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肘頭骨折に対してリングピンを用いたtension band wiring法の治療成績

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Academic year: 2021

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-89-日本肘関節学会雑誌27(2)2020

肘頭骨折に対してリングピンを用いた

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ng法の治療成績

Keywords:olecranonfracture(肘頭骨折),tensionbandwiring(tensionbandwiring法),ringpin(リングピン)

Correspondingauthor:TadashiKameyama,SakaiCityMedicalCenter,1-1-1Ebaraji-cho,Nishi-ku,SakaiCit y,Osaka593-8304

肘頭骨折に対するtensionbandwiring法(以下,TBW 法)は優れた手術方法であるが,Kirshner鋼

線の移動・逸脱に伴う皮膚の症状,固定力の不足や稀ではあるが神経血管障害や前腕の回内外制限と いった問題が報告されてきた.

今回,リングピンを用いてTBW 法で治療を行った肘頭骨折 25例について骨癒合,術後臨床成績,

X線評価を検討した.

結果,25例中 23例に骨癒合を認め,最終診察時の平均可動域は屈曲 134.2°,伸展- 4.2°で Mayo

elbowperformancescoreは平均 97.2点と良好だった.また,経過中 backoutを起こさず,整復位を保

持することが可能であった.

本法は尺骨の髄内に挿入するため,前方皮質骨を貫通することによって起こりうる神経血管障害や 前腕の回旋障害といった合併症を起こす可能性はなく,良好な成績が得られ有用な方法と考えられる.

亀山 貞1 有光小百合2 正富 2

1堺市立総合医療センター 2行岡病院

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TadashiKameyama1 SayuriArimitu2 TakashiMasatomi2 1SakaiCityMedicalCenter

2YukiokaHospital 【緒 言】 肘頭骨折に対するtensionbandwiring法(以下,TBW 法)は優れた手術方法である.しかし,Kirshner鋼線 (以下,K鋼線)の移動,逸脱に伴う皮膚の刺激症状, 固定力の低下による変形治癒や偽関節を引き起こす ことがある.そのため,K鋼線の移動を減らすために, K鋼線を尺骨の前方骨皮質を貫通させる方法も提唱さ れているが,同法では稀に神経血管障害や前腕の回内 外制限といった重篤な合併症が報告されている1).以 上の合併症を防ぐために我々はリング付き固定ピン (以下,リングピン)を髄内に刺入して治療を行ってい る.今回リングピンを使用して治療を行った肘頭骨 折に関する術後の臨床成績,合併症,その有用性につ いて後方視的に検討をおこなった. 【材料および方法】 2014年 1月から 2019年 9月までに,尺骨肘頭骨折 に対してリングピンを用いてTBW 法を施行し,術後 3か月以上の経過観察が可能であった 25例 25肘を対 象とした.対象は男性12例,女性 13例で平均年齢は 59歳(12~ 90歳),平均経過観察期間は 8.3か月(4 ~15か月)であった.罹患側は右 9例,左 16例で,

骨折型はColton分類2)にてgroup1が 2例,group2は stageaが 7例,stagebが 4例,stagecが 11例,stage

dが 1例で,group3,4の症例は認めなかった.今回 使用した機種はAcumedテンションバンドピンシス テム(Acumed社)15例,リングピン(帝人ナカシ マ メ デ ィ カ ル 社)7例,AIワイヤリングシステムAimedicMMT社)3例であった.麻酔は全身麻酔また は伝達麻酔にて行った.手術は仰臥位または側臥位 で行い,骨折部を整復した後,ステンレス製の直径 1.6mmまたは 2.0mm,長さ 70~ 90mmのリングピン を2本髄内釘となるように刺入した.そして,20Gま たは22Gの軟鋼線を三頭筋腱の下を通るようにリン グの中を通し,できるだけリングを骨に圧着させた後, 把持部分を切断し,軟鋼線を8の字で締結して TBW 法にて固定を行った. 後療法は術後平均17.1日間,上腕より手関節近位ま で前腕中間位,肘関節90度屈曲位にて外固定を行い, その後より可動域訓練を開始した. 術後の評価項目は,骨癒合の有無,骨癒合までの 期間,可動域,Mayoelbowperformancescore(以下, MEPS),術後合併症について調査を行い,単純 X線肘 関節側面像でbackoutの距離,関節面の gap,stepoffを

術前後で比較して検討した.backoutの距離について は,リングの中心から肘頭刺入部までの距離をring pinlengthとして計測し(図 1),術直後と最終経過観 察時で比較を行った. 統計処理はEZR3)を用いて対応のあるt検定を用い, p<0.05で有意差ありとした.

