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遊星ボールミルがセルロースナノファイバーゾルに与える物理化学的影響と表面活性

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J. Soc. Powder Technol., Japan, 58, 164–169 (2021) doi: 10.4164/sptj.58.164

Original Paper

遊星ボールミルがセルロースナノファイバーゾルに与える

物理化学的影響と表面活性

高井(山下) 千加

1*

,馬渕 裕也

2

,池田 純子

3

,藤 正督

4

,仙名 保

5

,大矢 豊

1

Physicochemical Effects and Surface Activity of Cellulose Nanofiber Sols Induced

by a Planetary Ball Milling Treatment

Chika Takai-Yamashita1*, Yuya Mabuchi2, Junko Ikeda3, Masayoshi Fuji4, Mamoru Senna5 and Yutaka Ohya1

Received 30 October 2020; Accepted 18 January 2021

Mechanochemistry offers sustainable synthesis of the functionalized cellulose nanofiber (CNF). In this study, changes in the microstructure of the CNF aqueous sol by planetary ball milling were investigated in terms of its rheological behavior, crystallinity, and diameter distribution. The surface activity of the CNF was additionally characterized by a pulsed nuclear magnetic resonance (NMR). A decreased thixotropy hysteresis loop observed in the 100 min−1-treated CNFs indicated a weaker interaction among the fibers, but still having a three-dimensional structure.

300 min−1 could collapse them. A decreased x-ray diffraction peak intensity observed in the 500-min−1-treated CNF

could indicate a split in the fiber’s bundle as well as shredding. An increase in the wet surface area (SNMR) could

indicate surface activity in the 500-min−1 milled CNF sol. Such newly formed hydroxyl groups can serve as effective

reaction sites with, for example, the TiO2 precursor and perhaps favorably works to improve the photocatalytic

performance.

Keywords: Cellulose nanofiber, Diameter, Surface activity, Rheology, Pulse NMR.

1.  緒 木材や果物の皮に含まれる天然繊維に,機械的や化学 的処理を経てナノレベルに解繊したセルロースナノファ イバー(CNF)は,高粘度性を生かした食品や化粧品添 加材,ガスバリア性を生かした包装材,低密度を生かし 1 岐阜大学 工学部 (〒 501-1193 岐阜市柳戸 1-1) Faculty of Engineering, Gifu University (1-1 Yanagido, Gifu 501-1193, Japan) 2 岐阜大学 大学院 自然科学技術研究科

(〒 501-1193 岐阜市柳戸 1-1)

Graduate School of Natural Science and Technology, Gifu University (1-1 Yanagido, Gifu 501-1193, Japan)

3 マジェリカ・ジャパン株式会社

(〒 270-1168 千葉県我孫子市根戸 573-66) Mageleka Japan Co,. Ltd.

(573-66, Nedo, Abiko, Chiba 270-1168, Japan) 4 名古屋工業大学 先進セラミックス研究センター

(〒 507-0033 岐阜県多治見市本町 3 丁目 101-1 クリスタルプラ ザ 4F)

Advanced Ceramics Research Center, Nagoya Institute of Technology (3-101-1 Honmachi, Tajimi, Gifu 507-0033, Japan)

5 慶応義塾大学 理工学部

(〒 223-8522 神奈川県横浜市港北区日吉 3-14-1) Faculty of Science and Technology, Keio University

