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物上代位制度の法目的(二・完) 一一歴史的解釈・目的論的解釈・政策的判断の錯綜一一

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(1)

〈 論 説 〉

物上代位制度の法目的

││歴史的解釈・目的論的解釈・政策的判断の錯綜││ 〆-、、 -白河) JU ノ ¥ い ) はじめに 判例理論の分析 民法三 O 四条一項但書にいう払渡又は引渡前の﹁差押﹂(以上十一巻三号) 代位目的物に関する検討 学説の検討 四 おわりに││物上代位制度の法目的に関する議論の意義(以上本号)

(2)

第12巻2号 46

判例理論の分析

(

) 代住目的物に関する検討 抵当権者の物上代位権の及ぶ目的物の範囲が判例上議論の対象となった最初の事例は大審院大正一二年四月七 日聯合部判決であろう。この事件は周知のごとく、火災保険金請求権に対する抵当権者の物上代位権行使の可否を論 じた事例であるが、結論的には、火災保険金請求権への物上代位権行使を肯定した事例である(ただ、この判決は、 民 法 コ 一

O

四条、三七二条に規定する物上代位権行使の要件に関する規定、すなわち、物上代位権を行使する者は﹁其 払渡又ハ引渡前ニ差押ヲ為スコトヲ要ス﹂という規定の意義について、 いわゆる﹁優先権保全説(物権説こをとる旨 を明言した判例として知られていることも周知の事実である)。 抵当権の場合、民法三七二条によって民法三

O

四条が準用されており、 し た が っ て 、 それらによれば抵当権の物上 代位権は、抵当権の﹁目的物ノ売却、賃貸、滅失又ハ駿損ニ因リテ債務者ノ受クヘキ金銭其他ノ物﹂に対して行使す ることができる。しかし、この準用に関しては、先取特権・質権・抵当権いずれも特定物からの優先弁済を受けうる 権利として共通性を有し、 その限りにおいて等しく物上代位性が認められているが、 それらは、目的物に対する追及 力、目的物に対する物質的支配力、 公一不方法などを異にするから、この性質・作用の差異に応じて、代位の要件・効 果も異ならざるを得ないのであり、 指 摘 さ れ て き た 。 民 法 一 二

O

四条の各担保物権への準用にあたっては、 理論的な調整が必要であると 抵当権者の物上代位権が及ぶ目的物の範囲を検討するにあたって、従来、﹁価値権説﹂と﹁物権説﹂の対立が指摘さ れてきた。前者は、抵当権は目的物の交換価値の把握を目的とする権利、すなわち﹁価値権﹂であるから、担保物の

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価値が金銭その他の形態に変化したときは、これは担保目的物の交換価値が具体化したものであり、抵当権がこれら 価値変形物に及ぶことは、担保権が価値権であることからくる当然の事理であるとする見解である。これに対し、後 者は、抵当権は物権であり、物権の目的物が滅失したときには、物権は消滅するのがむしろ当然であり、滅失によっ て価値変形物を生じたとしても、本来その上に抵当権の効力が及ぶべきではない。物上代位は抵当権より当然に生ず るものではなく、法律が抵当権者保護のために特に認めた特権的な効力であるとする見解である。先に挙げた大正一 二年大審院連合部判決は後者の見解をとっている。 そもそも、物上代住制度のモティ

l

フは何であったのか。物上代位制度は、債権法における給付不能の場合の代償 ( 1 ) 請求権などとともに、代佐法理ないし代償法理の一環たるもので、公平の観念に基づくものであるという説明がある。 確かに﹁公平﹂という理念がこの制度の基底にあることは否定し難いことであろう。しかし、﹁公平﹂ということにな れば、物上代位の目的物に関与する多くの利害関係者が存在するわけであり、 それら複数の者の聞における公平とい 一一物上代位制度の法目的(二・完) うことも意識されなければならないであろう。この説明はなお問題を後に残すものといわざるを得ない。少なくとも、 抵当権者、抵当権設走者、 一般債権者、第三債務者それぞれの利益が十分に検討される必要があることは否定できな いであろう。それらの利害関係人の存在のもとに、抵当権者の利益をどのように保護すべきかが検討されなければな ら な い で あ ろ う 。 賃料債権に対する物上代位 。 , 白 川円抵当権の物上代位について規定した旧民法・債権担保編二

O

一条一一項は、抵当目的物の﹁滅失・駿損﹂の賠償金 ( 2 ) に対してのみ物上代住を認めており、賃料債権への物上代位については否定的であった。しかし、現行民法では、三

O

四条が三七二条によって抵当権にも準用され、文理上は賃料債権への抵当権者の物上代位を肯定しうるものとなっ

(4)

第12巻2号一一48 ている。この物上代位の適用拡大の理由に関しては直接の説明は見当たらず、法典調査会においては、民法三七一条 との関連で説明がなされているに過ぎない。すなわち、同条一項にいう﹁果実﹂が天然果実のみならず、法定果実を も合むものであるならば、少なくとも賃料に関するかぎりは民法三

O

四条を適用する必要はないのではないかという 質問に対し、梅謙次郎は、これを否定し、 そこにいう﹁果実﹂は天然果実のみを指し、法定果実については民法三七 二粂の準用規定により民法三

O

四条が適用されると答えている。すなわち、民法三七一条は三七

O

条の規定を受けた 特 別 の 規 定 で あ り ( ﹁ 前 条 ノ 規 定 ハ 果 実 ニ ハ 之 ヲ 適 用 セ ス ﹂ ) 、 一 二 七

O

条は、抵当権の効力の及ぶ目的物の範囲に関して、 抵当不動産の﹁附加一体物﹂に及ぶとしており、附加一体物という以上は﹁有体物﹂であることが前提とされるので あるから、有体物とはいえない法定果実はここには含まれないと考えられ、賃料のような法定果実については三七二 条、三

O

四条にいう物上代位規定が適用されると解したものである。 つまり、立法趣旨としては、賃料を特に抵当権 の物上代位の目的物の範囲から除外する理由はないとして、文理上、賃料に対する抵当権および先取特権の物上代位 を肯定することを自明のこととしていた。 制裁判例の検討 ①大審院大正六年一月二七日判決(民録二三輯九七頁) この判決は、賃料債権に対する物上代位の可否を問題とした事例ではないようである。抵当権設定者たる債務者と 第三者との聞において締結された競売不動産を目的とする賃貸借契約によって生じた賃料債権のごとき法定果実は抵 当権の効力の及ぶ範囲にないことは民法三七

