第 52 号(2016)論 文
レーザ距離計を利用した森林内位置情報測定装置の開発
Development of portable 3D measuring instrument for forest
stand using a simple laser rangefi nder
松木 愛子1・村上 毅1・田坂 聡明1・有賀 一広1・松英 恵吾1
Aiko MATSUKI 1, Takeshi MURAKAMI 1, Toshiaki TASAKA 1, Kazuhiro ARUGA 1, Keigo MATSUE 1 1
宇都宮大学農学部森林科学科 〒 321-8505 宇都宮市峰町 350 Department of Forest Science, Faculty of Agriculture, Utsunomiya University, 350 Mine, Utsunomiya, 321-8505, Japan
要 旨
作業道新設のための踏査や林分構成の把握のため,森林内微地形や樹木位置などの簡易な測定が必要とされてい る。本論文では,市販のレーザ距離計(Leica DISTO A6)と Arduino 制御の 1 軸,2 軸回転テーブルを使用した簡 易な 3D 測定装置を製作し,林分内の微地形,樹木位置などをポイントクラウドデータとして簡易に測定する手法 を検討する。作業道通過予定点周囲の地形測定実験を実施した結果,1 軸回転テーブルを用いた装置では,ポール 横断測量の距離分解能 10cm を上回る詳細な測定ができることが明らかにされた。さらに,2 軸回転テーブルを用 いた携帯型の 3D 測定システムを作成し,林分内の 2 点においてポイントクラウドデータの作成を行った後,これ らの 3 次元点群データにマージし,樹木位置および枝下高の自動推定のためのアルゴリズムの検討を行った。この 結果,今回開発した 3D 測定システムでは,樹木位置の推定は可能であるが,胸高直径推定を行うためには点密度 が低く,また合成時の誤差が大きいため明確な推定は困難であることが明らかにされた。 キーワード:森林測量,レーザ距離計 (LRF),地表面形状測定,点群データ,Arduino ABSTRACT
Rapid measurement of forest stands and topography is an important issue in preliminary research of forest roads construction and forest planning. In this paper we present an efficient method to obtain topographic point cloud data in the forest stand, using a laser range finder (Leica DISTO A6) and an arduino controlled 1-axis and 2-axis rotary tables. First, ground surface around forest roads were measured with 1-axis rotary table and automatic detection algorithms. As a result, it was cleared that ground surface could be measured more precisely than 10-cm distance resolution in cross sectional survey using poles. Next, 2-axis rotary tables controlled with Arduino was constructed as portable 3D measuring system. Then, trees data measured from two different points in the forest stand were merged into one 3D point cloud data by a