかりとは限らず、個々のケースでさま ────────────── 2)「子育て世代包括支援センター業務ガイドライン、産前・産後サポート事業ガイドライン及び産後ケア事 業ガイドラインについて」より引用(http : //www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000172988.html, 2018. 10. 17) 関西学院大学 先端社会研究所紀要 第 16 号 108

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ざまであり、つどいでの調査だけでは妊産婦の理解は不十分であると考えている。ただ、参加する 母たちは乳児の養育に、新たにゆるくつながることのできる共同性を求めていた。個々の価値観を 尊重しながらも、人の中で子どもを養育できる機会を大切に考えていきたい。筆者は今年度より京 都府南部の母子健康包括支援センターに関するモデル事業に参画することになった。ここでは地域 の保健師(府および市町村)、助産師、保育士、保育ボランティア等が集まり協議を重ね、設置自 治体の母子包括支援事業は立ち上がった段階にあり、多様な次元でのコミュニティの創造の可能性 を感じている。筆者の力不足から、実践と研究の隙間を埋めながら論文を作成していくことに課題 はあるが、人がつながり共同性を見出すことにより新たな実践コミュニティの場は開かれるのでは ないかと考える。これまでとは異なる妊娠、出産、育児期の新たな視野を開く試みに、引き続き取 り組んでいきたい。 参考文献 日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会編,2017『産婦人科診療ガイドライン産科編 2017』日本産科婦人科学 会発行. 竹田省,2017「妊産婦死亡原因としての自殺とその予防:産後うつを含めて」『臨床婦人科産科』71(6),506-510,医学書院. 現代社会における周産期母子と社会的包摂 109

参照

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