O

条およぴ三七一条の解釈上疑義を容れる余地はないとして、抵当権の 及ぶところは天然果実に限定せられ賃料のごとき法定果実には及ばないとする見解を示し、加えて、民法三七二条の 準 用 に か か る 一 二

O

四条の規定は、抵当権の目的物につき抵当権実行を為し得ざる場合において、抵当権者をしてその

(5)

目的物に代わる債権の上に抵当権を行使せしめる趣旨の規定であって、抵当権者が現に抵当権の目的物につき抵当権 を実行する場合には適用のないものと判示している。賃料債権に対する物上代位権の行使を、抵当権者が抵当権の目 的物に抵当権を実行することのできない場合に限定している点に本判決の特徴点があるかとも思われるが、 む し ろ 、 抵当目的物に対する抵当権実行がなされ、抵当権の効力が及ぶ目的物の範囲が問題となった事例のように忠われる。 賃料債権への物上代住の可否そのものが問題となった判例ではないといえよう。 ( ア ) 肯定説 ①東京高裁昭和三一年九月四日決定(下民集七巻九号二三一六八頁) A 銀 行 は 、 B 会社との間で元本極度額を四二

O

万円とする根抵当権設定金銭消費貸借契約を締結し、根抵当権設定 登記を行った。その後、債権額を四二

O

万円と確定した。根抵当権設定後、 B 会社は、抵当目的物たる建物を

C

に賃 貸 し た が 、 D が B から本件建物の所有権を取得して、 C に対する賃貸人の地位を承継した。 A 銀行は、本件根抵当権 の被担保債権の弁済を受けるため、 D が

C

に対して有する賃料債権の差押ならぴ 民法三七二条、三

O

四 条 に 基 づ き 、 に賃料の取立命令を求めて申請に及んだ事件である。原裁判所が、本件のごとき場合においては物上代位に関する規 定の適用はなく、また法定果実たる賃料債権については抵当権の効力は及ばないとして申請を却下したので、 A が即 時抗告に及んだ事件である。 ﹁民法第三百七十二条により抵当権にも準用される同法第三百四条は、 目的物の売却、賃貸、滅失又は毅損によっ て債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても抵当権を行うことができる旨を定めている。従って抵当権の目的た る不動産が賃貸された場合においては、物上代位に関する右規定により、賃借入の支払うべき賃料債権に対し抵当権 の効力が及ぶベく、抵当権者はその被担保債権の弁済を受けるため右賃料債権の上に抵当権を行い、民事訴訟法の規

(6)

第12巻 2号一一 50 定に基づいてその差押並ぴに取立命令を求め得るものと解するのを相当とする。元来抵当権は目的物の担保価値に着 間 口 1 レ 、 その交換価値を優先的に支配して被担保債権の弁済にあてることができる権利であり、その収益権はこれを抵 当権設定者の許に留めておくのをその本質とするから、目的物を賃貸する権利はあくまで抵当権設定者がこれを有す るのであるが、目的物を賃貸するときは、その交換価値の減少を来すことは取引の実情に徴して疑を容れないところ であって、賃貸による対価(賃料はこれに該当する) の収受はとりもなおさず目的物の交換価値の漸次的実現を意味 するから、この賃料債権につき物上代住に関する前記規定が準用せられるのは当然の事理といわなければならない。 故に抵当権について物上代位の規定の準用は、:::賃貸によりその目的物の交換価値が絶対的に減少し、その減少が 回復し得ないような場合のみに限られるとなすべきではない。﹂ この判決も、民法三七一条は天然果実に対する規定であって、法定果実に関する規定ではないと述べている。 ②大阪高裁昭和四二年九月七日決定(判時五

O

六号三九頁、判タ一二四号二二ハ頁) ﹁ 民 法 三

O

四条、三七二条によると、抵当権によるいわゆる物上代位権は、目的物が賃貸された場合の賃料請求権 にも及ぶものと解すべきである。もっともこの点については、抵当権が交換価値を把握するものであることを理由と して、目的物の滅失段損等、その全部又は一部について抵当権を行使することができなくなった場合に限り、物上代 住を認めるべきであるとする見解がないわけではない。しかし抵当不動産を賃貸してその対価を収受することは、抵 当権の目的物の交換価値の一部実現に外ならないから、これについて物上代佐を否定すべき理由は存在しない。事を 実質的に考えても、債務者は競売物件を賃貸して収益を挙げているのに、債権者が抵当権に基づいてこれから債権の 満足をはかることができないと解することは、抵当権の実効を著しく弱めるものであり、両者の公平を欠くものとい わ な け れ ば な ら な い ﹂ 。

(7)

③東京高裁昭和六

O

年 二 月 一 一 一 一 日 決 定 ( 判 時 一 一 五

O

号 一 九 一 一 員 ) ﹁民法三七二条により抵当権に準用される同法三

O

四条は目的物の売却、賃貸、滅失又は段損によって、債務者(抵 当権については所有者) が受けるべき金銭その他の物に対しても抵当権を行うことができる旨を定めているのである から、抵当権の目的たる不動産が賃貸されている場合においては、物上代位に関する右規定により、当該不動産の所 有者が賃借入に対して有する賃料債権に対し抵当権の効力が及ぶというべきであり、抵当権者はその被担保債権の弁 済を受けるため右賃料債権の上に抵当権を行い、民事執行法の規定に基づいてその差押え並びに取立命令を求め得る も の と い う べ き で あ る ﹂ 。 ④福岡高裁昭和六

