2.
1 概観
ゾーナルフロー(帯状流)は,磁気面上で一定な(半径 方向には短波長で振動する)ポテンシャルによって生まれ るプラズマの流れである. 圧力不均一な磁化プラズマでは,インターチェンジ不安 定性やドリフト波不安定性に代表される,熱対流を伴う不 安定性が数多く知られている.それらの不安定揺動の波面 はドリフト方向に伝播する.この不安定波にポロイダル方 向の速度(半径方向には短波長で振動する)が重なると,対 流運動の波面を半径方向に波打たせることになる. DC 的なポロイダル速度が重ね合わせられると,波の波 面が歪んで,波数ベクトルはポロイダル方向だけではなく 径方向にもベクトル成分を持つ.一方,波動に分散がある とき,径方向にも波数ベクトル成分を持つ結果,径方向に も群速度を持つことになる.群速度が径方向に変化するの で群速度の性質によっては振幅が半径方向に波打つ.対流 運動する波動の振幅が半径方向に変動することになる.こ のように,対流波動が起きると,波面の波打ち(折れ曲が り)や振幅の波打ち(バンチング)が起きることには様々 な例が知られている.これら二次的な変動は準巨視的なス ケール(メゾスケール)を持っているので,乱流構造形成 の基本的なプロセスである. プラズマの不安定性で生まれる乱流とそれが生む帯状流 もその一例である(Fig. 1).いま定性的に述べたように,帯 状流はメゾスケールを持ち,線形理論の範囲では安定であ るが,乱流揺動の非線形過程によって生まれる.帯状流は 対流揺動のバンチングや波面の折れ曲がりをもたらすか ら,当然乱流輸送にも強い影響を示す.中心的な課題は, (!) 帯状流を不安定化する機構 (") ドリフト波への逆作用(反作用) (#) 帯状流の飽和機構 ($) 乱流揺動と帯状流のエネルギー分配比 (%) 帯状流を着た乱流による輸送係数, などがあげられる.近年の研究の進展は著しく,レビュー 論文[1]に詳細な説明が解説されている.特に[2]には,直 感的・図解的説明を含めさらに丁寧な説明がある.ここで は(!)−(%)の観点について簡略な説明をし,これらのレ ビューへの入り口を説明したい.小特集
2.ゾーナルフロー理論の進展
伊 藤 公 孝,伊 藤 早 苗
1) (核融合科学研究所,1)九州大学応用力学研究所)Theoretical Progress of Zonal Flow
ITOH Kimitaka and ITOH Sanae-I.1) National Institute for Fusion Science, Toki 509-5292, Japan1)Research Institute for Applied Mechanics, Kyushu University, Kasuga 816-8580, Japan
(Received 16 September 2005)
An overview of the theory of zonal flows is presented. The contents include description of the mechanism by which zonal flows are generated, the relation between turbulence and zonal flows,and transport in drift wave-zonal flow turbulence. The physics of zonal flows is a prototypical example of a paradigm shift from the linear-local-deterministic view to the nonlinear-nonlocal-statistical view of structure formation in plasmas. Research regarding the turbulence-zonal flow system in laboratory plasma will deepen our understanding of this aspect of nature. Keywords:
toroidal plasma, turbulence-zonal flow system, paradigm shift
corresponding author’s e-mail: [email protected]
Fig. 1 圧力勾配不安定性(ITG 不安定性)による乱流と帯状流の 共存系.色は静電ポテンシアルの正負・強弱を示す.波面 は径方向に揃おうとするが,帯状流のため折れ曲がり,強 弱がでる.[K. Hallatschek 氏の計算に基づく.]
J. Plasma Fusion Res. Vol.81, No.12 (2005)972‐977
2.
