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JAIST Repository: 湿地保全活動(蕪栗沼と片野鴨池)にみる対立から協調への移行プロセスの研究

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(1)JAIST Repository https://dspace.jaist.ac.jp/. Title. 湿地保全活動(蕪栗沼と片野鴨池)にみる対立から協 調への移行プロセスの研究. Author(s). 菅沼, 祐一; 梅本, 勝博. Citation. 日本地域政策研究, 7: 73-80. Issue Date. 2009-03. Type. Journal Article. Text version. publisher. URL. http://hdl.handle.net/10119/8164. Rights. Copyright (C) 2009 日本地域政策学会. 菅沼祐一, 梅 本勝博, 日本地域政策研究, 7, 2009, 73-80.. Description. Japan Advanced Institute of Science and Technology.

(2) 湿地保全活動 ( 蕪栗沼と片野鴨池)にみる対立から協調鴨の移行プロセ鼠⑳研究 Fr om Conr fona tt i ont oCol l abor ar L On:CaseSt udi esofEnvi r onmena tl Conser vat i onMovement satKabuu kr トnumaandKaa tno-a k moik e 菅沼祐一 ( 野村総合研 究所). Yuui chi Suganuma ( NomuaR r es ear chI. ns t i t u t e) 梅本勝博 ( 北陸先端科学技術大学院大学). Kat suhi r oUmemot o ( JapanAdv anc edI ns t i tt ueo fSci enc ead n Tecn h ol ogy) ear e2wet i onmovemens t,Kabuu kr トnumaandKaa tno-k The「 l andconser va. t amoi k ei n s tofWet l andsofI nen t「at i onaHmpor t ance. Japan.Bot har easaer r egse itr e. donteR h amsa「Li fona tt i ont Theseaec r ases. t hatchangn. igpr ocessesf r om conr ocol l abor at i oncanbeobse「 ved. ordeas tH,t hef oo Hwi t epsar oundasat t nt hi ss t uy d ,whensear c. hi ngf ng7s ef 「 ansI L t i on pr ocess.( i. eontee h n vi r onmena t一pr oe tct i onsi de. )Mak i n. ganaf t er nat i v. evi si onbyanadvocat i ve. ( i i )Ar r angn. igteme h. et i ngwi t. hanadvocat eandac0日b a or ao tr .. 佃)Pr oposi ngana. 一 t er nat vi si ont oacol l abor ao trbyanadvocae t.( i v)Get t i nganappr oval f r om acoa Hbor ao tr .( V)Mee. t i ng. var i ousf oca. 一 aco tr sonte両 h r oduct i onofacoa ‖bor ao tr .( vi s t enn igat ent i vel i ous )Li t yt ovar l ocaa l co tr ' vi i )Havn. igane. wl ocali magebyeachaco tr . swor d.. And(. 1 研究の背景. くことは、現在の地域づ くり ・まちづ くりの基本. い. 環境保全の領域には、開発か保全か とい う二者択. 的課題の 1つ と考えられる。. 一的な意見がある。 しか しなが ら、 日本各地の都市 的地域と自然的地域とが近接する場合な ど、完全な. 2 研究の目的と方法. る保全を選択することが難 しい場合は数多い。 この. 本研究では、かつては関係主体が互いに対立的感. ような状況に対 し、近年では持続可能な開発、賢明. 情を有 していたことが観察できる蕪栗沼 ( かぶ くり. な利用 ( ワイズユース)、自然 ・生態系の) 晩芯的管理. ぬま、宮城県大崎市)、片野鴨池 ( かたのか もいけ、. など新たな考え方が提示 されてきている。 このよう. 石川県加賀市)、これ ら2土 砂或 ( 図 11)を事例研究. な考え方は、これまでの二項対立的 とな りがちな考. の対象 として、関係主体による行為を分析 し、そこ. え方か らの転換を求めるものである。. か ら対立か ら協調へ と転 じていった移行 プ ロセ ス. 開発か保全かといった二項対立的な考え方ではな. 協調-の移行プロセス」 ( 以下 「 )を明 らかにす る。. く新たな別 の考え方の実現 とい う視点か ら各種の環. 分析にあたっては、蕪栗沼お よび片野鴨池で環境. 境保全活動をみてみると、対立的状況であった もの. 保全活動に取 り組む関係主体 ( 以下 「 アクター」)へ. を協調の状況へ と転換させ、そ して新たな取 り組み. のインタビュー調査 ( 往 ') を実施 した。. - と成長 させている事例がある その対立か ら協調. 蕪栗沼 と片野鴨池は、いずれ も 「 特に水鳥の生息. と転 じていったプロセスを探ってみると、人 と人. 地 として国際的に重要な湿地に関す る条約」( ラムサ. との出会いがきっかけとなっている。 このよ うな出. ール条約)に登録 されている湿地 ( 以下 「 ラムサー. 会いを生み出 し、地域に新たな取 り組みを創造 して. ル条約登録湿地」 ) である。. 。. -. -7 3-.