O

年八月一一一日決定(判時一一七三号七一頁) ﹁ 抵 当 権 に 基 づ く 物 上 代 位 権 は 、 目的物が賃貸された場合の賃料請求権にも及ぶものと解するのが相当であると思 料する。けだし、抵当不動産を賃貸してその対価を収受することは、抵当権の目的物の交換価値の一部実現に外なら ないから、これについて物上代位を否定すべき理由はなく、右物上代位を認めたとしても、設定者から目的物の収益 権能を奪わないという抵当権の性質に必ずしも反するものとはいえないし、抵当権者が、目的物について抵当権を実 行し得る場合でも物上代住権を行使し得るとした最高裁判所昭和四五年七月一六日第一小法廷判決(民集二四巻七号 九六五頁) の立場と符節すると考えられるからである。 更に本件に限ってみるも、前記認定の事実によれば、本件第三債務者らの賃貸借はいわゆる短期賃貸借であると認 められるところ、短期賃貸借における賃料請求権であっても、これとコ一年を超える期間の賃貸借における賃料請求権 とを物上代位の目的として異別に解すべき合理的理由はないのであって、右は﹃期間の定めのない建物賃貸借は、民 法三九五条の短期賃貸借に該当すると解するのが相当である﹄とした最高裁判所昭和三一九年六月一九日第二小法廷判

(8)

第12巻2号一一52 決(民集一八巻五号七九五頁) というべきである﹂ の 趣 旨 に 副 う も の 、 ⑤最高裁平成元年一

O

月二七日判決(民集四三巻九号一

O

O

頁 ) 抵当不動産にについて供託された賃料の還付請求権について、抵当権者は物上代位権を行使しうることを肯定した 事 例 。 ﹁抵当権の目的不動産が賃貸された場合においては、抵当権者は、民法三七二条、 三

O

四条の規定の趣旨に従い、 目的不動産の賃借入が供託した還付請求権についても抵当権を行使することができるものと解するのが相当である。 けだし、民法三七二条によって先取特権に関する同法三

O

四条の規定が抵当権に準用されているところ、抵当権は、 目的物に対する占有を抵当権設定者の下にとどめ、設定者が目的物を自ら使用し又は第三者に使用させることを許す 性質の担保権であるが、抵当権のこのような性質は先取特権と異なるものではないし、抵当権設定者が目的物を第三 者に使用させることによって対価を取得した場合に、右対価について抵当権を行使することができるものと解したと しでも、抵当権設定者の目的物に対する使用を妨げることにはならないから、前記規定に反してまでも目的物の賃料 について抵当権を行使することができないと解すべき理由はなく、また賃料が供託された場合には、賃料債権に準ず るものとして供託金還付請求権について抵当権を行使することができるものというべきだからである﹂。 端的に、賃料債権への物上代位権の行使の可能性を認めている。 ( イ ) 限定的肯定説 ⑥旭川地裁昭和四

O

年九月二二日決定(判タ一八三号一八四頁) ﹁担保物権の物上代住は、公平の観念から認められるものであり、担保物権の優先的効力が、物の変化すなわち価 値の転換のため消滅してしまうことが、担保物権者と担保物所有者との閣の公平を欠く場合、すなわち、なんらかの

(9)

原因によって担保物権者の把握する担保物の価値が滅失、減少したのに、所有者は別の価値を取得するにかかわらず 担保の拘束を免れ、他方担保物権者は優先権を喪失して損害を被ることとなって、 公平を失するという場合に限って、 認められるべきものであると解する。換言すれば本来の目的物の全部または一部の上に担保物権を行使することがで きなくなった場合にのみ認められるべきものであり、 したがって、追及力を有する抵当権にあっては、目的物の全部 を追及して本来の権利を行使しうる限り、物上代位は認められないと解すべきである﹂。 ⑦大阪高裁昭和五四年二月一九日決定(判時九三一号七三頁) X が 、 Y に対する貸金担保のため、 その設定当時、既にマンション Y 所有のマンションに根抵当権を設定したが、 の 一 部 を 、 A ・

B-C

に賃貸しており、また、右抵当権設定後、新たに

Y

は 、 D-E ・ F にマンションの一部 Y は 、 を期間二年の短期で賃貸した。そこで、 X が Y を 相 手 と し 、 A ないし F を第三債務者として、

Y

の A らに対する右マ ンションの賃料債権に対し、右根抵当権に基づく物上代位による債権差押および取立命令を求めた事件である。原決 53一一物上代位制度の法目的(二・完) 定 は X の 申 立 を 却 下 。 X 抗告。抗告棄却。 ﹁抵当権は使用収益権限のない非占有担保権であるから、原則として、 目的物利用の対価は抵当権の把握する目的 の範囲外であり、したがって、これらが抵当権による物上代住の客体となりうるものでなく、抵当権の目的物自体の 滅失・扱損等の物理的原因によりその全部又は一部について抵当権を行使できなくなったとき、 又は抵当権設定後の 第三者に対する賃貸により目的物自体の担保価値の一部が喪失したときなど、当初確保した担保価値の全部又は一部 が滅失ないし喪失した場合に限り物上代位を認めるものと解すべきである。 民法三九五条所定の抵当権設定登記後の短期賃貸借については、 その期間が短期であり、 かっ、賃料が合理 吉 -A V B 国 、 JJJJ 的であるときには、これを抵当権者に容認させて所有者の使用収益を維持させようとするもので、抵当権の本質に基

(10)

第12巻2号一一 54 づき所有者と抵当権者との利益の調和を計ろうとするものにほかならないから、右賃料について抵当権者の物上代位 を 認 め る こ と は で き な い ﹂ 。 ⑧大阪高裁昭和六一年八月四日決定(判タ六二九号二

O

九 頁 ) ﹁抵当権設定者と第三者との聞における抵当不動産を目的とし賃貸借契約により生じた賃料債権はその賃借権の設 定により目的不動産の交換価値が下落し、 そのため被担保債権の満足ができなくなる場合などの特段の事情がない限 り、民法三七

O

条、三七一条の法意に鑑み抵当権の及ぶ範囲でないと解すべきであるが (大判大正六・一・二七民録 二三輯九七頁、大判昭和九・五・八新聞三七

O

二号一三頁参照)、被担保債権の弁済期が到来し不動産競売の申立がな されて開始決定による差押の効力が発生した後は、 民法三七一条一一項に照らし、抵当権の効力が及びもはやそれ以後 は抵当権設定者の賃料取得の権限が制限され、抵当権者はその選択に従い民法三七二条、三

O

四条に基づき物上代位 権を行使することも、同法三七一条による権利を行使することもできると考える﹂。 ⑨東京高裁昭和六三年四月二二日決定(高民集四一巻一号三九頁) 本判決は、抵当権設定登記後に抵当不動産を賃借した者が、これを転貸した場合における転貸料が、抵当権の物上 代位の対象となることを認めたものである。この判決は、抵当権者の物上代位が目的不動産の賃料債権にまで及ぶか という問題に関し、競売開始決定の効力発生時点以降に限定するかのような設示もみられ、また、民法三七二条によ る 三