technique of computer graphics, and algorithms for automatic detection of tree positions and branch heights were examined. As a result, it was shown that the method enabled to estimate the tree position, but the diameter at breast height (DBH) of each tree was not estimated clearly with this system because of low density of point cloud and distance error in merging.
Key words: Forest survey, laser range finder (LRF), ground surface measurement, point cloud data, Arduino
1.はじめに 森林の管理を進める上で,測量により林分内の樹木 位置や微地形などを測定し,林道設計や森林経営計画 策定を行うことは必須である。しかし,ポールやメ ジャーを使用した測量には多大な時間と手間を要する ため,林内測量の機械化による作業時間短縮と,労働 負担軽減が求められている。近年,航空機 LiDAR に よる測定(2,3),地上 LiDAR による測定(1)を活用 した研究も進められてきているが,装置・計測費用が 高額であるため,小範囲の計測には不適であること, 傾斜地での効率的利用が困難であるなどの欠点を持 つ。そこで本研究では,1ha 程度の小範囲の林分内に おける樹木位置,微地形の測定を目的とし,市販のレー ザ距離計を用いた安価・軽量な計測装置の製作と,試 作の装置を用いた樹木位置,微地形の測定を試みた結 果を報告する。 2.計測手法と装置の概要 装置の構成を図− 1 に示す。試作装置には,市販の ライカ社製レーザ距離計 Leica DISTO A6 を使用した。 このレーザ距離計は Bluetooth 機能を内蔵しており, 測定データを逐次 PC に送信することが可能であり, 操作のための専用ソフトウエアも提供されている。こ のレーザ距離計をロータリステージに取り付け,森林 内の立木位置や微地形等の情報を取得した。今回試作 したロータリステージは,作業道設計時の横断測量へ の活用を想定した 1 軸測定装置,さらに,成果をもと に改善し,森林内の樹木位置測定を目指した 2 軸測定 装置の 2 機種であり,0.9° の角度分解能を持つ。1 軸 測定装置では傾斜に沿った鉛直方向回転を行い,測定 斜距離,高低角からプロフィール図を作成する。また, 2 軸測定装置ではレーザ距離計を水平方向,鉛直方向 に回転させ,水平方向 360° 回転毎に高低角を一定角 度上昇させ,水平角,高低角,斜距離から測定点群デー タ(クラウドデータ)を求める。いずれの装置も軸の 駆動にはユニポーラ型ステッピングモータを使用し, 小型 PC ボード Arduino による制御を行った。 次に,以上の装置を用いた遠隔測定のためのプログ ラム作成を行った。装置に必要なプログラムモジュー ルは,1)レーザ距離計の遠隔操作,2)ステッピング モータの回転制御,3)データ保存のための加工プロ グラムの 3 つである。1)については,測定時間の短 縮化,操作性の向上などの必要性から,Processing 言 語による独自の操作プログラムを作成し,レーザ距 離計操作,回転操作を行った。また,取得したデー タは Bluetooth 回線を用いてホストコンピュータ上で 処理を進め,位置データと合わせて記録した。2)に つ い て は, ホ ス ト PC に USB ケ ー ブ ル 接 続 さ れ た Arduino 基盤が担当し,ホスト PC からの指令に従い, 回転方向,回転角に応じた駆動を行う。このプログ ラムは ArduinoIDE を用いて作成した。