(3) 図- 1 蕪栗沼と片聖開島池の位置. 的感情を有 していた坂網猟の猟師 と水鳥保護の立場 の人 とが協調- と転 じていたことを報告 している。. LJ \. 管 ( 2 0 0 6 a、 b )は、江戸時代か ら現在 までの片野鴨池. ヽI JJI T. の歩み と全体像を明 らかにす るとともに、猟師の側. ; も 1 :,. ( 石川 県 加賀市) r -J\ / ' ノ ☆蕪栗沼 片野鴨池 7 ・ ( 宮城 県 大崎市) t. か らみた 鳥保護の立場の人に対する意識変化の観 水. 察結果を報告 している。. lI. t. また、片野鴨池でカモの狩猟についての対立的感. I. 1 9 8 6 )、中村 ( 1 9 8 9 )、 情が存在 していたことは、 牧野 (. \l t一 日、′. / ト杉山 ( 1 9 9 0 )、安室 ( 2 0 0 3 )により確認できる。 3 先行研究 レビュー. (3)協調へのプロセスについての先行研究. 分析対象 とした 2事例 とも、かつては対立的状況. 地 域づ くり 。まちづ くり分野では、協調を実現 し. にあったが、現在では協調の状況- と転 じている事. てい くためのプロセスについて、いくつかのモデル. 実は、先行研究により把握できる。 しか しなが ら、. 2 0 0 2 )の知識創造 自治体 が提起 されている。梅本 (. 協調-のきっかけとその背景については、先行研究. モデル、S u e n a g a( 2 0 0 4 )の知識通訳者モデル、敷 田. では確認できない状況にある。なぜそのような協調. ( 2 0 05 a、 b)のオープン 。 サーキッ トモデルなどがあ. が生まれたのかについては研究 されていないところ. 1 9 8 6)は、合意形成には賛同一共感 る。 また宮西 (. である。. 一納得一同意 とい う段階性があることを指摘 してい. (1)蕪栗沼についての先行研究. る。. 蕪栗沼での取 り組みについては、香川 ( 2 0 0 0 )、出. これ らモデルは協調が成立 している状況全体を対. 川 ( 2 0 0 5 ) らにより、これまでの歩み と全体像が明. 象 とするモデルであ り、移行プロセスのみに焦点を. らかにされている。また、人 と人 との出会いがきっ. 絞った理論的な協調生成モデルはみ られない ところ. かけとな り新たな活動が始まったことも報告 されて. である。また、対立的な価値観を有 していたアクタ. いる。2 0 0 0年には、地元の新聞 駄2 )で水鳥保護活動. ー同士による互いの歩み寄 りのプロセスに焦点を絞. に取 り組む人 と蕪栗沼周辺で農業を営む人 との出会. った理論的モデル もみ られない ところである。. いが蕪栗沼での新たな活動のきっかけであったこと 4. 2 0 0) 7 は、 が紹介 されている。 また、菊池 。鷺谷 (. 2事例か ら観察 されるアクターのモデル. 関係主体へのインタビュー ーをもとに、蕪栗沼周辺に. 2事例での協調-の移行プロセス ( 後述)をみる. 住む人たちの 日々の暮 らしと蕪栗沼 との関わ りにつ. と、その移行に深 く関わ りのあった主体 として 3つ. いての価値観の変化を報告 している。. のアクターか らなるモデル ( 図 - 2)が観察できる。. 3つのアクターの うち 1つめは、環境保全の重要. ( 2)片里神島池についての先行研究. 性を提起 したアクター 「 唱道アクター」 である。 2. これまでの歩み も含め片野鴨池での取 り組みにつ. つめは、当初は水鳥保護には反対であ り対立的立場. いては、敷 田 ・森重ほか ( 2 0 01 ) らによ りその経過. にあったが、唱道アクター との出会いを通 じてその. が報告 されている。 また安室 ( 2 0 0 3 )は、江戸時代. 理念に賛同 し、その後は唱道アクター と一緒に活動. か ら続 く伝統的なカモの狩猟法 ( 「 坂網猟」と呼を 盈し. を推進 してい くアクター 「 協働アクター」である。. ている。 )の研究の立場か ら、それまでは互いに対立. 3つめは、地域の農家や住民であ り、土 抄或づ くり ・. まちづくりの活動を地域に広めていくにあたっては -. 7. 4. -.