(2)

肘頭骨折に対してリングピンを用いたtensionbandwiring法の治療成績 -90-【結 果】 25例中23例に骨癒合を認め,平均の骨癒合期間は17 週(8~ 38週)だった.骨癒合が得られなかった 2例 のうち,1例は偽関節を認め,1例は追跡期間が短く骨 癒合を確認できなかったが,2例共に無症状だった. 最終診察時,平均の肘関節可動域は屈曲134.120~ 140°),伸展- 4.2°(- 20~ 5°)で,平均の MEPSは 97.2点(75~ 100点)で全例日常生活に支障を認めな か っ た.X線 評 価 に お い て ringpinlengthは 術 直 後 1.8mm±1.8,最終 2.0mm±1.5,関節面の gapは術直後 0.83mm±1.5,最終0.88mm±1.7,関節面のstepoffは術直 後0.19mm±0.47,最終 0.13mm±0.37でそれぞれの調査 項目についていずれも統計学的有意差は認めなかった. したがって,経過中にbackoutを認めず整復位が保持 されていることを確認できた.合併症については,抜 釘を症例の11例(44%)で行っており,骨片の転位を 1例で認めた.骨片の転位した症例についてはリング ピンが骨折部から挿入されたことにより術後に転位を 認めたが,保存的に加療を行い,骨癒合が得られた. また経過中に前腕の回旋制限や神経血管障害により再 手術を要した症例は認めなかった. 【代表症例】 44歳男性,転倒して左肘を打撲して受傷.肘頭骨折 Coltongroup2,stagecを認め,受傷後 5日目に手術を

施行した.術後12か月時の ROMは 130°,伸展 0°で MEPSscoreは 100点であった.(図 2) 図1 ringpinlength リングの中心から肘頭刺入部までの距離をringpin lengthとして計測した. 図2 症例:44歳男性 A 受傷時単純 X線側面像 B 術直後単純 X線側面像

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亀 山 貞 ほか -91-【考 察】 尺骨肘頭骨折に対してK鋼線と軟鋼線を用いた TBW 法は優れた固定法である.しかし,K鋼線の逸脱 による皮膚障害,固定力の低下など依然問題がある4) TBW 法について,初期の AO法では,2本の K鋼線を 肘頭から尺骨の髄腔内に挿入することを提唱していた が,K鋼線の髄内への挿入長については言及されてお らず,比較的短く挿入されていることが多かったこと もあり,術後のbackout率が高かった.そのため, backoutを軽減するために,K鋼線の先端を尺骨前方皮 質骨に貫通させるAOmodifiedtechniqueが考案され,

初期のAO法と比較して backout率は低いと報告され

ている5).しかし,上記のAOmodifiedtechniqueでも

依然としてbackoutは起こっており,それに加え,前方 皮質骨を貫通することにより,従来法では見られな かった神経血管障害,前腕の回旋障害,橈尺骨骨癒合 症などの重篤な合併症の報告が散見されるようになっ た6),7),8).これらの合併症は,K鋼線の過度の前方へ の突出や不良な刺入方向が原因として知られており,

神経血管障害を避けるためには,Catalanoらは cadaver

の研究でK鋼線の刺入方向は,冠状面では尺骨骨軸に 対して0-10°に,矢状面では尺骨骨軸に対して20-30°の 方向に刺入することを提唱している9).また,Prayon ら はMRIによる解剖の研究より,鈎状突起の遠位 1.5cmで尺骨の前方皮質骨から 10mm以上 K鋼線が突 出していると神経血管障害のリスクが高くなると報告 している10).これらの報告を受け,Schneiderらは,こ

AOmodifiedtechniqueによってTBW法を行った症例

について,術後X線で手技の不完全因子を 10項目あげ, 239症例について評価を行った.結果,10項目すべて を完全に施行できた症例は239例中 1例も認めず, TBW 法を完璧に施行することは考えている以上に難 しいと報告している11).本邦でも西村らが同様の研究 を行い,TBW 法の手技を原則通りに完全に施行するこ とは難しいと述べている12) 上記の問題を改善するために我々はリングピンと軟 鋼線を用いてTBW 法をおこなってきた.このリング ピンの先駆けとして,1982年に Netzと Strombergらは

backoutを軽減させるために Netzpinを開発した13)

このピンには軟鋼線が通せるようにピンの近位端に穴 が空いており,これを尺骨の髄腔内に挿入し,その穴 に軟鋼線を通すことでピンが動かないようしている. 彼らは,このピンを使用して肘頭骨折の治療を行って おり,backoutは 1例も認めなかったと報告している. リングピンは,このNetzpinに改良を加えたピンであ り,先端がK鋼線のように鋭く,またリングもより小 型化されている.リングピンの利点として,(1)髄内に 挿入することで骨折線に垂直な方向への挿入となるた め,容易に整復位をとることができ,(2)リングに軟 鋼線を通すことでリングピンの逸脱や脱転を防止でき, (3)そのため前方の皮質骨に刺入せずとも固定力を担 保できるため,ピンの長さの調整も不要である.また, (4)髄内に挿入することにより先述の前方骨皮質を貫 通することによって起こりうる合併症を避けることが でき,(5)Schneiderらの術後 X線画像の 10の調査項 目についても,本法では,方法が異なるため単純にあ てはめることはできないが,⑥~⑩の5項目に減らす ことができ,手技的にもより容易になると考えられる. (図3) リングピンを使用することで本邦,海外でも良好な 成績が報告されており,2013年にKimらは44症例の肘