研究開始当初 には C#.net によるプログラム開発を進めていたが, ArduinoIDE が Processing 言語を母体に開発された経 緯を持つこと,グラフィック機能に特化した言語とし て開発され 3D 画像の作成・表示速度が速いこと,機 種依存性が低くホスト PC を選ばないことなど利点も 多いことから Processing 言語の使用を決定した。 なお,実地での測定では,Processing のプログラム により連続測定を開始し,その後,レーザ距離計から の距離測定結果,Arduino 基盤からのレーザ照射角(水 平角・高低角)を受信し,プロフィール,3D 画像を 逐次描画・確認をするとともにデータの記録を行った。 3.1 軸測定装置の試作と実験 3.1 測定装置の概要 装置の駆動には 2 相ユニポーラ・ステッピングモー タを使用した。ロータリステージは,モータシャフト に取り付けたフランジにレーザ距離計固定用のアルミ フレームを取り付け,ダイレクトドライブで駆動する 簡易な構造を取ることで軽量化を図った。測定試験で は測定範囲を確保するため,上記ロータリステージを 水準測量用の箱尺へ固定して使用した。今回の試験で は,箱尺の手ブレによる誤差に配慮し,地上高 4m を 取り付け位置とした。現地での測定風景を図− 2 に示 す。 3.2 試験方法および結果 試験対象地は,横断方向傾斜が 35° 程度の比較的作 業条件の悪い地域での作業を想定し,宇都宮大学農学 部附属船生演習林(以下演習林)4 林班れ小班とそ小 班の境界に設置された作業道周辺を選定した。この作 業道斜面上部は広葉樹,斜面下部にはヒノキが植栽さ 図−1 測定装置の概略合算値 図−2 軸測定装置による現地実験風景
れており,樹木による影響の特定にも役立つと考えた。 今回の実験に使用した DISTO A6 は,最大 200m ま での測定範囲を持つが,測定対象の反射条件,測定距 離等により測定時間が変化する。このため,本実験に 先立ち,レーザ距離計の測定時間を決定するため,作 業道周辺の斜面 7 地点において予備実験を行った。ス テップ角を 1.8° として傾斜に沿った鉛直方向回転を 行い,測定距離と測定時間の関係を検証した結果を図 − 3 に示す。結果より明らかな通り,距離測定に要す る時間は最大で 2 秒程度であることが明らかになっ た。これらの結果から,レーザ距離計の測定間隔 2 秒 を想定し,2 秒毎に 1 ステップモータを回転させるプ ログラム設定とした。 本実験では,レーザ照射先の立木による影響を削減 するため,測定位置を植栽列間とし,7 地点において 測定を行った。また,3 測点で下層植生除去前後の 2 回の測定を行い,下層植生・測定距離による測定値, 測定時間への影響を検討した。具体的には,レーザ照 射先の下層植生,低木,切り株などの位置を実測し, レーザによる測定の障害となる下層植生を特定すると ともに,計測に要した時間を比較し,レーザ光拡散な どによる測定精度,測定時間変化を検討した。最後に, ポール横断測量を行い,測定結果の実用性を検討した。 図− 4 に植生除去前・後の測定結果と,10cm 読み 取り単位で実施したポール横断測量との比較結果を示 す。植生除去前の測定結果には,枝条や植生による影 響が明確に現れており,特に傾斜下面のヒノキ林分に おいて樹木の枝による欠測範囲が大きいことが明らか となった。下層植生,枝除去後の測定では,ポール横 断測量結果に沿って,さらに細かいプロフィール線が 得られた。この結果から,ポール横断測量の距離分解 能 10cm を上回る詳細な測定ができると判断され,1 軸測定により微地形測定を行うことが可能であると判 断された。表− 1 に植生有無による計測時間の比較を 示す。この結果から明らかな通り,総測定時間はほぼ レーザ照射回数に比例しており,植生による測定時間 の増加は認められなかった。測定時間を平均すると 約 2 分 20 秒であったが,このほとんどがレーザ照射 時間であり,時間短縮を図るためにはレーザ距離計自 体の変更,もしくは複数台の距離計を活用するなどの 機構改善が必要と考えられる。なお,ロータリテーブ ルの移動を 1.8° と固定したことから,レーザ照射点 間距離は測点からの距離に比例して増加し,測定範囲 外縁では最大で 1.1m 近くとなった。