O

四条の準用に関して、民法三

O

四条にある﹁債務者﹂という概念をめぐって、抵当権者の物上代位の場合には、 ﹁抵当権の目的たる不動産土の権利者﹂と読み替えるべきであり、これには所有者(抵当権設定者)、抵当不動産の第 三取得者の外、抵当不動産を後に借り受けた賃借入も含まれると解している。 ( ウ ) 債権譲渡後の賃料債権への物上代住の可否

(11)

⑬大審院昭和五年九月一三百判決(民集九巻九一八頁) 賃料債権が他に譲渡された場合に抵当権者はなおその譲渡賃料債権に物上代位権を行使しうるかが問題となった事 件であり、物上代位権行使の要件、すなわち、抵当権者は、﹁払渡又は引渡前に差押をなすことを要す﹂という要件と 関連して、賃料債権が譲渡された場合には、この要件を充足することはないとして、譲渡後には賃料債権には物上代 位権を行使できないとした裁判例である。 。最高裁平成一

O

年一月三

O

日判決(民集五二巻一号一頁) この判決については、すでに、前稿において触れた。そこにおいても述べたように、最高裁平成一

O

年 二 月 一

O

日 判決(判時二ハ二八号五頁)とともに、民法三

O

四条一項にいう﹁払渡又は引渡﹂には債権譲渡は含まれず、抵当権 者は、物上代住の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた後においても、自ら差し押さえて物上代 位権を行使することができるとした。 この二つの判例は、譲渡後の賃料債権に対する物上代位権行使の可否に関して、その結論は対象的である。⑬判決 のいうところは以下のようである。すなわち、民法が、﹁払渡又ハ引渡前ニ差押ヲ為スコトヲ要ス﹂とした所以は、 面において債務者が金銭その他の物の交付を受けた後、 その金銭その他の物に対してなお抵当権が追随しうるものと すれば、債務者固有の財産との聞に混雑を来し、徒に権利関係を紛糾せしむる恐れがあり、したがって債務者が金銭 その他の物の交付を受ける前においてのみ抵当権者の物上代位権行使を是認するのが妥当であるとして、抵当不動産 に代位するのは債権そのものであることを明確にしたものであり、また、他面において、債権には登記のような公示 方法がないので、第三者を保護する方法として、不動産に代住することを明確にし、抵当権を第三者に対し保全する 要件とする趣旨を定めたものであるので、 その差押は必ずや抵当権者が債務者に対して行うことを要するのは当然の

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第12巻 2号一一 56 事 理 で あ り 、 したがって抵当権者がその差押をするに先立って債務者が抵当不動産に代位する債権を第三者に譲渡し てしまえば、抵当権はもはや差押によってこれを保全する余地はない。これに対して、

O

判 決 は 、 いとも簡単に、民 法三

O

四条一項の趣旨目的に照らすと、同項の﹁払渡又ハ引渡﹂には債権譲渡は含まれず、抵当権者は、物上代位の 目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた後においても、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を 行使することができると判示したものである。譲渡されて第三者に帰属し、 しかも対抗要件を備えた債権譲受人の債 権にどのような理由で物上代位権を行使しうるのかについての説得的な説明はない。⑪判決は、対抗要件を備えた債 権譲渡が物上代位に優先するとするならば、抵当権設定者は、抵当権者の差押前に債権譲渡をすることによって容易 に物上代位権の行使を免れることになり、これは抵当権者を不当に害するというが、抵当権者による物上代位権行使 前になされる債権譲渡はすべて抵当権者を害するということができるのであろうか。抵当権設走者は、抵当権登記が なされている限り、常に、自己の有する賃料債権について、抵当権者による物上代位権行使を予定しなければならな いものであろうか。この判決は、物上代位の目的債権が譲渡された後に抵当権者が物上代位権に基づき目的債権の差 押をした場合において、第三債務者は、差押命令の送達を受ける前に債権譲受人に弁済をした債権については、 そ の 消滅を抵当権者に対抗することができるというのであるが、抵当権の効力が物上代位の目的債権についても及ぶこと は抵当権設定登記により公示されているとみることができるという説示とどのように関連するのであろうか。逆にい えば、抵当権者による物上代位権の行使は、抵当権者自らによる﹁払渡又ハ引渡﹂前の﹁差押﹂によって公示される のであり、差押命令が送達されるまでは、物上代位権の行使は公示力を備えないというのではないであろうか。 ⑫最高裁平成一

O

年 二 月 一

O

日判決(判時二ハ二八号五頁) ﹂の事例は、抵当権者である A (被告・被控訴人) が物上代住により債務者(抵当目的物の所有者

)

B

の第三債務

(13)

者(賃借入

)

C

に対して有する将来発生する賃料債権を差し押さえたところ、 ( 原 告 ・ 控 訴 人 ) が右差押よりも前 D に右賃料債権を譲り受け、対抗要件を備えたとして、抵当権行使の排除を求めた事件である。抵当権者の物上代位と 債権譲り受けとの優劣が問題となっている。この二月判決は、

O

判決と同旨の結論をとっている。 この最高裁判決の原審(大阪高裁平成七年一二月六日判決・判時一五六四号三一頁)は、﹁現に発生した賃料債権に ついては、賃借入が弁済するなどして消滅した場合又は賃貸人が第三者へ譲渡するなどして賃貸人の責任財産から逸 出した場合には、もはやこれに対し物上代位権を行使することはできない (動産売買の先取特権の事例につき、債権 が第三者に譲渡された場合には物上代住権を行使できないとした事例として、最高裁五九年二月二日判決・民集三五 巻三号一頁があるとが、将来の期間に発生すべき賃料債権についても抵当権の物上代位による差押が可能であり(そ の場合、現実にその債権を取り立てることができるのは、 その期聞が経過して支分債権である賃料が現に発生し、 カ 冶 っ、その弁済期が到来した時点以降である)、他方、賃貸人は、将来の期間の継続的賃料債権についてもその成立を条 件として譲渡が可能であり、これについては、賃料債権発生に先立ち賃借入に通知しまたは賃借入の承諾を得ること により、包括的に対抗要件具備の手段をとることができる。そこで、将来の期間に発生すべき賃料債権が支分債権と して発生した時点で、抵当権に基づく物上代位による差押の効力と第三者に対する対抗要件を具備した債権譲渡が競 合する事態が生じうる。その優劣については、抵当権者は、担保不動産につき、他の債権者に優先して自己の債権の その目的不動産の賃料に対し物上代位を認める以上、 その物上代住に基づ 弁済を受ける権利を有するのであるから、 く権利の行使は抵当権の内容である優先弁済権に由来するものというべきであるとし、 そうすると、抵当権に基づく 物上代位による差押の効力の具現と対抗要件を具備した債権譲渡が同時である場合には、実体法上優先権が認められ ている抵当権に基づく物上代住による差押が優先し発生した支分債権を取り立てることができると解するのが相当で