2 ゾーナルフローの構造
スラブプラズマでは,帯状流はドリフト速度方向を向い ている.トロイダルプラズマでは,流れのパターンがもう 少し複雑になる.Fig. 2にトロイダル磁気面と磁力線,およ び""!ドリフトによる速度ベクトルを示す.トロイダル 効果によって,磁力線は測地線(曲面上の2点間を最短に 結ぶ線)からずれている.このずれを曲率 geodesic curva-ture で表現する.図に直感的に示すように,""!ドリフ ト速度ベクトルが平行でなく,ドリフト速度の発散()#!) が生まれる.そのため,2つのパターンが生じる. 一つは,この発散が磁力線方向の速度 %""$!$**01&%& によって打ち消されるものである[3,4].ここで*は安全係 数.圧力差はないので DC 的な流れになる.これが ($" の帯状流である(Pfirsch-Schlüter 電流が反磁性電流を打ち 消す[5]ことを想起されたい.それと同様の機構である). もう一つは,(トカマクでは上下の位置で)圧力差が生ま れ超音速の伝播速度を持つような振動となる.こちらは geodesic acoustic mode(GAM)と呼ばれる.GAM の振動 数は (&%'$ $,&1"# となる[6](ここで csはイオン音波の速度である).この振 動モードは,密着変動がポロイダルおよびトロイダルモー ド数*(!)+$*#!"+の波数を持っているので,磁力線方向 の位相速度は,*&$ 1である.これがイオン熱速度%(-!.より 十分速ければ(すなわち*##であるか $,&$.であるなら) GAM はイオンランダウ減衰を受けない.流れのパターン をまとめると Table 1 のとおり.2.
3 帯状流を不安定化する機構
いくつかの考え方を説明しよう. まず,直感的な説明から始める.Fig. 3に示すような対流 揺動があるとする(*,!-!.+軸をそれぞれ勾配方向,ドリフ ト方向,磁場方向としている).それにポロイダル方向の帯 状流の種を重ねる.すると,渦のパターンが傾くであろう. 図に示すように渦が傾いたとする.図の点 A では,-方向 の速度が ,方向に運ばれている.A'では,!-方向の速度が !,方向に運ばれている,A−A'の磁気面では,結局平均す ると,-方向の運動量が ,方向に運ばれていることになる (乱流応力テンソルの評価).同時に図の点 B では,!-方向 の速度が ,方向に運ばれている.B'では,-方向の速度が !,方向に運ばれている,B−B'の磁気面では,平均すると, -方向の運動量が!,方向に運ばれていることになる.この 双方とも,-方向の運動量の流れはC−C'の磁気面を向いて おり,そこでは -方向の運動量が増加することになる.こ の力は,種として与えた流れを増幅することになる.さら に踏み込めば,生まれる力は渦のパターンの傾きに比例す るだろうから,(傾きが種の帯状流に比例するだろうか ら),-方向の力(加速度)は種の速度に比例する. Fig. 3 に示したようになるかどうかは定量的な議論を必 要とする.まず,モノクロマテイック(単色)のドリフト 波(波数",振幅 %+)があったとして,その波のモジュレー ション(波数*,,2)の増幅を計算する道筋が標準的である. (,2は密度勾配方向の単位ベクトル).モジュレーション(振 幅%))が加わると,"%$"%*,,2の波数を持つビートモー ド(振幅%+%(%+%))が生まれる.このビートモードとも との波(波数")が相互作用すると,モジュレーションの 波 数 を 持 つ 変 動(振 幅$%)(%+$%))が 生 ま れ る.$%)が %)と同符号の時,モジュレーションは成長する.もとの単 色ドリフト波のエンベロープの時間発展として問題を定式 化するのが,envelope formalism である.この方法論は,プ ラズマ振動の自己収束の問題に関し展開され,ドリフト波 に関連しては帯状流やストリーマー,対流泡の問題に適用 されている[7].モジュレーショナル不安定性の解析法は 帯状流 GAM ポロイダル速度 %&*++ %&*++ トロイダル速度 !$**01&%&*++ #**01&%&*++密度変動 '" )3 )$! $,*+'11./&'% 3&%' $ 振動数 ($" ($(&%' 径方向波数 *+ *+ Fig. 2 トロイダルプラズマの磁力線と速度.帯状流の場合の磁 力線方向の速度を重ね合わせた流れ. Table 1 帯状流と GAM 振動の性質をまとめる.(q は安全係数) Fig. 3 対流揺動の渦運動を細い線で示す.(横が径方向,縦はポ ロイダル方向を示す.)そこに太い矢印のような平均流が 加わって渦が傾いたとする.揺動による運動量の流れの結 果,C−C’の磁気面では平均流を増す向きの力になる. 973