(3-14-1 Hiyoshi, Kohoku-ku, Yokohama, Kanagawa 223-8522, Japan) * Corresponding Author [email protected] た自動車の軽量化材など幅広い分野での活躍が期待され ている。 機械的処理を与えて化学的な作用を起こすメカノケミ ストリーは,CNF の解繊以外に糖化やエステル化などの 化学反応促進に用いられている[1]。一方,無機材料創製 においても,メカノケミストリーは有効なツールとして 発展している[2]。酸化物の結晶性が向上するだけでなく [3],ポリマーやワックスなどの有機物存在下では,還元 作用があることがわかっている。たとえばサーモクロミッ ク特性を有する二酸化バナジウム(VO2)は V2O5などに 酸化されやすいがワックス存在下遊星ボールミル処理 を施すことで VO2合成が可能となる[4]。光触媒性能を持 つ二酸化チタン(TiO2)の酸素を奪うことで可視光応答 性を向上させたという報告もある[5]。グルコース単位か らなる有機物繊維である CNF を酸化物に添加しメカノケ ミカル処理を加えれば,同様な有効添加剤となり得るだ ろう。 CNFは,グルコースの β1-4 が結合した直鎖のセルロー ス分子が水素結合により束を作り,さらにこれらが物理 的・化学的に絡み合って水中に存在している。2 wt%の ような低濃度であっても高粘度を示す。このような粘性 ゾルに遊星ボールミルのようなせん断力を与えた際に現 れる微構造変化や表面物性変化について総合的に調べた

(2)

例は少ない。 セルロース分子が集まり束となった短径が数 10 nm の ナノ繊維表面には,グルコース由来の OH 基が多数存在 する。これらは,たとえば酸化物ナノ粒子と複合化させ る際の複合化サイトとなり得るだろう。しかし水中では, 周囲の水分子吸着やナノ繊維同士の凝集により OH 基が 有効なサイトとならない場合もある。そこでたとえば遊 星ボールミル処理を施せば,ビーズと繊維間の摩擦によっ て新生面ができ,OH 基が露出し表面活性が増し,複合 化を促進することが期待できる。 著者らは,CNF ゾルに遊星ボールミル処理を与えた 際,ナノ繊維の物理的な絡まりが解け繊維が長手方向に 解繊することを,レオロジー挙動,結晶構造,短径分布 から明らかにした。そして,凍結乾燥した CNF 粉体の水 蒸気吸着量から,ボールミルの回転速度増加とともに表 面活性が増加するという知見を得た[6]。つまり,機械的 処理により,酸化物の複合化サイトとなるだろう OH 基 の露出が確認できた。しかしながら,水中でのナノ繊維 表面活性化は未知である。そこで本研究では,パルス核 磁気共鳴(NMR)を用い,遊星ボールミル処理を施す前 後で,溶媒である水由来のプロトン緩和時間変化を比較 し,水中におけるナノ繊維表面物性について知見を得る ことを試みた。 2.  実験方法 2.1  試料調製 用いたCNF ゾルは2 wt%の水分散液(BiNFi-s シリーズ, 短繊維 AFo-10002,スギノマシン)であり,公称平均繊 維径は 10~50 nm,粘度 3,000 mPa·s(25°C,60 min−1(B 型粘度計)),比表面積 150 m2/g(凍結乾燥後,BET 式) である[7]。