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多文化を背景にもつ人が経験した日本での学校教育の意味 : ナラティヴ・アプローチを通して

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Academic year: 2021

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(1)多文化を背景にもつ人が経験した日本での学校教育の意味一ナラティヴ・アプローチを通して一. 専 攻学校教育学専攻 コ 一 ス 臨床心理学コース. 学籍番号 M10055E 氏  名 田 尻 伸 子 1.問題と目的. ラジル生まれの成人で,その家族に日本人のルー.  文部科学省(2010)が発表した日本語指導が必要. ツをもつ者6名であった。すべての協力者と筆者. な外国人児童生徒のうち,ブラジルの公用語であ. は,本研究の面接依頼時までに面識はなかった。. るポルトガル語を母語とする児童生徒の数は. (2)調査機関1X年2月から6月であった。. 1990年以降飛躍的に増加している。これまでの多. (3)手続き:日本心理臨床学会倫理要領に基づ. 文化を背景にもつ児童生徒の学校適応に関する先. き,倫理規程に十分配慮し,面接の初めに本研究. 行研究では,生徒が日本の学校文化に適応する過. の目的・意義,個人情報保護について説明を行っ. 程で遭遇する様々な困難について注目し,受け入. た。そのうえで同意書に署名を交わした。面接は. れる日本の学校側の制度的な問題点や,生徒側の. 1回約60分とし,1人3回程度,一対一のライフ. 抱える課題を個人の問題として捉えているものが. ストーリー・インタビューを半構造化面接にて実. 多く見受けられる。人々の経験を深く理解するた. 施した。. めには,外的な基準で経験を客観的に測定するだ. (4)質間内容:質問項目は,以下の5間を設定し. けでは不十分で,当事者の視点から経験の意味を. た。①多文化の背景について,②学校生活におけ. 解釈する必要がある。また,文化的アイデンティ. る体験について,③日本で学校教育をうけたこと. ティの発達は人間の発達の一部と考える。そのた. について,④ブラジルと日本について,⑤日本の. め,ライフサイクルの中で文化間移動における心. 学校に求める支援について。. (5)筆者の属性:筆者は13歳から18歳までの. 的葛藤を理解することが重要であると思われる。.  そこで,本研究では,ブラジルで生まれ日本の. 5年間,ブラジルのアメリカンスクール等で学校生. 学校教育を受けたことがある人たちに,日本で受. 活を経験し,日本国内にて約20年の教職経験を. けた学校教育について振り返ってもらい,そこで. もつ者であった。. (6)分析方法:ナラティヴ・アプローチの枠組. の体験が本人の人生にどのように影響し,どのよ うな意味もっているかを,面接によって深く聞く. みを用い,以下の手順で語りを解釈し,分析した。. ことによって理解する。そこから,学校における,. ①逐語化した資料を精読した。②語り手と聴き手. 多文化を背景にもつ子どもたちに対する,心理臨. の語りを相互的に分析し,語りを再構成した。③. 床学的支援の方向性を明らかにすることを目的と. 再構成された語りから語り手の年譜を作成した。. する。. ④語りから,語り手の人生の経験の意味づけを考. 2.方法. 察した。⑤その考察から,多文化を背景にもつ子. (1)研究協力者:日本で学校教育をうけたこと. があり,日本語で自己感情を語ることができるブ. どもたちへの,学校における心理臨床学的支援の 方向性を明らかにした。. 一!!8一.

(2) 3.結果と考察 研究協力者ごとの語りを検討し,その人の人生を深く掘り下げ,語りを細かく解釈するよう努力した。語りの内容は 以下のとおりであった。.                    研究協力者の語りの内容 Aさん. Dさん. Cさん. Bさん. Fさん. 皿さん. 日本入. ブラジルで「なに人」と思っていたか?. 日系人. 日本人. 日本人. 日本語十. 日本語十. 日系人. uラジル人 ブラジルでの主な生活言語 ボロルトガル語. ボルトがル語. ポルトガル語. {ルトカ“ル語. 日本人十. 日本人十. uラジル人. uラジル人. 日本語. 日本語. 日本語. 日本語. 親の移庄. 留学. 親の希望. 親の移住. 親の移佳. 弁当. コミュニケーションギャッ. 謳カ. v対人関係. 現在「なに人」と思っているか? ブラジル人. ポルトガル語. │ルトガル語. ブラジル人. 日系人. ブラジル人. ポルトガル語. 日本での主な生活言語 ホロルトがル語. i日本語). 末目動機. 親の移住. 日本の学校生活の思い出. 制服. ル当. 謳カ タ技翻斗. ブラシ“ル料理紹. スホ㌧ツクラブ. 矧?ョ. i学希望. nし役 祖国. 生まれた所. ブラジルについて 日本について. 祖国. 日本で学校教育をうけとことについて. 良かった. 日本の学枝に求める支援について. 大変だった. いいこと. 謔ゥった. セ葉・授業. 言葉の支援. 黷髑蜷l 本面接を受けたことについて. ありがたい. 日本人として. ゥ然に身につ 齒盾ノいてく. 譿eと学校の橋. 上下関係. 「ていること一. ノついて事前. 故郷. 第2の母国. 覚えてもらえ. 自然のこと. ラ強になった 日本語支援. 補習授業. 同じ仲間がい. 周囲の子ども スちへの教育. 誇り. ュ人数による. 驍ニいう情報. ?ヘの子ども スちへの教育. 謔闖oし授業. ノ知りたい 楽しかった. 良かった. 楽しかった. 良かった. 良い経験. 明確な語りは見られなかった. 4.総合考察  各事例について,経歴は同じであっても,来日. しだいに「目本人」でもあり「ブラジル人」でも. 時期,家族構成,学校環境などが一人ひとり異な. ある,その人らしさを協カ者自身が認識し,どち. り,人生における意味づけとその過程も独自性に. らか一方の国籍を選択するのではなく,どちらの. 富んでいた。語り手自身がrなに人」であるかと. 国(籍)をも大切に思う気持ちへと変化していっ. いうアイデンティティの模索を,発達段階. たと語られた。. (趾ikson,1959)における思春期の揺らぎと共に.  学校教育において,多文化を背景にもっ児童生. 経験し,成人になった現在も模索し続けている語. 徒の心理臨床学的支援に関わる者は,「なに人」で. りが生み出された。. あるからという一律の支援方法を模索するのでは.  さらに,日本の学校生活における語りから,本. なく,目の前に対時する児童生徒に適した個別の. 研究協カ者は日本の学校に「馴染もう」と自ら努. 対応を試みることが求められる。このことは,多. 力したと思われる。来日当初,研究協力者は周囲. 文化を背景にもつ児童生徒のみならず,多くのそ. と同化することで日本の学校生活に「馴染もう」. の他の子どもたちにとっても有意義なことである。. としていたが,日本での滞在が長期化するにつれ,.           主任指導教員 辻河昌登.            指導教員 辻河昌登 一119一.

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