確立しており,多くの解析例がある.この方法の長所は, 線形モードの情報を正確にモジュレーションの成長率に反 映させることができる点にあり,例えばトロイダルプラズ マのバルーニングモードのモジュレーションを解析する時 に有効である[8]. 次に,(実験で直面する多くの場合がそうであるよう に),単色ドリフト波ではなくドリフト波乱流による帯状 流の生成という一般的な問題に進もう.この課題を考える ためには,ドリフト波のアクションの保存に着目した方法 (準粒子の方法)が役立つ. 教科書でプラズマの非線形性の説明を読むと,「Manley -Law の法則」が出てくる.これは,(+"!!"),(+#!!#)とい う2つの波が非線形結合し(+$!!$)という波に転換すると き,その過程で波のアクションがやりとりされるルールを 述べている.今考える場合のように,1つの波が帯状流で あって+%!であると,結合するドリフト波同士ではアク ションが保存する(アクションのスペクトル#*はエネル ギースペクトル&*と&*$+*#*の関係を持っている.ド リフト波の場合#*$(""*&#)0#)#,%2*,#.*はドリフト波の 波数,%2*はドリフト波振幅,)0は音速で評価したイオン ラーモア半径). この性質に着目すると,次のような結合方程式系を得 る.(!)ドリフト波のスペクトルによるストレステンソル の計算から導かれる帯状流のダイナミックスを示す式 , ,.%'$ ,,,' # !#!*#*(""**(*, &#)0#)##*!&*(-.%' (1) (")帯状流が存在するもとでのドリフト波のアクションス ペルトル#*の保存の式 , ,.#*",+,! #* ,#," !* ,+,"#* ,#,! $#* *#* (2) ここで%'は(ポロイダル方向の)帯状流の速度,&*(-.は衝 突などによる減衰率,,+,! $/* ,/は波の群速度,,+,"*は帯状 流による波のドップラーシフトの勾配,#*は線形成長率や 非線形減衰率をあわせたドリフト波の成長率を表す(線形 成長率 &&と非 線 形 非 相 関 率"+*を 用 い,#*$&&!"+*
と書くことが多い).帯状流が+1.()+,0!)$.)という依存 性を持つ場合,この結合方程式から%'の線形発展方程式 , ,.%'$!",,, # ,,#%'!&*(-.%' (3a) ",,$!" !#!*#*$!+,/,/)")"+ * *(#* , (""*&#)0#)# ,#* ,*,(3b) を得る.帯状流が長波長で分散効果 +,/,/が小さければ,帯 状流の成長率&'$%-$に対して &'$ !+, # &'""+* " !#!*#* *( #*, (""*&#)0#)# ,#* ,*,!&*(-.(4) という表式を得る.ドリフト波の寿命が短く"+*が分母で 卓越する場合, &'$ +, # "+* " !#!*#* *( ## * (""*&#)0#)#!&*(-. (5) である.&'が大きい極限では(4)式分母の"+*を無視す ると, &'$+,! !*" #* *( ## * (""*&#)0#)# " (6) となってモジュレーショナル不安定性の成長率の振る舞い に一致する. (3)式の意味するところは,#*が*,の減少関数なら,乱 流との結合により帯状流は成長することを示す.また,乱 流強度が強くドリフト波の寿命が短く"+*が分母で卓越す る場合(実験で直面する場合),成長率は",,+,#となり,短 波長のものほど大きな成長率を持つ.しかし,あまり短波 長になると分散効果+,/,/が(3)式で卓越し,成長しなくな る. ここで読者の中には異常粘性の事を想起し不思議に思う 方がおられるだろう.異常粘性の場合,巨視的な速度不均 一が乱流により拡散減衰を受ける.帯状流の場合,形式的 には,拡散型の波数依存性(+,#)を持って,しかし減衰では なく増大している(このことから,帯状流の成長機構を「負 の粘性」と呼ぶ人がいる).準2次元乱流のなかで,乱流粘 性減衰が働く多くの場合はパッシブな応答である.それと 比較し,電場に伴うポロイダル方向の流れはそれ自身の揺 動と結合して平均的な力を受ける(例えば長谷川−三間方 程式では非線形項は-%!'#%.という項であった).アクテイ ブな乱流場とでも言うべきで,そのために応答が(符号ま で)異なる.乱流場が平均的な速度場に与える影響力(即 ちレイノルズ応力)で述べると,応力テンソルが強い非等 方性を持っている.1つのスカラー係数 'によって $.,(--$!'('%) (7) と書くことができないことを注意したい.