(4) その支持が必要 とされ るアクター 「 土 抄或パー トナー」. 還を求めていた。水鳥保護問題 とは、冬期、シベ リ. である。 この地域パー トナーは、当初は傍観者であ. アより飛来す るカモや雁など数多 くの水鳥の保護 と、. り、環境保全には否定的な考え方を有 していた と考. それによる農作 物への被害の問題である。沼周辺の. えられるアクターである。( 以降の事例分析では、こ. 農家は、 水鳥の排除による稲の食害の回避 とともに、. れ ら3つのアクターの呼称を使用す る。). 食害の補償を求める状況にあった。. ( 2)蕪栗沼での協調への移行 プロセス. 図-2 アクターモデル 「 価値観の変化. 図-3は、蕪栗沼に関わるアクターか らみた要求. 」. L ・・ t1 ・ ・. ) し、関係性 を 事項を図化 ( 以下 「 要求事項マ ップ」 整 理したものである。 図-3 蕪栗沼での要求事項マップ. 価値観 の変化. また、 2事例のいずれについても、協調後にはこ れ ら 3つ の ア ク ター が集 う協 調 の場 ( co mm on gro und) が形成 されている。場 とは、定期的な協議. の場であった り、これ らのアクターがメンバー とし て参加す るNPOなどである。 蕪栗沼の場合、水鳥保護団体の代表 ( 唱道アクタ. 5 蕪栗沼の事例分析. ー) と水 田耕作か らの撤退を求められていた白鳥地. (1)蕪栗沼の概況. 区の耕作農家の代表 ( 後に、協働アクター となる。). 蕪栗沼は、宮城県北部の大崎市田尻地域 ( 旧田尻. との出会いがきっかけとな り協調-の移行が始まっ. 町)にある約 1 5 0 h aのラムサール条約登録湿地であ. ている。 これ ら2つのアクターは、直接的な対立関. る。冬期には、シベ リアより数多 くの水鳥が飛来 し. 係 にはない状況にあった。. 越冬す る湿地である。現在の蕪栗沼及びその周辺で. 蕪栗沼での主たる対立的事項は、. 水. 鳥被害対策を. は、野鳥観察に加えて、観光 。環境教育 。環境保全. 求める周辺農家 と水鳥保護を求める 鳥保護団体 と. 型農業など多様な活動が展開されている。. の価イ 観 の面での対立、遊水機 能強化のために蕪. 水. 1 9 9 0年代の半ばまで、蕪栗沼は、 3つの問題 を抱. 栗沼の掘削を計画 していた国 ・県 とその計画は水鳥. える土地であった。洪水防止問題、耕作撤退 ( 農地. の生息環境を損な うと計画見直 しを求めていた水鳥. 返還)問題、水鳥保護問題である 洪水防止問題 と. 保護団体 との計画面での対立、これ ら2つであった。. 。. は、蕪栗沼が担っている大雨時の洪水防止に向けた 遊水地機能の弓 鋸ヒの問題である。耕作撤退 ( 農地返. 以下は、協調移行-のきっかけを生み出 した唱道. 還)問題 とは、蕪栗沼に隣接する白鳥地区 ( 面積 5 0 h a. アクター ( 水鳥保護団体の代表)へのインタビュー. の農 )の国 ( 土地の管理者)-のi 盛置問題である. 結果. 河川管理者である国 ・県は、白鳥地区の区域 も遊水. ロセスに沿って整理 したものである。. 地. 。. 池 として管理するために、耕作農家に対 し農地の返 -7 51. ぉよび先行研究をもとに、協調-の移行プ. ( 往 3).