20 mL の CNF ゾルを 100 g のジルコニアビー ズ(φ2 mm)とともに 80 mL ジルコニア容器に入れ,遊 星ボールミル装置(PL-7,フリッチュ・ジャパン)を用 い,回転数 100~900 min−1,30 分間処理を施した。処理 後の CNF ゾルをビーズと分離しレオメーター,遠心沈降 法粒度分布(DCS)測定に供した。窒素ガス吸着実験は, CNFゾルの溶媒を tert-ブチルアルコールと置換後,凍結 乾燥させた粉末を用いた。 2.2  評価方法 遊星ボールミル処理前後の CNF ゾルのレオロジー挙動 は,レオメーター(AR-G2 KG,TA インストルメント) を用い,せん断速度 1 から 100 s−1,パラレルプレートの ギャップ 1 mm の条件で測定した。 ナノ繊維の短径は,ディスク遠心式粒子径分布測定装 置(DC 24000UHR,CPS インストルメント)を用い,8 から 24 wt%濃度のスクロースで形成させた密度勾配溶液 の中,3500 min−1の条件で遠心分離を行い,粒子径標準 粒子であるポリ塩化ビニル(粒子径 0.237 μm)の測定結 果に基づき,CNF 密度はセルロースの一般的な密度であ る 1.5 g/cm3を用いてストークス径を決定した。 CNFゾルの吸着水緩和時間測定[8]は,約 1 mL の CNF ゾルを NMR 用サンプルチューブに入れ,Acorn Area(Xigo Nanotools, Inc.)を用い共鳴周波数 13 MHz の条件で行っ た。本装置は,ラジオ波により励起した核スピンが周り の環境や核スピンのエネルギー交換により緩和する。そ の時間を T1(縦緩和時間,スピン-格子緩和時間),T2 (横緩和時間,スピン-スピン緩和時間)として計測す る。粒子に接触または吸着している束縛水と,粒子表面 と接触していない自由水とでは,磁場の変化に対する応 答が異なる。つまり,束縛水はエネルギー変換が起こり やすくプロトン緩和時間が短く,自由水の緩和時間は長 くなる。CNF 分散液を測定して得られた緩和時間(Tav) の逆数を緩和速度(Rav)とした場合,得られる緩和速度 は繊維表面に束縛された水の体積による緩和速度(VbRb) と自由水の体積による緩和速度(VfRf)の和として Eq. (1) で表される。 Rav= VbRb+ VfRf (1) ここで V は体積,R は緩和速度を示す。繊維表面状態が 変化すると,繊維表面に拘束される水量は変化する。つ まり,活性サイトとなる OH 基量が増加すれば,拘束さ れる水量は増加すると推測される。緩和時間から水と濡 れのよい表面積 SNMRを算出するために,比較する試料間 で基準となる“分散度 100%”を決める[9]。後述するように 固体濃度 φpを持つ 300 min−1処理後 CNF を分散度 100% とし,定数 kA値を決め,緩和時間を基にした比表面積 SNMRを,Eq. (2)に従って算出した。 SNMR= Rs/Rb− 1 Rb/ kAφp (2) 凍結乾燥後の試料は 150°C で加熱真空乾燥後,窒素吸着 等温線を作成し,BET 式を用いて比表面積を算出した。 また X 線回折(MiniFlex, Rigaku)により結晶構造を評価 した。 3.  実験結果および考察 3.1  レオロジー挙動への影響