(14)

第12巻 2号一一 58 あるとしている。現に発生した賃料債権が賃貸人から第三者に譲渡された場合には物上代位権を行使することはでき ないが、将来の期間に発生する賃料債権については、抵当権者の物上代佐の優先を認めたものである。この点が、こ の原審判決の特徴といえる。 学 説 の 検 討 ( ー ) 抵当権の物上代住について規定した旧民法・債権担保編二

O

一条一項は、抵当目的物の﹁滅失・駿損﹂の賠償 金に対してのみ物上代位を認めており、賃料債権への物上代位については否定的であった。しかし、現行民法三

O

四 条・三七二条によって、文理上は、賃料債権への抵当権者の物上代位は肯定されている。立法過程における議論をみ ると、民法三七一条一項にいう﹁果実﹂について、それは天然果実のみならず、法定果実をも含むものであるならば、 少なくとも賃料に関する限りは民法三

O

四条を適用する必要はないのではないかという質問に対し、立法者は、これ を否定し、そこにいう﹁果実﹂は天然果実のみを指し、法定果実は含まれず、法定果実については、民法三七二条の ( 3 } 規定により民法三

O

四条が準用されるのであり、不都合はないと述べている。すなわち、立法趣旨としては、賃料を とくに抵当権の物上代位の目的物の範囲から除外する理由はないとして、文理上、賃料債権に対する抵当権および先 取特権の物上代位を肯定することを自明のこととしている。 いわゆる﹁特権説 H 物権説﹂にたつ大正二一年の大審院連合部判決に対し、﹁価値権説 H 特定性維持説﹂の立場から 批判があったことはすでに述べたが、この学説は、賃料債権への物上代位を肯定する根拠として、賃料債権を目的物 の﹁価値を代表するもの﹂あるいは﹁交換価値のなし崩し的具体化﹂という見解を示し、立法段階での単なる文理的 理由によるものとは異なる理由づけを行っている。

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この肯定説に対しては、否定説からの批判があることはと周知のところである。その論拠は以下のように整理でき るであろう。例賃料はあくまでも目的物の利用の対価であり、交換価値を代表するものではなく、目的物の交換価値 の﹁なし崩し的﹂実現という説明は擬制的にすぎる。制価値権説の発想の根底には、本来の目的物に対して抵当権の 実行ができなくなった場合に、 その交換価値が形を変えて存在しているときには、その価値変形物について抵当権の 実行を認めることが公平かつ妥当であるという考え方があると思われる。しかし、抵当目的物が賃貸しされた場合で も、抵当不動産の売却の場合と同様に、抵当権者は目的物に対する追及力を有し、 それによって抵当権が消滅するわ けではなく、依然として抵当目的物に対する抵当権の実行が可能であるから、物上代住を認める必要はないはずであ る。例賃料債権については、 民法三七一条一一項との関連が問題となる。すなわち、同条の趣旨は、抵当権の実行手続 に着手するまでは (差押または第三一取得者に対する抵当権実行通知)目的物の使用収益権能を抵当権設定者の手元に 留め、抵当権者は一切これに干渉すべきではないとするところにあると考えられる。この趣旨は、 天然果実か法定果 実であるかによって異なるものではなく、抵当権者が賃料債権に対して物上代位をすることは抵当権設走者の使用収 益活動の成果を収奪することに他ならないから許されないはずである。以上のような批判がなされている。 ( 4 ) 最近、松田佳久氏がつぎのような分析を行っている。すなわち、不動産の所有権は処分権、使用権、収益権に分解 され、それぞれの権利が有益であれば価値が発生する。処分権に対しては交換価値、使用権に対しては使用価値、 そ して収益権に対しては収益価値が発生するとした上で、抵当権の把握する価値の検討を行っている。その際、賃料の 性質にも触れ、賃料は﹁他者使用に基づく収益﹂である。また、経済的には、不動産の元本価格が、その不動産が物 理的・機能的および経済的に消滅するまでの全期間にわたって、不動産を収益することができることを基礎として生 ずる経済価値を貨幣額をもって表示したものであるのに対し、賃料は、全期間のうちの一部の期間について、不動産

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第12巻2号一-60 の賃貸借等の契約に基づき、不動産を収益することを基礎として生ずる経済価値を貨幣額をもって表示したものを主 体とし、不動産の収益に際して通常必要とする必要諸経費等を含むものである。したがって、基礎たる不動産の収益 権がなければ、賃料は生じない関係にある。また、賃料収入獲得のためにはなんらかの経営努力を要することについ ては、企業の場合と本質的な差異はないため、経営努力に対する費用としての必要諸経費等を含む概念となっている。 賃料が交換価値のなし崩し的実現としての性格を有するというのは、賃貸期間が経過するにつれて、担保目的物の交 換価値が減少し、他方、その聞に支払われる賃料は累積することからそのように判断されたものと思われるが、土地 が担保目的物である場合には、目的物の交換価値が賃貸期聞が経過するにつれて減少するということはあり得ず、し たがって賃料が交換価値のなし崩し的実現であるとはいえない。また、保険金と類似の、交換価値の変形物(代償的 価値)ともいいえない。むしろ賃料は収益権を基礎とする収益であり、収益価値の実現(派生的価値)といえるであ ろう。さらに、抵当権は、交換価値以外に収益価値をも把握しているという見解に対して、﹁収益価値﹂とは﹁収益権﹂ を有する者あるいは第三者がこの権利を有用と判断した場合にはじめて発生するが、﹁収益価値﹂を﹁収益権﹂から分 離して把握できるかという問題を提起し、﹁収益価値﹂だけを﹁収益権﹂から分離して把握されると解することの不合 理性を指摘する。また、﹁収益権﹂を有するとは、たとえば、建物の賃貸であれば、借家人からの賃料徴収等の管理費、 空室であれば賃借入の募集費用、賃料値上げのの交渉、敷金・保証金返還義務など賃料徴収権を保持するために必要 な行為も行わなければならないということであり、収益権を活用し、賃料徴収権 ( H 賃料債権)等を取得するための 負担が必要になる。この負担がなければ、賃料債権は生じることはなく、必要な負担は﹁収益権﹂を有する者が自ら 負担しなければならないとして、不動産質権との対比を行っている。さらに、抵当権はすべての価値を支配している とする見解に対しても、この説によっても、抵当権の設定から実行完結に至るまでの問、設定者は担保物件の占有が