頭骨折(MayotypeⅡ Aと typeⅡ B)に対して,リン

グピン(Acumed社)を使用して治療を行い,全例で骨

癒合と解剖学的整復を得ることができ,ピンのback

outや前腕の回旋障害,神経血管障害を認めなかったと 報告している14).また,岡本らはColtongroup2,stage c,dの肘頭骨折に対しても,リングピン(帝人ナカシマ メディカル社)に吸収ピン(GunzeMedicalDivision社) で中間骨片の固定を併用して治療を行い,良好な成績 を報告している15) 本研究のlimitationとしては,後ろ向き研究であり, 症例数も比較的少なく,追跡期間も短いため長期成績 については評価できていないことである.また,今後 は他の固定方法との臨床成績の比較研究や,リングピ ンは比較的高価であるため,費用対効果の比較につい ても検討が必要である. 図3 TBW の術後 X線手技的不完全因子 10項目

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肘頭骨折に対してリングピンを用いたtensionbandwiring法の治療成績 -92-【結 語】 今回報告を行ったリングピンを使用したTBW 法で は,backoutを起こさず,整復位も保持することが可能 であった.また,リングピンは尺骨髄内に刺入するた め,前方皮質骨を貫通することによって起こりうる神 経血管障害や前腕の回旋障害といった合併症を起こす 可能性はなく,有用な方法と考える. この論文は第32回日本肘関節学会で発表した. 【文 献】

1)KimJY,LeeYH,GongHS,etal:UseofKirschnerWires WithEyeletsforTensionBandWiringofOlecranonFractures. HHandSurgAm38(9):1762-1767.

2)ColtonCL:Fracturesofolecranoninadult;classificationand management.Injury1973;5:318-320.

3)KandaY.Investigationofthefreelyavailableeasy-to-use software’EZR’formedicalstatistics.BoneMarrowTransplant. 2013;48:452-8.

4)RomeroJM,MiranA,JensenCH.Complicationsandr e-operationrateaftertensionbandwiringofolecranon fractures.JOrthopSci.2000;5(4);318-20.

5)denHamerA,HeusinkveldM,TraaW,etal.Current techniquesformanagementoftransversedisplacedolecranon fractures.MusclesLigamentsTendonsJ2015;5(2):129-140. 6)Candal-CutoJJ,WilliamsJR,SandersonPL.Impairedforearm

rotationaftertension-band-wiringfixationofolecranon fractures:evaluationofthetranscorticalK-wiretechnique. JOrthopTrauma.2005;1987):480-482.

7)ParkerJR,ConroyJ,CampbellDA.Anteriorinterosseous nerveinjuryfollowingtensionbandwiringoftheolecranon. Injury2005;36:1252-3.

8)DeCarliP,GallucciGL,DonndorffAG,BorettoJG,etal. Proximalradio-ulnarsynostosisandnonunionafterolecranon fracturetension-bandwiring:acasereport.JShoulderElbow Surg2009;18:e40-4.

9)CatalanoLWIII,CrivelloK,LaferMP,etal.Potentialdangers oftensionbandwiringofolecranonfractures:ananatomic study.JHandSurgAm.2011;36(10):1659-1662. 10)PraysonMJ,IossiMF,BuchalterD,etal.Safezonefor

anteriorcorticalperforationoftheulnaduringtension-band wirefixation:amagneticresonanceimaginganalysis.J ShoulderElbowSurg2008;17:121-5.

11)SchneiderM,NowakT,BastianL,etal.Tensionband wiringinolecranonfractures:themythoftechnicalsimplicity andosteosyntheticalperfection.InternationalOrthopaedics (SICOT)2014;38:847-855.

12)西村 春来,善家 雄吉,酒井 昭典ほか:肘頭骨折 に対するtensionbandwiring手技の画像的検討.骨折 2019;40(4):933-36.

13)NetzP.StrombergL.Non-slidingpinsintractionabsorbing wiringoffractures:amodifiedtechnique.ActaOrthopScand. 1982;53(3):355-60.

14)KimJY,LeeYH,GongHS,etal.UseofKirschnerwires witheyeletsfortensionbandwiringofolecranonfractures. JHandSurgAm38(9):1762-1767.

15)OkamotoM,NambaJ,KuriyamaK,etal.Surgicaltechnique intensionbandwiringmethodforselectedcomminuted olecranonfractures.EurJOrthopSurgTraumat ol30,237-242(2020).

参照

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