2.
4 ドリフト波への逆作用(反作用)
前節の考えを進めると,ドリフト波乱流に対する帯状流 の効果(反作用)を解析することができる.(2)式にある ,+* ,"#,#,!*の項は,帯状流によって,ドリフト波スペクトル が波数空間で広がることを示す.帯状流%'の2次の効果ま で取り入れ帯状流による準線形効果を取ると,波の平均ア クションスペクトル*#*+の発展方程式 , ,.*#*+$#*#*+" ,,* ," (*), ,*,*#*+ (8a) "(*)$* ((!) # +0#%'#*() (8b) を得る.ここで *()は自己相関時間である.(8a)式は,帯状 流の効果でドリフト波のアクションが拡散することを示 す.拡散過程では全アクションは保存する.しかし,エネ ルギー密度は+**#*+なので,(*0の増大によって +*が低 下するため)エネルギースペクトルは拡散効果だけではな 9740 0 -1 1 -1 -0.5 0 0.5 1 0 く減衰効果も受ける.ドリフト波の全エネルギーは減衰す る.この減衰した分のエネルギーは,帯状流の運動エネル ギーに転換されている. こうした相互作用をまとめて,帯状流のエネルギー%'# の発展の式と,ドリフト波の全エネルギー& の発展の式を ポイント・モデル + +,%*##&&%*#!'.+14%*#!')('%*#(%# (9) +
+,& #'(&!&%*#&!$*#&# (10)
のように書き表すと見通しがよい.&を比例係数として (9)式の項&&%#はドリフト波による帯状流の励起をさし (その分は(10)式ではドリフト波の減衰に働いている), ')('%*#(は帯状流の高次効果で帯状流を飽和させる機構を 形 式 的 に 表 す.ド リ フ ト 波 自 体 の 非 線 形 減 衰 率 は $*#$*#& と表記している.
2.
5 帯状流の飽和機構
帯状流が生まれ振幅が大きくなると,それ自体の安定性 が問題になる.また,線形効果を考えるだけではなく,ド リフト波に対する高次の効果も問題になる. 帯状流は,向きの異なる(/方向と !/方向の)流れが, .方向に短い距離で交互に並ぶので,大きな速度シアを持 つ.速 度 シ ア が あ る 時 の 名 高 い 不 安 定 性 が Kelvin-Helmholtz(KH)不安定性であり,それが起きれば速度シ アは抑制される.帯状流に対しても,帯状流をジグザグに 曲げる不安定性が生まれる可能性がある.また,第一次の 摂動がドリフト波だと考えると,帯状流は二次的な運動で ある.その二次的な(secondary)流れが受ける摂動は第 三次的運動であるとの見方から,tertiary 不安定性と呼ぶ こともある(また,KH 不安定性もドリフト波とのエネル ギ ー を 授 受 す る の で,三 者 を 同 時 に 考 え,generalized Kelvin-Helmholtz(GKH)不安定性 と 呼 ぶ こ と も あ る). ''&#'*となれば,この不安定性が帯状流の成長を妨げる であろう. ドリフト波が乱流の中にある場合,準粒子の考え方は帯 状流の非線形飽和過程を考える上でも有効である.ドリフ ト波パケットは,帯状流のポテンシアルが作る構造の中 で,(.方向に移送されたり戻されたりする.ドリフト波パ ケットが'.!(.(空間のなかで準粒子として振る舞う有様を 見てみよう. ドリフト波の自己相関時間$*!"が長くなると,ドリフ ト波パケットは,帯状流のポテンシアルが作る構造の中で バウンス運動をする.いま定常的な帯状流場があるものと し,その中でのドリフト波パケットの変動を考える.ドリ フト波自体が生まれも減衰もしない極限(%#!)を考えて みる.(2)式の定常解は -05+#+.!(( /.%..*+#+(( .#! (11) を満たす.帯状流が印可されても /方向には一様であるの で(/#(/!と保存されるが,(.の方は%*'.(のポテンシア ルの中で ++.#(. (-/ 0 .%* ..に従い変動する.パケットの軌跡は .. .,#-0, ..,(.#(/..