今後,遠距離部 分についても微細に計測を行うためには,マイクロス テップ動作の導入と,斜面傾斜に応じた回転角度間隔 の設定などを検討する必要があることが明らかになっ た。また,計測範囲については,実験対象地の傾斜と 測定装置の取り付け位置の関係から両側 7m 程度を予 想していたが,ほぼ予想通りの範囲を計測できたと言 える。作業道開設時には,開設地の両側 5 から 10m の地形に配慮した設計が必要なことから,両側 7m が 測定可能であればほぼ実用的な結果であったと判断で きる。 㻜㻚㻜㻜 㻜㻚㻡㻜 㻝㻚㻜㻜 㻝㻚㻡㻜 㻞㻚㻜㻜 㻜 㻝㻜 㻞㻜 㻟㻜 㻠㻜 㻡㻜 㻢㻜 ᐃ 㛫 䠄 ⛊ 䠅 ᐃ㊥㞳䠄㼙䠅 㛤ጞゅ ⤊ゅ ᭱ᑠ ᭱ ᖹᆒ ᭱ᑠ ᭱ ᖹᆒ 㻼㻝 ᭷ 㻟㻟㻚㻝 㻜㻚㻜 㻝㻞㻥㻚㻢 㻜㻚㻞 㻝㻚㻡 㻜㻚㻤 㻝㻚㻟 㻝㻜㻥㻚㻜 㻞㻜㻚㻜 㻝㻠㻠 㻝㻠㻞 㻼㻝 ↓ 㻟㻟㻚㻝 㻜㻚㻜 㻝㻞㻥㻚㻢 㻜㻚㻝 㻝㻚㻣 㻝㻚㻜 㻟㻚㻜 㻝㻜㻝㻚㻜 㻞㻜㻚㻜 㻝㻠㻠 㻝㻠㻞 㻼㻞 ᭷ 㻟㻟㻚㻝 㻜㻚㻜 㻝㻞㻥㻚㻢 㻜㻚㻟 㻝㻚㻣 㻜㻚㻥 㻣㻚㻜 㻝㻜㻡㻚㻜 㻞㻜㻚㻜 㻝㻠㻠 㻝㻠㻞 㻼㻞 ↓ 㻟㻟㻚㻝 㻜㻚㻜 㻝㻟㻡㻚㻜 㻜㻚㻟 㻝㻚㻣 㻜㻚㻤 㻠㻚㻢 㻣㻡㻚㻜 㻞㻜㻚㻜 㻝㻡㻜 㻝㻠㻥 㻼㻟 ᭷ 㻟㻠㻚㻞 㻜㻚㻜 㻝㻟㻡㻚㻜 㻜㻚㻞 㻝㻚㻡 㻜㻚㻤 㻡㻚㻜 㻥㻣㻚㻜 㻞㻞㻚㻜 㻝㻡㻜 㻝㻠㻥 㻼㻟 ↓ 㻟㻠㻚㻞 㻜㻚㻜 㻝㻞㻣㻚㻤 㻜㻚㻟 㻝㻚㻢 㻜㻚㻤 㻣㻚㻜 㻝㻜㻠㻚㻜 㻞㻜㻚㻜 㻝㻠㻞 㻝㻠㻜 ⥲ ᐃ㛫㻔⛊㻕 ᳜⏕ ↷ᑕ㛫㝸㻔㼏㼙㻕 ↷ᑕᅇᩘ Ⅼ ᶓ᩿໙㓄㻔ᗘ㻕 ᐃゅ㻔ᗘ㻕 ィ 㛫㻔⛊㻕 図−3 測定距離によるレーザ距離計測定時間の変化 表−1 下層植生による測定時間の変化 図−4 測定結果とポール横断測量の比較例
4.2 軸制御測定装置による 3 次元計測実験 4.1 実験装置の概要 1 軸測定装置による実験の結果から,ロータリス テージとレーザ距離計を組み合わせることで,微地形 計測には十分な精度を確保できることが明らかにされ た。さらに,横断測量だけでなく森林内の位置情報の 3 次元計測を目指し 2 軸測定装置の開発を行った。 当初の計画では,1 軸のロータリテーブルを 2 台組 み合わせ,XY 座標に加えて Z 座標の測定を行う予定 であったが,器機の剛性を確保する必要上,装置重量 が増加したため,装置固定台として測量機器用の三脚, 水準部分を流用した構成とした(図− 5)。制御部分 については 1 軸測定器の Arduino を流用し,モータド ライバの追加を行った。また,ステッピングモータの 回転は,水平方向では 1-2 相励磁方式を用いることで 0.9° 毎の回転とし,垂直方向の回転は 3.6° 度を単位 移動量とした。なお,初期設定では測定範囲 20m を 想定し,1.5 秒間隔で測定を行うよう設定した。装置 は,計測時に装置自体によるレーザ遮蔽が生じるのを 避け,垂直回転軸が,水平回転軸からのオフセットを 持つ構造であることから,垂直回転原点は測定点から 一定距離を持つ円を描く。このため,測定斜距離と水 平角 (α),鉛直角 (β) からの座標変換は以下の回転変 換式を用いて算出する。 Z=H+(L+ΔL)sinβ (1) D=(L+ΔL)cosβ (2) X=Dsinα+ΔXcosα (3) Y=Dcosα-ΔXsinα (4) ただし,D: 水平距離,H: 測定装置取り付け高 L: レーザ計測値,ΔL: 距離計オフセット ΔX: 垂直回転軸オフセット 以上の構成で 2 軸測定装置を作成した後,動作確認 のため室内実験を行った。結果を図− 6 に示す。図よ り明らかな通り,床面がほぼ同心円に,また室内平面 などもほぼ直線として再現されており,測定精度が高 いことが確認できた。しかし,室内および屋外での動 作実験中,短時間で測定が中断される現象が認められ た。この原因は,レーザ距離計の計測エラー発生時 に計測を強制的に中断する仕様としたこと,レーザ 距離計と Arduino から同時にデータが送られた場合, Processing では対応速度が不十分であったことなどに よることが明らかになった。 