(5) えたとい う。「 農業者を巻き込む新たな枠組みをつ く. ①伊豆沼での長年の取 り組みか ら知見を蓄積 蕪栗沼での取 り組みに大きな影響を与えたものに. らなければいけない」 と考えたとい う。農業者が自. 唱道アクターによる伊豆沼での取 り組みがある。伊. 分 らの農業のことを考え ・取 り組み、その取 り組み. 豆沼は、蕪栗沼の北 8kmほどの位置にあ り、日本国. が結果 として鳥にもよい 環境を提供するような姿を. 内で 2番 目のラムサール条約登録湿地 として知 られ. 示す ことが大事であると考えた とい う。そのような. ている湖沼である。伊豆沼は、国の天然記念物-の. ことが見えてきた とい う。. 指定、宮城県の自然環境保全地域 ・国指定の鳥獣保 護区特別保護地域の指定など法的な規制が講 じられ てきた地 戒である。唱道アクターは、長年、伊豆沼. ( 宣環 境に関心を持つ多くの人たち-の問題提起 唱道アクターは、蕪栗沼の良さを多 くの人に紹介 するとともに、当時検討 されていた蕪栗沼の全面掘. 白 んできていた。 での環境保全活動に取 り糸 唱道アクターは、伊豆沼での取 り組みを通 じて得 てきた経験を参考に、蕪栗沼での環境保全活動に取 り組んできたとい う。唱道アクターは、伊豆沼での 取 り組みを通 じて、こうしてはいけない、こうした らうまくい かない とい う失敗事例 。経験を積んでき たとい う。改めて蕪栗沼のケースを振 り返った時、 非常に順調にいったケースであった とい う。蕪栗沼 の場合、蕪栗沼のみで考えるのではなく、伊豆沼で の経験も含めて考えることが有効であったとい う。 ②鳥がいることが農業にプラスとなるという考え方. 削計画-の危倶などを環境に関心を持つ多 くの人た ちに問題提起 していった とい う。数多くの人-の問 題提起が功を奏 し、蕪栗沼の全面掘削計画が取 りや めとなる。 この計画中止が契機 とな り、水鳥保護の流れ- と大きく変わっていったとい う。 ④地域のアクター との出会いと協調-の始ま り 唱道アクターによる数多くの人たちへの問題提起 を通 じて、蕪栗沼周辺で農業を営む とともに農地の 返還を求められていた白鳥地区の耕作農家の代表で もあったアクター ( 後に協働アクターとなる。)が共 通の知人を通 じて紹介 される。. の必要性を言 霊哉 伊豆沼がラムサール条約登録湿地になったことは 水鳥保護の面では大きな成果であったとい う。 しか しながら、水鳥の立場か ら見ると、夜間はね ぐらで ある伊豆沼にいるが、昼間は餌場である周辺の水 田 にいることとなる。雁などの水鳥は、餌場 として水 田を利用 してお り、間接的には地 或の農業に依存 し. この協働アクター との出会いがきっかけとな り、 蕪栗沼での新たな取 り組みの始まりとなった蕪栗沼. 図-4) 探検隊の取 り組み- とつながっていく。 ( 図 -4 蕪栗沼での唱道アクターと協働アクターと の出会いの経路 伊豆沼 ・ 蕪栗沼の見学に訪れた 環境に関心があり影響力のある人 への情報発信. この人が 日. 協働アクター. -. ている状況にあったとい う。. ・t =. これまでの慣行型農業の枠組みの中では、水鳥の 生息については考慮 されていない し、鳥にとって利. 唱道アクター ⑳. 二 号. _ ‥∴ i: ) 也 域での活動へ. 知人を通じた紹介. ∴‡. 用 しづ らい環境にますますなっていき、このままの 状況で行 くと、いずれ鳥たちがい なくなって しまう ことも十分予想できたとい う。そのような事態を招 かないためにはどうした らよいか と考えると、最終 的には、「 鳥がいることが農業に恩恵 をもたらす具体 的な姿を示さないといけない、そ してそれを考え、 提案 していかない といけない」 と唱道アクターは考. ⑤協働アクターによる地域の人たちの紹介 出会いの後、協働アクターは、唱道アクターに蕪 栗沼の周辺に住む人たちを数多 く紹介 していったと い う。紹介 していった人たちは、これまでの農業や 地域での暮 らしについて独 自の思いを持った人たち であ り、手強い人たちであったとい う。そのような. -7 6-.