%. * (12) で 記 述 さ れ る(Fig. 4 参 照).ド リ フ ト 波 の 分 散 か ら (.#!近傍では -05%!(.となる.(12)式に従う軌道はポ テンシアルの底付近では単振動になって,その角周波数は *,372-/# ##)+#(/)* "")+#(/#*(! .%* .*!1+8 (13) となる. *,372-/$%となれば,ドリフト波準粒子は帯状流に捕捉 され,分布関数#(は捕捉領域で平坦化する.分布関数が平 坦化すれば(3b)式からわかるように帯状流の成長は止ま る.*,372-/% %) という関係があるので,$** (の小さい領 域で帯状流を飽和させる機構として重要である. 乱流が強く$*(#*,372-/となるときは,捕捉は起きず #(の平坦化には至らない.粒子と波の非線形相互作用を 解析するときの方法を参考にし,準粒子(ドリフト波)の 波動場(帯状流)に対する高次の応答を計算することがで きる.(2)式を$"$*(で展開し($ は帯状流の渦度),3 次の項まで取れば + +,$#!"**+ # +*#$""$+ # +*#$$!'.+14$ (14a) "$#! "!#".#( (( %( * $*$'""( &#)6#(# +$# ( +(*$ (14b) という非線形方程式を導くことができる.3次の非線形項 は,帯状流の飽和をもたらす.定常解は楕円関数で表され, Fig. 4 帯状流の径方向の速度分布と,ドリフト波パケットの軌跡. 975渦度の空間分布は頭のつぶれた振動解になる.
2.
6 乱流揺動と帯状流のエネルギー分配比
(9),(10)式で記述されるドリフト波と乱流と帯状流の 系がどのよう な 振 る 舞 い を す る か は,帯 状 流 の 励 起 項 %$#$と非線形安定化項' ('(#$)#$に依存する. 解析的見通しのため,'('(#$)$%$#$と略記してみる. (9),(10)式の定常解は $$ '' $+$ # $$" (' '!'-*/2$+$%!#) $$'-*/2%"%$'' %$"$+ $%$ # $$''%!'-*/2$+$ %$"$+ $%$ (''#'-*/2$+$% !#) (15) のように与えられる.ドリフト波の成長率 ''が小さいとき は,帯状流は現れず裸のドリフト波が励起される.しかし, 成長率 ''がしきい値を超えると,帯状流が共存する系に移 る. 帯状流の非線形安定化率'('(#$)が(衝突等による)減 衰率'-*/2より小さくて無視できる場合,ドリフト波の強度 は$$'-*/2"%となって,帯状流の減衰率でコントロールさ れる.帯状流の強度は,#$$(''%!'-*/2$+$)%!$で与えら れドリフト波の線形成長率とともに増大する. 一方,帯状流の減衰率 '-*/2が無視できる場合,帯状流と ドリフト波の強度は,いずれも ''とともに増大するように なり,配分比は #$ $ $%%$ (16) で与えられる. (15),(16)式はドリフト波の緩和率の大きい場合に有効 な 表 式 で あ る.と く に,Dimits shift に 代 表 さ れ る よ う に,ドリフト波の振幅が小さい場合の飽和条件を考えると きには別途注意が必要である.その場合は,2.5節の波の捕 捉条件で述べたように,$+&$++140,.& #* の条件に達す) ると,帯状流の飽和が起きる.その機構を考えるため,2.5 節で議論した高次非線形計算において高次の非線形項を繰 り込む.繰り込まれた帯状流成長率を用いると,衝突減衰 がゼロの極限で帯状流の成長が飽和する条件は,帯状流の 渦度" に対し $+&$$!& )$*3$"$!++140,.$ (17) で与えられる(C は2程度の数係数).(13)式にあるように, ++140,.$ $$*3$&)'((#"*3$&)$)!#+&" であることに注意され
たい.このことから,$+&$"に近づくとき(即ちドリフト 揺動の振幅がゼロに近づくとき)帯状流の振幅は有限の値 に漸近する.Fig. 5 にドリフト揺動の非線形緩和率と帯状 流の渦度を示す[9](帯状流の衝突減衰が無視できる場合).