Fig. 1(As received)は,遊星ボールミル処理前の CNF ゾルのせん断応力-せん断速度曲線である。せん断速度 増加とともに応力が増加し,せん断速度減少とともに応 力が遅れて減少する,チキソトロピー性を示した。CNF のナノ繊維は水中で複雑に絡み合った三次元網目構造を していると考えられる。せん断速度の増加とともに網目 構造が破壊されるが,せん断速度を減少させていくと構 造が回復することを示している。ヒステリシスの面積が 比較的小さいことから,構造回復は比較的短時間で起こ ると考えられる。遊星ボールミル処理回転数 100 min−1 加えたとき,せん断速度を減少させてもヒステリシスは 完全に閉じることはなかった。せん断速度増加時の降伏 応力とせん断速度減少時の降伏応力の差は,遊星ボール ミル処理回転数の増加(100,300,500 min−1)とともに 開いていき,CNF ゾルの構造回復能力が失われていくこ とがわかる。100 min−1処理 CNF は,100 s−1付近の高せ ん断場ではせん断速度の減少に伴って構造回復が認めら れるが,300 min−1以上の処理後 CNF では見られない。

(3)

600 min−1処理 CNF ゾルの応力曲線は大きく異なりせん 断速度に対する応答性が低くなった。つまり繊維間の相 互作用が大きく失われていることを意味し,緒言で触れ たナノ粒子担体マトリックスになりえない。そのため, ここからは 500 min−1までの条件について微構造解析を行 うこととした。 Fig. 2は,処理前および 100,500 min−1処理後 CNF の 粘度曲線である。すべての CNF はせん断速度の増加に伴 い粘度が低下するシェアシニングを示した。Li らは,粘 度曲線を四つに区分し,せん断速度が CNF 構造に与える 影響について次のように報告した[10]。せん断速度が低 い I では,せん断速度増加とともに粘度の低下が見られ る。これはせん断方向に繊維が並ぼうとしているためで ある。粘度低下が緩やかになる II では,繊維の絡まり合 いによるネットワークがせん断速度増加により破壊され ようとしている。せん断速度増加により再度粘度低下が 見られる III では,ネットワーク構造が破壊され微細な繊 維となり,さらにせん断速度が増加する IV では,微細 な繊維同士が配向する。Fig. 2 (a) に載せたボールミル処 理前の CNF は,III-IV の境目はほとんど見られず繊維同 士の配向は確認できないが,Li らの粘度曲線ほど明確で はないものの I-II-III の区分は確認できる。つまり,せん 断速度とともにせん断方向で繊維が並び,ネットワーク 構造が破壊されていく過程が現れている。Fig. 2 (b) に示 した 100 min−1処理後の CNF は,I-II の境目が僅かに確認 できるものの,ネットワーク構造の破壊を示す II-III は確 認できない。つまり 100 min−1処理によりナノ繊維同士の 絡まりが解けていることを示す。さらに Fig. 2 (d) に示し

Shear stress curve as a function of shear rate of as received and milled CNFs Fig. 1 

Change in the viscosity of as received and milled CNFs Fig. 2 

(4)

た 500 min−1処理後の CNF を見ると,I-II の境目も確認で きない。 遊星ボールミル処理前後の CNF のレオロジー挙動か ら,処理回転数によって段階的に繊維の構造に影響を与 えることがわかった。100 min−1のような小さい回転数で 処理すると,ナノ繊維の物理的な絡まりを優先的に解く ようである。500 min−1のような大きな回転数で処理する と,物理的な絡まりに加えてナノ繊維自体を破壊し微細 化していると推測される。Fig. 3 に,処理前,100 min−1 500 min−1処理後 CNF の XRD パターンを示す。セルロー スの特徴的な(110),(110),(200)面由来の回折ピークが, 処理後に減少していることがわかる。特に 500 min−1処理 後に顕著な減少を見せる。Segal が提唱した結晶性の度 合いを示す Crystallinity index (CI = (I200−Iam)/I200))[11]を

Fig. 3に示す。I200,Iamはそれぞれ(200)面および非晶質由

来の回折ピーク強度である。100 min−1処理後に CI は大 きく減少するがその後大きく変化はしない。CI が示して いるのは(200)面由来の回折ピークと非晶質由来のピーク の比である。回折ピーク強度は一様に減少しており,特 に 500 min−1処理後に大きく減少していることから,非晶 質・結晶質が繰り返して構成されるナノ繊維の結晶部分 が破壊され,長手方向に裂けたのではないかと予測した。 そこでディスク遠心式粒子径分布測定装置(DCS)を 用い,遠心場におけるナノ繊維の短径を算出することを 試みた。熊谷らは,機械的処理の進行に伴う CNF の解繊 が DCS で評価できることを報告した[12]。本研究で DCS 測定における遠心条件 3500 min−1は,Fig. 2 の III に相当

する。つまり繊維の絡まりが解けた状態での繊維短径を 見ていることになる。処理前,100 min−1,500 min−1処理 後の CNF 短径は 2.4,2.4,1.4 μm であった[6]。処理前と 100 min−1にほぼ差がないが,Fig. 3 からナノ繊維自体を 構成する結晶構造には影響を与えているようである。一 方,500 min−1処理後は繊維短径が大きく減少し,長手方 向に裂けているという予測を裏付けている。小角 X 線散 乱(SAXS)を用いると,処理前,300 min−1処理後の CNF 短径は 11.0 nm,10.4 nm であった[6]。遠心条件 3500 min−1 における DCS 短径は,SAXS 短径の集合体を観測してい ると考えられる。いずれの手法であっても遊星ボールミ ル処理後の短径減少がみられることから,繊維が長手方 向に裂けていることを示唆している。 tert-ブチルアルコールで溶媒置換後に凍結乾燥させた CNF粉末の比表面積 SBETから,Eichhorm の式(SBET = P/(Aρ)[13],P:繊維断面の円周,A:繊維断面積,ρ:密 度)を基に,円周と断面積をそれぞれ短径を用いて表し, セルロースの一般的な密度 1.5 g/cm3を用いて繊維短径を