(6) 人たちとの対話を重ねてい くことを通 じて、互いの. 6 片望 珊島池の事例分析. 考えが同 じ方向に向いていったとい う。振 り返 ると、. (1)片望 珊烏池の概況. このプロセスは、地域づ くりに不可欠なプロセスで. 0 h a 片野甲 馳 は、石川県南部の加賀市にある約 1. あったとい う。地域に大きな動きを作 り出 して行 く. のラムサール条約登録湿地である。 冬期には、シベ. には、手強い相手をどう味方にできるかが重要であ. リアよりカモや雁などた くさんの水鳥が飛来 し越冬. るとい う。 手強い相手ほど力強い味方になった とい. する場所である。近年の片野鴨池では、環境教育の. う。最初は、相手が考えていることを傾略 し、想い. 一環 としての池同辺での水田耕作の復活に加 えて、. を全て引き出すことが効果的であ り、お互い仲間で. 野鳥観察 。観光 ・環境教育など、多様な 目的で利用. あるとい う気持ちが通 じるようになると、お互い変. されている。. わってきたとい う。. 片野甲 馳 の本来の機能は、農業用水供給のための 貯水池である。また、片野鴨池の周 りでは古 くか ら. ⑥ 地域の人たちによる新たな価値観の獲得. 蛾. 水田耕作がされてきていた。 しか しなが ら、米価の. パー トナー となった地域の人たち-のインタ. ビュー記録 ( 菊池 。鷺谷 2 0 07ほか)をみると、 「 従 来はなかった誇 り・ 価値 。 地域の宝を兄いだす」「 興 味が湧 く・ 興味が育っ」「 未来の ビジ ョンをゆるやか に共有する」 といった言葉が観察 され る。 地域の人 たちは、自らが暮 らす地域についての新たな価値観 を獲得するに至っている。. 抑制や、湿田であ り水 田耕作が しづ らかったため、 池周辺での水 田耕作は徐々に行われなくなる。 1 9 9 9 年には、ついに池周辺でのすべての水 田耕作がされ なくなるに至る。また、江戸時代より続 く坂網猟 も 猟師の高齢化によりその狩猟技術の継承 ・保存が課 題 となるなど、片野鴨池を取 り巻 く状況は大きく変 貌 しつつあった。. 以上までが、蕪栗沼における対立か ら協調-の移 行プロセスである。. (2)水鳥保護の立場か ら見た坂網猟への理解. 片野鴨池同辺では、江戸日 計 宅より伝統的な鴨猟で. (3)蕪栗沼での協調へのきっかけ. 蕪栗沼の場合、唱道アクター と協働アクター との. ある 「 坂網猟」が行われてきている。猟銃を使用す. 出会いが協調移行-の重要なきっかけであったこと. るのではなく 「 坂網」 とい う手綱に竹の柄を付けた. が観察できる。. ものをカモが飛んで くる上空に投げ上げ、綱に絡ま. 最初に出会った当時を振 り返 り、唱道アクターは. せて とる猟法である。猟師 らは、「 大聖寺捕甲 駿臥含猟. 協働アクター となった人に 「 雁は全国の中でここに. 区協同組合」 ( 以下 「 捕甲 敵巳合」 )を組織 し、狩猟技. しかい ない し、環境に敏感な鳥である。 ここは、環. 9 6 9年には、 術を江戸日 計 tより継承 してきている。 1. 境に敏感な雁が住めるほど豊かな環境である。それ. 県指定民俗資料」 「 坂網猟法 と用具」 が石川県の 「. を利用 してはどうか。農業に大きな恩恵 をもた らす ことができるのではないか。」と話 した とい う。 雁は、. に指定 されている。 このように文化財 としての価値を持っ坂網猟に対. 害鳥ではなく、ここに しかいない鳥であ り、地域の. し水鳥保護の立場であった山下 ( 1 9 9 3 )、山本 ・大畑. 宝であることを話 した とい う。 このような唱道アク. ( 2 0 0 4)は、坂網猟はワイズユースの形態の 1つで. ターか らの投げかけに対 し、地域で農業を営んでい. あると指摘 している。 中でも山下 ( 1 9 9 3 )は、片野. た協働アクター となった人は農業-のプラスの効果. 鴨池がラムサール条約に登録 される以前の時点で坂. を感 じ取ったのではない か、 と唱道アクターは感 じ. 網猟はワイズユースの 1つの姿であることを指摘 し. たとい う。. ている。. -7 7-.