したがって,無人で長時間の計測を可能とするため, レーザ距離計の計測エラー処理のルーチンを追加する とともに,Arduino からの位置データ返送を中止し, ステッピングモータの位置制御は,フィード・フォワー ド制御で行うよう改善した。 4.2 現地での実験結果 立木のレーザによる 3D 測定では,照射したレーザ の当たる面のみの測定が可能であるため,立木の形状 を立体的に把握するには,多地点からの測定した点群 データの合成が必要になる。このため,実験では林分 㻔㼍㻕 ᐃᑐ㇟ᐊෆ䛾≧ἣ 㻔㼎㻕 ᐃ⤖ᯝ䛛䜙సᡂ䛧䛯䠏㻰 ᅗ 図−5 2 軸測定装置の外観(現地自動測定風景) 図−6 室内実験結の概要
内 2 地点からの測定を行い,合成画像作成を試みた。 実験対象地は,演習林 4 林班そ小班ヒノキ林分とし た。1 地点での計測範囲は半径 20m の球体内を想定し, 斜面方向に 15m 程度離れた 2 地点で測定したデータ の合成を行った。2 地点間の距離,相対位置はトータ ルステーションを用いて測定した。各ポイントにおけ るデータ数は約 30,000 点であった。当初作成した点 群図では,目視により斜面は確認できるが,樹木位置 の確定は困難であった。そこで,2 地点から測定され た点データが重複した部分を拡大し,水平投影して解 析を行った結果,樹木を表す円状の点データ群は判別 できなかったが,点データが高密度に連結した箇所が 認められ,これが立木の表面形状を計測したデータで あることが推定された。 この原因を解明するため,理論データ総数と測定総 数の比較,理論測定時間と実測定時間の比較,1 回転 毎の樹木位置の変化などを解析した結果,Arduino か らの位置データ返送を中止し,フィード・フォワード 制御としたことにより,レーザ測定とモータ移動の同 期ができなかった点に原因があると想定された。具体 的には,微少なモータ移動時間が累積されレーザ測定 間隔時間と等しくなった時点で,モータの移動中に測 定が実行され,不要なデータの混入や位置データのず れが発生していると予想できた。このため,全測定時 間とレーザ照射時間の差分よりモータの移動時間を算 出し,これをもとに移動中測定したデータの除去と, 位置データずれの修正を行った。結果を図− 7 に示 す。図より明らかなとおり,修正後のデータ群では立 木位置を明確に見て取ることができる。また,水平投 影図面上でも,樹木位置に点群が集中し立木位置を求 めることが可能となった。しかし,地上 LiDAR 等と 比較すると点データ数が少なく,また位置誤差も大き いことなどから,直径の推定などに利用するためには, フィードバック制御による駆動,モータ移動角の分解 能を高めるなどの改善が必要と判断された。 4.3 測定データ活用手法の検討 点群データの分析手法の検討を目的に,修正された 現地測定データをもとに,地表面,樹幹,枝葉データ の分類を試みた。点群データの処理は,現地で逐次測 定・比較を行うことを想定し,Processing を用いて行い, 点密度の高かった 42m 四方を解析の対象とした。 分析では,範囲外に位置する点の除去を行った後, 計測範囲を水平面 1m メッシュ毎の直方体領域に分 割し,メッシュ内で Z 座標の最大・最小値の差分が 15m より大きい場合,最小値を地表面基準データと して追加した。条件 15m とした理由は,条件 12m, 15m,18m の 3 パターンで比較した結果,12m では地 表面以外の点データも含まれる懸念があり,反対に 18m では地表面の点データが過小であるため,15m が 最適と判断したためである。また,この条件下で地面 基準データが存在しないメッシュでは,当該メッシュ に隣接する 8 近傍メッシュの地表面基準データの平均 値を地表面基準データとして登録した。さらに,この 地表面基準データより,距離 0.5m 以内,相対水平角 ±45° 以内のポイントを逐次地表点として追加した(図 − 8(b),赤色点)。次に,以上により作成した地表点デー タをもとに水平面上でドローネ三角網を作成し,これ に Z 座標を与えることで地表面メッシュデータを作 成した。