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認められるのであり、設定者は、自ら使用することができれば、第三者に賃貸することもできるのであるから、 日 月 ら かに﹁使用権﹂﹁収益権﹂は抵当権設定者が有しているということがいえる。抵当権者が目的物のすべての価値を有す るというのであれば、抵当権者はその有する﹁使用権﹂﹁収益権﹂に基づき、使用・収益に必要欠くべからざる負担を し な け れ ば な ら ず 、 さもなければ賃料債権を取得できない。 このように論じて、抵当権は処分権のみを有し、使用権・収益権は有していないものとなり、 したがって、抵当権 は収益価値たる賃料債権を把握しているとはいえず、賃料債権への物上代位は否定されることになるというのである。 ただ、同氏は、﹁しかし、今日のバブルの崩壊と長期の景気低迷により、担保物件の売却が思うようにいかず、債権回 収がままならない状況では、安定回収が図れる賃料債権の物上代位は有効であり、否定すべきではない。この不況下 における﹃不動産市況の悪化が回復するまでの間﹄、賃料債権への物上代住を法解釈もしくは政策的にでも認めること は、債権回収を促進する上で十分に意義あることであり、 ひいては金融システムを安定させる一助になるものと思わ れる﹂と述べているところは興味深いものがある。実務家らしい率直な意見であるように思われる。 率直にいって、この問題は、優れて﹁政策的課題﹂としての性格を露呈しつつある。物上代位権の法的性質を﹁価 値権説﹂ととらえるか、あるいは﹁特権説﹂ととらえるかという議論では打開できないことを端的に示しているよう に思われる。殊に、平成一

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年の二つの最高裁判決、すなわち、譲渡後の賃料債権に対する物上代住を肯定した二つ の判決を契機として、従来の判例理論に対する再検討の必要性が生まれてきたように思われる。この問題に関する前 掲昭和五年の大審院判決(⑮判決) は、債権譲渡後の賃料債権への物上代位を否定したし、また、大正一二年の連合 部判決は、物上代位権の行使を抵当権者の﹁特権﹂と解し、 その権利の行使のためには、抵当権者自らが﹁差押﹂を なすことを要し、このことを以て、物上代位権行使の公示子段ともいうべき位置づけをしていたと解される。しかし、

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第12巻 2号一-62 平 成 一

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年最高裁判決は、﹁抵当権の効力が物上代位の目的債権についても及ぶことは抵当権設定登記により公示され ているとみることができ﹂ると言い切っており、ここにも以前の判例との不調和がみられる。抵当権者の物上代位権 行使がまだ定かでない段階で債権を譲り受け、 その譲渡についての対抗要件を備えた債権の譲受人が何故抵当権者に 優先されるのか、債権が譲受人に帰属しているにもかかわらず、 その後に物上代住権を行使し賃料債権を差し押さえ た抵当権者に何故劣後するのか、 その理由は明確でないように思われる。また、債権譲渡は有効なのであるから、債 権の譲受人という債務者ないし抵当権設定者以外の者の受けるべき賃料債権に対して、抵当権者が何故物上代位権を 行使しうるのかという問題も生み出すように思われる。 むろん、抵当権者の物上代住権行使と債権譲渡の優劣に関して、抵当権設定登記と債権譲渡の先後を基準とする登 記時基準説と、物上代位による差押と債権譲渡の先後を基準とする差押時基準説との対立があり、他に、 一定の場合 に債権譲渡の効力を制限しようとする学説の対立があることは周知の事実である。債権譲渡の効力を制限しようとす る 見 解 に も 、 民法三九五条の趣旨類推適用説、すなわち、明らかに執行妨害を目的としたり、長期にわたる賃料債権 の譲渡の場合には、権利濫用法理を適用してこれを無効とするが、権利濫用とはいえないまでも、抵当権者が目的物 件の換価によっては債権全額の弁済が見込めないなどの損害が生ずる場合には、民法三九五条の趣旨を類推適用して、 抵当権者に対する関係では譲渡を無効とする見解があり、また、物上代位による差押時にすでに発生している賃料債 権については譲渡が優先するが、未発生の債権については物上代位が優先するといういわゆる具体的債権発生基準時 説がある。これらの見解の相違も、抵当権者と債権譲受人との利害調整の視点の相違が如実に現れているといわざる を得ないであろう。 抵当権者は、抵当権を設定すれば、第三債務者が払渡または引渡をする以前であれば (現実に金銭の支払をする以

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前であれば)、自ら差押をすれば(ここにいう差押の法的意義づけは特権説にいう位置づけとは異なる)、物上代位権 の行使はフリ

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パスであるというのであろうか。これでは、債権の譲受人との関係や、 一般債権者との関係において 抵当権者の物上代住権行使の可否を論じ、抵当権者自らの差押に、物上代位権行使の公示機能を担わせてきた判例理 論の流れはなにであったのかといわざるを得ないようにも思われる。 ま た 、 最 高 裁 平 成 一