(7) (3) 片望 神島池での協調への移行 プロセス. 1 995年 9月、W J 鰍鳩 乙 察館 に北海道 より新たなチー. 図-5は、片野鴨池に関わるアクターか らみた要. フ レンジャーが着任する 赴任後、前任者お よび関. 求事 項を図化 ( 要求事項マ ップ) し、関係性 を整理. 係者 よりレクチャーを受けるが時間が限 られていた. したものである。. ため、十分な情報 を得に くい 状況にあった とい う。. 。. 猟師 らが細線 する捕配 線邑合 とチーフレンジャーを. このため、片野鴨池に関連す る情報を自身で収集 ・. つな ぐアクター として国指定鳥獣保護区の管理 員が. 995年当時は、 検討 した とい う。その結果、 着任 した 1. 合に所属す る猟師 存 在す る.その管理員は、孝 別 納1. シベ リアより渡来す るカモの数が相 当減 っていたこ. で もあ り、坂網猟 と水鳥保護の両方 と関係 を持つア. とが一番の問題であることを理解 した とい う。. クターであった。 ( 夏国 指定鳥獣保護区の管理員 ( 猟師) との出会い 図-5 片里開島池での要求事項マップ. 駄邑合のメンバーの中に国指定鳥獣 保護区の管 捕甲 理員でもあった人がお り、唱道アクターは、赴任後 にその猟師か ら片野鴨池についていろいろな話を聞 いた とい う。( 図 - 6)その後、この人 とのつなが り は、ふゆみずたんば農法 ( 冬季に田んぼに水 をは り 水鳥の餌場 とす る農法)、 域. ブラン ドとしての米の. 生産 。販売な ど、協調生成後の新たな取 り組み- と つながっている。 図 -6 唱道アクター と協働アクター との関わ り 国指 定 鳥獣 保護 区の. 片野甲 馳 では、鞘銚妄 観察館への新 しいチー フ レン. 協 働アクター. ジャー ( 唱道アクター)の赴任が契機 とな り協調の移行プロセスが始まっている。価値観の面で対立 的立場にあった水 鳥保護の立場である主体 と猟師の 人たち ( 後に協働アクター となる。)との良好な出会 いが最初のきっかけとな り協調が実現 されるに至っ. 着任 後 、片野鴨 池 についての いろいろな話を聞く. ている。 以下は、 協調の状態を導き出 した唱道アクター ( 鴨. ③協働アクター となった人たちとの良好な顔合わせ. 池観察館の前チーフレンジャー)へのインタビュー. 唱道アクターが、捕取 離見合の人たちと初めて会っ. 結果 ( 往3 )ぉよび先行研究をもとに、協調-の移行プ. たのは、狩猟期間の始めに毎年行われてい るカモの. ロセスに沿って整理 したものである. 1 供養祭 ( 甲 矩豪供養祭)であった とい うO赴任後の 1. 。. 月に例年行われているカモの供養祭に顔 を出 し、捕 ( 事新たなアクターであるチ-フレンジャーの登場 片野鴨池での協調-の移行プ ロセスは、鴨池観察 館の管理運営を受託 していた 日本野鳥の会の人事異 動による同館-の新たなチーフ レンジャー ( 唱道ア クター)の赴任か ら始まっているo. 取 敵臥合の人たちに着任の挨拶 を した とい う。 きちん と挨拶 を したことによ り組合の人々に好印象を持っ てもらえたのであろ うとい う。 唱道アクターは、自身の前任地であった北滴道 で の経験 を通 じて、次のよ うな認識を持っ よ うになっ. 7 8-.

(8) ていたとい う。( i ) 猟師も生き物についての知識が豊. とができる人やグループもいれば、一方で、人 と人. かであり、猟師も自然保護には必要な主体であるこ. との信頼関係を持てるか否かを重視する人や グルー. 農林 と、( i i )日本での自然保護には、第 1次産業 (. プもいたとい う。片野鴨池での猟師 との関係では、. 漁業)が元気であることが必要であること、 ( i i i ). お互いの信頼関係が重要であった とい う。片野鴨池. 町内会など地域社会 との良好な関係が必要であるこ. の場合、信頼関係が築かれたことが協調実現にあた. と、である。片野鴨池での取 り組みを振 り返ると、. っての最も大きな要因であった といえよう。 以上までが、片野甲 馳 における対立から協調-の. 北海道での経験が基盤 となっていた とい う。 北海道での経験が基盤とな り、唱道アクターは、. 移行プロセスである。. 坂網猟の猟師の存在を肯定するとともに、坂網猟が 持続可能な水鳥保護の 1 形態であると考えるワイズ. 7 2事例にみる協調への移行 プロセス. ユースの考えを自らも支持 し、猟師たちに提示 して. 2事例でのプロセスか ら、対立か ら協調に至るま. いる。それに対 し、 協働アクター となった猟師 らは、. での流れを整理すると、 表 -1のように整理される。. 自らの活動を是 とする肯定的考え方を提示 されたこ. 