算出した。処理前,100 min−1,300 min−1,500 min−1処理

後 CNF の繊維短径は 17,26,25,28 nm となり[6],処 理回転数増加とともに短径が増加する傾向にあることが わかった。これは上述した DCS 短径や SAXS 短径変化 とは逆の傾向である。DCS および SAXS は分散液として 測定に供したが,比表面積を算出するための窒素ガス吸 着実験は乾燥粉体として測定に供した。遊星ボールミル 処理を行ったことで繊維表面が活性化し,乾燥工程で意 図しない凝集が生まれたのではないかと推測した。 既報[6]では,窒素ガス吸着実験に供した凍結乾燥粉体 を水蒸気吸着実験に供し,処理回転数の増加とともに比 表面積あたりの水蒸気吸着量が増加することを確認した。 これは,ボールと繊維表面の摩擦や繊維が長手方向に裂 けて生まれた新生面に OH 基由来の活性サイトが露出し たためであると結論づけた。本研究ではさらに,液中に おける活性サイトの有効性を調べることを目的とし,パ ルス NMR を用いて繊維表面に吸着したプロトン緩和時 間を測定した。 繊維表面の束縛水のプロトン緩和時間は短く,自由水 の緩和時間は長くなる。遊星ボールミル処理を施し繊維 表面状態が変化すると,繊維表面に拘束される水量は変

XRD pattern and crystallinity index of as received and the milled CNFs Fig. 3 

(5)

化する。つまり,活性サイトとなる OH 基量が増加すれ ば,拘束される水量は増加し,緩和時間は短くなるはず である。Fig. 4 (a) は,処理前,100 min−1,300 min−1,

500 min−1処理後 CNF の緩和時間と磁化の関係を示した グラフである。比較のために,出発濃度 2.0 wt%の CNF ゾルを蒸留水で 1.0 wt%,0.67 wt%に希釈した試料も測定 した。変化が観測しにくい試料もあるが,おおよそ CNF 濃度減少に伴って緩和時間が長くなる傾向にある。濃度 減少により繊維間に捕捉された水が自由に動けるように なったためと推測される。この傾向は分散体がたとえば シリカ粒子であっても同様である[14]。 Fig. 4 (b) に,初期の磁化から 37%(1/e = 0.37)減少し たときの緩和時間を T2と定義[14]し,処理回転数増加に よる T2をプロットした。処理前と比較して 100 min−1処 理後に T2が増加,その後減少した。この傾向は CNF 濃 度が変わっても変化がないため,相対的ではあるが水中 の繊維表面状態を評価できていると考える。処理前の T2 が短い理由を Fig. 1 のレオロジー結果と合わせて考察す ると,水中でナノ繊維が三次元網目構造を形成しており, その繊維間の束縛水が多いことに起因すると考えられる。 Fig. 4の結果を元に,水に対する濡れ性,つまり OH 基の露出度合いを算出することを試みた。Fig. 5 に,パ ルス NMR 緩和時間から算出した比表面積(SNMR)と窒 素ガス吸着実験から BET 式を用いて算出した比表面積 (SBET)を比較した。パルス NMR 緩和時間から水に対す る濡れ性を決定する際,比較試料間でもっとも SBETが大 きい試料,つまりもっとも分散性がよいと想定される試 料を“分散度 100%”と定義する[8]。処理前,100 min−1 300 min−1,500 min−1処理後 CNF の S BETは 156,103, 105,94 m2/gであり[6],処理前の比表面積がもっとも大 きい。しかし前述したように,処理前 CNF の T2はもっ とも低く,束縛水が多い状態で水中に存在していると推 測され,この繊維の物理的な絡み合いがおそらく失われ たであろう 100 min−1以降処理後 CNF と比較すると,繊 維の挙動は著しく異なる。試料内に細孔や軟凝集体が存 在する場合,粒子表面での拘束とは異なる,分子運動性 が抑えられた水が存在し緩和時間が極端に短くなるため, 分散度を単純に比較することが困難になることが知られ ている[15,16]。処理前 CNF は低濃度ながら流動性の低い 高粘度ゾルであり,繊維同士が水分子を拘束し三次元に 絡まり合っていると推測され,処理後 CNF の分散度を比 較する上での基準試料とするには適さないと判断した。 そこで,処理前 CNF を外せばもっとも SBETが大きくなっ た 300 min−1処理後 CNF をここでは分散度 100%と定義 し,実験項に記載した Eq. (2)に従って SNMRを算出した。 Fig. 5から,処理回転数が 100,300 min−1と増加すると ともに SBETも SNMRも増加する傾向にあり,両者の値はほ ぼ一致している。注目すべき点は,500 min−1処理後に SNMRは増加,SBETは減少し,両者の差が開いたことであ る。この SNMRの増加は,水への濡れ性が増したことを示 している。つまり,繊維が解繊したことにより新生面が 露出し,活性サイトとなる OH 基量が増したといえる。 4.  結 遊星ボールミル処理を水系 CNF ゾルに施した際に繊維