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年判決は、民法三七二条、三

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四条但書の趣旨目的に関して、﹁第三債務者保護﹂をうたって いるが、賃料債権の譲受人との関係でいえば、この見解によって、 明らかに、賃料債権の譲受人よりも抵当権者の保 護を図るという結果をもたらしていることは否定できないように思われる。基底には、抵当権者の保護をより厚くと いう姿勢が勝っているように思われる。問題は、単純に、﹁第三債務者﹂の﹁二重払い﹂の抑止にあるのではなく、抵 当権者と物上代位の目的物に関係する一般債権者や債権譲受人との聞の利害調整にあるように思われる。 ( ー) また、本稿で専ら問題としている賃料債権への物上代位の可否についても肯定・否定の両説が対立しているこ とはすでに述べたところである。この問題については、すでに、新田(宗)教授は、﹁賃料に対する物上代位について も、法律が介入すべき事情があるか否かという観点から、検討すべきである。ここでは、賃借権の存在が抵当不動産 の担保価値にどのような影響を与えるかが重要な問題となり、この点については、抵当権に対抗しうる賃貸借と抵当 そして、前者については、さらに、短期賃貸借(三九五条)と通常の賃貸借に、 権に対抗しえない賃貸借とに分け、 さらにまた、短期賃貸借については、目的不動産に応じて個別的に検討することを必要とする。﹂と述べて類型的な考 ( 5 ) 察を試みている。また、鎌田教授は、賃料債権に対して物上代位するということの実際的な意義として、第一に、物 被担保債権の履行が遅滞しているときに、債務名義なしに賃料債権を差し押さえることができるとい う点、第二に、当該賃料債権に対する差押えが競合した場合に、物上代住権者は担保権の順位に応じた優先弁済を受 上 代 位 権 者 は 、

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第12巻 2号ーー-64 け得るという点の二点をあげ、 し か それぞれが抵当権者に相当の利益をもたらしうるものであることを肯定しつつ、 し、第一点に関しては、抵当不動産の所有者等の使用収益活動の成果を抵当権者が奪い取ることを容易にするもので あ り 、 目的物の使用収益権能を設定者に留める非占有担保権であるという抵当権の本質との調整の問題を生ずるばか り で な く 、 とくに被担保債権の債務者と目的不動産の所有者ないし賃料債権の債権者とが異なる場合(注

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平 成 一

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年一月三

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日最高裁判決の事例は然り)には、 それらの者と抵当権者との聞に厳しい利害の対立を生む危険性を字ん でいるものであり、第二の点に関していえば、抵当不動産の所有者の一般債権者等との鋭い利害の対立を生むこと、 とした上で、このような利害の対立を前提として抵当権者による賃料債権への物上代位の可否を決しようとするなら ば、抵当権者が賃料債権に対する物上代位によっていかなる目的を達しようとしているかを今少し具体的に分析し、 それとの相関において、抵当権者の利益を保護すべきか、それとも抵当不動産所有者ないし一般債権者の利益を保護 ( 6 ) すべきかを検討しなければならないと指摘としている。近時の賃料債権に対する抵当権者の物上代位の可否をめぐる 学説の傾向は、このような分析的な方向にあることは否定できないであろう。単なる物上代住の本質論によって一義 的にその可否が決まるものではないことは明らかであろう。このような学説の動向のなかで、先に挙げた二つの最高 裁判決(平成一

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年の二つの判決) の住置づけ、評価はどのようなものとなるのであろうか。鎌田教授の分析の特徴 は、抵当権者が賃料債権への物上代佐を試みる理由を分析し、 それぞれの場合の関係当事者の利害状況について考察 しているところにある。抵当権者が賃料債権への物上代位を試みる理由として五つの類型を指摘する。制不動産競売 の期聞が長期化し、被担保債権の弁済を受けるのが遅れるばかりでなく、遅延損害金も増大するので、賃料債権に対 する物上代位でこれを補おうとする場合、 制抵当権設定後の賃貸借契約により、抵当不動産の売却価格が下落するた め、この下落分を補填するものとして賃料債権に対して物上代位をする場合、例抵当不動産の売却代金からは完全な

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満足を受けることができず、 その不足分を賃料債権に対する物上代位で補充する場合、

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競売代金から配当を受けら れる見込みの全くない後順位担保権者が賃料債権に物上代位をすることにより優先弁済を受けようとする場合、仙 w 抵 当不動産の売却によって被担保債権の全額を回収することが不可能ではないにもかかわらず、あえて賃料債権から優 先弁済を受けようとする場合の五つである。 ただ、鎌田教授の分析の対象となった裁判例は、時期的にみて、最高裁平成一万年一

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月二七日判決(民集四三巻九 号 一

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頁)までのものであり、最高裁平成一

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年判決のように賃料債権の譲受人との利害調整が改めて問題とな った事例はなかったともいえる。むしろ、債権が譲渡された場合には、もはや、抵当権者は譲渡債権に対して物上代 位権を行使することはできないとするのが通説・判例であった。平成一

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年一月三

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日の最高裁判決の原審は、 む し ろこの見解に立っていた。すなわち、 民法三

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四条一一項但書が﹁払渡又は引渡前﹂の差押を必要としたのは、差押に よって物上代位の目的債権の特定性を保持し、これによって物上代位の効力を保全するとともに、第三者が不測の損 室口を被ることを防止することにあり、この第三者保護の趣旨に照らせば、払渡又は引渡の意味は、債務者(物上保証 人も含む) の責任財産の逸出と解すべきであり、債権譲渡も払渡又は引渡に該当するということができるから、目的 債権について、物上代住による差押の前に対抗要件を備えた債権譲受人に対しては物上代位権の優先権を主張するこ とができないという見解をとったものである。この原審の見解に対し、最高裁は、抵当権者の物上代位権行使に基づ く裁判所の差押命令の送達以前になされた対抗要件を備えた債権譲渡に対して、物上代住権行使の可能性を肯定した ものであり、現実に金銭の支払がなされる以前であれば、第三債務者に二重払いの危険を生ずることはないというこ とをその論拠としている。民法一二

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四条一項但書の立法趣旨を第三債務者保護にありとすることと、抵当権者と債権 譲受人との優劣を判断することとの聞にどのような直接的な論理の連闘があるのか、にわかに判断し難いものがある。

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第12巻2号 66 確かに、同条の法意を第三債務者の二重弁済を防ぐことにあるとして、第三一債務者が現実に金銭を債務者に払い渡す 前であれば、抵当権者は物上代位権を行使しうるとすることは、抵当権者の物上代位権行使の可能性をより広く保護 するという結果をもたらしうることは否定しない。しかし、抵当権者の物上代位権行使の許容によって最も影響を受 けるのは債権譲受人ではないであろうか。この両者の利害調整の基準として、民法三