協調-の移行プロセスは、 7つのステ ップか ら構成. とにより、唱道アクター との対話に価値を見出した. されていた。また、これ らの対立か ら協調- と転 じ. 2 0 0 1 )は、環境問題の原因の 1形 といえる。高田 (. るまでの移行プロセスをアクター間でのや り取 りと. 態 としてアイデンティティの蟹損を指摘 しているが、. して図化すると、図- 7のように整 理できる。. この猟師たちの価値観の変容は、高田が指摘するア 図-7 協調への移行プロセス. イデンティティの投院が満たされたケースとみるこ とができる。. ②協働アクターとの出会い ( 参新たな考え方の提案. ④お隣としての良好な関係づ くりの必要性への認識 鴨池観察館の管理者 ( チーフレンジャー) として は、同館に隣接 して捕野 馳邑合の事務所があり、お隣 さんとして良好な関係を築いていきたいと考えたと い う。当時の猟師たちの第一印象は、前任地であっ た北海道のウ トナイ湖でつきあいのあった漁業関係 者 と類似 した印象であったとい う。 猟師とのつきあいが深まる中で、猟師たちから聞. 8 まとめ. いたことが レンジャー としても非常に勉強になる知. ケースとした 2事例での協調-の移行プロセスを. 見が多かったとい う。 ラムサール条約が提唱するワ. みると、それ までは二項対立的な価値観を有 してい. イズユースの 1つの事例であるとい う考えをレンジ. た対立的アクター ( 協働アクター、地域パー トナー). ャー 自身で持つ とともに、その考えを関係する人た. が、唱道アクター との対話を通 じて、唱道アクター. ちに広げてい くことが、お互いの理解の醸成に貢献. が提起する二項対立を超越する包括的な新たな考え. したのであろうとい う。. 方を受容 し、そ して新たな価値観を獲得 し共有 して ったことが観察できる。またそこからは、協調移. い. ⑤対話の深ま りを通 じた相互の信頼関係の醸成. 行への基盤 として唱道アクターが具体化 した包括的. 唱道アクタ←によれば、 それまでの経験の中には、 理屈をつなげ議論 していくことにより理解を得るこ. な新たな考え方の有効性が観察できる。 本研究では、対立から協調への移行プロセ スを明. -7 9-.

(9) らかにすることを通 じて、協調実現に向けた課題 と. そ してより多 くの人たちにその考え方を広めていく. して、二項対立的な価値観を超越 し互いに賛同しあ. か とい う、とい う課題を発見 したところである。. える包括的な新たな考え方をいかに具体化するか、. 義一 1 2事例での対立か ら協調へのプロセス 蕪栗 沼. 片野鴨池. 伊 豆沼での長年の取 り組 み か ら知見を蓄積. 北海道 での経験か ら知見を蓄 積. 7つ のステップの特徴 ステップ l 唱道 アクター による対 立す る立場 の人も受容 可能な包括的な 「 新 たな考え方」の具体化 ステップ2. それ 唱道アクター を通じた新 による多く たな 「 人と の人の 出会 の情報発信 い」の誘発と\ 地域の農業者 との 出会い. 捕弔 駄【 1 合の活動- の参加. ステップ3. 協働アクター となる「 人との 出会い」と包括的な 新たな考え方の 「 提案 」. 鳥 が い ることが 、農 業 に恩 恵 をもたらせ ないか--と提起. 坂 網 猟 は ワイズ ユ ー スの 1 形 態ではないだろうか一一-と提起. ステップ4. 協働 アクター となる人か らの 新 たな考 え方 の「 賛 同の獲得」. 特徴 豊かな地域 の宝としての 可能性の発 見. 坂網猟 に対す る肯定的意見の. ステップ5. 多様な地域の人たちとの 「 出会い」. 人たちと 協働 アクター の 出会い を介 した地域 の. よきお 隣さんとしての交流. ステップ6. 地域 の人たちが有す る想 いの傾聴 を手がか り 地域 の 多くの農 業者 との傾 聴 とした 「 相互学習的対話」の実践 と対話を通じた学習. ステップ7 地 域の人たちによる「 新たな価値 観の生成 」. 地域 の農 業者 による新たな価. 受. 容. 猟 師 との傾 聴 と対 話 を通 じた 学 習. 猟 師 らが 自ら持 っていた精神. ※ 参 考 文 献 出川真也 「 渡 り鳥との共生から見出した近 自然農法の未来 田尻 町 ・蕪栗沼と周辺の水田湿地 蕪栗ぬまっこくらぶ」 ( 自然 再生を推進する市民団体連絡会編 『 漆 、里、川 、海をつなぐ 自然再生』2 0 0 5年)中央法規出版,1 1 5-1 2 8頁。 香川裕之 「 なんにもないから なんでも出来る 蕪栗沼方云 Q ( 特 定非営利法人まちづくり政策フォーラム 『まちづくり政策フ ォーラムニュース5月号』2 0 0 0年) 。 