Relationship between SNMR and SBET of as received and the milled CNFs

Fig. 5 

(a) NMR-relaxation curves and (b) T2 values of the milled CNFs with different concentrations Fig. 4 

(6)

に与える物理化学的影響について,レオロジー,結晶構 造,短径変化から総合的に評価することを試みた。低処 理回転数では繊維の網目構造が解れ,高処理回転数にな るにつれ結晶性の低下および短径減少が確認された。そ して,パルス NMR を用いて計測した水中 CNF の緩和時 間から,高回転数で処理した CNF 表面の水への濡れ性が 向上していることがわかった。遊星ボールミル処理によっ てボールと繊維の摩擦,そして繊維が長手方向に裂けた ことによる新生面に新たに OH 基が露出したといえる。 この新生面の OH 基は,たとえば機能性ナノ粒子との複 合化サイトとなり得,短時間・省エネルギーで複合材料 創製が可能なサステイナブルな複合化手法確立の基盤と なると確信している。 [謝辞]本研究の一部は一般財団法人越山科学技術振興財 団,科学技術振興機構(JST)研究成果最適展開支援プ ログラム(A-STEP),文部科学省卓越研究員事業の助成 により行った。また,DCS について三洋貿易株式会社谷 川和美氏,レオメーターおよび SAXS について株式会社 アントンパール・ジャパン山縣義文博士,高崎祐一博士, 遊星ボールミルについて岐阜大学櫻田修教授,吉田道之 助教,窒素ガス吸着装置について岐阜大学上宮成之教授, 宮本学准教授,國見崇洋氏にご協力いただいた。ここに 記して謝意を表す。 Nomenclature

A : cross-sectional area of fiber [m2]

kA : constant in Eq. (2) [-] V : volume ratio [vol.%]

R : relaxation rate [1/ms]

SNMR: relative specific surface area determined by relaxation

time [m2/g] SBET: specific surface area determined by nitrogen gas

adsorption experiment [m2/g] T1 : longitudinal, spin-lattice relaxation [ms] T2 : transverse, spin-spin relaxation [ms]

Tav : average relaxation time [ms] φp : solid concentration [-] I : diffraction peak intensity [-]

P : perimeter of cross-section of fiber [m]

ρ : density of fiber [g/m3]   Subscript av : average b : bound water f : free water References

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参照

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