最後に,Z 座標より各測定点位置における地 表面推定値を減じ,仮想水平面上の樹木配置を構成し た(図− 8(a))。 図より明らかなとおり,地表面の逐次追加時に下層 植生や,窪みの影響で一部地表面の誤認識が生じたこ とが見て取れるが,おおむね良好な再現結果となって いる。図− 8(b)では,水平化処理後の点群データ の密度分布をもとに,地面(水色),幹(黄色),樹冠 (緑色)として 3 色に塗り分けており,林分状況の体 感的把握が容易となっている。さらに,地表高を復元 した 3D データであるため,様々な方向から立木位置, 地形を確認することができる。 以上,今回計測した点群データでは,幹と樹冠の境 界を明確に特定するまでには至らなかった。また,特 に地表面についても誤認識が発生するなど,十分な成 果は求められなかった。原因として,1)モータ移動 と計測が同期できなかったこと,2)急傾斜地での測 定であったことから,計測装置付近の地表面データが 不足したこと,3)計測地点の相対位置により位置あ (a) ഃ㠃ᅗ (b) ᖹ㠃ᅗ 図−7 2 軸測定装置による計測結果
わせを行ったことから,十分なデータ位置合成ができ なかったことなどがあげられる。 1)は,ハンドシェイク方式により PC と Arduino 間で位置確認を行うこと,2)は,測定開始高低角を 鉛直方向とすること,3)は,複数の測定指標を配置 することなどによりある程度の改善が期待できるが, 特に 1)による測定時間の増大が予想される。さらに, より正確な 3D 点群測定を行うためには,角測定分解 能,機械精度の向上が必要な点も合わせて考えると, 複数のレーザ距離計による並列測定なども視野に入れ た計測方法の見直しを図る必要があると考えられた。 5.まとめ 実験機の試作と野外での測定実験の結果から,1 軸 測定装置に関しては,横断測量を行うのに十分な精度 を持ち,実用化が期待できることが実証された。今後 の課題としては,より体感的なソフトウエアの開発, 無線化などが挙げられる。試作ソフトウエアでは,デー タ計測と同時に横断図を図化出力しているが,測点か らの距離,傾斜等のパラメータを同時に出力すること で,より実用性が増すと考えられる。また,傾斜面に 沿った 180° の計測を一応の目標としたが,測定不能 時に処理時間が増加するなど改善の余地は残されてい ると考える。また,使用感から,最急傾斜を入力する とレーザ照射方向が自動的に最急傾斜と平行になるよ う初期化されるなどの細かな配慮が必要と思われた。 2 軸測定装置に関しては,立木位置と地形を 3 次元 的に計測することができたが,林分構造や樹冠閉鎖 度を求めるには至らなかった。この改善方法として は,マイクロステップ動作の導入による角度分解能の 向上,複数台のレーザ距離計を並列動作させることに よる時間短縮などが考えられるが,当初の目的である 小型・軽量・安価な測定装置の範囲を逸脱する可能性 も高くなる。今回の研究と平行して実施された,地上 LiDAR による林地測定と比較して考えると,点群デー タの後処理時間,計測費用などの面から,これらの簡 易測定も利用価値は高いと思われる。現況では,1 軸 測定装置は 1.4kg,2 軸測定装置は 2.5kg と重くなって いるが,さらに軽量化を進めることにより,目的,場 面に応じた点群データ計測手法の 1 つの選択枝とし て,今後さらに実用化が進むと考えている。 6.引用文献 1)遠藤貴宏・中村裕幸・澤田義人・澤田治雄(2012) 地上 LiDAR による幹太さの推定に関する研究. 生産研究 64(4):585–589. 2)齋藤仁志・有賀一広・田坂聡明・松英恵吾(2008) 船生演習林 LiDAR を用いた交角法による地表 面 推 定 手 法 の 開 発. 森 林 利 用 学 会 誌 22(4): 265–270. 3)松英恵吾・山崎 光・富田咲伎・執印康裕・有賀 一広・田坂聡明(2013)航空機 LiDAR データに よる森林資源管理システムを活用した森林モニ タリング.日林講 124:227. (a)௬Ỉᖹ㠃ᯘศᅗ (b)㒊ࡼࡿሬࡾࢃࡅᅗ 図−8 2 軸測定装置による計測結果の解析