2.
7 帯状流を着た乱流による輸送係数
乱流輸送係数については,イオンの熱拡散係数をドリフ ト波の非線形緩和率を用い&%$$+&&(!$ (18)
のように評価できる.ドリフト波が帯状流と共存し,エネ ルギーが帯状流との間で分配されることから,裸のドリフ ト波を考えた場合とは違いが顕著に現れる.(15)式に見る ように,帯状流の減衰率に強く影響される. 不安定成長率が低い場合裸のドリフト波が励起され &%$ '&' ($ (19) となるが,(15)式からわかるように,''が増すとエネル ギーの増分は帯状流に渡され,ドリフト波への分配が抑え られる.例えば帯状流の衝突減衰率が大きい場合を考え強 い乱流の表式を援用すると &%%#(-*/2% +&# ($ (20) となる((-*/2は衝突効果による帯状流の減衰率,+#はドリ フト周波数である). さらに ''が増した場合や,帯状流の衝突減衰率が小さい 場合には,帯状流の自己非線形機構がエネルギー配分や飽 和振幅に重要な働きをする.(17)式に示す飽和条件に沿っ ては,
&&&&$!&) $* 3$+# $% !#" #"!&)$%%* 3$+#$(''!''!,) $ ! "+&# ($ (21) という拡散係数の表式が得られる.Upshift の境界は ''!,$$$!* '( $ &'$+# (22) と与えられる.解析的な議論と非線形シミュレーションの 比較を Fig. 6 にあげておく. Fig. 5 ドリフト揺動の非線形緩和率(実線)と帯状流の渦度(一 点鎖線).裸のドリフト波の非線形飽和状態を考えると, 点線のようになる. 976
2.
8 まとめと展望
帯状流研究をきっかけに Paradigm shift と言われること がある.本稿では,研究の Paradigm shift,即ち「線形・局 所・決定論」的理論から,「非線形・非局所・統計論」への 枠組みの進化を説明した.帯状流の統計理論については紙 面の関係から述べることができなかったので[1,2]に譲る. 核融合研究への寄与という観点からは,帯状流と結合し た乱流輸送係数の検証が重要である.最近の輸送解析で は,直接シミュレーションの結果で経験的に数値係数を フィットした輸送表式が使われることがあるが,(21)のよ うな帯状流を繰り込んだ理論式を用いることによって,適 切な数値係数を導くことができるのではないかと考えられ る[10].帯状流の制御という視野も有意義な研究課題であ る.たとえば,2.2節に説明したように,DC ポロイダル流 は geodesic curvature のために磁力線に沿った流れを伴う のでその分慣性が増え,与えられたポロイダル方向のトル クに対して回転速度が小さくなる.この事実を Rosenbluth と Hinton は初期値問題として表現し,撃力によるポロイダ ル回転の帯状流と GAM への配分を示した.ヘリカル系の 帯状流の解析も進んでいる[11]. ここに簡単に触れたことの他にも,帯状流の研究は大き な広がりを持っている.例えば,天体・惑星の回転熱対流 に起因する帯状流の問題も同様の理論的枠組みで考察する ことができる.「熱対流による巨視的な軸性ベクトル場の 発生」という視点からは,ダイナモの問題に直結している [12].実際,ドリフト波乱流から(電磁効果を考え)帯状磁 場(zonal field)が生まれることが理論的に指摘されている. 角速度 &"をもつ回転系の上での平均場ダイナモモデルは '! '!$%#$#!!""!!#""$&&"&"'% (23a) '& '!$%# ! #!#! #!$ "#&""%#%!!#!$#!"$(23b) と書き表される(#,&は回転系でみた速度と渦度).乱流 ダイナモ係数&"!#!$'が,生成される巨視的構造を決める. 帯状流・帯状磁場は,このアナロジーでは %#や#が符号を 変えうることを示している.生まれた帯状流が帯状流の成 長率を抑える機構をこの小文で説明したが,そうした機構 は乱流ダイナモ係数の重要な課題でもあり活発な研究がな されている[13].帯状流の問題は実験室でこれらの過程を 直接観測・研究できる対象であり,プラズマ物理学が今後 の自然の理解を先導していくことを示している.謝辞