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四条一項但書をどうみるかが 重要な課題であるように思われる。 この事件の事実関係をみると、賃料債権の譲受人は、賃貸人たる抵当権設走者に七千万円の貸付をしており、実質、 その担保として賃料債権の譲渡を受け、 その対抗要件を充足しているともみえる。譲受人と抵当権者との利害が正に 衝突している事例ともいえる。賃料債権の譲渡人と譲受人とが抵当権を害する意思をもって債権譲渡を行ったか否か は 別 の 次 元 の 問 題 と も い 、 え る 。 一歩譲って、平成一

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年最高裁判決の事例は、債権譲渡が、抵当権者を害する意図を もってなされたということを肯定できるとしよう。しかし、このような特徴をもった事件であるならば、事件の特性 に応じた理論の展開があっても然るべきではないかと思われる。 一般論としていえば、抵当目的物件を担保にとった 抵当権者、抵当権設定者に融資を行ってその回収方法として債権の譲渡を受けた譲受人との優劣は、 それぞれの対抗 要件の具備の問題として本来論じられて然るべき問題であろう。事件の特殊性にひかれて展開された法理を一般化す ることについては慎重である必要があろう。 四 わ り お 賃料債権が譲渡され、譲受人が対抗要件を備えた場合においても、抵当権者は、物上代位権を行使しうることを認 め た 平 成 一

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年の最高裁判決を契機に、この問題に関する解釈法理の諸相をみてきた。適用法規の解釈にあたって、

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歴史的解釈 H 立法者意思の解明は、ここではそれほど説得的な役割を果たしているわけではない。民法三

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四条但書 の立法趣旨は、第三債務者保護にあるといっても、実質的には、抵当権者の物上代位権行使と債権譲受人との利害が 対立する状況の下で、抵当権者の物上代位権行使の可能性をより厚く保護しているという実質的効果は否定し難い。 第三者の保護は後ろに引いてしまっているといわざるを得ない。抵当権者の物上代位権と債権譲受人のような第三者 との優劣ないし利害調整の局面で 一般論として抵当権者の優位を断定的にいうことは少なくとも論理的とはいえな いであろう。なんとしても、政策的判断が先行してしまっているという印象を拭うことができない。ある一定の経済 政策的目的が先にたって、 それに即応した法規の技術的解釈がなされているといわざるを得ない。抵当権者の物上代 位権行使に際して、第三債務者の﹁二重弁済の回避﹂という要請のあることは否定しないが、権利関係においてより シビア!な利害調整を必要とするのは抵当権者と第三者との関係であろう。対抗要件を具備した債権譲受人の法的地 位の保護は、債権譲渡制度において明確な意義を有するものである。そのことは抵当権者との対比においても簡単に 67 無視することのできないことのように思われる。 いかなる場合においても、先行する債権譲渡が後の抵当権者による 物上代位権の行使によってすべて否定されてしまうかのような説示は行き過ぎではないかと考える。最近の経済事情 からして、抵当権者の債権回収の可能性の確保により比重のかかる傾向は領けないこともないが、債権譲渡それ自体 も、時に、﹁担保的﹂機能を持ちうることも考えれば、今少し慎重さを要するとも思える。平成一

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年一月の最高裁判 決事例では、債権譲渡の抵当権に対する詐害性が考慮されたかとも思われるが、 それならば、それに応じた理論構成 それが対抗要件を具備した場合に も可能であったのではないかと思われる。基本的には、賃料債権の譲渡がなされ、 は、抵当権者は物上代位権をその譲渡賃料債権に行使することはできないという見解を維持しながら、具体的事情を 勘案して譲受債権者の権利行使を信義則違反として認めないという処理の仕方もあながち否定すべきことではないと

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第12巻2号一-68 考える。これまで確立されてきた判例理論を、 そ れ が 可 能 で あ る か ら と い っ て 小 法 廷 判 決 に よ っ て 変 更 す る と い う 手 法にも首を傾げる面のあることも事実である。 い ず れ に し て も 、 法 解 釈 の あ り 方 と い う 観 点 か ら み た と き 、 熟 考 し な け れ ば な ら な い 課 題 を 提 起 し て い る と い え よ 、 ﹁ ノ 。 ( 1 ) 柏木馨編・注釈民法則五三頁(西沢執筆) ( 2 ) 広中俊雄・星野英一一編﹁民法典の百年 H ・個別的観察山総則・物権編﹂五四四頁、注山参照[生熊長幸執筆] ( 3 ) この点については、前掲広中・星野編﹁民法典の百年 H ﹂五五 O 参 照 。 ( 4 ) 松田佳久﹁不動産価値理論に基づき考察した抵当権の把握する価値

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賃料債権に対する物上代位の可否の問題を中心とし て││﹂ジュリスト二六二号三二六頁。 ( 5 ) 新田宗吉﹁物上代位に関する一考察││抵当権の物上代位を中心として(四こ明治学院論叢・法学研究三 O 号 五 一 頁 参 照 。 他に、同﹁物上代位﹂民法講座 3 ・ 物 権

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一 O 五 頁 以 下 参 照 。 ( 6 ) 鎌田薫﹁賃料債権に対する抵当権者の物上代位﹂(石田・西原・高木還暦記念・下)二五頁参照。なお、鎌田教授も、賃料が 賃貸人に支払われてしまった場合は勿論、これが第三者に譲渡されてその対抗要件が具備された場合や第三者のための転付命 令が効力を生じた後には物上代位権の行使はできないものとされている(判例・通説)と述べている。 ( 7 ) 高橋翼﹁物上代位に基づく差押えの意義

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﹃第三債務者保護唯一説﹄への疑問﹂銀行法務幻五六九号三六頁以下。高橋説 の疑問のうち、物上代位に基づく差押えの意義に関して、目的債権が特定性を維持している段階において、差押えが、目的債 権の譲受人等との関係において対抗要件としての意味を有するのであるから、差押えが第三債務者保護のためのものであるこ とを認めたとしても、それだけでは譲受人らに対する優先権保全の要件であることを否定することにならないという指摘につ いては、首肯しうるものがある。平成一 O 年最高裁判決が、第三債務者保護説にたって、現実的には、債権譲受人ら第三者に 対する関係においても抵当権者に優先的地位を認めていることは論理の飛躍であるように思われる。

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