「 害鳥」は 也域を結ぶ 「 宝」になれるか 菊池玲奈 ・鷺谷いずみ 「 宮城県 ・ 蕪栗沼周辺の田んぼをめぐる取 り組みを通 じて」( 鷲 谷いづみ ・鬼頭秀一編 『自然再生のための生物多様性モニタ リング』2 0 0 7年)東京大学出版会,1 2 5-1 41頁。 小杉山晃一 「 日本野鳥の会石川支部報」 日本野鳥の会石川 支瓢 1 9 9 0年。 ‡ l , 馳 牧堅 邦封言 「 珊馳 と坂網」 ( 写真集 E 片撃 能登印刷出版吾編 『 の鳥たち』1 9 8 6年)能登巨 関り ,7 6-7 8頁。 r l ・ 鵬気 力」を高めることが 「 まちづくり」一住民の力 宮西悠司 r と市街 雌 備」都市計画,1 4 3 ,1 9 8 6年,2 5-3 3頁。 中杵玲子 「 至 妙物と自然の 〔 共存〕最前線 片野の鴨池 」週刊宝石, 4 5-9,1 9 8 9年も 敷田麻実 ( a )「 よそ者と協働する地域づくりの可能性 片堅 珊島地 におけるオープンソース型生態系管理プロセス」研究画報, 1 1 ,2 0 0 5年,3-31頁。 敷田麻実 ( i ) )「 サーキットモデルによる創成教育の学習モデルJ 工学教育 5 3-1 ,2 0 0 5年,3 5-4 0頁。 敷田麻美 ・ 森重昌之ほか 『 片里珊馳 の環境資源による旭 或経済刺 激効果の評価に関する研究』2 0 01年。 S aoh tsiSe un ag a,7 7 7 eHl oeo f肋old wegeI / 7 t e Zl PでJ e l ・ sI ' n . 加 / 7 e S eFs z 'jlle ・ 1s ' :7 力T Ie e Cs beStd u1 e so fL oa cjFl ' . d7 eγ l P ol l ◆ c y1 nJp aan,Po rc e eigo dn fTeTefhBe h wlt ir mil a C o nf e r e n c eo ft h el nt e r n at i o n all ns ti t ut eofFi s h e ri e s E c o n o mi c sa n dT r a d e( HF E T2 0 0 4 J A P A N) ,2 0 0 4. 菅豊 ( a )「 あらそ う人びと、つながる人びと コモンズの歴史か 第3 3 ら見たアクターの異質性が生み出す困難 さと可能性」( 回環境村会学会セ ミナー資料) ,2 0 0 6年。 e. 菅豊 ( b)「 里川の異質性社会 あらそ う人びと、つながる人びと」. ( 島越浩之 ・陣内秀信ほか編 『 里川の可能性』2 0 0 6年)節 曜社,3 6-6 5頁。 高田昭彦 「 環境 N P OとN P O段階の市民運動 日本における環孝 義墨 動の現在」( 長谷川公一編 托叢座 環簸社会学 第 4巻 環境運 動と政策のダイナ ミズム』2 0 01年)有斐閣,1 5 4-1 7 8見 梅本勝博 「 知識創造 自治体 地 或のナ レッジマネジメン トによる 杉山公造 ・永田晃也 ・下鴨篤編 『 ナ レッ 地味姥治モデル」 ( ジサイェンス 知を再編する6 4のキーワー ド』2 0 0 2年)舵 伊国屋書店,6 2-6 5頁。 山本浩伸 ・大畑孝二 「 ラムサール条約登録湿地 7 片野鴨池」私 たちの自然,4 5-1・2 ,2 0 0 4年,2 0-2 3頁。 山下弘文 『ラムサール条約 と日本の湿地 湿地の保護と共生への 提言』信L L J 社出版,1 9 9 3年,565 9頁。 安室如 「 農、漁、猟一生活者にとって本業とは何か ? 水田漁按 とカモ猟からみる生業と自然の関係」ミツカン文化センター 2 0 0 3年,ht t p: / / w w w . mi z u . g r . j p / p e o pl e / p pL01 a . ht ml o. ※注 1)2 0 0 7年 8月、1 1月、1 2月にアクター-のインタビューを実 施 した。 2)河北新報、2 0 0 0年 1 2月 1 9日による0 3)インタビューを実施 した唱道アクターは、いずれ も学術誌の寄稿、シンポジウムでの講演など、専門的知見を有するア クターであった。既存の先行研究は、活動内容に着 目した研 究が中心であり、唱道アクターがどのような活動を行ってき たかとい う行為については断片的にのみ把握できる状況で あった。そこで本研究では、唱道アクター-のインタビュー を実施 し、唱道アクターによるそれまでの行為を把握した〔 , そ して、唱道アクター等による各種の行為のつなが りを対立 から協調への移行プロセスとして整理 している。. -8 0-. ■l.

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参照

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