この論説は P.H. Diamond 教授ならびに T.S. Hahm 博士と の共同研究の成果[1,2]に基づくもので両氏に感謝します. また,その途上において多くの研究者の方から多数のご教 示を得たことを改めて感謝します([1,2]にある謝辞の記述 をご参照下さい).K. Hallatschek 博士には図をいただきま した.文部科学省科学研究費特別推進研究(16002005),科 学研究費基盤研究(15360495),核融合科学研究所共同研究 ならびに九州大学応用力学研究所共同研究の援助を受けた ことを感謝します. 参 考 文 献 特にここで強調することの他は,[1]に詳細な参考文献があげ られている.[1]P.H. Diamond, S.-I. Itoh, K. Itoh and T.S. Hahm, Plasma Phys. Control. Fusion 47, R35 (2005).
[2]P.H. Diamond, S.-I. Itoh, K. Itoh and T.S. Hahm, NIFS Re-port 805 (2004).
[3]K. Itoh and S.-I. Itoh, Plasma Phys. Control. Fusion 38, 1 (1996).
[4]K. Itoh, S.-I. Itoh and A. Fukuyama, Transport and Struc-tural Formation in Plasmas(IOP, England, 1999)
[5]例えば,吉川庄一,飯吉厚夫:核融合入門(共立出版 1972).
[6]N. Winsor, J.L. Johnson and J.M. Dawson, Phys. Fluids 11, 2448 (1968).
[7]R.Z. Sagdeev, V.D. Shapiro, V.I. Shevchenko, Sov. J. Plasma Phys. 4, 306 (1978) [Fiz. Plasmy 4, 551 (1978)]. [8]Liu Chen, Z. Lin and R.B. White, Phys. Plasmas 7, 3129
(2000).
[9]K. Itoh, K. Hallatschek, S.-I. Itoh, P.H. Diamond and S. Toda, Phys. Plasmas 12, 062303 (2005).
[10]福山 淳:輸送コードと乱流理論の結合(日本物理学会 ・秋季大会,2005年9月)21pWG-14.
[11]本特集の洲鎌・渡利両氏による解説を参照下さい. [12]A. Yoshizawa, S.-I. Itoh, K. Itoh, and N. Yokoi, Plasma
Phys. Control. Fusion 46, R25 (2004).
[13]P.H. Diamond, D.W. Hughes and E.-J. Kim, "Self-consistent mean field electrodynamics in two and three dimensions" in The Fluid Mechanics of Astrophysics and Geophysics eds. A.M. Soward, C.A. Jones, D.W. Hughes and N.O. Weiss, (CRC Press, London, 2004) Vol. 12, p.145.
Fig. 6 定常状態でのドリフト揺動と帯状流強さの関係.(エネル ギー分配を意味する.)イオン温度勾配を種々に変えて成 長率を変化させたシミュレーションの結果を点で示す.準 定量的な一致が見られる.([9]より引用)